【解決手段】モールド金型(50)は、ワーク(W)を挟み込んでモールドするモールド金型である。このモールド金型(50)は、モールド面(52a、54a)を有するチェイス(64U、64L)を含み、型開閉される一対の金型(52、54)を備える。また、モールド金型(50)は、チェイス(64U、64L)に対応した情報が記録されるRFIDタグ(66U、66L)を備える。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
通常、トランスファモールドを始めとするモールド装置では、モールド金型は加熱される。このような場合、特許文献1に記載の組込装置では、熱によってデータを読み取ることができないおそれがある。なお、特許文献1には、データ読取手段などへの熱対策について記載も示唆もされていない。
【0005】
また、ID情報であるIDコードをシール状としてモールド金型に貼り付けた場合、モールド金型が高温となるため、IDコードが剥がれたり変色したりしてしまうおそれがある。また、IDコードをモールド金型に彫り込みなどで設けたとしても、加熱によるモールド金型の表面の変色やモールド樹脂の付着などによって、IDコードの読み取りが困難となってしまうおそれがある。
【0006】
本発明の目的は、モールド金型に関する情報をそのモールド金型に付帯させて記録する技術を提供する。本発明の前記ならびにその他の目的と新規な特徴は、本明細書の記述および添付図面から明らかになるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一解決手段に係るモールド金型は、ワークを挟み込んでモールドするモールド金型であって、モールド面を有する第1金型ブロックを含み、型開閉される一対の金型と、前記第1金型ブロックに対応した情報が記録されるRFID(radio frequency identifier)タグと、を備えることを特徴とする。これによれば、モールド金型の第1金型ブロックに関する情報をそのモールド金型に付帯させて記録することができる。
【0008】
また、前記一解決手段に係るモールド金型において、前記一対の金型が、更に第2金型ブロックを含み、前記第2金型ブロックが、前記第1金型ブロックを収納可能に構成されると共に、内蔵されるヒータを備えることがより好ましい。これによれば、第2金型ブロックを介して第1金型ブロックも加熱されることとなる。
【0009】
また、前記一解決手段に係るモールド金型において、前記第1金型ブロックが、型閉じした状態で加圧される加圧面を有し、前記RFIDタグが、前記加圧面を除いて設けられることがより好ましい。これによれば、型閉じされた状態でRFIDタグ自体が加圧されてしまうことを防止することができる。
【0010】
また、前記一解決手段に係るモールド金型において、前記RFIDタグの情報保持温度が、前記ヒータにより当該RFIDタグが加熱される温度以上であることがより好ましい。これによれば、記録された情報を保持し続けることができる。
【0011】
また、前記一解決手段に係るモールド金型において、断熱材を更に備え、前記RFIDタグが、前記断熱材を介して前記一対の金型に設けられることがより好ましい。これによれば、熱に対してRFIDタグを保護することができる。
【0012】
本発明の一解決手段に係るモールド装置は、前記一解決手段に係るモールド金型と、前記モールド金型の外部に設けられ、前記RFIDタグと通信される通信装置と、を備えることを特徴とする。これによれば、モールド金型の内部のような高温下に通信装置が曝されるのを防止して、RFIDタグに記録された情報を読み取ったり、RFIDタグへ情報を書き込んだりすることができる。
【0013】
また、前記一解決手段に係るモールド装置において、前記モールド金型を収容するプレス部を更に備え、着脱される前記第1金型ブロックが前記プレス部内で移動される移載経路の近傍に前記通信装置が設けられることがより好ましい。これによれば、第1金型ブロックの着脱の際にRFIDタグに対して情報の読み書きを行うことができる。
【0014】
また、前記一解決手段に係るモールド装置において、前記モールド金型に対する前記ワークの搬送を行う搬送機構を更に備え、前記通信装置は、前記搬送機構に設けられることがより好ましい。これによれば、モールド金型に対して搬送機構が出入する際に、RFIDタグに対して情報の読み書きを行うことができる。
【0015】
また、前記一解決手段に係るモールド金型において、前記モールド金型の状態を検出値として検出する検出部を更に備え、前記通信装置を介して前記RFIDタグへ前記検出部で検出された検出値が送信されるように前記検出部と前記通信装置が接続されることがより好ましい。これによれば、モールド金型の使用履歴情報をRFIDタグに記録・保持させることができる。
【0016】
本発明の一解決手段に係る生産支援システムは、前記一解決手段に係るモールド装置の前記第1金型ブロックを提供し、前記ワークへの生産を支援するための生産支援システムであって、制御部と、前記第1金型ブロックの寿命情報を記憶する記憶部と、前記ワークの生産者のシステムと通信する通信部とを有し、前記通信部は、前記第1金型ブロックに割り当てられるID情報を前記ワークの生産者のシステムから稼動情報として受信し、前記制御部は、前記受信した稼動情報と前記寿命情報に基づき、前記第1金型ブロックの寿命を診断し、前記制御部は、前記寿命に近づいた前記第1金型ブロックがあるときには、前記通信部を用いて前記ワークの生産者のシステムに対し前記第1金型ブロックの交換を推奨する処理を実行し、又は、交換用の前記第1金型ブロックの製造処理を実行することを特徴とする。これによれば、生産に必要な第1金型ブロックをタイムリーに提供することができ、生産における装置の稼働率を向上することができる。
【0017】
本発明の他の解決手段に係るモールド装置は、加熱されるユニットを備えるモールド装置であって、前記ユニットに接離するように搬送されることで加熱と冷却が繰り返されると共に交換可能にモールド装置内に組みつけられる装置部品と、前記装置部品に取り付けられるRFIDタグと通信される通信装置と、を備えることを特徴とする。これによれば、装置部品の交換を適切に行うことができる。
【0018】
