特開2017-88344(P2017-88344A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2017-88344(P2017-88344A)
(43)【公開日】2017年5月25日
(54)【発明の名称】張力付与装置及び糸巻取装置
(51)【国際特許分類】
   B65H 59/30 20060101AFI20170421BHJP
【FI】
   B65H59/30
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2015-222044(P2015-222044)
(22)【出願日】2015年11月12日
(71)【出願人】
【識別番号】000006297
【氏名又は名称】村田機械株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100140442
【弁理士】
【氏名又は名称】柴山 健一
(72)【発明者】
【氏名】陣山 達夫
(72)【発明者】
【氏名】中村 陽一
【テーマコード(参考)】
3F111
【Fターム(参考)】
3F111BB06
3F111BD00
3F111CA11
3F111CC06
3F111DA03
(57)【要約】
【課題】構成の簡易化及び小型化を図ることができる張力付与装置及びそれを備える糸巻取装置を提供する。
【解決手段】テンション付与装置15は、本体部70と、本体部70に対して少なくとも一部が移動可能に設けられ、糸道を走行する糸に接触して当該糸に張力を付与する接触部72と、本体部70に設けられ、接触部72を移動させるための駆動部74と、駆動部74の駆動力を接触部72に伝達して接触部72を移動させる駆動力伝達機構76と、を備え、接触部72は、糸道から退避した位置において初期位置が設定されており、駆動力伝達機構76は、駆動部74の駆動力を接触部72の移動距離に変換する比率を変更する変換率変更機構を備えている。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
本体部と、
前記本体部に対して少なくとも一部が移動可能に設けられ、糸道を走行する糸に接触して当該糸に張力を付与する接触部と、
前記本体部に設けられ、前記接触部を移動させるための駆動部と、
前記駆動部の駆動力を前記接触部に伝達して前記接触部を移動させる駆動力伝達機構と、を備え、
前記接触部は、前記糸道から退避した位置において初期位置が設定されており、
前記駆動力伝達機構は、前記駆動部の駆動力を前記接触部の移動距離に変換する比率を変更する変換率変更機構を備えている、張力付与装置。
【請求項2】
前記駆動力伝達機構は、前記接触部の前記初期位置を機械的な係合により決定する、請求項1に記載の張力付与装置。
【請求項3】
前記駆動部の動作を制御する制御部を備え、
前記駆動部は、ステッピングモータであり、
前記駆動力伝達機構は、前記接触部の前記初期位置において前記ステッピングモータの回転軸の回転を機械的に規制し、
前記制御部は、前記機械的な係合に至る回転指令を前記ステッピングモータに送ることにより、動作後の前記接触部が前記初期位置に位置していると判断する、請求項1又は2に記載の張力付与装置。
【請求項4】
前記変換率変更機構は、
前記ステッピングモータの前記回転軸に固定されるカムと、
前記接触部に連結され、前記カムの動作に応じて前記接触部を移動させる可動部と、を有し、
前記カムは、前記接触部の前記初期位置において前記可動部と係合して回転が規制される、請求項3に記載の張力付与装置。
【請求項5】
前記接触部は、櫛歯状を呈する第1接触部材及び第2接触部材を有し、
前記第1接触部材は、前記本体部に固定されており、
前記第2接触部材は、前記駆動力伝達機構を介して前記駆動部により駆動されることにより、前記第1接触部材に近づく方向及び前記第1接触部材から遠ざかる方向に移動する、請求項1〜4のいずれか一項に記載の張力付与装置。
【請求項6】
前記第1接触部材及び前記第2接触部材は、互いに隙間に入り込むように構成されており、
前記第1接触部材と前記第2接触部材とが互いの前記隙間に入り込んだ状態では、前記糸道方向から見て、前記第1接触部材と前記第2接触部材とが交差している、請求項5に記載の張力付与装置。
【請求項7】
前記駆動力伝達機構は、前記第2接触部材を前記第1接触部材から遠ざける方向に付勢する付勢部材を有している、請求項5又は6に記載の張力付与装置。
【請求項8】
前記駆動力伝達機構は、前記第2接触部材を前記第1接触部材に近づける方向に付勢する付勢部材を有している、請求項5又は6に記載の張力付与装置。
【請求項9】
糸が巻かれた給糸ボビンが支持される給糸部と、
前記給糸部から供給される前記糸を巻き取る巻取部と、
前記給糸部と前記巻取部との間に配置される請求項1〜8のいずれか一項に記載の張力付与装置と、を備える、糸巻取装置。
【請求項10】
前記給糸部と前記巻取部との間に配置され、前記糸を一時的に貯留可能な糸貯留部を備える、請求項9に記載の糸巻取装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、張力付与装置及び糸巻取装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、糸巻取装置に取り付けられ、走行する糸に張力を付与する張力付与装置が知られている。例えば、特許文献1には、糸条の糸道を挟むように配置された一対の張力付与部と、張力付与部を駆動する第一動力部及び第二動力部と、を備える張力付与装置が開示されている。特許文献1に記載の張力付与装置では、第一動力部は、糸条に張力を付与する際に張力付与部を閉方向に駆動する回転式のソレノイドであり、第二動力部は、糸条を張力付与部に導入する際に、張力付与部を退避位置に駆動する直進式のソレノイドである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2001−144030号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の張力付与装置では、2つのソレノイドによって張力付与部を駆動させることにより、糸に張力を付与している。このように、複数のソレノイドを用いる張力付与装置は、構造が複雑になると共に、大型になる場合がある。また、モータによって張力付与部を駆動させる構成では、張力付与部の所定の位置(初期位置)を検出するセンサ等が必要となる。この構成においても、センサ等を配置するスペースが必要となるため、張力付与装置が大型化することが避けられない。糸巻取装置によっては、張力付与装置を設置するスペースが小さい場合がある。この場合、糸巻取装置に従来の張力付与装置を設置できないことがある。そのため、張力付与装置の小型化が求められている。
