【課題】保存しても粘度上昇しにくいとともに、現像性に優れた塗膜を形成可能であり、かつ、製造時の熱によっても色材の色特性が変化しにくい、耐熱性に優れたカラーフィルター用着色組成物を提供する。
【解決手段】バインダーポリマー、色材、及び溶剤を含有するカラーフィルター用着色組成物である。バインダーポリマーが、t−ブチルアクリレート等に由来する構成単位(A)と、所定の式で表されるカルボキシ基含有(メタ)アクリレートに由来する構成単位(B)と、を有するとともに、バインダーポリマーの全体に対する、構成単位(A)の割合が40〜70質量%、構成単位(B)の割合が20〜50質量%であり、バインダーポリマーの酸価が40〜130mgKOH/gであり、かつ、数平均分子量が3,000〜15,000である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施の形態について説明するが、本発明は以下の実施の形態に限定されるものではない。本発明のカラーフィルター用着色組成物(以下、「CF用着色組成物」又は「着色組成物」とも記す)は、バインダーポリマー、色材、及び溶剤を含有する。以下、その詳細について説明する。
【0017】
(バインダーポリマー)
本発明のCF用着色組成物に含有されるバインダーポリマーは、構成単位(A)と、構成単位(B)とを有する。構成単位(A)は、t−ブチルアクリレート及び下記一般式(A)で表されるアクリレートの少なくともいずれかに由来する構成単位である。また、構成単位(B)は、下記一般式(B)で表されるカルボキシ基含有(メタ)アクリレートに由来する構成単位である。
【0018】
(前記一般式(A)中、R
1は、炭素数1〜10のアルキル基、炭素数3〜6のシクロアルキル基、炭素数2〜10のアルケニル基、炭素数2〜10のアルキニル基、又はアリール基を示す)
【0019】
(前記一般式(B)中、R
2は、水素原子又はメチル基を示し、R
3は、1以上のカルボキシ基を有する、炭素数1〜10のアルキル基、炭素数3〜6のシクロアルキル基、炭素数2〜10のアルケニル基、炭素数2〜10のアルキニル基、又はアリール基を示し、Xは、ハロゲン原子を有していてもよい、炭素数1〜10のアルキレン基、炭素数3〜6のシクロアルキレン基、炭素数2〜10のアルケニレン基、炭素数2〜10のアルキニレン基、又はアリーレン基を示す)
【0020】
一般式(A)中のR
1は、炭素数1〜4のアルキル基又はシクロヘキシル基であることが好ましい。また、一般式(B)中のR
3は、下記式のいずれかで表される基(下記式中の「*」は結合位置を示す)であることが好ましく、1以上のカルボキシ基を有する、シクロヘキシル基又はフェニル基であることがさらに好ましい。そして、一般式(B)中のXは、炭素数1〜4のアルキレン基であることが好ましい。
【0022】
構成単位(A)は、t−ブチルアクリレート及び一般式(A)で表されるアクリレートの少なくともいずれか(以下、「モノマー(A)」とも記す)に由来する構成単位である。一般式(A)で表されるアクリレートは、ヘミアセタールエステル基を有するアクリレートであり、例えば、アクリル酸と、特定のビニルエーテル化合物とを付加反応させて得られるモノマーである。このようなモノマー(A)に由来する構成単位(A)を有するバインダーポリマーを用いることで、着色組成物の耐熱性が向上し、加熱による顔料の色特性低下を防止することができる。上記のような効果が得られる理由については明らかではないが、本発明者は以下のように推測している。
【0023】
モノマー(A)は、比較的耐熱性が低いモノマーである。例えば、t−ブチルアクリレートは、酸やアルカリによって容易に脱アルキル化して(イソブテンが脱離して)アクリル酸となる。また、一般式(A)で表されるアクリレートも、酸やアルカリを触媒とし、加熱によって容易にビニルエーテル化合物が脱離してアクリル酸となる。イソブテンやビニルエーテル化合物はカルボキシ基の保護基として機能すると考えられる。このように容易に脱離しうる保護基としては、他にベンジル基なども知られている。しかし、本発明者らが検討したところ、ベンジル基の脱離速度は比較的遅いことが分かった。
【0024】
バインダーポリマーを加熱すると、保護基が脱離してカルボキシ基が生ずる。このため、加熱後のバインダーポリマーは、アクリル酸に由来する構成単位を有するポリマー(以下、「バインダーポリマーR」とも記す)となる。例えば、t−ブチルアクリレート(Mw128.2)40部からイソブテン(Mw56.1)が脱離すると、約24.2部のアクリル酸が生成する。すなわち、t−ブチルアクリレートに由来する構成単位(A)を40質量%含むバインダーポリマー100部からイソブテンが脱離すると、アクリル酸に由来する構成単位を27.3質量%含むバインダーポリマーRとなる。
【0025】
また、下記式(A−1)で表されるアクリレート(Mw256.4)に由来する構成単位(A)を40質量%含むバインダーポリマー100部から保護基が脱離すると、アクリル酸に由来する構成単位を15.7質量%含有するバインダーポリマーRとなる。すなわち、加熱前の着色組成物と、加熱後のカラーフィルターフィルター(着色膜)とでは、バインダーポリマーのモノマー組成が異なることになる。
【0027】
着色組成物で形成された膜は、バインダーポリマーの保護基が脱離する際に収縮する。膜の収縮によって、顔料の溶融や結晶変化が防止され、結晶劣化による色変化が抑制されることも想定される。
また、酸成分であるアクリル酸に由来する構成単位を含むことで、バインダーポリマーのガラス転移温度(Tg)が高くなるとともに、不溶化し、かつ、酸基と顔料の相互作用が生ずることなどによって、色変化が抑制されることも想定される。なお、保護基を有しないアクリル酸に由来する構成単位を加熱前から含むバインダーポリマーを用いることで、保護基を脱離させる必要がなくなるとも考えられる。しかし、検討の結果、アクリル酸に由来する構成単位を所定の割合で含むバインダーポリマーを用いた場合には、安定な顔料分散液を得ることができないことが判明した。CF用着色組成物は、通常、顔料分散剤を用いて有機溶剤中に顔料を分散させた油性の分散液である。酸性又は塩基性の官能基を有するシナジストで処理された顔料と、この官能基とイオン結合しうる基を有する顔料分散剤とは、通常、イオン結合して吸着している。ここで、酸性度が高いアクリル酸に由来する構成単位を相当量含むバインダーポリマーが存在すると、顔料の分散性が阻害されると考えられる。
【0028】
一般式(A)で表されるアクリレートは、ヘミアセタールエステル基を有するアクリレートであり、例えば、アクリル酸と、特定のビニルエーテル化合物とを付加反応させて得られるモノマーである。ビニルエーテル化合物の具体例としては、下記一般式(A−2)で表される化合物を挙げることができる。