本発明の他の解決手段に係る生産支援システムは、半導体の生産に供される金型部品又は装置部品を提供し半導体の生産を支援するための生産支援システムであって、制御部と、前記金型部品又は前記装置部品の寿命情報を記憶する記憶部と、半導体の生産者のシステムと通信する通信部とを有し、前記通信部は、前記金型部品又は前記装置部品に割り当てられるID情報を半導体の生産者のシステムから稼動情報として受信し、前記制御部は、前記受信した稼動情報と前記寿命情報に基づき、当該金型部品又は前記装置部品の寿命を診断し、前記制御部は、前記寿命に近づいた前記金型部品又は前記装置部品があるときには、前記通信部を用いて当該金型部品又は前記半導体の生産者のシステムに対し装置部品の交換を推奨する処理を実行し、又は、交換用の当該金型部品又は当該装置部品の製造処理を実行することを特徴とする。これによれば、半導体工場における生産に必要な金型部品又は装置部品をタイムリーに提供することができ、生産における装置の稼働率を向上することができる。
【発明の効果】
【0019】
本願において開示される発明のうち、代表的なものによって得られる効果を簡単に説明すれば、次のとおりである。本発明の一解決手段によれば、モールド金型に関する情報をそのモールド金型に付帯させて記録することができる。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下の本発明における実施形態では、必要な場合に複数のセクションなどに分けて説明するが、原則、それらはお互いに無関係ではなく、一方は他方の一部または全部の変形例、詳細などの関係にある。このため、全図において、同一の機能を有する部材には同一の符号を付し、その繰り返しの説明は省略する。また、構成要素の数(個数、数値、量、範囲などを含む)については、特に明示した場合や原理的に明らかに特定の数に限定される場合などを除き、その特定の数に限定されるものではなく、特定の数以上でも以下でも良い。また、構成要素などの形状に言及するときは、特に明示した場合および原理的に明らかにそうではないと考えられる場合などを除き、実質的にその形状などに近似または類似するものなどを含むものとする。
【0022】
(実施形態1)
本発明の実施形態1に係るモールド装置10(樹脂成形装置ともいう)について
図1〜
図6を参照して説明する。
図1は、モールド装置10の概略構成図であり、上面視における各機構部の配置を示している。
図2は、モールド装置10の概略システムブロック図である。
図3〜
図6は、組み付け工程中のモールド装置10の要部の模式的断面図であり、
図1のA−A線に対応している。
【0023】
図1に示すように、モールド装置10は、主に装置正面側に配置される供給部12、複数(2箇所)のプレス部14、および収納部16と、主に装置背面側に配置される搬送部20と、を備える。供給部12は、プレス部14へ供給されるワークW(被成形品)および樹脂を収容する。プレス部14は、モールド金型50(樹脂成形金型ともいう)を備え、モールド金型50によって挟み込まれたワークWに対して樹脂モールド(樹脂成形ともいう)を行う。
図1に示すモールド装置10では、プレス部14を複数(2つ)設けているが、1つだけ設けてもよい。収納部16は、モールド後のワークW(成形品P)を収納する。そして、搬送部20は、ローダハンド22(搬送機構)および各機構部に跨るレール24を備え、ローダハンド22をレール24上で移動させて、供給部12、プレス部14、収納部16の順にワークWを搬送する。本実施形態では、モールド装置10は、プレス部14のモールド金型50において、ポットからプランジャによって樹脂を押し出してキャビティへ注入・充填して成形されるトランスファ成形に適用される。これに限らず、モールド装置10は、モールド金型50の型開閉によってキャビティ内の樹脂を圧縮して成形される圧縮成形に適用されてもよい。
【0024】
プレス部14のモールド金型50(
図6参照)は、キャビティを有する型開閉される一対の金型(例えば合金工具鋼からなる複数の金型ブロックが組み付けられたもの)を備える。本実施形態では、一対の金型のうち、鉛直方向において上方側の一方の金型を上型52とし、下方側の他方の金型を下型54とする。このモールド金型50は、上型52と下型54とが離れたり、近づいたりすることで型開閉される。このため、鉛直方向が型開閉方向でもある。なお、以下の説明においては、このモールド金型50全体、上型52と下型54のいずれか、又は、これらを構成する個別の金型ブロック(チェイス、ベース、プランジャ等)を含めた交換の対象となるものを「金型部品」という。
【0025】
本実施形態では、プレス部14は、モールド金型50を収納するが、このモールド金型50の型開閉を行う公知の型開閉機構56(プレス機構)を備える。例えば、型開閉機構56は、一対のプラテン58、60と、複数のタイバー62と、駆動源(例えば電動モータ)および駆動伝達機構(例えばトグルリンク)と、を備える。一対のプラテンは、固定プラテン58および可動プラテン60から構成される。複数のタイバー62は、固定プラテン58および可動プラテン60を貫通して設けられる。ここで、固定プラテン58は、複数のタイバー62に固定して設けられる。また、可動プラテン60は、複数のタイバー62に可動可能に設けられ、駆動源および駆動伝達機構によって可動(昇降)される。
【0026】
この型開閉機構56では、一対のプラテン58、60の間にモールド金型50が設けられる。本実施形態では、固定型となる上型52が固定プラテン58に組み付けられ、可動型となる下型54が可動プラテン60に組み付けられる。なお、モールド金型50の型開閉においては、上型52を可動型、下型54を固定型としたり、上型52と下型54とも可動型としたりしてもよい。
【0027】
ところで、上型52は、モールド面52a(例えばキャビティが設けられる面であってパーティング面ともいう)を有するチェイス64U(金型ブロック)を備える。また、上型52は、チェイス64Uに対応した情報などが記録されるRFIDタグ66Uを備える。RFIDタグ66Uは、コントローラIC(integrated circuit)やメモリICなどの機能が組み込まれたチップ100と、チップ100と電気的に接続されるアンテナ102と、を備え、樹脂により封止された構成となる(
