【解決手段】道路劣化判定システムは、判定対象の道路の舗装面に接して、または判定対象の道路の舗装内において、判定対象の道路の振動を検出する検出部と、検出部が第1の時期において検出した判定対象の道路の振動を示す第1の振動情報と、第1の時期よりも過去の第2の時期において予め取得されている道路の振動を示す第2の振動情報とを比較することにより、判定対象の道路の劣化の状態を判定する状態判定部を備える。
【発明を実施するための形態】
【0016】
[実施形態]
以下、図を参照して道路劣化判定システム1の実施形態について説明する。初めに
図1を参照して、道路劣化判定システム1の構成の概要について説明する。
図1は、本実施形態における、道路劣化判定システム1の構成の概要を示す模式図である。ここでは、道路劣化判定システム1が、ある道路に適応される場合を一例にして説明する。以下、道路劣化判定システム1が舗装の劣化の状態を判定する道路を、判定対象道路RDと称する。
道路劣化判定システム1は、道路劣化判定装置100と、検出部200とを備える。以下、検出部200について説明する。
【0017】
[検出部200について]
検出部200は、接触型マイクなどの振動センサを備えている。この振動センサは、例えば、ピエゾ素子と、このピエゾ素子に接する検知突起を備えている(いずれも不図示)。この場合、振動センサは、検知突起に入力される振動をピエゾ素子によって電圧に変換して、変換した電圧を検出結果として出力する。検出部200は、判定対象道路RDに上述の検知突起を接触させることにより、振動源から判定対象道路RDに与えられる振動を、電圧変化として検出する。すなわち、検出部200は、空気の振動を介さずに判定対象道路RDの振動を検出する。
【0018】
この一例では、車両Vが判定対象道路RDを走行している場合について説明する。この一例の場合、車両Vは、走行に伴う振動を判定対象道路RDに対して与える。具体的には、車両Vは、タイヤTRと、判定対象道路RDとが接する点である加振点Pを振動源にして、判定対象道路RDに対して、走行に伴う振動を与える。検出部200は、判定対象道路RDの振動を検出する。すなわち、この判定対象道路RDの振動には、車両Vの走行により判定対象道路RDの加振点Pに与えられる振動が含まれる。
検出部200は、検出した振動を道路劣化判定装置100へ出力する。ここで、検出部200は、検出した振動を示す電圧信号をそのまま出力してもよく、この電圧信号を変換した情報を出力してもよい。以下においては、検出部200は、検出した加振点Pにおける振動を示す電圧信号を、検出振動情報IWPに変換して出力する場合について説明する。ここで、検出振動情報IWPには、検出部200が検出した振動の周波数毎の強度を示す情報が含まれる。この一例では、検出振動情報IWPが、振動の周波数毎の強さと、基準値との比を対数によって表現した値である場合について説明する。また、この一例では、この基準値が0dBである場合について説明する。また、この一例では、検出振動情報IWPとは、振動の周波数毎の強さを示す特性の情報である。
【0019】
なお、ここでは、道路劣化判定システム1が検出部200を1つ備える場合について説明したが、これに限られない。道路劣化判定システム1は、検出部200を複数備えていてもよい。
【0020】
また、ここでは、判定対象道路RDが、車両Vが走行する道路である場合について説明したが、これに限られない。判定対象道路RDは、車両Vが走行する公道であってもよく、飛行機が走行する滑走路や誘導路などの空港の設備であってもよい。また、判定対象道路RDは、サーキットコース等の公道以外の車道であってもよい。すなわち、判定対象道路RDは、舗装がされた場所であれば、いずれの場所であってもよい。
【0021】
ここで、検出部200が設置される場所について、より具体的に説明する。まず、判定対象道路RDの舗装の構成の一例を説明する。判定対象道路RDは、不図示の路床の上に、路盤RBと、表層APとが積層されて構成される。ここで路盤RBとは、路床の上に設けられ、表層APに均一な支持基盤を与えるとともに、表層APから伝えられた交通荷重を分散して路床に伝える役割を果たす層である。また、表層APとは、アスファルト混合物によって、路盤RBの不陸を整正するとともに、交通荷重を分散する役割を果たす層である。以下の説明では、表層APの最上面、すなわち、車両Vが走行する面を舗装面SFと称する。また、表層APのうち舗装面SFを除く部分と、路盤RBとを総称して、舗装SSFとも記載する。
検出部200は、判定対象道路RDの表層APに接して設置される。また、検出部200は、判定対象道路RDの舗装SSFに埋設される。また、検出部200は、判定対象道路RDの路床(不図示)に埋設される。この一例では、検出部200が判定対象道路RDの表層APに接して設置されている場合について説明する。
