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特開2017-88609アンギオテンシンII拮抗作用を有する化合物を含有する固形医薬組成物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2017-88609(P2017-88609A)
(43)【公開日】2017年5月25日
(54)【発明の名称】アンギオテンシンII拮抗作用を有する化合物を含有する固形医薬組成物
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/4178 20060101AFI20170421BHJP
   A61K 31/519 20060101ALI20170421BHJP
   A61P 9/12 20060101ALI20170421BHJP
   A61K 31/4184 20060101ALI20170421BHJP
   A61K 31/4245 20060101ALI20170421BHJP
   A61K 47/02 20060101ALI20170421BHJP
   A61K 9/30 20060101ALI20170421BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20170421BHJP
【FI】
   A61K31/4178
   A61K31/519
   A61P9/12
   A61K31/4184
   A61K31/4245
   A61K47/02
   A61K9/30
   A61P43/00 116
【審査請求】有
【請求項の数】2
【出願形態】OL
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2017-6731(P2017-6731)
(22)【出願日】2017年1月18日
(62)【分割の表示】特願2013-551847(P2013-551847)の分割
【原出願日】2012年12月27日
(31)【優先権主張番号】特願2011-288503(P2011-288503)
(32)【優先日】2011年12月28日
(33)【優先権主張国】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000135036
【氏名又は名称】ニプロ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100163647
【弁理士】
【氏名又は名称】進藤 卓也
(74)【代理人】
【識別番号】100182084
【弁理士】
【氏名又は名称】中道 佳博
(72)【発明者】
【氏名】谷野 智治
(72)【発明者】
【氏名】更田 宏史
(72)【発明者】
【氏名】槌谷 友里
(72)【発明者】
【氏名】岩城 隆信
【テーマコード(参考)】
4C076
4C086
【Fターム(参考)】
4C076AA36
4C076AA44
4C076BB01
4C076CC11
4C076DD25
4C076DD28
4C076DD29
4C076DD29H
4C076DD41
4C076EE23H
4C076EE31
4C076EE32
4C076EE32H
4C076FF01
4C076FF36
4C086AA01
4C086AA02
4C086BC38
4C086BC39
4C086BC62
4C086BC71
4C086CB09
4C086GA01
4C086GA02
4C086GA04
4C086GA07
4C086GA09
4C086MA02
4C086MA05
4C086MA34
4C086MA35
4C086MA52
4C086NA03
4C086ZA42
(57)【要約】
【課題】 アンギオテンシンII拮抗作用を有する化合物を含有する固形医薬組成物であって、安定性、特に耐湿性に優れた固形医薬組成物を提供すること。
