【解決手段】上糸YAの糸端と下糸YBの糸端とを継ぐ糸継機構100であって、糸継部50と、下糸YBの糸端を捕捉する吸引口7aを有し、糸継部50の一方側に位置する捕捉位置と糸継部50の他方側に位置する第1位置P1との間で吸引口7aが移動可能に構成された下糸捕捉装置7と、糸継部50の一方側に配置され、糸端を保持する下糸保持部60Bと、糸継部50の他方側であって糸継部50と第1位置P1との間に配置され、糸端を切断する下糸切断部70Bと、少なくとも下糸保持部60Bよりも第1位置P1側において糸端に作用することにより、下糸保持部60Bと下糸切断部70Bとの間の糸端に張力を付加する張力付加機構110と、を備える。
前記糸捕捉装置は、前記第2糸を捕捉する第2糸捕捉装置であり、前記第2糸捕捉装置内に発生する吸引流によって前記糸端を吸引および捕捉する、請求項1〜4のいずれか一項に記載の糸継機構。
前記糸捕捉装置は、前記第1糸を捕捉する第1糸捕捉装置であり、前記第1糸捕捉装置内に発生する吸引流によって前記糸端を吸引および捕捉する、請求項1〜4のいずれか一項に記載の糸継機構。
前記張力付加工程では、前記第1位置にある前記捕捉部を前記保持部から離れる方向に移動させることにより、前記保持部と前記切断部との間の前記糸端に張力を付加する、請求項9に記載の糸継方法。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年、たとえば、スパンデックス(SPANDEX)等のように、伸縮性をもった糸が用いられることがある。これらは、弾性繊維とも呼ばれる。このように伸縮性をもった糸を糸継装置で継ぐ場合、糸捕捉装置によって糸が糸継装置に供給される際に、その糸が伸び縮みし、糸に弛みが発生し易い傾向がある。糸に弛みが発生している状態で糸継ぎを行うと、継目の状態(たとえば、外観または強度等)が不安定になり得る。このように、従来の装置では、糸に弛みが発生した場合、安定した糸継ぎが困難となる。
【0005】
本発明は、糸継ぎ時の糸の弛みをなくすことにより、安定した糸継ぎを可能とする糸継機構、糸巻取装置および糸継方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様は、下流側の第1糸の糸端と上流側の第2糸の糸端とを継ぐ糸継機構であって、第1糸の糸端と第2糸の糸端とを継ぐ糸継部と、第1糸の糸端または第2糸の糸端を捕捉する捕捉部を有し、糸継部の一方側に位置する捕捉位置と糸継部の他方側に位置する第1位置との間で捕捉部が移動可能に構成された糸捕捉装置と、糸継部の一方側に配置され、糸端を保持する保持部と、糸継部の他方側であって糸継部と第1位置との間に配置され、糸端を切断する切断部と、少なくとも保持部よりも第1位置側において糸端に作用することにより、保持部と切断部との間の糸端に張力を付加する張力付加手段と、を備える。
【0007】
この糸継機構によれば、糸捕捉装置によって、第1糸の糸端または第2糸の糸端が捕捉される。糸捕捉装置が第1位置に移動することにより、糸端は、糸継部に供給される。この際に糸に弛みが発生している場合、糸端が保持部によって保持された状態では、その糸端は弛んだままである。そこで、切断部によって糸端が切断されるよりも前に、張力付加手段が、少なくとも保持部よりも第1位置側において糸端に作用する。これによって、保持部と切断部との間の糸端に張力が付加され、糸端の弛みがなくなる。その後、切断部によって糸端が切断されることで、糸端は、保持部と切断部との間の一定の長さに概ね揃えられる。略一定の長さの糸端と他方の糸端とが糸継部によって継がれることにより、安定した糸継ぎが行われる。この点は、スパンデックス等のように伸縮性をもった糸(すなわち弛み易い糸)に対しては、特に有効である。
【0008】
いくつかの態様において、張力付加手段は、糸捕捉装置の動作を制御する制御部を有し、制御部は、糸端が切断部によって切断されるよりも前に、第1位置にある捕捉部を保持部から離れる方向に移動させることにより、保持部と切断部との間の糸端に張力を付加してもよい。この場合、糸端の捕捉および糸継部への糸端の供給のために備わっている糸捕捉装置に追加の動作を行わせるだけで、糸端への張力の付加が可能になる。構成の複雑化を招くことなく、糸継ぎ時の糸の弛みをなくすことができる。
【0009】
いくつかの態様において、制御部は、第1位置よりも保持部から遠い側にある第2位置で捕捉部を停止させてもよい。糸の伸縮性に応じて、糸継部における糸端の弛み具合は変わる。たとえば、糸の伸縮性または巻き取り速度等に応じて、捕捉部を停止させる第2位置を予め設定しておくことにより、弛みの除去が正確に行われる。
【0010】
いくつかの態様構において、糸捕捉装置は、捕捉部に設けられて糸端を保持するクランプ機構を有してもよい。この場合、クランプ機構によって確実に糸端を保持することができる。一方で、張力付加手段が糸端に作用する際にも、糸端が捕捉部から引っ張り出されることが防止され、糸端に対する張力の付加が適切に行われる。
【0011】
