(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2017-89666(P2017-89666A)
(43)【公開日】2017年5月25日
(54)【発明の名称】合成樹脂製滑り軸受
(51)【国際特許分類】
F16C 33/74 20060101AFI20170421BHJP
F16C 33/20 20060101ALI20170421BHJP
F16C 17/04 20060101ALI20170421BHJP
F16F 9/54 20060101ALI20170421BHJP
B60G 13/06 20060101ALI20170421BHJP
【FI】
F16C33/74 Z
F16C33/20 Z
F16C17/04 Z
F16F9/54
B60G13/06
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2015-216039(P2015-216039)
(22)【出願日】2015年11月2日
(71)【出願人】
【識別番号】000103644
【氏名又は名称】オイレス工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100098095
【弁理士】
【氏名又は名称】高田 武志
(72)【発明者】
【氏名】黒瀬 講平
(72)【発明者】
【氏名】斉藤 勝紀
【テーマコード(参考)】
3D301
3J011
3J016
3J069
【Fターム(参考)】
3D301AA60
3D301AA74
3D301CA09
3D301DB02
3D301DB17
3J011AA10
3J011AA12
3J011BA09
3J011DA01
3J011RA10
3J011SC01
3J016AA03
3J016BB17
3J069AA50
3J069CC36
3J069DD02
3J069DD39
3J069DD44
(57)【要約】 (修正有)
【課題】下部ケースに径方向に変動荷重等が作用して下部ケースに上部ケースに対して径方向の変位が生じた場合でも、スラスト軸受が配される上部ケース及び下部ケース間の環状空間と外部とを連通するラビリンス通路を形成する隙間を規定する上部ケース及び下部ケースの径方向の干渉を回避し得、当該面に変形、損傷、折損等の不具合を生じさせることがなく、相対摺動に起因する摺動特性の低下を生じることがない合成樹脂製滑り軸受を提供すること。
【解決手段】合成樹脂製滑り軸受1は、外周側面2を有した上部ケース3と、嵌合隙間4をもって外周側面2に対面した内周側面5を有すると共に上部ケース3に対しての径方向Aの変位が外周側面2への内周側面5の接触で規制されて嵌合隙間4の幅をもって可能であるように上部ケース3が被せられた下部ケース6と、上部ケース3及び下部ケース6間の環状空間7に配されたスラスト滑り軸受9とを具備している。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
円筒状の外周側面を有した合成樹脂製の上部ケースと、径方向に対して交差して伸びる円筒状の嵌合隙間をもって上部ケースの外周側面を囲繞するように当該上部ケースの外周側面に径方向において対面した円筒状の内周側面を有すると共に上部ケースに対しての径方向の変位が上部ケースの外周側面への当該内周側面の接触で規制されて当該嵌合隙間の径方向の最小の幅をもって可能であるように上部ケースが嵌合されて当該上部ケースが被せられた合成樹脂製の下部ケースと、上下方向における上部ケース及び下部ケース間の環状空間に配された合成樹脂製のスラスト滑り軸受とを具備している合成樹脂製滑り軸受であって、該環状空間の径方向の外周部を合成樹脂製滑り軸受外に連通させると共に上部ケースと下部ケースとの互いに対面する面間からなる外周側の隙間と、該環状空間の径方向の内周部を前記嵌合隙間を介して合成樹脂製滑り軸受外に連通させると共に上部ケースと下部ケースとの互いに対面する面間からなる内周側の隙間とのうちで径方向に対して交差して伸びる隙間は、前記嵌合隙間の径方向の最小の幅以上の径方向の幅を有している合成樹脂製滑り軸受。
【請求項2】
上部ケースは、径方向の内方に設けられていると共に円筒状の垂下外周側面を有した円筒状の上部ケース内側垂下部を具備しており、下部ケースは、径方向の内方に設けられていると共に垂下外周側面に径方向において対面した円筒状の垂下内周側面を有した円筒状の下部ケース内側垂下部を具備しており、上部ケースの外周側面は、垂下外周側面を、下部ケースの内周側面は、垂下内周側面を夫々具備しており、上部ケースは、径方向における垂下外周側面と垂下内周側面との間に前記嵌合隙間をもって上部ケース内側垂下部が下部ケース内側垂下部に嵌合されて、下部ケースに被されている請求項1に記載の合成樹脂製滑り軸受。
【請求項3】
上部ケースは、上部ケース内側垂下部の下端面の径方向の外方に設けられた円筒状の下端外側垂下部を具備しており、下部ケースは、下部ケース内側垂下部の垂下内周側面の下端に設けられた円環状の下端板部と、この下端板部の上面に設けられた下端突起部とを具備しており、下端突起部は、その円筒状の外周側面で下端外側垂下部の円筒状の内周側面に下端外側隙間をもって径方向において対面しており、該環状空間の径方向の内周部を合成樹脂製滑り軸受外に連通させる内周側の隙間を形成していると共に径方向に対して交差して伸びる下端外側隙間は、前記嵌合隙間の径方向の最小の幅以上の径方向の幅を有している請求項2に記載の合成樹脂製滑り軸受。
【請求項4】
