【課題】半導体製造プロセスにおいて使用される高耐熱性レジスト組成物、更に詳しくは露光源として300nm以下の遠紫外線、例えばKrFエキシマレーザー光(248nm)等を用いて高解像パターンを形成する際の高耐熱性レジスト組成物およびそれを用いたパターン形成方法を提供する。
【解決手段】本発明による特定のポリマーおよび架橋剤等を含んでなる化学増幅型ネガ型レジスト組成物を用いることによって、高感度であり、優れた解像性および耐熱性を有するレジストパターンを形成することができる。
(I)以下の一般式(Ia)で表される繰り返し単位を含んでなるポリマー、
【化1】
(式中、
Aは、水素または炭素数1〜3の炭化水素基であり、
Bは、炭素数1〜5の炭化水素基を表し、
xは0以上の整数であり、yは1以上の整数であり、かつ、x+y≦5である)
(II)以下の一般式(IIa)、または一般式(IIb)で表される架橋剤
【化2】
(式中、
nは1以上の整数であり、
R
1は、炭素数1〜15の、非置換のまたは置換された炭化水素基であり、
R
2は、水素、水酸基、炭素数1〜15の、非置換のまたは置換された炭化水素基である)
【化3】
(式中、
lおよびmは重合比を示す数であって、mは0ではなく、各繰り返し単位はランダムに結合していても、ブロックを形成していてもよく、
CおよびDは、それぞれ独立に水素または炭素数1〜3の炭化水素基であり、
EおよびFは、それぞれ独立に炭素数1〜5の炭化水素基を表し、
R
3は、水素、または炭素数1〜4の炭化水素基を表し、
pは0以上の整数であり、qおよびsは1以上の整数であり、rは0以上4以下の整数であり、p+q≦5であり、かつr+s≦4である)
(III)酸発生剤、および
(IV)溶剤
を含んでなることを特徴とする、化学増幅型ネガ型レジスト組成物。
前記架橋剤を加熱し、室温から昇温速度20℃/分で昇温させたときに重量がゼロになったときの温度である熱分解温度が、350〜700℃である、請求項1〜11のいずれか1項に記載の組成物。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の実施の形態について詳細に説明すると以下の通りである。
【0011】
[化学増幅型ネガ型レジスト組成物]
本発明による化学増幅型ネガ型レジスト組成物(以下、簡単に組成物ということがある)は、ポリマーと、架橋剤と、酸発生剤と、溶剤とを含んでなるものである。この組成物に含まれる各成分について説明すると以下の通りである。
【0012】
(I)ポリマー
本発明による組成物は、以下の一般式(Ia)で表される繰り返し単位を含んでなるポリマーを含んでなるものである。
【化4】
【0013】
ここで、Aは、水素または炭素数1〜3の炭化水素基である。Aは、具体的には、水素、メチル基、エチル基、n−プロピル基、およびイソプロピル基からなる群から選択されるものであり、水素であることが好ましい。
【0014】
Bは、炭素数1〜5の炭化水素基である。具体的には、炭素数1〜5の、アルキル基、シクロアルキル基、およびアルケニル基からなる群から選択されるものである。
【0015】
xは0以上の整数であり、yは1以上の整数であり、かつ、x+y≦5である。
【0016】
このポリマーは、上記式(Ia)で表される、単一の繰り返し単位として含むホモポリマーであってもよいが、式(Ia)で表される繰り返し単位を2種類以上含むコポリマーであってもよい。また、このポリマーは、式(Ia)以外の繰り返し単位を含むコポリマーであってもよい。このコポリマーが式(Ia)以外の繰り返し単位を含む場合、その他の繰り返し単位は特に限定されないが、スチレンから誘導される繰り返し単位であることが好ましい。
【0017】
例えば、前記ポリマーは、以下の一般式(Ib)で表されるものであることが好ましい。
【化5】
【0018】
ここで、GおよびHは、それぞれ独立に水素または炭素数1〜3の炭化水素基である。具体的には、水素、メチル基、エチル基、n−プロピル基、およびイソプロピル基からなる群から選択されるものであり、水素であることが好ましい。
【0019】
tは0以上の整数であり、uは1以上の整数であり、t+u≦5である。ここで、t=0、かつu=1であることが好ましい。
【0020】
IおよびJは、それぞれ独立に炭素数1〜5の炭化水素基である。具体的には、炭素数1〜5の、アルキル基、シクロアルキル基、およびアルケニル基からなる群から選択されるものである。
【0021】