【0022】
なお、舗装の構成によっては、上述した層以外の層が積層される場合がある。例えば、二層構造系の舗装構造の場合には、上述した表層APに代えて、いずれもアスファルト混合物の層である表層と基層とが積層される場合がある。また、路盤RBには、上層路盤と下層路盤とが含まれる場合がある。また、例えば、透水性舗装の場合には、路床と路盤RBとの間にフィルター層が積層される場合がある。
【0023】
[道路劣化判定装置について]
次に、道路劣化判定装置100について説明する。検出部200と、道路劣化判定装置100とは、通信線L1と、通信線L2と、ネットワークNによって接続される。道路劣化判定装置100は、検出部200からネットワークNを介して検出振動情報IWPを取得する。道路劣化判定装置100は、検出部200から取得した検出振動情報IWPに基づいて、判定対象道路RDの舗装の劣化の状態を判定する。
【0024】
以下、
図2を参照して道路劣化判定装置100について説明する。
図2は、本実施形態における、道路劣化判定システム1の構成の一例を示す模式図である。
道路劣化判定装置100は、制御部110と、記憶部120とを備える。
記憶部120には、振動情報表TBLwpと、振動基準情報表TBLstdと、種類特性情報表TBLtypとが記憶される。
【0025】
以下、
図3を参照して、振動情報表TBLwpの概要について説明する。
図3は、本実施形態における、振動情報表TBLwpの一例を示す表である。振動情報表TBLwpには、検出部200が検出した、判定対象道路RDの振動を示す検出振動情報IWPが記憶される。以下、
図4を参照して、検出部200が取得する検出振動情報IWPの詳細について説明する。
【0026】
図4は、本実施形態における、検出部200による検出の一例を示す模式図である。検出部200は、ある時点において判定対象道路RDに与えられた振動を検出する。具体的には、検出部200は、ある時点において車両Vによって判定対象道路RD上の加振点Pに与えられた振動を検出する。ここで、ある時点とは、車両Vが
図4に示す検出位置LP1に到達した時点である。また、検出位置LP1に到達した時点において、車両VのタイヤTRと、舗装面SFとが接する点を、加振点P1と称する。
また、
図4に示す通り、車両Vが判定対象道路RDを走行する場合について説明する。ここで、
図4に示すxy直交座標系のうち、y軸は、判定対象道路RDと平行する方向を示す。また、x軸は、y軸と直交する方向であって、判定対象道路RDを横断する方向を示す。検出位置LP1とは、判定対象道路RDのある位置であって、x軸と平行する位置である。これにより、検出部200は、検出位置LP1に振動源である車両Vが到達した場合、判定対象道路RD上の加振点P1に与えられる振動を検出する。検出部200が検出した加振点P1に与えられる振動を示す検出振動情報IWPを、検出振動情報IWP1と称する。
【0027】
次に、
図3に戻り、振動情報表TBLwpについて説明する。振動情報表TBLwpには、検出振動情報IWPと、検出振動情報IWPによって示される振動が検出された日時を示す情報とが記憶される。ここで、検出振動情報IWPによって示される振動が検出された日時を示す情報を取得日時情報DTと称する。また、振動情報表TBLwpに記憶される取得日時情報DTに取得された検出振動情報IWPを振動情報WPと称する。
この一例では、加振点P1に与えられる振動を示す検出振動情報IWP1のうち、取得日時情報DT1の加振点P1の振動を示す検出振動情報IWP1を振動情報WP11と称する。また、加振点P1に与えられる振動を示す検出振動情報IWP1のうち、取得日時情報DT2の加振点P1の振動を示す検出振動情報IWP1を振動情報WP12と称する。また、加振点P1に与えられる振動を示す検出振動情報IWP1のうち、取得日時情報DT3の加振点P1の振動を示す検出振動情報IWP1を振動情報WP13と称する。
振動情報表TBLwpには、取得日時情報DTと、振動情報WPとが記憶される。また、取得日時情報DTと、振動情報WPとには、識別番号IDが関連付けられる。
この一例の場合、取得日時情報DT1と、振動情報WP11とには、識別番号ID1が関連付けられる。また、取得日時情報DT2と、振動情報WP12とには、識別番号ID2が関連付けられる。また、取得日時情報DT3と、振動情報WP13とには、識別番号ID3が関連付けられる。すなわち、この一例では、振動情報表TBLwpには、識別番号ID1として、取得日時情報DT1と、振動情報WP11とが記憶される。また、振動情報表TBLwpには、識別番号ID2として取得日時情報DT2と、振動情報WP12とが記憶される。また、振動情報表TBLwpには、識別番号ID3として取得日時情報DT3と、振動情報WP13とが記憶される。