上部ケースは、下端外側垂下部と協働して環状溝を形成するように、上部ケース内側垂下部の下端面の径方向の内方に設けられた円筒状の下端内側垂下部を更に具備しており、下端突起部は、その円筒状の内周側面で下端内側垂下部の円筒状の外周側面に下端内側隙間をもって径方向において対面して前記環状溝に配されており、該環状空間の径方向の内周部を合成樹脂製滑り軸受外に連通させる内周側の隙間を形成していると共に径方向に対して交差して伸びる下端内側隙間は、前記嵌合隙間の径方向の最小の幅以上の径方向の幅を有している請求項3に記載の合成樹脂製滑り軸受。
【請求項5】
上部ケースは、上部ケース内側垂下部の下端面の径方向の内方に設けられた円筒状の下端内側垂下部を具備しており、下部ケースは、下部ケース内側垂下部の垂下内周側面の下端に設けられた円環状の下端板部を具備しており、この下端板部は、その円筒状の内周側面で下端内側垂下部の円筒状の外周側面に下端内側隙間をもって径方向において対面しており、該環状空間の径方向の内周部を合成樹脂製滑り軸受外に連通させる内周側の隙間を形成していると共に径方向に対して交差して伸びる下端内側隙間は、前記嵌合隙間の径方向の最小の幅以上の径方向の幅を有している請求項2に記載の合成樹脂製滑り軸受。
【請求項6】
上部ケースは、下面を有した円環状の上板部を有しており、下部ケースは、上面及び下部ケース内側垂下部の円筒状の垂下内周側面と面一の円筒状の内周側面を有した円環状の下板部を有しており、下部ケースの内周側面は、下板部の内周側面を具備しており、スラスト滑り軸受は、上面で上板部の下面に摺動自在に接触している一方、下面で下板部の上面に摺動自在に接触しており、前記環状空間は、上板部の下面及び下板部の上面間に位置している請求項2から5のいずれか一項に記載の合成樹脂製滑り軸受。
【請求項7】
下部ケースは、径方向の内方に設けられていると共に下板部の円筒状の内周側面と面一又は当該下板部の内周側面よりも大径の円筒状の内周側面を有した円筒状の内側突起部を更に具備しており、下部ケースの内周側面は、内側突起部の円筒状の内周側面を具備している請求項6に記載の合成樹脂製滑り軸受。
【請求項8】
上部ケースは、径方向においてその中央に位置した貫通孔と、この貫通孔を規定する内周側面とを更に有しており、貫通孔を貫通する軸に当該貫通孔を規定する上部ケースの内周側面で径方向に関して不動に固定されるようになっている請求項1から7のいずれか一項に記載の合成樹脂製滑り軸受。
【請求項9】
上部ケースは、径方向の外方に設けられた円筒状の外側垂下部と、この外側垂下部の外周側面と協働して円環状の上部外側溝を形成する内周側面を有すると共に外側垂下部よりも径方向の外方に設けられた円筒状の係合垂下部とを具備しており、下部ケースは、径方向の外方に設けられた円筒状の外側突起部と、この外側突起部の外周側面と協働して円環状の下部外側溝を形成する内周側面を有すると共に外側突起部よりも径方向の外方に設けられた円筒状の係合突起部とを具備しており、外側垂下部は、径方向において互いに対面するその内周側面と外側突起部の外周側面との間で径方向の第一の隙間と、径方向において互いに対面するその外周側面と係合突起部の内周側面との間で径方向の第二の隙間とをもって下部外側溝に配されており、係合突起部は、径方向において互いに対面するその外周側面と係合垂下部の内周側面との間で径方向の第三の隙間をもって上部外側溝に配されており、該環状空間の径方向の外周部を合成樹脂製滑り軸受外に連通させる外周側の隙間を形成していると共に径方向に対して交差して伸びる第一から第三の隙間の夫々は、前記嵌合隙間の径方向の最小の幅以上の径方向の幅を有している請求項1から8のいずれか一項に記載の合成樹脂製滑り軸受。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、合成樹脂製滑り軸受に関し、更に詳しくは四輪自動車におけるストラット型サスペンション(マクファーソン式)の滑り軸受として組み込まれて好適な合成樹脂製滑り軸受に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、主軸と一体となった外筒の中に油圧式ショックアブソーバを内蔵したストラットアッセンブリにコイルバネを組合せた構造の四輪自動車の前輪に用いられるストラット型サスペンションには、ステアリング操作においてストラットアッセンブリがコイルバネと共に回る際に、ストラットアッセンブリのピストンロッドが回る形式と、ピストンロッドが回らない形式とがあるが、いずれの形式のストラット型サスペンションにおいても、ストラットアッセンブリの回動を円滑に許容するべく、車体の取付部材とコイルバネの上部バネ座シートとの間に軸受が使用されている。
【0003】
この軸受には、ボール若しくはニードルを使用したころがり軸受又は合成樹脂製の滑り軸受が使用されているが、ころがり軸受は、微小揺動及び振動荷重等によりボール若しくはニードルに疲労破壊を生ずる虞があり、円滑なステアリング操作を維持し難いという問題がある一方、滑り軸受は、ころがり軸受に比べて摩擦トルクが高く、ステアリング操作を重くする虞があり、さらに、いずれの軸受においても、摺動面への塵埃等異物の侵入を防止するべく装着されたゴム弾性体からなるダストシールの摩擦力が高いことに起因するステアリング操作を重くするという問題、とくに合成樹脂製滑り軸受においてはステアリング操作を一層重くするという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】実公平4−52488号公報
【特許文献2】実公平2−1532号公報
【特許文献3】実公平2−6263号公報
【特許文献4】実公平8−2500号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記問題点を解決するべく本出願人は、合成樹脂製の上部ケースと合成樹脂製の下部ケースと上部ケース及び下部ケース間に配した合成樹脂製のスラスト滑り軸受とを有すると共に径方向の内方及び径方向の外方にラビリンス作用による密封部を形成して当該密封部によりスラスト滑り軸受の摺動面への塵埃等異物の侵入を防止した合成樹脂製滑り軸受を提案した(特許文献1、特許文献2、特許文献3及び特許文献4所載)。
