【解決手段】テンサーバー40は、エプロンベルト18aを支持するローラ54a〜54dと、ローラ54a〜54dを着脱可能に位置決めする軸受56a〜56d,58a〜58dが一方向に配列されている支持体52と、ボトムローラ16aの回転軸方向に延在しており、軸受56a〜56d,58a〜58dが繊維束のドラフト方向に沿って配列するように、支持体52が着脱可能に固定される本体部50と、を備える。
ボトムローラ及びトップローラからなるローラ対によって繊維束をドラフトするドラフト装置において、前記ボトムローラとの間でエプロンベルトが架け渡されると共に当該エプロンベルトの張りを調整するテンサーバーであって、
前記エプロンベルトを支持する支持部材と、
前記支持部材を着脱可能に位置決めする位置決め部が一方向に配列されている交換部材と、
前記ボトムローラの回転軸方向に延在しており、前記位置決め部が前記繊維束のドラフト方向に沿って配列するように、前記交換部材が着脱可能に固定される本体部と、
を備える、テンサーバー。
前記本体部は、前記配列方向における位置決め部の位置が互いに異なる、及び/又は、前記位置決め部の形状が互いに異なる交換部材を着脱可能に形成されている、請求項1又は2記載のテンサーバー。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
このようなドラフト装置では、エプロンベルトによる繊維束の把持位置(ニップ位置)及び把持力が糸の品質に影響を及ぼす。特に、複数種類の繊維束をドラフトするドラフト装置においては、エプロンベルトによる繊維束の支持状態を、繊維束に応じて高い自由度で変更できることが求められる。しかしながら、上記従来のテンサーバーでは、エプロンベルトによる繊維束の把持位置(ニップ位置)及び把持力を容易に調整することができない。
【0006】
本発明は、エプロンベルトによる繊維束の支持状態を容易に変更することができるテンサーバー、ドラフト装置及び紡績機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係るテンサーバーは、ボトムローラ及びトップローラからなるローラ対によって繊維束をドラフトするドラフト装置において、ボトムローラとの間でエプロンベルトが架け渡されると共に当該エプロンベルトの張りを調整するテンサーバーであって、エプロンベルトを支持する支持部材と、支持部材を着脱可能に位置決めする位置決め部が一方向に配列されている交換部材と、ボトムローラの回転軸方向に延在しており、位置決め部が繊維束のドラフト方向に沿って配列するように、交換部材が着脱可能に固定される本体部と、を備える。
【0008】
この構成のテンサーバーでは、交換部材において支持部材が着脱自在に保持されるので、例えば、交換部材からの突出量が互いに異なる支持部材に交換したり、エプロンベルトとの接触面積が互いに異なる支持部材に交換したりすることにより、エプロンベルトによる繊維束のニップ力を容易に調整することが可能になる。また、本体部は、例えば、配列方向における位置決め部の位置が互いに異なる交換部材に交換することにより、配列方向における支持部材の位置を容易に変えることができる。すなわち、エプロンベルトによる繊維束のニップ位置を容易に調整することが可能になる。これらの結果、エプロンベルトによる繊維束の支持状態を容易に変更することができる。
【0009】
一実施形態において、位置決め部は、互いに形状が異なる支持部材を着脱可能に形成されていてもよい。この構成のテンサーバーによれば、交換部材からの突出量が互いに異なる支持部材に交換したり、エプロンベルトとの接触面積が互いに異なる支持部材に交換したりすることができるので、エプロンベルトによる繊維束のニップ力を容易に調整することが可能になる。また、例えば、支持部材の取り付けの有無を選択することにより、エプロンベルトによる繊維束のニップ位置を容易に調整することが可能になる。
【0010】
一実施形態において、本体部は、配列方向における位置決め部の位置が互いに異なる、及び/又は、位置決め部の形状が互いに異なる交換部材が着脱可能に形成されていてもよい。この構成のテンサーバーによれば、配列方向における位置決め部の位置が互いに異なる交換部材に交換することにより、配列方向における支持部材の位置を変えることができる。すなわち、エプロンベルトによる繊維束のニップ位置を容易に調整することが可能になる。また、この構成のテンサーバーによれば、位置決め部の形状が互いに異なるので交換部材からの突出量が互いに異なる支持部材を保持したり、エプロンベルトとの接触面積が互いに異なる支持部材に保持したりすることができるので、エプロンベルトによる繊維束のニップ力を容易に調整することが可能になる。