vは0以上5以下の整数であり、0であることが好ましい。
【0022】
各繰り返し単位はランダムに結合していても、ブロックを形成していてもよい。
また、xおよびyは重合度を示す数であって、xは0ではない。また、重合比x:yが30:70〜100:0であることが好ましく、より好ましくは87:13〜100:0である。また、y=0の場合、アルカリ性溶液への溶解性を高めるという理由で好ましい。
【0023】
なお、本発明に用いられるポリマーは、本発明の効果を損なわない限りで、上記以外の繰り返し単位、例えば各種の置換基を含む繰り返し単位を含んでいてもよい。
【0024】
また、本発明に用いられる上記ポリマーの質量平均分子量は、目的に応じて任意の選択することができるが、一般に3,000〜30,000であることが好ましく、5,000〜20,000であることがより好ましい。なお、本発明において、質量平均分子量は、ポリスチレン換算質量平均分子量を意味する。
【0025】
好ましい例としては、例えば、以下の構造を有するポリマーが挙げられるが、これに限定されない。
【化6】
【化7】
【0026】
このポリマーは、一般式(Ib)で表されるポリマーを2種類以上含む混合物であってもよい。例えば、上記(Ib−1)で表されるホモポリマーまたはそのホモポリマーに(Ib−2)で表されるポリマーが混合されていてもよい。このようなポリマーの混合物を用いると、DUV透過性の点で好ましい。
【0027】
(II)架橋剤
本発明による組成物は、特定の架橋剤を含んでなるものである。
【0028】
本発明に用いられる架橋剤のひとつは、以下の一般式(IIa)で表されるものである。
【化8】
ここで、R
1は、炭素数1〜15の、非置換のまたは置換された炭化水素基であり、R
2は、水素、水酸基、炭素数1〜15の、非置換のまたは置換された炭化水素基である。
【0029】
本発明においては、R
1が水素である場合を包含していない。R
1およびR
2がともに水素である場合は、この化合物は分解しやすくなる傾向にあるが、本発明においてはそのような架橋剤を用いないものである。このため、本発明によれば、高熱環境下でも、パターンの形状が維持されるので、高耐熱性のパターンを形成することができる。
【0030】
一般式(IIa)において、R
1およびR
2が炭化水素基である場合、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アルキルアリール基、およびアリールアルキル基からなる群から選択されるものであることが好ましい。これらの炭化水素基は、水酸基、カルボキシル基、アルコキシ基、アシル基、アミノ基などによって置換されていてもよい。
【0031】
前記一般式(IIa)のR
1およびR
2のうち少なくともひとつがアリール基であることが好ましい。アリール基としては、例えば、フェニル基、トリル基、ナフチル基、およびアントラセニル基などが挙げられる。
【0032】
さらに好ましくは、R
1およびR
2のうち少なくともひとつがナフチル基であることである。ナフチル基を有すると、定在波の影響を受けにくくなり、パターンの断面が垂直に近くなる。
【0033】
また、nは1以上の整数であるが、nが1以上10以下であることが好ましく、より好ましくは1以上3以下である。
【0034】
前記式(IIa)で表される架橋剤の質量平均分子量は、300〜2,000であり、好ましくは400〜1,500であり、さらに好ましくは450〜1,000である。また、前記式(IIb)で表される架橋剤の質量平均分子量は、500〜10,000であり、好ましくは500〜5,000であり、さらに好ましくは500〜2,000である。
【0035】
一般式(IIa)で表される架橋剤として、例えば、下記式で表される(1−Bis[2,6−bis methoxymethyl(4−hydroxyphenyl)methyl]benzene)ものが挙げられる。
【化9】
【0036】
また、一般式(IIa)で表される架橋剤として、ナフチル基を有するものの例としては、下記式で表される1−Bis[2,6−bis methoxymethyl(4−hydroxyphenyl)methyl]naphthaleneがある。
【化10】
式中、nは1〜3の整数であり、平均分子量は500〜800である。
【0037】
本発明に用いられる架橋剤のもうひとつは、以下の一般式(IIb)で表されるものである。
【化11】
