特開2017-9145(P2017-9145A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特開2017009145-熱交換器および空気調和装置 図000003
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2017-9145(P2017-9145A)
(43)【公開日】2017年1月12日
(54)【発明の名称】熱交換器および空気調和装置
(51)【国際特許分類】
   F28F 13/12 20060101AFI20161216BHJP
   F24F 5/00 20060101ALI20161216BHJP
【FI】
   F28F13/12 D
   F24F5/00 101Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2015-122493(P2015-122493)
(22)【出願日】2015年6月18日
(71)【出願人】
【識別番号】514290742
【氏名又は名称】株式会社P.D.C.A
(71)【出願人】
【識別番号】593109584
【氏名又は名称】伸栄産業株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】304041976
【氏名又は名称】シグマテクノロジー有限会社
(71)【出願人】
【識別番号】511022177
【氏名又は名称】北垣 亮馬
(74)【代理人】
【識別番号】100137752
【弁理士】
【氏名又は名称】亀井 岳行
(72)【発明者】
【氏名】永田 正己
(72)【発明者】
【氏名】好浦 和彦
(72)【発明者】
【氏名】今西 忠雄
(72)【発明者】
【氏名】橘 良昭
(72)【発明者】
【氏名】北垣 亮馬
【テーマコード(参考)】
3L054
【Fターム(参考)】
3L054BF01
3L054BF20
(57)【要約】
【課題】従来の構成に比べて効率よい熱交換が可能な熱交換器を提供すること。
【解決手段】粒径がナノメートルオーダーの気泡が液体中に分散したナノバブル分散液が流動する流動路(4)と、前記流動路(4)のナノバブル分散液を気化させる熱交換部(2)と、を備えたことを特徴とする熱交換器(2+4)。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
粒径がナノメートルオーダーの気泡が液体中に分散したナノバブル分散液が流動する流動路と、
前記流動路のナノバブル分散液を気化させる熱交換部と、
を備えたことを特徴とする熱交換器。
【請求項2】
液体と気体を混合されて液体に気泡が分散した混相流体を、2以上の穴から大気圧以上の圧力で噴射して、前記穴から噴射した混相流体どうしを衝突させることで前記ナノバブル分散液を生成するナノバブル生成装置であって、前記ナノバブル分散液の流動方向に対して、前記熱交換部の上流側の前記流動路に配置された前記ナノバブル生成装置、
を備えたことを特徴とする請求項1に記載の熱交換器。
【請求項3】
請求項1または2に記載の熱交換器を有する空気調和装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱交換器および熱交換器を備えた空気調和装置に関し、特に、液体を気体にする熱交換器および前記熱交換器を備えた空気調和装置に関する。
【背景技術】
【0002】
熱交換器を有する空気調和装置、いわゆる、エアコンでは、室内に設置される本体部で、冷媒が室内の空気から熱を奪って室内を冷やし、室外に設置される室外機で冷媒が放熱され、再度本体部に供給される。このような空気調和装置に関し、特許文献1に記載の技術が公知である。
【0003】
特許文献1(特開2012−233616号公報)には、水またはアルコールを冷媒液として使用し、冷媒液をポンプ(40)で熱交換器(31)に送り、熱交換器(31)で加熱された冷媒液を蒸発器(24)に戻すことで、熱交換器(31)に供給される空気を冷媒液で冷却する構成が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2012−233616号公報(「0014」〜「0017」、図1
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
(従来技術の問題点)
従来の空気調和装置では、冷媒液として、工業用水等の水道水が広く使用されており、熱交換器における熱交換の効率は、水の蒸発速度に依存していた。したがって、熱交換の効率を向上させるには限界があった。
一方で、水以外の冷媒を使用すると、配管を密閉する必要があったり、冷媒自体の費用や、冷媒の廃棄に手間や費用がかかったりする問題があった。
【0006】
本発明は、従来の構成に比べて効率よい熱交換が可能な熱交換器を提供することを技術的課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記技術的課題を解決するために、請求項1に記載の発明の熱交換器は、
粒径がナノメートルオーダーの気泡が液体中に分散したナノバブル分散液が流動する流動路と、
前記流動路のナノバブル分散液を気化させる熱交換部と、
を備えたことを特徴とする。
