特開2017-89699(P2017-89699A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2017-89699(P2017-89699A)
(43)【公開日】2017年5月25日
(54)【発明の名称】産業車両
(51)【国際特許分類】
   F15B 11/05 20060101AFI20170421BHJP
   B66F 9/22 20060101ALI20170421BHJP
【FI】
   F15B11/05 B
   B66F9/22 X
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2015-217615(P2015-217615)
(22)【出願日】2015年11月5日
(71)【出願人】
【識別番号】000003218
【氏名又は名称】株式会社豊田自動織機
(71)【出願人】
【識別番号】390017352
【氏名又は名称】仁科工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】後藤 哲也
(72)【発明者】
【氏名】萩野 顕一
(72)【発明者】
【氏名】桑野 靖史
(72)【発明者】
【氏名】二瓶 陽仁
(72)【発明者】
【氏名】中島 滋人
(72)【発明者】
【氏名】高野 聡
【テーマコード(参考)】
3F333
3H089
【Fターム(参考)】
3F333AA02
3F333FA23
3F333FB10
3F333FH08
3H089AA02
3H089AA05
3H089AA60
3H089AA82
3H089BB30
3H089CC01
3H089CC12
3H089DA02
3H089DA13
3H089DB24
3H089EE04
3H089EE07
3H089FF08
3H089FF12
3H089GG02
3H089JJ09
(57)【要約】
【課題】エンジンストールの発生を好適に防止すること。
【解決手段】エンジンストールが発生する可能性がある場合には、リリーフ弁46の背圧室48の圧力を解放させてリリーフ圧を調整することで、コントロール回路36内の圧力を圧力補償回路37の作動によって油タンク22へ解放させる。これにより、荷役動作に伴う急激な圧力の上昇が抑制され、エンジン19のトルク不足によるエンジンストールの発生を防止できる。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジンと、前記エンジンによって駆動される油圧ポンプと、油圧によって動作する油圧作動装置と、を備えた産業車両において、
コントロール弁を有し、前記コントロール弁によって圧油の給排を切り換えることで前記油圧作動装置を駆動させる第1回路と、
前記第1回路と前記油圧ポンプとを繋ぐ第1油路と、
前記第1回路内の圧力を制御する第2回路と、
エンジン回転数を取得するために用いる第1検出手段と、
前記油圧ポンプの吐出圧を取得するために用いる第2検出手段と、
制御装置と、を備え、
前記第2回路は、
前記第1回路を介さずに前記油圧ポンプと油タンクとを繋ぐ第2油路に位置する圧力補償弁と、
前記コントロール弁と油タンクとを繋ぐ第3油路に位置するリリーフ弁と、
前記リリーフ弁の背圧室に繋がる第4油路に位置する電磁弁と、
前記第3油路において前記コントロール弁と前記リリーフ弁との間に位置し、前記第3油路の圧力を前記圧力補償弁へ導入する第5油路と、を有し、
前記制御装置は、前記第1検出手段の検出結果から取得されるエンジン回転数の情報と前記第2検出手段の検出結果から取得される油圧ポンプの吐出圧の情報とをもとに、エンジンストールが発生する可能性があると判定できる場合、前記電磁弁を作動させて前記第4油路を開放させ、
前記第4油路の開放により、前記圧力補償弁を、前記油圧ポンプと前記油タンクとを連通させるように作動させることを特徴とする産業車両。
【請求項2】
前記電磁弁は、比例弁である請求項1に記載の産業車両。
【請求項3】
前記電磁弁は、開度を調整する調整機構を有する請求項2に記載の産業車両。
【請求項4】
前記油圧作動装置を複数有し、