いくつかの態様において、糸捕捉装置は、第2糸を捕捉する第2糸捕捉装置であり、第2糸捕捉装置内に発生する吸引流によって糸端を吸引および捕捉してもよい。第2糸捕捉装置の配管径が小さく、吸引力が比較的小さい場合には、糸に弛みが発生し易い。第2糸に対して張力付加手段を適用することで、安定した糸継ぎが可能である。この点は、スパンデックス等のように伸縮性をもった糸に対しては、特に有効である。
【0012】
いくつかの態様において、糸捕捉装置は、第1糸を捕捉する第1糸捕捉装置であり、第1糸捕捉装置内に発生する吸引流によって糸端を吸引および捕捉してもよい。第1糸捕捉装置の吸引力が比較的小さい場合には、第1糸に対して張力付加手段を適用することで、安定した糸継ぎが可能である。
【0013】
本発明の他の態様は、上記の糸継機構と、糸を供給可能な給糸部と、糸を巻き取る巻取部と、を備える糸巻取装置である。この場合、安定した糸継ぎを可能とする糸巻取装置が提供される。
【0014】
いくつかの態様において、糸巻取装置は、給糸部に対して設けられ、給糸部からの糸の解舒を抑制する解舒抑制部材を更に備えてもよい。解舒抑制部材は、比較的弱い力で糸を押さえている。よって、スパンデックス等のように伸縮性をもった糸は、解舒抑制部材が設けられている場合でも弛み易い。伸縮性をもった糸に対しては、張力付加手段による弛みの除去は特に有効である。
【0015】
本発明の更に他の態様は、下流側の第1糸の糸端と上流側の第2糸の糸端とを、糸継部を用いて継ぐ糸継方法であって、第1糸の糸端または第2糸の糸端を捕捉する捕捉部を有する糸捕捉装置が、糸継部の一方側に位置する捕捉位置で糸端を捕捉する捕捉工程と、糸捕捉装置が、捕捉部に糸端を捕捉した状態で、糸継部の他方側に位置する第1位置に移動する移動工程と、糸継部の一方側に配置された保持部が、糸端を保持する保持工程と、少なくとも保持部よりも第1位置側において糸端に作用し、保持部と切断部との間の糸端に張力を付加する張力付加工程と、糸継部と第1位置との間に配置された切断部によって糸端を切断する切断工程と、を含む。
【0016】
この糸継方法によれば、上述した糸継機構と同様の理由により、保持部と切断部との間の糸端に張力が付加され、糸端の弛みがなくなる。その後、切断部によって糸端が切断されることで、糸端は、保持部と切断部との間の一定の長さに概ね揃えられる。略一定の長さの糸端と他方の糸端とが糸継部によって継がれることにより、安定した糸継ぎが行われる。
【0017】
いくつかの態様において、張力付加工程では、第1位置にある捕捉部を保持部から離れる方向に移動させることにより、保持部と切断部との間の糸端に張力を付加してもよい。この場合、糸端の捕捉および糸継部への糸端の供給のために備わっている糸捕捉装置に追加の動作を行わせるだけで、糸端への張力の付加が可能になる。構成の複雑化を招くことなく、糸継ぎ時の糸の弛みをなくすことができる。
【0018】
いくつかの態様において、張力付加工程では、第1位置よりも保持部から遠い側にある第2位置まで捕捉部を移動させてもよい。糸の伸縮性に応じて、糸継部における糸端の弛み具合は変わる。たとえば、糸の伸縮性または巻き取り速度等に応じて、捕捉部を第2位置まで移動させることにより、弛みの除去が正確に行われる。
【発明の効果】
【0019】
本発明のいくつかの態様によれば、糸継時の糸の弛みをなくすことにより、安定した糸継を可能とする。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しながら説明する。なお、図面の説明において同一要素には同一符号を付し、重複する説明は省略する。
【0022】
初めに、
図1を参照して、本実施形態の糸継装置10を備えるワインダユニット(糸巻取装置)1の全体的な構成について説明する。なお、本明細書において「上流」及び「下流」とは、糸巻取時での糸の走行方向における上流及び下流を意味する。
【0023】
図1に示されるように、ワインダユニット1は、給糸ボビンBからパッケージPに糸Yを巻き取る。給糸ボビンBは、前工程の精紡機で形成され、例えば、トレーにセットされた状態で精紡機から搬送される。なお、複数のワインダユニット1が並設されることにより、繊維機械である自動ワインダが構成されている。
【0024】
ワインダユニット1には、ボビン支持部(給糸部)2、糸解舒補助装置3、プレクリアラ4、テンション付与装置5、テンションセンサ6、下糸捕捉装置(第2捕捉装置)7、糸継装置10、カッター9、糸監視装置11、上糸捕捉装置(第1捕捉装置)12及び巻取装置(巻取部)13が、糸Yの走行経路に沿って上流側(ここでは、下側)からこの順序で設けられている。これらの各構成は、ユニット本体部8に取り付けられている。
【0025】
ボビン支持部2は、給糸ボビンBを直立させた状態で支持し、糸Yを供給可能にする。糸解舒補助装置3は、給糸ボビンBの上方に配置された筒状部材によって、給糸ボビンBから解舒された糸Yのバルーンを制御する。テンション付与装置5は、櫛歯状の固定ゲート及び可動ゲートからなる一対のゲートによって糸Yをジグザグ状に保持することで、走行する糸Yに所定テンションを付与するゲート式テンサである。テンションセンサ6は、テンション付与装置5によって付与された糸Yのテンションを測定する。
【0026】