図2参照)。RFIDタグ66Uを設けることで、モールド金型50のチェイス64Uに関する情報をそのモールド金型50に付帯して記録・保持させることができる。また、チェイス64Uの表面の汚れなどに関係なく、RFIDタグ66UのメモリICに記録・保持されたID情報からチェイス64Uを識別することができる。なお、RFIDタグ66Uを非金属の断熱材を介して金型ブロックに取り付けるのが好ましい。RFIDタグ66Uを金属製の金型ブロックから離間させて保持することで、金属面による電波の吸収を抑制して通信距離を向上させるためである。また、RFIDタグ66Uが断熱材を介して加熱される金型ブロックに取り付けられるため、加熱を遅らせることで、RFIDタグ66Uの機能低下を防止することもできる。
【0028】
RFIDタグ66Uは、チェイス64Uが有する加圧面を除いて設けられる。
図6では、チェイス64Uの加圧面が型閉じした状態で加圧される上下面であるため、これを除く側面(
図6では装置正面側の側面)にRFIDタグ66Uが設けられる。これによれば、型閉じされた状態でRFIDタグ66U自体が加圧されて破損してしまうことを防止することができる。
【0029】
また、RFIDタグ66Uは、例えばボルトなどの留め具(不図示)を用いてチェイス64Uに着脱可能に設けるのが好ましい。これによれば、チェイス64Uがモールド金型50として組み付けられる前にはRFIDタグ66Uを取り付け、組み付け後(使用時)にはRFIDタグ66Uを取り外しておくこともできる。また、留め具としてのボルトに替えて、RFIDタグ66Uにマグネットを設けて、金属製の金型部品(チェイス64U)に容易に取り付け及び取り外しができるような構成とすることもできる。なお、上述の理由によりRFIDタグ66Uとマグネットとの間には別部材を介在させるのが好ましい。この場合、非金属の部材であって高温に耐えるエンジニアリングプラスチックのような樹脂材料や繊維強化プラスチックなどが好ましい。また、留め具を用いてRFIDタグ66Uを着脱可能に設けることは、RFIDタグ66Uが任意に交換可能である点でも好ましい。
【0030】
また、上型52は、チェイス64Uと、ベース68U(金型ブロック)と、を含んで構成される。ベース68Uは、例えば、下面側で開口する方形の枡状(ボックス状)であって、チェイス64Uを収納可能に構成される。ここで、ベース68Uは、その外周が断熱されて構成され、チェイス64Uを囲む複数のエンドブロックを備える。複数のエンドブロックは、チェイス64Uが平面視(モールド面視)矩形状であればその四方を囲む4つの金型ブロックから構成される。このうち、装置正面側のものを正面エンドブロック70Uとする。例えば、装置正面を除く他の3つのエンドブロックが組み付けられた状態では、チェイス64Uを装置正面側から挿入して組み付けた後、正面エンドブロック70Uを組み付けることで、チェイス64Uをベース68Uに収納することができる。チェイス64Uの側面からRFIDタグ66Uが突き出ている場合には、正面エンドブロック70Uにその逃げ部(凹部)が設けられる。
【0031】
また、ベース68Uは、内蔵されるヒータ72Uを備える。このヒータ72Uによって、チェイス64Uなど上型52が所定温度(例えば180℃)に調整されて加熱される。前述したようにベース68Uがチェイス64Uを収納するため、チェイス64Uはベース68Uに対して着脱(交換)可能な構成であっても十分に加熱される。また、チェイス64UにRFIDタグ66Uを設けておくことで、例えばチェイス64Uが取り外されて保管されていたとしても、常にチェイス64UのID情報を付帯させて記録させておくことができる。
【0032】
ここで、RFIDタグ66Uとして、ヒータ72UによりRFIDタグ66Uが加熱される温度以上において情報を保持可能な温度(情報保持可能温度)のものを用いることができる。これにより、チェイス64UにRFIDタグ66Uが取り付けられた状態でモールド金型50が成形動作を行うことで加熱されても、RFIDタグ66Uに記録された情報を保持し続けることができる。また、モールド金型50が断熱材(不図示)を備え、この断熱材を介してRFIDタグ66Uがモールド金型50に設けられることで、熱に対してRFIDタグ66Uを保護することができる。
【0033】
また、RFIDタグ66Uを留め具によりチェイス64Uに対して着脱可能に取り付ける構成とすることで、チェイス64Uをベース68Uに収納する前にRFIDタグ66Uを取り外すこともできる。この場合、RFIDタグ66Uはモールド金型50の外周の断熱された面に一時的に取り付けておけばよい。これにより、RFIDタグ66Uがモールド金型50内で加熱されるのを防止することもできる。また、チェイス64Uをベース68Uから取り外すときには、モールド金型50の外周面に取り付けておいたRFIDタグ66Uをチェイス64Uに取り付け直すことができる。これによれば、仮にRFIDタグ66Uの耐熱温度が金型内の温度よりも低い場合であっても、そのチェイス64Uに紐付けられた情報を保持し続けることができる。また、この場合には金型内に収容されていないのでRFIDタグ66Uの情報の読み書きを行うこともできる。
【0034】
ところで、モールド装置10は、RFIDタグ66Uと通信される通信装置としてアンテナ74Uおよびリーダライタ76U(
図2参照)を備える。リーダライタ76Uは、アンテナ74Uを介してRFIDタグ66Uに対して読み書きする。この通信装置は、モールド金型50の外部に設けられる。このため、モールド金型50の内部のような高温下に通信装置が曝されるのを防止することができる。なお、アンテナ74Uとリーダライタ76Uとを一体的に備えた通信装置としてこれらを用いてもよい。
【0035】
また、本実施形態では、通信装置のアンテナ74Uは、着脱されるチェイス64Uがプレス部14内で移動される移載経路の近傍に設けられる。具体的には、アンテナ74Uは、チェイス64Uの移載経路に対する側方や上方などに適宜設けることができる。例えばチェイス64Uの移載経路における装置正面側のタイバー62付近に設けられる。このため、チェイス64Uの着脱の際に、RFIDタグ66Uに記録された情報を読み取ったり、RFIDタグ66Uへ例えばモールド金型50の情報を書き込んだりすることができる。したがって、RFIDタグ66Uに対する情報の読み書きの別途の作業が不要となるため、効率的かつ確実にRFIDタグ66Uに対する情報の読み書きが行われる。
【0036】
ここで、チェイス64Uが組み付けされる工程において、チェイス64Uの移載経路について説明する。チェイス64Uは、装置正面を一方、装置背面を他方とする移載経路(移載方向)で移動される(
図3〜
図6参照)。チェイス64Uをベース68Uに取り付ける(収納する)には、まず、