前記制御装置は、前記油圧作動装置の動作を検出し、前記比例弁の開度を調整する請求項2に記載の産業車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、油圧作動装置を備えた産業車両に関する。
【背景技術】
【0002】
エンジンと、エンジンによって駆動される油圧ポンプと、を備え、油圧ポンプから吐出された作動油によって油圧作動装置を動作させる産業車両としては、例えばフォークリフトが知られている。フォークリフトは、例えば、フォークを昇降動作させる油圧作動装置としてリフト用の油圧シリンダと、マストを傾動動作させる油圧作動装置としてティルト用の油圧シリンダと、を有する。そして、油圧ポンプをエンジンで駆動させる場合には、油圧ポンプの負荷増によってエンジンのトルクが不足すると、エンジンストールが発生してしまうことがある。このため、従来、このようなエンジンストールの発生を防止するための構成が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2014−222079号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の構成によってエンジンストールの発生を未然に防ぐことは可能であるが、その構成についてはさらに改善する余地がある。
この発明の目的は、エンジンストールの発生を好適に防止できる産業車両を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決する産業車両は、エンジンと、前記エンジンによって駆動される油圧ポンプと、油圧によって動作する油圧作動装置と、を備えた産業車両において、コントロール弁を有し、前記コントロール弁によって圧油の給排を切り換えることで前記油圧作動装置を駆動させる第1回路と、前記第1回路と前記油圧ポンプとを繋ぐ第1油路と、前記第1回路内の圧力を制御する第2回路と、エンジン回転数を取得するために用いる第1検出手段と、前記油圧ポンプの吐出圧を取得するために用いる第2検出手段と、制御装置と、を備え、前記第2回路は、前記第1回路を介さずに前記油圧ポンプと油タンクとを繋ぐ第2油路に位置する圧力補償弁と、前記コントロール弁と油タンクとを繋ぐ第3油路に位置するリリーフ弁と、前記リリーフ弁の背圧室に繋がる第4油路に位置する電磁弁と、前記第3油路において前記コントロール弁と前記リリーフ弁との間に位置し、前記第3油路の圧力を前記圧力補償弁へ導入する第5油路と、を有し、前記制御装置は、前記第1検出手段の検出結果から取得される前記エンジン回転数の情報と前記第2検出手段の検出結果から取得される前記油圧ポンプの吐出圧の情報とをもとに、エンジンストールが発生する可能性があると判定できる場合、前記電磁弁を作動させて前記第4油路を開放させ、前記第4油路の開放により、前記圧力補償弁を、前記油圧ポンプと前記油タンクとを連通させるように作動させることを要旨とする。
【0006】
この構成によれば、油圧ポンプの吐出圧の情報とエンジン回転数の情報をもとに、油圧作動装置を作動させている状況においてエンジンストールが発生する可能性があるかを判断できる。そして、エンジンストールが発生する可能性がある場合には、油圧ポンプから吐出されている圧油を油タンクへ解放させるように第2回路を作動させることで、急激な圧力の上昇を抑制する。したがって、油圧作動装置の動作状態を直接的に検出しなくても、エンジンストールの発生を好適に防止できる。
【0007】
上記産業車両において、前記電磁弁は、比例弁であるとよい。この構成によれば、比例弁を比例制御することにより、リリーフ弁のリリーフ圧を任意に設定することができる。
上記産業車両において、前記電磁弁は、開度を調整する調整機構を有するとよい。この構成によれば、調整機構により、比例弁を、ヒステリシスを考慮して制御することができる。
【0008】
上記産業車両において、前記油圧作動装置を複数有し、前記制御装置は、前記油圧作動装置の動作を検出し、前記比例弁の開度を調整するとよい。この構成によれば、油圧作動装置に応じたリリーフ圧を設定することができる。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、エンジンストールの発生を好適に防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】フォークリフトの全体構成を示す模式図。