図6に示されるように、ボビン支持部2には、キンクプリベンター3A(解舒抑制部材)が設けられている。キンクプリベンター3Aは、給糸ボビンBに接触して解舒抵抗を与える部材(例えばブラシ状の部材)を備えている。キンクプリベンター3Aは、下糸捕捉装置7が給糸ボビンBの糸Yを吸引して給糸ボビンBから糸Yを解舒するときに、糸Yが解舒され過ぎるのを防止する。なお、
図1では、キンクプリベンター3Aの図示は省略されている。
【0027】
図1に示されるように、プレクリアラ4は、糸Yの走行経路を挟んで所定間隔で配置された一対の規制部材によって、規定値よりも大きい絡み糸等の糸欠陥の通過を規制する。糸監視装置11は、糸Yの巻取中にスラブ等の糸欠陥を検出する。カッター9は、糸監視装置11によって糸欠陥が検出されたときに、糸Yを切断する。糸継装置10は、カッター9による糸Yの切断時、或いは糸Yの糸切れ時等に、パッケージP側の糸Yの糸端と給糸ボビンB側の糸Yの糸端とを圧縮空気の作用により継ぐ。
【0028】
下糸捕捉装置7は、糸継装置10の下側に設けられており、給糸ボビンB側の糸Yの糸端を捕捉して糸継装置10に案内する。下糸捕捉装置7は、軸線αを中心として回動可能にユニット本体部8に取り付けられている。下糸捕捉装置7は、中継ぎパイプ7bと、中継ぎパイプ7bの先端(回動端)に設けられた吸引口(捕捉部)と、
図4(a)及び
図4(b)に示されるように、吸引口7aを開閉するクランプカバー(クランプ機構)35と、を有している。中継ぎパイプ7bは、たとえばステッピングモータからなる駆動源によって、回動させられる。中継ぎパイプ7bには、適宜の負圧源が接続されている。中継ぎパイプ7bおよび吸引口7aに発生する吸引流により、下糸捕捉装置7は、給糸ボビンB側の糸Yの糸端を吸引捕捉する。
【0029】
吸引口7aは、糸継装置10の上部とプレクリアラ4の下部との間で回動させられる。プレクリアラ4の下部側に吸引口7aが待機しており、下糸捕捉装置7は、カッター9による糸Yの切断時、或いは糸Yの糸切れ時等に吸引口7aで給糸ボビンB側の糸Yの糸端を吸引し、その後、糸継装置10の上部側に吸引口7aを回動させて給糸ボビンB側の糸Yを糸継装置10に引き渡す。
【0030】
図4(b)に示されるように、中継ぎパイプ7bの先端には、吸引口7aを開閉するクランプカバー35が設けられている。クランプカバー35は、吸引口7aとの対向部であるクランプ部35Aが吸引口7aを閉じるように図示しないバネ等により付勢されている。この構成により、クランプカバー35は、通常、吸引口7aを閉じる状態となる。なお、本実施形態においては、張力付加工程(詳しくは後述)において引っ張られる糸Yをしっかりと把持する必要がある。このため、当該張力に耐え得るバネ定数のバネが使用される。
【0031】
図4(a)に示されるように、中継ぎパイプ7bが最下点に位置した際に、オープナーカム69Bが、クランプカバー35に形成された突起部35Bに作用する。これにより、クランプカバー35は、吸引口7aを開ける方向に回動させられる。なお、オープナーカム69Bは、ユニット本体部8に取付部69Aを介して固定されている。また、
図4(a)は、中継ぎパイプ7bが最下点に位置した状態を示しているが、最上点(後述の第3位置)に位置したときも同様の機構により吸引口7aが開けられる。このような下糸捕捉装置7の構成によって、給糸ボビンB側の糸を吸引捕捉し、把持した状態で中継ぎパイプ7bを回動させることにより、糸継装置10に給糸ボビンB側の糸を引き渡す。
【0032】
図1に示されるように、上糸捕捉装置12は、糸継装置10の上側に設けられており、パッケージP側の糸Yの糸端を捕捉して糸継装置10に案内する。上糸捕捉装置12は、軸線βを中心として回動可能にユニット本体部8に取り付けられている。上糸捕捉装置12は、サクションマウス12bと、サクションマウス12bの先端(回動端)に設けられた吸引口12aと、を有している。サクションマウス12bは、たとえばステッピングモータからなる駆動源によって、回動させられる。サクションマウス12bには、適宜の負圧源が接続されている。サクションマウス12bおよび吸引口12aに発生する吸引流により、上糸捕捉装置12は、パッケージP側の糸Yの糸端を吸引捕捉する。
【0033】
吸引口12aは、糸継装置10の下部と巻取装置13との間で回動させられる。上糸捕捉装置12は、カッター9による糸Yの切断時、或いは糸Yの糸切れ時等に、巻取装置13側に吸引口12aを回動させて吸引口12aでパッケージP側の糸Yの糸端を吸引し、その後、糸継装置10の下部側に吸引口12aを回動させてパッケージP側の糸Yを糸継装置10に引き渡す。
【0034】
本実施形態の下糸捕捉装置7および上糸捕捉装置12では、共通の負圧源が用いられている。下糸捕捉装置7における吸引力は、上糸捕捉装置12における吸引力よりも小さくなっている。これは、サクションマウス12bにおける配管径よりも、中継ぎパイプ7bにおける配管径の方が小さいことに起因する。この配管径の違いに起因して、中継ぎパイプ7bでは、管摩擦の影響が大きくなり圧力損失が生じる。その結果、中継ぎパイプ7bにおける流速は、サクションマウス12bにおける流速よりも低下する。
【0035】