【0006】
これら合成樹脂製滑り軸受においては、摺動面間に当該摺動面を囲繞して装着されたゴム弾性体からなるダストシールに起因するステアリング操作力の増大という問題点を解決することができ、また摺動面への塵埃等異物の侵入を極力防止して安定した且つ円滑なステアリング操作力を得ることができる。
【0007】
上部ケース及び下部ケースとこの上部ケース及び下部ケース間の環状空間に配されるスラスト滑り軸受とを具備した滑り軸受は、低摩擦性や耐摩耗性等の摺動特性を向上させるが、斯かる滑り軸受に径方向に変動荷重等が作用して下部ケースに径方向に変位が生じた場合、スラスト滑り軸受が配される上部ケース及び下部ケース間の環状空間と外部とを連通するラビリンス(迷路)のような通路を形成する面が径方向に互いに干渉(押圧接触)し、結果として当該面に変形、損傷、折損等の不具合が生じる虞があり、また、干渉を生じた面に回転方向(円周方向)の相対摺動を生じた場合は、摩擦抵抗の上昇を惹起し、摺動特性を低下させる虞がある。
【0008】
本発明は上記諸点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、下部ケースに径方向に変動荷重等が作用して下部ケースに上部ケースに対して径方向の変位が生じた場合でも、スラスト軸受が配される上部ケース及び下部ケース間の環状空間と外部とを連通するラビリンスのような通路を形成する隙間を規定する上部ケース及び下部ケースの面の径方向の相互の押圧接触に起因する干渉を回避し得、当該面に変形、損傷、折損等の不具合を生じさせることがなく、当該面での相対摺動に起因する摺動特性の低下を生じることがない合成樹脂製滑り軸受を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明による合成樹脂製滑り軸受は、円筒状の外周側面を有した合成樹脂製の上部ケースと、径方向に対して交差して伸びる円筒状の嵌合隙間をもって上部ケースの外周側面を囲繞するように当該上部ケースの外周側面に径方向において対面した円筒状の内周側面を有すると共に上部ケースに対しての径方向の変位が上部ケースの外周側面への当該内周側面の接触で規制されて当該嵌合隙間の径方向の最小の幅をもって可能であるように上部ケースが嵌合されて当該上部ケースが被せられた合成樹脂製の下部ケースと、上下方向における上部ケース及び下部ケース間の環状空間に配された合成樹脂製のスラスト滑り軸受とを具備しており、該環状空間の径方向の外周部を合成樹脂製滑り軸受外に連通させると共に上部ケースと下部ケースとの互いに対面する面間からなる外周側の隙間と、該環状空間の径方向の内周部を前記嵌合隙間を介して合成樹脂製滑り軸受外に連通させると共に上部ケースと下部ケースとの互いに対面する面間からなる内周側の隙間とのうちで径方向に対して交差して伸びる隙間は、前記嵌合隙間の径方向の最小の幅以上の径方向の幅を有している。
【0010】
本発明の合成樹脂製滑り軸受によれば、スラスト滑り軸受が配される上部ケース及び下部ケース間の環状空間の外周部を合成樹脂製滑り軸受外に連通させる隙間のうちで径方向に対して交差して伸びる隙間は、嵌合隙間の径方向の最小の幅以上の径方向の幅を有しているため、また、スラスト滑り軸受が配される上部ケース及び下部ケース間の環状空間の径方向の内周部を合成樹脂製滑り軸受外に連通させる隙間のうちで径方向に対して交差して伸びる隙間は、同様に、嵌合隙間の径方向の最小の幅以上の径方向の幅を有しているため、特に、下部ケースに径方向に変動荷重が作用して上部ケースに対して下部ケースに径方向の変位が生じた場合に、径方向に対して交差して伸びる各隙間を規定する上部ケース及び下部ケースの面の径方向の押圧接触に起因する干渉を回避し得、当該面に変形、損傷、折損等の不具合を生じさせることがなく、当該面での相対摺動に起因する摺動特性の低下を生じさせることがない。
【0011】
本発明の合成樹脂製滑り軸受において、外周側及び内周側の隙間は、径方向において互いに対面する面間からなる隙間、言い換えると、径方向に対して交差して伸びる隙間及び上下方向において互いに対面する面間からなる隙間、言い換えると、径方向に伸びる隙間を意味し、本発明では、嵌合隙間を除いて、径方向に対して交差して伸びる隙間を具備しないで内周側の隙間をもって合成樹脂製滑り軸受を構成してもよい。
【0012】
本発明の合成樹脂製滑り軸受において、上部ケース及び下部ケース間の環状空間に配されたスラスト滑り軸受は、上部ケース及び下部ケースの一方に一体的に形成されている一方、上部ケース及び下部ケースの他方に摺動自在に接触している面を有していてもよいが、これに代えて、上部ケース及び下部ケースに対して別体であって、上部ケースに摺動自在に接触している上面及び下部ケースに摺動自在に接触している下面を有していてもよい。
【0013】
更に、本発明の合成樹脂製滑り軸受において、外周側の隙間及び内周側の隙間のうちの少なくとも一方は、径方向に対して交差して伸びる隙間が一個からなっていてもよく、これに代えて、ラビリンスのような通路を形成するように、径方向に対して交差して伸びる隙間が複数個からなっていてもよい。
【0014】
本発明の合成樹脂製滑り軸受において好ましい例では、上部ケースは、径方向の内方に設けられていると共に前記円筒状の外周側面を有した円筒状の上部ケース内側垂下部を具備しており、下部ケースは、径方向の内方に設けられていると共に前記円筒状の外周側面に径方向において対面した円筒状の垂下内周側面を有した円筒状の下部ケース内側垂下部を具備しており、下部ケースの内周側面は、この垂下内周側面を具備しており、上部ケースは、径方向における前記円筒状の外周側面と前記円筒状の垂下内周側面との間に前記嵌合隙間をもって上部ケース内側垂下部が下部ケース内側垂下部に嵌合されて、下部ケースに被されている。
