【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り 掲載名 :係留系における新コンセプト 掲載アドレス: http://www.marine.osakafu−u.ac.jp/▲〜▼lab15/nihei/cn36/anamizu.html 掲載日 :2015年1月1日 [刊行物等] 発行所名:公立大学法人大阪府立大学 刊行物名:平成26年度 大学院工学研究科航空宇宙海洋系専攻海洋システム工学分野 修士論文 工学部海洋システム工学科 卒業論文 概要集 発行年月日:平成27年2月16日 [刊行物等] 集会名 :平成26年度工学部海洋システム工学科卒業論文公聴会 開催日 :平成27年2月17日 [刊行物等] 発行所名:公益社団法人日本船舶海洋工学会 刊行物名:日本船舶海洋工学会講演会論文集 平成27年5月第20号May 2015 Volume 20 発行年月日:平成27年5月25日 [刊行物等] 集会名 :日本船舶海洋工学会 平成27年春季講演会 開催日 :平成27年5月25日、26日
【解決手段】浮体式洋上風力発電装置1は、浮体2が係留管7に保持アーム16及び緩衝保持アーム28を介して連結されている。浮体2には支柱3が立設され、支柱3の上端にはナセル5を有し、このナセル5に風車4が取り付けられている。支柱3の下端には発電装置6が設けられている。発電装置6で発電した電力はスリップリング13を介して係留管7内の配線に送られる。係留管7と保持アーム16とは回転機構部8内に設けた調心ベアリング14により回転自在に連結されると共に揺動可能となっている。係留管7の下方と緩衝保持アーム28とは、緩衝機構部20を介して連結されている。緩衝機構部20は、緩衝材を介して係留管7を遊貫状態で保持している。
前記係留索は、前記係留管の下方から拡径方向に延び、かつ、周方向に均等に複数設けられた連結杆に連結されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の浮体式洋上風力発電装置。
【背景技術】
【0002】
人家から離れた洋上では騒音公害を心配する必要がなく、また、平均して陸上よりも大きな風力が得られる等の利点が多いため、洋上風力発電が注目されている。
【0003】
洋上風力発電装置では、海底に基礎を建設する着床式の形態と、係留状態で水面に浮遊させる浮体式の形態とが知られている。
【0004】
このうち、着床式については、現状では、水深30m程度が建設上の限界となっているため、設置場所が浅い海に限られる。
【0005】
これに対して、浮体式については、安定した係留が可能であれば、水深による制約が殆どない。このため、遠浅の少ない海域には浮体式が適している。
【0006】
ここで、従来の浮体式の洋上風力発電装置(以下、単に「風力発電装置」と呼ぶ。)の例を
図8に示す。
図8の風力発電装置100では、風車101を用いた発電システムを支える基体部102が複数の浮体103、104によって水上に浮上配置されている。この風力発電装置100では、支柱105に回動可能に配置され、風車101が取り付けられているナセル部106を風の方向に対応して回動させることにより発電効率の向上が図られている。このような風力発電装置100については特許文献1に記載がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところで、大型の風力発電装置は受風位置を高い位置に設定することができるので、上空の強い風を安定的に受けることができ、発電効率が高い。これに対して小型の風力発電装置では、受風位置が低くなるので、上空の安定した強い風を受けることができないことに加えて、受風面積が小さくなる分だけ発電効率が低下する。このため、浮体式の小型の風力発電装置においては、風況に応じて素早く風向に追従させることにより可動効率を上げる必要がある。
【0009】
しかし、大型の装置のようなメリットの得られない小型の装置に対して、大型の装置と同様の複雑な回転機構を採用するとコスト面で不利となる。