巻取装置13は、給糸ボビンBから解舒された糸YをパッケージPに巻き取って満巻のパッケージPを形成する。巻取装置13は、ドラム溝14aが形成された巻取ドラム14、及びパッケージPを回転可能に支持するクレードル15を有している。クレードル15は、パッケージPの表面を巻取ドラム14の表面に対して適切な接圧で接触させる。巻取装置13は、モータで巻取ドラム14を駆動回転させてパッケージPを従動回転させることにより、糸Yを所定幅で綾振りしつつ糸YをパッケージPに巻き取っていく。
【0036】
ユニット本体部8には、制御部16、入力部17及び表示部18が設けられている。制御部16は、例えば、CPUと、RAMと、ROMと、I/Oポートと、通信ポートと、を有している。上記ROMには、ワインダユニット1の各構成を制御するためのプログラムが記録されている。制御部16は、自動ワインダが備える上位制御部との間で、ワインディング動作に関する種々の情報を送受信する。上位制御部は、各ワインダユニット1の制御部16を統制し、自動ワインダの全体を制御する。制御部16は、ワインダユニット1の各構成を制御する。入力部17は、例えば操作ボタン等であり、オペレータが制御部16に対して種々の値を設定する際等に使用される。表示部18は、ワインダユニット1の動作状況等を表示する。
【0037】
次に、糸継装置10の構成について説明する。なお、以下の説明では、便宜上、パッケージP側を上側、給糸ボビンB側を下側、糸継装置10に対して糸Yの走行経路側を前側、その反対側を後側という。また、パッケージP側の糸Yを上糸(下流側の第1糸)YAといい、給糸ボビンB側の糸Yを下糸(上流側の第2糸)YBという。
【0038】
図2に示されるように、糸継装置10は、解撚部40と、糸継部50と、一対の糸寄せレバー81と、一対の撚り止めレバー82と、を備えている。解撚部40は、第1解撚部41A及び第2解撚部41Bを有している。第1解撚部41A及び第2解撚部41Bは、それぞれ、上糸YAおよび下糸YBを取り込むためのパイプ部材を含んでいる。一対の糸寄せレバー81は、第1解撚部41A及び第2解撚部41Bを挟むように旋回する。一対の撚り止めレバー82は、糸継部50を挟むように旋回する。糸継装置10は、その各構成を支持する本体フレーム(本体部)20を介してユニット本体部8に取り付けられている。
【0039】
第1解撚部41A及び第2解撚部41Bの上側には、第1ガイド板21が配置されている。第1解撚部41A及び第2解撚部41Bの下側には、第2ガイド板22が配置されている。第1ガイド板21と第2ガイド板22とは、上下方向において糸継部50を挟んで対向している。第1ガイド板21には、ガイド溝21A及びガイド溝21Bが形成されている。第2ガイド板22には、ガイド溝22A及びガイド溝22Bが形成されている。第1ガイド板21のガイド溝21Aは、上下方向において第2ガイド板22のガイド溝22Aと対向している。第1ガイド板21のガイド溝21Bは、上下方向において第2ガイド板22のガイド溝22Bと対向している。
【0040】
上下方向において対向するガイド溝21A及びガイド溝22Aには、上糸捕捉装置12によって案内されて糸寄せレバー81によって引き寄せられた上糸YAが導入される。上下方向において対向するガイド溝21B及びガイド溝22Bには、下糸捕捉装置7によって案内されて糸寄せレバー81によって引き寄せられた下糸YBが導入される。
【0041】
第1ガイド板21の上側には、上糸保持部60Aが設けられており、第1ガイド板21の下側には、下糸切断部70Bが設けられている。第2ガイド板22の下側には、下糸保持部60Bが設けられており、第2ガイド板22の上側には、上糸切断部70Aが設けられている。上糸保持部60Aは、ガイド溝21Aに導入された上糸YAを保持する(或いは把持する)。上糸切断部70Aは、上糸保持部60Aによって上糸YAが保持された状態で、ガイド溝22Aに導入された上糸YAを切断する。下糸保持部60Bは、ガイド溝22Bに導入された下糸YBを保持する(或いは把持する)。下糸切断部70Bは、下糸保持部60Bによって下糸YBが保持された状態で、ガイド溝21Bに導入された下糸YBを切断する。
【0042】
第1解撚部41Aは、上糸保持部60Aによって上糸YAが保持された状態で、上糸切断部70Aによって切断された上糸YAの糸端を取り込んで解撚する。第2解撚部41Bは、下糸保持部60Bによって下糸YBが保持された状態で、下糸切断部70Bによって切断された下糸YBの糸端を取り込んで解撚する。
【0043】
糸継部50は、第1解撚部41Aによって解撚された上糸YAの糸端と、第2解撚部41Bによって解撚された下糸YBの糸端とを撚り合わせることで、上糸YAの糸端と下糸YBの糸端とを継ぐ。糸継部50において糸端同士を撚り合わせる際には、上糸YAは、上糸保持部60Aによって保持されており、下糸YBは、下糸保持部60Bによって保持されている。そして、糸寄せレバー81によって上糸YAの糸端が第1解撚部41Aから引き出されると共に下糸YBの糸端が第2解撚部41Bから引き出され、撚り止めレバー82によって上糸YAの糸端の先端部分及び下糸YBの糸端の先端部分が糸継部50の近傍において配置される。
【0044】
図2及び
図3に示されるように、本体フレーム20には、一対の糸寄せレバー81及び一対の撚り止めレバー82の共通の駆動源として、駆動モータ23が取り付けられている。駆動モータ23は、例えばステッピングモータである。駆動モータ23の駆動軸24には、アーム25が固定されている。アーム25には、連結部材26の後端部が回転可能に連結されている。連結部材26の前端部には、糸寄せレバー81の基端部が回転可能に連結されている。糸寄せレバー81は、本体フレーム20に固定された支持軸27に回転可能に支持されている。
【0045】
図2及び
図3に示されるように、支持軸27には、撚り止めレバー82が回転可能に支持されている。撚り止めレバー82は、支持軸27に回転可能に取り付けられたねじりコイルばね28によって第1解撚部41A及び第2解撚部41B側に付勢されている。これにより、撚り止めレバー82は、糸寄せレバー81と共に第1解撚部41A及び第2解撚部41B側に回動させられる。ただし、撚り止めレバー82の基端部に螺合されたストッパボルト(図示しない)の先端部が本体フレーム20の一部に接触した後は、糸寄せレバー81のみが第1解撚部41A及び第2解撚部41B側に回動させられる。
【0046】
本体フレーム20には、上糸保持部60A、下糸保持部60B、上糸切断部70A、および下糸切断部70Bの共通の駆動源として、駆動モータ31が取り付けられている。駆動モータ31は、例えばステッピングモータである。上糸保持部60A及び下糸切断部70Bには、第1伝達機構90Aが連結されている。下糸保持部60B及び上糸切断部70Aには、第2伝達機構90Bが連結されている。
【0047】
図3に示されるように、第1伝達機構90Aは、第1アーム91A及び第1連結部材92Aを含んでおり、駆動モータ31の第1駆動軸部32Aから上糸保持部60A及び下糸切断部70Bに駆動力を伝達する。第1駆動軸部32Aには、第1アーム91Aが固定されている。第1アーム91Aには、第1連結部材92Aの後端部が回転可能に連結されている。
【0048】
図2に示されるように、下糸切断部70Bは、固定片71及び可動片72を有している。固定片71は、第1ガイド板21に固定されている。可動片72は、第1ガイド板21に固定された支持軸(図示せず)に回転可能に支持されている。第1連結部材92Aの前端部は、可動片72の基端部から延在するアーム(図示せず)に回転可能に連結されている。上糸保持部60Aは、ベース部材61及びサブ部材62を有している。上糸保持部60Aでは、ベース部材61とサブ部材62とで上糸YAが保持される。
【0049】
図3に示されるように、第2伝達機構90Bは、第2アーム91B及び第2連結部材92Bを含んでおり、駆動モータ31の第2駆動軸部32Bから下糸保持部60B及び上糸切断部70Aに駆動力を伝達する。第2駆動軸部32Bには、第2アーム91Bが固定されている。第2アーム91Bには、第2連結部材92Bの後端部が回転可能に連結されている。
【0050】
図2に示されるように、上糸切断部70Aの構成は、前側から見た場合に、糸継部50を中心として下糸切断部70Bの構成と点対称の関係にある。同様に、下糸保持部60Bの構成は、前側から見た場合に、糸継部50を中心として上糸保持部60Aの構成と点対称の関係にある。
【0051】
本実施形態のワインダユニット1は、たとえばスパンデックス等のように、伸縮性をもった糸Yを巻き取るのに適した構成とされている。特に、ワインダユニット1は、糸継装置10の糸継部50における糸継ぎ時に、下糸YBの弛みを防止する糸継機構100を備えている。以下、糸継機構100について説明する。
【0052】
糸継機構100は、上記した糸継装置10と、下糸捕捉装置7と、上糸捕捉装置12とを備えている。糸継装置10は、糸継部50と、糸継部50の上方に配置された上糸保持部60Aおよび下糸切断部70Bと、糸継部50の下方に配置された下糸保持部60Bおよび上糸切断部70Aと、を有する。糸継機構100は、さらに、糸継ぎ時に下糸YBの糸端に対して張力を付加する張力付加機構(張力付加手段)110を備えている。張力付加機構110は、下糸捕捉装置7の回動動作を制御する制御部16の機能を含む。
【0053】
下糸捕捉装置7は、制御部16によって制御されることにより回動し、吸引口7aが少なくとも4つの位置で停止する。具体的には、吸引口7aは、糸継部50の下方に位置する捕捉位置と、糸継部50の上方に位置する第1位置P1との間で移動可能になっている。この第1位置P1は、糸継ぎ時に下糸YBを下糸保持部60Bによって保持するタイミングに対応する吸引口7aの位置である。吸引口7aは、第1位置P1よりも更に上方の(すなわち下糸保持部60Bから遠い)第2位置P2に移動可能になっている。この第2位置P2は、糸継ぎ時に下糸YBに張力を付加するタイミングに対応する吸引口7aの位置である。さらに、吸引口7aは、第2位置P2よりも更に上方の(すなわち下糸保持部60Bから遠い)第3位置P3に移動可能になっている。この第3位置P3は、上記したクランプカバー35が吸引口7aを開けるタイミングに対応する吸引口7aの位置である。
【0054】
このように、制御部16は、中継ぎパイプ7bを回動および上昇させる際、吸引口7aが第1位置P1、第2位置P2および第3位置P3の3段階の位置で停止するよう、下糸捕捉装置7を制御する。特に、吸引口7aが第1位置P1から第2位置P2へ移動する間には、下糸切断部70Bによる下糸YBの切断は、行われない。吸引口7aが第2位置P2に到達した後に、下糸切断部70Bによる下糸YBの切断が行われる。
