(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2017-89356(P2017-89356A)
(43)【公開日】2017年5月25日
(54)【発明の名称】橋梁点検システム
(51)【国際特許分類】
E01D 22/00 20060101AFI20170421BHJP
【FI】
E01D22/00 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】書面
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2015-227093(P2015-227093)
(22)【出願日】2015年11月2日
(71)【出願人】
【識別番号】301078113
【氏名又は名称】株式会社 帝国設計事務所
(72)【発明者】
【氏名】若山 昌信
【テーマコード(参考)】
2D059
【Fターム(参考)】
2D059AA05
2D059AA13
2D059GG39
(57)【要約】
【課題】特許文献1の橋梁点検システムでは目視検査専用機として使用されているが、前記システムの道路占用幅が大きく道路交通の支障となっていた。また、歩道上の点検作業では歩道部内を安全に走行可能とするための該システムの軽量・小型化が求められてきた。さらに、鉛直アーム及び水平アーム延長時においては鉛直アームの下端に大きなモーメントが作用し、鉛直アームが大きく弓状に変形していた。このため、カメラ注視点位置精度への影響も見受けられた。
【解決手段】上記課題を解決するための橋梁点検システムは
図1の第1可動アーム2〜第3可動アーム4を有する橋梁点検装置において、前記第2アーム3と前記第3可動アーム4の継ぎ手構造を曲げモーメントを受けないピン構造とし、前記第3可動アームの姿勢保持は該可動アームに搭載しているセンサーの情報を元に自動的に電子制御可能な移動式カウンターウエイトを搭載し、水平及び任意の傾斜角を保持できるような構造及び機構としている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
橋梁の桁下を点検するための点検手段と、
走行用台車と、
走行用台車に固定され水平方向の伸縮が可能な第1可動アームと、
前記第1可動アームの先端部に直交するように接続され、下端を鉛直方向に伸縮可能な第2可動アームと、
前記第2可動アーム下端に接続された第3可動アームと、
前記第3可動アームは伸縮機構を有し、その先端に取り付けられた点検用カメラや検査・計測装置を搭載可能な雲台等とを具備する橋梁点検システムにおいて、
前記第3可動アームは、竹の子状に多段に重ねられた複数の異径管によって構成され、該異径管の基部側に伸縮抵抗軽減用合面フォルダーが設けられているとともに、該異径管の先端側に伸縮抵抗軽減用合面リングが設けられ、該異径管の重なり延長調節構造を有し、該異径管の先端側伸縮抵抗軽減用合面リング固定用フォルダーとを備えて構成されていることを特徴とする橋梁点検システム。
【請求項2】
前記第3可動アームにおける伸縮機構は、前記異径管の内側に配置され、該複数の異径管のうち、先端側の異径管に固定されたフレキラックと、
後端側の異径管に設置され、前記フレキラックと噛み合うピニオンギヤと、
前記ピニオンギヤを回転駆動する回転手段と、
前記フレキラックの巻き取り機構とを備えて構成されていることを特徴とする請求項1記載の橋梁点検システム。
【請求項3】
前記巻き取り機構は回転可能な前記フレキラックの巻き取り用プーリーと、
前記プーリーの自動巻き取り手段とから構成されていることを特徴とする請求項1又は2記載の橋梁点検システム。
【請求項4】
前記第3可動アームには、該第3可動アームの傾斜角を計測する傾斜角センサーが設置されているとともに、カウンターウエイトが移動可能に設置され、
前記傾斜角センサーによって検出された傾斜角の情報に基づいて該カウンターウエイトの移動量若しくは移動位置を算出する制御手段を備えて構成されていることを特徴とする請求項1〜3のうち、何れか1項に記載の橋梁点検システム。
【請求項5】