R
1−O−CH
2=CH
2 ・・・(A−2)
【0029】
一般式(A−2)中、R
1は、炭素数1〜10のアルキル基、炭素数3〜6のシクロアルキル基、炭素数2〜10のアルケニル基、炭素数2〜10のアルキニル基、又はアリール基を示す。アルキル基、アルケニル基、及びアルキニル基の炭素数が10を超えると、脱離する保護基に対応する化合物の沸点が高いため、加工時の加熱によっても揮発しにくく、形成される着色膜に残存する可能性がある。このため、一般式(A−2)中、R
1は、炭素数6以下のアルキル基、炭素数3〜6のシクロアルキル基、炭素数6以下のアルケニル基、炭素数6以下のアルキニル基、又はアリールであることが好ましい。また、脱離する保護基に対応する化合物の沸点が100℃以下であると、カラーフィルターの焼き付け工程時に容易に揮発するために好ましい。
【0030】
ビニルエーテル化合物の具体例としては、メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、1−プロピルビニルエーテル、2−プロピルビニルエーテル、ブチルビニルエーテル、イソブチルビニルエーテル、t−ブチルビニルエーテル、ペンチルビニルエーテル、ヘキシルビニルエーテル、シクロヘキシルビニルエーテル、アリルビニルエーテル、アセチレンメチルビニルエーテル、フェニルビニルエーテル、ベンジルビニルエーテルなどを挙げることができる。これらのビニルエーテル化合物は、1種単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0031】
バインダーポリマーの全体に対する、構成単位(A)の割合は40〜70質量%であり、好ましくは45〜65質量%である。バインダーポリマー中の構成単位(A)の含有割合が40質量%未満であると、保護基が脱離して形成されるカルボキシ基の割合が少なすぎるため、着色組成物の耐熱性が十分に向上しない。一方、バインダーポリマー中の構成単位(A)の含有割合が70質量%超であると、形成されるカルボキシ基の割合が多すぎるため、アルカリ現像時の着色膜の耐水性が低下する。
【0032】
本発明のCF用着色組成物に用いるバインダーポリマーは、一般式(B)で表されるカルボキシ基含有(メタ)アクリレート(以下、「モノマー(B)」とも記す)に由来する構成単位(B)を有する。モノマー(B)は、アルカリ現像時の酸基の供給源となる構成単位を形成するモノマーである。従来、アルカリ現像時の酸基の供給源となる構成単位を形成するモノマーとしては、(メタ)アクリル酸が用いられていた。しかし、(メタ)アクリル酸は重合速度が速いため、得られるバインダーポリマーに均一に導入することが困難であった。このため、得られるバインダーポリマーの構造中にカルボキシ基の偏りが生じやすかった。また、溶液重合の際に重合系が白濁する、アルカリ現像の際に不均一化する、又は着色組成物の粘度が過度に高まる場合があった。これに対して、本発明のCF用着色組成物には、モノマー(B)に由来する構成単位(B)を有するバインダーポリマーを含有させる。モノマー(B)は分子量が十分に大きいとともに、立体障害などにより、(メタ)アクリル酸と比べて重合性が低い。
【0033】
モノマー(B)は、例えば、水酸基を有する(メタ)アクリレートと、2以上のカルボキシ基を有する化合物とを反応させて得ることができる。水酸基を有する(メタ)アクリレートの具体例としては、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、グリセロールモノ(メタ)アクリレート、3−クロロ−2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレートなどを挙げることができる。これらの水酸基を有する(メタ)アクリレートは、1種単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0034】
2以上のカルボキシ基を有する化合物の具体例としては、コハク酸、マレイン酸、イタコン酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、トリメリト酸、ピロメリト酸、ナフタレンジカルボン酸、アントラセンジカルボン酸、テトラブタン酸、シクロヘキサン−1,2−ジカルボン酸、4−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸、シクロヘキサン−1,2,4−トリカルボン酸などを挙げることができる。これらの2以上のカルボキシ基を有する化合物は、1種単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0035】
2以上のカルボキシ基を有する化合物は、酸無水物を形成しうる化合物であることが、副生成物が生じにくく、反応精製やコスト的に有利であるために好ましい。また、2以上のカルボキシ基を有する化合物の炭素数は6以下であることが好ましく、コハク酸、フタル酸、トリメリット酸、シクロヘキサン−1,2−ジカルボン酸、4−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸、シクロヘキサン−1,2,4−トリカルボン酸がさらに好ましく、コハク酸、フタル酸、シクロヘキサン−1,2−ジカルボン酸が特に好ましい。
【0036】
バインダーポリマーの全体に対する、構成単位(B)の割合は20〜50質量%であり、好ましくは30〜40質量%である。バインダーポリマー中の構成単位(B)の含有割合が20質量%未満であると、構成単位(A)の含有割合にもよるが、アルカリ現像の速度が遅くなる。一方、バインダーポリマー中の構成単位(B)の含有割合が50質量%超であると、重合反応性が低下してしまい、未反応のモノマーが残存しやすくなる。
【0037】
バインダーポリマーの酸価は40〜130mgKOH/gであり、好ましくは50〜100mgKOH/gである。バインダーポリマーの酸価が40mgKOH/g未満であると、アルカリ現像性が不十分になる。一方、バインダーポリマーの酸価が130mgKOH/g超であると、形成される着色膜の耐水性が低下する。バインダーポリマーの酸価は、ポリマー1gを中和するのに必要な水酸化カリウムの質量(mg)で表される。バインダーポリマーの酸価は、使用したモノマーの分子量から算出することもできるし、バインダーポリマー自体を滴定分析することにより測定することもできる。バインダーポリマーの酸価は、例えば、ポリマーを所定の有機溶剤に溶解して得た溶液を測定試料とし、フェノールフタレイン等を指示薬として、0.1N水酸化カリウムエタノール溶液を用いて滴定することで測定及び算出することができる。
【0038】
ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により測定される、バインダーポリマーのポリスチレン換算の数平均分子量(Mn)は、3,000〜15,000であり、好ましくは4,000〜10,000である。バインダーポリマーの数平均分子量が3,000未満であると、カラーフィルター用の着色膜としての耐性が不足する。一方、バインダーポリマーの数平均分子量が15,000超であると、バインダーポリマーの酸価が高い場合であってもアルカリ現像性が不足するとともに、現像して形成される画素のシャープ性が損なわれる。
【0039】
バインダーポリマーの分子量分布(重量平均分子量/数平均分子量)は、1.6以下であることが好ましく、1.4以下であることがさらに好ましい。バインダーポリマーの分子量分布(PDI)は、GPCにより測定されるポリスチレン換算の重量平均分子量(Mw)を、前述の数平均分子量(Mn)で除して得られる値(Mw/Mn)である。すなわち、バインダーポリマーの分子量がある程度以上揃っていることが好ましい。バインダーポリマーのPDIが1.6以下であると、ポリマー分子の性質が均一であるため、アルカリ現像の際の溶解の仕方が均一になりやすい。このため、アルカリ現像時に脱膜的な溶解が生じにくくなるとともに、よりシャープな画素を形成することができる。
【0040】
バインダーポリマーは、本発明の効果を損なわない範囲で、必要に応じて、前述のモノマー(A)及びモノマー(B)以外の「その他の共重合性ビニルモノマー」に由来する構成単位(C)をさらに有していてもよい。バインダーポリマーの全体に対する、構成単位(C)の割合は、5〜30質量%であることが好ましく、10〜25質量%であることが好ましい。その他の共重合性ビニルモノマーとしては、ラジカル重合しうる付加重合性ビニルモノマーが好ましい。その他の共重合性ビニルモノマーの具体例としては、スチレン、ビニルトルエン、ビニルナフタレン、ビニル安息香酸、ビニル安息香酸の低級アルコールエステル、ビニルカルバゾール、スチレンスルホン酸、スチレンスルホン酸の低級アルコールエステル、N−ビニルピリジンなどの芳香族及び複素環ビニルモノマー;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、シクロヘキサンカルボン酸ビニル、安息香酸ビニルなどの脂肪族、脂環族、及び芳香族カルボン酸ビニルエステルモノマー;
【0041】
(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸ヘキシル、(メタ)アクリル酸オクチル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸デシル、(メタ)アクリル酸トリデシル、(メタ)アクリル酸オクタデシル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸トリメチルシクロヘキシル、(メタ)アクリル酸t−ブチルシクロヘキシル、(メタ)アクリル酸イソボルニル、(メタ)アクリル酸トリシクロデシル、(メタ)アクリル酸アダマンチル、(メタ)アクリル酸ベンジル、(メタ)アクリル酸フェノキシエチル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸メトキシエチル、(メタ)アクリル酸エトキシエチル、(メタ)アクリル酸テトラヒドロフルフリル、(メタ)アクリル酸グリシジル、(メタ)アクリル酸フェニル、(メタ)アクリル酸ナフチル、(メタ)アクリル酸ジメチルアミノエチル、(メタ)アクリル酸ジメチルアミノエチルを塩化メチルや塩化ベンジルで4級化したモノマー、(メタ)アクリル酸ジエチルアミノエチル、(メタ)アクリル酸ジエチルアミノエチルを塩化メチルや塩化ベンジルで4級化したモノマー、(メタ)アクリル酸t−ブチルアミノエチル、(メタ)アクリル酸トリフルオロエチル、(メタ)アクリル酸ヘプタデカフルオロデシル、(メタ)アクリル酸ポリ(n=2以上)エチレングリコール、(メタ)アクリル酸ポリ(n=2以上)プロピレングリコール、(メタ)アクリル酸ポリ(n=2以上)エチレングリコールモノメチルエーテル、(メタ)アクリル酸シクロペンテニルオキシエチル、(メタ)アクリロイロキシエチルイソシアネート、2−(2’−ヒドロキシ−5−(メタ)アクリロイロキシエチルフェニル)−2H−ベンゾトリアゾール(耐光性を向上させるのに効果的である)、(メタ)アクリル酸テトラメチルピペリジニル、(メタ)アクリル酸ペンタメチルピペリジニル、(メタ)アクリロイロキシエチルリン酸エステルなどの(メタ)アクリル酸系ポリマー;
【0042】
(メタ)アクリルアミド、ジメチル(メタ)アクリルアミド、(メタ)アクリロイルモルホリン、N−メチロール(メタ)アクリルアミドなどのアミド系モノマー;(メタ)アクリロニトリル;N−ビニルピロリドン;マレイン酸、マレイン酸のモノ、ジ低級アルコールエステル、N−フェニルマレイミド、N−シクロヘキシルマレイミド、イタコン酸のモノ、ジ低級アルコールエステルなどの二塩基酸ビニル系モノマー;などを挙げることができる。これらのモノマーは、1種単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0043】
また、必要に応じて、その片末端に付加重合性基を有するマクロモノマーを用いることもできる。そのようなマクロモノマーの具体例としては、(メタ)アクリロイルポリスチレン、(メタ)アクリロイルポリメタクリル酸メチル、(メタ)アクリロイルポリジメチルシロキサンなどを挙げることができる。
【0044】
(バインダーポリマーの調製方法)
バインダーポリマーは、例えば、ラジカル重合、カチオン重合、アニオン重合などの重合方法によって調整することができる。また、これらの重合方法は、溶液重合、乳化重合、懸濁重合、塊状重合のいずれであってもよい。例えば、ラジカル重合の場合、アゾ系化合物や過酸化物系化合物などの重合開始剤が用いられ、所定の温度で重合される。
【0045】
重合開始剤の具体例としては、過硫酸リチウム、過硫酸ナトリウム、過硫酸カリウム等の過酸化物系化合物;2,2’−アゾビス(2−(2−イミダゾリン−2−イル)プロパン)、2,2’−アゾビス(2−アミジノプロパン)、これらの無機酸・有機酸塩などのアゾ系化合物;過酸化ベンゾイル、ラウロイルパーオキサイド、t−ブチルラウリン酸過エステルなどの油性の過酸化物などを挙げることができる。重合開始剤の使用量は、モノマーに対して、0.1〜5質量%とすることが好ましく、0.2〜3質量%とすることがさらに好ましい。
【0046】