CおよびDは、それぞれ独立に水素または炭素数1〜3の炭化水素基である。具体的には、CおよびDはそれぞれ独立に、水素、メチル基、エチル基、n−プロピル基、およびイソプロピル基からなる群から選択されるものである。これらのうち、水素が好ましい。
EおよびFは、それぞれ独立に炭素数1〜5の炭化水素基である。具体的には、炭素数1〜5の、アルキル基、シクロアルキル基、およびアルケニル基からなる群から選択されるものである。
R
3は、水素、または炭素数1〜4の炭化水素基であり、メチル基、エチル基、イソプロピル基、t−ブチル基からなる群から選択されるものが好ましい。より好ましくは、R
3は、メチル基である。
pは0以上の整数である。qおよびsは1以上の整数であり、それぞれの繰り返し単位は、フェニル基の少なくとも一つの水素が水酸基に置換されている。rは0以上4以下の整数である。さらに、p+q≦5であり、かつr+s≦4である。
【0038】
また、lおよびmは、各繰り返し単位の重合度を示す数である。ここで、mは0ではなく、この架橋剤は必ず、−CH
2OR
3で表されているアルコキシメチル基を含むものである。ここで各繰り返し単位はランダムに結合していても、ブロックを形成していてもよい。
【0039】
一般式(IIb)で表される架橋剤は、メトキシメチル基などのアルコキシメチル基を有することが特徴であり、この点で前記(I)のポリマーとは異なる。なお、本発明において、用語「アルコキシメチル基」にはR
3が水素である場合に対応するヒドロキシメチル基が含まれるものとする。このアルコキシメチル基は、組成物を用いてパターンを形成させる過程における架橋反応において、ポリマーとの架橋部という重要な役割を果たすものである。
【0040】
前記式(IIb)で表される架橋剤の質量平均分子量は、一般に500〜10,000であり、好ましくは500〜5,000であり、さらに好ましくは500〜2,000である。
【0041】
前記式(IIa)または(IIb)で表される架橋剤で表される架橋剤は、重合度が異なるものの混合物であってもよいし、異なる構造のものが含まれる混合物であってもよい。具体的には、式(IIa)で表されるが、重量平均分子量の異なるものを複数混合したものや、式(IIa)で表される架橋剤と、式(IIb)で表される架橋剤との混合物などを用いることができる。
【0042】
本発明における組成物に含まれる、前記式(IIa)または(IIb)で表される架橋剤の含有比率は、前記(I)のポリマー100質量部に対して、一般的に、2〜60質量部の範囲にあり、好ましくは5〜30質量部の範囲であり、さらに好ましくは6〜15質量部の範囲である。
【0043】
前記架橋剤は、構造に応じて種々のガラス転移温度を示すが、本発明に用いられる架橋剤は、150℃〜250℃の範囲のガラス転移温度を有することが好ましい。架橋剤のガラス転移温度がこの範囲にあることで、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートなどの溶媒に溶けやすいというような利点がある。
【0044】
また、本発明による組成物は、前記架橋剤が特定の熱分解温度を有することが好ましい。このとき、その組成物から得られたパターンが優れた耐熱性を有するものとなり。具体的には、前記架橋剤を加熱し、室温から昇温速度20℃/分で昇温させたときに重量がゼロになったときの温度である熱分解温度が、350〜700℃であることが好ましい。
【0045】
(III)酸発生剤
本発明に用いられる酸発生剤は従来知られているものから任意に選択することができる。酸発生剤の具体例としては、オニウム塩化合物、架橋性オニウム塩化合物、スルホンマレイミド誘導体、及びジスルホニルジアゾメタン化合物等が挙げられる。
【0046】
オニウム塩化合物の具体例としては、例えば、ジフェニルヨードニウムヘキサフルオロホスフェート、ジフェニルヨードニウムトリフルオロメタンスルホネート、ジフェニルヨードニウムノナフルオロ−ノルマルブタンスルホネート、ジフェニルヨードニウムパーフルオロ−ノルマルオクタンスルホネート、ジフェニルヨードニウムカンファースルホネート、ビス(4−tert−ブチルフェニル)ヨードニウムカンファースルホネート及びビス(4−tert−ブチルフェニル)ヨードニウムトリフルオロメタンスルホネート等のヨードニウム塩化合物、及びトリフェニルスルホニウムヘキサフルオロアンチモネート、トリフェニルスルホニウムノナフルオロ−ノルマルブタンスルホネート、トリフェニルスルホニウムカンファースルホネート及びトリフェニルスルホニウムトリフルオロメタンスルホネート等のスルホニウム塩化合物、及びビス(4−ヒドロキシフェニル)(フェニル)スルホニウムトリフルオロメタンスルホネート、ビス(4−ヒドロキシフェニル)(フェニル)スルホニウム−1,1,2,2,3,3,4,4,4−ノナフルオロブタン−1−スルホネート、フェニルビス(4−(2−(ビニロキシ)エトキシ)フェニル)スルホニウム−1,1,2,2,3,3,4,4−オクタフルオロブタン−1,4−ジスルホネート、トリス(4−(2−(ビニロキシ)エトキシ)フェニル)スルホニウム−1,1,2,2,3,3,4,4−オクタフルオロブタン−1,4−ジスルホネート等の架橋性オニウム塩化合物が挙げられるが、それらに限定されない。
【0047】
スルホンマレイミド誘導体の具体例としては、例えば、N−(トリフルオロメタンスルホニルオキシ)スクシンイミド、N−(ノナフルオロ−ノルマルブタンスルホニルオキシ)スクシンイミド、N−(カンファースルホニルオキシ)スクシンイミド及びN−(トリフルオロメタンスルホニルオキシ)ナフタルイミド等が挙げられる。
【0048】
ジスルホニルジアゾメタン化合物の具体例としては、例えば、ビス(トリフルオロメチルスルホニル)ジアゾメタン、ビス(シクロヘキシルスルホニル)ジアゾメタン、ビス(フェニルスルホニル)ジアゾメタン、ビス(p−トルエンスルホニル)ジアゾメタン、ビス(2,4−ジメチルベンゼンスルホニル)ジアゾメタン、及びメチルスルホニル−p−トルエンスルホニルジアゾメタンが挙げられる。本発明の組成物において、これらの酸発生剤は2種類以上を組み合わせて使用することもできる。
【0049】
酸発生剤の含有量は式(I)のポリマーの全質量に対して、通常1〜50%の範囲であり、好ましくは、5〜30%であり、さらに好ましくは10〜30%である。
【0050】
(IV)溶剤
本発明による組成物に使用される溶剤としては、前記の各成分を溶解できる溶剤であれば、任意のものから選択して使用することができる。溶剤の具体例としては、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、メチルセロソルブアセテート、エチルセロソルブアセテート、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールプロピルエーテルアセテート、トルエン、キシレン、メチルエチルケトン、シクロペンタノン、シクロヘキサノン、2−ヒドロキシプロピオン酸エチル、2−ヒドロキシ−2−メチルプロピオン酸エチル、エトキシ酢酸エチル、ヒドロキシ酢酸エチル、2−ヒドロキシ−3−メチルブタン酸メチル、3−メトキシプロピオン酸メチル、3−メトキシプロピオン酸エチル、3−エトキシプロピオン酸エチル、3−エトキシプロピオン酸メチル、ピルビン酸メチル、ピルビン酸エチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、乳酸エチル、乳酸ブチル、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、及びN−メチルピロリドン等を用いることができる。これらの溶剤は単独または二種以上の組合せで使用することができる。さらに、プロピレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテルアセテート等の高沸点溶剤を混合して使用することができる。
【0051】
本発明による組成物に用いられる溶剤は、組成物全体の質量に対して、50〜95%の範囲であり、好ましくは、70〜90%であり、さらに好ましくは80〜90%である。
【0052】
本発明による化学増幅型ネガ型レジスト組成物は、前記した(I)〜(IV)を必須とするものであるが、必要に応じて、更なる化合物を組み合わせることができる。これらの組み合わせることができる材料について説明すると以下の通りである。なお、組成物全体にしめる(I)〜(IV)以外の成分は、全体の重量に対して、5%以下が好ましく、より好ましくは2%以下である。
【0053】
更なる化合物の例として、例えば、界面活性剤、酸、塩基等が挙げられる。これらの成分は本発明の効果を損なわないものが用いられるべきである。
【0054】