【0011】
一実施形態において、支持部材は、本体部の延在方向と同じ方向に延在する回転軸を中心に回転可能なローラであってもよい。この構成のテンサーバーによれば、エプロンベルトが回転する際のテンサーバーとエプロンベルトとの間の摩擦を低減することが可能になる。
【0012】
一実施形態において、位置決め部は、ローラの回転軸を回転可能に支持する軸受であってもよい。この構成のテンサーバーによれば、ローラ構成の支持部材を容易に保持することができる。
【0013】
本発明に係るドラフト装置は、ボトムローラ及びトップローラからなるローラ対と、上記テンサーバーと、ボトムローラとテンサーバーとに架け渡されるエプロンベルトと、を備える。
【0014】
この構成のドラフト装置によれば、エプロンベルトによる繊維束の支持状態を容易に変更することができる。
【0015】
本発明に係る紡績機は、上記ドラフト装置と、ドラフト装置でドラフトされた繊維束に撚りを与えて糸を生成する空気紡績装置と、空気紡績装置で生成された糸をパッケージに巻き取る巻取装置と、を備える。
【0016】
この構成の紡績機によれば、ドラフト装置において、エプロンベルトによる繊維束の支持状態を繊維束に応じて高い自由度で変更することができる。これにより、繊維束に応じて、エプロンベルトによる繊維束の把持位置(ニップ位置)及び把持力を適切に調整されるようになる。この結果、品質の高い糸を生成することが可能になる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、エプロンベルトによる繊維束の支持状態を容易に変更することができる。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、添付図面を参照して、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。なお、図面の説明において同一又は相当要素には同一符号を付し、重複する説明は省略する。
【0020】
図1に示されるように、紡績機1は、複数の紡績ユニット2と、糸継台車3と、玉揚台車(図示省略)と、第1エンドフレーム4と、第2エンドフレーム5と、を備えている。複数の紡績ユニット2は、一列に配列されている。各紡績ユニット2は、糸Yを生成してパッケージPに巻き取る。糸継台車3は、ある紡績ユニット2で糸Yが切断されたり、何らかの理由で糸Yが切れたりした場合、当該紡績ユニット2で糸継動作を行う。玉揚台車は、ある紡績ユニット2でパッケージPが満巻になった場合、パッケージPを玉揚げし、新しいボビンBを当該紡績ユニット2に供給する。
【0021】
第1エンドフレーム4には、紡績ユニット2で発生した繊維屑及び糸屑等を回収する回収装置等が収容されている。第2エンドフレーム5には、紡績機1に供給される圧縮空気(空気)の空気圧を調整して紡績機1の各部に空気を供給する空気供給部、及び紡績ユニット2の各部に動力を供給するための駆動モータ等が収容されている。第2エンドフレーム5には、機台制御装置100と、表示画面102と、入力キー104と、が設けられている。機台制御装置100は、紡績機1の各部を集中的に管理及び制御する。表示画面102は、紡績ユニット2の設定内容及び/又は状態に関する情報等を表示することができる。作業者が入力キー104を用いて適宜の操作を行うことにより、紡績ユニット2の設定作業を行うことができる。なお、表示画面102をタッチパネルディスプレイとし、入力キー104の代わりにタッチパネルディスプレイを操作する構成としてもよい。
【0022】
図1及び
図2に示されるように、各紡績ユニット2は、糸Yの走行方向において上流側から順に、ドラフト装置6と、空気紡績装置7と、糸監視装置8と、テンションセンサ9と、糸貯留装置11と、ワキシング装置12と、巻取装置13と、を備えている。ユニットコントローラ10は、所定数の紡績ユニット2ごとに設けられており、紡績ユニット2の動作を制御する。
【0023】