【0055】
次に、
図5および
図6以降を参照して、糸継機構100の動作(すなわち、糸継機構100において実施される糸継方法)について説明する。以下の各動作は、制御部16に格納されたプログラムに基づいて、制御部16によって制御される。
【0056】
まず、糸欠陥検出時にカッター9によって糸Yが切断されたり、或いは過剰張力によって糸Yの糸切れが発生したりすると(ステップS01)、上糸捕捉装置12及び下糸捕捉装置7によって糸継装置10に上糸YA及び下糸YBが案内される。より具体的には、下方の捕捉位置にある中継ぎパイプ7bは、吸引口7aによって下糸YBの糸端を捕捉する(ステップS02;捕捉工程)。
【0057】
次に、
図6に示されるように、サクションマウス12bは上昇し、吸引口12aによって、パッケージP側の上糸YAの糸端を捕捉する(ステップS03)。次に、
図7(a)に示されるように、サクションマウス12bは、上糸YAの糸端を吸引保持したまま下降し、糸継装置10の糸継部50に上糸YAの糸端を供給する(ステップS04)。このとき、サクションマウス12bが十分な吸引力を有していることにより、上糸YAに弛みは発生していない。
【0058】
次に、捕捉位置において下糸YBの糸端をクランプ保持している中継ぎパイプ7bは、下糸YBの糸端をクランプ保持したまま上昇し、糸継部50の上方の第1位置P1(
図8(a)参照)に吸引口7aを移動させる(第1上昇工程;移動工程)。これにより、糸継装置10の糸継部50に下糸YBの糸端を供給する(ステップS05)。このとき、中継ぎパイプ7bが下糸YBの糸端をクランプ保持しているため、下糸YBに弛みが発生してもその弛みを吸引により除去することはできない。しかも、ボビン支持部2に設けられたキンクプリベンター3Aは、ボビン先端の一部に接触しているのみなので、中継ぎパイプ7bの上昇に伴い発生した下糸YBの弛みを解消することができない。したがって、
図7(b)に示されるように、下糸YBに弛みが発生した状態のまま、下糸捕捉装置7は糸継装置10に下糸YBを供給する。
【0059】
次に、糸寄せレバー81が第1解撚部41A及び第2解撚部41B側に旋回することにより、上糸捕捉装置12によって案内された上糸YAの糸端、及び、下糸捕捉装置7によって案内された下糸YBの糸端が、第1解撚部41A及び第2解撚部41B側に引き寄せられる。これにより、上糸YAの糸端は、第1ガイド板21のガイド溝21A、第2ガイド板22のガイド溝22A、及び糸継部50の糸継ノズル51に導入される。同様に、下糸YBの糸端は、第1ガイド板21のガイド溝21B、第2ガイド板22のガイド溝22B、及び糸継部50の糸継ノズル51に導入される。なお、上糸YAの糸端及び下糸YBの糸端は、糸継ノズル51への導入において、ガイド傾斜部53を介して収容部52に配置される。
【0060】
続いて、第1ガイド板21のガイド溝21Aに導入された上糸YAの糸端は、ガイド溝21A近傍において上糸保持部60Aによって保持される(ステップS06)。同様に、第2ガイド板22のガイド溝22Bに導入された下糸YBの糸端は、ガイド溝22B近傍において下糸保持部60Bによって保持される(ステップS06;保持工程)。なお、
図8(a)において、上糸保持部60Aおよび下糸保持部60Bが保持状態にあることを示すために、これらは黒く塗りつぶされている。
図8(b)および
図10(a)に関しても同様である。
【0061】
図8(a)および
図9(a)に示されるように、吸引口7aのクランプカバー35と下糸保持部60Bとによって下糸YBを機械的に保持した状態で、下糸YBの糸端には、弛みが発生している。この時点で、制御部16は、上糸切断部70Aおよび下糸切断部70Bによる切断工程に移行するのではなく、以下の張力付加工程を実施する。
【0062】
図8(b)に示されるように、制御部16は、中継ぎパイプ7bを更に上昇させ、第1位置P1にある吸引口7aを下糸保持部60Bから離れる方向に移動させる(ステップS07;第2上昇工程すなわち張力付加工程)。より具体的には、制御部16は、追加の回動角度θ1だけ中継ぎパイプ7bを回動させ、第1位置P1よりも下糸保持部60Bから遠い側にある第2位置P2で吸引口7aを停止させる。これにより、下糸YBの糸端に張力が付加され、下糸保持部60Bよりも上方の領域において、下糸YBの弛みがなくなる。言い換えれば、張力付加機構110は、少なくとも下糸保持部60Bよりも第1位置P1側(より具体的には下糸切断部70Bよりも第1位置P1側)において、下糸YBの糸端に作用する。張力付加機構110は、下糸YBを引っ張り上げる。なお、下糸保持部60Bよりも下方の領域においては、下糸YBに弛みは発生したままである。
【0063】
このように、張力付加機構110は、中継ぎパイプ7bに追加の回動動作を行わせる、制御部16の機能の一部を含んでいる。張力付加工程における追加の回動角度θ1は、糸Yの伸縮性または巻き取り速度等に対して想定される弛みの量に基づき、予め設定されている。このような追加の回動動作は、たとえば、ステッピングモータにおける回転量および回転速度をプログラムごとに決定することにより制御され得る。
