(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2017-88894(P2017-88894A)
(43)【公開日】2017年5月25日
(54)【発明の名称】天然溶媒を使用して新鮮な花及び/又は葉の芳香抽出物を得るための方法
(51)【国際特許分類】
C11B 9/02 20060101AFI20170421BHJP
B01D 11/00 20060101ALI20170421BHJP
B01D 11/02 20060101ALI20170421BHJP
A61K 8/97 20170101ALI20170421BHJP
A61Q 13/00 20060101ALI20170421BHJP
A61Q 19/00 20060101ALI20170421BHJP
A23L 27/10 20160101ALI20170421BHJP
【FI】
C11B9/02
B01D11/00
B01D11/02 A
A61K8/97
A61Q13/00 101
A61Q19/00
A23L27/10 C
【審査請求】有
【請求項の数】11
【出願形態】OL
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2017-23(P2017-23)
(22)【出願日】2017年1月4日
(62)【分割の表示】特願2013-545456(P2013-545456)の分割
【原出願日】2011年12月22日
(31)【優先権主張番号】10/05098
(32)【優先日】2010年12月23日
(33)【優先権主張国】FR
(71)【出願人】
【識別番号】513158058
【氏名又は名称】チャラボット
(74)【代理人】
【識別番号】100091683
【弁理士】
【氏名又は名称】▲吉▼川 俊雄
(72)【発明者】
【氏名】ラヴォイネハンエグリー,ソフィア
【テーマコード(参考)】
4B047
4C083
4D056
4H059
【Fターム(参考)】
4B047LB03
4B047LG05
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4H059DA09
4H059EA35
(57)【要約】
【課題】本発明は芳香抽出物を得るための方法である。
【解決手段】
本発明は、湿った植物の新鮮な花、花頂部及び/又は葉から芳香抽出物を得るための方法であって、a)植物の花、花頂部及び/又は葉を摘み取る工程;b)前記摘みたての花、花頂部及び/又は葉を、アルコール性溶媒を包含する少なくとも1つの浴中で、50℃未満の温度にて浸出し、アルコール性混合物を得る工程;c)前記アルコール性混合物を濾過し、アルコール性花浸出液を回収する工程;及びd)前記アルコール性花浸出液の超臨界CO2抽出を実施して前記芳香抽出物を得て、この芳香抽出物が少なくとも75%のアルコール滴定濃度を有する工程を含む方法に関する。本発明は、本発明の方法によって調製された抽出物及びその香料、香料入りの希釈アルコール、香料成分又は食品香味料としての使用、又は化粧品組成物への使用にも関する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
湿った植物の新鮮な花、花頂部、及び/又は葉から芳香抽出物を得るための方法であって、前記花、花頂部及び/又は葉が、ミモザ、バラ、ゲッカコウ、ジェネット、ダイダイ、カーネーション、スミレ、バーベナ、リンデン、カモミール、バジルの葉、コリアンダーの葉、フランジパニ、ティアレ、クチナシ、マリーゴールド、コウオウソウ、スイセン、ヒヤシンス、ラッパスイセン、ユリ、モクレン、ドイツスズラン、イランイラン、モクセイ、ライラック、スイカズラ又はゼラニウム、または、200種を超えるジャスミンのうち、オオバナソケイ(Jasminum grandiflorum)、ソケイ(Jasminum officinale)、キソケイ(Jasminum odoratissimum)、マツリカ(Jasminum sambac)、ヤスミヌム・アウリクラトゥム(Jasminum auriculatum)、ヤスミヌム・フレクシル(Jasminum flexile)のいずれかから選択され、:
a)植物の花、花頂部及び/又は葉を摘み取る工程;