図3に示すように、モールド装置10の正面側(図中では左側)でチェイス64Uを配置する。チェイス64Uは、ベース68Uと同じ水平面上にあることが好ましく、移載経路の近傍にあればよい。
【0037】
続いて、
図4に示すように、モールド金型50の内部にチェイス64Uを挿入(進入)させる。具体的には、ベース68Uの内面にチェイス64Uを接触させながらチェイス64Uを移動させる。このとき、アンテナ74Uが移載経路の近傍の装置正面側のタイバー62付近に設けられているため、チェイス64Uの挿入時にRFIDタグ66Uがアンテナ74U前を通過する際に、リーダライタ76Uによって読み書きされる。このため、RFIDタグ66Uをチェイス64Uの装置正面側の側面に設けている。ここで、RFIDタグ66Uの設置箇所として、型面同士がすり合わされないチェイス64Uの装置正面側の他には装置背面側が好ましい。更に、RFIDタグ66Uの設置箇所は、チェイス64Uの装置側面側であってもよい。
【0038】
続いて、
図5に示すように、チェイス64Uをベース68Uに組み付ける。続いて、
図6に示すように、正面エンドブロック70Uでチェイス64Uを閉止することで金型セットが完了する。このようにして、チェイス64Uは、装置正面を一方、装置背面を他方とする移載経路(移載方向)で移動される。なお、これら工程の順番を逆にすることで、ベース68Uからチェイス64Uを取り外すことができる。また、チェイス64Uの取り付け、取り外し工程において、RFIDタグ66Uを取り外して一時的に金型外に取り付けておくこともできる。
【0039】
これまで上型52のチェイス64Uに設けられるRFIDタグ66Uに関して説明してきたが、下型54のチェイス64Lに設けられるRFIDタグ66Lに関しても同様である。具体的には、下型54は、モールド面54aを有するチェイス64L(金型ブロック)と、チェイス64Lに対応した情報などが記録されるRFIDタグ66Lと、を備え、更に正面エンドブロック70Lを有するベース68L(金型ブロック)を備える。RFIDタグ66Lは、チェイス64Lが有する加圧面を除いて設けられる。ベース68Lは、チェイス64Lを収納可能に構成されると共に、内蔵されるヒータ72Lを備える。また、モールド装置10は、チェイス64Lの移載経路における装置正面側のタイバー62に設けられるアンテナ74Lおよびリーダライタ76Lを有する通信装置を備える。これにより、モールド金型50に関する情報を下型54のチェイス64Lに付帯させて記録することができる。
【0040】
ところで、モールド装置10は、
図2に示すような制御系システムを備える。具体的には、モールド装置10は、制御部80と、記憶部82と、表示部84と、入力部87と、を備える。制御部80は、リーダライタ76U、76L、記憶部82および表示部84と通信可能に接続される。以下では、モールド装置10の制御系システムを上型52に設けられるRFIDタグ66Uに対応させて説明する。下型54に設けられるRFIDタグ66Lについては、RFIDタグ66Uと同様であるので説明を省略する。また、以下の説明において、上型52に設けられるRFIDタグ66Uと、下型54に設けられるRFIDタグ66Lとを区別しないときは、単に「RFIDタグ66」と称する。
【0041】
制御部80は、一例として、チェイス64Uをモールド金型50の内部に挿入させる際に、アンテナ74Uに近づいてきたRFIDタグ66Uに記録されたモールド金型50のチェイス64Uに関するID情報やその他の情報(成形回数など)を、アンテナ74Uを介してリーダライタ76Uが読み取るように、リーダライタ76Uを制御する。そして、制御部80は、その情報に基づき記憶部82から対応する情報を読み出し、RFIDタグ66Uに記録された情報を記憶部82に記憶させることができる。また、制御部80は、表示部84にその情報を表示させることでモールド装置10の作業者に通知したりする。これにより、例えば、モールド金型50を構成する金型ブロックの組み合わせ(例えば、チェイス64Uとベース68Uとの組み合わせ)が適正であるかを表示部84に表示させることができ、作業者はこれを確認することで、金型のラベルの目視などによらずに金型のセットミスを防止できる。したがって、セットミスに起因する不良品(成形品P)の生産を防止することができる。
【0042】
また、チェイス64Uとチェイス64Lとの組み合わせが適正であるかなど、上述した組み合わせに拘わらずモールド金型50を構成する各部材の組み合わせの適否を確認することができる。なお、上型52のチェイス64Uに設けられるRFIDタグ66Uと、下型54のチェイス64Lに設けられるRFIDタグ66Lとが設けられることで、上述したような効果(例えばセットミスの防止)をより確実に奏することができる。しかしながら、上型52と下型54とは基本的に一体に取り扱われるため、いずれかの型のみにRFIDタグ66を設けてもよい。
【0043】
一方、制御部80は、一例として、モールド金型50の内部(ベース68U)からチェイス64Uを取り外す際に、RFIDタグ66Uに記録されたモールド金型50のチェイス64Uに関するID情報を読み取ったり、所定の情報を書き込んだりするように、リーダライタ76Uを制御する。即ち、制御部80は、記憶部82から対応する情報を読み出し、RFIDタグ66Uに記憶させることもできる。これによれば、モールド金型50から取り外される際に最新の情報をRFIDタグ66Uに記録させることで情報を更新することができる。例えば、チェイス64Uを取り外す際にRFIDタグ66Uに記録された成形の回数を更新してもよい。具体的には、最新の成形の回数を記憶部82から読み出し、RFIDタグ66Uに記憶させることで、チェイス64UのRFIDタグ66Uに最新の成形回数を保持させることができる。これにより、そのチェイス64Uである金型部品を用いて行った成形回数を正確に記録して、後述するような予測等に用いることができる。
【0044】
記憶部82としては、メモリ装置やディスク装置が挙げられ、装置制御用の制御プログラムや各種の情報が記録される。記憶部82では、例えばリレーショナルデータベース形式などの各種のデータベース形式やファイル形式などの各種の記録方式により後述する各種の情報を対応させて記録する。例えば、