前記第2可動アームと第3可動アームの接続構造は、該第2可動アームに曲げモーメントを生じさせないピン構造であることを特徴とする前記請求項1〜4のうち、何れか1項に記載の橋梁点検システム。
【請求項6】
前記第2可動アームと該第3可動アームとの間には、ダンパーが介在されていることを特徴とする請求項1〜5のうち、何れか1項に記載の橋梁点検システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、走行用台車、コの字形可動アーム、カメラ検査・計測装置等の搭載可能な雲台、情報通信・制御システムから構成される橋梁点検システムにおいて、走行用台車の小型・軽量化とカメラ撮影の注視点位置情報精度の向上を目的としたコの字形可動アームの軽量化と構造に関するものである。
【0002】
走行用台車は、点検対象橋梁の車道や歩道部を走行する機能を有するトラックベースが使用されてきた。
コの字形可動アームは、走行用台車に固定され、橋梁上面から橋梁側面へ移動しさらに橋梁下面位置へX軸、Y軸、Z軸方向に移動可能な伸縮と回転できる構造を有し点検のために使用するカメラ取り付け可能な雲台等を点検対象となる位置まで移動する。
雲台は、コの字形アームの先端に搭載されてカメラ検査・計測装置等を取り付けることが可能で上下左右に向きを変える機能を有している。
情報通信・制御システムは、コの字形アームの伸縮と回転指令を該アームに取り付けられたアクチュエータに伝えるとともに先端カメラの撮影画像情報やカメラ注視点の位置情報を操作室内にあるパソコンや点検員に伝える機能を有する。
【背景技術】
【0003】
従来、この種の橋梁点検システムは、車両本体、電子制御により先端側をX軸、Y軸、Z軸の3軸方向に変更可能に構成した多関節の可動アーム、電子制御用パソコンを備えた操作室、上下・左右に伸縮可能な側方監視用補助アーム、操作室内に設置された電子制御機器と、可動アームの先端に搭載された構造物の検査画像を操作室内の点検・診断用モニターに送る構造物の撮影用機器、可動アーム及び補助アームに搭載された監視カメラ、可動アーム及び構造物撮影用機器の動作を操作室内から確認可能な三面図または3次元CGソフトを搭載していた。
(特許文献1参照)
【0004】
このほか、特許文献2は橋梁等の構造物についてどの位置を撮影したか画像から容易に特定することができる構造物の点検装置を提供することを目的とするものである。点検装置は点検台車に上下動可能に取り付けた垂直ロッドを介して水平アームを点検対象物の下方に配置し、水平アーム上を走行する走行台車に立設した保持アームに撮影カメラを取り付ける構造としている。そして、保持アームを回動させるとともに撮影カメラを上下方向に回動させて撮影方向を設定して点検対象物の下面の点検箇所を撮影する。その際に、保持アームに固定された角度表示板及び水平アーム上の走行台車の停止位置を示す目盛を撮影カメラにより撮影することで、点検箇所の撮影画像に関連付けて撮影カメラの撮影位置及び撮影方向に関する撮影画像を得ることができる。(特許文献2参照)
【0005】
高強度繊維強化プラスチック併用伸縮装置は伸縮性能の高い多段リンク構造と曲げ剛性の高い高強度繊維強化プラスチックの多段のロッド及び駆動用のアクチュエーターを組み合わせることで軽量で曲げ剛性の大きい伸縮機構を有する。(特許文献3参照)
【0006】
特許文献4はカメラと撮影用機器を遠隔操作で浮上・空中静止可能な飛翔体に搭載し、多関節可動アームの先端に接続することで飛翔体側に撮影用機器の重量を受け持たせる。その結果、アームの軽量化が容易となり、移動用車両に小型車の使用が可能となるシステム。(特許文献4参照)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特許第5002756号
【特許文献2】特許第4782163号
【特許文献3】特願2013−161789
【特許文献4】特願2013−145886
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献1の技術では橋梁を点検(測定)するには大型で強固な鋼製アームとそれを支持するための重量のある走行用台車を用いる必要があった。