図2】圧力補償回路を説明する油圧回路図。
図3】(a),(b)はリリーフ弁の動作を説明する模式図。
図4】荷役動作を開始させる場合の処理を説明するフローチャート。
図5】第2の実施形態の電磁比例弁を説明する一部断面図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
(第1の実施形態)
以下、産業車両を具体化した第1の実施形態を図1図4にしたがって説明する。
図1に示すように、産業車両としてのフォークリフト10の車体には、荷役装置11が装備されている。荷役装置11は、左右一対のアウタマスト12とインナマスト13とからなる多段式のマスト14を備え、アウタマスト12には油圧作動装置として油圧式のティルトシリンダ15が連結されているとともにインナマスト13には油圧作動装置として油圧式のリフトシリンダ16が連結されている。マスト14は、ティルトシリンダ15に対する作動油の給排によって車体の前後方向に前傾動作又は後傾動作を行う。インナマスト13は、リフトシリンダ16に対する作動油の給排によって車体の上下方向に昇降動作を行う。また、インナマスト13には、リフトブラケット17を介して荷役具としてのフォーク18が設けられている。フォーク18は、リフトシリンダ16の作動によってインナマスト13がアウタマスト12に沿って昇降動作を行うことにより、リフトブラケット17とともに昇降動作を行う。
【0012】
フォークリフト10の車体には、フォークリフト10の走行動作及び荷役動作の駆動源となるエンジン19と、エンジン19によって駆動される油圧ポンプ20と、油圧ポンプ20から吐出された作動油が供給される油圧機構21と、が装備されている。油圧機構21は、各シリンダ15,16への作動油の給排を制御する。また、油圧ポンプ20には、油タンク22から汲み上げた作動油を油圧機構21に供給する第1油路としての油路23が接続されている。油路23は、油圧ポンプ20の吐出口に接続されている。また、油圧機構21には、油タンク22へ排出される作動油が通る排出油路24が接続されている。
【0013】
また、フォークリフト10の車体には、制御装置としての車両制御装置25と、エンジン制御装置26と、が搭載されている。エンジン制御装置26は、車両制御装置25に電気的に接続されている。車両制御装置25には、ティルトシリンダ15の動作を指示する指示部材としてのティルト操作部材27の操作状態を検出するティルトセンサ28と、リフトシリンダ16の動作を指示する指示部材としてのリフト操作部材29の操作状態を検出するリフトセンサ30と、が電気的に接続されている。また、車両制御装置25には、運転者の操作によってフォークリフト10の加速を指示するアクセル操作部材31の操作量に応じたアクセル開度を検出するアクセルセンサ32が電気的に接続されている。ティルト操作部材27、リフト操作部材29及びアクセル操作部材31は、フォークリフト10の運転室に配置されている。
【0014】
また、車両制御装置25は、エンジン19の回転数指令をエンジン制御装置26に出力することによってエンジン回転数の制御を行う。エンジン制御装置26は、入力した回転数指令をもとにエンジン19を制御する。エンジン制御装置26には、エンジン回転数を取得するために用いる第1検出手段としての回転数センサ34が電気的に接続されている。そして、エンジン制御装置26は、回転数センサ34の検知結果を車両制御装置25に出力する。なお、油圧ポンプ20をエンジン19によって駆動するフォークリフト10では、アクセル操作部材31を踏み込むとともに、ティルト操作部材27やリフト操作部材29を操作することにより、ティルトシリンダ15やリフトシリンダ16を動作させることができる。
【0015】
以下、油圧機構21の構成を詳しく説明する。
油圧機構21は、圧油の給排を制御する第1回路としてのコントロール回路36と、コントロール回路36内の圧力を制御する第2回路としての圧力補償回路37と、を有する。
【0016】