【0015】
上部ケースが上部ケース内側垂下部を具備する一方、下部ケースが下部ケース内側垂下部を具備している本発明の合成樹脂製滑り軸受では、好ましい例では、上部ケースは、上部ケース内側垂下部の下端面の径方向の外方に設けられた円筒状の下端外側垂下部を具備しており、下部ケースは、下部ケース内側垂下部の垂下内周側面の下端に設けられた円環状の下端板部と、この下端板部の上面に設けられた下端突起部とを具備しており、下端突起部は、その円筒状の外周側面で下端外側垂下部の円筒状の内周側面に下端外側隙間をもって径方向において対面しており、該環状空間の径方向の内周部を合成樹脂製滑り軸受外に連通させる内周側の隙間を形成していると共に径方向に対して交差して伸びる下端外側隙間は、前記嵌合隙間の径方向の最小の幅以上の径方向の幅を有している。
【0016】
斯かる好ましい例の本発明の合成樹脂製滑り軸受では、上部ケースは、下端外側垂下部と協働して環状溝を形成するように、上部ケース内側垂下部の下端面の径方向の内方に設けられた円筒状の下端内側垂下部を更に具備していてもよく、この場合、下端突起部は、その円筒状の内周側面で下端内側垂下部の円筒状の外周側面に下端内側隙間をもって径方向において対面して前記環状溝に配されており、該環状空間の径方向の内周部を合成樹脂製滑り軸受外に連通させる内周側の隙間を形成していると共に径方向に対して交差して伸びる下端内側隙間は、前記嵌合隙間の径方向の最小の幅以上の径方向の幅を有している。
【0017】
上部ケースが上部ケース内側垂下部を具備する一方、下部ケースが下部ケース内側垂下部を具備している本発明の合成樹脂製滑り軸受では、他の好ましい例では、上部ケースは、上部ケース内側垂下部の下端面の径方向の内方に設けられた円筒状の下端内側垂下部を具備しており、この場合、下部ケースは、下部ケース内側垂下部の内周側面の下端に設けられた円環状の下端板部を具備していても、また、斯かる下端板部に加えて、当該下端板部の上面に設けられた下端突起部を更に具備していてもよく、斯かる下端板部又は下端突起部は、その円筒状の内周側面で下端内側垂下部の円筒状の外周側面に下端内側隙間をもって径方向において対面しており、該環状空間の径方向の内周部を合成樹脂製滑り軸受外に連通させる内周側の隙間を形成していると共に径方向に対して交差して伸びる下端内側隙間は、前記嵌合隙間の径方向の最小の幅以上の径方向の幅を有している。
【0018】
本発明の合成樹脂製滑り軸受において、好ましい例では、上部ケースは、下面を有した円環状の上板部を有しており、下部ケースは、上面及び下部ケース内側垂下部の円筒状の垂下内周側面と面一の円筒状の内周側面を有した円環状の下板部を有しており、下部ケースの内周側面は、下板部の内周側面を具備しており、スラスト滑り軸受は、上面で上板部の下面に摺動自在に接触している一方、下面で下板部の上面に摺動自在に接触しており、前記環状空間は、上板部の下面及び下板部の上面間に位置している。
【0019】
上板部及び下板部を具備した本発明の合成樹脂製滑り軸受において、好まし例では、下部ケースは、径方向の内方に設けられていると共に下板部の内周側面と面一又は当該下板部の内周側面よりも大径の円筒状の内周側面を有した円筒状の内側突起部を更に具備しており、下部ケースの内周側面は、内側突起部の内周側面を具備している。
【0020】
本発明の合成樹脂製滑り軸受の一つの例では、上部ケースは、径方向においてその中央に位置した貫通孔と、この貫通孔を規定する内周側面とを更に有しており、貫通孔を貫通する軸に当該貫通孔を規定する上部ケースの内周側面で径方向に関して不動に固定されるようになっている。
【0021】
環状空間の径方向の外周部を合成樹脂製滑り軸受外に連通させる外周側の隙間に加えて、環状空間の径方向の内周部を合成樹脂製滑り軸受外に連通させる内周側の隙間を形成している下端外側隙間及び下端内側隙間のうちの少なくとも一方を具備した本発明の合成樹脂製滑り軸受では、下端外側隙間は、嵌合隙間の径方向の最小幅以上の径方向の幅を有している一方、下端内側隙間は、嵌合隙間の径方向の最小の幅以上の径方向の幅を有しているために、下部ケースに径方向に変動荷重等が作用して上部ケース及び下部ケース間に径方向の相対変位が生じた場合でも、下端外側隙間を形成する下端突起部の円筒状の外周側面及び下端外側垂下部の円筒状の内周側面並びに下端内側隙間を形成する下端突起部の円筒状の外周側面及び下端外側垂下部の円筒状の内周側面若しくは下端突起部の円筒状の内周側面及び下端内側垂下部の円筒状の外周側面での径方向の互いの押圧接触に起因する干渉を回避し得、当該各側面に変形、損傷、折損等の不具合を生じさせることがなく、当該各側面での相対摺動に起因する摺動特性の低下を生じさせることがない。
【0022】
本発明の合成樹脂製滑り軸受において、好ましい他の例では、上部ケースは、径方向の外方に設けられた円筒状の外側垂下部と、この外側垂下部の外周側面と協働して円環状の上部外側溝を形成する内周側面を有すると共に外側垂下部よりも径方向の外方に設けられた円筒状の係合垂下部とを具備しており、下部ケースは、径方向の外方に設けられた円筒状の外側突起部と、この外側突起部の外周側面と協働して円環状の下部外側溝を形成する内周側面を有すると共に外側突起部よりも径方向の外方に設けられた円筒状の係合突起部とを具備しており、外側垂下部は、径方向において互いに対面するその内周側面と外側突起部の外周側面との間で径方向の第一の隙間と、径方向において互いに対面するその外周側面と係合突起部の内周側面との間で径方向の第二の隙間とをもって下部外側溝に配されており、係合突起部は、径方向において互いに対面するその外周側面と係合垂下部の内周側面との間で径方向の第三の隙間をもって上部外側溝に配されており、該環状空間の径方向の外周部を合成樹脂製滑り軸受外に連通させる外周側の隙間を形成していると共に径方向に対して交差して伸びる第一から第三の隙間の夫々は、嵌合隙間の径方向の最小の幅以上の径方向の幅を有しており、下部ケースが外側突起部と内側突起部とを具備する場合には、スラスト滑り軸受は、外側突起部と内側突起部との間における該嵌合隙間に配されているとよい。
