【解決手段】防曇性評価装置1は、試料100の表面101に曇りを生成する曇り生成装置10、30と、試料100とは異なる位置に配置される被写体70と、試料100を介して被写体70を撮像する撮像装置40と、被写体70を撮像した被写体画像に基づいて試料100の防曇性を評価する評価装置90と、を備えている。
前記評価装置は、前記曇り生成装置によって前記試料の表面に曇りを生成した場合の前記被写体画像の変化に基づいて前記試料の防曇性評価指数を導出することを特徴とする、
請求項1乃至4のいずれかに記載の防曇性評価装置。
前記評価装置は、前記被写体画像中に設定した経路においてスタート点から最初に画素値が所定の閾値以上となるゴール点までの距離に基づいて前記防曇性評価指数を導出することを特徴とする、
請求項5に記載の防曇性評価装置。
前記評価装置は、非圧縮の前記被写体画像を所定の圧縮方法で圧縮した場合の圧縮率または圧縮後のファイル容量に基づいて、前記防曇性評価指数を導出することを特徴とする、
請求項5に記載の防曇性評価装置。
前記評価ステップでは、前記曇り生成ステップにおいて前記試料の表面に曇りを生成した場合の前記被写体画像の変化に基づいて前記試料の防曇性評価指数を導出することを特徴とする、
請求項12に記載の防曇性評価方法。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の実施の形態を、添付図面を参照して説明する。
【0024】
まず、本発明の実施の形態に係る防曇性評価装置1について説明する。
図1は、本実施形態に係る防曇性評価装置1の概略図である。
図1に示されるように、防曇性評価装置1は、試料100が載置される試料台10と、試料台10を収容する測定チャンバ20と、測定チャンバ20内と接続された水蒸気噴射装置30と、測定チャンバ20の外側に配置される撮像装置40と、測定チャンバ20と撮像装置40の間に配置されるハーフミラー50と、ハーフミラー50の側方に配置される照明装置60と、照明装置60とハーフミラー50の間に配置される被写体70と、被写体70とハーフミラー50の間に配置される画像調整用レンズ光学系81と、ハーフミラー50と撮像装置40の間に配置される表面撮像用レンズ光学系82と、防曇性評価装置1全体を制御する制御装置90と、を備えている。
【0025】
本実施形態の防曇性評価装置1は、試料100の表面101に結露により曇りを発生させ、この状態の試料100を介して被写体70を撮像した画像(被写体画像)に基づいて試料100の防曇性を評価するものである。すなわち、防曇性評価装置1は、被写体70からの光を試料100を透過させて、または試料100で反射させて撮像し、これにより得られる被写体70の画像に基づいて試料100の防曇性を評価するものである。
【0026】
試料100としては、防曇性を評価する窓ガラスやレンズ、鏡等を適宜の寸法の板状に切り出したものを使用する。試料100の厚みは、防曇性を正確に評価するためには実際に使用されるものと同一の厚みであることが好ましいが、特に限定されるものではない。窓ガラス等の表面に施すコーティングの防曇性の評価においては、適宜のガラス片等の一方の面にコーティングを施したものを試料100としてもよい。
【0027】
試料台10は、防曇性を評価する試料100が載置される架台である。試料台10は、試料100が載置される載置面11と、試料100を冷却するペルチェ素子12と、ペルチェ素子12の発熱側を冷却する熱交換器13と、を備えている。そして、熱交換器13には、冷却水を循環させる試料台用水循環器14が接続されている。
【0028】
すなわち、試料台10は、試料100を雰囲気の露点以下の温度まで冷却し、これにより試料100の表面101に結露を生じさせることが可能に構成されている。試料台10上に載置された試料100の表面101には、表面温度センサ15が配置されている。制御装置90は、この表面温度センサ15の検出結果に基づいて試料台10を制御し、試料100の表面温度を所定の温度(例えば、5℃)まで低下させる。
【0029】
また、本実施形態では、試料台10の載置面11を鏡面に構成し、窓ガラスやレンズ等の光を透過するものが試料100である場合、載置面11に映し出された被写体70を、試料100を透過して撮像するようにしている。このようにすることで、光を透過する試料100であっても、鏡等の光を反射する試料100の場合と同様に被写体70を撮像することが可能となる。すなわち、本実施形態では、試料100が光を透過するか否かによって撮像装置40や被写体70等の配置を変更する必要がないため、装置全体を簡素且つコンパクトに構成することが可能となっている。
【0030】
なお、本実施形態ではアルミ蒸着によって載置面11を鏡面に構成しているが、載置面11を鏡面に構成するのではなく、試料100と試料台10の間に鏡を配置するようにしてもよい。また、試料台10は、例えば熱交換器13による直接冷却等、ペルチェ素子12以外の機器によって試料100を冷却するものであってもよい。
【0031】
測定チャンバ20は、試料台10と共に試料100を収容し、試料100の周囲の雰囲気を所定の温度および湿度に保つ恒温恒湿槽である。測定チャンバ20の外壁はジャケット構造となっており、所定の温度の温水または冷水を循環させる温冷水循環器21が接続されている。また、測定チャンバ20には、水蒸気を供給して測定チャンバ20内の湿度を調整する湿度調節器22が接続され、測定チャンバ20の内部には、チャンバ内温度センサ23およびチャンバ内湿度センサ24が配置されている。制御装置90は、チャンバ内温度センサ23およびチャンバ内湿度センサ24の検出結果に基づいて温冷水循環器21および湿度調節器22を制御することで、測定チャンバ20内の雰囲気を所定の温度および湿度(例えば20℃、50%RH)に保持する。
【0032】
測定チャンバ20の上部には、適宜の曇り止めが施されたガラスからなる観測窓25が設けられている。撮像装置40は、この観測窓25を介して被写体70を撮像する。具体的に、被写体70からの光は、この観測窓25を通過して試料100に向かい、載置面11または試料100の表面101で反射した後に再び観測窓25を通過して撮像装置40に入射するようになっている。