【0028】
次に、
図2に戻り、振動基準情報表TBLstdについて説明する。振動基準情報表TBLstdには、検出部200が、過去に検出した判定対象道路RDの検出振動情報IWPが予め記憶されている。つまり、上述した振動情報表TBLwpには、取得日時情報DT毎に、取得日時情報DTの振動を示す検出振動情報IWPである振動情報WPが順次記憶される。これに対し、振動基準情報表TBLstdには、過去のある時点における検出振動情報IWPが記憶される。この過去のある時点とは、振動情報表TBLwpに記憶されるいずれの振動情報WPよりも以前の時点である。ここで、振動基準情報表TBLstdに記憶されている過去の検出振動情報IWPを、振動基準情報STDと称する。
また、振動基準情報表TBLstdには、判定対象道路RDと同一の構造の舗装された道路において検出された振動を示す情報が含まれる。具体的には、判定対象道路RDと同一の構造である舗装された道路である基準道路SR上の、ある点を振動源として加振する。この加振による振動を、振動を検出する装置によって検出する。この振動を検出する装置とは、検出部200と同一のものであってもよく、検出部200と同等の結果を検出できるものであればいずれの装置であってもよい。ここで、振動を検出する装置が検出した基準道路SRに与えられる振動を示す情報を基準道路振動情報SRDと称する。すなわち、振動基準情報表TBLstdには、基準道路振動情報SRDが記憶される。この振動基準情報表TBLstdに記憶される振動基準情報STDと、基準道路振動情報SRDとには、それぞれ識別番号IDが関連付けられる。
【0029】
次に、種類特性情報表TBLtypについて説明する。種類特性情報表TBLtypには、基準道路SRにおいて検出された舗装の劣化の種類を示す情報が記憶される。以下、基準道路SRにおいて検出された正常な振動の特性を示す情報と、各種劣化が生じた基準道路SRにおいて検出された振動の特性を示す情報との差を示す情報を種類特性情報TYPと称する。種類特性情報表TBLtypには、劣化の種類毎の種類特性情報TYPが予め記憶される。ここで、劣化の種類とは、ひび割れ、及び空洞等などである。
【0030】
以下、種類特性情報TYPの詳細について説明する。ここでは、舗装された道路に生じる劣化がひび割れである場合を一例として説明する。ひび割れが生じた基準道路SRを加振し、この加振による振動を振動検出装置によって検出する。これにより検出された振動には、ひび割れ特有の振動が含まれる。このひび割れ特有の振動の特性を示す情報と、劣化が生じていない基準道路SRの振動の特性を示す情報との差を示す情報をひび割れの種類特性情報TYPとする。また、長さや深さの異なるひび割れが生じた基準道路SRを加振し、この加振による振動を検出することにより、ひび割れの長さや深さに応じた振動波形が得られる。このひび割れ毎の振動の特性を示す情報に基づいて、ひび割れの長さや深さに応じた種類特性情報TYPを取得する。同様の方法を用いることにより、ひび割れに限らず、空洞においてもこれらの劣化の種類に応じた種類特性情報TYPが得られる。
種類特性情報表TBLtypには、上述の方法によって得られた複数の種類特性情報TYPが記憶される。また、複数の種類特性情報TYPには、種類特性情報TYP毎に識別番号IDが関連付けられる。
【0031】
なお、ここでは基準道路SRが判定対象道路RDと同一の構造を有する場合について説明したが、これに限られない。基準道路振動情報SRDと、種類特性情報TYPとを測定する舗装された道路は、判定対象道路RDと同一の構造を有していなくてもよい。基準道路振動情報SRDと、種類特性情報TYPとを測定する舗装された道路は、いずれの構造であってもよい。
また、ここでは種類特性情報TYPが、基準道路振動情報SRDの振動の特性を示す情報と、各種劣化が生じた基準道路SRにおいて検出された振動の特性を示す情報との差を示す情報である場合について説明したがこれに限られない。種類特性情報TYPは、劣化程度が異なる基準道路SRにおいて検出された振動の特性を示す情報同士の差を示す情報であってもよい。また、種類特性情報表TBLtypは、劣化の程度が軽い場合の種類特性情報TYPと、劣化の程度が重い場合の種類特性情報TYPとを記憶してもよい。
【0032】
次に、制御部110について、
図2を参照して説明する。
制御部110は、その機能部としての状態判定部111と、種類判定部112とを備える。
状態判定部111は、記憶部120に記憶されている振動情報表TBLwpと、振動基準情報表TBLstdとに基づいて、判定対象道路RDの舗装SSF内部の劣化の状態を判定する。劣化の状態とは、劣化の有無、及び劣化の程度である。この劣化の程度とは、例えば、空洞の大きさや、ひび割れの長さ等である。以下、状態判定部111が、判定対象道路RDの舗装SSF内部の劣化の状態を判定する例について説明する。