【0023】
以上の本発明の合成樹脂製滑り軸受においては、環状空間の径方向の外周部を合成樹脂製滑り軸受外に連通させると共に上部ケースと下部ケースとの互いに対面する面間からなる外周側の隙間と、該環状空間の径方向の内周部を前記嵌合隙間を介して合成樹脂製滑り軸受外に連通させると共に上部ケースと下部ケースとの互いに対面する面間からなる内周側の隙間とのうちで径方向に対して交差して伸びる隙間は、嵌合隙間の径方向の最小の幅以上の径方向の幅を有していれば、当該径方向に対して交差して伸びる各隙間を規定する上部ケース及び下部ケースの面の径方向の押圧接触に起因する干渉を回避し得、当該面に変形、損傷、折損等の不具合を生じさせることがなく、当該面での相対摺動に起因する摺動特性の低下を生じさせることがないのであるが、斯かる交差して伸びる隙間の幅が大きすぎると、当該スラスト滑り軸受の摺動面への塵埃等異物の侵入を容易にして円滑なステアリング操作力を得ることができなくなる虞がある結果、干渉の回避と異物侵入阻止との兼ね合いで、斯かる交差して伸びる隙間の幅の最大幅を決定するとよい。
【0024】
以上の合成樹脂製滑り軸受において、外周側にラビリンスのような通路を形成するように、径方向に対して交差して伸びる隙間を複数個、また、内周側にラビリンスのような通路を形成するように、径方向に対して交差して伸びる隙間を複数個夫々設ける場合には、スラスト滑り軸受が配される上部ケース及び下部ケース間の環状空間への合成樹脂製滑り軸受外からの塵埃等の異物の侵入が効果的に防止される。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、下部ケースに径方向に変動荷重等が作用して下部ケースに上部ケースに対して径方向の変位が生じた場合でも、スラスト軸受が配される上部ケース及び下部ケース間の環状空間と外部とを連通するラビリンスのような通路を形成する隙間を規定する上部ケース及び下部ケースの面の径方向の相互の押圧接触に起因する干渉を回避し得、当該面に変形、損傷、折損等の不具合を生じさせることがなく、当該面での相対摺動に起因する摺動特性の低下を生じることがない合成樹脂製滑り軸受を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【
図1】
図1は、本発明の好ましい実施の形態の例の断面説明図である。
【
図2】
図2は、
図1の例におけるスラスト滑り軸受の平面説明図である。
【
図3】
図3は、
図1の例のスラスト滑り軸受の
図2に示すIII−III線矢視断面説明図である。
【
図5】
図5は、
図1の例をストラット型サスペンションに組み込んだ例の断面説明図である。
【
図6】
図6は、本発明の好ましい他の例の一部断面説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
次に本発明の実施の形態を図に示す好ましい具体例に基づいて詳細に説明する。なお、本発明はこれらの例に何等限定されないのである。
【0028】
図1から
図4において、本例の合成樹脂製滑り軸受1は、円筒状の外周側面2を有した合成樹脂製の上部ケース3と、径方向Aに対して交差した上下方向Bに伸びる円筒状の嵌合隙間4をもって外周側面2を囲繞するように当該外周側面2に径方向Aの外方において対面した円筒状の内周側面5を有すると共に上部ケース3に対しての径方向Aの変位が外周側面2への当該内周側面5の接触で規制されて当該嵌合隙間4の径方向Aの最小の幅としての幅aをもって可能であるように上部ケース3が嵌合されて当該上部ケース3が被せられた合成樹脂製の下部ケース6と、上下方向Bにおける上部ケース3及び下部ケース6間の環状空間7に配された合成樹脂製のスラスト滑り軸受9とを具備している。
【0029】
上部ケース3は、下面21及び上面22を有した円環状の上板部23と、径方向Aにおいて中央に位置していると共に径r1を有した貫通孔24と、貫通孔24を規定する内周側面25と、径方向Aの内方に設けられていると共に円筒状の垂下外周側面26を有した円筒状の上部ケース内側垂下部27と、上部ケース内側垂下部27の円環状の下端面28の径方向Aの外方において下端面28に一体的に設けられた円筒状の下端外側垂下部29と、径方向Aの外方に設けられた円筒状の外側垂下部30と、下面21及び外側垂下部30の外周側面31と協働して円環状の上部外側溝32を形成する内周側面33を有すると共に外側垂下部30よりも径方向Aの外方に設けられた円筒状の係合垂下部34とを具備している。
【0030】
上板部23は、下面21及び上面22に加えて、円筒状の内周側面41と、円筒状の外周側面42とを具備している。
【0031】
上部ケース内側垂下部27は、下面21の径方向Aの内方において当該下面21に一体的に設けられていると共に内周側面41と面一をもって内周側面41に連接された円筒状の内周側面45を有しており、貫通孔24を規定する内周側面25は、内周側面41と内周側面45とからなっている。
【0032】