【0033】
なお、観測窓25における曇り止めの方法は、特に限定されるものではなく、例えば電熱線ヒータ等によってガラスを加熱するようにしてもよいし、曇り止めコーティング等をガラス表面に施すようにしてもよい。また、測定チャンバ20は、温冷水循環器21以外の機器によって内部の温度を調整するものであってもよい。
【0034】
水蒸気噴射装置30は、測定チャンバ20内の試料100の表面101に向けて水蒸気を噴射し、試料100の表面101に曇りを強制的に生成するものである。すなわち、本実施形態では、試料100の表面101を露点以下に冷却して自然に結露を生じさせるだけでなく、試料100の表面101に水滴を付着させ、試料100の表面101が露点以上であっても強制的に曇りを生成することが可能となっている。測定チャンバ20内には、先端が試料100の表面101に向けられたノズル31が配置されており、水蒸気噴射装置30は、このノズル31を介して試料100の表面101に向けて水蒸気を噴射する。
【0035】
撮像装置40は、試料100を介して被写体70を撮像するものであり、観測窓25およびハーフミラー50を挟んで試料100の表面101と対向する位置に配置されている。上述のように撮像装置40は、試料100が窓ガラスやレンズ場合は、試料100の背後の載置面11に映し出された被写体70を、試料100を透過して撮像する。撮像装置40はまた、試料100が光を反射する場合は、試料100の表面101に映し出された被写体70を撮像する。撮像装置40は制御装置90に制御されて撮像を行い、撮像された画像は制御装置90に送信されて記憶される。
【0036】
ハーフミラー50は、撮像装置40と観測窓25の間に配置され、被写体70からの光を試料100に向けて反射させると共に、載置面11または試料100の表面101で反射した光を透過させて撮像装置40に入射させるものである。本実施形態では、ハーフミラー50を設けることで、撮像装置40、被写体70および画像調整用レンズ光学系81の配置の自由度を高め、装置全体をコンパクトに構成することを可能としている。
【0037】
照明装置60は、被写体70を背後から照明するものである。照明装置60は、例えばハロゲンランプやLED等の光源を備え、ハーフミラー50の反対側から被写体70に向けて光を放射するように配置されている。また、照明装置60の前方(照明装置60と被写体70の間)には、光を拡散させる拡散板61が配置されている。
【0038】
被写体70は、撮像装置40の撮像した画像中に適宜の像を形成するためのものである。
図2(a)〜(d)は、被写体70の例を示した概略図である。詳細は後述するが、本実施形態では、試料100を介して撮像した被写体画像における試料100の表面101に生じた曇りに起因する変化に基づいて、試料100の防曇性を評価する。従って、被写体70は、撮像装置40の撮像した被写体画像中に適宜の画素値(グレースケールの階調、RGB値またはHSV値等)の変化を含ませるようなものであればよい。
【0039】
被写体70としては、例えば
図2(a)および(b)に示されるように、ガラスや樹脂等からなる透明な基板71の表面に光を透過しない金属膜72を形成したものや、金属膜72を2枚の透明な基板71の間に挟んだもの等を使用することができる。本実施形態では、被写体70を背後から照明するようにしているため、このような被写体70を使用することで、コントラストの明瞭なシルエット画像を取得することができる。
【0040】
この場合、金属膜72の形状、すなわち撮像装置40の撮像した画像中に形成する像の形状は、特に限定されるものではなく、
図2(a)および(b)に示されるように円形状や円環状であってもよいし、多角形状や星形状、各種記号等のその他の形状であってもよい。さらに、1つの基板71に複数の金属膜72を形成するようにしてもよく、この場合、金属膜72ごとに形状を変えるようにしてもよい。また、接触角計の校正に使用される既存の液滴標準サンプルを、被写体70として活用するようにしてもよい。液滴標準サンプルであれば、金属膜72の形状精度が高いため、防曇性の評価を高精度に行うことが可能となる。
【0041】
また、基板71に金属膜72を形成するのではなく、例えば
図2(c)および(d)に示されるように、基板71に図柄や記号、絵画、写真等を印刷したものや、既存のポジフィルム等を被写体70として使用するようにしてもよい。この場合、風景や人物等のグレースケール写真やカラー写真等を被写体70として使用することで、より実際の状況に近い状態で防曇性の評価を行うことが可能となる。
【0042】
その他、図示は省略するが、透明な基板71を使用するのではなく、例えば金属や樹脂等の光を透過しない素材からなる平板や立体、彫像等をそのまま被写体70として使用するようにしてもよい。
【0043】
図1に戻って、画像調整用レンズ光学系81は、載置面11または試料100の表面101に映し出される被写体70の大きさを調整すると共に、撮像装置40に入射する光量を調節するためのものである。画像調整用レンズ光学系81を設けることで、被写体70の大きさおよび配置の自由度が高まるため、装置全体をコンパクト且つ効率的に構成することができる。
【0044】
また、画像調整用レンズ光学系81と共に被写体70を試料100から適度に離隔させて配置することができるため、試料100および被写体70を測定チャンバ20の内外に分けて配置することが可能となる。これにより、試料100の表面101に結露を生じさせる際に被写体70の表面にも結露が生じるのを防止し、被写体70の表面に生じた結露による影響を排除することができる。
【0045】
さらに、画像調整用レンズ光学系81を被写体70と試料100の間に配置し、被写体70からの光を集光することで、撮像装置40によって撮像した画像が試料100の表面101の曇りによって暗くなりすぎないようにすることができる。すなわち、被写体70に照射する光を強くする必要がないため、より自然な状態の被写体70の像を載置面11または試料100の表面101に映し出し、これを撮像することが可能となる。