【解決手段】 本発明の固形医薬組成物は、アンギオテンシンII拮抗作用を有する化合物およびアルカリ土類金属塩またはその水和物を含有する。ここで、アルカリ土類金属塩は、酸化マグネシウムおよび炭酸マグネシウムからなる群から選択される少なくとも1種の化合物であり、アルカリ土類金属塩の含有量は組成物の質量を基準として2質量%から7質量%であり、そしてアンギオテンシンII拮抗作用を有する化合物は、ロサルタン、エプロサルタン、カンデサルタンシレキセチル、カンデサルタン、テルミサルタン、イルベサルタン、オルメサルタン、タソサルタン、アジルサルタン、およびこれらの塩もしくはエステルからなる群から選択される少なくとも1種の化合物である。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
アンギオテンシンII拮抗作用を有する化合物およびアルカリ土類金属塩を含有する固形医薬組成物であって、
該アルカリ土類金属塩が、酸化マグネシウムおよび炭酸マグネシウムからなる群から選択される少なくとも1種の化合物であり、
該アルカリ土類金属塩の含有量が該組成物の質量を基準として2質量%から7質量%であり、そして
該アンギオテンシンII拮抗作用を有する化合物が、ロサルタン、エプロサルタン、カンデサルタンシレキセチル、カンデサルタン、テルミサルタン、イルベサルタン、オルメサルタン、タソサルタン、アジルサルタン、およびこれらの塩もしくはエステルからなる群から選択される少なくとも1種の化合物である、固形医薬組成物。
【請求項2】
前記アンギオテンシンII拮抗作用を有する化合物の含有量が前記組成物の質量を基準として30質量%以上である、請求項1に記載の固形医薬組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アンギオテンシンII拮抗作用を有する化合物を含有する固形医薬組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
高血圧症治療薬として用いられるアンギオテンシンII拮抗作用を有する化合物の1つであるバルサルタンは、「ディオバン(登録商標)錠」(非特許文献1)として販売されている。
【0003】
特許文献1には、製剤中のバルサルタンの含有量を高めること、必要に応じてヒドロクロロチアジドを製剤に配合することが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−238637号公報
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】「ディオバン(登録商標)錠」添付文書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、アンギオテンシンII拮抗作用を有する化合物を含有する固形医薬組成物であって、安定性に優れた固形医薬組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記課題を解決するためにアンギオテンシンII拮抗作用を有する化合物を含有する固形医薬組成物にアルカリ土類金属塩および/またはその水和物を配合することによって、該固形医薬組成物の安定性、特に耐湿性を高めることができることを見出し、本発明を完成させた。
【0008】
本発明は、アンギオテンシンII拮抗作用を有する化合物およびアルカリ土類金属塩および/またはその水和物を含有する固形医薬組成物である。
【0009】
1つの実施態様では、上記アンギオテンシンII拮抗作用を有する化合物は、ロサルタン、エプロサルタン、カンデサルタンシレキセチル、カンデサルタン、バルサルタン、テルミサルタン、イルベサルタン、オルメサルタン、タソサルタン、アジルサルタン、およびこれらの塩もしくはエステルからなる群から選択される少なくとも1種の化合物である。
【0010】
1つの実施態様では、上記アンギオテンシンII拮抗作用を有する化合物の含有量は上記組成物の質量を基準として30質量%以上である。
【0011】
1つの実施態様では、上記アルカリ土類金属は、カルシウム、ストロンチウム、バリウム、ラジウム、マグネシウム、およびベリリウムからなる群から選択される少なくとも1種の金属である。
【0012】