また、車道上の点検作業では大掛かりな道路の交通規制や道路占用により交通障害の要因となっており、さらに歩道上の点検では大型の車体の安定性を図るためのアウトリガー先端に集中荷重が作用し、床版破壊等の懸念が生じていた。
そこで交通障害を避けるには、小型・軽量の走行用台車を使用することが有効であり、そのためには、走行用台車に取り付けられるコの字形可動アームの軽量化や構造の見直しを図る必要がある。また、軽量化に伴うたわみや変形への対応や、従来技術の長尺アームの変形によるカメラ注視点精度の向上も必要であった。
このため、コの字形可動アームを軽量化するための具体的な課題は
先端アームの軽量化では鋼材からCFRP等の軽量材料への変更が考えられるが、使用する材料の特性により伸縮性能が著しく低下したりたわみの影響が生じやすくなる。
コの字形アームの変形では下側の水平アームより順番に軽量化を図ることが必要であったが、先行技術(特許文献1)ではアームを複雑に折りたたむ構造であったり片持ち梁りの曲げモーメントを受ける構造のため、大掛かりなアクチュエーターが必要であった。
コの字アームの中間部(鉛直アーム)は下側の水平アームからの曲げを受けない構造とすることが最良であったが、先端の水平アームを伸縮させることにより重量バランスが変化すると接続構造がピン構造の場合水平保持が難しくなりさらに不安定化する可能性があった。
このため、コの字アームの(鉛直アーム)下端部分をピン構造とする場合は風や橋面上の走行車両の振動の影響を受けやすくなるなどの問題があった。
【0009】
前記特許文献2ではアームと走行用台車はアームと分離されて搬入されるため、現場で組み立て作業を行うなどの準備時間を必要とする。
前記特許文献2の点検システム側面アームの昇降は無段回方式のためアーム長が大きくなり、設置撤去に多くの時間を要する。
【0010】
前記特許文献3の多段リンクの伸縮機構では伸縮装置の段数が増加すると伸縮性能が著しく低下することや構造が複雑になりリンク部品等の調整が必要となる。また、アーム縮小時は折たたまれた構造が横方向に拡大するため、運搬や収納作業の支障となる。
【0011】
前記特許文献4の非翔体による第3アームの旋回ではアームの慣性力が大きい場合安定した制御とならない。また、水平移動時は大きな慣例力を打ち消すための傾斜角が大きく、細かな姿勢変化では横方向推力が得られないため、大きな動作となるが、目標位置に静止させることが自動的な飛行制御では難しい。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決するための本発明の橋梁点検システムは、
橋梁の桁下を点検するための点検手段と、
走行用台車と、
走行用台車に固定され水平方向の伸縮が可能な第1可動アームと、
前記第1可動アームの先端部に直交するように接続され、下端を鉛直方向に伸縮可能な第2可動アームと、
前記第2可動アーム下端に接続された第3可動アームと、
前記第3可動アームは伸縮機構を有し、その先端に取り付けられた点検用カメラや検査・計測装置を搭載可能な雲台等とを具備する構成において
前記橋梁点検システムの第3可動アームは、竹の子状に多段に重ねられた複数の異径管によって構成され、該異径管の基部側に伸縮抵抗軽減用合面フォルダーが設けられているとともに、該異径管の先端側に伸縮抵抗軽減用合面リングが設けられ、該異径管の重なり延長調節構造を有し、該異径管の先端側伸縮抵抗軽減用合面リング固定用フォルダーとを備えて構成されていることを特徴とする。
【0013】
前記橋梁点検システムの第3可動アームにおける伸縮機構は、前記異径管の内側に配置され、該複数の異径管のうち、先端側の異径管に固定されたフレキラックと、
後端側の異径管の外側に設置され、前記フレキラックと噛み合うピニオンギヤと、
前記ピニオンギヤを回転駆動する回転手段と、
前記フレキラックの巻き取り機構を備えて構成されている。
【0014】
前記橋梁点検システムの巻き取り機構は回転可能な前記フレキラックの巻き取り用プーリーと、