b)前記花、花頂部、及び/又は切りたての葉を、摘み取り後12時間以内に天然のアルコール性溶媒を包含する少なくとも1つの浴中で、50℃未満の温度で浸出し、前記浸出が、花、花頂部及び/又は葉対アルコール性溶媒の最終的な重量比を1:1〜1:10とすることによって実施されるものである、アルコール性混合物を得る工程;
c)前記アルコール性混合物を濾過して、アルコール性花浸出液を回収する工程;及び
d)前記アルコール性花浸出液の超臨界CO2抽出を実施し、アルコール中に前記芳香抽出物を得る工程である工程
を含む方法。
【請求項2】
前記花、花頂部及び/又は葉が、200種を超えるジャスミンのうち、オオバナソケイ(Jasminum grandiflorum)、ソケイ(Jasminum officinale)、キソケイ(Jasminum odoratissimum)、マツリカ(Jasminum sambac)、ヤスミヌム・アウリクラトゥム(Jasminum auriculatum)、ヤスミヌム・フレクシル(Jasminum flexile)のいずれかから選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記花、花頂部及び/又は葉が摘み取り後3時間以内に浸出される、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記アルコール性溶媒が、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、ブタノール、イソブタノール、ペンタノール、及びイソアミルアルコールからなる群から選択される、請求項1、2又は3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
浸出が、溶媒を循環し、摘みたての花、花頂部及び/又は葉を1回又は複数回添加することによって実施される、請求項1〜4のうちいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
花、花頂部及び/又は葉対アルコール性溶媒の最終的な比が1:1〜1:3である、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記花及び/又は花頂部が15〜35℃の温度で10分〜2時間浸出される、請求項1〜6のうちいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
アルコール性花浸出液が4〜10℃の温度で1日〜24か月間保冷される工程も含有する、請求項1〜7のうちいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
超臨界CO2抽出が130〜200barの圧力及び35〜55℃の温度にて実施される、請求項1〜8のうちいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
芳香抽出物を、そのまま真空下で60℃未満の温度にて加熱することによって濃縮する工程、又は天然油、シアバター、天然グリセリン又は天然酢酸ベンジル上で濃縮する工程も包含する請求項1〜9のうちいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
芳香抽出物及び/又は濃縮された芳香抽出物が、摘み取った花、花頂部及び/又は葉に実質的に類似した芳香を有する、請求項1〜10のうちいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、天然溶媒の組み合わせを用いて新鮮な花、花頂部及び/又は葉から芳香抽出物を得るための方法、そのようにして得られた抽出物及びその使用に関する。
【背景技術】
【0002】
新鮮な花及び/又は葉の抽出物は、特に香料、化粧品及び香味料に使用され、より具体的には、例えばジャスミン、ミモザ、バラ、ダイダイ、又はバジルのような良い香りの花又は葉の抽出物である。
【0003】
ジャスミンのような植物を栽培及び加工することは、その花が脆いこと、摘み取りが非常に労働集約的で細心の注意を必要とすること、及び香料に使用できる少量の抽出物を得るために非常に多数の花又は葉を必要とするので、コンクリートの取得が非常に高コストであることから、困難であることが知られている。例えば、1kgのアブソリュートを得るには700万個ものジャスミンの花が必要である。
【0004】
伝統的に、芳香抽出物を得るために2種類の方法が実施される。
【0005】