【0005】
本発明によれば、構成の簡易化及び小型化を図ることができる張力付与装置及びそれを備える糸巻取装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る張力付与装置は、本体部と、本体部に対して少なくとも一部が移動可能に設けられ、糸道を走行する糸に接触して当該糸に張力を付与する接触部と、本体部に設けられ、接触部を移動させるための駆動部と、駆動部の駆動力を接触部に伝達して接触部を移動させる駆動力伝達機構と、を備え、接触部は、糸道から退避した位置において初期位置が設定されており、駆動力伝達機構は、駆動部の駆動力を接触部の移動距離に変換する比率を変更する変換率変更機構を備えている。
【0007】
この張力付与装置では、駆動部の駆動力を接触部に伝達して接触部を移動させる駆動力伝達機構は、駆動部の駆動力を接触部の移動距離に変換する比率を変更する変換率変更機構を備えている。この構成では、変換率変更機構によって、駆動部の限られた駆動範囲の中で、糸の張力を調整するために高い分解能で動かしたい領域と、糸を導入するために素早く且つ大きく開く必要のある領域と、を両立させることができる。したがって、張力付与装置は、構成の簡易化及び小型化を図ることができる。
【0008】
一実施形態においては、駆動力伝達機構は、接触部の初期位置を機械的な係合により決定してもよい。これにより、張力付与装置は、接触部の初期位置を検出するためのセンサ等を必要としない。したがって、張力付与装置は、構成の簡易化及び小型化を図ることができる。
【0009】
一実施形態においては、張力付与装置は、駆動部の動作を制御する制御部を備え、駆動部は、ステッピングモータであり、駆動力伝達機構は、接触部の初期位置においてステッピングモータの回転軸の回転を機械的に規制し、制御部は、機械的な係合に至る回転指令をステッピングモータに送ることにより、動作後の接触部が初期位置に位置していると判断してもよい。したがって、張力付与装置では、駆動力伝達機構によってステッピングモータの回転軸の回転を規制することにより、接触部の初期位置を検出するためのセンサ等を備えなくても、接触部の初期位置を決定できる。また、ステッピングモータは、パルス信号によって精度良く制御できる。そのため、張力付与装置は、糸に付与する張力を精度良く制御することができる。
【0010】
一実施形態においては、変換率変更機構は、ステッピングモータの回転軸に固定されるカムと、接触部に連結され、カムの動作に応じて接触部を移動させる可動部と、を有し、カムは、接触部の初期位置において可動部と係合して回転が規制されてもよい。この構成では、接触部の初期位置においてカムの回転が規制されるため、接触部の初期位置を正確に判断できる。
【0011】
一実施形態においては、接触部は、櫛歯状を呈する第1接触部材及び第2接触部材を有し、第1接触部材は、本体部に固定されており、第2接触部材は、駆動力伝達機構を介して駆動部により駆動されることにより、第1接触部材に近づく方向及び第1接触部材から遠ざかる方向に移動してもよい。第1接触部材及び第2接触部材は、櫛歯状を呈しているため、糸を屈曲させる。これにより、接触部は、糸に対して良好に張力を付与できる。また、接触部は、第1接触部材が固定されており、第2接触部材が第1接触部材に近接及び離間する方向に移動するため、糸に対して安定的に張力を付与できる。
【0012】
一実施形態においては、第1接触部材及び第2接触部材は、互いに隙間に入り込むように構成されており、第1接触部材と第2接触部材とが互いの隙間に入り込んだ状態では、糸道方向から見て、第1接触部材と第2接触部材とが交差していてもよい。この構成により、糸を屈曲させることができ、糸に対して良好に張力を付与できる。
【0013】
一実施形態においては、駆動力伝達機構は、第2接触部材を第1接触部材から遠ざける方向に付勢する付勢部材を有していてもよい。これにより、第2接触部材の位置を所定位置において維持できる。したがって、糸に張力を付与しないときに、第2接触部材が糸に接触することを防止できる。
【0014】
一実施形態においては、駆動力伝達機構は、第2接触部材を第1接触部材に近づける方向に付勢する付勢部材を有していてもよい。これにより、糸に張力を効果的に付与できる。
【0015】
本発明に係る糸巻取装置は、糸が巻かれた給糸ボビンが支持される給糸部と、給糸部から供給される糸を巻き取る巻取部と、給糸部と巻取部との間に配置される上記いずれかの張力付与装置と、を備える。
【0016】
この糸巻取装置では、張力付与装置を備えている。張力付与装置では、上記のように、駆動部の駆動力を接触部に伝達して接触部を移動させる駆動力伝達機構は、駆動部の駆動力を接触部の移動距離に変換する比率を変更する変換率変更機構を備えている。この構成では、変換率変更機構によって、駆動部の限られた駆動範囲の中で、糸の張力を調整するために高い分解能で動かしたい領域と、糸を導入するために素早く且つ大きく開く必要のある領域と、を両立させることができる。したがって、糸巻取装置では、張力付与装置の構成の簡易化及び小型化を図ることができる。
【0017】
一実施形態においては、糸巻取装置は、給糸部と巻取部との間に配置され、糸を一時的に貯留可能な糸貯留部を備えていてもよい。糸貯留部を備える糸巻取装置では、給糸部と巻取部との間に配置された糸貯留部において糸の張力が緩和されるため、糸貯留部を備えない場合に比べて、糸の張力の変動が小さい。上記張力付与装置は、糸の張力の変動が小さい場合に特に有効である。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、構成の簡易化及び小型化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】一実施形態に係る自動ワインダの全体的な構成を示す概略正面図である。