前記プーリーの電動またはバネによる自動巻き取り手段とから構成されている。
【0015】
前記橋梁点検システムの第3可動アームには、該第3可動アームの傾斜角を計測する傾斜角センサーが設置されているとともに、カウンターウエイトが移動可能に設置され、
前記傾斜角センサーによって検出された傾斜角の情報に基づいて該カウンターウエイトの移動量若しくは移動位置を算出するパソコン等による制御手段を備えて構成されている。
また、前記制御手段により手動またはパソコン等により前記第3可動アームの姿勢制御が可能となる。
【0016】
前記橋梁点検システムの第2可動アームと第3可動アームの接続構造は、該第2可動アームに曲げモーメントを生じさせないピン構造とし、前記ピン構造の回転中心より前記第3可動アームの重心位置が下側となる様に該可動アームを配置する。
【0017】
前記橋梁点検システムの第2可動アームと該第3可動アームとの間には、前記ピン構造による前記第3可動アームの回転可能な向きにダンパーが介在されている。
【発明の効果】
【0018】
本開発の橋梁点検システムは橋梁の桁下を点検するための点検手段と、
走行用台車と、
走行用台車に固定され水平方向の伸縮が可能な第1可動アームと、
前記第1可動アームの先端部に直交するように接続され、下端を鉛直方向に伸縮可能な第2可動アームと、
前記第2可動アーム下端に接続された第3可動アームと、
前記第3可動アームは伸縮機構を有し、その先端に取り付けられた点検用カメラや検査・計測装置を搭載可能な雲台等とを具備する橋梁点検システムにおいて、
前記第3可動アームを竹の子状に多段に重ねられた複数の異径管によって構成し、該異径管の基部側に伸縮抵抗軽減用合面フォルダーが設けられているとともに、該異径管の先端側に伸縮抵抗軽減用合面リングが設けられ、該異径管の重なり延長調節構造を有し、該異径管の先端側伸縮抵抗軽減用合面リング固定用フォルダーとを備えて構成されていることによりFRP等の軽量材料管を使用した場合においてもアームが容易に水平方向に伸縮することが可能になる。
【0019】
前記第3可動アームにおける伸縮機構は、前記異径管の内側に配置され、該複数の異径管のうち、先端側の異径管に固定されたフレキラックと、
後端側の異径管の外側に設置され、前記フレキラックと噛み合うピニオンギヤと、
前記ピニオンギヤを回転駆動する回転手段と、
前記フレキラックの巻き取り機構を備えて構成されていることにより、
前記ピニオンギヤの正逆回転により、
それと噛み合う前記フレキラックが第3可動アームの軸方向の伸縮方向に誘導され、
また、前記フレキラックに固定された先端側の異径管も誘導され、さらにそれに引きずられるように前記の竹の子状に多段に重ねられた複数の異径管が軸方向に移動する。
【0020】
前記巻き取り機構は回転可能な前記フレキラックの巻き取り用プーリーと、
前記プーリーの自動巻き取り手段とから構成されていることにより、前記第3可動アームの縮小時に誘導される前記フレキラックを自動的に巻き取ることが可能となる。
【0021】
前記第3可動アームには、該第3可動アームの傾斜角を計測する傾斜角センサーが設置されているとともに、カウンターウエイトが移動可能に設置され、
前記傾斜角センサーによって検出された傾斜角の情報に基づいて該カウンターウエイトの移動量若しくは移動位置を算出する制御手段を備えて構成されていることにより常に水平或いは指定された角度に姿勢を保持することが可能となる。
【0022】
前記第2可動アームと前記第3可動アームの接続構造は、該第2可動アームに曲げモーメントを生じさせないピン構造であることにより該アームの鉛直性を保つとともに変形量が最小限となり該アーム下端及びカメラ注視点の位置計測精度の向上が可能となる。また、前記第3可動アームの旋回用減速機への負荷が軽減し装置の小型化と軽量化が可能となる。
【0023】
前記第2可動アームと該第3可動アームとの間には、ダンパーが介在されていることにより、前記第2可動アームと前記第3可動アームの接続構造が該第2可動アームに曲げモーメントを生じさせないピン構造であるときの風や橋梁上面を移動する車両からの振動等の該第3可動アームへの影響を緩和する効果がある。
