特開2017-88588(P2017-88588A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2017-88588(P2017-88588A)
(43)【公開日】2017年5月25日
(54)【発明の名称】予防・治療剤
(51)【国際特許分類】
   A61K 36/38 20060101AFI20170421BHJP
   A61P 1/16 20060101ALI20170421BHJP
   A61P 9/10 20060101ALI20170421BHJP
   A61K 131/00 20060101ALN20170421BHJP
【FI】
   A61K36/38
   A61P1/16
   A61P9/10 101
   A61P9/10
   A61K131:00
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2015-225113(P2015-225113)
(22)【出願日】2015年11月17日
(71)【出願人】
【識別番号】510094724
【氏名又は名称】国立研究開発法人国立循環器病研究センター
(71)【出願人】
【識別番号】510249726
【氏名又は名称】株式会社エコリソース研究所
(74)【代理人】
【識別番号】110001896
【氏名又は名称】特許業務法人朝日奈特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】斯波 真理子
(72)【発明者】
【氏名】柴田 映子
(72)【発明者】
【氏名】柴田 雅朗
(72)【発明者】
【氏名】飯沼 宗和
(72)【発明者】
【氏名】土佐 秀樹
(72)【発明者】
【氏名】的場 吉信
【テーマコード(参考)】
4C088
【Fターム(参考)】
4C088AB12
4C088AC04
4C088BA10
4C088CA08
4C088CA19
4C088NA14
4C088ZA36
4C088ZA45
4C088ZA75
(57)【要約】
【課題】動脈硬化症、心血管疾患、脳血管疾患および脂肪肝の予防・治療剤を提供する。
【解決手段】マンゴスチン果皮抽出物を活性成分として含んでなる動脈硬化症、心血管疾患、脳血管疾患および脂肪肝の予防・治療剤。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
マンゴスチン果皮抽出物を活性成分として含んでなる動脈硬化症の予防・治療剤。
【請求項2】
請求項1記載の動脈硬化症の予防・治療剤からなる心血管疾患または脳血管疾患の予防剤。
【請求項3】
マンゴスチン果皮抽出物を活性成分として含んでなる脂肪肝の予防・治療剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マンゴスチン果皮抽出物を活性成分として含んでなる動脈硬化症、心血管疾患、脳血管疾患および脂肪肝の予防・治療剤に関する。
【背景技術】
【0002】
マンゴスチン(mangosteen、学名:Garcinia mangostana L.)は東南アジア原産のオトギリソウ科(Guttiferae)の常緑小高木である。その果実は世界三大果実の一つで、果実の女王と呼ばれており、東南アジアを代表する高級トロピカルフルーツである。果実の大きさは約5cm大の球形で、厚い果皮を持つ。果肉は白色でミカンの袋のように分かれており、これを食する。その果皮は黄色色素(キサントン類)を含み、古くから止血、鎮痛、防腐、消炎といった収斂剤として用いられてきており、民間伝承薬物として重要な天然資源である。
【0003】
マンゴスチン果皮に含まれるキサントン誘導体の主成分はα−マンゴスチン(α−mangostin)およびγ−マンゴスチン(γ−mangostin)である。
【0004】
【化1】
【0005】
