【実施例1】
【0020】
本発明の電柱内への芯材挿入工法を説明する。なお、
図1は、各工程を示す概略図であり、主に、全体像を示すものであるため、本願発明に用いるフック7c、吊り金具9、継金具部材11、追加吊りワイヤー12、13等との具体的な連結状態は省略して図示したものである。
【0021】
(前工程)
【0022】
まず、
図2に示すように、例えば、高架橋の電柱基礎部1に建稙された中空コンクリート製電柱2の下部の周壁に、空洞3内へのぞき穴兼用の硬化材充填用の充填孔8を設ける。
【0023】
なお、上記電柱2は、天端キャップ2aなどで天端が閉鎖された、例えば、外径400mm、内径260mmの筒状からなり、例えば、長さが約11mであり、上記電柱基礎部1に基礎面1bから約1m埋め込まれて建て込まれている。
【0024】
また、上記電柱2の天端キャップ2aを取り外す、或いは破壊などして、上記電柱2の天端(又は上部)を開放し、上端開口部2bを形成させる。
【0025】
(第一工程)
【0026】
次に、
図3に示すように、例えば、軌陸型クレーン車7の吊りワイヤー7bの先端に固定されたフック7cと、芯材4の上端に固定して設けた吊り金具部9とを係合して連結し、上記クレーン7と上記芯材4とを連結する。
【0027】
なお、上記芯材4は、H鋼や丸鋼などの剛性の高い棒体であり、例えば、直径130mm、長さ4m、重さ500kgの鋼棒である。
【0028】
そして、上記軌陸型クレーン車7により、上記吊りワイヤー7bを縮小して上記芯材4を吊下げて、そして、上記芯材4の下端が、上記電柱2の上端面よりも上になるまで上昇させる。
【0029】
なお、上記吊り金具部9は、上記電柱2内に挿入可能な大きさに形成され、例えば、
図3に示すように、吊下げ用開口部9a(吊下げ用係合部)と、止め棒用開口部9b(止め棒係合部)とを有し、該吊下げ用開口部9aは、上記吊り金具部9の上部に設けられ、シャックル金具や吊下げ用ワイヤーの取付金具などが着脱自在に挿入(係合)されるように形成され、また、上記止め棒用開口部9bは、上記吊り金具部9の下部に設けられ、後述する止め棒10が着脱自在に挿入(係合)されるように形成される。
【0030】
そして、
図4に示すように、上記フック7cに、例えば、帯ワイヤー19を介して設けたシャックル金具20が、上記吊り金具部9の吊下げ開口部9a内に挿入されて連結され、上記クレーン7により上記芯材4が吊下げられるようになる。
【0031】
なお、上記フック7cは大きいので、上記吊り金具部9の吊下げ用開口部9aに挿入できず、そのため、上記帯ワイヤー19及びシャックル金具20などの連結手段を介して、上記フック7cと上記吊り金具部9とが連結される。
【0032】
そして、
図1(a)、に示すように、上記クレーン7により、吊りワイヤー7bを伸長させて、上記芯材4を下降させて、上記芯材4を、上記電柱2の上端開口部2bから電柱2内の空洞3内に挿入し、更に、上記芯材4を、上記吊り金具部9の止め棒用開口部9bが、上記電柱2の上端面より若干上部に位置する所望の位置まで、下降させる。
【0033】
(第二工程)
【0034】
次に、
図5に示すように、上記吊り金具部9の上記止め棒用開口部9bに、棒状の止め棒10を挿入し、上記クレーン7により、上記吊りワイヤー7bを伸長させて、上記芯材4を下降させ、そして、
図6に示すように、上記止め棒10が上記電柱2の上端面で支えらえて、上記止め棒10を介して、上記芯材4が上記電柱2に支持されて固定されるようにする。
【0035】
なお、上記止め棒10(芯材固定手段)は、上記電柱2の空洞3の直径より
も長い棒体であって、上記芯材4を吊下げることができる強度を有するものである。
【0036】
また、上記芯材4は、例えば、500kgなどと重量が大きいため、その重力により、上記電柱2の上端面に上記止め棒10を載置するだけで、上記電柱2に固定されるようになる。
【0037】
(第三工程)
【0038】
次に、
図1(b)に示すように、上記吊り金具部9の吊下げ用開口部9aから、上記シャックル金具20を取り外し、上記吊り金具部9から上記フック7cを取り外して、上記芯材4と上記クレーン7との連結を解除すると共に、
図1(c)に示すように、上記フック7cに継金具部材11を係合して連結すると共に、該継金具部材11と上記吊り金具部9とを、追加吊りワイヤー12などの長尺部材を介して連結し、上記クレーン7と上記芯材4とを上記追加吊りワイヤー12を介して連結する。
【0039】
なお、上記継金具部材11は、上記電柱2内に挿入できる大きさに形成され、例えば、