1つの実施態様では、上記アルカリ土類金属塩および/またはその水和物は、塩化カルシウム水和物、クエン酸カルシウム、グルコン酸カルシウム水和物、グリセロリン酸カルシウム、炭酸カルシウム、沈降炭酸カルシウム、乳酸カルシウム水和物、無水リン酸水素カルシウム、リン酸一水素カルシウム、リン酸一水素カルシウム水和物、リン酸二水素カルシウム水和物、L−アスパラギン酸マグネシウム、塩化マグネシウム、乾燥硫酸マグネシウム、グルコン酸マグネシウム、ケイ酸マグネシウム、ケイ酸マグネシウムアルミニウム、酸化マグネシウム、水酸化マグネシウム、水酸化アルミナマグネシウム、硫酸マグネシウム水和物、メタケイ酸アルミン酸マグネシウム、および炭酸マグネシウム、ならびにそれらの組合せからなる群から選択される少なくとも1種の化合物である。
【0013】
1つの実施態様では、上記アルカリ土類金属塩および/またはその水和物の含有量は、前記組成物の質量を基準として2質量%から10質量%である。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、アンギオテンシンII拮抗作用を有する化合物を含有する固形医薬組成物であって、安定性に優れた固形医薬組成物を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の固形医薬組成物は、アンギオテンシンII拮抗作用を有する化合物およびアルカリ土類金属塩および/またはその水和物を含有する。
【0016】
アンギオテンシンII拮抗作用を有する化合物としては、特に限定されないが、例えば、ロサルタン、エプロサルタン、カンデサルタンシレキセチル、カンデサルタン、バルサルタン、テルミサルタン、イルベサルタン、オルメサルタン、タソサルタン、アジルサルタン、およびこれらの塩もしくはエステル、ならびにこれらの組合せが挙げられる。
【0017】
本発明の固形医薬組成物中のアンギオテンシンII拮抗作用を有する化合物の含有量は、特に限定されないが、当該組成物の質量を基準として、好ましくは30質量%以上であり、より好ましくは30質量%以上70質量%以下である。
【0018】
本発明において、アルカリ土類金属とは、カルシウム、ストロンチウム、バリウム、ラジウム、マグネシウム、またはベリリウムをいう。
【0019】
本発明のアルカリ土類金属塩および/またはその水和物としては、特に限定されず、例えば、塩化カルシウム水和物、クエン酸カルシウム、グルコン酸カルシウム水和物、グリセロリン酸カルシウム、炭酸カルシウム、沈降炭酸カルシウム、乳酸カルシウム水和物、無水リン酸水素カルシウム、リン酸一水素カルシウム、リン酸一水素カルシウム水和物、リン酸二水素カルシウム水和物、L−アスパラギン酸マグネシウム、塩化マグネシウム、乾燥硫酸マグネシウム、グルコン酸マグネシウム、ケイ酸マグネシウム、ケイ酸マグネシウムアルミニウム、酸化マグネシウム、水酸化マグネシウム、水酸化アルミナマグネシウム、硫酸マグネシウム水和物、メタケイ酸アルミン酸マグネシウム、および炭酸マグネシウム、ならびにそれらの組合せが挙げられる。好ましくは、沈降炭酸カルシウム、無水リン酸水素カルシウム、炭酸マグネシウム、または酸化マグネシウム、あるいはこれらの組合せである。これらは、安価に入手できるため好ましい。
【0020】
本発明の固形医薬組成物中のアルカリ土類金属塩および/またはその水和物の含有量は、特に限定されないが、当該組成物の質量を基準として、好ましくは2質量%〜10質量%、より好ましくは3質量%〜7質量%である。
【0021】
本発明の固形医薬組成物の形状としては、特に限定されず、例えば、錠剤、カプセル剤、丸剤、トローチ剤、顆粒剤、および散剤が挙げられる。好ましくは錠剤である。
【0022】
本発明の固形医薬組成物は、ほかに賦形剤、崩壊剤、結合剤、流動化剤、滑沢剤、着色剤、溶解補助剤、甘味料、香料、発泡剤、界面活性剤、防腐剤、pH調節剤、コーティング剤などの添加剤を含有し得る。
【0023】
賦形剤としては、特に限定されず、例えば、結晶セルロース、低置換度ヒドロキシピロピルセルロース、澱粉、コーンスターチ、糖類(ブドウ糖、果糖、乳糖、白糖、還元麦芽糖、トレハロースなど)、および糖アルコール(D−マンニトール、エリスリトール、ソルビトール、キシリトール、マルチトール、ラクチトールなど)、ならびにそれらの組合せが挙げられる。
【0024】
崩壊剤としては、特に限定されず、例えば、クロスポビドン、カルボキシスターチナトリウム、カルボキシメチルスターチナトリウム、澱粉、部分α化澱粉、コーンスターチ、乳糖、炭酸カルシウム、沈降炭酸カルシウム、クエン酸カルシウム、軽質無水ケイ酸、合成ケイ酸アルミニウム結晶セルロース、低置換度ヒドロキシピロピルセルロース、クロスカルメロースナトリウム、カルボキシメチルセルロースカルシウム、カルメロース、およびヒドロキシプロピルスターチ、ならびにそれらの組合せが挙げられる。