【0010】
そこで、本発明は、簡易な構成による風向の追従性の高い洋上風力発電装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するために、本発明の浮体式洋上風力発電装置は、
水深方向に延び、下方側が係留索によって水底と連結される係留管と、
前記係留管の海上側に調心ベアリングを介して連結され、相対回動可能に水平方向に延びる第1アームと、
前記第1アームの回動端と連結された浮体と、
前記浮体に立設された支柱と、
前記支柱に支えられた風車と、
前記浮体上に設置された発電装置と、
前記浮体から延び、前記係留管の海中側を、偏心可能となるように緩衝材を介して遊貫状態で保持する前記第1アームと前記係留管が作る平面内に設けられた第2アームと、
を備えたことを特徴とする。
【0012】
また、本発明の浮体式洋上風力発電装置は、上記構成に加えて、前記緩衝材は、中央に前記係留管の下方側を遊貫状態で保持可能な貫通孔が形成されたゴム板であることを特徴とする。
【0013】
また、本発明の浮体式洋上風力発電装置は、上記構成に加えて、前記係留索は、前記係留管の下方から拡径方向に延び、かつ、周方向に均等に複数設けられた連結杆に連結されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
以上のように、本発明の浮体式洋上風力発電装置によれば、第1アームと係留管とが調心ベアリングを介して連結されているので、係留管は、調心ベアリングを中心として浮体に対して揺動可能となる。また、係留管は、浮体から延びる第2アームによって遊貫状態で偏心可能に保持されているので、浮体に対して揺動を伴って相対回動可能となる。
【0015】
また、本発明の浮体式洋上風力発電装置によれば、上記効果に加えて、第2アームがゴム板を介して係留管の下方側を遊貫保持するので、簡易な構成によって偏心作用及び緩衝作用が可能となる。
【0016】
また、本発明の浮体式洋上風力発電装置によれば、上記効果に加えて、係留管の下方から拡径方向に延びる連結杆に係留索が連結されるので、係留管が係留索に対して捩じれた場合であっても、係留索に働く張力が連結杆を元の位置に回動させる力として作用する。これにより、係留管の回転位置を一定の範囲に安定させ、係留索の大きな捩じれを防止できる。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施の形態に係る浮体式洋上風力発電装置(以下、単に風力発電装置と呼ぶ。)について図を用いて説明する。
【0019】
図1は、本発明の実施の形態に係る風力発電装置1の全体斜視図である。本実施の形態に係る風力発電装置1は、円筒形状の本体2aの下方に本体2aより径が小さい円筒形状の下方体2bが形成された浮体2を有している。下方体2bは、本体2aより縦方向(深さ方向)の長さが長く、また重量も重く構成されている。このようにすることで、本体2aの波に対する復元力を大きくしている。この浮体2の上には支柱3が立設されている。
【0020】
支柱3の上端にはナセル5が設けられ、このナセル5には回転軸4aを水平方向に向けた風車4が取り付けられている。また、支柱3の下端には、発電装置6が備えられている。このように、本実施の形態に係る風力発電装置1では、発電装置6をナセル5ではなく浮体2部分に搭載することにより浮体2の安定性の向上を図っている。
【0021】
また、発電装置6を浮体2に設けたことで、発電装置6のメンテナンスが容易に行える。ナセル5内に発電装置6を設けると、波で揺れる支柱3上のナセル5まで登ってメンテナンスを行うこととなり、メンテナンスが容易でなくなる。この浮体2を水面に設置した際の水面の大凡の位置は、浮体2の大径部分の側面に点線で示されている。
【0022】