ドラフト装置6は、スライバ(繊維束)Sをドラフトする。ドラフト装置6は、スライバSの走行方向において上流側から順に、バックローラ対14と、サードローラ対15と、ミドルローラ対16と、フロントローラ対17と、を有している。各ローラ対14,15,16及び17は、ボトムローラと、トップローラと、を有している。ボトムローラは、第2エンドフレーム5に設けられた駆動モータ又は各紡績ユニット2に設けられた駆動モータにより回転駆動される。ミドルローラ対16のボトムローラに対しては、エプロンベルト(ボトムベルト)18aが設けられている。ミドルローラ対16のトップローラに対しては、エプロンベルト(トップベルト)18bが設けられている。
【0024】
空気紡績装置7は、ドラフト装置6でドラフトされた繊維束Fに旋回空気流によって撚りを与えて糸Yを生成する。より詳細には(ただし、図示省略)、空気紡績装置7は、紡績室と、繊維案内部と、旋回空気流発生ノズルと、中空ガイド軸体と、を有している。繊維案内部は、上流側のドラフト装置6から供給された繊維束Fを紡績室内に案内する。旋回空気流発生ノズルは、繊維束Fが走行する経路の周囲に配置されている。旋回空気流発生ノズルから空気が噴射されることにより、紡績室内に旋回空気流が発生する。この旋回空気流によって、繊維束Fを構成する複数の繊維の各繊維端が反転されて旋回させられる。中空ガイド軸体は、糸Yを紡績室内から空気紡績装置7の外部に案内する。
【0025】
糸監視装置8は、空気紡績装置7と糸貯留装置11との間において、走行する糸Yの情報を監視して、監視した情報に基づいて糸欠陥の有無を検出する。糸監視装置8は、糸欠陥を検出した場合、糸欠陥検出信号をユニットコントローラ10に送信する。糸監視装置8は、糸欠陥として、例えば、糸Yの太さ異常及び/又は糸Yに含有されている異物を検出する。糸監視装置8は、糸切れ等も検出する。テンションセンサ9は、空気紡績装置7と糸貯留装置11との間において、走行する糸Yのテンションを測定し、テンション測定信号をユニットコントローラ10に送信する。糸監視装置8及び/又はテンションセンサ9の検出結果に基づきユニットコントローラ10が異常有りと判断した場合、紡績ユニット2において、糸Yが切断される。具体的には、空気紡績装置7への空気の供給が停止されて、糸Yの生成が中断されることにより、糸Yが切断される。或いは、別途設けられたカッタにより糸Yが切断されるようにしてもよい。
【0026】
ワキシング装置12は、糸貯留装置11と巻取装置13との間において、糸Yにワックスを付与する。
【0027】
糸貯留装置11は、空気紡績装置7と巻取装置13との間において、糸Yの弛みを取る。糸貯留装置11は、空気紡績装置7から糸Yを安定して引き出す機能、糸継台車3による糸継動作時等に空気紡績装置7から送り出される糸Yを滞留させて糸Yが弛むのを防止する機能、及び糸貯留装置11よりも下流側の糸Yのテンションの変動が空気紡績装置7に伝わるのを防止する機能を有している。
【0028】
巻取装置13は、糸YをボビンBに巻き取ってパッケージPを形成する。巻取装置13は、クレードルアーム21と、巻取ドラム22と、トラバースガイド23と、を有している。クレードルアーム21は、ボビンBを回転可能に支持する。クレードルアーム21は、支軸24によって揺動可能に支持されており、ボビンBの表面又はパッケージPの表面を巻取ドラム22の表面に適切な圧力で接触させる。第2エンドフレーム5に設けられた駆動モータ(図示省略)が、複数の紡績ユニット2の巻取ドラム22を一斉に駆動する。これにより、各紡績ユニット2において、ボビンB又はパッケージPが巻取方向に回転させられる。各紡績ユニット2のトラバースガイド23は、複数の紡績ユニット2で共有されるシャフト25に設けられている。第2エンドフレーム5の駆動モータがシャフト25を巻取ドラム22の回転軸方向に往復駆動することによって、回転するボビンB又はパッケージPに対してトラバースガイド23が糸Yを所定幅でトラバースする。
【0029】
糸継台車3は、ある紡績ユニット2において糸Yが切断されたり、何らかの理由で糸Yが切れたりした場合、当該紡績ユニット2まで走行して、糸継動作を行う。糸継台車3は、糸継装置26と、サクションパイプ27と、サクションマウス28と、を有している。サクションパイプ27は、支軸31によって回動可能に支持されており、空気紡績装置7からの糸Yを捕捉して糸継装置26に案内する。サクションマウス28は、支軸32によって回動可能に支持されており、巻取装置13からの糸Yを捕捉して糸継装置26に案内する。糸継装置26は、案内された糸Y同士の糸継ぎを行う。糸継装置26は、圧縮空気を用いるスプライサ、又は糸Yを機械的に継ぐノッター等である。