【0033】
[判定例1:経時劣化の状態の判定1]
状態判定部111は、記憶部120から振動情報表TBLwpを読み出す。状態判定部111は、振動情報表TBLwpに記憶される振動情報WPのうち、ある日時の振動情報WPと、ある日時より過去の振動情報WPと比較する。これにより、状態判定部111は、過去からある日時までの検出位置LP1における舗装SSF内部の劣化の状態を判定する。以下、
図5と、
図6と、
図7とを参照して状態判定部111の判定について説明する。
【0034】
図5は、本実施形態における、ある日時の振動情報WPの一例を示すグラフである。また、
図6は、本実施形態における、ある日時より過去の振動情報WPの一例を示すグラフである。また、
図7は、本実施形態における、ある日時と、ある日時より過去の振動情報WPの差の一例を示すグラフである。
図5は、取得日時情報DT2における振動情報WP12を示すグラフである。
図5において、振動情報WP12は、波形WWP12によって示される。
図5のグラフにおいて、横軸は周波数を示す。また、縦軸は、周波数毎の振動レベルを示す。
図5に示す通り、振動情報WP12は、30Hz付近において−110dB程度の振動レベルである。また、振動情報WP12は、30Hz付近から90Hz付近まで振動レベルが−70dB程度まで上昇する。また、振動情報WP11は、90Hz付近から800Hz付近までの間、振動レベルが−70dB程度で安定する。また、振動情報WP11は、800Hz付近から900Hz付近まで振動レベルが−50dB程度まで上昇する。また、振動情報WP11は、900Hz付近から1200Hz付近までの間、振動レベルが−80dB程度まで減少する。
【0035】
図6は、取得日時情報DT1における振動情報WP11を示すグラフである。
図6において、振動情報WP11は、波形WWP11によって示される。
図6のグラフにおいて、横軸は周波数を、縦軸は振動レベルを示す。
図6に示す通り、この一例では、振動情報WP11は、30Hz付近において−110dB程度の振動レベルである。また、振動情報WP11は、30Hz付近から90Hz付近まで振動レベルが−60dB程度まで上昇する。また、振動情報WP11は、90Hz付近から800Hz付近までの間、振動レベルが−70dB程度で安定する。また、振動情報WP11は、800Hz付近から900Hz付近まで振動レベルが−50dB程度まで上昇する。また、振動情報WP11は、900Hz付近から1200Hz付近までの間、振動レベルが−80dB程度まで減少する。
【0036】
図7は、振動情報WP11から振動情報WP12を引いた値である差分値dvを示すグラフである。
図7のグラフにおいて、差分値dvは、波形Wdvによって示される。
図7に示す通り、差分値dvは、いずれの周波数においてもほぼ0dB程度であるが、250Hz付近を中心に−10dB程度まで減少する。
状態判定部111は、差分値dvが所定のしきい値より大きい場合、検出位置LP1における舗装SSF内部の劣化があると判定する。
なお、ここでは差分値dvが振動情報WP11から振動情報WP12を引いた場合について説明したが、これに限られない。差分値dvは、振動情報WP12から振動情報WP11を引いた値でもよい。
【0037】
[判定例2:経時劣化の状態の判定2]
状態判定部111は、記憶部120から振動情報表TBLwpと、振動基準情報表TBLstdとを読み出す。状態判定部111は、振動情報表TBLwpに記憶される振動情報WPのうち、ある日時の振動情報WPと、振動基準情報表TBLstdに記憶される振動基準情報STDとを比較する。これにより、状態判定部111は、検出位置LP1における舗装SSF内部の劣化の状態を判定する。具体的には、状態判定部111は、振動情報WPから振動基準情報STDを引いた値が所定のしきい値より大きい場合、検出位置LP1における舗装SSF内部の劣化があると判定する。
なお、ここでは状態判定部111が振動情報WPから振動基準情報STDを引いた値に基づいて舗装SSF内部の劣化の状態を判定する場合について説明したが、これに限られない。状態判定部111は、振動基準情報STDから振動情報WPを引いた値に基づいて過去からある日時までの検出位置LP1における舗装SSF内部の劣化の状態を判定してもよい。
【0038】
[判定例3:経時劣化の状態の判定3]