【0025】
結合剤としては、特に限定されず、例えば、ゼラチン、寒天、アルギン酸、アルギン酸ナトリウム、デキストリン、キタンサンガム、アラビアゴム末、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ポリビニルピロリドン、部分けん化ポリビニルアルコール、メチルセルロース、プルラン、部分α化澱粉、および糖類、ならびにそれらの組合せが挙げられる。
【0026】
流動化剤としては、例えば、ケイ酸カルシウムなどのケイ酸塩、軽質無水ケイ酸などの無水ケイ酸、水和二酸化ケイ素、およびタルク、ならびにそれらの組合せが挙げられる。
【0027】
滑沢剤としては、特に限定されず、例えば、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、タルク、ショ糖脂肪酸エステル、ポリエチレングリコール、ステアリン酸、軽質無水ケイ酸、硬化ナタネ油、硬化ヒマシ油、グリセリン脂肪酸エステル、フマル酸ステアリルナトリウム、安息香酸ナトリウム、L-ロイシン、およびL-バリン、ならびにそれらの組合せが挙げられる。
【0028】
着色剤としては、特に限定されず、例えば、三二酸化鉄、黄色三二酸化鉄、食用赤色2号、食用赤色3号、食用黄色4号、および食用黄色5号、ならびにそれらの組合せが挙げられる。
【0029】
溶解補助剤としては、特に限定されず、例えば、酸化マグネシウム、酸化カルシウム、クエン酸ナトリウム、塩化マグネシウム、炭酸ナトリウム、および炭酸水素ナトリウム、ならびにそれらの組合せが挙げられる。
【0030】
甘味料としては、特に限定されず、例えば、アスパルテーム、サッカリンナトリウム、グリチルリチン二カリウム、ステビア、およびソーマチン、ならびにそれらの組合せが挙げられる。
【0031】
香料としては、特に限定されず、例えば、ミント、レモン、およびオレンジ、ならびにそれらの組合せが挙げられる。
【0032】
発泡剤としては、特に限定されず、例えば、酒石酸塩、クエン酸塩、および重炭酸塩、ならびにそれらの組合せが挙げられる。
【0033】
界面活性剤としては、特に限定されず、例えば、アルキル硫酸ナトリウムなどのアニオン系界面活性剤、ショ糖脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステルおよびポリオキシエチレンヒマシ油誘導体などの非イオン系界面活性剤などが挙げられる。
【0034】
防腐剤としては、特に限定されず、例えば、安息香酸、パラオキシ安息香酸、およびこれらの塩が挙げられる。
【0035】
pH調節剤としては、特に限定されず、例えば、クエン酸、酒石酸、酢酸、乳酸などの有機酸、塩酸、リン酸などの無機酸、炭酸水素ナトリウム、炭酸ナトリウム、水酸化ナトリウムなどの無機塩基が挙げられる。
【0036】
コーティング剤としては、特に限定されず、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(ヒプロメロース)、酸化チタン、およびポリエチレングリコール(マクロゴール6000)、ならびにそれらの組合せが挙げられる。
【0037】
本発明の固形医薬組成物中の添加剤の含有量は、添加剤の配合目的に応じて適宜設定される。
【0038】
本発明の固形医薬組成物の製造方法は、特に限定されず、例えば、当業者が通常用いる固形医薬製剤の製造方法に含まれる工程が使用され得、造粒工程、打錠工程、またはコーティング工程などの工程が挙げられる。
【0039】
本発明に用いられ得る造粒工程としては、例えば、湿式造粒法または乾式造粒法による造粒が採用され得る。従来、アンギオテンシンII拮抗作用を有する化合物を含有する固形医薬組成物は乾式造粒法により製造されることがあったが、本発明の固形医薬組成物の製造方法では、乾式造粒法に限定されず、湿式造粒法を選択することもできる。湿式造粒法としては、特に限定されず、例えば、流動層造粒乾燥機、攪拌造粒機、円筒押出造粒機、転動流動層造粒コーティング機、スプレードライヤーなどの造粒手段を用いた造粒が採用され得る。乾式造粒法としては、特に限定されず、例えば、ローラーコンパクターなどの造粒手段を用いた造粒が採用され得る。