図7に示すように、上側吊下げ用開口部11a(上側吊下げ用係合部)と、止め棒用開口部11b(止め棒用係合部)と、下側吊下げ用開口部11c(下側吊下げ用係合部)とを有し、該上側吊下げ用開口部11aは、上記継金具部材11の上部に設けられ、シャックル金具や吊下げワイヤーの取付金具などが着脱自在に挿入(係合)されるように形成され、また、上記止め棒用開口部11bは、上記継金具部材11の中央部に設けられ、上記止め棒10が着脱自在に挿入(係合)されるように形成され、また、上記下側吊下げ用開口部11cは、上記継金具部材11の下部に設けられ、上記追加吊りワイヤー12の取付金具などが着脱自在に挿入(係合)されるように形成される。
【0040】
そして、
図8に示すように、上記フック7cに帯ワイヤー19を介して設けたシャックル金具20が、上記継金具部材11の上側吊下げ用開口部11a内に挿入されて連結され、また、上記追加吊りワイヤー12の上端に設けられた取付金具12aが、上記下側吊下げ用開口部11cに挿入されて連結され、また、上記追加ワイヤー12の下端に設けられた取付金具12bが、上記吊り金具部9の吊下げ用開口部9aに挿入されて連結され、上記クレーン7と上記芯材4とが上記追加吊りワイヤー12を介して連結されるようになる。
【0041】
(第四工程)
【0042】
次に、
図1(d)に示すように、上記クレーン7により、上記吊りワイヤー7bを縮小させて、上記追加吊りワイヤー12を介して、上記芯材4を吊下げて、上記吊り金具部9を若干上昇させ、これにより、上記止め棒10による上記芯材4と電柱2との固定が解除されるので、上記吊り金具9の止め棒用開口部9bから上記止め棒10を抜き取る。
【0043】
なお、上記追加吊りワイヤー12のみで、上記芯材4を電柱基礎部1まで下降させ、上記電柱2の底部1aに着地させることができるような場合には、上記継金具部材11を省略して、上記フック7cと上記追加吊りワイヤー12の上端とを連結するようにしてもよい。
【0044】
(第五工程)
【0045】
次に、上記クレーン7により、上記吊りワイヤー7bを伸長させて、上記芯材4を更に下降させて、上記継金具部材11の止め棒用開口部11bが、上記電柱2の上端面より若干上部に位置する所望の位置まで、下降させる。
【0046】
なお、上記追加吊りワイヤー12のみで、上記芯材4を電柱基礎部1まで下降させ、底部1aに着地させることができるような場合には、上記芯材4を底部1aまで下降し、第六工程に移行せずに、後工程に移行するようにする。
【0047】
(第六工程)
【0048】
次に、
図9に示すように、上記継金具部材11の上記止め棒開口部11bに、上記止め棒10を挿入し、上記クレーン7により、上記吊りワイヤー7bを伸長させて、上記芯材4を下降させ、そして、
図10に示すように、上記止め棒10が上記電柱2の上端面で支えらえて、上記止め棒10を介して、上記芯材4が上記電柱2に支持して固定されるようにする。
【0049】
(第七工程)
【0050】
次に、
図1(e)に示すように、上記継金具部材11の上側吊下げ用開口部11aから、上記シャックル20を取り外すと共に、必要があれば、上記フック7cから帯ワイヤー19も取り外すことにより、上記継金具部材11から上記フック7cを取り外し、上記クレーン7と上記継金具部材11との連結を解除すると共に、
図1(f)に示すように、上記フック7cと上記継金具部材11とを、他の追加吊りワイヤー13などの他の長尺部材により連結し、上記クレーン7と上記追加吊りワイヤー12とを上記他の追加吊りワイヤー13を介して連結する。
【0051】
具体的には、上記フック7cと、上記他の追加吊りワイヤー13の上端に設けられた取付金具(図示せず)とを連結し、また、下端に設けられた取付金具(図示せず)を上記継金具部材11の上側吊下げ用開口部11aに挿入して連結し、上記クレーン7と上記追加吊りワイヤー12とを他の追加吊下げワイヤー13を介して連結するようにする。
【0052】
なお、上記において、上記フック7cと上記他の追加吊りワイヤー13の上端とを連結したが、上記他の追加吊りワイヤー13のみでは、芯材4を底部1aに着地させることができない場合には、更に他の追加吊りワイヤーを追加するために、上記フック7cに、他の継金具部材11を連結すると共に、該他の継金具部材11と上記他の追加吊りワイヤー13の上端とを連結し、上記フック7cと上記他の吊下げワイヤー13とを他の継金具部材11を介して連結するようにする。
【0053】
(第八工程)
【0054】
そして、上記クレーン7により、上記吊りワイヤー7bを縮小させて、上記追加ワイヤー12及び他の追加ワイヤー13を介して、上記芯材4を吊下げて、上記継金具部材11を若干上昇させて、これにより、上記止め棒10による上記芯材4と電柱2との固定が解除されるので、上記継金具部材11の止め棒用開口部11bから上記止め棒10を抜き取る。
【0055】
(第九工程)
【0056】
次に、
図1(g)に示すように、上記クレーン7により、上記吊りワイヤー7bを伸長して、上記芯材4を所望の位置まで下降させる。
【0057】
なお、上記所望の位置は、