【0064】
張力付加工程の実施後は、
図9(b)に示されるように、下糸YBの糸端は、ガイド溝22Bと、糸継部50の収容部52と、ガイド溝21Bとによって規制されており、これらの間で略直線状に延びている。したがって、下糸保持部60Bから下糸切断部70Bまでの下糸YBの長さが一定の長さに制御されている。なお、ガイド溝21Aと、糸継部50の収容部52と、ガイド溝22Aとによって規制された上糸YAに関しても、同様に、上糸保持部60Aから上糸切断部70Aまでの長さが一定の長さになっている。
【0065】
続いて、
図10(a)に示されるように、糸継工程は再開され、第2ガイド板22のガイド溝22Aに導入された上糸YAの糸端は、上糸保持部60Aによって保持された状態で、ガイド溝22A近傍において上糸切断部70Aによって切断される(ステップS08)。同様に、第1ガイド板21のガイド溝21Bに導入された下糸YBの糸端は、下糸保持部60Bによって保持された状態で、ガイド溝21B近傍において下糸切断部70Bによって切断される((ステップS08;切断工程)。なお、
図10(a)において、上糸切断部70Aおよび下糸切断部70Bが切断状態にあることを示すために、これらは黒く塗りつぶされている。
【0066】
続いて、第1解撚部41Aが解撚用エアーを噴射することにより、上糸切断部70Aによって切断された上糸YAの糸端は、上糸保持部60Aによって保持された状態で、第1解撚部41Aによって取り込まれて解撚される。同様に、第2解撚部41Bが解撚用エアーを噴射することにより、下糸切断部70Bによって切断された下糸YBの糸端は、下糸保持部60Bによって保持された状態で、第2解撚部41Bによって取り込まれて解撚される。糸寄せレバー81が第1解撚部41A及び第2解撚部41B側に更に旋回することにより、上糸YAの糸端が第1解撚部41Aから引き出されると共に、下糸YBの糸端が第2解撚部41Bから引き出される。そして、糸寄せレバー81と共に旋回した撚り止めレバー82によって、上糸YAの糸端の先端部分及び下糸YBの糸端の先端部分が糸継部50近傍において押さえられる。続いて、糸継部50が収容部52内に噴射孔から糸継用エアーを噴射することにより、第1解撚部41Aによって解撚された上糸YAの糸端と、第2解撚部41Bによって解撚された下糸YBの糸端とが撚り合わされる(ステップS09;糸継工程)。このとき、上糸YAの糸端は、上糸保持部60Aによって保持された状態にあり、下糸YBの糸端は、下糸保持部60Bによって保持された状態にある。それぞれ、保持部60A,60Bを基準として一定の長さになっている上糸YAの糸端と下糸YBの糸端とが、解撚および糸継ぎされるため、外観または強度等といった、継目の状態が安定する。
【0067】
続いて、
図10(b)に示されるように、制御部16は、中継ぎパイプ7bを更に上昇させ、第2位置P2にある吸引口7aを下糸切断部70Bから更に離れる方向に移動させる(ステップS10;第3上昇工程)。より具体的には、制御部16は、追加の回動角度θ2だけ中継ぎパイプ7bを回動させ、第3位置P3で停止させる。これにより、ユニット本体部8に対して固定されたストッパ120にクランプカバー35が当接して、クランプカバー35は吸引口7aを開ける。吸引口7aが開放されることにより、下糸YBの糸端の残り(
図10(a)参照)は吸引除去される。
【0068】
そして、糸寄せレバー81及び撚り止めレバー82が逆方向に旋回すると共に、上糸保持部60A及び下糸保持部60Bが保持を開放する。これにより、上糸YAの糸端と下糸YBの糸端とが継がれることで繋ぎ合わされた糸Yは、糸継装置10の前側の糸道上に復帰する。
【0069】
以上説明した糸継機構100および糸継方法によれば、下糸捕捉装置7によって、下糸YBの糸端が捕捉される。下糸捕捉装置7が第1位置P1に移動することにより、糸端は、糸継部50に供給される。この際に下糸YBに弛みが発生している場合、糸端が下糸保持部60Bによって保持された状態では、その糸端は弛んだままである(
図8(a)および
図9(a)参照)。そこで、下糸切断部70Bによって糸端が切断されるよりも前に、張力付加機構110が、少なくとも下糸保持部60Bよりも第1位置P1側において糸端に作用する。具体的には、下糸YBを引っ張り上げる。これによって、下糸保持部60Bと下糸切断部70Bとの間の糸端に張力が付加され、糸端の弛みがなくなる(
図8(b)および
図9(b)参照)。その後、下糸切断部70Bによって下糸YBの糸端が切断されることで、糸端は、下糸保持部60Bと下糸切断部70Bとの間の一定の長さに概ね揃えられる。略一定の長さの下糸YBの糸端と、略一定の長さの上糸YAの糸端とが糸継部50によって継がれることにより、安定した糸継ぎが行われる。この点は、スパンデックス等のように伸縮性をもった糸Y(すなわち弛み易い糸)に対しては、特に有効である。
【0070】
上記特許文献1の糸継装置のような従来の装置によっても、伸縮性の低い糸であれば、問題のない糸継ぎが可能と考えられる。しかしながら、伸縮性の大きい糸に対しては、従来の装置では、安定した糸継ぎは困難である。本実施形態の糸継機構100は、安定した糸継ぎの観点で有利な効果を発揮する。