状態判定部111は、記憶部120から振動情報表TBLwpと、振動基準情報表TBLstdとを読み出す。状態判定部111は、振動情報表TBLwpに記憶される振動情報WPのうち、ある日時の振動情報WPと、振動基準情報表TBLstdに記憶される基準道路振動情報SRDとを比較する。これにより、状態判定部111は、過去からある日時までの検出位置LP1における舗装SSF内部の劣化の状態を判定する。具体的には、状態判定部111は、振動情報WPから基準道路振動情報SRDを引いた値が所定のしきい値より大きい場合、検出位置LP1における舗装SSF内部の劣化があると判定する。
なお、ここでは、状態判定部111が、振動情報WPから基準道路振動情報SRDを引いた値に基づいて検出位置LP1における舗装SSF内部の劣化の状態を判定する場合について説明したが、これに限られない。状態判定部111は、振動基準情報STDから振動情報WPを引いた値に基づいて検出位置LP1における舗装SSF内部の劣化の状態を判定してもよい。
【0039】
これにより、状態判定部111は、ある日時の振動情報WPと、ある日時より過去の振動情報WPとを比較することにより、過去からある日時までの検出位置LP1における舗装SSF内部の劣化の状態を判定する。また、状態判定部111は、ある日時の振動情報WPと、それより以前に取得された振動基準情報STDとを比較することにより、過去からある日時までの検出位置LP1における舗装SSF内部の劣化の状態を判定する。また、状態判定部111は、ある日時の振動情報WPと、基準道路SRにおいて検出された基準道路振動情報SRDとを比較することにより、過去からある日時までの検出位置LP1における舗装SSF内部の劣化の状態を判定する。
【0040】
次に、
図2に戻り、種類判定部112について説明する。ここで、状態判定部111が判定したある日時の振動情報WPと、ある日時より過去の振動情報WP、振動基準情報STD、または基準道路振動情報SRDとを比較した結果を差分情報dIと称する。つまり、差分情報dIとは、ある日時の振動情報WPの特性を示す情報と、ある日時より過去の振動情報である振動情報WP、振動基準情報STD、または基準道路振動情報SRDとの特性を示す情報との特性の差を示す情報である。種類判定部112は、記憶部120に記憶されている種類特性情報表TBLtypを読み出す。種類判定部112は、種類特性情報表TBLtypに記憶される種類特性情報TYPのいずれかと、差分情報dIとを比較する。これにより、状態判定部111は、検出位置LP1における舗装SSF内部の劣化の種類を判定する。具体的には、種類特性情報TYPは、差分情報dIから種類特性情報TYPを引いた値が所定のしきい値より大きい場合、検出位置LP1における舗装SSF内部の劣化がいずれの種類であるかを判定する。より具体的には、種類特性情報TYPが示す特性うち、劣化毎の特定の周波数帯域における特性を示す情報と、差分情報dIとを比較する。これにより、状態判定部111は、検出振動情報IWPにおける舗装SSF内部の劣化の種類を判定する。
【0041】
この一例では、種類判定部112は、ひび割れの種類特性情報TYPと、差分情報dIとの差が所定のしきい値よりも大きい場合、ひび割れがあると判定する。
種類判定部112は、ひび割れの種類特性情報TYPと、差分情報dIとの差の大きさに基づいてひび割れの程度を判定する。具体的には、種類判定部112は、ひび割れの種類特性情報TYPに含まれる情報のうち、特定の周波数帯域である20Hz〜100Hz、および1000Hz以上の帯域における種類特性情報TYPと、差分情報dIとの差が大きい場合には、ひび割れが顕著である判定をする。ひび割れが顕著であるとは、判定対象道路RDに存在するひび割れが長い、又は複数あることを示す。
【0042】
また、この一例では、種類判定部112は、空洞の種類特性情報TYPと、差分情報dIとの差が所定のしきい値よりも大きい場合、空洞があると判定する。
種類判定部112は、空洞の種類特性情報TYPと、差分情報dIとの差の大きさに基づいて空洞の程度を判定する。具体的には、種類判定部112は、空洞の種類特性情報TYPに含まれる情報のうち、特定の周波数帯域である100Hzから1000Hzまでの帯域における特性と、差分情報dIとの差が大きい場合には空洞が顕著である判定をする。より具体的には、種類判定部112は、空洞の種類特性情報TYPに含まれる情報のうち、特に100Hzから500Hzまでの帯域における種類特性情報TYPと、差分情報dIとの差が大きい場合には、空洞があると判定する。また、種類判定部112は、空洞の特定の周波数帯域のうち、特に500Hzから1000Hzまでの帯域における種類特性情報TYPと、差分情報dIとの差が大きい場合には、空洞が顕著であると判定する。空洞が顕著であるとは、判定対象道路RDに存在する空洞の径が大きい、又は複数あることを示す。