【0046】
なお、本実施形態では、2つの凸レンズ81aから画像調整用レンズ光学系81を構成しているが、画像調整用レンズ光学系81を構成する凸レンズ81aの個数はこれに限定されるものではない。また、凸レンズ81aと凹レンズの組み合わせから画像調整用レンズ光学系81を構成してもよい。また、画像調整用レンズ光学系81にズーム機構を設けたり、画像調整用レンズ光学系81または被写体70を移動させて両者の相対位置を変更する移動機構を設けたりすることで、載置面11または試料100の表面101に映し出される被写体70の大きさを調整するようにしてもよい。
【0047】
表面撮像用レンズ光学系82は、試料100の表面101における結露の状態を撮像装置40によって撮像するためのものである。上述のように、防曇性評価装置1は試料100を介して被写体70を撮像した画像に基づいて試料100の防曇性を評価するものであるため、撮像装置40の焦点距離は、基本的に被写体70の位置に合わせたものとなっている。従って、本実施形態では、ハーフミラー50と撮像装置40の間に表面撮像用レンズ光学系82を挿入することで焦点距離を変更し、1つの撮像装置40によって被写体70および試料100の表面101の両方を撮像することを可能としている。
【0048】
表面撮像用レンズ光学系82は、適宜の凸レンズ82aを備えて構成されると共に、制御装置90に制御される退避機構83によって光路から退避させることが可能に構成されている。すなわち、本実施形態では、被写体70を撮像して防曇性の評価を行う際には表面撮像用レンズ光学系82を光路から退避させておき、試料100の表面101における結露の状態を観察する際には表面撮像用レンズ光学系82を光路上に配置するようになっている。
【0049】
なお、表面撮像用レンズ光学系82の構成は、画像調整用レンズ光学系81と同様に、特に限定されるものではなく、既知の各種構成を採用することができる。また、表面撮像用レンズ光学系82は、測定チャンバ20とハーフミラー50の間に配置されるものであってもよいし、撮像装置40に組み込まれたものであってもよい。また、退避機構83は、手動で表面撮像用光学系82を移動させるものであってもよい。
【0050】
制御装置90は、防曇性評価装置1全体を制御して、試料100の防曇性の評価を実行するものである。制御装置90は、CPU、ROMおよびRAMと共に、ハードディスクまたはフラッシュディスク等の記憶手段を備えるコンピュータから構成され、防曇性評価装置1の各部と電気的に接続されている。また、制御装置90には、図示を省略したキーボードおよびマウス等の入力装置、ならびに液晶ディスプレイ等からなる表示装置が接続されており、使用者はこれらを介して防曇性評価装置1を操作する。
【0051】
制御装置90はまた、ハードディスク等に記憶されたプログラムをCPUが実行することによって実現される機能構成として、制御手段91と、評価手段92と、を備えている。制御手段91は、試料台10、温冷水循環器21、湿度調節器22、水蒸気噴射装置30および撮像装置40等を制御して試料100の表面101に曇りを生成すると共に、試料100を介した被写体70の撮像を実行する。制御手段91はまた、退避装置83および撮像装置40を制御して試料100の表面101の撮像を実行する。評価手段92は、制御手段91の取得した被写体画像に基づき、試料100の防曇性を評価するための防曇性評価指数を所定の手法により導出する。評価手段92を備える評価装置を、制御装置90とは別に設けるようにしてもよい。
【0052】
なお、上述した防曇性評価装置1の各部の配置構成は、
図1に示したものに限定されず、その他の配置構成を採用するようにしてもよい。例えば表面101を側方に向けて試料100を配置し、側方に配置した撮像装置40によって撮像を行うように構成してもよいし、表面101を下方や斜め方向に向けて試料100を配置するようにしてもよい。試料100の表面101を側方等に向けることにより、結露に対する重力の影響を考慮して防曇性を評価することが可能となる。
【0053】
次に、防曇性評価装置1による防曇性の評価手順について説明する。防曇性の評価では、まず試料100を試料台10の載置面11上に配置する。この試料100の配置は、手動で行ってもよいし、適宜の搬送装置等によって自動的に行ってもよい。次に、制御装置90の制御手段91が温冷水循環器21および湿度調節器22を制御して、測定チャンバ20内の雰囲気を予め設定された温度および湿度に保持する(雰囲気設定ステップ)。
【0054】
チャンバ内温度センサ23およびチャンバ内湿度センサ24の検出結果から測定チャンバ20内が予め設定された温度および湿度に保持されたことが確認できたならば、制御手段91は、照明装置60および撮像装置40を制御して試料100を介した被写体70の撮像を行い、試料100の表面101に曇りが生じていない状態での被写体画像を取得する(曇り生成前撮像ステップ)。取得した被写体画像は制御装置90の備える記憶手段に記憶されると共に、表示装置に表示される。
【0055】
制御手段91は、次に試料台10を制御して試料100の温度を露点以下まで冷却し、表面101に曇りを生成する(曇り生成ステップ)。制御手段91はまた、これと並行して撮像装置40を制御し、試料100を介した被写体70の撮像を行う(曇り生成後撮像ステップ)。この曇り生成後撮像ステップでは、制御手段91は、試料100の表面101に曇りが生じた状態での被写体画像を所定の周期(例えば1秒ごと)で取得し、曇りの経時的変化を記録する。取得した被写体画像は制御装置90の備える記憶手段に記憶されると共に、表示装置に表示される。
【0056】
水蒸気噴射装置30によって試料100の表面101に曇りを生成する場合、曇り生成ステップにおいて制御手段91は、水蒸気噴射装置30を制御して試料100の表面に水蒸気を吹き付ける。なお、この場合、試料台10によって試料100の表面101を所定の温度まで冷却した後に水蒸気を吹き付けるようにしてもよい。