最近になって、α−およびγ−マンゴスチンは、抗菌作用、抗炎症作用、抗アレルギー作用および抗癌作用を有することが報告された。具体的には、抗MRSA(メシチリン耐性黄色ブドウ球菌)活性(非特許文献1)、ヒスタミンおよびセロトニン受容体阻害活性(非特許文献2)、抗酸化活性(非特許文献3)、抗アレルギー活性(非特許文献4)、癌細胞に対するアポトーシス誘導能(非特許文献5)、細胞周期停止(非特許文献6)といった様々な生理活性であり、マンゴスチンの有する多彩な効果がそれらによって説明される。また、α−マンゴスチンまたはγ−マンゴスチンを投与されたマウスおよびヒトでNK活性が上昇することも確認されている(非特許文献7、8)。さらに、マンゴスチンの抽出物であるパナキサントン(α−マンゴスチン75〜85%およびγ−マンゴスチン5〜15%の混合物で、両者の含量総和が90%以上のもの)がマウス乳癌に対して抗腫瘍効果を有すること(非特許文献9)や、α−マンゴスチンを20mg/kgの用量で浸透圧ポンプを用いてマウス乳癌に対して投与すると、生存率の延長やリンパ節転移の抑制が観察されたこと(非特許文献10、11)が報告されている。
【0006】
心血管疾患や脳血管疾患は、その多くが動脈硬化病変を基礎として起こる。動脈硬化病変のプラークの破綻により血栓が形成され、やがて遊離し、血流に乗り、心臓の冠状動脈や脳の血管で塞栓が起り、重大な病態をもたらす。脂肪肝は、動脈硬化症とともに、生活習慣病の一角を形成する病態である。高齢化が進む中、これら疾病の予防・治療に取り組む意義が、ますます重要となっている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】J Pharm Pharmacol 48:861−865,1996
【非特許文献2】Planta Med 62:471−472,1996
【非特許文献3】J Agric Food Chem 54:2077−2082,2006
【非特許文献4】Bioorg Med Chem 16:4500−4508,2008
【非特許文献5】J Nat Prod 66:1124−1127,2003
【非特許文献6】Bioorg Med Chem 13:6064−6069,2005
【非特許文献7】Int. J Mol Sci 9:355−370
【非特許文献8】New Food Industry 54巻:19−29,2009
【非特許文献9】Anticancer Res 29:2485−2495,2009
【非特許文献10】解剖学雑誌第115回総会・全国学術集会抄録号(2010年、3月)
【非特許文献11】BMC MED 9:69,2011
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、動脈硬化症、心血管疾患、脳血管疾患および脂肪肝の予防・治療剤を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、前記課題を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、マンゴスチン果皮抽出物を用いることにより上記課題を解決し得ることを見出し、さらに検討を重ねて、本発明を完成した。
【0010】
すなわち、本発明は、
[1]マンゴスチン果皮抽出物を活性成分として含んでなる動脈硬化症の予防・治療剤、
[2]上記[1]記載の動脈硬化症の予防・治療剤からなる心血管疾患または脳血管疾患の予防剤、
[3]マンゴスチン果皮抽出物を活性成分として含んでなる脂肪肝の予防・治療剤、
である。
【発明の効果】
【0011】
本発明に係るマンゴスチン果皮抽出物を活性成分として含んでなる予防・治療剤は、動脈硬化症、心血管疾患、脳血管疾患および脂肪肝の予防・治療に有用である。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】試験例1でマンゴスチン果皮抽出物0.3質量%含有飼料を投与した場合において、マウス大動脈の内腔をオイルレッドOで染色した結果を示す写真である。
図2】試験例1でマンゴスチン果皮抽出物0.4質量%含有飼料を投与した場合において、マウス大動脈の内腔をオイルレッドOで染色した結果を示す写真である。
図3】試験例1でマンゴスチン果皮抽出物0.3質量%含有飼料を投与した場合において、肝臓の凍結切片をオイルレッドOで染色した結果を示す写真である。
図4】試験例1でマンゴスチン果皮抽出物0.4質量%含有飼料を投与した場合において、肝臓の凍結切片をオイルレッドOで染色した結果を示す写真である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明は、マンゴスチン果皮抽出物を活性成分として含んでなる動脈硬化症、心血管疾患、脳血管疾患および脂肪肝の予防・治療剤である。