下端外側垂下部29は、垂下外周側面26と面一をもって連接された円筒状の外周側面61と、外周側面61に連接された円環状の下端面62と、下端面62及び下端面28に連接された円環状の内周側面63とを具備している。
【0033】
而して、外周側面2は、垂下外周側面26と外周側面61とを具備している。
【0034】
外側垂下部30は、上部ケース内側垂下部27に対して径方向Aの外方に離間して下面21の径方向Aの外方において当該下面21に一体的に設けられていると共に截頭円錐面状の外周側面31に加えて截頭円錐面状の内周側面65及び円環状の下面66を具備している。
【0035】
外側垂下部30に対して径方向Aの外方に離間して下面21の径方向Aの最外側において下面21に一体的に設けられた係合垂下部34は、内周側面33に加えて、外周側面42と面一であって外周側面42に連接された円筒状の外周側面71と、円環状の下面72とを具備しており、内周側面33は、下面21に連接されている截頭円錐面73と、截頭円錐面73に連接されていると共に径方向Aの内方に膨出した筒状の内方膨出係合面74とを具備している。
【0036】
下部ケース6は、径方向Aの内方に設けられていると共に外周側面2に径方向Aにおいて対面した円筒状の垂下内周側面81を有した円筒状の下部ケース内側垂下部82と、垂下内周側面81の下端に円筒状の内周側面で一体的に設けられた円環状の下端板部83と、下端板部83の円環状の上面84に一体的に設けられた円筒状の下端突起部85と、上面86及び円環状の下面87に加えて、垂下内周側面81と面一であって垂下内周側面81に連接された円筒状の内周側面88を有した円環状の下板部89と、径方向Aの内方に設けられていると共に内周側面88と面一であって内周側面88に連接された円筒状の内周側面90を有した円筒状の内側突起部91と、径方向Aの外方に設けられた円筒状の外側突起部92と、上面86及び外側突起部92の截頭円錐面状の外周側面93と協働して円環状の下部外側溝94を形成する截頭円錐面状の内周側面95を有すると共に外側突起部92よりも径方向の外方に設けられた円筒状の係合突起部96とを具備している。
【0037】
垂下内周側面81に加えて、下面87に連接された円筒状の垂下外周側面97、垂下外周側面97に連接された截頭円錐面状外周側面98及び截頭円錐面状外周側面98に連接された円環状の下端面99を有した下部ケース内側垂下部82は、下面87の径方向Aの最内方において下面87に一体的に設けられており、下端板部83は、下端面62に対して上下方向Bに円環状の隙間100をもって対面した上面84に加えて、下端面99と面一であって下端面99に連接された円環状の下面101と、下面101に連接された円筒状の内周側面102とを有しており、下端突起部85は、内周側面102と面一をもって内周側面102に連接された円筒状の内周側面103と、内周側面103に連接されていると共に上下方向Bに円環状の隙間104をもって対面した円環状の上端面105と、上端面105に連接されていると共に内周側面63に対して径方向Aに下端外側隙間106をもって対面した円筒状の外周側面107とを具備している。
【0038】
内周側面102と内周側面103とからなる円筒状の内周側面111は、貫通孔24に連通すると共に径r1に幅aの二倍を加算した値を充分に超える径(≫r1+2a)をもった貫通孔112を規定している。
【0039】
上面86、下面87及び内周側面88に加えて、内周側面88よりも大径の円筒状の外周側面115を具備した下板部89は、内周側面88及び上面116を有した内側円板状部117と、内側円板状部117の円筒状の外周側面に一体的に形成されていると共に外周側面115及び上面118を有した外側円板状部119とを一体的に具備しており、内側円板状部117は、外側円板状部119の上下方向Bにおける厚みよりも大きな厚みを有しており、而して、上面86は、内側突起部91及び外側突起部92が一体的に形成された円環状の上面116と、係合突起部96が一体的に形成された円環状の上面118とからなり、下部外側溝94は、外周側面93及び内周側面95と上面86のうちの上面118とで形成されており、上面116は、上下方向Bにおいて対面する下面66との間で円環状隙間120を形成している。
【0040】
内側突起部91は、内周側面90に加えて、円筒状の外周側面121と、内周側面90及び外周側面121に連接されていると共に円環状隙間122をもって上下方向Bにおいて下面21に対面した円環状の上端面123とを具備している。
【0041】
而して、幅aの嵌合隙間4をもって外周側面2に径方向Aの外方において対面した内周側面5は、垂下内周側面81と内周側面88と内周側面90とを具備している。
【0042】
外側突起部92は、径方向Aにおいて内周側面65に対して環状の隙間131をもって対面した外周側面93に加えて、上面116に連接されている共に上面116及び外周側面121と協働して円環状の凹所132を形成した円筒状の内周側面133と、上端面123と面一であると共に外周側面93及び内周側面133に連接され、しかも、円環状隙間134をもって上下方向Bにおいて下面21に対面した円環状の上端面135とを具備している。
【0043】