抽出は、ヘキサン、ベンゼン又は石油エーテルのような石油化学から得られる揮発性非極性溶媒を用いて実施される。その後植物から出た水をデカンテーションし、香りを含有する溶媒を真空下で濃縮して、コンクリートを生成する。
【0006】
あるいは、植物からの芳香物質の抽出は、蒸気処理によって実施される。ただし、この方法は、特定の芳香構成成分を分解し、得られる抽出物が品質及び/又は収率の点で使用できるものではないことから、特定の脆い花(ジャスミン、ゲッカコウ、ミモザ)には適さない。
【0007】
同様に、超臨界CO2抽出及びそのために必要な産業機器は、このような、摘み取ってから非常に短い時間しか保存できず、輸送が困難な生花に実施するにはあまりにも複雑である。この方法を用いて得ることができる収率も非常に低い。
【0008】
したがって、現在市販されている花製品は、精油、非極性石油溶媒を用いて得られるコンクリート、又はより一般的には、かかるコンクリートの超臨界CO2又はアルコール洗浄での再処理により得られるアブソリュートのいずれかである。
【0009】
しかし、かかる方法によって得られる生成物の組成は実質的に原材料とは異なり、それぞれの芳香は生花のそれと比べものにならない。非極性溶媒抽出物、特に脂肪性物質は油臭いノート(香調)をコンクリートに付与する。さらに、石油溶媒を必要とすることは、コスメバイオ憲章(Cosmebio charter)に準拠しない。
【0010】
特許文献1も既知であり、これは、花を水性又は水アルコール性極性溶媒で抽出することで、単離化合物、特に前駆体の加水分解によって得られる芳香性のジャスミン花組成物を調製する方法を、より具体的に開示している
【0011】
しかし、かかる抽出物はリナロール、ゲラニオール、ベンジルアルコール、フェニル−2−エタノール、メチル−2−フェノール、オイゲノール、イソフィトール、フィトール及びcis−ジャスモンが無視できない量及び変動しうる割合で存在し、同じ花から得られるアブソリュートとは異なることを示す。さらに、これらの抽出物の芳香性のノートは心地よいが、対応するアブソリュートのノートよりも鋭く刺激があり、その芳香はジャスミンの生花のそれとは比べものにならない。
【0012】
一般的に、天然溶媒を用いて、新鮮な花又は葉からの芳香抽出物を、同じ花から精油又はアブソリュートを得る収率に少なくとも匹敵する収率で得て、前記抽出物が天然の花の香りと実質的に類似した香りを有し、そのまま香料に使用できることに対して真の需要が存在する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】欧州特許第0309339号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
上記を考慮して、本発明が解決すべき問題は、エコサート(Ecocert)が認証した規格に従って生態学的及び生物学的な化粧品の基本原則を定義したコスメバイオ憲章(Cosmebio charter)に準拠する芳香抽出物を、石油化学から得るのではなく天然溶媒の組み合わせによって、新鮮な花及び/又は葉から得るための方法を実施することである。このような方法は実施が容易であり、効率的であり、得られた芳香抽出物は生花の芳香に実質的に類似した芳香を有し、伝統的な香料基準と異なる。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明の方法は、特に、先行技術に勝る下記の利点を提供する:
−本方法は、生花、例えばジャスミンの生花のような、湿った脆い植物から芳香抽出物を得ることを可能にする;
−本方法は、特に一次抽出に関して実施が容易であり、したがって現場で初歩的機器を用いて実施できる;
−本方法は、抽出時間が短いことから、エネルギー及び財政支出の点で経済的である;
−本方法は、新鮮な植物を一次抽出物の形態で数週間、さらには数か月にわたって保存することを可能にし、これは前記抽出物の長距離輸送及びその処理を長期にわたって広げることを可能にする;
−本方法は、天然溶媒を使用し、石油化学から得られるのではない;
−本方法は、濃縮物に関して、従来方法により得られる収率に少なくとも類似し匹敵する収率を生じる、
−本方法は実質的に脱蝋された、安定な抽出物を生成する、及び
−得られた芳香抽出物は、生の植物の芳香に実質的に類似した芳香を有し、香料に使用することができる。
【0016】