図11に示すように、記憶部82では、任意数のドライブ821に複数のデータファイル形式やテーブル形式により個別の情報822としてID情報等が記録される。したがって、記憶部82には、RFIDタグ66に付されたID情報や、このID情報に対応する金型部品を用いたモールド工程に関わるモールド関連情報が記録されることになる。これらの情報は、ファイル名やラベルやインデックスなどにより連携して参照可能に収容される。このため、各ID情報に基づきモールド関連情報を記憶部82から参照する場合には、対応する1以上のモールド関連情報として、後述する金型部品に関する情報などが記憶部82から読み出される。
【0045】
ID情報としては、各RFIDタグ66に対応して固有に設定された複数行の文字列などを用いることができる。ただし、以下に示すようなモールド関連情報自体やそれらも含めてID情報として保持させることも可能である。
【0046】
一方、モールド関連情報としては、一例として、RFIDタグ66に付されたID情報に対応する金型部品に関する情報が記録される。この金型部品に関する情報としては、その金型部品の製造情報、その金型部品を用いて行われるモールド工程のレシピを示すレシピ情報、及び、その金型部品の使用履歴情報などが挙げられる。また、モールド関連情報としては、個別の金型部品ごとの固有の情報だけでなく、その他のモールド成形のプロセスとして関連する情報も記録される。具体的には、モールド装置に関する情報として、モールド装置10の動作状況等に関する装置情報、モールド装置10において成形に用いられる材料やワークWに関する材料情報、モールド装置10において成形された成形品Pについての成形品情報、装置を構成する各部からの出力に基づく情報(入力部87の入力等)、及び、そのモールド装置10の操作を行う作業者の情報などが挙げられる。さらに、記憶部82には、これら以外にも成形品Pに紐付けられる各種の情報についても適宜記録されることになる。
【0047】
本実施例に示す構成例として、例えば、RFIDタグ66UのID情報に紐付けして記憶部82に記録・保持されるチェイス64Uの情報としては、モールド装置10で使用される対応レシピ情報、使用履歴情報(使用時間、交換・修理履歴)、製造情報(会社名、製造日、製造番号情報、図面情報、型寸法、型材質、メッキ条件)などが挙げられる。この場合、制御部80によって、RFIDタグ66Uに記録・保持されたID情報がアンテナ74Uを介してリーダライタ76Uに読み出され(受信され)、ID情報に紐付けられた上述の情報を記録した記憶部82から読み出すことで、モールド装置10内における制御やその他の解析処理に利用可能となる。なお、上述の通り、RFIDタグ66のメモリICにこれらの情報を記録しておき、直接読み出す構成とすることもできる。
【0048】
一方、RFIDタグ66には、ID情報のみならず記憶部82に記録される各種の情報を保持させるような構成としてもよい。このように、モールド装置10側の記憶部82と、金型部品に取り付けられたRFIDタグ66のメモリICとの両方に金型部品に関する各種情報を記録することで、金型部品の交換をより効率的に行いながら金型部品に紐付けられる情報を確実に残して利用することができる。一例として、RFIDタグ66のメモリICには、上述した金型の製造情報も記録しておくことが好ましい。これによれば、その金型の製造情報として、製造した会社名、製造日、製造番号情報、図面情報、型寸法、型材質、メッキ条件などを読み出すことができ、簡易にメンテナンスすることが可能となる。
【0049】
また、モールド装置10は、モールド金型50に関する状態やモールド装置10内のその他の状態(例えば稼動情報)を検出値として検出する検出部86を備える。また、モールド装置10は、作業者からの操作を受け付けたり、所定の数値や文字列等が打ち込まれたりすることで入力が行われる入力部87を備える。制御部80は、検出部86や入力部87等により検出・入力されたそのものとして出力されるアナログデータ又はデジタルデータの検出値や、その検出値に基づいて演算して算出した所定の物理量等としての算出値を記憶部82に記憶する。また、制御部80は、必要に応じて、通信装置(リーダライタ76U、76L)を介して、RFIDタグ66のメモリICに通信し記録する。
【0050】
検出部86としては、例えば、装置内における任意の時間や時刻を測定するタイマ、モールド金型50の温度やモールド装置10内部の温度を測る温度計、成形回数としてのプレスや公知のトランスファユニット(図示せず)の開閉(昇降)回数等をショット数としてカウントするショットカウンタ、又は、モールド装置10やモールド金型50内部における任意の位置(キャビティ内、プレスタイバー、プランジャ面)の圧力を測る圧力計などが挙げられる。また、装置の搬送系などの移動速度なども検出することで、装置の駆動情報(稼動情報)として利用できるため、検出部86においてはこれらを算出する元になるモータなどの動力源の駆動状況についても検出しておくことが好ましい。
【0051】
具体的には、タイマとしての検出部の出力する時間や時刻に基づき成形の各工程(モールドの各工程や、搬送、予熱等)に要した時間やその工程の行われた時刻などを記録することができる。また、ショットカウンタとしての検出部86の検出値に基づき、各プレス部においてモールド成形が行われた回数や、各金型部品を用いて行われたモールド成形の回数などを記録することができる。また、圧力計や温度計によって出力される温度情報や圧力情報と、時間や成形回数とを紐付けることで、各成形時における成形条件を記録することもできる。
【0052】
このように、検出部86の検出値に基づく情報を利用することで、モールド成形の回数や加熱状態などによりモールド金型50を含む金型部品の管理に用いることができる。また、成形条件を成形品Pに紐付けして、製品情報として出力することで、トレーサビリティを確保して、成形条件の修正なども容易となる。
【0053】
ここで、稼動情報として後述する生産支援システム400(
図12参照)に提供するときには、モールド装置10を使用する半導体の生産者からすればモールド金型50などを提供する生産支援者であっても全ての情報を提供できるわけではない。このため、ID情報やモールド関連情報や、検出値などについては、生産支援者に提供可能か否かについて判別して記憶しておくことが好ましい。例えば、レシピ情報や材料情報などのように秘匿すべきであり生産支援者に提供すべきでないものを除外して、検出部86の検出値や動力源の駆動状況など装置の稼動状態を診断するうえで有効性の高い情報のみを生産支援者に稼動情報として生産支援者に提供することも可能である。