【0008】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の熱交換器において、
液体と気体を混合されて液体に気泡が分散した混相流体を、2以上の穴から大気圧以上の圧力で噴射して、前記穴から噴射した混相流体どうしを衝突させることで前記ナノバブル分散液を生成するナノバブル生成装置であって、前記ナノバブル分散液の流動方向に対して、前記熱交換部の上流側の前記流動路に配置された前記ナノバブル生成装置、
を備えたことを特徴とする。
【0009】
前記技術的課題を解決するために、請求項3に記載の発明の空気調和装置は、
請求項1または2に記載の熱交換器を有する。
【発明の効果】
【0010】
請求項1,3に記載の発明によれば、ナノバブル分散液を使用しない従来の構成に比べて、効率よい熱交換が可能な熱交換器を提供することができる。
請求項2に記載の発明によれば、水撃式のナノバブル生成装置を使用しない場合に比べて、多くのナノバブルが分散するナノバブル分散液を生成することができ、熱交換の効率を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1図1は本発明の実施例1の熱交換器を備えた空気調和装置の説明図である。
図2図2は蒸発速度の計測実験の結果の説明図であり、図2Aは横軸に時間を取り縦軸に重さを取ったグラフ、図2Bは横軸に時間を取り縦軸に蒸発速度を取ったグラフである。
図3図3は実施例2の熱交換器を有する発電施設の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
次に図面を参照しながら、本発明の実施の形態の具体例(以下、実施例と記載する)を説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
なお、以下の図面を使用した説明において、理解の容易のために説明に必要な部材以外の図示は適宜省略されている。
【実施例1】
【0013】
図1は本発明の実施例1の熱交換器を備えた空気調和装置の説明図である。
図1において、実施例1の空気調和装置1は、家屋やビル等の部屋に設置された第1の熱交換部の一例としてのエアコン本体2と、屋外に設置された第2の熱交換部の一例としての冷却塔3とを有する。エアコン本体2と冷却塔3とは、流動路の一例としての配管4で接続されている。配管4は、エアコン本体2と冷却塔3との間で冷媒の一例であって、ナノバブル分散液の一例としてのナノバブルを循環させるように配置されている。配管4には、配管内のナノバブル水を流動させるポンプ6が配置されている。また、冷却塔3からエアコン本体2に向けて流動する配管4上に、すなわち、エアコン本体2の上流側には、ナノバブル生成装置7が配置されている。
【0014】
ナノバブル生成装置7は、粒径がナノメートルオーダーの気泡が液体中に分散したナノバブル分散液の一例としてのナノバブル水を生成する装置である。
実施例1のナノバブル生成装置7は、筒の周面を貫通する2以上の穴が形成され、液体の一例としての水と気体の一例としての空気が混合された混相流体が穴を通じて大気圧以上の圧力で穴の外から内に向けて噴射され、対向する2つの穴から噴射された混相流体どうしが衝突されて(水撃方式)、ナノメートルオーダーの気泡が液体中に分散したナノバブル水が生成される。なお、このようにして作成されたナノバブル水を、クライオ電子顕微鏡で観察した結果、ナノバブル水を凍結したアモルファス氷中のナノバブルの平均粒径が7nmであり、1cc当たり、8.1×1017個のナノバブルが含まれていることが確認された。
なお、このようなナノバブル生成装置7は、従来公知であり、例えば、特許第5555892号公報等に記載されているため、詳細な説明は省略する。
前記エアコン本体2および配管4により、実施例1の熱交換器2+4が構成されている。
【0015】
(実施例1の作用)
前記構成を備えた実施例1の空気調和装置1では、配管4にはナノバブル水が流動している。ナノバブル水は、エアコン本体2を通過する際に、少なくとも一部が気化して除熱して、室内を冷却するとともに、冷却塔3を通過する際に、冷却されて液化する。そして、液化した水は、ナノバブル生成装置7を通過する際に、ナノバブルが分散され、エアコン本体2に向けて供給される。
【0016】
ここで、ナノバブル水は、ナノバブルの存在しない水に比べて、蒸発速度(気化速度)が速い。ナノバブル水の蒸発速度が速い理由の詳細は不明であるが、以下の理由ではないかと推察される。ナノバブルが分散する溶液では、ナノバブルの存在により、溶液中に気液界面が多数形成された結果、気液界面の表面エネルギーの分だけ自由エネルギーが大きいと考えられる。その結果、液水の見かけの比熱を小さくすることができるのではないかと推察される。
【0017】
したがって、ナノバブル水を使用した場合、ナノバブルの存在しない水に比べて、液体温度が上昇しやすくなり、その結果、単位時間当たりの水の蒸発量が増大することで気化熱を大きくすることができる。よって、ナノバブル水は、ナノバブルの存在しない水に比べて、冷却対象から奪う熱が多く、冷却効率が高い。したがって、冷却塔等において、工業用水等の水道水を使用する従来の空気調和装置に比べて、実施例1の空気調和装置1では、エアコン本体2において、室内の空気を冷却する効率が向上する。