ここで、特定の周波数帯域である20Hz〜100Hz、および1000Hz以上の帯域を第1特定周波数範囲と称する。また、特定の周波数帯域である100Hzから1000Hzまでの帯域を第2特定周波数範囲と称する。種類判定部112は、ひび割れの種類特性情報TYPに含まれる情報のうち、特に第1特定周波数範囲に基づいて判定対象道路RDの舗装SSF内部の劣化の種類を判定する。また、種類判定部112は、空洞の種類特性情報TYPに含まれる情報のうち、特に第2特定周波数範囲に基づいて判定対象道路RDの舗装SSF内部の劣化の種類を判定する。
【0043】
なお、ここの一例では、種類判定部112は、劣化の種類がひび割れである場合と、空洞である場合について説明するが、これに限られない。種類判定部112は、ひび割れと、空洞とに限らず、劣化の種類に応じた種類特性情報TYPに基づいて劣化の条件が成立するか否かを判定する。
【0044】
次に、道路劣化判定装置100の道路劣化判定プログラムPrg10に基づく動作について
図8を参照して説明する。
図8は、本実施形態における、道路劣化判定装置100の動作の一例を示す流れ図である。道路劣化判定装置100は、道路劣化判定プログラムPrg10に基づいて、
図5に示すステップS110からステップS190までを実行する。ここで、道路劣化判定プログラムPrg10とは、道路劣化判定装置100が、検出部200が検出した検出振動情報IWPに基づいて、道路の劣化の状態を判定するための制御プログラムである。
【0045】
制御部110は、検出部200が検出した加振点Pにおける検出振動情報IWPを記憶部120の振動情報表TBLwpへ振動情報WPとして記憶する(ステップS120)。状態判定部111は、振動情報表TBLwpに記憶される振動情報WPのうち、ある日時の振動情報WPを読み出す(ステップS130)。状態判定部111は、ある日時の振動情報WPと、ある日時よりも過去の振動情報である振動情報WP、振動基準情報STD、または基準道路振動情報SRDとを比較する(ステップS140)。状態判定部111は、ある日時の振動情報WPと、ある日時よりも過去の振動情報である振動情報WP、振動基準情報STD、または基準道路振動情報SRDとの差が所定のしきい値よりも大きいと判定した場合(ステップS140;YES)には、処理をステップS155に進める。一方、状態判定部111は、ある日時の振動情報WPと、ある日時よりも過去の振動情報である振動情報WP、振動基準情報STD、または基準道路振動情報SRDとの差が所定のしきい値よりも小さいと判定した場合(ステップS140;NO)には、判定対象道路RDが劣化していない判定をする(ステップS150)。
【0046】
種類判定部112は、種類特性情報表TBLtypに記憶される種類特性情報TYPのうち、ひび割れの種類特性情報TYPを読出す(ステップS155)。種類判定部112は、差分情報dIと、ひび割れの種類特性情報TYPとを比較する(ステップS160)。種類判定部112は、差分情報dIと、ひび割れの種類特性情報TYPとの差が所定のしきい値よりも大きいと判定した場合(ステップS160;YES)には、処理をステップS175に進める。一方、種類判定部112は、差分情報dIと、ひび割れの種類特性情報TYPとの差が所定のしきい値よりも小さいと判定した場合(ステップS160;NO)には、判定対象道路RDに生じている劣化の状態がひび割れである判定をする(ステップS170)。
種類判定部112は、種類特性情報表TBLtypに記憶される種類特性情報TYPのうち、空洞の種類特性情報TYPを読み出す(ステップS175)。種類判定部112は、差分情報dIと、空洞の種類特性情報TYPとを比較する(ステップS180)。種類判定部112は、差分情報dIと、空洞の種類特性情報TYPとの差が所定のしきい値よりも大きいと判定した場合(ステップS180;YES)には、判定対象道路RDに生じている劣化の状態が空洞である判定をする(ステップS200)。一方、種類判定部112は、差分情報dIと、空洞の種類特性情報TYPとの差が所定のしきい値よりも小さいと判定した場合(ステップS180;NO)には、判定対象道路RDが劣化している判定をする(ステップS190)。
【0047】
以上説明したように、本実施形態の道路劣化判定システム1は、検出部200と、道路劣化判定装置100とを備える。
検出部200は、判定対象道路RDの舗装面SFに接して、または判定対象道路RDの舗装SSF内において、判定対象道路RDの振動を検出する。また、状態判定部111は、検出部200がある日時において検出した判定対象道路RDの振動を示す振動情報WPと、ある日時よりも過去の振動情報である振動情報WP、振動基準情報STD、または基準道路振動情報SRDとを比較することにより、判定対象道路RDの劣化の状態を判定する。これにより、本実施形態の道路劣化判定システム1は、判定対象道路RDのある日時における状態と、ある日時より過去の振動情報とを比較することにより、判定対象道路RDの劣化の状態を判定することができる。つまり、本実施形態の道路劣化判定システム1は、判定対象道路RDの劣化の状態を判定することができる。