上記の浮体2の近傍には、水深方向に延びる係留管7が並設されている。係留管7と浮体2とは上下2箇所で繋がっている。このうち、上方の連結構造には、浮体2の本体2aから水平方向に延びる保持アーム(第1アーム)16を有している。保持アーム16は、上面視をした時に、風車4が取付けられた風車4の回転軸4aと同じ軸上に浮体2に固定して設けられている。言い換えると、浮体2の保持アーム16の取り付け方向16aと、風車4の回転軸4aは、上面視したときに一致する。
【0023】
この保持アーム16は、係留管7に対して回転機構部8を介して相対回転可能に連結されている。保持アーム(第1アーム)16が係留管7で繋がっている箇所は、水面より上である。回転機構部8は機械部品であるので、海中よりも海上にある方が劣化の程度が小さいからである。第1アーム16は係留管7の海上側にあるといってもよい。
【0024】
また、係留管7の下方側の連結構造では、浮体2の下方体2bの下端から係留管7へ向かって緩衝保持アーム28(第2アーム)が延びている。この緩衝保持アーム28は、緩衝材を介して係留管7の下方側を遊貫状態で保持している。緩衝保持アーム28と係留管7との接続点は海中にある。第2アーム28は海中側にあるといってもよい。
【0025】
また、緩衝保持アーム28の浮体2への取り付け方向28aは、保持アーム16の取り付け方向16aと同じ方向である。したがって、風車4の回転軸4aと保持アーム16の取り付け方向16aと、緩衝保持アーム28の取り付け方向28aは同じ平面内にある。また、保持アーム16と緩衝保持アーム28は、係留管7の回転軸9と同じ平面内にある。つまり、緩衝保持アーム28は保持アーム16と係留管7が作る平面内にある。
【0026】
係留管7の下端には、連結アーム34が固定的に設けられている。そして連結アーム34は、係留索36によって海底に固定される。ここでは、連結アーム34は3本の場合を示したが、1本以上であれば本数に限定はされない。
【0027】
このように浮体2は、係留管7との間で、保持アーム16と緩衝保持アーム28とで支持されているので、浮体2は、係留管7の中心に一点鎖線で示した回転軸9の周りに相対的に旋回可能となる(旋回方向は
図1中に水平面内に延びる湾曲した矢印で示されている。)。また、浮体2は保持アーム16および緩衝保持アーム28の回動端に連結されているといっても良い。
【0028】
風力発電装置1は、浮体2上の風車4が回転すると、図示しないシャフトなどの伝達手段によって、浮体2上の発電装置6に回転力を伝える。これによって発電装置6は発電する。発電装置6で発電された電力は、保持アーム16中に配されたケーブルを伝って、スリップリング13に伝わる。電力は、スリップリング13から係留管7中に配設したケーブルに伝わり、海中に配設された埋設ケーブル(図示していない)に伝えられる。このようにして、浮体式洋上風力発電装置1は電力を送信する。
【0029】
次に、浮体式洋上風力発電装置1の望ましい動作を簡単に説明する。
図2は、浮体式洋上風力発電装置1を上方から見た図を示す。係留管7、浮体2、風車4、連結アーム34および係留索36は
図2(a)の関係にあったとする。
【0030】
図2(b)を参照して、風Wが吹いたとする。浮体2上の風車4は風を受けるため、風車4が固定された浮体2は、係留管7の周囲で旋回する力Frが生じる。風車4の回転軸は、係留管7と浮体2を接続している保持アーム16(緩衝保持アーム28)と同じ軸上に設けられているからである。結果、ナセル5が風上を向くまで浮体2が係留管7の周囲を旋回する。このようにして、風車4は常に風の方向を向いて回転し、発電を行うことができる。
【0031】
ここで問題になるのは、係留管7と浮体2との間の回動時の摩擦係数である。この摩擦係数が大きいと、浮体2は係留管7の周囲を旋回することができず、
図2(a)の状態のままとなってしまう。つまり、風車4を常に風に向けることができない。
【0032】
係留管7と浮体2との回転摩擦係数の原因としては、次のようなことが考えられる。係留管7と浮体2は互いに波によって揺動している。そのため、係留管7に対する浮体2の傾きは常に変化する。すると、