したがって、本発明は第1に、湿った植物の新鮮な花、花頂部、及び/又は葉から芳香抽出物を得るための以下の工程を包含する方法に関する:a)植物の花、花頂部及び/又は葉を摘み取る工程;b)前記摘みたての花、花頂部、及び/又は葉を、アルコール性溶媒を包含する少なくとも1つの浴中で、50℃未満の温度にて浸出し、アルコール性混合物を得る工程;c)前記アルコール性混合物を濾過し、アルコール性花浸出液を回収する工程;及びd)前記アルコール性花浸出液の超臨界CO2抽出を実施し、前記芳香抽出物を得て、この芳香抽出物を 少なくとも75%のアルコールで滴定する工程。
【0017】
本発明は第2に、本発明の方法によって調製された抽出物に関する。
【0018】
最後に、本発明は第3に、本発明による抽出物の香料、香料入りの希釈アルコール、香料成分、食品香味料としての使用又は化粧品組成物への使用に関する。
【0019】
本発明及びその結果生じる利点は、以下の記述及び非限定的な実施形態を、添付図面を参照しながら考慮するとより理解しやすいであろう:
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】
図1はジャスミン花のヘキサン抽出物の芳香を本発明の方法により得られた抽出物の芳香と比較したフローラルダイアグラムである。
【
図2】
図2は、ミモザ花のヘキサン抽出物の芳香を本発明の方法により得られた抽出物の芳香と比較したフローラルダイアグラムである。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明の方法は、湿った植物から、特に脆い新鮮な花、花頂部、及び/又は葉から、芳香抽出物を得るために実施される。
【0022】
湿った又は新鮮な植物は、植物界の一部を形成する生物であり、特に摘み取りに伴う乾燥損失の前又は後に、総重量の少なくとも70重量%の水、通常は約85重量%の水を含む。
【0023】
本発明の脆い新鮮な花、花頂部及び/又は葉の非限定的な例として、ジャスミン、特に200を超える種の中でも、オオバナソケイ(Jasminum grandiflorum)、ソケイ(Jasminum officinale)、キソケイ(Jasminum odoratissimum)、マツリカ(Jasminum sambac)、ヤスミヌム・アウリクラトゥム(Jasminum auriculatum)、ヤスミヌム・フレクシル(Jasminum flexile)を挙げることができ、ミモザ、バラ、ゲッカコウ、ジェネット、ダイダイ、カーネーション、スミレ、バーベナ、リンデン、カモミール、バジルの葉、コリアンダーの葉、フランジパニ、ティアレ、クチナシ、マリーゴールド、コウオウソウ、スイセン、ヒヤシンス、ラッパスイセン、ユリ、モクレン、ドイツスズラン、イランイラン、モクセイ、ライラック、スイカズラ又はゼラニウムを挙げることができる。
【0024】
本発明の方法の第1工程において、植物の重要部分、すなわち、花、花頂部及び/又は葉が摘み取られる。
【0025】
このような新しく摘み取られた花、花頂部及び/又は葉は非常に脆く、短時間、長くとも数時間、例えば12時間しか保存できず、劣化及び芳香、主に良い香りの品質の大部分、時にはすべての損失を防止するために、好ましくは摘み取り後3時間以内に使用される。
【0026】
例えば、ジャスミンの花は摘み取り後3時間で劣化し、ミモザ又はゲッカコウの花がそのまま保存できるのは最長で12時間である。
【0027】
続いて、本発明の方法によると、前記新たに摘み取られた花、花頂部及び/又は葉を、アルコール性溶媒を含有する少なくとも1つの浴中で、50℃未満の温度で浸出し、アルコール性混合物を得る。
【0028】
本発明のアルコール性溶媒の一例としては、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、ブタノール、イソブタノール、ペンタノール、イソアミルアルコールから選択される天然アルコール、好ましくはより沸点が低く(メタノールを除いて)特にメタノールよりもはるかに毒性の低いエタノールが使用される。
【0029】
本発明によると、花、花頂部及び/又は葉は、好ましくは室温、すなわち15〜30℃の温度にてアルコール性溶媒に浸出される。
【0030】
本発明の浸出工程の持続時間は、最長で数時間、例えば12時間であることができ、抽出物の嗅覚特性に影響を及ぼす。
【0031】
有利には、本発明による浸出の持続時間は最適化され、約10分〜約2時間であり、本発明による一次的な芳香アルコール性抽出物に収集される芳香分子を抽出するために必要かつ十分な時間である。