【0057】
被写体画像を記憶手段に記憶したならば、次に制御装置90の評価手段92が、記憶した被写体画像に基づいて防曇性評価指数を導出する(評価ステップ)。導出した防曇性評価指数は、記憶手段に記憶されると共に表示装置に表示される。以上の手順により、試料100の防曇性の評価が完了する。
【0058】
なお、曇り生成前撮像ステップおよび曇り生成後撮像ステップでは、試料100を介した被写体70の撮像と共に試料100の表面101の撮像を行うようにしてもよい。この場合、制御手段91は、被写体70の撮像の前後における適宜のタイミングで退避装置83および撮像装置40を制御して試料100の表面101を撮像し、表面画像を取得する。曇り生成後撮像ステップにおいて表面画像を取得する周期は、被写体画像と同一であってもよいし、異なっていてもよい。防曇性の評価と共に表面101の結露状態を観察することで、より多面的な評価が可能となる。
【0059】
また、予め表面撮像用レンズ光学系82を光路上に配置した状態で上記手順を実行し、曇り生成前撮像ステップおよび曇り生成後撮像ステップにおいて試料100の表面101の撮像のみを行うようにしてもよい。この場合、防曇性評価指数の導出はできないが、試料100の表面101の状態の変化を詳細に観察することが可能となる。
【0060】
次に、防曇性評価指数を導出する手法の詳細について説明する。
図3(a)は、試料100の表面101に曇りが生じていない状態での被写体画像200の一例を示した概略図であり、
図3(b)は、試料100の表面101に曇りが生じている状態での被写体画像201の一例を示した概略図である。なお、これらの図では、
図2(a)に示した被写体70を撮像した場合の例を模式的に示している。
【0061】
被写体70を撮像した画像は、上述のようにシルエット画像となる。具体的に、被写体70の金属膜72は、照明装置60からの光を透過しないことから周囲よりも暗い暗領域200a、201aとなって映し出され、透明な基板71は暗領域200a、201aよりも明るい明領域200b、201bとなる。試料100の表面101に曇り(結露)が生じていない場合には、曇りによる光の散乱が生じないため、試料100を介して被写体70を撮像した場合にも、
図3(a)に示されるように、被写体70の金属膜72の形状が明瞭に映し出され、暗領域200aと明領域200bの境界線(輪郭線)が略明確な被写体画像200が得られる。
【0062】
一方、試料100の表面101に曇り(結露)が生じている場合には、曇りによって光が散乱するため、
図3(b)に示されるように、被写体70の金属膜72の形状がぼけて映し出され、暗領域201aと明領域201bの境界線(輪郭線)が不明確な被写体画像201が得られることとなる。また、被写体画像201における明領域201bは、光の散乱によって被写体画像200における明領域200bよりも全体的に明るさが低下することとなる。
【0063】
すなわち、試料100の表面101に曇りが生じている場合の被写体画像201は、試料100の表面101に曇りが生じていない場合の被写体画像200から変化することとなる。より詳細には、被写体画像201における少なくとも一部の画素の画素値(グレースケールの階調、RGB値またはHSV値等)は、曇りによる光の散乱に起因して被写体画像200における同一位置の画素の画素値から変化することとなる。
【0064】
本実施形態では、このような被写体画像201における被写体画像200からの変化の度合いを数値化した防曇性評価指数を導出することで、試料100の防曇性を定量的、客観的に評価することを可能としている。また、被写体画像201における被写体画像200からの変化の度合いは、試料100を介した(透過または反射した)景色の見え方の変化の度合いを示すものであるため、防曇性をより現実に即した形で、直接的に評価することが可能となっている。
【0065】
防曇性評価指数の導出方法は、特に限定されるものではなく、既知の各種画像処理方法や画像解析方法を利用した種々の手法を採用することができる。但し、本実施形態では、以下に説明する面積比法、傾斜比法、明暗比法、距離比法、圧縮比法およびヒストグラム法の6つの手法のいずれかによって防曇性評価指数を導出するようにしている。なお、以下の各手法の説明では、
図3(a)および(b)に示した被写体画像200、201を256階調のグレースケール画像として取得する場合を例として説明する。
【0066】
<面積比法>
図4(a)および(b)は、面積比法の概要を示した概略図である。面積比法では、曇り生成前後の被写体画像200、201における、領域内の画素の画素値Pが所定の閾値Pta以下となる領域A0、A1の面積S0、S1に基づいて防曇性評価指数を導出する。具体的には、制御装置90の評価手段92は、まず
図4(a)に示されるように、試料100に曇りが生じていない場合の被写体画像200において、領域内の画素の画素値P(ここでは、グレースケールの階調)が所定の閾値Pta以下となる領域A0の面積S0を導出する。
【0067】
次に、評価手段92は、
図4(b)に示されるように、試料100に曇りが生じている場合の被写体画像201において、画素の画素値Pが所定の閾値Pta以下となる領域A1の面積S1を導出する。そして、評価手段92は、面積S1と面積S0の比S1/S0またはS0/S1を防曇性評価指数として導出する。
【0068】
面積S1は、試料100の曇りによる光の散乱度合いが大きい程、暗領域201aを照らして明るくする(すなわち、階調を上げる)ため、面積S0よりも小さくなる。また、曇りによる光の散乱が殆ど生じない場合には、面積S1は、面積S0に近い値となる。従って、防曇性評価指数としてS1/S0を導出した場合、試料100の防曇性は、防曇性評価指数の値が大きい程(1に近い程)高く、小さい程低いということとなる。また、防曇性評価指数としてS0/S1を導出した場合には、この逆となる。
【0069】