係合突起部96は、径方向Aにおいて外周側面31に対して環状の隙間141をもって対面した内周側面95に加えて、上端面123及び135と面一であると共に内周側面95に連接され、しかも、円環状隙間142をもって上下方向Bにおいて下面21に対面した円環状の上端面143と、上縁で上端面143に、下縁で外周側面115に夫々連接されていると共に隙間144をもって径方向Aにおいて截頭円錐面73及び内方膨出係合面74に対面した外方膨出係合面145とを具備しており、外方膨出係合面145は、内方膨出係合面74の最小径よりも大きな最大径をもっており、斯かる外方膨出係合面145の最大径と内方膨出係合面74の最小径との関係により、下部ケース6が上部ケース3に対して外方膨出係合面145と内方膨出係合面74での係合垂下部34と係合突起部96とのスナップフィット式の弾性係合を介して、径方向Aにおける垂下外周側面26と垂下内周側面81との間に嵌合隙間4をもって上部ケース内側垂下部27が下部ケース内側垂下部82に嵌合されて、上部ケース3が下部ケース6に被されて組み合わされる一方、上下方向Bにおける上部ケース3に対する下部ケース6の相対的な離反で、外方膨出係合面145の内方膨出係合面74への係合が生じて、上部ケース3に対する下部ケース6の完全な離反が阻止、具体的には、上部ケース3からの下部ケース6の脱落が阻止されて、下部ケース6と上部ケース3との組合せが維持されるようになっている。
【0044】
斯かる上部ケース3と下部ケース6との組合せにおいて、外側垂下部30は、径方向Aにおいて互いに対面するその内周側面65と外側突起部92の外周側面93との間で径方向Aの隙間131と、径方向Aにおいて互いに対面するその外周側面31と係合突起部96の内周側面95との間で径方向Aの隙間141とをもって下部外側溝94に配されており、係合突起部96は、径方向Aにおいて互いに対面するその外周側面としての外方膨出係合面145と係合垂下部34の内周側面33との間で径方向Aの隙間144をもって上部外側溝32に配されている。
【0045】
上部ケース3及び下部ケース6に対して別体の円環状のスラスト滑り軸受9は、中央の円孔151を規定すると共に外周側面121の径よりも大きい径をもった内周側面152と、内周側面133の径よりも小さい径をもった外周側面153と、上下方向Bにおける上側の円環状のスラスト滑り軸受面としての円環状の上面154と、上下方向Bにおける下側の円環状のスラスト滑り軸受面としての円環状の下面155とを備えており、円環状の上面154を凹所132の開口面156より上方に位置させて内周側面152と外周側面121との間及び外周側面153と内周側面133との間に夫々に環状の隙間をもって凹所132に配されていると共に下部ケース6に被せられた上部ケース3の上板部23の下面21に上面154で円周方向Rに摺動自在に接触する一方、凹所132の底面を規定する下板部89の上面116に下面155で円周方向Rに摺動自在に接触して、上部ケース3及び下部ケース6間の環状空間7において凹所132に配されている。
【0046】
上面154で上板部23の下面21に摺動自在に接触している一方、下面155で下板部89の上面116に摺動自在に接触しているスラスト滑り軸受9は、上面154及び下面155に円孔151を囲む円環状溝161と、一方の端部が円環状溝161に開口し、他方の端部が外周側面153で開口して円周方向Rに等間隔に配された複数個の放射状溝162とを更に備えており、これら円環状溝161及び放射状溝162には、グリース等の潤滑油剤が充填される。
【0047】
合成樹脂製滑り軸受1は、下面21及び上面86間に位置している環状空間7の径方向Aの外周部を合成樹脂製滑り軸受1外、即ち、上部ケース3と下部ケース6との重ね合せ間外に連通させると共に上部ケース3と下部ケース6との互いに対面する面間からなる外周側の隙間171、即ち、環状空間7の径方向の外周部に連通すると共に互いに対面する下面21及び上端面135間からなる円環状隙間134、円環状隙間134に連通すると共に互いに対面する内周側面65及び外周側面93間からなる隙間131、隙間131に連通すると共に互いに対面する下面66及び上面118間からなる円環状隙間120、円環状隙間120に連通すると共に互いに対面する外周側面31及び内周側面95間からなる隙間141、隙間141に連通すると共に互いに対面する下面21及び上端面143間からなる円環状隙間142及び円環状隙間142に連通すると共に互いに対面する内周側面33及び外方膨出係合面145間からなる隙間144を具備した隙間171と、環状空間7の径方向Aの内周部を嵌合隙間4を介して合成樹脂製滑り軸受1外に連通させると共に上部ケース3と下部ケース6との互いに対面する面間からなる内周側の隙間172、即ち、一方では環状空間7の径方向の内周部に、他方では嵌合隙間4に連通すると共に互いに対面する下面21及び上端面123間からなる円環状隙間122、嵌合隙間4に連通すると共に互いに対面する下端面62及び上面84間からなる隙間100、隙間100に連通すると共に互いに対面する内周側面63及び外周側面107間からなる下端外側隙間106及び下端外側隙間106に連通すると共に互いに対面する下端面28及び上端面105間からなる隙間104を具備した隙間172と、幅aの嵌合隙間4とをもって、径差を解消する撓み変形による係合垂下部34の係合突起部96への嵌め合いを介して、上部ケース3が下部ケース6に被せられて、形成されている。
【0048】
斯かる合成樹脂製滑り軸受1では、隙間171と隙間172とのうちで径方向Aに対して交差して伸びる隙間131、141及び144並びに下端外側隙間106の夫々は、嵌合隙間4の径方向Aの最小の幅a以上の径方向Aの幅を有している。
【0049】
以上の合成樹脂製滑り軸受1は、
図5に示すストラットアッセンブリ180において、軸としてのピストンロッド181の一方の端部182にナット183等を介して取り付けられた車体側取付部材184の円筒部185が内周側面25に隙間なしにぴったりと接触して貫通孔24に嵌装されると共に車体側取付部材184の平板部186が上板部23の上面22に隙間なしにぴったりと接触され、コイルばね187の一端を受容する上部バネ座シート188が下板部89の下面87に隙間なしにぴったりと接触されて、車体側取付部材184と上部バネ座シート188との間に配置される。
【0050】