図2】一実施形態に係るワインダユニットを示す概略側面図である。
図3】第1実施形態に係るテンション付与装置を示す斜視図である。
図4図3に示すテンション付与装置の動作を説明する図である。
図5図3に示すテンション付与装置の動作を説明する図である。
図6】第2実施形態に係るテンション付与装置を示す斜視図である。
図7図6に示すテンション付与装置の動作を説明する図である。
図8図6に示すテンション付与装置の動作を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、添付図面を参照して、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。なお、図面の説明において同一又は相当要素には同一符号を付し、重複する説明は省略する。「上流」及び「下流」とは、紡績時での糸の走行方向における上流及び下流をそれぞれ意味する。
【0021】
図1に示されるように、自動ワインダ1は、並べて配置された複数のワインダユニット(糸巻取装置)2と、機台制御装置3と、給糸ボビン供給装置4と、玉揚装置5と、図略のブロアボックスと、を備えている。
【0022】
機台制御装置3は、各ワインダユニット2と通信可能に構成されている。自動ワインダ1のオペレータは、機台制御装置3を適宜操作することにより、複数のワインダユニット2を集中的に管理することができる。機台制御装置3は、給糸ボビン供給装置4及び玉揚装置5の動作を制御する。
【0023】
給糸ボビン供給装置4は、図略の機構により給糸ボビン21を1本ずつ搬送トレイ26上にセットする。給糸ボビン供給装置4は、搬送トレイ26上にセットした給糸ボビン21を、複数のワインダユニット2のそれぞれに供給する。
【0024】
玉揚装置5は、ワインダユニット2においてパッケージ30が満巻(規定量の糸20が巻き取られた状態)となった場合に、当該ワインダユニット2の位置まで走行し、満巻のパッケージ30を取り外す。玉揚装置5は、パッケージ30を取り外した当該ワインダユニット2に対して空(糸が巻かれていない状態)の巻取ボビン22をセットする。
【0025】
次に、ワインダユニット2の構成について説明する。図2に示されるように、ワインダユニット2は、給糸部6と、糸貯留装置(糸貯留部)18と、パッケージ形成部8と、を備えている。ワインダユニット2では、給糸部6の給糸ボビン21の糸20を解舒し、解舒した糸20を糸貯留装置18で一旦貯留した後、巻取ボビン22に巻き取ってパッケージ30を形成する。
【0026】
給糸部6は、搬送トレイ26にセットされた給糸ボビン21を所定の位置で支持し、この給糸ボビン21から糸20を解舒して供給する。給糸部6は、給糸ボビン21から全ての糸20が解舒されると、空になった給糸ボビン21を排出して、給糸ボビン供給装置4から新しい給糸ボビン21の供給を受ける。
【0027】
糸貯留装置18は、給糸部6とパッケージ形成部8との間に配置されている。糸貯留装置18は、糸20の走行方向における上流側の位置に設けられている。糸貯留装置18は、給糸部6から供給された糸20を一時的に貯留する。糸貯留装置18は、貯留している糸20をパッケージ形成部8が引き出せるように構成されている。糸貯留装置18は、糸20を巻き付けることが可能な糸貯留ローラ32と、糸貯留ローラ32を回転駆動するローラ駆動モータ33と、を備えている。ローラ駆動モータ33は、給糸部6からの糸20を巻き取る方向に糸貯留ローラ32を回転させる。また、ローラ駆動モータ33は、当該巻き取る方向とは反対の方向に糸貯留ローラ32を回転させることもできる。
【0028】
パッケージ形成部8は、巻取ボビン22を装着可能に構成されたクレードル23と、糸20を綾振りさせながら巻取ボビン22を駆動する綾振ドラム24と、を備えている。パッケージ形成部8は、巻取部を構成する。クレードル23は、巻取ボビン22(又はパッケージ30)を回転可能に支持する。クレードル23は、パッケージ30の外周面が綾振ドラム24の外周面に対して接離可能に支持されている。
【0029】
綾振ドラム24は、図略の駆動源(電動モータ等)によって回転駆動され、巻取ボビン22又はパッケージ30の外周面に接触した状態で回転することで、巻取ボビン22を従動回転させる。これにより、糸貯留装置18に貯留された糸20を引出ガイド37を介して解舒して引き出し、巻取ボビン22に巻き取ることができる。綾振ドラム24の外周面には図略の綾振溝が形成されており、この綾振溝によって糸20を所定の幅で綾振り(トラバース)することが可能になっている。以上の構成で、糸20を綾振りさせながら巻取ボビン22に巻き付けて、所定長で所定形状のパッケージ30を形成することができる。
【0030】
ワインダユニット2は、給糸部6から糸貯留装置18を経由してパッケージ形成部8に至る糸走行経路中に、各種の装置を備えている。具体的には、糸20の糸道には、上流の給糸部6側から下流の糸貯留装置18側へ向かって順に、解舒補助装置10と、第1吹送り部11と、第2捕捉部12と、糸継装置13と、第1捕捉部14と、テンション付与装置(張力付与装置)15と、カッタ16と、糸監視装置17と、第2吹送り部48と、が配置されている。
【0031】
解舒補助装置10は、給糸ボビン21から解舒される糸20が振り回されて給糸ボビン21の上部に形成されるバルーンに対し、可動部材27を接触させ、当該バルーンの大きさを適切に制御することによって糸20の解舒を補助する。
【0032】
第1吹送り部11は、解舒補助装置10の下流側における解舒補助装置10に近接する位置に配置されたエアサッカー装置である。第1吹送り部11は、圧縮空気を噴出することにより、糸20を第1捕捉部14まで吹き送る空気流を形成する。したがって、例えば糸切れが生じた場合、第1吹送り部11が動作することで、給糸ボビン21側の糸端を糸継装置13側に向かって吹き送ることができる。
【0033】