【0054】
更に、検出部86の検出値に基づく情報により、RFIDタグ66自体のメンテナンスも可能である。即ち、RFIDタグ66自体が加熱によって劣化して寿命となってしまうような場合には、寿命に達する前にRFIDタグ66を交換することで、RFIDタグ66に確実にID情報等を保持させることができる。すなわち、例えばRFIDタグ66のメモリが所定の温度で所定の時間加熱され続けたときには情報の保持が困難になるような保持条件が分かっているときには、その保持条件を超える前に、RFIDタグ66自体を交換するような構成とすることもできる。
【0055】
この場合、記憶部82に保存されているRFIDタグ66に保持されるべき情報と、RFIDタグ66に実際に保持され読み込める情報とを、適宜のタイミングで照合して情報の欠損などを検証することで、寿命へ達したか否かを判断することもできる。これにより、所定の読み取り条件においてRFIDタグ66に保持されるべき情報が保持されていないと判断したときには、記憶部82に記憶しているRFIDタグ66に保持されるべき情報を読み出し、新しいRFIDタグ66に情報を書き込んで対応する金型部品に取り付けることで、その金型部品に保持されるべき情報を確実に保持させ続けることができる。また、新しいRFIDタグ66に記録されたID情報をその金型に紐付けられたID情報として記憶部82に記録させることもできる。
【0056】
また、本実施例に基づく別の具体的な利用形態としては、RFIDタグ66U、66Lに使用時間の履歴を記録・保持しておけば、モールド装置10側の記憶部82から各種の情報を読み出さなくても、これらの情報の利用が可能である。このため、例えば、モールド装置10からの情報が取り出せない場合(例えば
図12に示す収容位置301にある場合など)においてもメンテナンスが可能である。このため、再度使用する際に、事前にチェイス64Uの消耗度を推定して診断してから利用することができる。また、RFIDタグ66U、66Lに使用時間の履歴を記録・保持しておけば、これらを記憶部82に記録していない場合又は削除したり欠損してしまった場合でも、寿命経過後の使用による不具合の発生を予測して回避したり、交換時期を通知したりすることもできる。この場合、表示部84などにより、使用停止の推奨を通知したり、部材交換、メッキ付け直し、寸法手直しなどの修理を提案したりすることもできる。更に、ネットワークを介して寿命経過後や、交換時期となった金型部品のID情報を金型部品の製造元である生産支援者500(
図12参照)に転送するなどして、金型部品の交換部品の注文も簡易に行うことができる。もちろん、本発明によれば、これらの利用は特に限定している場合を除いて、記憶部82に記録しているときにも同様の効果を得ることができる。
【0057】
更に、RFIDタグ66に適切なID情報を記録・保持しておくことで、金型部品の真正製品と模造製品との識別も容易になり、模造製品使用による不具合の発生も防止することができる。また、RFIDタグ66にID情報だけでなくモールド関連情報まで記録しておくことにより、このID情報が紐付けられるモールド金型50が中古品として市場に流通したときに、以前の使用の程度を検証することができるため、適切に利用することができる。
【0058】
(実施形態2)
本発明の実施形態2に係るモールド装置10について
図7を参照して説明する。
図7は、モールド装置10の要部の模式的断面図である。なお、前述した実施形態1に対して本実施形態は、RFIDタグ66U、66Lの設置箇所が相違する。このように、RFIDタグ66Uは加圧や過熱による破損を考慮しながらも、任意の位置に設置することが可能である。
【0059】
図7に示すように、上型52において、チェイス64Uは、上面(ベース68Uの内面との対向面であって型内側端面)の所定の位置に設けられる複数のピラー88Uを備える。ベース68Uに対してチェイス64Uは、複数のピラー88Uを介して組み付けられる。このため、チェイス64Uの上面において、ピラー88Uと接する箇所が、型閉じした状態で加圧される加圧面となる。他方、ピラー88Uと接しない箇所は加圧面ではない。そこで、本実施形態では、RFIDタグ66Uの設置箇所を、複数のピラー88U間のチェイス64Uの上面としている。また、下型54のチェイス64Lに設けられるRFIDタグ66Lに関しても同様であり、RFIDタグ66Lの設置箇所を、複数のピラー88L間のチェイス64Lの下面(ベース68Lの内面との対向面であって型内側端面)としている。これによれば、型閉じされた状態でRFIDタグ66U、66L自体が加圧されてしまうことを防止し、チェイス64U、64Lに関する情報をそれぞれに付帯させて記録することができる。この場合、RFIDタグ66U、66Lが設置されたそれぞれの面に対向する面にアンテナ74U、74Lを設置したときに通信が容易となる。
【0060】
(実施形態3)
本発明の実施形態3に係るモールド装置10について
図8、
図9を参照して説明する。
図8、
図9は、ワーク搬送工程中のモールド装置10の要部の模式的断面図である。なお、前述した実施形態1に対して本実施形態は、RFIDタグ66U、66Lの設置箇所および通信装置のアンテナ74の設置箇所が相違する。
【0061】
図8に示すように、上型52において、ベース68Uの装置背面側の側面(図中では右側の側面)、および、側面エンドブロック90Uのモールド面52aからRFIDタグ66Uの厚みよりも深く窪む凹部のそれぞれにRFIDタグ66Uが設けられる。これらRFIDタグ66Uの設置箇所は、凹部の深さによっては型閉じした状態で加圧される加圧面とはならない。また、下型54においても同様であり、ベース68Lの装置背面側の側面(図中では右側の側面)、および、側面エンドブロック90Lのモールド面54aからRFIDタグ66Lの厚みよりも深く窪む凹部のそれぞれにRFIDタグ66Lが設けられる。
【0062】
これによれば、モールド面52a、54aに対応する位置に設置された場合であっても、型閉じされた状態でRFIDタグ66U、66L自体が加圧されてしまうことを防止することができる。また、ベース68U、68Lに関する情報をそれぞれに付帯させて記録することができる。ベース68U、68L固有の情報を記録することで、上述したチェイス64U、64Lと同様な利用をすることができる。なお、モールド金型50がベースとチェイスの組み合わせを任意に交換するような構成でなく、一体的に取り扱われるときには、ベース68U、68Lの外周に取り付けられたRFIDタグ66U、66Lにより上型52及び下型54の情報をそれぞれ記録することができる。