【0032】
浸出においては、花、花頂部及び/又は葉をアルコール性溶媒に浸漬し、静かに撹拌してもよい。
【0033】
有利には、浸出液は溶媒を閉回路内に循環させることによって生成され、すなわち、溶媒が、特に花弁を破壊することなく、及び花弁周辺が溶媒飽和領域となることを避けて、抽出装置内に動きを生み出すように、花、花頂部及び/又は葉上に循環される。したがって撹拌は、より飽和度の低い溶媒を与え、これが次に抽出を実施する。
【0034】
あるいは、処理すべき花及び/又は葉の量によっては、並行又は連続する複数の浴で浸出液を生成することが可能である。
【0035】
例えば、1つの浴を作製し、続いて新たな抽出溶媒ですすぎを実施すること、同じ花及び/又は葉に複数の浴を用いること、又はエタノール飽和が少ないために同じ浴上に花及び/又は葉を複数回通過させることさえ可能であり、最終的な花−葉/アルコール性溶媒の重量/重量比が1:1〜1:10、好ましくは1:1〜1:3になるようにする。
【0036】
例えば、花及び/又は葉を、有利には、飽和させるために同じアルコール浴に複数回、例えば最大で5回通過させ、一次アルコール性抽出物の濃縮を可能にする。これは、輸送及びその後超臨界CO2で処理する量の点でより経済的である。
【0037】
続いて、本発明の方法によると、花、花頂部及び/又は葉を粉砕することなく排出し、こうして得られたアルコール性混合物を濾過して、1日〜数か月の期間約4〜10℃の温度で保冷できるアルコール性花抽出液を回収する。
【0038】
このような本発明によるアルコール性花抽出液は、着色している可能性があり、特に水分及び糖分が高く、少なくとも45%のアルコールで滴定された生成物である。
【0039】
本発明によるこの浸出工程は、新鮮さを保たないであろう新鮮な脆い花及び/又は葉の抽出物を、その芳香品質を変えることなくアルコール性花浸出液の形態で4〜10℃で数週間保存することを可能にすることから、きわめて重要である。実際に、このような新鮮な花及び/又は葉は、乾燥及び芳香、主に良い香りの品質のあらゆる損失を防止するために、摘み取り後素早く使用しなければならない。
【0040】
そのために、有利には、本発明の方法は、アルコール性花抽出液を1日〜数か月、例えば12か月又はさらには24か月の間、約4〜10℃の温度で新鮮に保つ工程も含む。
【0041】
したがって、本発明の方法は、実施が容易であり、時間的制約を制限する。さらに本発明の方法は、抽出機器の嵩及び抽出機器を収容するプラントは収穫地の近くにない場合が多いという事実に付随する複雑な物流を避けることを可能にする。事実、本発明により得られたアルコール性花浸出液は、本発明の新鮮な花及び葉の匂いのする芳香抽出物を得るために必要な精製を実施する場所へ容易に輸送できる。
【0042】
この目的で、本発明の方法によると、前記芳香抽出物を得るために、アルコール性花浸出液の超臨界CO2抽出が実施される。
【0043】
有利には、本発明により得られるこの芳香抽出物は、少なくとも75%のアルコールで滴定される。
【0044】
超臨界CO2抽出プロセスは既知である。 超臨界状態、すなわち74bar及び31℃を超えると、CO2は非常に特異な特性を有し、天然抽出溶媒として使用できる。得られる流体は、拡散に適した高い拡散性(気体の拡散性に匹敵する)並びに輸送及び抽出に非常に適した高い粘度を特徴とする。
【0045】
本発明の超臨界CO2抽出工程は、静的モード又は動的モードで実施できる。
【0046】
本発明によると、CO2は好ましくは130〜200barの圧力及び35〜55℃の温度、さらにより好ましくは150bar及び45℃で、向流にて使用され、糖、着色剤、水をほとんど含まず、少なくとも75%のアルコールで滴定された、澄んだ透明で安定な、新鮮な花及び/又は葉の芳香抽出物を得るのに特に適している。
【0047】
有利には、本発明の方法は、超臨界CO2での抽出後に得られた芳香抽出物をそのまま真空下で60℃未満の穏やかな加熱によって濃縮する工程、又は天然油、シアバター、天然グリセリン又は天然酢酸ベンジル等の天然香り分子のような基材上で濃縮する工程も含む。
【0048】
さらに、本発明の方法は、同じ花から精油又はアブソリュートを得るための従来方法で得られる収率に少なくとも近く、超臨界CO2で花からの直接抽出により得られる収率よりも高い収率を与える。