なお、給糸部6に新しい給糸ボビン21が供給された直後の場合には、給糸ボビン21から糸20が十分に引き出されていないため、第1吹送り部11によっては糸端を糸継装置13側に吹き送ることが困難になる場合がある。これを考慮して、ワインダユニット2の給糸部6には、補助吹送り部28が設けられている。
【0034】
補助吹送り部28は、中空状に形成された搬送トレイ26及び給糸ボビン21の内部に圧縮空気を噴出することにより、給糸ボビン21の先端部に、当該給糸ボビン21の糸20を第1吹送り部11側へ吹き送る空気流を形成する。新しく供給された給糸ボビン21が給糸部6に支持された場合、補助吹送り部28及び第1吹送り部11が連動して動作することにより、当該給糸ボビン21側の糸端を糸継装置13側に向かって確実に送ることができる。
【0035】
第2捕捉部12は、糸継装置13の上流側における糸継装置13に近接する位置に配置されている。第2捕捉部12は図略の吸引空気流発生源に接続されており、糸継時に吸引空気流を発生させて、糸貯留装置18側の糸20を吸引して捕捉する。
【0036】
糸継装置13は、分断された糸20の糸継ぎを行う。糸継装置13は、糸監視装置17が糸欠陥を検出してカッタ16で糸20を切断する糸切断時、給糸ボビン21から解舒中の糸20が切れる糸切れ時、又は、給糸ボビン21の交換時等のように、給糸ボビン21と糸貯留装置18との間の糸20が分断された状態となったときに、給糸ボビン21側の糸20と、糸貯留装置18側の糸20と、を糸継ぎする。糸継装置13は、糸道から若干退避した位置に配置されている。糸継装置13は、導入された糸端同士を繋いで、糸20を連続状態とすることができる。糸継装置13としては、圧縮空気等の流体を用いる装置や、機械式の装置を使用できる。
【0037】
第1捕捉部14は、糸継装置13の下流側における糸継装置13に近接する位置に配置されている。第1捕捉部14は、図略の吸引空気流発生源に接続されるとともに先端部に開口が形成された筒状の部材として構成されている。第1捕捉部14は、進退駆動部47を備えている。進退駆動部47は、第1捕捉部14を糸道に対して進退させる。
【0038】
第1捕捉部14は、糸道に接近している状態において、その先端側に吸引空気流を発生させることにより、第1吹送り部11によって吹き送られてくる給糸ボビン21からの糸端を吸引して捕捉する。第1捕捉部14は、カッタ16で糸20を切断した際に、切断した糸20の給糸ボビン21側の糸端を吸引して捕捉する。更に、第1捕捉部14は、その先端側に吸引空気流を発生させることにより、走行する糸20に付着している風綿等を吸引して除去する。なお、第1捕捉部14は、給糸ボビン21の糸端を捕捉した状態で糸道から退避することにより、当該糸端を糸継装置13に導入することができる。
【0039】
テンション付与装置15は、走行する糸20に所定のテンションを付与する。テンション付与装置15の詳細な構成については、後述する。
【0040】
糸監視装置17は、糸20の太さ等を適宜のセンサで監視することにより、スラブや異物混入等の糸欠陥を検出する。糸監視装置17の上流側における当該糸監視装置17に近接する位置には、カッタ16が配置されている。カッタ16は、糸監視装置17が糸欠陥を検出した場合直ちに、糸20を切断する。
【0041】
カッタ16及び糸監視装置17は、共通のハウジング19に収容されている。糸監視装置17を収容するハウジング19は、テンション付与装置15の下流側における当該テンション付与装置15に近接する位置に配置されている。この構成により、走行する糸20がテンション付与装置15によって保持(案内)されている部分の近くを糸監視装置17で監視することになるため、監視部分の糸20がブレにくくなり、糸監視装置17が糸20の欠陥を検出する精度を一層高めることができる。
【0042】
第2吹送り部48は、糸貯留装置18の上流側における糸貯留装置18に近接する位置に配置されたエアサッカー装置である。第2吹送り部48は、圧縮空気を噴出することにより、糸貯留装置18側の糸端を吹き飛ばして第2捕捉部12まで送る空気流を形成する。具体的には、第2吹送り部48は、内部に糸20を通過させることが可能な細い筒状のガイド部材と、湾曲した筒状の部材である糸案内部材60と、を備えている。ガイド部材の一端には、糸20の吹出口が形成されている。糸案内部材60は、第2吹送り部48の吹出口に近接するように設けられている。糸案内部材60の長手方向両端には、それぞれ開口が形成されている。
【0043】
糸案内部材60は、その一端側の開口を第2吹送り部48の吹出口に対向させ、且つ、その他端側の開口を第2捕捉部12に対向させた状態で配置されている。糸案内部材60の内部には、案内経路が形成されている。案内経路は、糸監視装置17、テンション付与装置15、及び糸継装置13等を迂回するように、糸案内部材60の両端の開口同士を繋ぐ。第2吹送り部48と糸案内部材60と第2捕捉部12とにより、貯留側糸端捕捉装置50が構成されている。
【0044】
第2吹送り部48は、給糸ボビン21と糸貯留装置18との間で糸20が分断状態となった場合、糸貯留装置18側の糸20を捕捉して糸案内部材60の案内経路へ吹き飛ばし、糸20を当該案内経路に沿って引き出して、第2捕捉部12に捕捉させる。なお、糸案内部材60には図略のスリットが全長にわたって形成されているため、糸20を第2捕捉部12に捕捉させた状態で、当該糸20を糸案内部材60の内部から引っ張り出すことができる。以上により、第2吹送り部48によって糸貯留装置18側の糸20を吹き送って、糸継装置13側に向かって案内することができる。
【0045】
各ワインダユニット2は、制御部25を備えている。制御部25は、図略のCPU、ROM、RAM等のハードウェアを備えている。RAMには、制御プログラム等のソフトウェアが記憶されている。制御部25は、ハードウェアとソフトウェアとの協働により、ワインダユニット2の各構成を制御する。制御部25は、機台制御装置3と通信可能に構成されている。これにより、自動ワインダ1が備えた複数のワインダユニット2の動作を、機台制御装置3において集中的に管理することができる。
【0046】
[第1実施形態]
続いて、第1実施形態に係るテンション付与装置15について詳細に説明する。図3図5に示されるように、テンション付与装置15は、ベース(本体部)70と、接触部72と、モータ(駆動部)74と、駆動力伝達機構76と、を備えている。