なお、面積の比S1/S0またはS0/S1を求めるのではなく、面積S1の値をそのまま防曇性評価指数としてもよい。また、被写体画像200、201をカラー画像として取得する場合は、R(Red)値、G(Green)値およびB(Blue)値、またはH(Hue)値、S(Saturation)値およびV(Value)値の中間値、平均値または加重平均値等を画素値Pとしてもよいし、R値、G値もしくはB値のいずれか、またはH値、S値もしくはV値のいずれかを画素値Pとしてもよい。
【0070】
また、画素の画素値Pが所定の閾値Pta以上となる領域の面積に基づいて防曇性評価指数を導出するようにしてもよい。この場合、光の散乱度合いが大きい程、明領域201bは暗くなるため、画素の画素値Pが所定の閾値Pta以上となる領域の面積も小さくなる。また、被写体画像200、201を所定の閾値Ptaに基づいて二値化した画像を生成し、表示装置に表示等することで、領域A0、A1の面積の変化や形状の変化を視覚的に示すようにしてもよい。
【0071】
<傾斜比法>
図5(a)および(b)は、傾斜比法の概要を示した概略図である。傾斜比法では、曇り生成前後の被写体画像200、201に設定した経路Rにおける画素値Pの変化率に基づいて防曇性評価指数を導出する。具体的には、制御装置90の評価手段92は、まず
図5(a)に示されるように、試料100に曇りが生じていない場合の被写体画像200において暗領域200aと明領域200bに跨がる水平方向(x方向)の経路Rを設定し、この経路R上の画素の画素値Pを取得して境界Bにおける画素値Pの変化率として平均傾き角θ0を導出する。
【0072】
次に、評価手段92は、
図5(b)に示されるように、試料100に曇りが生じている場合の被写体画像201において被写体画像200と同一の経路Rを設定し、この経路R上の画素の画素値Pを取得して境界Bにおける画素値Pの変化率として平均傾き角θ1を導出する。そして、評価手段92は、平均傾き角θ1と平均傾き角θ0の比θ1/θ0またはθ0/θ1を防曇性評価指数として導出する。
【0073】
この例では、被写体画像200のコントラストが高いため、被写体画像200の経路Rにおける画素値Pは境界Bにおいて最大値(255)で略一定の状態から略最小値(0)で略一定の状態に急激に変化し、平均傾き角θ0は略90°となる。一方、被写体画像201の経路Rにおいては、試料100の曇りによる光の散乱度合いが大きい程、明領域201bが暗くなると共に、境界Bの幅Wが広がって画素値Pはこの幅W内で漸次変化することとなるため、平均傾き角θ1は小さくなる。また、曇りによる光の散乱が殆ど生じない場合には、平均傾き角θ1は、平均傾き角θ0に近い値となる。
【0074】
従って、防曇性評価指数としてθ1/θ0を導出した場合、試料100の防曇性は、防曇性評価指数の値が大きい程(1に近い程)高く、小さい程低いということとなる。また、防曇性評価指数としてθ0/θ1を導出した場合には、この逆となる。
【0075】
なお、面積比法の場合と同様に、平均傾き角θ1の値をそのまま防曇性評価指数としてもよい。また、被写体画像200、201をカラー画像として取得する場合は、R値、G値およびB値、またはH値、S値およびV値の中間値、平均値または加重平均値等を画素値Pとしてもよいし、R値、G値もしくはB値のいずれか、またはH値、S値もしくはV値のいずれかを画素値Pとしてもよい。
【0076】
また、経路Rの位置は、特に限定されるものではなく、画素値Pの変化する境界Bを横切る位置に設定すればよい。また、経路Rの方向は、x方向に限定されるものではなく、いずれの方向であってもよい。また、取得する画素値Pは、経路R上の画素の画素値Pのみを取得するようにしてもよいし、経路R上の画素およびこれに隣接する画素の画素値Pの平均値等を取得するようにしてもよい。また、経路Rを複数設定し、各経路Rにおける平均傾き角θ0の平均値、および各経路Rにおける平均傾き角θ1の平均値に基づいて防曇性評価指数を導出するようにしてもよい。
【0077】
<明暗比法>
図6(a)および(b)は、明暗比法の概要を示した概略図である。明暗比法では、曇り生成前後の被写体画像200、201に設定した第1の比較点Laおよび第2の比較点Lbにおける画素値Pの差分ΔP0、ΔP1に基づいて防曇性評価指数を導出する。具体的には、制御装置90の評価手段92は、まず
図6(a)に示されるように、試料100に曇りが生じていない場合の被写体画像200において、暗領域200a内に第1の比較点Laを設定し、明領域200b内に第2の比較点Lbを設定する。そして、評価手段92は、第1の比較点Laにおける画素値Pa0および第2の比較点Lbにおける画素値Pb0を取得し、両者の差分ΔP0(=Pb0−Pa0)を導出する。
【0078】
次に、評価手段92は、
図6(b)に示されるように、試料100に曇りが生じている場合の被写体画像201において被写体画像200と同一位置に第1の比較点Laおよび第2の比較点Lbを設定し、第1の比較点Laにおける画素値Pa1および第2の比較点Lbにおける画素値Pb1を取得して両者の差分ΔP1(=Pb1−Pa1)を導出する。そして、評価手段92は、差分ΔP1と差分ΔP0の比ΔP1/ΔP0またはΔP0/ΔP1を防曇性評価指数として導出する。
【0079】
この例では、上述のように被写体画像200のコントラストが高いため、被写体画像200における第1の比較点Laの画素値Pa0は略最小値(0)となり、第2の比較点Lbの画素値Pb0は略最大値(255)となる。従って、差分ΔP0は略最大値(255)となる。一方、被写体画像201においては、試料100の曇りによる光の散乱度合いが大きい程、明領域201bが暗くなり、第2の比較点Lbにおける画素値Pb1が減少するため、差分ΔP1は小さくなる。また、曇りによる光の散乱が殆ど生じない場合には、差分ΔP1は、差分ΔP0に近い値となる。
【0080】
従って、防曇性評価指数としてΔP1/ΔP0を導出した場合、試料100の防曇性は、防曇性評価指数の値が大きい程(1に近い程)高く、小さい程低いということとなる。また、防曇性評価指数としてΔP0/ΔP1を導出した場合には、この逆となる。
【0081】