【0014】
<マンゴスチン果皮抽出物>
マンゴスチン果皮抽出物とは、マンゴスチンの果皮から、それに含まれるキサントン誘導体(主に、α−マンゴスチン、γ−マンゴスチン)を抽出して調製した抽出物である。その調製は常法により実施でき、特に限定されるものではないが、例えば、以下に示す方法が挙げられる。
【0015】
(調製方法)
すなわち、マンゴスチンの果皮を乾燥したもの(マンゴスチン乾燥果皮)を5mm〜20mm角程度に粉砕し、その乾燥重量に対して、3〜10倍量の熱水を加え、80〜100℃の条件下、1〜5時間、抽出洗浄を行う。抽出洗浄後の混合物を濾過することにより、マンゴスチン果皮の抽出洗浄物を濾取し、これに、元の乾燥重量に対して、3〜10倍量の含水アルコール(アルコール含量として30質量%〜90質量%、好ましくは50質量%〜90質量%)を加え、室温〜50℃の条件下、1〜24時間、抽出する。抽出後の混合物を濾過することにより、抽出液を得る。かかる抽出操作は、所望により、さらに1回〜2回繰り返してもよい。
【0016】
得られた抽出液(含水アルコールエキス)から、減圧条件下、溶媒を留去して、ブリックス(Brix)値が10〜40%に調整された濃縮物を得る。なお、ブリックス値は、ブリックス屈折計(例えば、(株)アタゴ製の「ポケット糖度計PAL−1」)により測定される値である。得られた濃縮物を、フリーズドライまたはスプレードライにより乾燥固化して、マンゴスチン果皮抽出物(1)を得ることができる。
【0017】
あるいは、該濃縮物に、さらに含水アルコール(アルコール含量として、10質量%〜90質量%、好ましくは10質量%〜50質量%)を加えて再結晶し、得られた結晶を遠心分離し、乾燥することにより、マンゴスチン果皮抽出物(2)を得ることができる。
【0018】
上記で用いるアルコールとしては、例えば、低級アルコールが挙げられ、より具体的には炭素数が1〜4のもの、好ましくはエタノールが挙げられる。
【0019】
(果皮抽出物)
本発明において、マンゴスチン果皮抽出物は粉末であり、その色は、茶褐色〜黄褐色、好ましくは黄色〜淡黄色である。該マンゴスチン果皮抽出物において、αおよびγ−マンゴスチンの含量は15質量%以上であることが好ましく、より好ましくは50質量%以上、さらに好ましくは90質量%以上である。αおよびγ−マンゴスチンの含量が15質量%以上である場合において、α−マンゴスチンの含量は10質量%以上かつγ−マンゴスチンの含量は3質量%以上であることがより好ましい。また、αおよびγ−マンゴスチンの含量が90質量%以上である場合において、α−マンゴスチンの含量は75〜85質量%かつγ−マンゴスチンの含量は5〜15質量%であることがより好ましい。
【0020】
マンゴスチン果皮抽出物(1)の好ましい具体例としては、以下の性状を有するものが挙げられる。
【0021】
【表1】
【0022】
マンゴスチン果皮抽出物(2)の好ましい具体例としては、以下の性状を有するものが挙げられる。
【0023】
【表2】
【0024】
かくして得られたマンゴスチン果皮抽出物は、動脈硬化症、心血管疾患、脳血管疾患および脂肪肝に対し、優れた予防・治療効果を有することから、これら疾患の予防剤または治療剤として使用することができる。その投与対象は、ヒトのみならず、ヒト以外の哺乳動物(例えば、ウマ、ウシ、イヌ、ネコ、ブタ、サルなど)に対しても使用することができる。
【0025】
マンゴスチン果皮抽出物は、それ自体で、あるいは、適宜の薬理学的に許容される賦形剤、希釈剤などと混合して、錠剤、カプセル剤、顆粒剤、散剤、シロップ剤などに製剤化して経口的に投与するか、または非経口的に投与することができる。
【0026】