図1の回転機構部8の部分で摩擦係数が高くなり、係留管7の周囲をスムーズに浮体2が回転できなくなる。そこで本発明に係る風力発電装置1は、係留管7と浮体2との傾きが変化しても互いに回動可能になるような係留管7と浮体2の連結構造を有している。
【0033】
この連結構造は、係留管7との間の連結構造体である保持アーム16の回転機構部8と、緩衝保持アーム28の緩衝機構部20に設けられている。
【0034】
図3を用いて回転機構部8の詳細な構成について説明する。
図3には、
図1の丸で囲んだ部分Xについての一部破断した拡大図が示されている。なお、ここでは、説明の便宜のため、保持アーム16に付随する細かな支持部材については図示を省略し、保持アーム16と係留管7との関係が明確になるように表わしている。また、係留管7の内部の配線等の構造も図示を省略している。
【0035】
保持アーム16はカバー体10の側面に接合されている。このカバー体10の上面には、ベアリング載置台17にスラストベアリング12が設けられていてもよい。スリップリング13の重量を支えるのに有効だからである。
【0036】
スラストベアリング12は、係留管7とカバー体10の上面(ベアリング載置台17)と間の軸方向の摩擦を低減するので好ましい。上側の軌道盤12aはフランジブッシュ11(
図4参照)を介して係留管7の側面に固定されている。また、下側の保持器12bはベアリング載置台17に接合されたドーナツ状の枠板17aの枠内に載置されている。スラストベアリング12が、このように構成されているので、係留管7は保持アーム16に繋がる浮体2(
図1を参照)に対して回転自在となっている。
【0037】
ベアリング載置台17の下面側には、ベアリング固定枠18がボルトにより固定されている。このベアリング固定枠18は上枠18aと下枠18bとが接合されて構成されている。調心ベアリング14は、これら上枠18aと下枠18bとの間に固定されている。
【0038】
調心ベアリング14の外輪14aはベアリング固定枠18の上枠18aと下枠18bとの間に挟持され、内輪14bは係留管7の側面に固定されている。このように構成されているので、係留管7と保持アーム16(浮体2)が相対的に揺動した場合(相対的に傾斜した場合)であっても、係留管7と保持アーム16(浮体2)の回転を妨げることなく、調心ベアリング14を中心に傾くことができる。
【0039】
ここで、
図4に、回転機構部8を含む構造の中央縦断面図を拡大して示す。係留管7の上端には、浮体2の発電装置6から送られてきた電力を係留管7内の配線等に送るためのスリップリング13が設けられている(
図1を併せて参照)。
図4では、係留管7が調心ベアリング14を中心に下端側が揺動した状態が示されている。
【0040】
保持アーム16(
図3参照)と固定されたカバー体10の中心線を二点鎖線54で示すと共に、傾斜した係留管7の中心位置を一点鎖線52で示している。つまり、2点鎖線54は、カバー体10(保持アーム16)の傾きを表し、1点鎖線52は
図1で示した係留管7の回転軸9を表す。2点鎖線54と1点鎖線52のなす角50が、係留管7とカバー体10(これと結合した保持アーム16および浮体2)とのなす傾きとなる。
【0041】
この傾き50は、調心ベアリング14を中心として傾く。したがって、浮体2と係留管7が波によって揺動しても、調心ベアリング14によって、浮体2は係留管7の周囲を回動することができる。
【0042】
なお、カバー体10と係留管7の傾きは相対的なものなので、カバー体10は水平(二点鎖線54は垂直)になっている。また、
図4で符号Bの部分より上は、係留管7が傾いていない場合を示し、符号Bの部分より下は、係留管7が傾いている場合を示している。傾きがよく理解できるように、符合Bの部分を連続して記載している。したがって、係留管7が符号Bの部分で曲がっているわけではない。
【0043】