【0040】
本発明に用いられ得る打錠工程としては、特に限定されず、例えば、打錠用臼、打錠用上杵および下杵を用いて、油圧式ハンドプレス機、単発式打錠機、ロータリー式打錠機などの打錠手段を用いた打錠が採用され得る。打錠圧は、特に限定されず、例えば、2kN/cm〜7kN/cmの範囲である。
【0041】
本発明に用いられ得るコーティング工程としては、特に限定されず、例えば、コーティング剤を水などの溶媒に溶解または分散させてコーティング液を調製し、コーティング液を主薬粒子にスプレーするスプレーコーティング法、フィルムコーティング機などを用いる方法、パンコーティング法、流動コーティング法、および転動コーティング法などの方法を用いたコーティングが採用され得る。
【0042】
本発明の固形医薬組成物は、例えばアンギオテンシンII拮抗作用を有する化合物、アルカリ土類金属塩および/またはその水和物、賦形剤、崩壊剤および結合剤を混合して造粒し、造粒物に流動化剤、滑沢剤、必要に応じて崩壊剤を添加・混合して打錠し、そして得られた素錠にコーティング剤、必要に応じて着色剤をコーティングすることによって製造される。
【0043】
上記のように本発明の固形医薬組成物は、例えば、錠剤として製造され得る。
【実施例】
【0044】
以下、実施例により本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例により限定されるものではない。
【0045】
(実施例1)
バルサルタンを含有する錠剤を以下の表1に記載の処方により製造した。バルサルタン(特許文献1)800g、炭酸マグネシウム100g、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース770g、結晶セルロース100g、軽質無水ケイ酸100gおよびステアリン酸マグネシウム30gを容器回転形混合機(筒井理化学器械株式会社製S−3形)に投入して混合し、この混合物に対し、ローラーコンパクター(フロイント産業株式会社製TF−MINI)を用いて、圧密力60kg/cmおよびローラースピード4rpmにて圧密化を行った。圧密化された混合圧縮体を整粒機(株式会社ダルトン製P−02S型)に通して顆粒状とし(乾式造粒)、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース50g、軽質無水ケイ酸10g、タルク20gおよびステアリン酸マグネシウム20gを添加・混合し、この混合物を打錠機(株式会社菊水製作所製VIRGO)に投入し、直径8.5mmの杵を用いて打錠圧7kN/cmにて1錠質量200mgとなるように打錠を行い、素錠(核錠部)を得た。次いで、この素錠をフィルムコーティング機(フロイント産業株式会社製HCT−48N)に投入し、ヒドロキシプロピルメチルセルロース128g、ポリエチレングリコール16gおよび酸化チタン16gを精製水1600gに溶解した液を、1錠あたり8mgの固形分がコーティングされるように素錠に噴霧してフィルムコーティングを行い、錠剤を得た。
【0046】
【表1】
【0047】
(実施例2)
バルサルタンを含有する錠剤を以下の表2に記載の処方により製造した。実施例1の炭酸マグネシウムを沈降炭酸カルシウムに替えたこと以外は、実施例1と同様に製造した。
【0048】
【表2】
【0049】
(実施例3)
バルサルタンを含有する錠剤を以下の表3に記載の処方により製造した。バルサルタン(特許文献1)200g、炭酸マグネシウム25g、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース210gおよび結晶セルロース25gを攪拌造粒機(株式会社パウレック製VG−05)に投入して混合し、さらにヒドロキシプロピルセルロース15gを精製水に溶解した液を添加して湿式造粒を行った。得られた造粒物に低置換度ヒドロキシプロピルセルロース12.5g、軽質無水ケイ酸2.5g、タルク5gおよびステアリン酸マグネシウム5gを添加・混合し、この混合物を打錠機(株式会社菊水製作所製VIRGO)に投入し、直径8.5mmの杵を用いて打錠圧6kN/cmにて打錠を行い、素錠(核錠部)を得た。次いで、この素錠をフィルムコーティング機(フロイント産業株式会社製HCT−48N)に投入し、ヒドロキシプロピルメチルセルロース32g、ポリエチレングリコール4gおよび酸化チタン4gを精製水400gに溶解した液を素錠に噴霧してフィルムコーティングを行い、錠剤を得た。