車体側取付部材184と上部バネ座シート188との間に配置されていると共に上部ケース3が貫通孔24及び112を貫通するピストンロッド181に当該貫通孔24を規定する内周側面45で径方向Aに関して不動に固定された合成樹脂製滑り軸受1では、下部ケース6及び下部ケース6に被せられた上部ケース3間にスラスト滑り軸受9が配されているために、ステアリング操作での車体側取付部材184に対しての上部バネ座シート188の軸心Oを中心として回転方向である円周方向Rの回転が下面21に対する上面154でのスラスト滑り軸受9の円周方向Rの回転摺動及び上面116に対する下面155でのスラスト滑り軸受9の円周方向Rの回転摺動のうちの少なくとも一方を介して行われる結果、円滑なステアリング操作を得ることができる上に、隙間171と隙間172とのうちで径方向Aに対して交差して伸びる隙間131、141及び144並びに下端外側隙間106の夫々は、嵌合隙間4の径方向Aの最小の幅a以上の径方向Aの幅を有しているために、上部ケース3に対して下部ケース6に最大で幅aの径方向の相対変位が生じても、内周側面65と外周側面93との径方向Aでの相互の押圧接触、外周側面31と内周側面95との径方向Aでの相互の押圧接触、内周側面33と外方膨出係合面145との径方向Aでの相互の押圧接触及び内周側面63と外周側面107との径方向Aでの相互の押圧接触に起因する干渉の夫々が回避される結果、斯かる上部ケース3に対しての下部ケース6に最大で幅aの径方向Aの相対変位でも、下端外側垂下部29、外側垂下部30、係合垂下部34、下端突起部85、外側突起部92及び係合突起部96の変形、損傷、折損等の不具合を生じることがない上に、上部ケース3に対しての下部ケース6の円周方向Rの相対的な回転に、当該干渉に起因する摩擦抵抗の上昇を生じることはなく、円滑なステアリング操作を維持できる。
【0051】
即ち、合成樹脂製滑り軸受1では、上部ケース3の下部ケース6への被着、重ね合わせにの挿通のために要求される幅aに起因する下端外側垂下部29と下端突起部85との径方向Aでの押圧接触、外側垂下部30と外側突起部92及び係合突起部96との径方向Aでの押圧接触並びに係合垂下部34と係合突起部96との径方向Aでの押圧接触の夫々を回避でき、円滑なステアリング操作を確保できる。
【0052】
ところで、合成樹脂製滑り軸受1は、
図6に示すように、下端外側垂下部29と協働して環状溝201を形成するように、下端面28の径方向Aの内方に設けられた円筒状の下端内側垂下部202を更に有した上部ケース3を具備していてもよく、この場合、下端突起部85は、その内周側面103で下端内側垂下部202の円筒状の外周側面203に下端内側隙間204をもって径方向Aにおいて対面して環状溝201に配されていてもよく、環状空間7の径方向Aの内周部を合成樹脂製滑り軸受1外に連通させる内周側の隙間172を形成していると共に径方向Aに対して交差して伸びる下端内側隙間204も、嵌合隙間4の径方向Aの最小の幅a以上の径方向Aの幅を有している。
【0053】
図6に示す合成樹脂製滑り軸受1でも、下端内側隙間204も、嵌合隙間4の径方向Aの最小の幅a以上の径方向Aの幅を有しているので、下端内側垂下部202と下端突起部85との径方向Aでの押圧接触を回避でき、円滑なステアリング操作を確保できる。
【0054】
図1から
図4又は
図6に示す合成樹脂製滑り軸受1において、内側突起部91は、内周側面88よりも大径の内周側面90を有していてもよく、更には、下端外側垂下部29、下端板部83及び下端突起部85を設けないで、環状空間7の径方向の内周部を嵌合隙間4をもって直接に合成樹脂製滑り軸受1外に連通させてもよく、また、下端外側垂下部29及び下端突起部85を設けないで、下端板部83をその円筒状の内周側面280で下端内側垂下部202の外周側面203に下端内側隙間204をもって径方向Aにおいて対面させ、斯かる下端内側隙間204を嵌合隙間4の径方向Aの最小の幅a以上の径方向の幅を有するようにして下端内側垂下部202及び下端板部83を形成してもよい。
【0055】
加えて、上記の例では、外周側面2が互いに同径であって同心の円筒状の垂下外周側面26と外周側面61とを具備し、斯かる外周側面2に対して同心に配された内周側面5が同じく互いに同径であって同心の円筒状の垂下内周側面81と内周側面88と内周側面90とを具備しているために、嵌合隙間4の径方向Aの最小の幅としての幅aは、垂下内周側面81、内周側面88及び内周側面90の夫々の径でもある内周側面5の径(直径)と垂下外周側面26及び外周側面61の夫々の径でもある外周側面2の径(直径)との差の1/2となるが、例えば、内周側面5に対して同心に配された外周側面2が上記と同様に互いに同径であって同心の円筒状の垂下外周側面26と外周側面61とを具備するが、内周側面5が、互いに異なる径を有する一方、互いに同心の円筒状の垂下内周側面81と内周側面88と内周側面90とを具備する場合には、嵌合隙間4の径方向Aの最小の幅としての幅aは、垂下内周側面81と内周側面88と内周側面90との径のうちで最小の径(直径)と外周側面2の径(直径)との差の1/2となり、その他の場合も同様であって、従って、本発明では、嵌合隙間4の径方向Aの最小の幅とは、内周側面5における最小の径(直径)と外周側面2の最大の径(直径)との差の1/2を意味し、斯かる嵌合隙間4の径方向Aの最小の幅をもって、上部ケース3に対しての下部ケース6の径方向Aの変位が可能であるように、下部ケース6は、それに上部ケース3が嵌合されて当該上部ケース3がそれに被せられて設けられているのである。
【符号の説明】
【0056】
1 合成樹脂製滑り軸受
2 外周側面
3 上部ケース
4 嵌合隙間
5 内周側面
6 下部ケース
7 環状空間
9 スラスト滑り軸受