コントロール回路36は、ティルトシリンダ15の油室に油路38を介して接続されているティルト動作用のコントロール弁39と、リフトシリンダ16の油室に油路40を介して接続されているリフト動作用のコントロール弁41と、を有する。各コントロール弁39,41は、油路23及び排出油路24のそれぞれに接続されている。この実施形態において各コントロール弁39,41は、機械式の切換弁である。コントロール弁39にはティルト操作部材27が機械的に連結されており、ティルト操作部材27の操作によって開閉状態が切り換わる。また、コントロール弁41にはリフト操作部材29が機械的に連結されており、リフト操作部材29の操作によって開閉状態が切り換わる。
【0017】
油圧ポンプ20から吐出された圧油は、油路23を通ってコントロール弁39,41に流れ、油路38,40を通じて各シリンダ15,16の油室に供給される。例えば、ティルト操作部材27が操作されている場合、油圧ポンプ20から吐出された圧油は、コントロール弁39に接続されている油路38を通じてティルトシリンダ15の油室に供給される。なお、各シリンダ15,16の油室から排出された圧油は、排出油路24を通じて油タンク22に排出される。
【0018】
次に、図2にしたがって圧力補償回路37を説明する。
圧力補償回路37は、油タンク22に接続されている油路43を有する。油路43には、圧力補償弁44が位置している。油路43は、油圧ポンプ20の吐出口に接続されている油路23から分岐された油路であり、コントロール回路36を介さずに油圧ポンプ20と油タンク22とを繋ぐ第2油路として機能する。また、圧力補償回路37は、コントロール弁39,41に接続されている油路45を有する。油路45には、リリーフ弁46が位置している。油路45は、コントロール弁39,41に入力されている圧力を圧力補償回路37内へ導入する油路であって、コントロール弁39,41と油タンク22とを繋ぐ第3油路として機能する。また、油路45においてコントロール弁39,41とリリーフ弁46との間には、油路45の圧力を圧力補償弁44へ導入する第5油路としての油路47が位置している。
【0019】
圧力補償弁44は、油路47を通じて導入される圧力とばね力により、コントロール回路36へ入力される圧力よりも高めの圧力を発生させ、コントロール回路36内の圧力が荷役装置11の作動に必要な作動圧となるように補填する。また、圧力補償弁44は、油路43内の圧力が予め定めたリリーフ圧を越えた場合、油圧ポンプ20と油タンク22とを連通させるように作動し、油圧ポンプ20から吐出された圧油を油タンク22へ解放させる。また、リリーフ弁46は、油路45内の圧力が予め定めたリリーフ圧を越えた場合に作動し、圧力を油タンク22へ解放させる。なお、リリーフ弁46の作動によって油路45が開放された場合、油路47を通じて圧力補償弁44へ導入される圧力も低下する。つまり、油路47を通じて導入される圧力が低下した場合、圧力補償弁44のリリーフ圧が低下することになる。
【0020】
そして、この実施形態の圧力補償回路37は、リリーフ弁46の背圧室48に繋がる第4油路としての油路49に位置する電磁弁としての電磁比例弁50を有する。電磁比例弁50は、車両制御装置25に電気的に接続されており、車両制御装置25によって動作が制御される。また、電磁比例弁50には、油路45に繋がる油路51と油路43に繋がる油路52とが接続されている。また、油路23には、油圧ポンプ20の吐出圧を取得するために用いる第2検出手段としての圧力センサ53が位置している。圧力センサ53は、車両制御装置25に電気的に接続されている。車両制御装置25は、圧力センサ53の検知結果から圧力情報を取得し、油圧ポンプ20の吐出圧を検出する。
【0021】
以下、図2及び図3にしたがってリリーフ弁46の動作を説明する。
図3(a)に示すようにリリーフ弁46は、油路45の圧力がリリーフ圧を越えていない場合、図中に実線で示すように排出油路24に繋がる油路45を開放させないことによって圧力を油タンク22へ解放させない。一方、リリーフ弁46は、油路45の圧力がリリーフ圧を越える場合、図中に二点鎖線で示すように油路45を開放させることによって圧力を油タンク22へ解放させる。なお、リリーフ弁46は、油路45の圧力を、油路49,51を通じて背圧室48へ導入させるように電磁比例弁50の動作が制御される場合、その導入された圧力とばね力によってリリーフ圧が高められる。
【0022】