従来のラジカル重合では、得られるバインダーポリマーのPDIを所望とする値に制御するのは困難である。このため、得られるバインダーポリマーのPDIを所望とする値に制御するには、リビングラジカル重合によってバインダーポリマーを調製することが好ましい。ラジカル重合やリビングラジカル重合は、有機溶剤を使用しない乳化重合、懸濁重合、塊状重合であってもよい。但し、有機溶剤を使用する溶液重合とすることが好ましい。有機溶剤としては、重合開始剤、触媒、及びモノマーなどの成分を溶解しうるものが好ましい。
【0047】
リビングラジカル重合としては、アミンオキシドラジカルの解離と結合を利用するニトロキサイド法(Nitroxide mediated polymerization:NMP法);銅、ルテニウム、ニッケル、鉄等の重金属と、これらの重金属と錯体を形成するリガンドとを使用し、ハロゲン化合物を開始化合物として用いて重合する原子移動ラジカル重合(Atom transfer radical polymerization:ATRP法);ジチオカルボン酸エステルやザンテート化合物等を開始化合物として使用するとともに、付加重合性モノマーとラジカル開始剤を使用して重合する可逆的付加開裂型連鎖移動重合(Reversible addition− fragmentation chain transfer:RAFT法);MADIX法(Macromolecular Design via Interchange of Xanthate);有機テルル、有機ビスマス、有機アンチモン、ハロゲン化アンチモン、有機ゲルマニウム、ハロゲン化ゲルマニウム等の重金属を用いる方法(Degenerative transfer:DT法);ヨウ素とヨウ素化合物の少なくともいずれかを重合開始化合物として使用して、市販のラジカルとなりうる有機化合物を触媒として使用する可逆的移動触媒重合(Reversible transfer catalized polymerization:RTCP法)などを挙げることができる。なかでも、DT法やRTCP法が容易で好ましい。
【0048】
重合時に用いる有機溶剤の具体例としては、ヘキサン、オクタン、デカン、イソデカン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、トルエン、キシレン、エチルベンゼンなどの炭化水素系溶剤;メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、イソブタノール、ヘキサノール、ベンジルアルコール、シクロヘキサノールなどのアルコール系溶剤;エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、ブチルセロソルブ、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールプロピルエーテル、ジグライム、トリグライム、テトラグライム、ジプロピリングリコールジメチルエーテル、ブチルカルビトール、ブチルトリエチレングリコール、メチルジプロピレングリコール、メチルセロソルブアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールブチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテートなどのグリコール系溶剤;ジエチルエーテル、ジプロピルエーテル、メチルシクロプロピルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン、アニソールなどのエーテル系溶剤;メチルエチルケトン、ジエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、イソホロン、アセトフェノンなどのケトン系溶剤;酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸プロピル、酪酸メチル、酪酸エチル、カプロラクトン、乳酸メチル、乳酸エチル、琥珀酸ジメチル、アジピン酸ジメチル、グルタル酸ジメチルなどのエステル系溶剤;クロロホルム、ジクロロエタンなどのハロゲン化溶剤;ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、ピロリドン、N−メチルピロリドン、カプロラクタムなどのアミド系溶剤の他、ジメチルスルホキシド、スルホラン、テトラメチル尿素、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、炭酸ジメチルなどを挙げることができる。なお、これらの有機溶剤は、1種単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0049】
溶液重合時の重合液の固形分濃度(モノマー濃度)は、5〜80質量%とすることが好ましく、20〜60質量%とすることがさらに好ましい。重合液の固形分濃度が5質量%未満であると、モノマー濃度が低すぎるために重合が完結しない場合がある。一方、重合液の固形分濃度が80質量%超又はバルク重合であると、重合液の粘度が高すぎてしまい、撹拌が困難になって収率が低下する場合がある。リビングラジカル重合は、モノマーがなくなる(反応により全て消費される)まで行うことが好ましい。重合時間は0.5〜48時間とすることが好ましく、1〜24時間とすることがさらに好ましい。重合雰囲気は特に限定されず、通常の範囲内で酸素が存在する雰囲気であっても、窒素気流雰囲気であってもよい。重合に使用する材料(モノマーなど)としては、蒸留、活性炭処理、又はアルミナ処理などにより不純物を除去したものを用いてもよいし、市販品をそのまま用いてもよい。また、遮光下で重合反応を行ってもよいし、ガラスなどの透明容器内で重合反応を行ってもよい。
【0050】
(色材)
本発明のCF用着色組成物は色材を含有する。色材としては、染料や顔料を用いることができる。得られるカラーフィルターの色相を調整すべく、染料と顔料を組み合わせて用いることもできる。CF用着色組成物中の色材の含有量は特に限定されず、任意に設定することができる。
【0051】
染料としては、酸性染料、塩基性染料、油溶性染料、反応性染料、分散染料、直接染料などを用いることができる。染料の具体例としては、C.I.ダイレクトブラック17など、C.I.ダイレクトエロー4、26、44、50など、C.I.ダイレクトレッド1、4、23、31、37、39、75、80、81、83、225、226、227など、C.I.ダイレクトブルー1、15、71、86、106、199などの直接染料;
【0052】
C.I.アシッドブラック1、26、52など、C.I.アシッドエロー7:1、17、19、23、25、29、42、49、110、141など、C.I.アシッドレッド8、9、14、18、26、27、37、51、52、57、82、87、92、94、111、129、131、186など、C.I.アシッドバイオレット15、17など、アシッドブルー1、7、9、15、22、43、78、83、90、103、113、158など、C.I.アシッドグリーン3、9、16、25、27などの酸性染料、及びこれらを第4級アンモニウム塩などで不溶化させた染料;