界面活性剤は、組成物の均一性の維持、塗布性の改良などを目的として、用いられる。組成物における界面活性剤の含有率は、レジストの表面粗さの改良効果を最大に発揮させるために、組成物の全質量を基準として50〜100,000ppmとされることが好ましく、50〜50,000ppmであることがより好ましく、50〜20,000ppmであることが最も好ましい。界面活性剤の含有量が多すぎると、現像不良などの問題が起こることがあるので注意が必要である。
【0055】
酸または塩基は、組成物のpHを調整したり、各成分の溶解性を改良するために用いられる。また、塩基は、露光により発生した酸の拡散距離を制御するために加えられ得る。この拡散距離の制御により、解像度が向上し、露光後の感度変化を抑制したり、基板や環境依存性を少なくすることができる。用いられる酸または塩基は本発明の効果を損なわない範囲で任意に選択できるが、例えばカルボン酸、アミン類、アンモニウム塩が挙げられる。これらには、脂肪酸、芳香族カルボン酸、第1級アミン、第2級アミン、第3級アミン、アンモニウム化合物類が包含され、これらは任意の置換基により置換されていてもよい。より具体的には、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、安息香酸、フタル酸、サリチル酸、乳酸、リンゴ酸、クエン酸、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、フマル酸、マレイン酸、アコニット酸、グルタル酸、アジピン酸、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、トリイソプロパノールアミン、テトラメチルアンモニウムなどが挙げられる。
【0056】
本発明による組成物はその他、さらに殺菌剤、抗菌剤、防腐剤、および/または防カビ剤を含んでもよい。これらの薬剤はバクテリアまたは菌類が経時した組成物中で繁殖するのを防ぐために用いられる。これらの例には、フェノキシエタノール、イソチアゾロン等のアルコールが包含される。日本曹達株式会社から市販されているベストサイド(商品名)は特に有効な防腐剤、防カビ剤、および殺菌剤である。典型的には、これらの薬剤は組成物の性能には影響を与えないものであり、通常組成物の全質量を基準として1%以下、好ましくは0.1%以下、また好ましくは0.001%以下の含有量とされる。
【0057】
[パターン形成方法]
次に、本発明によるパターンの形成方法について説明する。本発明の組成物が適用される代表的なパターン形成方法をあげると、次のような方法が挙げられる。
【0058】
まず、必要に応じて前処理された、シリコン基板、ガラス基板等の基板の表面に、本発明による化学増幅型ネガ型レジスト組成物をスピンコート法など従来から公知の塗布法により塗布し、組成物層を形成させる。化学増幅型ネガ型レジスト組成物の塗布に先立ち、感光性樹脂組成物層の下層に反射防止膜が塗布形成されてもよいし、および/または、組成物層の上層に反射防止膜が塗布形成されてもよい。
【0059】
基板上に形成された組成物層は、ホットプレートや加熱炉等でプリベークとよばれる加熱がされ、組成物層中の溶剤が除去される。プリベーク温度は、用いる基板や溶剤等により異なるが、例えばホットプレートを使用する場合には、加熱温度は、通常20〜200℃、好ましくは50〜150℃程度であり、加熱時間は、通常30〜300秒間、好ましくは30〜120秒間である。プリベーク後に、通常、膜厚が通常300〜800nm程度のレジスト膜が得られる。
【0060】
その後、高圧水銀灯、メタルハライドランプ、超高圧水銀ランプ、KrFエキシマレーザー、ArFエキシマレーザー、軟X線照射装置、電子線描画装置など公知の照射装置を用い、必要に応じマスクを介してレジスト膜に露光が行われる。
【0061】
露光された基板は、露光後加熱(PEB)が行われ、架橋反応を促進させる。加熱条件としては、例えばホットプレートを使用した場合には、加熱温度は80〜150℃、好ましくは100〜130℃、加熱時間は60〜180秒間、好ましくは60〜120秒間である。
【0062】
その後、例えばパドル現像などの方法で現像が行われ、レジストパターンが形成される。レジストの現像は、通常アルカリ性現像液を用いて行われる。アルカリ性現像液としては、例えば水酸化ナトリウム、水酸化テトラメチルアンモニウム(TMAH)などの水溶液或いは水性溶液が用いられる。現像処理後、リンス液を用いてレジストパターンのリンス(洗浄)が行われる。なお、形成されたレジストパターンは、エッチング、メッキ、イオン拡散、染色処理などのレジストとして用いられ、その後必要に応じ剥離される。