【0063】
ここで、本実施形態では、
図9に示すように、RFIDタグ66に対応する通信装置のアンテナ74が、ローダハンド22(搬送機構)に設けられる。これによれば、モールド金型50に対してローダハンド22が出入する際に、モールド面52a、54aやベース68U、68Lに設けられたRFIDタグ66U、66Lに対して情報の読み書きを行うことができる。
【0064】
(実施形態4)
本発明の実施形態4に係るモールド装置10について
図10を参照して説明する。
図10は、モールド装置10の要部の模式的断面図である。なお、前述した実施形態1に対して本実施形態は、RFIDタグ66Lの設置箇所が相違する。
【0065】
図10に示すように、モールド装置10は、複数のポット92と、複数のプランジャ94と、プランジャベース96と、を備える。複数のポット92は、チェイス64L(センターインサート)に設けられ、型閉じした際にキャビティと通ずる。複数のプランジャ94は、複数のポット92のそれぞれに挿入され、各ポット92にセットされる樹脂を押し出してキャビティへ注入・充填する。プランジャベース96は、複数のプランジャ94を固定して、プランジャ駆動機構によって往復動(上下動)されることで、複数のプランジャ94を一斉に往復動させる。
【0066】
本実施形態では、プランジャ94・ポット92の組ごとにRFIDタグ66Lを設けている。具体的には、あるプランジャ94のプランジャベース96側の端部(先端部よりも低温となる)にRFIDタグ66Lを設けている。また、RFIDタグ66Lと通信される通信装置のアンテナ74は、プランジャ94が設置される位置の近傍に設けられる。これによれば、チェイスやベースだけではなくプランジャ94のような交換する金型部品について使用履歴などを記録して、上述したような情報利用により交換を適切に行うなど効率的な作業が可能となる。また、上述の実施形態と同様に、プランジャ94が設置される際の移載経路の近傍にアンテナ74を設けてもよい。なお、複数のプランジャ94のそれぞれに複数のRFIDタグ66Lを設けてもよい。さらに、ポットにRFIDタグを設けることもできる。
【0067】
以上、本発明を実施形態に基づき具体的に説明したが、本発明は前記実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能であることはいうまでもない。
【0068】
例えば、RFIDタグの設置箇所が、実施形態1ではチェイスの側面、実施形態2ではチェイスのピラー間、実施形態3ではチェイスのエンドブロック露出面およびベースの側面、実施形態4ではプランジャの場合について説明した。これに限らず、RFIDタグの設置箇所は、モールド金型を構成するよう組み付けられる金型ブロックであればよい。
【0069】
例えば、リーダライタに接続されるアンテナの設置箇所が、実施形態1、2ではタイバー、実施形態3ではローダハンドの場合について説明した。これに限らず、アンテナの設置箇所は、RFIDタグ66が設置される金型ブロックの近傍(できる限り金型等のヒータからの受熱を避けた低温位置が好ましい)や、着脱時などでデータ読み書きできる金型ブロックの通過位置や、モールド装置の外側にある例えばハンディタイプとすることで、RFIDタグ66と通信できればよい。
【0070】
例えば、実施形態3のように、モールド金型を構成する各金型ブロック(構成部材)のそれぞれにRFIDタグを設けることもできる。具体的には、チェイスとこれに組み付けられるインサートや、チェイス(インサート)とポット・プランジャや、ベースとチェイスのように、1個のモールド金型内において組み合わされる金型ブロックの確認だけでなく、1個のプレス部に配置した上型と下型との対応が適正かも確認することができる。また、モールド装置内では、プレス部ごとに設置されたモールド金型がどのような金型ブロックで構成されるかを確認することができる。また、モールド金型の組み付けミス(セットミス)が発生するのを防止することができる。
【0071】
また、上述した加熱されるモールド金型50の部材についての情報が記録されるRFIDタグ66を用いる構成について説明したが、本発明はこれに限定されない。例えば、
図9に示すローダハンド22のように、モールド金型50のように加熱されるユニットに接離するように搬送されることで加熱と冷却が繰り返される場合には、モールド装置内で加熱されたモールド金型50に近づくことで加熱により劣化し易くなる。また、ワークWの形状などによって形状が異なる部品を切り替えながら生産が行われることになる。これらの理由により、例えばローダハンド22でワークWを掴むハンド部分のような装置部品は、交換可能に装置内に組みつけられることになる。そこで、この装置部品の交換を適切に行うことを目的として、ローダハンド22の交換部(装置部品)にRFIDタグを設ける構成としてもよい。なお、装置部品としては、交換することを意図され、又は、交換可能であって、装置を構成する部品であれば後述するような物に限られない。
【0072】
例えば、
図9に示すローダハンド22における交換部としてのハンド部分22a(装置部品)は、ワークWをモールド面52aに供給やワークWの保持搬送を行うために、爪部などが開閉する動作を繰り返す。このため、ハンド部分22aでは摺動部や回転部が必要となるが加熱と冷却が繰り返される環境下で摺動や回転が行われることで、このような装置部材は劣化し易い。このため、交換される装置部品としてのハンド部分22aにRFIDタグを設けることで、例えばモールド金型50へのワークWの投入回数などを記録しておくことで、適切な時期の交換をすることもできる。この場合、例えばアンテナ74Uはハンド部分22aの通過する適宜の位置に配置することができる。
【0073】
また、上述した実施形態における記憶部82の代わりとして、モールド装置10の外部に設置されるサーバを用いることもできる。