なお、上述の各手法の場合と同様に、差分ΔP1の値をそのまま防曇性評価指数としてもよい。また、被写体画像200、201をカラー画像として取得する場合は、R値、G値およびB値、またはH値、S値およびV値の中間値、平均値または加重平均値等を画素値Pとしてもよいし、R値、G値もしくはB値のいずれか、またはH値、S値もしくはV値のいずれかを画素値Pとしてもよい。
【0082】
また、第1の比較点Laおよび第2の比較点Lbの位置は、特に限定されるものではなく、被写体70の構成等に応じた適宜の位置に設定すればよい。また、取得する画素値Pは、第1の比較点Laおよび第2の比較点Lbにおける画素の画素値Pのみを取得するようにしてもよいし、第1の比較点Laおよび第2の比較点Lbにおける画素およびこれに隣接する画素の画素値Pの平均値等を取得するようにしてもよい。また、第1の比較点Laおよび第2の比較点Lbの位置を固定するのではなく、例えば画像全体または画像中の所定の経路上において、画素値Pが最小値の画素を第1の比較点Laとし、画素値Pが最大値の画素を第2の比較点Lbとするようにしてもよい。
【0083】
また、第1の比較点Laおよび第2の比較点Lbを複数設定し、複数の差分ΔP0の平均値、および複数の差分ΔP1の平均値に基づいて防曇性評価指数を導出するようにしてもよい。また、差分ΔP0、ΔP1ではなく、画素値Pa0と画素値Pb0の比Pb0/Pa0またはPa0/Pb0、および画素値Pa1と画素値Pb0の比Pb1/Pa1またはPa1/Pb1に基づいて、防曇性評価指数を導出するようにしてもよい。
【0084】
<距離比法>
図7(a)および(b)は、距離比法の概要を示した概略図である。距離比法では、曇り生成前後の被写体画像200、201に設定した経路Rにおいて、スタート点Lsから最初に画素値Pが所定の閾値Ptd以上となるゴール点Lg0、Lg1までの距離D0、D1に基づいて防曇性評価指数を導出する。具体的には、制御装置90の評価手段92は、まず
図7(a)に示されるように、試料100に曇りが生じていない場合の被写体画像200において、暗領域200a内にスタート点Lsを設定し、スタート点Lsから水平方向(x方向)の経路Rを設定する。次に、スタート点Lsから経路R上の画素の画素値Pを順に取得していき、画素値Pが最初に所定の閾値Ptd以上となった点(画素)をゴール点Lg0に設定する。そして、スタート点Lsからゴール点Lg0までの距離D0を導出する。
【0085】
次に、評価手段92は、
図7(b)に示されるように、試料100に曇りが生じている場合の被写体画像201において被写体画像200と同一位置にスタート点Lsを設定し、被写体画像200と同一の経路Rを設定する。そして、スタート点Lsから経路R上の画素の画素値Pを順に取得していって画素値Pが最初に所定の閾値Ptd以上となった点をゴール点Lg1に設定し、スタート点Lsからゴール点Lg1までの距離D1を導出する。最後に、評価手段92は、距離D0と距離D1の比D1/D0またはD0/D1を防曇性評価指数として導出する。
【0086】
距離D1は、試料100の曇りによる光の散乱度合いが大きい程、暗領域201aの周辺を暗くする(すなわち、階調を下げる)ため、距離D0よりも大きくなる。また、曇りによる光の散乱が殆ど生じない場合には、距離D1は、距離D0に近い値となる。従って、防曇性評価指数としてD1/D0を導出した場合、試料100の防曇性は、防曇性評価指数の値が小さい程(1に近い程)高く、大きい程低いということとなる。また、防曇性評価指数としてD0/D1を導出した場合には、この逆となる。
【0087】
なお、上述の各手法の場合と同様に、距離D1の値をそのまま防曇性評価指数としてもよい。また、被写体画像200、201をカラー画像として取得する場合は、R値、G値およびB値、またはH値、S値およびV値の中間値、平均値または加重平均値等を画素値Pとしてもよいし、R値、G値もしくはB値のいずれか、またはH値、S値もしくはV値のいずれかを画素値Pとしてもよい。
【0088】
また、スタート点Lsの位置は、特に限定されるものではなく、被写体70の構成等に応じた適宜の位置に設定すればよい。また、経路Rの方向は、x方向に限定されるものではなく、いずれの方向であってもよい。また、取得する画素値Pは、経路R上の画素の画素値Pのみを取得するようにしてもよいし、経路R上の画素およびこれに隣接する画素の画素値Pの平均値等を取得するようにしてもよい。また、スタート点Lsまたは経路Rを複数設定し、複数の距離D0の平均値、および複数の距離D1の平均値に基づいて防曇性評価指数を導出するようにしてもよい。
【0089】
<圧縮比法>
図8(a)および(b)は、圧縮比法の概要を示した概略図である。圧縮比法では、曇り生成前後の非圧縮の被写体画像200o、201oを所定の画像圧縮方法で圧縮した場合の圧縮率Cr0、Cr1に基づいて防曇性評価指数を導出する。具体的には、制御装置90の評価手段92は、まず
図8(a)に示されるように、試料100に曇りが生じていない場合の非圧縮(例えばRAW形式やBMP形式等)の被写体画像200oを所定の画像圧縮方法で圧縮し、例えばJPEG形式等の被写体画像200を生成する。そして、評価手段92は、被写体画像200oのファイル容量C0oおよび被写体画像200のファイル容量C0を取得し、圧縮率Cr0(=C0/C0o)を導出する。
【0090】
次に、評価手段92は、
図8(b)に示されるように、試料100に曇りが生じている場合の非圧縮の被写体画像201oを被写体画像200oの場合と同一の画像圧縮方法で圧縮し、被写体画像200と同一形式の被写体画像201を生成する。そして、評価手段92は、被写体画像201oのファイル容量C1oおよび被写体画像201のファイル容量C1を取得し、圧縮率Cr1(=C1/C1o)を導出する。最後に、評価手段92は、圧縮率Cr1と圧縮率Cr0の比Cr1/Cr0またはCr0/Cr1を防曇性評価指数として導出する。
【0091】
この例では、上述のように被写体画像のコントラストが高いため、被写体画像200は略二値画像に近いものとなり、圧縮率Cr0は高くなる。一方、被写体画像201では、試料100の曇りによる光の散乱度合いが大きい程、階調、すなわち画素値Pの変化が増大するため、圧縮率Cr1は低くなる。また、曇りによる散乱が殆ど生じない場合には、圧縮率Cr1は、圧縮率Cr0に近い値となる。