【0030】
糸継台車3が糸継ぎ動作を行うとき、パッケージPを反巻取方向に回転(逆回転)させる。このときには、パッケージPが巻取ドラム22から離間するようにクレードルアーム21がエアーシリンダ(図示省略)によって移動させられ、糸継台車3に設けられた逆回転用ローラ(図示省略)によってパッケージPが逆回転させられる。
【0031】
続いて、上述したドラフト装置6について、より詳細に説明する。
【0032】
図3及び
図4に示されるように、バックローラ対14は、スライバSを走行させる走行経路Rを挟んで互いに対向するバックボトムローラ14a及びバックトップローラ14bを有している。サードローラ対15は、走行経路Rを挟んで互いに対向するサードボトムローラ15a及びサードトップローラ15bを有している。ミドルローラ対16は、走行経路Rを挟んで互いに対向するミドルボトムローラ16a及びミドルトップローラ16bを有している。フロントローラ対17は、走行経路Rを挟んで互いに対向するフロントボトムローラ17a及びフロントトップローラ17bを有している。複数のローラ対14,15,16,17は、ケンス(図示省略)から供給されて繊維束ガイド77によって案内されたスライバSをドラフトしつつ上流側から下流側に送る。
【0033】
バックボトムローラ14aは、バックローラハウジング66に回転可能に支持されている。サードボトムローラ15aは、サードローラハウジング67に回転可能に支持されている。ミドルボトムローラ16aは、ミドルローラハウジング68に回転可能に支持されている。フロントボトムローラ17aは、フロントローラハウジング69に回転可能に支持されている。各ボトムローラ14a,15a,16a,17aは、第2エンドフレーム5からの動力によって、下流側ほど速くなるように互いに異なる回転速度で回転させられる。なお、各ボトムローラ14a,15a,16a,17aの少なくとも一部又は全部は、各紡績ユニット2に設けられた駆動モータにより回転させられてもよい。
【0034】
バックトップローラ14b、サードトップローラ15b、ミドルトップローラ16b及びフロントトップローラ17bは、ドラフトクレードル71に回転可能に支持されている。各トップローラ14b,15b,16b,17bは、各ボトムローラ14a,15a,16a,17aに所定圧力で接触させられて従動回転させられる。
【0035】
ドラフトクレードル71は、各トップローラ14b,15b,16b,17bが各ボトムローラ14a,15a,16a,17aに所定圧力で接触する位置と、各トップローラ14b,15b,16b,17bが各ボトムローラ14a,15a,16a,17aから離間する位置とに、支軸72を中心として回動可能である。ドラフトクレードル71の回動は、ドラフトクレードル71に設けられたハンドル(図示省略)を用いて実施される。なお、ドラフトクレードル71は、隣り合う一対の紡績ユニット2のそれぞれが備えるドラフト装置6の各トップローラ14b,15b,16b,17bを回転可能に支持している。つまり、ドラフトクレードル71は、隣り合う一対の紡績ユニット2のそれぞれが備えるドラフト装置6に共有されている。
【0036】
サードローラ対15とミドルローラ対16との間には、例えばスライバガイド又はコンデンサと称される規制部74が配置されている。規制部74には、スライバSが通される貫通孔74aが形成されている。各ローラ14a,14b,15a,15b,16a,16b,17a,17bの回転軸が延在する方向(以下、「回転軸方向」という)におけるスライバSの幅は、回転軸方向における貫通孔74aの幅に規制される。このように、規制部74は、スライバSが走行する経路を走行経路R上に規制すると共に、回転軸方向におけるスライバSの幅を回転軸方向における貫通孔74aの幅に規制する。規制部74は、支持部75に支持されている。支持部75は、機台高さ方向において走行経路Rの下側に位置しており、ミドルボトムローラ16aを回転可能に支持するミドルローラハウジング68に取り付けられている。これにより、ミドルローラ対16に対する規制部74の位置が維持される。なお、
図1及び
図2においては、規制部74及び支持部75は、省略されている。