【0047】
ベース70は、例えば、板状の金属部材により成形されている。ベース70は、例えば、L字状を呈している。ベース70は、支持部70aと、固定部70bと、を有している。支持部70aは、接触部72、モータ74及び駆動力伝達機構76を支持する。支持部70aは、糸20が通過する溝部71を有している。固定部70bは、ワインダユニット2のフレームに固定される。なお、図3図5に示されている第1実施形態のテンション付与装置15は、装置の構成を把握するためにモータ74及び駆動力伝達機構76を支持部70aの上方に示しているが、固定部70bは、ワインダユニット2のフレームに固定されるときには、モータ74及び駆動力伝達機構76は支持部70aの下方に配置されることになる。
【0048】
接触部72は、糸道を走行する糸20に接触して糸20にテンションを付与する。接触部72は、第1接触部材72aと、第2接触部材72bと、を有している。第1接触部材72a及び第2接触部材72bのそれぞれは、櫛歯状を呈しており、糸道方向に位置をずらして配置される。第1接触部材72a及び第2接触部材72bは、例えば、セラミック等の耐摩耗性を有する材料で形成されている。図5に示されるように、第1接触部材72a及び第2接触部材72bは、櫛歯状に形成された第1接触部材72aと、第2接触部材72bとが互いの隙間に入り込むことが可能に構成されている。第1接触部材72aと第2接触部材72bとが互いの隙間に入り込んだ状態においては、糸道方向から見たときに、第1接触部材72aと第2接触部材72bとが交差している。第1接触部材72a及び第2接触部材72bは、互いに交差したときに糸20に接触し、糸20を屈曲させることにより、糸20にテンションを付与する。
【0049】
第1接触部材72aは、ベース70に固定されている。具体的には、第1接触部材72aは、固定部73によってベース70の支持部70aに固定されている。第1接触部材72aは、その一部がベース70の溝部71の上方に位置するように配置されている。
【0050】
第2接触部材72bは、ベース70に対して移動可能に設けられている。第2接触部材72bは、駆動力伝達機構76の第2可動部79(後述)に固定されている。第2接触部材72bは、第2可動部79の移動により、ベース70の支持部70aの面に対して略平行に移動する。具体的には、第2接触部材72bは、第1接触部材72aに近づく方向、及び、第1接触部材72aから遠ざかる方向に移動する。第2接触部材72bは、初期位置が設定されている。図4に示されるように、初期位置は、第2接触部材72bと第1接触部材72aとが離間し、第2接触部材72bが糸20に接触しない位置(糸道から退避した位置)である。
【0051】
モータ74は、接触部72を構成する第2接触部材72bを駆動させる。本実施形態では、モータ74は、ステッピングモータである。モータ74は、ベース70の支持部70aに固定されている。モータ74は、回転軸74aを有している。モータ74の動作は、制御部25により制御される。具体的には、モータ74は、制御部25から出力されるパルス信号に応じて駆動する。
【0052】
駆動力伝達機構76は、モータ74の駆動力を第2接触部材72bに伝達する。駆動力伝達機構76は、カム77と、第1可動部78と、第2可動部79と、付勢部材83(図3参照)と、を有している。カム77、第1可動部78及び第2可動部79は、変換率変更機構を構成している。
【0053】
カム77は、板状の部材である。カム77は、モータ74の回転軸74aに固定されている。カム77は、モータ74の回転軸74aの回転に同期して、時計回り方向及び反時計回り方向に回転する。カム77は、凹部77aを有している。凹部77aは、後述する第2可動部79の当接部78aと係合する。
【0054】
第1可動部78は、固定軸75を中心に揺動可能に設けられている。固定軸75は、支持部70aに固定されている。固定軸75は、支持部70aの面に対して略垂直に立設されている。第1可動部78は、略L字状を呈している。第1可動部78の一端は、固定軸75に挿通されている。第1可動部78の他端には、当接部78aが設けられている。当接部78aは、カム77の側面と当接する。また、当接部78aは、カム77の凹部77aと係合する。当接部78aは、第1可動部78に回転自在に設けられている。第1可動部78は、カム77の回転に応じて揺動する。
【0055】
第2可動部79は、固定軸75を中心に揺動可能に設けられている。第2可動部79は、第1可動部78に固定されている。第2可動部79は、第1可動部78の揺動に同期して揺動する。
【0056】
第2可動部79は、ダンパー80を有している。ダンパー80は、第2接触部材72bに接触する糸20の微弱な振動(ブレ)を吸収する。ダンパー80は、第1ダンパー81と、第2ダンパー82と、を有している。第1ダンパー81は、例えば、ゲルで形成されている。第2ダンパー82は、例えば、ゴムで形成されている。第1ダンパー81と第2ダンパー82とは、互いに当接して並んで配置されている。
【0057】
付勢部材83は、第1可動部78及び第2可動部79が常に一方向に揺動するように付勢する。付勢部材83は、例えば、ばねである。本実施形態では、付勢部材83は、第1可動部78及び第2可動部79が固定軸75を中心に時計回りの方向に揺動するように付勢する。すなわち、付勢部材83は、第2接触部材72bが第1接触部材72aから遠ざかる(離れる)方向に揺動するように付勢する。第1可動部78及び第2可動部79は、付勢部材83によって、揺動範囲が設定されている。具体的には、第1可動部78及び第2可動部79は、第2接触部材72bが初期位置よりも時計回り方向に移動しないように、揺動が規制されている。
【0058】
上記構成を有するテンション付与装置15の動作について説明する。テンション付与装置15は、例えば、ワインダユニット2の電源が投入されると、第2接触部材72bの初期位置を決定する。具体的には、制御部25は、モータ74に所定数のパルス信号を出力し、モータ74の回転軸74aを反時計回り方向に回転させる。回転軸74aが反時計回りに回転すると、第1可動部78の当接部78aは、カム77の凹部77aに位置し、凹部77aと係合する。カム77は、当接部78aと凹部77aとが係合すると、回転が規制される。制御部25は、カム77が機械的な係合に至るに十分な回転指令をモータ74に送ることにより、移動後の第2接触部材72bが所定位置に位置したと判断する。制御部25は、図4に示されるように、第2接触部材72bの所定位置においてモータ74の回転軸74aの回転を停止させる。