図3に戻って、スリップリング13の下端は係留管7の上端に対してゴム管19によって接続されている。このため、上述のように、係留管7が調心ベアリング14を中心に揺動した場合であっても、上端の動きはゴム管19の変形により吸収され、スリップリング13との接続関係を良好に保つことが可能である。
【0044】
続いて、
図5に浮体2と係留管7の海中での接続部である緩衝機構部20の詳細な構成を示す。
図5には、
図1において係留管7の下方側(海中)にて二点鎖線で囲んだ部分Yについて、一部破断した拡大図が示されている。
【0045】
緩衝機構部20は筒状のカバー体22と、このカバー体22の上方を塞ぐように配置されたゴム板24(緩衝材)とから構成されている。カバー体22の側面には
図1に示したように、浮体2の下端から延びる緩衝保持アーム28が接合されている。ゴム板24の中央には、係留管7が遊貫状態で配置可能な穴が貫通して形成されている。係留管7とゴム板24との間にはフランジブッシュ26が介在しており、係留管7とゴム板24との摺動摩擦を低減する構成となっている。
【0046】
つまり、フランジブッシュ26によって緩衝保持アーム28(浮体2)は、係留管7の周囲を回動することができる。また、緩衝保持アーム28と係留管7が傾いたとしても、ゴム板24(緩衝材)が変形し、傾斜した状態を保持する。その結果、緩衝保持アーム28(浮体2)と係留管7が傾きを持っても、互いに回動可能となる。
【0047】
以上のように浮体2と係留管7との間の連結構造体である保持アーム16の回転機構部8と、緩衝保持アーム28の緩衝機構部20は、浮体2から見て係留管7が傾斜したとしても、回転摩擦係数を低く維持することができる。
【0048】
図6には、浮体2と係留管7の関係を示す。なお、浮体2上の支柱3等の構造物は省略している。風力発電装置1(
図1を参照)は、風車4が風にあおられたり、係留管7の下方が係留索36により引張られたり、波で浮体2と係留管7が揺動する、係留管7と浮体2は互いに傾く。
図6では浮体2だけが傾いたように示す。1点鎖線52は、係留管7の回転軸9(
図1参照)と平行な線を表す。2点差線54は、浮体2の中心軸を表す。
【0049】
係留管7の下方で浮体2と接続する緩衝保持アーム28は、この傾きをゴム板24の変形によって保持する。したがって、浮体2に対して係留管7は調心ベアリング14を中心に傾く。しかし、調心ベアリング14とフランジブッシュ26によって、浮体2と係留管7が傾いても、互いに回動することができる。言い換えると、浮体2は係留管7との間の角度が変化しても(揺動しても)、係留管7の周囲を旋回することができる。
【0050】
図5を再び参照して、係留管7の下端には連結部30が取り付けられている。連結部30の中央には、係留管7の下端を受ける軸端受部32が設けられている。そして、軸端受部32の下方位置から係留管7の拡径方向へ拡がるように3本の連結アーム34が延びている。これら連結アーム34は互いに120度の角度を設けて配置されている。また、連結アーム34の先端下方には、係留索36が連結されている。これら係留索36は、一端が水底に固定される。
【0051】
次に係留索36と係留管7や浮体2の関係について説明する。
図2で述べたように、浮体式洋上風力発電装置1が常に風車4を風の方向に向けることができるためには、浮体2が係留管7の周囲を旋回できることが必要である。しかし、係留管7と浮体2との間の回転摩擦係数が大きいと、浮体2は係留管7の周囲を旋回することができない。一方、係留管7と浮体2との間の回転摩擦係数はゼロにはできない。
【0052】
図7には、
図2同様に浮体式洋上風力発電装置1の上面視の図を示す。
図7(a)は、風Wに向いて風車4が向いている状態を示している。
図7(b)を参照して、風向きがW1に変わったとする。浮体2は風車4が風から受ける力によって、風の方に向こうとする。つまり、係留管7に対して浮体2が回転しようとする力Frが生じる。その結果、連結アーム34と係留索36のなす角度が変わる。
【0053】
係留索36は、重さのある紐状体(鎖)であるので、連結アーム34と海底の固定点との間で懸垂曲線を描いている。