【0053】
C.I.ベーシックイエロー11、13、15、19、21、28、51など、C.I.ベーシックオレンジ21、30など、C.I.ベーシックレッド1、12、15、18、27、46など、C.I.ベーシックバイオレット1、3、10など、C.I.ベーシックブルー1、3、41、54など、C.I.ベーシックグリーン1、4などの塩基性染料、及びこれらをスルホン酸基含有化合物などで不溶化させた染料などを挙げることができる。
【0054】
顔料の具体例としては、C.I.ピグメントレッド(PR)56、58、122、166、168、176、177、178、224、242、254、255などの赤色顔料;C.I.ピグメントグリーン(PG)7、36、58、ポリ(14〜16)ブロム銅フタロシアニン、ポリ(12〜15)ブロム化−ポリ(4〜1)クロル化銅フタロシアニンなどの緑色顔料;C.I.ピグメントブルー15:1、15:3、15:6、60、80などの青色顔料などを挙げることができる。また、カラーフィルター用の顔料に対する補色顔料及び多色型の画素用顔料としては、例えば、C.I.ピグメントイエロー(PY)12、13、14、17、24、55、60、74、83、90、93、126、128、138、139、150、154、155、180、185、216、219などの黄色顔料;C.I.ピグメントバイオレット(PV)19、23などを挙げることができる。
【0055】
顔料の平均粒子径は、10〜150nmであることが好ましく、10〜80nmであることがさらに好ましく、10〜50nmであることが特に好ましい。微粒子化された顔料を分散させて得られる本発明のCF用着色組成物は、高透明性及び高コントラスト性を有するカラーフィルターを製造しうる着色剤として特に好適である。顔料の平均粒子径が10nm未満であると、耐光性及び耐熱性など諸物性が低下する場合がある。一方、顔料の平均粒子径が150nm超であると、画素の透明性及びコントラスト性が低下する場合がある。なお、本明細書における顔料の「平均粒子径」は「数平均粒子径」を意味し、例えば、透過型電子顕微鏡(TEM)で観察して求めることができる。
【0056】
(溶剤)
本発明のCF用着色組成物は、有機溶媒などの溶剤を含有する。有機溶媒としては、カラーフィルター用の着色組成物に用いられるグリコール系溶剤が好ましい。なかでも、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルなどのプロピレングリコール系溶剤が好ましい。
【0057】
(色素誘導体)
本発明のCF用着色組成物には、必要に応じて、シナジストなどの色素誘導体を含有させることが好ましい。このような色素誘導体は、例えば、CF用着色組成物を製造するための顔料分散体を調製する際の分散工程において添加することができる。色素誘導体としては、酸性官能基や塩基性官能基を有する色素誘導体を挙げることができる。なかでも、顔料と同一若しくは類似の色素骨格、又は顔料の原料となる化合物と同一若しくは類似の色素骨格を有する色素誘導体を用いることが好ましい。色素骨格の具体例としては、アゾ系色素骨格、フタロシアニン系色素骨格、アントラキノン系色素骨格、トリアジン系色素骨格、アクリジン系色素骨格、ペリレン系色素骨格などを挙げることができる。これらの色素誘導体(シナジスト)は、顔料100質量部に対して、0.5〜30質量部添加することが好ましく、2〜15質量部添加することがさらに好ましい。
【0058】
(顔料分散剤)
顔料を色材として用いる場合、溶剤に顔料を分散させるために顔料分散剤を用いることが好ましい。顔料分散剤としては、例えば、従来公知のアクリル系、エステル系、アミド系、ウレタン系、エーテル系、アミン系などのポリマー系の分散剤を用いることができる。顔料分散剤として用いられるポリマーとしては、ランダムコポリマー、ブロックコポリマー、グラフトコポリマー、デンドリマー、ボトルブラシポリマーなどがある。また、カルボキシ基、スルホン酸基、リン酸基などの酸性基;ジメチルアミノ基などのアミノ基;ベンジルジメチルアンモニウムクロライド基などの第4級アンモニウム塩などの顔料吸着性基を有するポリマーを顔料分散剤として用いることが好ましい。顔料分散剤は、顔料100質量部に対して、5〜200質量部添加することが好ましい。
【0059】
(その他の成分)
本発明のCF用着色組成物には、必要に応じて、種々の配合剤や添加剤などのその他の成分を配合してもよい。その他の成分の具体例としては、光重合性モノマー、光重合性オリゴマー、アルカリ現像性樹脂、紫外線吸収剤、光安定剤、光重合開始剤、光増感剤、酸塩基発生剤、酸化防止剤、レベリング剤、消泡剤、増粘剤などを挙げることができる。
【0060】
本発明のCF用着色組成物を使用すれば、所望とする色特性が高度に維持された高品質なカラーフィルターを製造することができる。カラーフィルターの製造方法としては従来公知の方法を採用すればよく、特に限定されない。なお、本発明のCF用着色組成物は、カラーフィルター製造用の材料以外にも、例えば、塗料、インキ、文具用などの着色剤として使用することもできる。
【実施例】
【0061】
以下、本発明を実施例に基づいて具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。なお、実施例、比較例中の「部」及び「%」は、特に断らない限り質量基準である。
【0062】
<バインダーポリマーの合成>
(合成例1)
撹拌機、逆流コンデンサー、及び温度計を取り付けた1Lセパラブルフラスコ(反応装置)に、溶剤であるプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMAc)450部を入れ、80℃に加温した。別容器に、メタクリル酸メチル(MMA)48部、アクリル酸t−ブチル(tBA)138部、アクリル酸エチル(EA)24部、2−メタクリロイロキシエチルフタル酸(PAMA)90部、重合開始剤であるt−ブチル−パーオキシ−2−エチルヘキサノエート(PBO)(商品名「パーブチルO」、日油社製)9部、及び連鎖移動剤である1−ドデカンチオール(LSH)9部を入れ、内容物が均一になるまで撹拌してモノマー溶液を調製した。調製したモノマー溶液の1/3量を上記の反応装置に添加し、残りの2/3量を1.5時間かけて滴下した。滴下終了後、80℃で5.5時間重合してポリマー溶液BP−1を得た。
【0063】