【0071】
糸継機構100では、糸端の捕捉および糸継部50への糸端の供給のために備わっている下糸捕捉装置7に追加の動作を行わせるだけで、糸端への張力の付加が可能になっている。したがって、構成の複雑化を招くことなく、糸継ぎ時の下糸YBの弛みをなくすことができる。
【0072】
糸継機構100では、制御部16は、第2位置P2で吸引口7aを停止させている。糸の伸縮性に応じて、糸継部50における糸端の弛み具合は変わる。たとえば、糸の伸縮性または巻き取り速度等に応じて、吸引口7aを第2位置P2まで移動させることにより、弛みの除去が正確に行われる。また、吸引口7aを停止させる第2位置P2を予め設定しておくことにより、弛みの除去が正確に行われる。
【0073】
下糸捕捉装置7は、吸引口7aに設けられたクランプカバー35を有しているので、クランプカバー35によって確実に下糸YBの糸端を保持することができる。一方で、張力付加機構110が下糸YBの糸端に作用する際にも、その糸端が吸引口7aから引っ張り出されることが防止され、糸端に対する張力の付加が適切に行われる。
【0074】
糸継機構100では、中継ぎパイプ7b内に発生する吸引流によって糸端を吸引および捕捉している。中継ぎパイプ7bの配管径が小さく、吸引力が比較的小さい場合には、下糸YBに弛みが発生し易いが、下糸YBに対して張力付加機構110を適用することで、安定した糸継ぎが可能になっている。この点は、スパンデックス等のように伸縮性をもった糸に対し、特に有効である。
【0075】
糸継機構100を備えるワインダユニット1によれば、安定した糸継ぎが可能になっている。
【0076】
ワインダユニット1には、ボビン支持部2に対してキンクプリベンター3Aが設けられている。キンクプリベンター3Aは、比較的弱い力で糸を押さえており、かつ給糸ボビンBの一部のみに接触しているため、スパンデックス等のように伸縮性をもった糸は、弛み易くなっている。伸縮性をもった糸に対しては、張力付加機構110による弛みの除去は特に有効である。
【0077】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上記の実施形態に限られない。たとえば、上記実施形態では、張力付加手段として、糸捕捉装置に追加の動作(更なる回動動作)を行わせることによって糸端に張力を付加する機構を例示したが、他の機構を用いてもよい。たとえば、保持部よりも第1位置側において、糸端に対して、糸道に交差する方向に外力を付加してもよい。この場合、たとえばアクチュエータによって移動させられる棒状部材を用い、糸道に交差する面内で棒状部材を移動させることにより、糸端をガイド板に押し当てる方向に押し込んでもよい。糸継装置の外部(保持部と切断部との間の範囲外)で糸端が押し込まれる場合、保持部よりも第1位置側における糸端の全体に張力が作用し、糸継部に対面する糸端部分に張力が伝達される。その際、当該糸端部分は直線状に延びるため、糸端部分の寸法変化はほとんど無い。
【0078】
第1上昇工程後、糸端の切断までに第2位置で停止させなくてもよい。第1上昇工程中の適当なタイミング(このとき糸捕捉装置は動いている)で、切断部によって糸端を切断し、第3位置まで移動させてもよい。すなわち、糸捕捉装置は、第1位置から第3位置まで、停止することなく連続的に移動してもよい。
【0079】
中継ぎパイプはクランプ機構を有さなくてもよい。中継ぎパイプは、吸引力のみによって糸端に張力を付加してもよい。その場合、保持部による糸端の保持後に、中継ぎパイプ内に発生する吸引力を増大させ、その吸引力によって、糸端に対する張力の付加が行われてもよい。なお、これは、糸端を捕捉している吸引状態を単に継続することを意味するのではない。糸継装置の保持部によって機械的に糸端を保持する前後のタイミングにおいて、糸端に対する作用の態様は変化している必要がある。すなわち、「張力付加手段」および「張力付加工程」は、糸端に張力を更に付加する(すなわち、追加の張力を与える)ことを意味する。言い換えれば、「張力付加手段」および「張力付加工程」は、保持部によって機械的に糸端を保持する前においては糸端に弛みが発生してしまう状況であるが、保持部によって機械的に糸端を保持した後に、糸端を捕捉している吸引状態とは違う態様で、糸端に張力を追加することを意味する。
【0080】
上記実施形態では、張力付加手段が中継ぎパイプ7b(第2糸捕捉装置)のみに対して設けられる場合について説明したが、これに限られない。上糸YAを捕捉するサクションマウス12b(第1糸捕捉装置)に対して張力付加手段が設けられてもよい。サクションマウス12bにおける吸引力が比較的小さい場合であれば、張力付加手段を設けることにより、糸継部50における上糸YAの弛みを防止することができる。その場合、サクションマウス12bは、上記実施形態における中継ぎパイプ7bの動作と同様、捕捉位置から第1位置に移動し、その後、張力付加工程において第2位置へと移動してもよい。
【0081】
中継ぎパイプ7b(第2糸捕捉装置)およびサクションマウス12b(第1糸捕捉装置)の両方に対して張力付加手段が設けられてもよい。