また、図3(b)に示すようにリリーフ弁46は、油路49,52を通じて背圧室48の圧力を油タンク22へ解放させるように電磁比例弁50の動作が制御される場合、リリーフ圧が低くなる。そして、リリーフ弁46は、油路45の圧力がリリーフ圧を越える場合、排出油路24に繋がる油路45を開放させることによって圧力を油タンク22へ解放させる。なお、電磁比例弁50は、電磁力によってスプールを作動させることで流路を開閉する構造であり、背圧室48へ圧力を導入する流路と背圧室48の圧力を解放させる流路とを備えている。
【0023】
ところで、この実施形態のフォークリフト10は、荷役装置11の駆動源をエンジン19としている。このようなフォークリフト10では、アクセル操作部材31が操作されずにエンジン19がアイドル回転数で制御されている場合など、油圧機構21内の圧力が低下している状態(無負荷の状態)で、荷役動作を行わせようとすると、油圧作動装置の起動に伴って油圧ポンプ20の負荷が急激に上昇する。そして、油圧ポンプ20の負荷の増加に伴ってエンジン19のトルクが不足すると、エンジンストールが発生する場合がある。このため、この実施形態の車両制御装置25は、エンジン19に対して急激な負荷変動が生じ得る状況において、エンジンストールを回避させる制御を行う。なお、前述した荷役動作には、ティルトシリンダ15の動作やリフトシリンダ16の動作を含む。そして、このような荷役動作が、エンジン19に負荷がかけられる負荷動作となる。
【0024】
この実施形態において車両制御装置25は、荷役操作が行われた際に油圧機構21内の圧力の急激な上昇を抑制することで、エンジンストールを回避させる。具体的に言えば、車両制御装置25は、油圧ポンプ20から吐出された圧油の流れを圧力補償回路37によって油タンク22へ解放させることで急激な圧力の上昇を抑制する。荷役操作とは、ティルト操作部材27やリフト操作部材29を操作することである。
【0025】
以下、図4にしたがって、エンジンストールを回避させるために車両制御装置25が行う制御内容を説明する。
車両制御装置25は、圧力センサ53の検知結果から圧力情報を取得する(ステップS10)。車両制御装置25は、圧力情報をもとに荷役動作が行われているかを判断することができる。つまり、車両制御装置25は、油圧ポンプ20の吐出圧が高くなっている場合、荷役動作が行われていると判断できる。また、車両制御装置25は、回転数センサ34の検知結果からエンジン19の回転数情報を取得する(ステップS11)。
【0026】
次に、車両制御装置25は、圧力情報と回転数情報とから、荷役動作を行った場合にエンジンストールが発生しやすい条件が成立しているかを判定する(ステップS12)。エンジンストールが発生しやすい条件には、例えば荷役動作が行われている時のエンジン回転数が比較的、低い回転数(例えば、アイドル回転数付近)である場合が挙げられる。このようにエンジン回転数が低い場合は、油圧ポンプ20の負荷の増加によってエンジン19のトルクが不足しやすく、その結果としてエンジンストールが発生する可能性が高い。車両制御装置25は、上記条件が成立する場合にステップS12を肯定判定する一方、上記条件が成立していない場合にステップS12を否定判定する。
【0027】
ステップS12を肯定判定した車両制御装置25は、電磁比例弁50を制御する(ステップS13)。具体的に言えば、車両制御装置25は、油路49,52を通じてリリーフ弁46の背圧室48の圧力を油タンク22へ解放させるように電磁比例弁50を動作させる。これにより、リリーフ弁46のリリーフ圧は、背圧室48の圧力とばね力によって規定されていた状態からばね力によって規定される状態に変遷する。その結果、リリーフ弁46のリリーフ圧は、背圧室48の圧力を解放させる前に比べて低くなる。そして、リリーフ弁46は、油路45の圧力がリリーフ圧を越えると、油路45の圧力を油タンク22へ解放させるように作動する。
【0028】