【0059】
糸20にテンションを付与するときには、制御部25は、モータ74に所定数のパルス信号を出力し、モータ74の回転軸74aを時計回り方向に回転させる。制御部25から出力されるパルス信号の数は、糸20に付与するテンションに応じて設定される。詳細には、制御部25は、パルス信号の数と糸20に付与されるテンションとが対応づけられたテーブルを記憶している。
【0060】
モータ74が駆動すると、カム77は、回転軸74aの回転に同期して時計回り方向に回転する。これにより、カム77に当接する当接部78aは、カム77に沿って移動し、これに伴い第1可動部78は、反時計回り方向に揺動する。第1可動部78が反時計回りに揺動すると、第2可動部79は、第1可動部78に同期して反時計回りに揺動する。第2接触部材72bは、第2可動部79の揺動に同期して所定位置から移動し、第1接触部材72aに近づいて糸20に接触する。これにより、テンション付与装置15は、糸20にテンション付与する。
【0061】
糸20へのテンションの付与を解除するときには、制御部25は、モータ74に所定数のパルス信号を出力し、モータ74の回転軸74aを反時計回り方向に回転させる。このとき、制御部25から出力されるパルス信号の数は、モータ74の回転軸74aを上記時計回りに方向に回転させるときの数以上である。
【0062】
モータ74が駆動すると、カム77は、回転軸74aの回転に同期して反時計回りに回転する。これにより、カム77に当接する当接部78aは、カム77に沿って移動し、これに伴い第1可動部78は、時計回り方向に揺動する。第1可動部78が時計回りに揺動すると、第2可動部79は、第1可動部78に同期して時計回りに揺動する。当接部78aは、カム77の凹部77aに位置すると、凹部77aと係合する。カム77は、当接部78aと凹部77aとが係合すると、回転が規制される。制御部25は、カム77が機械的な係合に至るに十分な回転指令をモータ74に送ることにより、移動後の第2接触部材72bが所定位置に位置したと判断する。制御部25は、第2接触部材72bの所定位置においてモータ74の回転軸74aの回転を停止させる。
【0063】
以上説明したように、本実施形態に係るテンション付与装置15では、モータ74の駆動力を接触部72に伝達して接触部72を移動させる駆動力伝達機構76は、モータ74の駆動力を接触部72の移動距離に変換する比率を変更する変換率変更機構を備えている。この構成では、変換率変更機構によって、モータ74の限られた回転角度の中で、糸20の張力を調整するために高い分解能で動かしたい領域と、糸20を導入するために素早く且つ大きく開く必要のある領域と、を両立させることができる。詳細には、テンションを微妙に制御するために互い分解能で動かしたい細番手糸用の低テンション領域と、テンションを追随性良く制御するために速い速度で動かしたい太番手糸用の高テンショ領域と、を限られたモータ74の回転角度の中で両立させることができる。したがって、テンション付与装置15は、構成の簡易化及び小型化を図ることができる。
【0064】
本実施形態では、駆動力伝達機構76は、接触部72における第2接触部材72bの初期位置を機械的な係合により決定する。これにより、テンション付与装置15は、第2接触部材72bの初期位置を検出するためのセンサ等を必要としない。したがって、テンション付与装置15は、構成の簡易化及び小型化を図ることができる。
【0065】
本実施形態では、ワインダユニット2は、モータ74の動作を制御する制御部25を備えている。駆動力伝達機構76は、第2接触部材72bの初期位置においてモータ74の回転軸74aの回転を規制し、制御部25は、カム77が機械的な係合に至るに十分な回転指令をモータ74に送ることにより、移動後の第2接触部材72bが初期位置に位置していると判断する。したがって、テンション付与装置15では、駆動力伝達機構76によってモータ74の回転軸74aの回転を規制することにより、第2接触部材72bの初期位置を検出するためのセンサ等を備えなくても、第2接触部材72bの初期位置を決定できる。また、モータ74は、パルス信号によって精度良く制御できる。そのため、テンション付与装置15は、糸20に付与するテンションを精度良く制御することができる。
【0066】
本実施形態では、駆動力伝達機構76の変換率変更機構は、モータ74の回転軸74aに固定されるカム77と、第2接触部材72bに連結され、カム77の動作に応じて第2接触部材72bを移動させる第1可動部78及び第2可動部79と、を有している。カム77は、第2接触部材72bの初期位置において第1可動部78の当接部78aと係合して回転が規制される。この構成では、第2接触部材72bの初期位置においてカム77の回転が規制されるため、第2接触部材72bの初期位置を正確に判断できる。
【0067】
本実施形態では、接触部72は、櫛歯状を呈する第1接触部材72a及び第2接触部材72bを有している。第1接触部材72aは、ベース70の支持部70aに固定されており、第2接触部材72bは、駆動力伝達機構76を介してモータ74により駆動されることにより、第1接触部材72aに近づく方向及び第1接触部材72aから遠ざかる方向に移動する。第1接触部材72a及び第2接触部材72bは、櫛歯状を呈しており、糸道方向に位置をずらして配置されているので、糸20を屈曲させる。これにより、接触部72は、糸20に対して良好に張力を付与できる。また、接触部72は、第1接触部材72aが固定されており、第2接触部材72bが第1接触部材72aに近接及び離間する方向に移動するため、糸20に対して安定的に張力を付与できる。
【0068】
本実施形態では、駆動力伝達機構76は、第2接触部材72bを第1接触部材72aから遠ざける方向に付勢する付勢部材83を有している。これにより、第2接触部材72bの位置を所定位置において維持できる。したがって、糸20にテンションを付与しないときに、第2接触部材72bが糸20に接触することを防止できる。