【0037】
図5及び
図6に示されるように、エプロンベルト18aは、ミドルボトムローラ16aとテンサーバー40とに架け渡されている。エプロンベルト18aは、ミドルボトムローラ16aの回転によって駆動する。なお、
図3においては、テンサーバー40は、省略されている。エプロンベルト18bは、ミドルトップローラ16bとエプロンテンショナー42とに架け渡されている。エプロンテンショナー42は、ドラフトクレードル71に支持されている。エプロンベルト18bは、ミドルボトムローラ16aの回転に従動するトップローラ16bの回転によって駆動する。
【0038】
ミドルローラ対16では、テンサーバー40によってエプロンベルト18aを押圧すると共に、エプロンテンショナー42によってエプロンベルト18bを押圧することにより、エプロンベルト18a及びエプロンベルト18bによりスライバSに圧力を加えてニップ(挟持)する。
【0039】
続いて、テンサーバー40について詳細に説明する。
図5〜
図9のいずれかに示されるように、テンサーバー40は、本体部50と、支持体(交換部材)52と、ローラ(支持部材)54a,54b,54c,54dと、を備えている。
【0040】
本体部50は、一方向に延在すると共に、所定の厚みを有する部材である。本体部50は、例えば、金属等の材料で形成されている。
図4に示されるように、本体部50は、スライバSの走行経路Rにおいてミドルボトムローラ16aよりも下流側(フロントボトムローラ17a側)に配置されている。
図3に示されるように、本体部50は、ボトムローラ16aの延在方向(紡績ユニット2の配列方向)と同方向に延在して配置されている。言い換えれば、本体部50は、ボトムローラ16aの回転軸が延びる方向と同方向に延在して配置されている。本体部50は、例えば、隣接する2つの紡績ユニット2のドラフト装置6に共通して設けられている。本体部50は、1つの紡績ユニット2に1つずつ設けられていてもよい。本体部50は、図示しない支持機構によって支持されている。
図9に示されるように、本体部50は、凹部51を有している。凹部51は、例えば、本体部50を厚み方向に一部切り欠いて形成されている。
【0041】
支持体52は、ローラ54a〜54d(
図4参照)を回転可能に支持する。支持体52は、例えば、樹脂等の材料で形成されている。支持体52は、
図9に示されるように、本体部50に着脱可能に設けられている。支持体52は、本体部50の凹部51に配置されて保持される。支持体52は、例えば、ねじ等の固定具(図示しない)によって本体部50に固定される。
【0042】
支持体52は、本体部52aと、第1端部52bと、第2端部52cと、を有している。本体部52aと第1端部52b及び第2端部52cとは、例えば、一体に成形されている。本体部52aは、略長方形状を呈する板状の部材である。
【0043】
第1端部52b及び第2端部52cのそれぞれは、本体部52aの長手方向の端部に配置されると共に、本体部52aの幅方向に沿って設けられている。第1端部52b及び第2端部52cのそれぞれは、本体部52aの表面よりも突出している。すなわち、第1端部52b及び第2端部52cの厚みは、本体部52aの厚みよりも大きい。これにより、支持体52は、本体部52aの表面に沿った方向から見て、略凹状を呈している。
【0044】
第1端部52bには、軸受(位置決め部)56a,56b,56c,56dが設けられている。軸受56a〜56dは、第1端部52bにおいて、第1端部52bの長手方向(本体部52aの幅方向)の一端から他端に向かってこの順番で配置されている。第2端部52cには、軸受(位置決め部)58a,58b,58c,58dが設けられている。軸受58a〜58dは、第2端部52cにおいて、第2端部52cの長手方向の一端から他端に向かってこの順番で配置されている。軸受56aと軸受58aとは、本体部52aを挟んで対向する位置に配置されている。同様に、軸受56bと軸受58b、軸受56cと軸受58c、軸受56dと軸受58dとは、本体部52aを挟んで対向する位置にそれぞれ配置されている。
【0045】
軸受56b,56c及び軸受58b,58cは、第1端部52b及び第2端部52cのそれぞれに形成された溝である。軸受56a,56d及び軸受58a,58dは、第1端部52b及び第2端部52cのそれぞれに形成された切欠きである。各軸受56a〜56d及び各軸受58a〜58dは、ローラ54a〜54dの外形に沿った形状(本実施形態では湾曲形状)を呈している。なお、各軸受58a〜58dの形状は、軸方向から見たときに、U字状、又はV字状に形成されてもよい。