【0048】
また、状態判定部111は、判定対象道路RDの舗装SSF内の劣化の状態を判定する。具体的には、検出部200が判定対象道路RDの舗装SSFに接して、または判定対象道路RDの舗装SSF内において、判定対象道路RDの振動を検出する。これにより、本実施形態の道路劣化判定システム1は、判定対象道路RDの舗装SSF内部の劣化の状態を判定することができる。
【0049】
また、振動基準情報STDとは、過去のある時点における検出振動情報IWPである。状態判定部111は、記憶部120に記憶される振動情報WPと、振動基準情報STDとを比較することにより、判定対象道路RDの劣化の状態を判定する。これにより、本実施形態の道路劣化判定システム1は、判定対象道路RDの過去のある時点における状態と、判定対象道路RDのある日時における状態とを比較することにより、判定対象道路RDの劣化の状態を判定することができる。つまり、本実施形態の道路劣化判定システム1は、判定対象道路RDの舗装SSF内部の経時による劣化の状態をより精度よく判定することができる。
【0050】
また、基準道路振動情報SRDとは、振動を検出する装置が検出した基準道路SRに与えられる振動を示す情報である。状態判定部111は、振動情報WPと、基準道路振動情報SRDとを比較することにより、判定対象道路RDの劣化の状態を判定する。これにより、本実施形態の道路劣化判定システム1は、基準道路SRの状態と、判定対象道路RDのある日時における状態とを比較することにより、判定対象道路RDの劣化の状態を判定することができる。つまり、本実施形態の道路劣化判定システム1は、判定対象道路RDの舗装SSF内部の経時による変化をより精度よく判定することができる。
【0051】
また、記憶部120には、種類特性情報表TBLtypが記憶される。種類特性情報表TBLtypは、道路の劣化の種類毎に、劣化の種類に対応する種類特性情報TYPが識別番号IDによって関連付けられた情報である。種類判定部112は、差分情報dIと、劣化の種類に応じた種類特性情報TYPとを比較することより、判定対象道路RDの劣化の種類を判定する。本実施形態の道路劣化判定システム1は、検出部200がある日時において検出した判定対象道路RDの振動を示す振動情報WPと、種類特性情報TYPとを比較する。これにより、判定対象道路RDの劣化の種類を判定することができる。つまり、本実施形態の道路劣化判定システム1は、判定対象道路RDの舗装SSF内部の劣化の状態をより精度よく判定することができる。
【0052】
また、劣化の種類には、ひび割れと、空洞とが含まれ、種類特性情報表TBLtypには、ひび割れの種類特性情報TYPと、空洞の種類特性情報TYPとが含まれる。種類判定部112は、記憶部120に記憶されているひび割れの種類特性情報TYPのうち、第1特定周波数範囲に基づいて判定対象道路RDのひび割れの有無、及び程度を判定する。また、種類判定部112は、記憶部120に記憶されている空洞の種類特性情報TYPのうち、第2特定周波数範囲に基づいて空洞の有無、及び程度を判定する。本実施形態の道路劣化判定システム1は、検出部200がある日時において検出した判定対象道路RDの振動を示す振動情報WPと、種類特性情報TYPとを比較する。これにより、判定対象道路RDの劣化の種類を判定することができる。つまり、本実施形態の道路劣化判定システム1は、判定対象道路RDの舗装SSF内部の劣化の状態をより精度よく判定することができる。
【0053】
なお、これまで、1つの振動センサが判定対象道路RDに設置されており、この1つの振動センサが検出部200であるとして説明したが、これに限られない。判定対象道路RDには、複数の振動センサが設置されており、これら複数の振動センサから選択された特定の振動センサが検出部200である、という構成であってもよい。
具体的には、振動センサは、判定対象道路RDにおいて、ある間隔において複数設置されている。例えば、判定対象道路RDの全長が1kmである場合であって、かつ100個の振動センサを等間隔に設置する場合には、これらの振動センサは、10m間隔で設置される。これらの振動センサは、設置された位置の判定対象道路RDの振動を検出する。
【0054】