【0018】
(蒸発実験)
実施例1の効果を確認するために、ナノバブル水とナノバブルの入っていない水の一例としての水道水との蒸発速度の計測実験を行った。実験は、同一のシャーレに、一定量のサンプルをとり、無風化において、蒸発速度を計測する。電子天秤上に、一定量のサンプルを入れたシャーレをおいて、その重量変化を29時間計測する。なお、周囲雰囲気は、エアコンで室温制御しているためか、温度、湿度ともに必ずしも一定ではないので、2つのサンプルを同時に計測を行うことで比較実験を行う。なお、実験条件(温度、湿度)は、初期が、24.7℃、31%であり、終了時が、25.1℃、26%であった。実験結果を、図2に示す。
【0019】
図2は蒸発速度の計測実験の結果の説明図であり、図2Aは横軸に時間を取り縦軸に重さを取ったグラフ、図2Bは横軸に時間を取り縦軸に蒸発速度を取ったグラフである。
図2において、ナノバブル水の方が水道水よりも蒸発速度が高いことが確認された。また、図2Aおよび図2Bのグラフから、ナノバブル水の蒸発速度は、水道水の蒸発速度よりも30%以上速いことが確認された。したがって、熱交換の効率、すなわち、冷却効率も水道水を使用する場合に比べて、向上することがわかる。よって、空気調和装置1の冷却効率が高まり、消費電力の低減にも寄与し、省エネルギー化される。
また、実施例1では、冷媒として水が使用されており、特殊な冷媒を使用する場合に比べて、低コストで調達可能であるとともに、排水処理等も簡便であり、低コストで環境負荷も少なくすることができる。
【実施例2】
【0020】
次に本発明の実施例2の説明をするが、この実施例2の説明において、前記実施例1の構成要素に対応する構成要素には同一の符号を付して、その詳細な説明は省略する。
この実施例は下記の点で、前記実施例1と相違しているが、他の点では前記実施例1と同様に構成される。
【0021】
図3は実施例2の熱交換器を有する発電施設の説明図である。
図3において、実施例2の発電施設の一例としての火力発電施設11では、ナノバブル分散液の一例としてのナノバブル水が流動する配管12を有する。配管12には、ナノバブル水を流動させるポンプ13が設置されている。ナノバブル水の流動方向に対して、ポンプ13の下流側には、実施例1と同様のナノバブル生成装置14が設置されている。ナノバブル水の流動方向に対して、ナノバブル生成装置14の下流側には、第1の熱交換部の一例であって、蒸気発生装置の一例としてのボイラー16が配置されており、配管12は、ボイラー16内部を通過する。ボイラー16は、配管12を通じてナノバブル水を加熱する熱源16aを有する。
【0022】
ボイラー16の下流側には、発電部17が配置されている。発電部17には、ボイラー16で発生した蒸気が流入するタービン室12aが設けられている。タービン室12aには、蒸気で回転するタービン18が配置されており、タービン18は、回転軸18aを中心として回転可能である。回転軸18aは、発電機19に接続されている。
前記発電部17の下流側の配管12上には、第2の熱交換部の一例として、蒸気を冷却して液体に戻す復水器21が配置されている。
前記配管12およびボイラー16により、実施例2の熱交換器12+16が構成されている。
【0023】
(実施例2の作用)
実施例2の火力発電施設11では、ナノバブルの存在しない水に比べて、蒸発速度の速いナノバブル水がボイラー16で気化されて蒸気となる。したがって、ボイラー16における熱交換の効率、すなわち、蒸気の発生効率が向上し、ボイラー16における消費エネルギーも低減される。すなわち、熱源16aの燃料代の削減にも寄与し、COの排出量の削減も期待できる。
【0024】
(変更例)
以上、本発明の実施例を詳述したが、本発明は、前記実施例に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の要旨の範囲内で、種々の変更を行うことが可能である。本発明の変更例(H01)〜(H04)を下記に例示する。
(H01)前記実施例において、ナノバブル水の生成装置として、加圧減圧方式+水撃式のナノバブル水の生成装置を採用する方が、水中に分散されたナノバブルの個数が多いため好ましいが、他のナノバブル水の生成装置を採用することも可能である。
【0025】
(H02)前記実施例において、ポンプの設置位置等の具体的な構成は例示した構成に限定されず、設置可能な任意の位置に変更可能である。また、浄水器や給水用の配管、排水用の配管等の例示していない構成を追加することも可能である。
(H03)前記実施例1において、冷却塔3を有する空気調和装置1を例示したが、これに限定されない。配管とファンとを有する、いわゆるエアコンの室外機の構成とすることも可能である。
【0026】
(H04)前記実施例1において、空気調和装置1に適用する場合を例示したが、これに限定されず、冷蔵機や冷凍機等の熱交換器を有する任意の構成に適用可能である。同様に、実施例2において、火力発電施設11に適用する場合を例示したが、これに限定されず、地熱発電や原子力発電等の他の方式にも適用可能である。
【符号の説明】
【0027】
1…空気調和装置、
2,16…熱交換部、
2+4,12+16…熱交換器、
4,12…流動路、
7,14…ナノバブル生成装置。
図1
図2
図3