リリーフ弁46が油路45の圧力を解放させるように作動すると、油路47を通じて圧力補償弁44へ導入される圧力も低下する。これにより、圧力補償弁44のリリーフ圧は、導入される圧力とばね力によって規定される状態からばね力によって規定される状態に変遷する。その結果、圧力補償弁44のリリーフ圧は、背圧室48の圧力を解放させる前に比べて低くなる。そして、圧力補償弁44は、油路43の圧力がリリーフ圧を越えると、油路43の圧力を油タンク22へ解放させるように作動する。つまり、油圧ポンプ20から吐出された圧油は、油路43が開放されることによって油路43を通じて油タンク22へ流れるようになり、荷役動作に伴う急激な圧力の上昇が抑制される。
【0029】
そして、車両制御装置25は、回転数情報をもとにエンジン19の回転数が所定の回転数に復帰しているかを判断することで、上記制御を完了(終了)させるかを判定する(ステップS14)。車両制御装置25は、エンジン19の回転数が荷役動作を継続させてもエンジンストールの発生を回避できる程度に復帰している場合、ステップS14を肯定判定し、電磁比例弁50を制御する。具体的に言えば、車両制御装置25は、油路45の圧力をリリーフ弁46の背圧室48に導入させるように電磁比例弁50を作動させる。これにより、リリーフ弁46のリリーフ圧を高め、油路45を閉鎖させる。また、油路45を閉鎖することにより、圧力補償弁44へ導入される圧力も高くなり、圧力補償弁44のリリーフ圧も高くなる。その結果、油路43は閉鎖され、油圧ポンプ20から吐出された作動油はコントロール回路36へ流れ、油圧機構21内の圧力が油圧作動装置の作動に必要な作動圧に復帰する。
【0030】
したがって、本実施形態によれば、以下に示す効果を得ることができる。
(1)圧力情報と回転数情報をもとに、エンジンストールが発生する可能性がある場合には、油圧ポンプ20から吐出されている圧油を油タンク22へ解放させるよう圧力補償回路37を作動させることで、急激な圧力の上昇を抑制できる。したがって、エンジンストールの発生を好適に防止できる。
【0031】
(2)また、上記制御を、圧力情報と回転数情報をもとに行うことで、例えば荷役動作を指示するティルト操作部材27やリフト操作部材29の操作状態など、油圧作動装置の動作状態を直接的に検出しなくても良い。つまり、操作状態などを検出するためのセンサ類を、上記制御のために設ける必要はなく、フォークリフト10のコスト低減に繋げることができる。
【0032】
(3)また、圧力情報と回転数情報に応じてリリーフ弁46のリリーフ圧を制御できるため、仮にサージ圧が発生したとしても、エンジン19に対して急激な負荷とはならない。
【0033】
(4)リリーフ弁46のリリーフ圧の制御に電磁比例弁50を採用することで、リリーフ圧を任意に設定することができる。
(第2の実施形態)
以下、産業車両を具体化した第2の実施形態を図5にしたがって説明する。
【0034】
電磁比例弁50のように制御指令値(電流指令)によって開度を比例制御する場合は、ヒステリシスを考慮した制御を行うことが好ましい。つまり、電磁比例弁50は、制御指令値に対しての動作(開度)が常に一定にならないことが考えられる。その結果、電磁比例弁50の動作によってリリーフ弁46のリリーフ圧を制御する場合に、電磁比例弁50のヒステリシスの影響を受けてリリーフ圧がばらつく可能性がある。
【0035】
このため、図5に示すように、第2の実施形態の電磁比例弁50は、ヒステリシスを考慮する場合において所望のリリーフ圧が得られるように、開度を調整する調整機構55を備えている。
【0036】
電磁比例弁50は、弁部50aとソレノイド部50bとを備えている。そして、電磁比例弁50は、ソレノイド部50bのコイル57に電流を流すことによって磁界を発生させてプランジャ58を動作させ、そのプランジャ58の動作に合わせて弁部50aのスプール56を摺動させることにより、流路を開閉する。
【0037】
この実施形態の調整機構55は、筒状の筐体59内を軸方向に移動可能なねじ部60と、ねじ部60に連結されたばね61と、を有する。そして、調整機構55はねじ部60の締め付け量に応じてプランジャ58を介してスプール56の位置を変化させる機械式の調整機構である。つまり、調整機構55は、電磁比例弁50を作動させていない初期状態におけるスプール56の初期位置を、ねじ部60の締め付け量によって調整する構造を有する。これにより、スプール56は、電磁比例弁50を作動させた時、調整後の位置を基準に移動し、その結果、電磁比例弁50の開度が調整されることになる。なお、ねじ部60によるスプール56の調整は、所望の制御指令値で電磁比例弁50を制御したときに所望のリリーフ圧が得られるように行う。つまり、所望のリリーフ圧を得るために電磁比例弁50が必要な開度で作動するように調整を行う。