ここで、これらの振動センサは、判定対象道路RDの平均的な振動を検出しているものと、判定対象道路RDの特異的な振動を検出しているものとに分けられる場合がある。ここで、ある振動センサが判定対象道路RDの特異的な振動を検出している場合、この振動センサ設置された位置の舗装の状態は、平均的な振動を検出した振動センサが設置されている位置の舗装の状態とは異なる場合がある。例えば、特異的な振動を検出した振動センサが設置されている位置の舗装の状態は、平均的な振動を検出した振動センサが設置されている位置の舗装の状態に比べて、劣化の程度が大きい場合がある。この場合には、これら複数の振動センサのうち、特異的な振動を検出した振動センサが、検出部200として選択されることにより、道路劣化判定システム1は、判定対象道路RDのうち、舗装の劣化の程度が大きい位置を判定対象にすることができる。
なお、上述した振動センサとは、振動検出装置の一例である。
つまり、検出部200は、判定対象道路RDのうち、舗装面から路盤までの舗装の構造が同一である範囲について、判定対象道路RDの振動を検出する複数の振動検出装置のうち、選択された特定の振動検出装置であってもよい。同一の舗装の構造とは、例えば、路盤RBと、表層APとが、同一の材料、かつ同一の厚さで積層されている舗装の構造である。
【0055】
また、本実施形態の道路劣化判定システム1が備える検出部200とは、複数の振動センサのうち、判定対象道路RDの平均的な振動を検出する振動センサであってもよい。これにより、本実施形態の道路劣化判定システム1は、判定対象道路RDのうち、劣化の進行の程度が平均的な状態である場所の振動を継時的に検出することができる。
【0056】
すなわち、本実施形態の道路劣化判定システム1によれば、検出部200を設置するに際して、複数の振動センサが検出した判定対象道路RDの振動に基づいて、検出部200を選定することができる。
【0057】
ここで、1つの振動センサが判定対象道路RDに設置され、この1つの振動センサが検出部200である場合には、判定対象道路RDの劣化の判定を精度高く行うに際して、適当な場所を選定することが困難である場合があった。
本実施形態の道路劣化判定システム1によれば、判定対象道路RDの劣化の判定を精度高く行うに際して複数の振動センサから、適当な振動センサを選定することができる。つまり、本実施形態の道路劣化判定システム1によれば、判定対象道路RDのうち、適切な場所を選定して劣化の判定を行う場合の時間と、費用とを低減することができる。
【0058】
更に、本実施形態の道路劣化判定システム1は、複数の振動センサのうちから特定の振動センサである検出部200が選定された場合、他の振動センサの判定対象道路RDの振動の検出を停止してもよい。また、複数の振動センサのうちから特定の振動センサである検出部200が選定された場合、判定対象道路RDから特定の振動センサ以外の振動センサを回収してもよい。これにより、本実施形態の道路劣化判定システム1は、判定対象道路RDの劣化の判定の継続に要する費用を低減することができる。
【0059】
なお、ここでは、記憶部120が道路劣化判定装置100の内部に備えられている場合を一例として説明しているが、これに限られない。例えば、記憶部120は、道路劣化判定装置100の外部に備えられていてもよい。
【0060】
なお、制御部110が備える各部は、メモリおよびCPU(中央演算装置)により構成され、制御部110が備える各部の機能を実現するためのプログラムをメモリにロードして実行することによりその機能を実現させるものであってもよい。
【0061】
また、制御部110が備える各部の機能を実現するためのプログラムをコンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録して、この記録媒体に記録されたプログラムをコンピュータシステムに読み込ませ、実行することにより処理を行ってもよい。なお、ここでいう「コンピュータシステム」とは、OSや周辺機器等のハードウェアを含むものとする。
【0062】
また、「コンピュータシステム」は、WWWシステムを利用している場合であれば、ホームページ提供環境(あるいは表示環境)も含むものとする。
また、「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、フレキシブルディスク、光磁気ディスク、ROM、CD−ROM等の可搬媒体、コンピュータシステムに内蔵されるハードディスク等の記憶装置のことをいう。さらに「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、インターネット等のネットワークや電話回線等の通信回線を介してプログラムを送信する場合の通信線のように、短時間の間、動的にプログラムを保持するもの、その場合のサーバやクライアントとなるコンピュータシステム内部の揮発性メモリのように、一定時間プログラムを保持しているものも含むものとする。また上記プログラムは、前述した機能の一部を実現するためのものであってもよく、さらに前述した機能をコンピュータシステムにすでに記録されているプログラムとの組み合わせで実現できるものであってもよい。