図7(a)では、連結アーム34と係留索36のなす角度は180°であり、係留索36と係留管7はつりあった状態にある。つまり、この時に係留索36が描く懸垂曲線が
図7(a)の拘束条件での係留索36の最小エネルギー状態であるといえる。
【0054】
一方、
図7(b)のように、浮体2と係留管7との角度が変化せずに、係留管7が浮体2によって回転されると、係留索36は全体として持上げられ、上面視では伸びたようになる。係留索36は、重力によって、最小エネルギー状態に戻ろうとするため、係留索36には復元力Ftが生じる。上面視では、あたかも係留索36が縮もうとする力に見える。
【0055】
浮体2と係留管7の間には回転摩擦係数が存在する。係留索36の復元力Ftがこの回転摩擦係数より大きければ、浮体2は係留管7の周囲で旋回し、風車4は風向W1を向く(
図7(c)参照)。
【0056】
回転摩擦係数が大きいと、係留管7と浮体2は固定された状態となり、係留索36による復元力Ftと、浮体2が係留管7の周囲に回転しようとする力Frがつりあった状態で浮体2は止まる(
図7(d)参照)。
【0057】
つまり、浮体式洋上風力発電装置1の風車4を常に風に向かせるためには、係留管7と浮体2との間の回転摩擦係数を小さくすると共に、係留索36の復元力Ftを大きくすることも効果がある。
【0058】
係留索36の復元力Ftを大きくするには、係留索36の単位長さ当たりの重量を上げる、本数を増やす。吊り合い時の張力を大きくするといった方策を採用することができる。
【0059】
以上のように、本実施の形態に係る風力発電装置1は、係留管7のような長尺部材を用いることにより顕著となる撓みを緩衝機構部20で緩衝すると共に、回転機構部8に傾動可能な調心ベアリング14を用いることにより浮体2の係留管7の周囲を旋回する回転動作を妨げることなく風向追従機能を安定した状態に維持することを可能とする。
【0060】
なお、上記の実施の形態では、回転機構部8に調心ベアリング14とスラストベアリング12とを組み合わせた構成を例として示した。しかし、少なくとも調心ベアリング14を設けていれば、係留管7は揺動可能となるので、スラストベアリング12は必須の構成ではない。また、調心ベアリング14の代わりにスラスト自動調心ベアリング等を用いても構わない。さらに、スラストベアリング12の代わりにアキシャル荷重に対して摩擦を低減することができれば、樹脂ベアリングであっても構わない。
【0061】
上記の実施の形態では、係留管7の下端から拡径方向へ延びる連結アーム34は、周方向に互いに120度の角度を設けて3本設けられた構成を例として示した。しかし、複数本設けられていれば、2本でも4本以上でも構わない。少なくとも2本設けられていると、係留索36は開いた状態で保持することができるので、それぞれの係留索36から連結アーム34に働く回転力成分を大きく設定することが可能である。
【0062】
また、上記の実施の形態では、係留索36を連結する連結部30を、拡径方向へ延びる棒状部材(連結アーム34)で構成する例を示した。しかし、係留管7から拡径方向へ離間した位置に係留索36を連結することができる形状であれば、板状部材でも構わない。
【0063】
また、上記の実施の形態では、連結アーム34は、係留管7の拡径方向において同一水平面上に配置される構成を例として示した。しかし、これら複数の連結アーム34は異なる水平面上に設けられていても構わない。
【0064】
また、上記の実施の形態では、緩衝機構部20の緩衝材としてゴム板24が用いられた構成を例として示した。しかし、係留管7を遊貫状態で保持できると共に、緩衝機能を有する構成であれば、スプリング等を緩衝材として用いても構わない。
【0065】
また、上記の実施の形態では、緩衝保持アーム28が浮体2の下端から延びている構成を例として示した。しかし、緩衝機構部20が係留管7の下端側を保持できる構成であれば、浮体2側には下端以外の位置に連結されていても構わない。