【0038】
したがって、本実施形態によれば、第1の実施形態の効果(1)〜(4)に加えて、以下に示す効果を得ることができる。
(5)電磁比例弁50の開度を調整する調整機構55を備えることで、電磁比例弁50を、ヒステリシスを考慮して制御することができる。つまり、電磁比例弁50の特性を変更できるので、電磁比例弁50に対する制御指令値とリリーフ圧とによる特性を一定に保つことができる。
【0039】
なお、上記実施形態は以下のように変更してもよい。
○ 実施形態のように複数の油圧作動装置(ティルトシリンダ15、リフトシリンダ16)を有する産業車両において、車両制御装置25は、動作を行う油圧作動装置の種類によってリリーフ弁46のリリーフ圧を異ならせるように電磁比例弁50を制御しても良い。つまり、車両制御装置25は、動作を行う油圧作動装置の種類によって電磁比例弁50の開度を調整し、リリーフ弁46のリリーフ圧を異ならせる。例えば、車両制御装置25は、ティルトシリンダ15が動作を行う場合、リフトシリンダ16が動作を行う場合に比してリリーフ圧が低くなるように電磁比例弁50の開度を調整する。なお、開度の調整は、電磁比例弁50への制御指令値(電流指令)を変化させることによって行う。また、この場合、車両制御装置25は、油圧作動装置の動作を指示する部材(実施形態ではティルト操作部材27やリフト操作部材29)の操作状態をセンサなどを用いて検出することで、複数の油圧作動装置のうち何れの油圧作動装置が動作するかを認識する。例えば、実施形態の場合は、ティルトセンサ28によってティルト操作部材27の操作状態を検出することができ、リフトセンサ30によってリフト操作部材29の操作状態を検出することができる。なお、実施形態においてティルトシリンダ15とリフトシリンダ16が同時に動作を行う場合、車両制御装置25は、リリーフ弁46のリリーフ圧をティルトシリンダ15に合わせるように電磁比例弁50を制御する。この別例によれば、油圧作動装置に応じたリリーフ圧を設定することができる。
【0040】
○ 第1の実施形態においてティルト操作部材27やリフト操作部材29を機械的に連結したコントロール弁39,41を採用する場合、ティルト操作部材27やリフト操作部材29の操作状態を検出するセンサを設けなくても良い。
【0041】
○ 車両制御装置25は、リリーフ弁46の背圧室48の圧力を油タンク22へ解放させるように電磁比例弁50を動作させた後(図4のステップS13)、時間の経過によって電磁比例弁50を制御しても良い。
【0042】
○ 圧力センサ53は、油圧ポンプ20から吐出される圧力を検出することができれば、油圧機構21内における配置を任意に変更できる。
○ 実施形態は、油圧作動装置としてパワーステアリング機構を動作させる油圧シリンダをさらに有するフォークリフト10に具体化しても良い。なお、前述したアタッチメントを動作させる油圧シリンダとパワーステアリング機構を動作させる油圧シリンダの両方を有するフォークリフト10に具体化しても良い。
【0043】
○ 実施形態は、油圧作動装置としてアタッチメントを動作させる油圧シリンダをさらに有するフォークリフト10に具体化しても良い。
○ 産業車両はフォークリフト10に限らず、ショベルローダなどの油圧作動装置を有する車両に具体化しても良い。
【符号の説明】
【0044】
10…フォークリフト(産業車両)、15…ティルトシリンダ(油圧作動装置)、16…リフトシリンダ(油圧作動装置)、19…エンジン、20…油圧ポンプ、22…油タンク、23…油路(第1油路)、25…車両制御装置(制御装置)、28…ティルトセンサ、30…リフトセンサ、34…回転数センサ(第1検出手段)、36…コントロール回路(第1回路)、37…圧力補償回路(第2回路)、39,41…コントロール弁、43…油路(第2油路)、45…油路(第3油路)、46…リリーフ弁、48…背圧室、49…油路(第4油路)、50…電磁比例弁(電磁弁)、53…圧力センサ(第2検出手段)、55…調整機構。
図1
図2
図3
図4
図5