【0024】
前記の軽量化による実施例での試算では、先行技術文献1で示されている鋼製アームの橋梁点検システムに比べ、本発明の試作段階参考値は総重量約1.5トンでクローラ1本当たりの最大作用力は4.4トン/m2となる。この事から総重量は従来の1/5程度となる。(参考値)
【0025】
前記特許文献1の車体をクローラー走行型の小型台車に変更することにより車幅の縮小が可能となり、また前記特許文献1の車両ではアウトリガーの設置が必要であったが、本発明の走行台車ではアウトリガーが不要となり低速走行での移動も容易で、さらに積雪路面での走行も可能となる。なお、前記第2可動アーム幅を除く道路占有幅の最小値は約1.5mで特許文献1の橋梁点検システムのアウトリガー張り出し0.5m時最小幅で道路占有幅2.7mとの比較では約55%(参考値)
また、本発明の前記走行用台車の小型化に伴い、前記台車にカウンターウエイトを搭載し転倒に関する安全性の向上も図られている。さらに、昇降可能な前記走行台車とすることにより、現場でのアーム移動用ロッドの取り付け作業時間の短縮が可能となる。
また、前記の小型化により交通渋滞緩和が可能となる。特に歩道内の走行時の効果は大きい。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【
図1】前記橋梁点検システムの背面イメージ図(実施例)
【
図2】前記橋梁点検システムの側面イメージ図(実施例)
【
図3】前記橋梁点検システムの平面イメージ図(実施例)
【
図4】噛合チェーン式電動昇降装置の横方向伸縮保持機構側面イメージ図(実施例)
【
図5】炭素繊維強化プラスチック(CFRP)管の伸縮構造(実施例)
【
図6】炭素繊維強化プラスチック(CFRP)管の移動制限構造(実施例)
【
図8】第3可動アームの伸縮機構とフレキラックの自動巻き取り構構(実施例)
【
図9】第2可動アームと第3可動アームのリンク部の詳細(実施例)
【
図11】GPSを利用した写真注視点撮影位置計測支援システム(実施例)
【発明を実施するための形態】
【0027】
本発明の橋梁点検システムの形態は、
図1〜
図11に示すように橋梁18の桁下を点検するための点検手段と、
前記コの字形アームを搭載し橋梁18の上面を移動することが可能な車両や昇降機能を有し低速移動が可能な高所作業車等の走行用台車1と、
走行用台車1に固定され水平方向の伸縮が可能な第1可動アーム2と、
前記第1可動アーム2の先端部に直交するように接続され、下端を鉛直方向に伸縮可能な第2可動アーム3と、
前記第2可動アーム3の下端に接続された第3可動アーム4と、
前記第3可動アーム4は伸縮機構を有し、その先端に取り付けられた点検用カメラ13や検査・計測装置を搭載可能な雲台14等とを具備する構成となっている橋梁点検装置において、
前記橋梁点検システムの第3可動アーム4は、FRP等の軽量材料管を竹の子状に多段に重ねられた複数の異径管によって構成され、該異径管の基部側に伸縮抵抗軽減用合面フォルダー17が設けられているとともに、該異径管の先端側に伸縮抵抗軽減用合面リング17−2が設けられ、該異径管の重なり延長調節構造17−5を有し、該異径管の先端側伸縮抵抗軽減用合面リング固定用フォルダー17−4とを備えて構成されている。
【0028】
前記橋梁点検システムの第3可動アーム4における伸縮機構は、
図8の実施例に示す前記異径管16の内側に配置され、該複数の異径管のうち、先端側の異径管に固定されたフレキラック21と、
後端側の異径管の外側に設置され、前記フレキラックと噛み合うピニオンギヤ24と、
前記ピニオンギヤ24を回転駆動する回転手段と、
前記フレキラック21の巻き取り機構15とを備えて構成されている。
【0029】
前記橋梁点検システムの巻き取り機構15は
図8の実施例に示す回転可能な前記フレキラック21の巻き取り用プーリーと、
前記プーリーの自動巻き取り手段(電動モータ、油圧モータ、バネ等による)とから構成されている。実施例
図8では自動巻取り手段の動力伝達手段として丸ベルト15−2を採用している。
【0030】
前記橋梁点検システムの第3可動アーム4には、