【0050】
【表3】
【0051】
(実施例4)
バルサルタンを含有する錠剤を以下の表4に記載の処方により製造した。実施例3の炭酸マグネシウムを酸化マグネシウムに替えたこと以外は、実施例3と同様に製造した。
【0052】
【表4】
【0053】
(比較例1)
バルサルタンを含有する錠剤を以下の表5に記載の処方により製造した。バルサルタン(特許文献1)800g、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース870g、結晶セルロース100g、軽質無水ケイ酸100gおよびステアリン酸マグネシウム30gを容器回転形混合機(筒井理化学器械株式会社製S−3形)に投入して混合し、この混合物に対し、ローラーコンパクター(フロイント産業株式会社製TF−MINI)を用いて、圧密力60kg/cmおよびローラースピード4rpmにて圧密化を行った。圧密化された混合圧縮体を整粒機(株式会社ダルトン製P−02S型)に通して顆粒状とし(乾式造粒)、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース50g、軽質無水ケイ酸10g、タルク20gおよびステアリン酸マグネシウム20gを添加・混合し、この混合物を打錠機(株式会社菊水製作所製VIRGO)に投入し、直径8.5mmの杵を用いて打錠圧7kN/cmにて1錠質量200mgとなるように打錠を行い、素錠(核錠部)を得た。次いで、この素錠をフィルムコーティング機(フロイント産業株式会社製HCT−48N)に投入し、ヒドロキシプロピルメチルセルロース128g、ポリエチレングリコール16gおよび酸化チタン16gを精製水1600gに溶解した液を、1錠あたり8mgの固形分がコーティングされるように素錠に噴霧してフィルムコーティングを行い、錠剤を得た。
【0054】
【表5】
【0055】
(試験例:製剤の安定性評価 保存前後の溶出試験)
実施例1〜4および比較例1で得られた錠剤および「ディオバン(登録商標)錠80mg」(ノバルティス社製)(比較例2)について、保存前後でバルサルタンの溶出試験を行った。試験液は900mLとし、パドル回転数50rpmにて、30分後の溶出率(%)を測定した。なお、「ディオバン(登録商標)錠80mg」は、バルサルタンのほか、ヒドロキシプロピルセルロース、セルロース、無水ケイ酸、タルク、ステアリン酸マグネシウム、ヒプロメロース、マクロゴールおよび酸化チタンの8成分を含有する。
【0056】
まず、実施例1〜4および比較例1の錠剤は製造直後、比較例2の錠剤は入手直後を保存前として、この保存前の錠剤についてバルサルタンの溶出試験を行った。試験はそれぞれ3回実施した。結果を表6に示す。
【0057】
【表6】
【0058】
表6から明らかなように、実施例1〜4の保存前の錠剤は比較例1および2の保存前の錠剤と同等のバルサルタンの溶出性を示した。
【0059】
次いで、実施例1〜4ならびに比較例1および2の錠剤を、それぞれアルミ包装または無包装で、60℃、湿度75%、暗所下の条件にて3日間保存した。この保存後の錠剤についてバルサルタンの溶出試験を行った。試験はそれぞれ3回実施した。結果を表7に示す。
【0060】
【表7】
【0061】
表7より明らかなように、比較例1および2の保存後の錠剤は、保存前の錠剤と比較して、バルサルタンの溶出性に大幅な低下傾向が認められ、特に無包装では、バルサルタンがほとんど溶出しなかった。この結果は、バルサルタンが高湿度に弱いことを示している。
【0062】
一方、実施例1〜4の保存後の錠剤は、アルミ包装または無包装のいずれにおいても、バルサルタンの溶出性の低下が少なく、極めて安定な結果を示した。バルサルタンを含有する錠剤にアルカリ土類金属塩および/またはその水和物を配合することにより、錠剤の安定性、特に耐湿性を高めることができた。
【産業上の利用可能性】
【0063】
本発明によれば、アンギオテンシンII拮抗作用を有する化合物を含有する固形医薬組成物であって、安定性に優れた固形医薬組成物を提供することができる。