【0046】
各軸受56a〜56d及び各軸受58a〜58dは、ローラ54a〜54dを着脱可能に支持する。具体的には、軸受56a及び軸受58aは、ローラ54aが配置され、ローラ54aを回転可能に支持する。軸受56b及び軸受58bは、ローラ54bが配置され、ローラ54bを回転可能に支持する。軸受56c及び軸受58cは、ローラ54cが配置され、ローラ54cを回転可能に支持する。軸受56d及び軸受58dは、ローラ54dが配置され、ローラ54dを回転可能に支持する。
【0047】
ローラ54a〜54dは、支持体52に回転可能に支持される。ローラ54a〜54dは、円柱状を呈している。本実施形態では、ローラ54a〜54dの断面は、
図6に示されるように、真円形状を呈している。ローラ54a〜54dは、例えば、耐摩耗性を有する材料で形成されている。なお、ローラ54a〜54dは、その表面に耐摩耗性を有する材料が塗布されている形態であってもよい。また、ローラ54a〜54dの表面は、凹凸等がほとんど存在しない状態(滑らかな状態)であってもよいし、鏡面加工、梨地加工、シボ加工、又は、溝加工等が施されていてもよい。
【0048】
ローラ54a〜54dの直径は、例えば、3mm〜7mmの間で、設計に応じて適宜設定されればよい。本実施形態では、ローラ54b及びローラ54cの直径は、3mmである。ローラ54a及びローラ54dの直径は、4mmである。ローラ54a〜54dの軸方向の長さ(以下、単に「長さ」と称する。)は、剛性を確保できる範囲で、エプロンベルト18aの幅に応じて適宜設定されればよい。具体的には、ローラ54a〜54dの長さは、エプロンベルト18aの幅以上であればよい。つまり、ローラ54a〜54dの長さは、エプロンベルト18aの幅と同等であってもよいし、エプロンベルト18aの幅よりも大きくてもよい。
図5では、ローラ54a〜54dの長さがエプロンベルト18aの幅よりも大きい形態を一例に示している。なお、各ローラ54a〜54d及び/又支持体52には、識別可能な目印が設けられていてもよい。目印は、例えば、刻印、色分け、シール等が挙げられる。
【0049】
図7及び
図8に示されるように、ローラ54aは、その端部が軸受56aと軸受58aとに支持される。ローラ54bは、その端部が軸受56bと軸受58bとに支持される。ローラ54cは、その端部が軸受56cと軸受58cとに支持される。ローラ54dは、その端部が軸受56dと軸受58dとに支持される。このような構成により、本実施形態では、ローラ54a〜54dは、ドラフト方向の上流側から下流側に向かって、この順番で配置されている。各ローラ54a〜54dの両端部は、本体部50の凹部51の側面に当接する。これにより、ローラ54a〜54dは、軸方向への移動が規制されている。
【0050】
本体部52aの幅方向におけるローラ54a〜54d同士の間隔は、等間隔に配置されてもよいし、不等間隔に配置されてもよい。また、本実施形態では、本体部52aの幅方向に沿って、ローラ54a〜54d同士が互いに間隔(隙間)をあけて配置されているが、ほとんど間隔をあけない状態(隙間が無い状態)で配置されてもよい。
【0051】
エプロンベルト18aは、ボトムローラ16aとテンサーバー40とに架け渡されている。具体的には、エプロンベルト18aは、ボトムローラ16aとテンサーバー40のローラ54dとに架け渡されている。エプロンベルト18aは、図示しない駆動部によって回転するボトムローラ16aに従動して回転する。各ローラ54a〜54dの上部は、エプロンベルト18aによって下方に向かって押さえつけられる。これにより、各ローラ54a〜54dの上下方向の位置が規制される。各ローラ54a〜54dは、エプロンベルト18aの回転に従動して回転する。
【0052】
上記のとおり、各軸受56a〜56d及び各軸受58a〜58dには、ローラ54a〜54dが着脱可能に支持されるので、例えば、軸受56c及び軸受58cからローラ54cを取り除いた状態の支持体52を、本体部50に取り付けてもよい。なお、各軸受56a〜56d及び各軸受58a〜58dから取り除くローラ54a〜54dは、ローラ54cに限定されない。これにより、本体部52aの幅方向(ローラ54a〜54dの配列方向)におけるニップ位置P2を調整することが可能になる。各ローラ54a〜54dの間隔は、スライバSの種類に応じて適宜設定される。