【0063】
本発明によるパターン形成方法は、特に、微細で、アスペクト比の高いレジストパターンに対しても有効である。ここで、アスペクト比とはレジストパターンの幅に対する高さの比である。したがって、本発明によるパターン形成方法は、このような微細なレジストパターンが形成されるリソグラフィー工程、すなわち、露光光源として、KrFエキシマレーザーやArFエキシマレーザー、更にはX線、電子線などを用いる、250nm以下の露光波長での露光を含むリソグラフィー工程を組み合わせることが好ましい。さらに、レジストパターンのパターン寸法でみると、ライン・アンド・スペース・パターンにおける線幅、またはコンタクトホール・パターンにおける孔径が400nm以下、特に200nm以下のレジストパターンを形成するリソグラフィー工程を含むものが好ましい。
【0064】
本発明を諸例を用いて説明すると以下の通りである。なお、本発明の態様はこれらの例に限定されるものではない。
【0065】
[実施例101]
100重量部のポリマーP1に対し、架橋剤C3を10重量部、酸発生剤A1(TG TP−H、商品名)を0.375重量部、界面活性剤としてメガファックR−2011(商品名)を0.06重量部の比率で、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートに溶解させた。さらに撹拌した後、0.01μmのフィルターでろ過し、実施例1の化学増幅型ネガ型レジスト組成物を調整した。
【0066】
スピンコーター(東京エレクトロン株式会社製)を用いて、実施例1の組成物を、予めヘキサメチレンジシラザン処理を施したシリコンウェハーに塗布し、120℃60秒間ホットプレート上で乾燥させて、膜厚550nmのレジスト膜を得た。露光装置(Canon FPA−3000EX5)を用いて、露光波長=248nm、開口数NA=0.63の条件で、露光マスク(コンタクトホール250nm、C/H=1:3)を介して前記のレジスト膜を露光した。露光後、ホットプレート上で120℃60秒間加熱した後、2.38質量%テトラメチルアンモニウムヒドロキド水溶液を用い、30秒間パドル法により現像した。現像後、さらに純水で洗浄し、乾燥して、ホール幅250nmののレジストパターンを得た。
【0067】
パターン形状評価
パターンの断面を電界放射型操作電子顕微鏡(S−5500(商品名)、株式会社日立ハイテクノロジーズ製)により観察して、パターン形状を以下のように分類して評価した。
A:適切な解像性(100−300nm、好ましくは150−250nm)を持ち、定在波の影響なし
B:パターン形成されても定在波の影響あり
C:パターンが形成されない
【0068】
耐熱性評価
形成したパターンを、ホットプレート上で350℃60秒間加熱した後、パターンの断面を電界放射型操作電子顕微鏡(S−5500(商品名)、株式会社日立ハイテクノロジーズ製)により観察して、パターン形状を以下のように分類して評価した。
A:パターン形状を維持し、膜厚減少が10%未満
B:パターン形状を維持し、膜厚減少が10%以上20%未満
C:パターン形状を維持し、膜厚減少が20%以上
D:パターン形状を維持していない
【0069】
[実施例102〜104、比較例101、102]
実施例101に対して、ポリマーの種類および配合比を表1に示す通り変更したほかは、実施例101と同様にして、実施例102〜104、比較例101、102を行った。得られた結果は表1に示すとおりであった。
【0070】
【表1】
ポリマーP1
【化12】
ポリマーP2
【化13】
ポリマーP3
【化14】
架橋剤C3
【化15】
酸発生剤A1
【化16】
【0071】
[実施例201、比較例201、202]
実施例101に対して、架橋剤の種類を表2に示すとおり変更したほかは同様にして、比較例201、202および203を行った。得られた結果は表2に示すとおりであった。
【0072】
【表2】
架橋剤C1
【化17】
架橋剤C2
【化18】
架橋剤C4
【化19】
【0073】
[実施例301、302]
実施例101に対して、架橋剤の種類を表3に示すとおり変更したほかは同様にして、実施例301、302を行った。得られた結果は表2に示すとおりであった。
【0075】
[実施例401、402]
実施例101に対して、酸発生剤の種類を表4に示すとおり変更したほかは同様にして、実施例401、402を行った。得られた結果は表2に示すとおりであった。