図1(h)に示すように、上記芯材4を、電柱基礎部1の底部1aまで着地させることができる場合には、該底部1aであり、着地させることができない場合には、上記他の継金具部材11の止め棒用開口部11bが、上記電柱2の上端面より若干上部に位置する位置となる。
【0058】
そして、かかる第九工程において、上記芯材4を底部1aに着地させることができる場合には、該芯材4を底部1aに着地させて、第十工程に移行せずに、後工程に移行するようにする。
【0059】
(第十工程)
【0060】
上記第九工程において、まだ、上記芯材4を底部1aに着地させることができない場合には、着地できるまで、上記第六工程から第九工程までを必要なだけ繰り返す。
【0061】
(後工程)
【0062】
上記芯材4を底部1aに着地させた後は、上記フック7aと上記他の追加吊りワイヤー13との連結を解除して、各長尺部材、継金具部材等をそのまま上記電柱2内に挿入し、
図11に示すように、上記充填孔8を介して、電柱外から内に無収縮モルタルなどの硬化材5を挿入し、上記電柱2の基部と上記芯材4の基部との間に、該硬化材を充填させて、硬化させ、上記芯材4を上記電柱2内に固定するようにする。
【0063】
また、上記電柱2の上端に天端キャップ2aを設けて、上記電柱2の天端を閉鎖するようにする。そして、上記充填孔8は孔埋めされる。
【0064】
本発明の工法によれば、利用する軌陸型クレーン車の揚程の半分以上よりも高い電柱、例えば、15m電柱など、11m以上の電柱に芯材を挿入することができるようになる。
【0065】
また、軌陸型クレーン車のクレーン高さを低く抑えることができるので、安全性を高めることができる。
【0066】
また、電柱2の補強作業の迅速化を図ることができる。
【実施例2】
【0067】
上記底部1aに載置された芯材4は、上記電柱2内の中心位置に設置され、固定されることが望ましい。また、上記芯材4を上記電柱2内に挿入する際も、上記芯材4が上記電柱2内の中心位置となるように、下降することが、スムーズに入れ込むことができる。
【0068】
そこで、本発明の第2実施においては、上記芯材4を上記電柱2内に挿入する前に、上記芯材4に間隔保持部材14を設ける。
【0069】
上記間隔保持部材14は、例えば、
図12に示すように、塩ビ管などの円筒状の管15と、該管15の外周面に固定した、弾性材よりなるクッション材16とよりなり、該クッション材16は、例えば、上記管15の外周面に巻き付けて固定したホース管などがある。そして、例えば、2つの上記間隔保持部材14を上記芯材4に挿入して、該芯材4の上部と下部にそれぞれ固定するようにする。
【0070】
なお、上記間隔保持部材14の管15の内径は、例えば、上記芯材4の外径より若干大きく形成され、また、上記間隔保持部材14の外径は、上記間隔保持部材14を固定した芯材4を上記電柱2内に挿入した時に、スムーズに挿入できるように、上記電柱の内面から10mm〜20mm程度離間できる程度の大きさに形成されることが望ましく、例えば、内径が260mmの電柱には、外径が220mm〜240mmとなる間隔保持部材14を用いるのが好ましい。
【0071】
なお、上記クッション材16として、
図12に示すように、ホース管を巻き付けたもの他に、例えば、
図13に示すように、例えば、スポンジからなる複数のクッション材片16aから構成するようにし、該複数のクッション材片16aを、上記管14aの外周面に、周方向に沿って所望の間隔離間して、固定したものであってもよく、例えば、周方向に3等分した位置に3つの上記クッション材片16aをそれぞれ固定したものであってもよい。
【0072】
また、上記クッション材16の形状は、上記間隔保持部材14を上記電柱2内に挿入した時に、上記芯材4が、上記電柱2内の中心に位置するような形状となる。
【0073】
本発明においては、上記間隔保持部材14を固定した芯材4を、上記電柱2内に挿入するようにしたので、上記芯材4をスムーズに挿入できると共に、上記芯材4を上記電柱2の底部1aの略中心位置に設置できるようになる。
【0074】
また、上記間隔保持部材14は、緩衝材としての効果もある。
【0075】
なお、
図14に示すように、コンクリート製の筒状の中空電柱2の内周面の一側には、下端から上端に向かって軸方向に延びる、中心側に突出したレイタンス部17が形成されており、かかるレイタンス部17に、上記クッション材16が当接すると、芯材4を電柱内の中心に位置させることができない場合がある。
【0076】
そこで、上記クッション材16の外周部の一側に、上下方向に延びる空隙部18を設け、該空隙部18に、上記レイタンス部17が位置するようにして、上記間隔保持部材14を固定した芯材4を、電柱に挿入する時に、上記クッション材16が、上記レイタンス部17に接触しないようにして、上記芯材4を電柱2内の中心に位置させるようにしてもよい。