【0069】
[第2実施形態]
続いて、第2実施形態について説明する。図6図8に示されるように、第2実施形態に係るテンション付与装置90は、ベース(本体部)92と、接触部94と、モータ(駆動部)96と、駆動力伝達機構98と、を備えている。テンション付与装置90は、第1実施形態のテンション付与装置15と同様に、例えば、ワインダユニット2において、第1捕捉部14と、カッタ16との間に配置される。
【0070】
ベース92は、例えば、板状の金属部材により成形されている。ベース92は、例えば、L字状を呈している。ベース92は、支持部92aと、固定部92bと、を有している。支持部92aは、接触部94、モータ96及び駆動力伝達機構98を支持する。支持部92aは、糸20が通過する溝部93を有している。固定部92bは、ワインダユニット2のフレームに固定される。
【0071】
接触部94は、糸道を走行する糸20に接触して糸20にテンションを付与する。接触部94は、第1接触部材94aと、第2接触部材94bと、を有している。第1接触部材94a及び第2接触部材94bのそれぞれは、櫛歯状を呈している。第1接触部材94a及び第2接触部材94bは、例えば、セラミック等の耐摩耗性を有する材料で形成されている。図8に示されるように、第1接触部材94a及び第2接触部材94bは、交差する。第1接触部材94a及び第2接触部材94bは、互いに交差したときに糸20に接触し、糸20を屈曲させることにより、糸20にテンションを付与する。
【0072】
第1接触部材94aは、ベース92に固定されている。具体的には、第1接触部材94aは、固定部95によってベース92の支持部92aに固定されている。第1接触部材94aは、その一部がベース92の溝部93の上方に位置するように配置されている。
【0073】
第2接触部材94bは、ベース92に対して移動可能に設けられている。第2接触部材94bは、駆動力伝達機構98の第2可動部101(後述)に固定されている。第2接触部材94bは、第2可動部101の移動により、ベース92の支持部92aの面に対して略平行に移動する。具体的には、第2接触部材94bは、第1接触部材94aに近づく方向、及び、第1接触部材94aから遠ざかる方向に移動する。第2接触部材94bは、初期位置が設定されている。図7に示されるように、初期位置は、第2接触部材94bと第1接触部材94aとが離間し、第2接触部材94bが糸20に接触しない位置である。
【0074】
モータ96は、接触部94を駆動させる。本実施形態では、モータ96は、ステッピングモータである。モータ96は、ベース92の支持部92aに固定されている。モータ96は、回転軸96aを有している。モータ96の動作は、制御部25により制御される。具体的には、モータ96は、制御部25から出力されるパルス信号に応じて駆動する。
【0075】
駆動力伝達機構98は、モータ96の駆動力を第2接触部材94bに伝達する。駆動力伝達機構98は、カム99と、第1可動部100と、第2可動部101と、付勢部材105と、を有している。
【0076】
カム99は、板状の部材である。カム99は、モータ96の回転軸96aに固定されている。カム99は、モータ96の回転軸96aの回転に同期して、時計回り方向及び反時計回り方向に回転する。カム99は、凸部99aを有している。
【0077】
第1可動部100は、固定軸97を中心に揺動可能に設けられている。固定軸97は、支持部92aに固定されている。固定軸97は、支持部92aの面に対して略垂直に立設されている。第1可動部100の一端は、固定軸97に挿通されている。第1可動部100の他端には、当接部100aが設けられている。当接部100aは、カム99の側面と当接する。当接部100aは、第1可動部100に回転自在に設けられている。第1可動部100は、カム99の回転に応じて揺動する。
【0078】
第2可動部101は、固定軸97を中心に揺動可能に設けられている。第2可動部101は、第1可動部100に固定されている。第2可動部101は、第1可動部100の揺動に同期して揺動する。
【0079】
第2可動部101は、ダンパー102(図7及び図8参照)を有している。ダンパー102は、第2接触部材94bに接触する糸20の振動を吸収する。ダンパー102は、第1ダンパー103と、第2ダンパー104と、を有している。第1ダンパー103は、例えば、ゲルで形成されている。第2ダンパー104は、例えば、ゴムで形成されている。第1ダンパー103と第2ダンパー104とは、互いに当接して並んで配置されている。
【0080】
付勢部材105は、第1可動部100及び第2可動部101が常に一方向に揺動するように付勢する。付勢部材105は、例えば、ばねである。本実施形態では、付勢部材105は、第1可動部100及び第2可動部101が固定軸97を中心に時計回りの方向に揺動するように付勢する。すなわち、付勢部材105は、第2接触部材94bが第1接触部材94aに近づく方向に揺動するように付勢する。第1可動部100及び第2可動部101は、付勢部材105によって、揺動範囲が設定されている。具体的には、第1可動部100及び第2可動部101は、第2接触部材94bが初期位置よりも反時計回り方向に移動しないように、揺動が規制されている。
【0081】
上記構成を有するテンション付与装置90の動作について説明する。テンション付与装置90は、例えば、ワインダユニット2の電源が投入されると、第2接触部材94bの初期位置を決定する。具体的には、制御部25は、モータ96に所定数のパルス信号を出力し、モータ96の回転軸96aを反時計回り方向に回転させる。回転軸96aが反時計回りに回転すると、第1可動部100の当接部100aは、カム99の凸部99aに位置する。カム99は、当接部100aが凸部99aに位置すると、回転が規制される。制御部25は、カム99が機械的な係合に至るに十分な回転指令をモータ796に送ることにより、移動後の第2接触部材94bが所定位置に位置したと判断する。制御部25は、図7に示されるように、第2接触部材94bの所定位置においてモータ96の回転軸96aの回転を停止させる。
【0082】