【0053】
また、本体部50の幅方向におけるニップ位置P2を調整する方法は、上記方法に限定されない。例えば、本体部50に固定される支持体52を、
図10に示されるような支持体152に交換してもよい。支持体152は、本体部50の幅方向における各軸受56a〜56d及び各軸受58a〜58dの位置が、支持体52とは互いに異なっている。
図11に示されるように、このような支持体152に保持されたローラ54a〜54dを本体部50に固定することにより、本体部50の幅方向におけるニップ位置P2を調整することができる。なお、各ローラ54a〜54d及び/又は支持体152には、識別可能な目印が設けられていてもよい。目印は、例えば、刻印、色分け、シール等が挙げられる。
【0054】
また、本体部50の幅方向における各軸受56a〜56d及び各軸受58a〜58dの位置が、支持体52とは互いに異なるだけでなく、軸受56a〜56d及び各軸受58a〜58dの形状が異なる支持体152と交換してもよい。この場合、本体部50の幅方向におけるニップ位置P2を調整するだけでなく、支持体52,152からの突出量が互いに異なるローラ(支持部材)に交換したり、エプロンベルト18aとの接触面積が互いに異なるローラ(支持部材)に交換したりすることができる。これにより、エプロンベルト18aによるスライバSのニップ力を容易に調整することができる。
【0055】
図6に示されるように、ローラ54bは、ミドルボトムローラ16aとミドルトップローラ16bとによるスライバSのニップ位置P1と、ローラ54bによるエプロンベルト18aとエプロンベルト18bとによるスライバSのニップ位置P2との間の距離D1が11mm以上22mm以下の範囲となる位置に配置されている。つまり、軸受56b及び軸受58bは、ニップ位置P1とニップ位置P2との間の距離D1が11mm以上22mm以下となる範囲でローラ54bを支持する位置に配置されている。本実施形態では、距離D1は、例えば、16mm〜17mmに設定される。
【0056】
また、ローラ54dは、ニップ位置P1と当該ローラ54dのフロントボトムローラ17a側の端との間の距離D2が例えば35mmとなる位置に配置されている。なお、ニップ位置P1とフロントボトムローラ17aとフロントトップローラ17bとによるスライバSのニップ位置との間の直線距離は、例えば47mmである。
【0057】
図6に示されるように、ローラ54bとエプロンベルト18aとの接点の高さ位置は、他のローラ54a,54c,54dとエプロンベルト18aとの接点の高さ位置よりも高い。すなわち、ローラ54bは、ローラ54a,54c,54dよりも上方に突出している。ローラ54bとエプロンベルト18aとの接点は、ローラ54aとエプロンベルト18aとの接点とローラ54dとエプロンベルト18aとの接点とを結ぶ直線よりも上方に位置している。ローラ54aとエプロンベルト18aとの接点とローラ54dとエプロンベルト18aとの接点とは、同じ高さ位置であってもよいし、異なる高さ位置であってもよい。ローラ54cとエプロンベルト18aとの接点は、ローラ54aとエプロンベルト18aとの接点とローラ54dとエプロンベルト18aとの接点とを結ぶ直線よりも上方で且つローラ54bとエプロンベルト18aとの接点の下方に位置している。
【0058】
以上説明したように、上記実施形態に係るテンサーバー40は、支持体52においてローラ54a〜54dが着脱自在に保持されるので、ローラ54a〜54dの取り付けの有無を調整することにより、本体部50の幅方向におけるニップ位置P2を容易に調整することが可能になる。また、軸受56a〜56d及び各軸受58a〜58dの形状が互いに異なる支持体52,152同士を交換することにより。支持体52,152からの突出量が互いに異なるローラを保持したり、エプロンベルト18aとの接触面積が互いに異なるローラを保持したりすることができる。これにより、エプロンベルト18aによるスライバSのニップ力を容易に調整することができる。これらの結果、エプロンベルト18aによるスライバSの支持状態を容易に変更することができる。
【0059】