図12は、変形例としての記憶部82を用いたモールド装置10と、モールド装置10を含む半導体工場の生産システムブロックを含むシステムブロックを示す。半導体工場300では、上述したようなモールド装置10を複数備えて、モールド金型50が収容位置301(棚など)と、モールド装置10内とで適宜移載されることになる。また、各モールド装置10は、図示しない半導体工場300毎のゲートウェイ、スイッチ又はルータなどを介して、インターネットなどのネットワークINに接続される。これにより、各モールド装置10は、管理システム200に接続され管理されることになる。この管理システム200は、データの通信や演算等のデータの処理を行うデータ処理部201や上述した記憶部82に変わって情報を記録するストレージ202を備える。
【0074】
このような生産システムでは、モールド装置10からのID情報やモールド関連情報をモールド装置10の記憶部82ではなく、例えば、管理システム200のストレージ202に記録しておくことができる。これによれば、生産調整などにより、モールド金型50を別の半導体工場300に移動してそこで生産を行うようなときには、モールド装置10を替えても過去の履歴などを参照しながらモールド金型50を利用することができる。また、管理システム200のデータ処理部201は、各半導体工場300の生産量の調整などを含めた全体的な管理を行うことも可能であるため、生産量の予測に基づき、適宜のメンテナンス時期の算出を行い、RFID66により管理されている金型の寿命に基づき、計画的な交換部品の手配も行うことができるため、効率的な生産や管理が可能となる。
【0075】
なお、モールド金型50のRFIDタグ66にID情報だけでなくモールド関連情報まで記録しておけば、上述した管理システム200のような一括的に情報を管理するシステムが存在していなくてもモールド金型50のRFIDタグ66に記録されたモールド関連情報に基づき生産を行うことができる。
【0076】
また、RFIDタグ66によるモールド金型50における金型部品の管理を行うことにより、モールド装置10単位、半導体工場300単位、又は、これらを管理する管理システム200(生産システム)単位における生産支援を行うことができる。
【0077】
このように、半導体の生産に供される金型部品又は装置部品を提供し半導体の生産を支援するための生産支援システム400としては、生産支援管理システム501(制御部)と、金型部品又は前記装置部品の寿命情報を記憶するデータサーバ502(記憶部)と、半導体の生産者のシステムと通信する通信システム503(通信部)とを有する。ここで、通信システム503は、金型部品又は装置部品に割り当てられるID情報(例えば、前述のRFIDタグ66に保持されたID情報)を半導体の生産者側の管理システム200から稼動状態に関する情報(稼動情報)として受信する。この際に、生産支援管理システム501は、通信システム503が受信した稼動情報とデータサーバ502における寿命情報に基づき、金型部品又は装置部品の寿命を診断する。この場合、生産支援管理システム501は、寿命に近づいた金型部品又は装置部品があるときには、管理システム200に対し装置部品の交換を推奨する処理を通信システム503を用いて実行することができる。又は、生産支援管理システム501は、交換用の金型部品又は装置部品の製造処理を実行することもできる。これによれば、半導体工場300における生産に必要な金型部品又は装置部品をタイムリーに提供することができ、生産における装置の稼働率を向上することができる。
【0078】
また、このような生産を支援する生産支援システム400では、上述したようなID情報やこれに紐付けられたモールド関連情報などの情報(データ)を収集、分析したうえで、生産支援者500に対して稼動情報として提供することも可能である。これによれば、例えばモールド装置10やモールド金型50を供給する生産支援者500は、分析を行いモールド関連情報に基づくモールド装置10の診断またはモールド装置10やモールド金型50における不具合の発生を予測し予防保全のための対応を行うことが可能となる。さらに、不具合(トラブル)が仮に発生したときには迅速な指示および復旧アドバイスを行うなどの対応が可能にもなる。
【0079】
具体的には、生産システムにおける管理システム200からモールド関連情報において生産支援者500に提供可能な稼動情報を生産支援者500の生産支援管理システム501(具体的には通信システム503)に送信する。この際に、生産支援管理システム501では、ID情報やこれに紐付けられたモールド関連情報に基づき、例えば金型部品や装置部品の使用時間などの情報を算出し、使用時間と故障率の相関数式等に基づき診断をすることで、寿命に近づいた金型部品や装置部品を交換するように、生産システムにおける管理システム200に提案通知を行う。また、検出部86における圧力や温度の情報が稼動情報として提供されたときには、これが所定値を超えたときなどにも適宜対応(交換、修理、通知など)を紐付けしておくことで、交換時判断等をすることもできる。ここで、生産システムにおける管理システム200から必要に応じてその金型部品や装置部品の交換を希望する通知がなされたときには、生産支援者500の在庫504から交換用の金型部品(例えばモールド金型50の金型ブロック等)や装置部品などを半導体工場300に提供する。これにより、金型部品や装置部品の交換を適切に行うことで生産における不具合の発生を予防し、半導体工場300における工場稼働率の向上を図ることができる。また、生産支援システム400では、提供された情報に基づき、交換時を予測し、金型部品や装置部品の製造の開始や、生産の準備のような製造処理を実行することもできる。
【0080】
このように、本発明における生産支援システム400によれば、交換される金型部品や装置部品に対して少なくともID情報を用いた管理を行うことで、加熱等による劣化や消耗に応じた交換などの支援を行うことができ、半導体の生産を行う生産システムにおける工場稼働率の向上に貢献することができる。
【0081】
また、生産支援システム400によれば、例えばID情報及びモールド関連情報に基づいて、管理システム200に用いられるコンピュータハードウェアの保守及び修理、データ処理部201として実現される電子データ処理システム用のコンピュータハードウェアの設置工事・保守及び修理、及び、モールド装置10を含む半導体製造装置、これに関連する電気通信機械器具、測定機械器具並びにプラスチック加工機械器具の修理や保守を効率化の支援にも用いることができる。また、ID情報及びモールド関連情報は、制御部80や管理システム200のデータ処理部201のデータネットワークにおけるコンピュータプログラムやデータベース構造についての作成、設計、保守、助言、バックアップ、回復などによっても支援にも用いることもできる。