【0092】
従って、防曇性評価指数としてCr1/Cr0を導出した場合、試料100の防曇性は、防曇性評価指数の値が大きい程(1に近い程)高く、小さい程低いということとなる。また、防曇性評価指数としてCr0/Cr1を導出した場合には、この逆となる。
【0093】
なお、圧縮率Cr0、Cr1ではなく、圧縮後のファイル容量C0、C1を用いて防曇性評価指数を導出するようにしてもよい。また、上述の各手法の場合と同様に、圧縮率Cr1の値や圧縮後のファイル容量C0、C1の値をそのまま防曇性評価指数としてもよい。また、非圧縮の被写体画像200o、201oの画像形式および圧縮後の被写体画像200、201の画像形式は特に限定されるものではなく、既知の種々の画像形式を採用することができる。また、画像の圧縮方法も特に限定されるものではなく、例えば被写体画像200o、201oをZIP形式等に圧縮した場合の圧縮率Cr0、Cr1に基づいて防曇性評価指数を導出するようにしてもよい。
【0094】
また、例えば
図2(c)および(d)に示したような複雑な構成の被写体70を使用する場合、曇りによる光の散乱度合いが大きい程、画素値Pの変化が減少し、圧縮率Cr1が圧縮率Cr0よりも低くなることがある。従って、圧縮比法においては、使用する被写体70に応じて防曇性評価指数の値と防曇性の関係を事前に確認しておくことが好ましい。
【0095】
<ヒストグラム法>
図9(a)および(b)は、ヒストグラム法の概要を示した概略図である。ヒストグラム法では、曇り生成前後の被写体画像200、201における、画素値Pのヒストグラムの面積Sh0、Sh1に基づいて防曇性評価指数を導出する。具体的には、制御装置90の評価手段92は、まず
図9(a)に示されるように、試料100に曇りが生じていない場合の被写体画像200について、縦軸が出現頻度F、横軸が画素値Pのヒストグラムを生成し、その面積Sh0を導出する。
【0096】
次に、評価手段92は、
図9(b)に示されるように、試料100に曇りが生じている場合の被写体画像200について、被写体画像200と同様に軸が出現頻度F、横軸が画素値Pのヒストグラムを生成し、その面積Sh1を導出する。そして、評価手段92は、面積Sh1と面積Sh0の比Sh1/Sh0またはSh0/Sh1を防曇性評価指数として導出する。
【0097】
この例では、上述のように被写体画像200のコントラストが高いため、被写体画像200における画素値Pの出現頻度Fは最小値(0)および最大値(255)の近傍の値に集中し、ヒストグラムの面積Sh0は小さくなる。一方、被写体画像201においては、試料100の曇りによる光の散乱度合いが大きい程、中間の画素値Pの出現頻度Fが増加してヒストグラムの面積Sh1は大きくなる。また、曇りによる光の散乱が殆ど生じない場合には、面積Sh1は、面積Sh0に近い値となる。
【0098】
従って、防曇性評価指数としてSh1/Sh0を導出した場合、試料100の防曇性は、上述の各手法とは逆に防曇性評価指数の値が小さい程(1に近いほど)高く、大きい程低いということとなる。また、防曇性評価指数としてSh0/Sh1を導出した場合は、この逆となる。
【0099】
なお、上述の各手法の場合と同様に、面積Sh1の値をそのまま防曇性評価指数としてもよい。また、被写体画像200、201をカラー画像として取得する場合は、R値、G値およびB値、またはH値、S値およびV値の中間値、平均値または加重平均値等を画素値Pとしてもよいし、R値、G値もしくはB値のいずれか、またはH値、S値もしくはV値のいずれかを画素値Pとしてもよい。特に、
図2(d)に示したような複雑な構成の被写体70を使用する場合、R値、G値もしくはB値のいずれか、またはH値、S値もしくはV値のいずれかにヒストグラムを限定することで、より適切な防曇性評価指数を導出することが可能となる場合がある。
【0100】
制御装置90の評価手段92は、上述の各手法のいずれかを使用して、防曇性評価指数を導出する。各手法のいずれを使用するかは、使用者が手動で選択するようにしてもよいし、被写体70の種類や取得した被写体画像200の構成等に応じて評価手段92がいずれの手法を使用するかを判定するようにしてもよい。
【0101】
以上説明したように、本実施形態に係る防曇性評価装置1は、試料100の表面101に曇りを生成する曇り生成装置(試料台10および水蒸気噴射装置30)と、試料100とは異なる位置に配置される被写体70と、試料100を介して被写体70を撮像する撮像装置40と、被写体70を撮像した被写体画像200、201に基づいて試料100の防曇性を評価する評価装置(制御装置90の評価手段92)と、を備えている。
【0102】
このような構成とすることで、例えば車窓から外の風景を見る場合や鏡に映った顔を見る場合等、試料100の実際の使用状況に近い状態で、試料100を介して被写体70を撮像し、これにより得られる被写体画像200、201に基づいて試料100の防曇性を評価することが可能となるため、より現実に即した状態で防曇性を定量的、客観的に評価することができる。
【0103】
また、防曇性評価装置1は、試料100と被写体70の間に配置される画像調整用レンズ光学系81を備えている。このようにすることで、適切な大きさの被写体70の像をより自然な状態で撮像することができる。
【0104】
また、防曇性評価装置1は、被写体70を背後から照明する照明装置60を備えている。このようにすることで、コントラストの高い被写体画像200、201を得ることが可能となるため、被写体画像200、201に基づく防曇性の評価を高精度に行うことができる。
【0105】
また、防曇性評価装置1は、試料100と撮像装置40の間に配置される表面撮像用レンズ光学系82と、表面撮像用レンズ光学系82を光路から退避させる退避装置83と、を備えている。このようにすることで、撮像装置40によって試料100の表面101の状態を撮像することが可能となり、防曇性の評価をより多面的に行うことが可能となる。