【0049】
一例として、本発明の方法によると、抽出物1kgにつき花2kgに相当する質量収率が得られる。
【0050】
さらに、本発明の方法により得られたかかる抽出物が濃縮されると、0.1%〜0.2%のオーダー、すなわち抽出物1kgにつき花0.5〜1トンという収率が得られ、これはアブソリュートで得られる収率に等しい。
【実施例1】
【0051】
一例として、下の表に、2010年8月〜10月にマリティームアルプスで摘み取られたオオバナソケイ(Jasminum grandiflorum)の花750kgを用いて本発明の方法により得られた抽出物の組成を、出願人がガスクロマトグラフィーで実施した測定値と共に示す。摘み取り2時間後に、これらの花を天然エタノール中で、花/エタノールの重量比1:1で、25℃にて20分間浸出し、穏やかに撹拌した。続いて、花を粉砕しすぎることなく排出し、すすいだ。続いて、このアルコール性花浸出液を濾過し、超臨界CO2抽出まで2〜3か月間包装した。最後に、アルコール性花浸出液の超臨界CO2抽出を45℃及び150barで20分間実施した。こうして本発明により得られた芳香抽出物を、続いて、真空下で低温(35℃)にて部分的に濃縮した。この趣旨で、下の表に、上記のようにして得られた本発明による芳香抽出物の組成を、同じ花収穫物からヘキサン抽出によって得られ、アルコールで10%に希釈された従来のアブソリュートの組成と比較した。
【0052】
【0053】
この表は、得られた結果に基づくと、本発明の方法により得られたジャスミン花抽出物と同じ花のヘキサンアブソリュートの組成の違いを示す。
【0054】
より具体的には、本発明の方法により得られたジャスミン花抽出物は、ヘキサンアブソリュートよりも有意に多い量の特にジャスモン酸メチル及びマルトールを含み、ヘキサンアブソリュートが含有しないフェニルアセトアルデヒドを含有する。
【0055】
本発明の方法により得られたジャスミン抽出物はまた、ヘキサンアブソリュートよりも有意に少ない量のオイゲノールを含み、この生成物にゲラニオール又はインドールを含有しない。
【0056】
さらに、欧州特許第0309339号明細書に開示された抽出物で同定された化合物と比較した場合、本発明の方法により得られた抽出物は、例えば、ゲラニオール又はフェニル−2−エタノールを含有しない。
【0057】
それ故、このような抽出物間の組成の違いは、実質的に異なる芳香によって特徴づけられる。
【0058】
実際に、
図1に示すように、出願人は上記の表に記載した2種類のジャスミン花抽出物の香りを比較するため、8人の専門家による芳香試験を実施した。
【0059】
このフローラルダイアグラムは、得られた結果に基づき、上の表に記載された組成の違いによって特徴づけられる2つの抽出物間の芳香の違いを示す。
【0060】
本発明の方法により得られた抽出物は、特にジャスモン酸による上品なフローラルの芳香並びに特にマルトールによる甘いフルーティなハチミツの芳香を有する。本発明の方法により得られた抽出物には、さらに現地国に特徴的な黒茶、ジャスミンの花及び藪の非常にベジタブルなノートも認められ、これはヘキサン抽出物には認められない。ただし、本発明によるこの抽出物にインドール及び蝋が存在しないことで、これらの化合物に特徴的な、ヘキサン抽出物のみに認められる力強い動物的で油臭いフローラルの芳香を抑制することができる。
【実施例2】
【0061】
一例として、ジャスミン花を用いて本発明の方法により得られた抽出物は、ごく淡い黄色〜黄色の、澄んだ、流動性の透明液体の形態であり、本来の新鮮な花の芳香を有する。濃縮後、ジャスミン、ベジタブル、フルーティ、ハチミツのノートをもつ、非常に力強い茶色〜緑色の液体又はペースト形態の濃縮物が得られる。
【0062】
同様に、下の表に、2010年3月にタンネロン山地(Tanneron Massif)で摘み取られたミモザの有花枝2kgを用いて本発明の方法により得られた抽出物の組成を、出願人がガスクロマトグラフィーで実施した測定値と共に示す。摘み取り4時間後に、これらのミモザの有花枝を、ミモザの有花枝/エタノールの重量比1:3にて、25℃で循環する天然エタノール6kgで2時間浸出した。続いてこのアルコール性花浸出液を濾過し、超臨界CO2抽出まで3週間包装した。最後に、アルコール性花浸出液の超臨界CO2抽出を、45℃及び150barで20分間実施した。こうして本発明により得られた芳香抽出物を、続いて真空下で濃縮し、氷冷及び濾過して、本試行では可溶性濃縮物を花の0.40%の収率で得た。この趣旨で、下の表に、上記のようにして得られた本発明による芳香抽出物の組成を、同じミモザの有花枝の収穫物からヘキサン抽出によって得られ、アルコールで10%に希釈された従来のアブソリュートの組成と比較した。