図9の実施例に示す該第3可動アーム4の傾斜角を計測する傾斜角センサー60−4が設置されているとともに、
図7に示すカウンターウエイト10が移動可能に設置され、
前記傾斜角センサー60−4によって検出された傾斜角の情報に基づいて該カウンターウエイト10の移動量若しくは移動位置を算出する制御手段を備えて構成されているため、
図7の実施例では自動または手動によりカウンタウエイトを移動し前記第3可動アームの姿勢制御を可能としている。
【0031】
前記橋梁点検システムの第2可動アーム3と第3可動アーム4の接続構造は、
図7、
図9の実施例に示すように該第2可動アーム3に曲げモーメントを生じさせないピン構造とし、前記第3可動アームの重心位置が前記ピン構造の下側となる様に配置する。
【0032】
前記橋梁点検システムの第2可動アーム3と該第3可動アーム4との間には、前記第3可動アームの回転可能な向きにダンパー22が介在されている。
図9の実施例に示すダンパーは棒状であるが、軸部に設けるロータリーダンパー方式等も可能。
【実施例】
【0033】
前記発明の実施例を
図1〜
図11に示す。
【0034】
前記走行用台車1の実施例は
図1〜
図3に示す橋梁18の調査・点検の分野において小型の昇降可能なゴムクローラー方式または多輪型の台車構造を有し路面への荷重の分散化を図り、前記台車にカウンターウエイトを搭載することでアウトリガーを設置せずに点検作業時の移動を可能としている。
【0035】
前記第1可動アーム2の実施例は
図1〜3に示すように前記走行用台車1に固定され横方向へ伸縮可能とするための水平保持ガイド管の8−2,8−3、8−4併用噛合いチェーン式電動昇降装置8と前記第2可動アームを支持するための多段に伸縮可能なスライドレールで構成されている。
前記水平保持ガイド管併用噛合いチェーン式電動昇降装置8は駆動力を電気または電子制御により操作室5の内側に格納可能な伸縮方式としている。
【0036】
前記第2可動アーム3の実施例は
図1〜
図3に示す電動の多段式伸縮機構3とし、小型化と前記第2可動アームの折りたたみ構造の簡素化を図っている。また、前記第2可動アームの抜け出し防止のための移動制限構造を設け外部からの固定部品の省略を可能にし、長尺な伸縮機構を実現した。さらに、前記移動制限構造は異径管の隙間に移動制限プレートを固定するための手法として凸型ピン構造を併用している。また、前記第2可動アーム3は
図1〜3の多段式鉛直方向伸縮アーム構造で、その先端には前記第3可動アーム旋回用の手段20を備えている。
【0037】
前記操作室5は実施例
図1〜
図3の走行用台車1の本体に搭載または固定され、前記操作室5には位置情報計測用GPSアンテナ6、GPS受信機6−1、PC40,PC用モニター40−1と、映像用機器6−2を搭載している。
また、前記操作室5はパソコン等の電子機器の破損防止部品として防振ゴムを配置する。
さらに前記操作室5上部に配置するGPSアンテナ6の設置に配慮しマルチパス防止プレートまたはシートを装備する。
【0038】
前記カメラ注視点19の位置情報計測支援手段は実施例
図11に記載の前記操作室5搭載のGPSアンテナ6、GPS受信機6−1、第1〜3可動アームに搭載の角度及び伸縮長センサー(60−1〜60−4)と
図11に示すようにパソコン40、PC用モニタ40−1から構成されている。
また、前記位置情報計測支援手段では車両の位置の計測精度向上のためのGPSアンテナ6及びGPS受信機6−1、注視点位置情報(x、y、z)を計測のための前記各可動アーム搭載センサー、座標変換ソフトやパソコンを搭載する。また、パソコンでは可動アームの位置情報やカメラ注視点位置情報を元に3DCGによる点検・操作支援を行う。
【0039】
前記カメラ13の撮影支援手段では損傷位置の写真撮影のための点検用カメラ14、パンチルトやズーム操作のための制御において前記電動の雲台14と前記点検用カメラ13の無線制御装置、高画質の画像通信手段、静止画の取得のための動画キャプチャー機器を搭載している。
【産業上の利用可能性】
【0040】