糸20にテンションを付与するときには、制御部25は、モータ96に所定数のパルス信号を出力し、モータ96の回転軸96aを時計回り方向に回転させる。制御部25から出力されるパルス信号の数は、糸20に付与するテンションに応じて設定される。
【0083】
モータ96が駆動すると、カム99は、回転軸96aの回転に同期して時計回り方向に回転する。これにより、カム99に当接する当接部100aは、カム99に沿って移動し、これに伴い第1可動部100は、時計回り方向に揺動する。第1可動部100が時計回りに揺動すると、第2可動部101は、第1可動部100に同期して時計回りに揺動する。第2接触部材94bは、第2可動部101の揺動に同期して所定位置から移動し、第1接触部材94aに近づいて糸20に接触する。これにより、テンション付与装置90は、糸20にテンション付与する。
【0084】
糸20へのテンションの付与を解除するときには、制御部25は、モータ96に所定数のパルス信号を出力し、モータ96の回転軸96aを反時計回り方向に回転させる。このとき、制御部25から出力されるパルス信号の数は、モータ96の回転軸96aを上記時計回りに方向に回転させるときの数以上である。
【0085】
モータ96が駆動すると、カム99は、回転軸96aの回転に同期して反時計回りに回転する。これにより、カム99に当接する当接部100aは、カム99に沿って移動し、これに伴い第1可動部100は、反時計回り方向に揺動する。第1可動部100が反時計回りに揺動すると、第2可動部101は、第1可動部100に同期して反時計回りに揺動する。当接部100aは、カム99の凸部99aに位置すると、カム99は、回転が規制される。制御部25は、カム99が機械的な係合に至るに十分な回転指令をモータ96に送ることにより、移動後の、第2接触部材94bが所定位置に位置したと判断する。制御部25は、図7に示されるように、第1接触部材94aの所定位置においてモータ96の回転軸96aの回転を停止させる。
【0086】
以上説明したように、本実施形態に係るテンション付与装置90では、モータ96の駆動力を接触部94に伝達して接触部94を移動させる駆動力伝達機構98は、モータ96の駆動力を接触部94の移動距離に変換する比率を変更する変換率変更機構を備えている。この構成では、変換率変更機構によって、モータ96の限られた回転角度の中で、糸20の張力を調整するために高い分解能で動かしたい領域と、糸20を導入するために素早く且つ大きく開く必要のある領域と、を両立させることができる。詳細には、テンションを微妙に制御するために互い分解能で動かしたい細番手糸用の低テンション領域と、テンションを追随性良く制御するために速い速度で動かしたい太番手糸用の高テンショ領域と、を限られたモータ96の回転角度の中で両立させることができる。したがって、テンション付与装置90は、構成の簡易化及び小型化を図ることができる。
【0087】
本実施形態では、駆動力伝達機構98は、接触部94における第2接触部材94bの初期位置を機械的に決定する。これにより、テンション付与装置90は、第2接触部材94bの初期位置を検出するためのセンサ等を必要としない。したがって、テンション付与装置90は、構成の簡易化及び小型化を図ることができる。
【0088】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。
【0089】
上記実施形態では、第1接触部材72a(94a)が固定部73(95)によりベース70(92)の支持部70a(92a)に固定され、第2接触部材72b(94b)が駆動力伝達機構76(98)の第2可動部79(101)によって移動する形態を一例に説明した。しかし、第1接触部材72a(94a)及び第2接触部材72b(94b)の両方が移動する形態であってもよい。
【0090】
上記実施形態では、モータ74,96の動作が制御部25によって制御される形態を一例に説明した。しかし、モータ74,96の動作を制御する制御部を制御部25とは別に備えていてもよい。
【0091】
上記実施形態では、テンション付与装置15,90がワインダユニット2に備えられる形態を一例に説明した。しかし、テンション付与装置15,90は、例えば、紡績ユニットに備えられていてもよい。
【0092】
上記実施形態では、糸貯留装置18を省略し、給糸部6の糸20をパッケージ形成部8で直接巻き取るように構成し、糸20が分断された場合には、パッケージ形成部8から糸20を捕捉して糸継装置13に導入するように構成してもよい。
【0093】
上記実施形態では、給糸部6をトレイ搬送式とする構成に限らず、マガジン式のボビン供給装置から新しい給糸ボビン21の供給を受けるように構成してもよい。この構成において、ボビン供給装置が給糸部6に新しい給糸ボビン21を供給するときに、当該ボビン供給装置が当該給糸ボビン21から糸端を引き出して第1吹送り部11に受け渡すようにすることもできる。この場合、補助吹送り部28を省略することができる。
【0094】
上記実施形態では、パッケージ形成部8の一例として、綾振ドラム24による糸20のトラバースを示したが、これには限定されない。糸20のトラバース方法として、アーム式やベルト式のトラバース機構を採用することもできる。上記実施形態では、ねじりコイルばねを用いたが、種々の弾性部材を用いてもよい。上記実施形態では、チーズ形状のパッケージ30を巻き取ってもよいし、コーン形状のパッケージ30を巻き取ってもよい。各構成の材料及び形状には、上述した材料及び形状に限らず、様々な材料及び形状を採用することができる。
【符号の説明】
【0095】
2…ワインダユニット(糸巻取装置)、6…給糸部、8…パッケージ形成部(巻取部)、15,90…テンション付与装置(張力付与装置)、18…糸貯留装置(糸貯留部)、20…糸、21…給糸ボビン、25…制御部、70,92…ベース(本体部)、72,94…接触部、72a,94a…第1接触部材、72b,94b…第2接触部材、74,96…モータ(駆動部、ステッピングモータ)、76,98…駆動力伝達機構、77,99…カム、78,100…第1可動部、79,101…第2可動部、83,105…付勢部材。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8