【0063】
a:コバッツ係数が2500未満の揮発性化合物
b:コバッツ係数=2500に基づくバックグラウンド化合物
【0064】
この表は、得られた結果に基づき、最も揮発性の化合物(最も芳香性)と最も重い化合物との間の化学的バランスにおける顕著な変動を、本発明の方法により得られたミモザ有花枝抽出物(0.68)の古典的抽出物(ヘキサンの後エタノール)(0.12)に対する利点として示す。本発明の方法で得られたこの抽出物とアブソリュートとの間に組成の違いがこのように観察され、特に本発明の方法により得られたミモザ有花枝抽出物は、ヘキサンアブソリュートよりも有意に多い量のヘプタデカ−8−エンを含み、2分の1のルペノン及びルペノールを本生成物に含む。
【0065】
それ故、このような抽出物間の組成の違いは、実質的に異なる香りによって特徴づけられる。
【0066】
実際に、
図2に示すように、出願人は上記の表に記載した2種類のミモザ有花枝抽出物の香りを比較するため、8人の専門家による芳香試験を実施した。
【0067】
このフローラルダイアグラムは、得られた結果に基づき、上の表に記載された組成の違いによって特徴づけられる2つの抽出物間の芳香の違いを示す。
【0068】
本発明の方法により得られる抽出物は、アニス酸メチルに特徴的な上品なフローラルの芳香を有し、非常にベジタブルでパウダリーなミモザの芳香に忠実な芳香を有する。対照的に、ヘキサンアブソリュートは力強いグリーンで油臭い(cis−3−ヘキサノール)フローラルノート、弱く持続性の低いベースノートと共に力強いトップノートを有する。
【0069】
一例として、ミモザの有花枝を基にして本発明の方法により得られる抽出物は、85重量%超のアルコールで滴定された流動性アルコール性液体の形態で、透明な黄色をしており、ミモザの生花に特徴的な非常に軽く穏やかなハチミツの香りを有する。濃縮後、有利には濃縮液が得られ、濃縮液は氷冷及び濾過することができ、その後ペースト状の、より暗いオリーブグリーンになり、その匂いはフローラル、ハチミツ及びベジタブルのノートで強められる。
【0070】
本発明の方法は、新鮮な花及び/又は葉の芳香抽出物を、石油化学から得るのではなく、天然溶媒を用いて得ることを可能にし、これはエコサート(Ecocert)が認証する規格に従った生態学的及び有機的な化粧品の基本原則を定義したコスメバイオ憲章(Cosmebio charter)に準拠する。本発明の方法は、天然の生花の芳香に忠実で、従来の香料基準とは異なる芳香抽出物を得ることを可能にする。
【0071】
さらに、別の態様によると、本発明は本発明の方法により調製される抽出物に関する。
【0072】
かかる抽出物は、使用する花、収穫場所、又は収穫年のような異なる要因により、同じ種で変動することから、その特性決定は非常に困難である。
【0073】
本発明の第3の態様によると、本発明の方法によりこのように得られた抽出物をそのまま香料として、又は香料入りの希釈アルコール、又は香料成分として使用できる。かかる抽出物は、有利には芳香水又は香料の中性希釈アルコールに置き換わることができる。これらは、濃縮形態でも使用できる。
【0074】
実際に、超臨界CO2抽出後に得られる抽出物は、ジャスミンの花のような植物を用いて巧みに実施される天然アルコールで、そのまま使用できる澄明な液体である。この抽出物は熱による劣化を起こしておらず、その芳香は植物の芳香に非常に忠実である。さらに、本発明の抽出物は保存中安定であるのに対し、アブソリュート、例えばジャスミンアブソリュートは、時間が経つと蝋が析出し(沈殿)、その外観及びその芳香にさえ影響する。
【0075】
本発明の抽出物は、食品香味料として又は化粧品組成物中にも使用できる
【0076】
化粧品組成物の一例として、ジェル、クリーム、ミルク、ローション、オイル、シャンプー又は石鹸のような、特に皮膚への局所使用を意図する組成物が挙げられる。
【0077】
当然、本発明は上記の実施形態及び実施例に限定されるものではなく、定常操作を行う当業者は、明示されていない他の実施形態を生みだしてもよく、それは本発明の広い範囲に入る。