得られたポリマー溶液BP−1の固形分濃度は41.4%であり、重合率は約100%であった。テトラヒドロフラン(THF)を展開溶媒とするGPCによって得られたポリマー溶液BP−1中のバインダーポリマーを分析したところ、数平均分子量(Mn)が5,000であり、ピークトップ分子量(PT)が9,700であり、分散度(Mw/Mn)が1.95であった。なお、GPCの検出器には示差屈折率検出器を使用した。また、ポリマー溶液BP−1をトルエン及びエタノールで希釈して酸化測定用試料を調製した。そして、フェノールフタレイン溶液を指示薬とする、0.1%水酸化カリウムエタノール溶液を用いた酸塩基滴定によって測定したバインダーポリマーの酸価(実測値)は、64.3mgKOH/gであった。
【0064】
(合成例2)
PGMAc450部、PBO9部、LSH9部、MMA30部、tBA210部、及びPAMA60部を使用し、前述の合成例1と同様にして重合してポリマー溶液BP−2を得た。得られたポリマー溶液BP−2の固形分濃度は41.2%であり、重合率は約100%であった。前述の合成例1と同様にして測定したポリマー溶液BP−2中のバインダーポリマーのMn、PT、分散度、及び酸価を表1に示す。
【0065】
(合成例3)
PGMAc450部、PBO4.5部、LSH4.5部、MMA30部、アクリル酸にビニルエチルエーテルを付加反応させて得たアクリル酸1−エトキシエチル(EE)135部、及びPAMA135部を使用し、前述の合成例1と同様にして重合してポリマー溶液BP−3を得た。得られたポリマー溶液BP−3の固形分濃度は41.5%であり、重合率は約100%であった。前述の合成例1と同様にして測定したポリマー溶液BP−3中のバインダーポリマーのMn、PT、分散度、及び酸価を表1に示す。
【0066】
(合成例4)
PGMAc450部、PBO9部、LSH9部、メタクリル酸ブチル(BMA)45部、アクリル酸にビニルシクロヘキシルエーテルを付加反応させて得たアクリル酸1−シクロヘキシルオキシエチル(CHE)135部、EA30部、及び2−メタクリロイロキシエチルヘキサヒドロフタル酸(HH)90部を使用し、前述の合成例1と同様にして重合してポリマー溶液BP−4を得た。得られたポリマー溶液BP−4の固形分濃度は41.0%であり、重合率は約100%であった。前述の合成例1と同様にして測定したポリマー溶液BP−4中のバインダーポリマーのMn、PT、分散度、及び酸価を表1に示す。
【0067】
(合成例5)
撹拌機、逆流コンデンサー、温度計、及び窒素導入管を取り付けた1Lセパラブルフラスコ(反応装置)に、PGMAc486.7部、連鎖移動剤であるヨウ素化合物を得るための2,2’−アゾビス(4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル)(V−70)18.9部とヨウ素5.2部、触媒であるジフェニルメタン(DPM)0.34部、MMA45部、BMA30部、tBA135部、及びPAMA90部を入れて撹拌し、40℃に加温して8時間重合した。反応溶液の一部をサンプリングして測定した固形分濃度は40.0%であり、重合率は約100%であった。また、前述の合成例1と同様にして測定した反応溶液中のバインダーポリマーのMn、PT、分散度、及び酸価を表1に示す。
【0068】
反応溶液を3Lのビーカーに移し、固形分濃度が25%となるようにPGMAcを加え、均一になるまで撹拌した。活性炭(商品名「白鷺M」、日本エンバイロケミカルズ社製)150部を添加し、室温で12時間撹拌してヨウ素を活性炭に吸着させた後、フィルターでろ過して淡黄色の透明液体であるポリマー溶液BP−5を得た。得られたポリマー溶液BP−5の固形分濃度は25.1%であった。前述の合成例1と同様にしてポリマー溶液BP−5中のバインダーポリマーの分子量や酸価を測定した。その結果、いずれの物性値もほとんど変化しておらず、バインダーポリマーが活性炭で除去されていないことを確認した。
【0069】
【0070】
(比較合成例1)
撹拌機、逆流コンデンサー、及び温度計を取り付けた1Lセパラブルフラスコ(反応装置)にPGMAc450部を入れ、80℃に加温した。別容器に、PBO9部、LSH9部、MMA75部、BMA75部、EA30部、メタクリル酸ベンジル(BzMA)30部、及びPAMA90部を入れてモノマー溶液を調製した。調製したモノマー溶液を1.5時間かけて上記の反応装置に滴下した。滴下終了後、80℃で5時間重合してポリマー溶液RBP−1を得た。得られたポリマー溶液RBP−1の固形分濃度は40.8%であった。前述の合成例1と同様にして測定したポリマー溶液RBP−1中のバインダーポリマーのMn、PT、分散度、及び酸価を表2に示す。
【0071】
(比較合成例2)
PGMAc450部、PBO9部、LSH9部、MMA60部、tBA150部、EA45部、及びメタクリル酸(MAA)45部を使用し、前述の比較合成例1と同様にして重合してポリマー溶液RBP−2を得た。得られたポリマー溶液RBP−2の固形分濃度は40.5%であった。前述の合成例1と同様にして測定したポリマー溶液RBP−2中のバインダーポリマーのMn、PT、分散度、及び酸価を表2に示す。
【0072】
(比較合成例3)
PGMAc450部、PBO3部、LSH1.5部、MMA75部、tBA135部、EA60部、及びPAMA30部を使用し、前述の比較合成例1と同様にして重合してポリマー溶液RBP−3を得た。得られたポリマー溶液RBP−3の固形分濃度は40.1%であった。前述の合成例1と同様にして測定したポリマー溶液RBP−3中のバインダーポリマーのMn、PT、分散度、及び酸価を表2に示す。
【0073】
【0074】
<顔料分散液(着色組成物)の調製(1)>
(a)顔料の微細化処理
PR254、PR177、及びPY138をカラーフィルター用の顔料として準備し、以下に示す方法にしたがって微細化処理した。顔料100部、塩化ナトリウム400部、及びジエチレングリコール130部を、加圧時に使用する密閉用の蓋を装着した加圧ニーダー(モリヤマ社製)に仕込んだ。ニーダー内に均一に湿潤された塊ができるまで予備混合した後、加圧蓋を閉じて、圧力6kg/cm
2で内容物を押さえ込みながら7時間混練及び摩砕処理して摩砕物を得た。得られた摩砕物を2%硫酸3,000部に投入し、1時間撹拌処理した。ろ過して塩化ナトリウム及びジエチレングリコールを除去した後、十分水洗し、乾燥及び粉砕して粉末状の顔料を得た。得られた顔料の平均粒子径は約30nmであった。
【0075】
(b)顔料分散液(実施例1〜5、比較例1〜3)の調製
各成分を表3に示す量(部)で配合し、ディゾルバーを用いて2時間撹拌した。顔料の塊がなくなったことを確認した後、横型メディア分散機を使用して分散処理し、顔料分散液を調製した。表3中の「BYK−LPN21116」は、ビックケミー・ジャパン社製のブロックコポリマー型顔料分散剤(固形分40%)である。また、「シナジスト1」、「シナジスト2」、及び「シナジスト3」は、それぞれ、下記式(1)〜(3)で表される化合物である。