前記軽量小型橋梁点検システムは橋梁下面及び橋台・橋脚等の点検用システムとして利用可能であるほか、海岸擁壁や大型水路擁壁の点検用システムとしても適用可能である。
【0041】
前記発明の軽量小型橋梁点検システムは昇降機能が装備されたクローラー付き走行用台車を利用した活用の他、車輪付き走行用台車を利用することも可能である。
【0042】
前記発明の軽量小型橋梁点検システムはGPSを利用した位置計測情報システムであり、地盤状態や走行路面の状態に影響されないため大型運搬車の上に搭載した形態での移動においても計測及び点検作業を行うことは可能である。
【0043】
前記発明の軽量小型橋梁点検システムに装備されている前記第3可動アームの水平姿勢保持機構は該アームの長尺化時の関節等の曲げ剛性に対する負担軽減やアーム先端部の荷重変化に柔軟に対応可能であるため、船舶や車両の自動制御型水平安定保持装置としての活用も可能である。
【0044】
前記発明の軽量小型橋梁点検システムは従来のバケット式橋梁点検車に比べ軽量で、小型なため、歩道上を走行可能で点検作業を実施することが可能であるほか、車道上においても道路占用幅員を小さくすることが可能であるため、道路交通への影響も必要最小限に抑えることが可能。
【0045】
前記発明の軽量小型橋梁点検システムは走行部にゴムクローラーを採用しているため、前記のシステムの荷重の分散化が可能であり歩・車道に敷設されているタイル・ブロックなどを破損することなく作業を実施可能である。
【0046】
前記発明の軽量小型橋梁点検システムの前記の第1可動アームに搭載されている噛合チェーン式電動昇降装置の水平保持ガイドは橋梁点検システムでの適用以外に可動軸方向に収納スペースに余裕のない箇所での水平方向伸縮アクチュエーターとしての利用が可能となる。
【0047】
前記発明の軽量小型橋梁点検システムに装備されている前記第3可動アームに使用している高強度繊維強化プラスチック管の伸縮機構及び構造は油圧シリンダー等を使用しないため軽量な長尺のアームの多段伸縮機構として利用が可能である。
【0048】
前記発明の軽量小型橋梁点検システムに搭載されている前記の第2可動アームの伸縮部の移動制限構造は合い面部に凸型のピン構造を有し、伸縮アームの抜け防止が可能である。
【符号の説明】
【0049】
1 走行用台車
2 第1可動アーム
3 第2可動アーム
3−1 第2可動アーム可端取り付け金物
4 第3可動アーム
5 操作室
6 GPSアンテナ
6−1 受信機
6−2 映像機器
7 発電機
8 噛合チェーン式電動昇降装置
8−1 ジップチェーン
8−2 ガイド管A
8−3 ガイド管B
8−4 チェーン保持部品
8−5 合い面用部品
8−6 リンク部品
8−7 ロッド
8−9 ガイド管誘導部品
9 スライダー用モーター
10 カウンターウエイト
11 制御装置収納ベース
11−1 制御装置搭載部のピン構造用金物固定ボルト
12 台車用キャビン
13 点検用カメラ
14 雲台
15 フレキラック巻き取り機
15−1 フレキラック巻き取り機用モータ
15−2 丸ベルト
16 炭素繊維強化プラスチック管(CFRP管)
17 伸縮抵抗軽減用合い面フォルダー
17−2 伸縮抵抗軽減用合面リング
17−4 先端側伸縮抵抗軽減用合い面リング固定用フォルダー
17−5 異径管の重なり延長調節構造(移動制限シート)
17−6 固定ボルト
18 橋梁
19 カメラ注視点
20 旋回用アクチュエーター
20−1 パン方向回転角計測用センサー
20−2 旋回用モータ
20−3 旋回角度計測センサー
20−4 センサー用ブラケット
20−5 ピン構造用ピン
21 フレキラック
22 ダンパー
22−1 ダンパー固定用金物
23 スライダー
24 ピニオンギヤ
30 凸型ピン
30−1 移動制限プレート
30−2 第2アーム伸縮管
30−3 MCナイロン、アルミニュウム、鉄
40 PC(パソコン)
40−1 PC用モニター
50 無線通信用送受信機
60−1 第1可動アームの伸縮長計測センサー
60−2 第2可動アームの伸縮長計測センサー
60−3 第3可動アームの旋回角計測センサー
60−4 第3可動アームの傾斜角センサー