これらの製剤は、賦形剤(例えば、乳糖、白糖、ブドウ糖、マンニット、ソルビットのような糖誘導体;トウモロコシデンプン、馬鈴薯デンプン、α−デンプン、デキストリン、カルボキシメチルデンプンのようなデンプン誘導体;結晶セルロース、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースカルシウム、内部架橋カルボキシメチルセルロースナトリウムのようなセルロース誘導体;アラビアゴム;デキストラン;プルラン;軽質無水珪酸、合成珪酸アルミニウム、メタ珪酸アルミン酸マグネシウムのような珪酸塩誘導体;リン酸カルシウムのようなリン酸塩誘導体;炭酸カルシウムのような炭酸塩誘導体;硫酸カルシウムのような硫酸塩誘導体等)、結合剤(例えば、前記の賦形剤;ゼラチン;ポリビニルピロリドン;マクロゴール等)、崩壊剤(例えば、前記の賦形剤;クロスカルメロースナトリウム、カルボキシメチルスターチナトリウム、架橋ポリビニルピロリドンのような化学修飾された、デンプン、セルロース誘導体等)、滑沢剤(例えば、タルク;ステアリン酸;ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウムのようなステアリン酸金属塩;コロイドシリカ;ビーガム、ゲイロウのようなワックス類;硼酸;グリコール;フマル酸、アジピン酸のようなカルボン酸類;安息香酸ナトリウムのようなカルボン酸ナトリウム塩;硫酸ナトリウムのような硫酸類塩;ロイシン;ラウリル硫酸ナトリウム、ラウリル硫酸マグネシウムのようなラウリル硫酸塩;無水珪酸、珪酸水和物のような珪酸類;前記の賦形剤におけるデンプン誘導体等)、安定剤(例えば、メチルパラベン、プロピルパラベンのようなパラオキシ安息香酸エステル類;クロロブタノール、ベンジルアルコール、フェニルエチルアルコールのようなアルコール類;塩化ベンザルコニウム;フェノール、クレゾールのようなフェノール類;チメロサール;無水酢酸;ソルビン酸等)、矯味矯臭剤(例えば、通常使用される、甘味料、酸味料、香料等)、懸濁化剤(例えば、ポリソルベート80、カルボキシメチルセルロースナトリウム等)、希釈剤、製剤用溶剤(例えば、水、エタノール、グリセリン等)等の添加物を用いて周知の方法で製造される。
【0027】
マンゴスチン果皮抽出物の投与量は、マンゴスチン果皮抽出物の精製状態、投与対象の年齢、体重、症状、並びに、投与形態および投与回数等によって異なる。例えば、上記表2に示されたマンゴスチン果皮抽出物を用いる場合、通常、成人(体重60kg)に対して、1日当たり10〜5000mg、好ましくは50〜5000mg、より好ましくは100〜5000mg、より好ましくは100〜4000mg、より好ましくは100〜3000mg、より好ましくは100〜2000mg、より好ましくは100〜1000mg程度、より好ましくは100〜500mg程度であり、これを1回、または、数回に分けて投与するのが好ましい。
【実施例】
【0028】
本発明を実施例に基づいて説明するが、本発明は、実施例にのみ限定されるものではない。
【0029】
<マンゴスチン果皮抽出物の調製>
マンゴスチンの果皮を乾燥したもの(マンゴスチン乾燥果皮)を5mm〜20mm角程度に粉砕し、その乾燥重量に対して、7倍量の熱水を加え、80℃の条件下、2時間、抽出洗浄を行った。抽出洗浄後の混合物を濾過することにより、マンゴスチン果皮の抽出洗浄物を濾取した。
【0030】
これに、元の乾燥重量に対して、10倍量の含水エタノール(アルコール含量として50質量%)を加え、40℃の条件下、24時間、抽出した。抽出後の混合物を濾過することにより、抽出液を得た。かかる抽出操作を、2回繰り返した。
【0031】
各抽出操作で得られた抽出液(含水アルコールエキス)を合わせたのち、該抽出液から、減圧条件下、溶媒を留去して、濃縮物を得た。該濃縮物のブリックス値は30%であった。なお、ブリックス値は、ブリックス屈折計((株)アタゴ製の「ポケット糖度計PAL−1」)により測定された値である。
【0032】
該濃縮物を、さらに含水アルコール(アルコール含量として30質量%)で再結晶し、得られた結晶を遠心分離し、乾燥することにより、マンゴスチン果皮抽出物を得た。該マンゴスチン果皮抽出物におけるα−マンゴスチンの含量は84質量%、および、γ−マンゴスチンの含量は7質量%であった。
【0033】
試験例1
<アポEノックアウト(ApoE−KO)マウス試験>