【0076】
【0077】
【0078】
【0079】
【0080】
(c)顔料分散液の評価
調製した顔料分散液に含まれる顔料の平均粒子径、顔料分散液の初期の粘度、及び45℃で7日間放置した後の顔料分散液の粘度(保存後の粘度)の測定結果を表4に示す。なお、顔料分散液の粘度は、E型粘度計を使用し、60rpm、25℃の条件で測定した。
【0081】
【0082】
表4に示すように、実施例1〜5の顔料分散液(着色組成物)に含まれる顔料の平均粒子径はいずれも30〜33nmであり、微細化された顔料が十分に微分散されていることが分かる。また、実施例1〜5の顔料分散液のいずれも、初期の粘度は10mPa・s以下であった。さらに、初期の粘度と保存後の粘度を比較すると、粘度変化が極めて小さいことが分かる。以上より、実施例1〜5の顔料分散液は、十分な分散安定性を有することが明らかである。なお、ポリマー溶液RBP−1及びRBP−2を用いて調製した比較例1及び3の顔料分散液は、実施例の顔料分散液とほぼ同等の分散安定性を有することが分かった。
【0083】
これに対して、比較合成例3で調製したポリマー溶液RBP−3を用いて調製した比較例2の顔料分散液は、顔料の平均粒子径が大きく、初期の粘度が高いことが分かる。さらに、保存後の粘度も増加していることから、分散安定性が良好ではないことが分かる。ポリマー溶液RBP−3中のバインダーポリマーの分子量及び酸価のいずれもが所定の範囲から外れていたため、顔料の分散性が不十分となったと考えられる。
【0084】
(d)顔料インク(CF用着色組成物)(実施例6〜10、比較例4、5)の調製
各成分を表5に示す量(部)で配合し、混合機を用いて十分に混合して、カラーレジストである各色の顔料インク(CF用着色組成物)を得た。表5中の「感光性アクリル樹脂」は、BzMA/MAA共重合体にメタクリル酸グリシジルを反応させて得られたアクリル樹脂を含有するワニスである。このアクリル樹脂は、Mnが6,000であり、PTが14,300であり、分散度が2.38であり、酸価が110mgKOH/gであった。また、「TMPTA」はトリメチロールプロパントリアクリレートを示し、「HEMPA」は2−ヒドロキシエチル−2−メチルプロピオン酸を示し、「DEAP」は2,2−ジエトキシアセトフェノンを示す。
【0085】
【0086】
(e)カラーレジストの評価
シランカップリング剤で処理したガラス基板をスピンコーターにセットした。実施例6〜10、比較例4、5の顔料インクを、300rpm、5秒間の条件でガラス基板上にそれぞれスピンコートした。90℃で2分間プリベイクした後、230℃で30分間ポストベイクした。次いで、超高圧水銀灯を用いて100mJ/cm
2の光量で露光し、各色ガラス基板を製造した。
【0087】
製造した各色ガラス基板(カラーガラス基板)は、いずれも優れた分光カーブ特性を有するとともに、耐光性や耐熱性等の堅牢性に優れていた。また、いずれのカラーガラス基板も、光透過性やコントラスト比等の光学特性に優れていた。
【0088】
(f)耐熱性評価
上記のプリベイク後及びポストベイク後に、CIE表色系における色度(x、y)、コントラスト(CR)、及び透明性の指標となるY値を測定した。具体的には、コントラスト測定機(商品名「コントラストテスター CT−1」、壺坂電機社製)を使用し、色度(x、y)、コントラスト(CR)、Y値を測定した。そして、プリベイク後とポストベイク後のコントラスト差(ΔCR、ΔY値)、及び色差(ΔEab
*)により、顔料インクの耐熱性を評価した。なお、ΔCR及びΔY値は、プリベイク後のCR及びY値をそれぞれ100%とする相対値で表した。また、ΔEab
*は、色差を絶対値で表したものであり、下記式にしたがって算出した。それぞれの結果を表6に示す。
ΔEab
*={(L2
*−L1
*)
2+(a2
*−a1
*)
2+(b2
*−b1
*)
2}
1/2
プリベイク後の色差1 :(L1
*,a1
*,b1
*)
ポストベイク後の色差2 :(L2
*,a2
*,b2
*)
【0089】
【0090】
表6に示すように、実施例6〜10の顔料インクを用いて製造したガラス基板は、いずれも、ΔCRの変動値が5%以内、ΔY値の変動値が3%以内、ΔEab
*が1.0以下であった。すなわち、プリベイク後とポストベイク後で物性値がほとんど変化していないことから、実施例6〜10の顔料インクの耐熱性が良好であることが分かる。
【0091】
これに対して、比較例4及び5の顔料インクを用いて製造したガラス基板は、ΔCRの変動値が約20%、ΔY値の変動値が約30%、ΔEab
*は4以上であり、ポストベイク後に物性値がかなり低下していることが分かった。これは、所定のバインダーポリマーを用いていないため、形成した塗膜が熱に弱く、表面状態が変化したと考えられる。
【0092】
<染料ハイブリッド顔料の調製>
(a)第4級アンモニウム塩型ブロックコポリマーの合成
還流管、窒素ガス導入装置、温度計、及び撹拌装置を取り付けた1Lセパラブルフラスコに、ジエチレングリコールモノブチルエーテル(BDG)272.1部、ヨウ素3.2部、MMA44.0部、BMA44.0部、メタクリル酸2−エチルヘキシル(2−EHMA)22.0部、ポリ(n=2〜4)エチレングリコールモノメチルエーテルメタクリレート(PME200)(日油社製)34.0部、MAA15.0部、DPM0.3部、及びV−70 13.5部を入れた。窒素を流しながら40℃で5.5時間重合して、ポリマーブロックAを含有するポリマー溶液を得た。得られたポリマー溶液の固形分濃度は38.8%であり、重合転化率は約100%であった。また、ポリマーブロックAのMnは5,500であり、PDIは1.26であった。
【0093】
得られたポリマー溶液に、メタクリル酸ベンジルジメチルアンモニウムクロライドエチル(DMQ−1)73.8部、BzMA44.0部、及びBDG172.2部を予め混合して均一化させた溶液を添加した。さらに、V−70 2.4部を添加し、40℃で4時間重合して、第4級アンモニウム塩型のブロックコポリマーを含有するポリマー溶液を得た。得られたポリマー溶液の固形分濃度は40.0%であり、重合転化率は約100%であった。GPCを行ったところ、ピークが小さく不明瞭であった。これは、第4級アンモニウム塩がTHFに溶解しにくく、しかも、カラムに吸着したためであると考えられる。得られた第4級アンモニウム塩型のブロックコポリマーを「AC−1」と称する。AC−1中には、第4級アンモニウム塩が8.81mmol/g含まれている。ポリマー中の第4級アンモニウム塩の算出方法を以下に示す。溶剤以外のポリマーの固形分は296.2部であり、DMQ−1の配合量は73.8部である。また、DMQ−1の分子量は282.79であるため、第4級アンモニウム塩の含有量は「(73.8/282.79)/296.2=8.81mmol/g」となる。