【0106】
また、評価装置(制御装置90の評価手段92)は、曇り生成装置(試料台10および水蒸気噴射装置30)によって試料100の表面に曇りを生成した場合の被写体画像201の変化に基づいて試料100の防曇性評価指数を導出する。このようにすることで、試料100を介した景色の見え方の変化の度合いに基づいて防曇性を評価することが可能となるため、防曇性をより現実に即した形で、直接的に評価することができる。
【0107】
また、評価装置(制御装置90の評価手段92)は、被写体画像200、201において画素値Pが所定の閾値Pta以下または以上となる領域A0、A1の面積S0、S1に基づいて防曇性評価指数を導出する。このようにすることで、防曇性評価指数による防曇性の定量的、客観的な評価を簡便且つ高精度に行うことできる。
【0108】
また、評価装置(制御装置90の評価手段92)は、被写体画像200、201中に設定した経路Rにおける画素値Pの変化率(平均傾き角θ0、θ1)に基づいて防曇性評価指数を導出する。この場合においても、防曇性評価指数による防曇性の定量的、客観的な評価を簡便且つ高精度に行うことできる。
【0109】
また、評価装置(制御装置90の評価手段92)は、被写体画像200、201中の第1の比較点Laおよび第2の比較点Lbにおける画素値Pの差分ΔP0、ΔP1または比に基づいて防曇性評価指数を導出する。この場合においても、防曇性評価指数による防曇性の定量的、客観的な評価を簡便且つ高精度に行うことできる。
【0110】
また、評価装置(制御装置90の評価手段92)は、被写体画像200、201中に設定した経路Rにおいてスタート点Lsから最初に画素値Pが所定の閾値Ptd以上となるゴール点Lg0、Lg1までの距離D0、D1に基づいて防曇性評価指数を導出する。この場合においても、防曇性評価指数による防曇性の定量的、客観的な評価を簡便且つ高精度に行うことできる。
【0111】
また、評価装置(制御装置90の評価手段92)は、非圧縮の被写体画像200o、201oを所定の圧縮方法で圧縮した場合の圧縮率Cr0、Cr1または圧縮後のファイル容量C0、C1に基づいて、防曇性評価指数を導出する。この場合においても、防曇性評価指数による防曇性の定量的、客観的な評価を簡便且つ高精度に行うことできる。
【0112】
また、評価装置(制御装置90の評価手段92)は、被写体画像200、201における画素値Pのヒストグラムの面積Sh0、Sh1に基づいて防曇性評価指数を導出する。この場合においても、防曇性評価指数による防曇性の定量的、客観的な評価を簡便且つ高精度に行うことできる。
【0113】
また、本実施形態に係る防曇性評価方法は、試料100の表面に曇りを生成する曇り生成ステップと、試料100とは異なる位置に配置された被写体70を試料100を介して撮像する撮像ステップと、被写体70を撮像した被写体画像200、201に基づいて試料200の防曇性を評価する評価ステップと、を有している。
【0114】
このような構成とすることで、試料100の実際の使用状況に近い状態で、試料100を介して被写体70を撮像し、これにより得られる被写体画像200、201に基づいて試料100の防曇性を評価することが可能となるため、より現実に即した状態で防曇性を定量的、客観的に評価することができる。
【0115】
また、評価ステップでは、曇り生成ステップにおいて試料100の表面に曇りを生成した場合の被写体画像200、201の変化に基づいて試料100の防曇性評価指数を導出する。このようにすることで、試料100を介した景色の見え方の変化の度合いに基づいて防曇性を評価することが可能となるため、防曇性をより現実に即した形で、直接的に評価することができる。
【0116】
以上、本発明の実施の形態について説明したが、本発明に係る防曇性評価装置および防曇性評価方法は、上記した実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。また、上記実施形態において示した作用および効果は、本発明から生じる最も好適な作用および効果を列挙したものに過ぎず、本発明による作用および効果は、これらに限定されるものではない。
前記評価装置は、前記曇り生成装置によって前記試料の表面に曇りを生成した場合の前記被写体画像の変化に基づいて前記試料の防曇性評価指数を導出することを特徴とする、
請求項3に記載の防曇性評価装置。
前記評価装置は、前記被写体画像中に設定した経路においてスタート点から最初に画素値が所定の閾値以上となるゴール点までの距離に基づいて前記防曇性評価指数を導出することを特徴とする、
請求項1、2、7のいずれかに記載の防曇性評価装置。
前記評価装置は、非圧縮の前記被写体画像を所定の圧縮方法で圧縮した場合の圧縮率または圧縮後のファイル容量に基づいて、前記防曇性評価指数を導出することを特徴とする、
請求項2又は7に記載の防曇性評価装置。
前記評価ステップでは、前記曇り生成ステップにおいて前記試料の表面に曇りを生成した場合の前記被写体画像の変化に基づいて前記試料の防曇性評価指数を導出することを特徴とする、
請求項16に記載の防曇性評価方法。
前記評価装置は、前記曇り生成装置によって前記試料の表面に曇りを生成した場合の前記被写体画像の変化に基づいて前記試料の防曇性評価指数を導出することを特徴とする、
請求項3に記載の防曇性評価装置。
前記評価装置は、前記被写体画像中に設定した経路においてスタート点から最初に画素値が所定の閾値以上となるゴール点までの距離に基づいて前記防曇性評価指数を導出することを特徴とする、
請求項7に記載の防曇性評価装置。
前記評価装置は、非圧縮の前記被写体画像を所定の圧縮方法で圧縮した場合の圧縮率または圧縮後のファイル容量に基づいて、前記防曇性評価指数を導出することを特徴とする、
請求項7に記載の防曇性評価装置。
前記評価ステップでは、前記曇り生成ステップにおいて前記試料の表面に曇りを生成した場合の前記被写体画像の変化に基づいて前記試料の防曇性評価指数を導出することを特徴とする、
請求項16に記載の防曇性評価方法。