上記で調製したマンゴスチン果皮抽出物を粉末飼料(「CLEA Rodent Diet CE−2」、日本クレア(株)から入手)中に混じ、アポEノックアウトマウス(雄、7週齢)に自由摂取させた(投与群)。マンゴスチン果皮抽出物を混じた飼料としては、0.3質量%混じた飼料(0.3質量%含有飼料)と0.4質量%混じた飼料(0.4質量%含有飼料)の二種を用いた。対照群には飼料のみを与えた。なお、0.3質量%含有飼料を用いた場合は、投与群および対照群とも各群8匹のマウスを用いて実験を行った。一方、0.4質量%含有飼料を用いた場合は、投与群および対照群とも、各群6匹のマウスを用いて実験を行った。但し、0.4質量%含有飼料投与群(全6匹)のうち、1匹は不正咬合により死亡したため、そのデータは除外した。評価結果は、各群の平均値として示す。
【0034】
<総コレステロール値およびトリグリセライド値の測定>
投与開始後、8週目および17週目に、尾静脈より採血(前日夕刻より絶食)を行い、血漿中の総コレステロール値およびトリグリセライド(TG)値を測定した。
【0035】
<剖検>
投与開始後17週目に全生存動物を屠殺・剖検に付した。まず、動物を麻酔下にてリン酸緩衝生理食塩水で潅流し、放血・安楽死させた。その後、大動脈(上行大動脈〜大動脈弓〜下行大動脈)を摘出し、ホルマリン固定の後、内腔を暴露させ、動脈硬化病変をオイルレッドOで染色し、実体顕微鏡下でデジタル撮影を行い、画像解析ソフトを用い、オイルレッドOで陽性に染まった部位(動脈硬化巣)の面積を計測した。次に、肝臓について、脂肪肝の程度を見るために、肝臓の凍結切片を作製し、オイルレッドOで染色し、顕微鏡を用いて観察した。
【0036】
<結果>
(総コレステロール値およびTG値)
結果を表3に示す。0.3質量%含有飼料投与群では、対照群に比べて、総コレステロール値が、8週目および17週目でより低下していた。また、0.4質量%含有飼料群では、対照群に比べて、総コレステロール値およびトリグリセライド値が、8週目および17週目でより低下していた。
【0037】
【表3】
【0038】
(動脈内腔のオイルレッドO染色)
結果を図1および図2に示す。0.3質量%含有飼料投与群(0.3% MG抽出物)では、対照群(コントロール)に比較して、オイルレッドOにて赤く染まった動脈硬化巣は少ない傾向にあった(図1)。0.4質量%含有飼料投与群(0.4% MG抽出物)では、対照群(コントロール)に比較して、動脈硬化巣はさらに少ない傾向にあった(図2)。
【0039】
次に、動脈内腔の全面積に対する染色された動脈硬化病変の面積の比率を算出した。結果を表4に示す。動脈硬化病変の面積率は、二つの投与群において、対照群に比較し抑制されていた。
【0040】
【表4】
【0041】
更に、マウス1匹当たりの動脈硬化病変の数、および、該動脈硬化病変を、初期病変、進行性病変、複合病変に分類し、それぞれの数を数えた。ここで、初期病変、進行性病変および複合病変は、それぞれ独立に定義されるものであるため、重複してカウントされることはない。また、これら病変は、初期病変、進行性病変、そして複合病変へと進展するものであり、最終的には、複合病変の破綻により、脳梗塞や心筋梗塞が発症する。結果を表5に示す。マウス1匹当たりの動脈硬化病変の数は、いずれの分類においても、二つの投与群において、対照群との比較でより減少していた。
【0042】
【表5】
【0043】
(肝凍結切片のオイルレッドO染色)
結果を図3および図4に示す。肝細胞内の溜まった脂肪はオイルレッドO染色により陽性に赤く染まる。0.3質量%含有飼料投与群(0.3% MG抽出物)では強陽性を示すものは1例も観察されなかったが、その対照群(コントロール)では8例中の5例が強陽性を示した(図3)。また、0.4質量%含有飼料投与群(0.4% MG抽出物)では5例中の1例が強陽性を示すにすぎなかったが、その対照群(コントロール)では6例中の5例が強陽性を示した(図4)。
【0044】
(その他)
実験期間中、投与群では、対照群に比較して、体重増加の抑制が観察された。その程度は、0.3質量%含有飼料投与群では7〜9%の減少であり、0.4質量%含有飼料投与群では11〜19%減少であった。但し、マウスの一般状態は極めて良好であった。
【産業上の利用可能性】
【0045】
本発明によれば、マンゴスチン果皮抽出物を活性成分として含んでなる動脈硬化症、心血管疾患、脳血管疾患および脂肪肝の予防・治療剤を提供することができる。
図1
図2
図3
図4