【0094】
(b)染料ハイブリッド顔料の調製
5Lフラスコに、微細化されたPB−15:6(商品名「A−037」、大日精化工業社製、固形分28.8%、平均一次粒子径30nm)の水ペースト347.2部(顔料分=100部)、及び顔料のシナジストとして銅フタロシアニンモノスルホン酸5.0部を入れ、顔料の濃度が5%となるように水を添加した。ホモジナイザーで撹拌しながら、キサンテン系染料であるアシッドレッド52(AR−52)(東京化成工業社製、Mw580.6)50.0部(0.0861mol)を添加した。5000rpmで1時間撹拌して解膠し、染料含有顔料スラリーを得た。得られた染料含有顔料スラリーの一部を採ってろ紙にスポットし、染料由来の滲みが色濃く表れることを確認した。
【0095】
「AC−1」244.3部(0.0861mol)(AC−1の第4級アンモニウム塩のモル数とAR−52のモル数が同一)と、イオン交換水244.3部との混合溶液を、染料含有顔料スラリーに徐々に添加した。添加に伴い、ある時点で粘度が上昇するとともに、その後に粘度が低下することが確認された。粘度の上昇は、水に溶解していたAC−1が、AR−52と塩交換して顔料表面に析出し、顔料表面がAC−1に由来して疎水性となって流動性が低下したためであると考えられる。そのままの状態で1時間撹拌した後、スラリーの一部を採ってろ紙にスポットしたところ、染料由来の滲みがほとんど認められなくなった。これは、AC−1とAR−52が造塩して不溶化したためであると考えられる。
【0096】
スラリーをろ過した後、洗浄して、染料含有顔料ペースト得た。なお、ろ過速度が速かったことから、AR−52がAC−1で処理されていることが示唆された。得られた染料含有顔料ペーストを80℃で24時間乾燥した後、粉砕機にて粉砕して、処理ブルー顔料−1を得た。得られた処理ブルー顔料−1には、顔料と染料の合計成分が60.6%含まれている。
【0097】
<顔料分散液(着色組成物)の調製(2)>
(a)顔料分散液(実施例11、比較例6、7)の調製
各成分を表7に示す量(部)で配合し、ディゾルバーを用いて2時間撹拌した。顔料の塊がなくなったことを確認した後、横型メディア分散機を使用して分散処理し、顔料分散液を調製した。表7中の「PGM」は、プロピレングリコールモノメチルエーテルを示す。
【0098】
【0099】
(b)顔料分散液の評価
調製した顔料分散液に含まれる顔料の平均粒子径、顔料分散液の初期の粘度、及び45℃で7日間放置した後の顔料分散液の粘度(保存後の粘度)の測定結果を表8に示す。なお、顔料分散液の粘度は、E型粘度計を使用し、60rpm、25℃の条件で測定した。
【0100】
【0101】
(c)顔料インク(CF用着色組成物)(実施例12、比較例8、9)の調製
各成分を表9に示す量(部)で配合し、混合機を用いて十分に混合して、カラーレジストである青色の顔料インク(CF用着色組成物)を得た。
【0102】
【0103】
(d)カラーレジストの評価
シランカップリング剤で処理したガラス基板をスピンコーターにセットした。実施例12、比較例8、9の顔料インクを、300rpm、5秒間の条件でガラス基板上にそれぞれスピンコートした。90℃で2分間プリベイクした後、230℃で30分間ポストベイクした。次いで、超高圧水銀灯を用いて100mJ/cm
2の光量で露光し、青色ガラス基板を製造した。
【0104】
(e)耐熱性評価
上記のプリベイク後及びポストベイク後に、CIE表色系における色度(x、y)、コントラスト(CR)、及び透明性の指標となるY値を測定した。具体的には、コントラスト測定機(商品名「コントラストテスター CT−1」、壺坂電機社製)を使用し、色度(x、y)、コントラスト(CR)、Y値を測定した。そして、プリベイク後とポストベイク後のコントラスト差(ΔCR、ΔY値)、及び色差(ΔEab
*)により、顔料インクの耐熱性を評価した。なお、ΔCR及びΔY値は、プリベイク後のCR及びY値をそれぞれ100%とする相対値で表した。また、ΔEab
*は、色差を絶対値で表したものである。それぞれの結果を表10に示す。
【0105】
【0106】
表10に示すように、実施例12の顔料インクを用いて製造したガラス基板は、ΔCRの変動値及びΔY値の変動値がいずれも0%であり、ΔEab
*が1.1であった。すなわち、プリベイク後とポストベイク後で物性値がほとんど変化していないことから、染料を含有する顔料分散液を用いて調製した顔料インクであっても、耐熱性が良好であることが分かる。
【0107】
これに対して、比較例8及び9の顔料インクを用いて製造したガラス基板は、ΔCRの変動値が10〜18%、ΔY値の変動値が15〜23%、ΔEab
*は2.5〜5.5であり、ポストベイク後に物性値がかなり低下していることが分かった。これは、所定のポリマーバインダーを用いていないため、耐熱性が維持できなかったと考えられる。
【0108】
<現像性試験>
実施例6、8、9、12、及び比較例4、9での顔料インク用いて製造した各色ガラス基板に、0.1Nテトラメチルアンモニウムハイドロキサイド水溶液を5秒ごとにスポットし、「何秒後に塗膜の露光部が溶解するか」確認する現像性試験を行った。結果を表11に示す。
【0109】
【0110】
実施例6、8、9、12の顔料インクを用いて製造したガラス基板では、15〜25秒後に露光部の塗膜が溶解するとともに、いずれも溶解残渣(膜状のカス)が発生せず、良好な現像性を示した。また、溶解せずに残存した塗膜の端部(エッジ)を顕微鏡で観察したところ、いずれもシャープであることが確認できた。これは、顔料分散液にバインダーポリマー中のt−ブチルアクリレートに由来する構成単位、又はヘミアセタールエステル基を有するアクリレートに由来する構成単位が、ポストベイク時に脱エステル反応した結果、バインダーポリマーの酸価が高まってアルカリ現像しやすくなったためと考えられる。さらに、実施例8の顔料インクには分散度の値が小さい(分子量分布が狭い)バインダーポリマーを用いているため、溶解時間が特に短かった。以上より、実施例の顔料インクを用いれば現像時間を短縮することができ、生産性を向上させることができる。
【0111】
これに対して、比較例4及び9の顔料インクを用いて製造したガラス基板では、露光部の塗膜が完全に溶解するのに60秒以上を要した。これは、用いたバインダーポリマーがポストベイク時に脱エステル反応しないために、酸価が低いままであったためと考えられる。また、塗膜の露光部は膜状に脱離しており、いずれも溶解残渣(膜状のカス)が発生していた。