また、上記実施形態のテンサーバー40では、支持体52,152及び/又はローラ54a〜54dが、作業者が糸種に応じて適宜交換がなされる。支持体52,152及び/又はローラ54a〜54dには、識別可能な目印が設けられている。これにより、作業者は、例えば、取扱い説明書等(表)を見て容易に糸種に適合する支持体及び/又はローラに交換することが可能になる。したがって、スライバSの種類に応じて、各ローラ54a〜54dを支持体52,152に容易且つ正確に配置することができる。
【0060】
上記実施形態のテンサーバー40では、本体部50の延在方向と同じ方向に延在する回転軸を中心に回転可能なローラ54a〜54dが配置されているので、エプロンベルト18aが回転する際のテンサーバー40とエプロンベルト18aとの間の摩擦を低減することが可能になる。
【0061】
上記実施形態のドラフト装置6を備える紡績機1よれば、ドラフト装置6において、エプロンベルト18aによるスライバSの支持状態をスライバSに応じて高い自由度で変更することができる。これにより、スライバSに応じて、エプロンベルト18aによるスライバSの把持位置(ニップ位置)及び把持力が適切に調整されるようになる。この結果、品質の高い糸Yを生成することが可能になる。
【0062】
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は、上記実施形態に限定されない。
【0063】
上記実施形態では、支持体52,152の各軸受56a〜56d及び各軸受58a〜58dに対しローラ54a〜54dの取り付けの有無を調整することにより、本体部50の幅方向におけるニップ位置を容易に調整することを可能にする例を挙げて説明したが、本発明はこれに限定されない。例えば、
図12及び
図13に示されるように、テンサーバーでは、支持体153の各軸受53a〜53dに対し、軸部59aa〜59daの直径とエプロンベルト18aを支持するローラ部分の直径とが互いに異なる(大きくても小さくてもよい)段付きローラ59a〜59dを着脱自在かつ回転自在に配置してもよい。これにより、軸部59aa〜59daの直径は互いに同じであっても、ローラ部分の直径が互いに異なる段付きローラに交換することにより、支持体153からの突出量が互いに異なるローラを保持したり、エプロンベルト18aとの接触面積が互いに異なるローラを保持したりすることができる。これにより、エプロンベルト18aによるスライバSのニップ力を容易に調整することができる。
【0064】
上記実施形態又は上記変形例では、支持体52,152の各軸受56a〜56d及び各軸受58a〜58dに対し、ローラ54a〜54dを回転自在に保持する例を挙げて説明したが、回転しないようにローラ54a〜54dを保持する構成であってもよい。
【0065】
上記実施形態又は上記変形例では、エプロンベルト18aを支持する支持部材の例として、回転軸を中心に回転可能なローラを例に挙げて説明したが、本発明はこれに限定されない、例えば、
図14に示されるように、エプロンベルト18aに接触する部分のみが円弧形状に形成された支持部材154であってもよい。なお、エプロンベルト18aに接触する部分には、溝154aが形成されていてもよい。この場合、エプロンベルト18aが回転する際のテンサーバー40とエプロンベルト18aとの間の摩擦を低減することが可能になる。
【0066】
上記実施形態では、ローラ54a〜54dの断面が真円形状を呈する形態を一例に説明した。しかし、ローラの断面は、楕円形状を呈していてもよい。
【0067】
上記実施形態では、各軸受56a〜56d及び各軸受58a〜58dに対し、ローラ54a〜54dを上方から差し込むことにより、ローラ54a〜54dを支持体52,152に固定する例を挙げて説明したが、本発明はこれに限定されない。例えば、軸受を円形状の孔部として形成し、当該軸受に対し、軸方向にローラ54a〜54dをスライドさせながら挿入することにより、ローラを支持体に固定してもよい。
【0068】
上記実施形態では、ローラ54bとエプロンベルト18aとの接点が、他のローラ54a,54c,54dとエプロンベルト18aとの接点よりも高い位置である形態を一例に説明した。しかし、各ローラ54a〜54dとエプロンベルト18aとの接点の高さ位置が、ドラフト方向において同じであってもよい。
【0069】
紡績機は、空気紡績装置7を有する紡績機1以外であってもよく、例えば、リング精紡機でもよい。