【解決手段】 トラッキングエラー信号27を波形整形した(B)の矩形波と、再生信号28を波形整形した(D)の矩形波とを監視し、(B)の矩形波がローからハイに立ち上がるときに、(D)の矩形波がローであれば、偏心しているディスクがレンズホルダの重力変位方向へ移動していると判定できる。その後の時間帯Toにトラッキング制御の引き込みを行うことで、その後にディスクが重力変位方向と逆方向に振れても、トラッキング制御が外れるなどの問題が生じにくくなる。
前記制御部では、前記トラッキングエラー信号の周期から、前記トラックの前記重力変位方向への移動速度がゼロになったかあるいはゼロに近づいたと判断したときにトラッキング制御の引き込みを行う請求項1記載のディスク装置。
前記制御部では、前記対物レンズで捕捉した再生信号と、前記トラッキングエラー信号とから前記トラックが前記重力変位方向へ移動しているか否かを判定する請求項1または2記載のディスク装置。
前記制御部では、前記トラッキングエラー信号を波形整形した信号の立ち上がりまたは立ち下がりを基準時とし、前記基準時に、前記再生信号のエンベロープ波形を波形整形した信号がハイかローかを検出して、前記トラックが前記重力変位方向へ移動しているか否かを判定する請求項3記載のディスク装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に記載されたディスク装置では、対物レンズの自重垂れの影響を少なくするために、前述のようにオフトラック信号のデューティ比を測定してから対物レンズの基準位置を補正するという複雑な制御が必要になり、さらに対物レンズを基準位置に保持するためにオフセット信号を生成する必要があり、回路の負担が大きくなっている。
【0007】
また、特許文献1に記載のディスク装置は、ディスクの偏心についてなんら加味されていない。ディスクを回転駆動部に装填したときに、ディスクの中心と回転駆動部の回転中心とが正確に一致することは有りえず、ディスクの中心と回転中心とがずれる偏心が必ず発生する。このときの偏心量は、ディスクの成形精度によってばらつきがあるが、比較的精度良く成形されたディスクでも、±0.1〜0.3mm程度の偏心は避けることができない。
【0008】
ディスクの再生を開始するときに、いずれかのタイミングで、対物レンズの光軸をトラックに追従させるためのトラッキング制御の引き込みを行うことになる。偏心しているディスクを回転させると、トラックが内周方向と外周方向へ振れるため、トラッキング制御の引き込みは、トラックの内外周への移動速度がゼロに近い状態になったとき、すなわち、トラックが外周側へ最大に振れたとき、または内周側へ最大に振れたときに行うことになる。
【0009】
例えば、対物レンズが自重によりディスクの外周方向へ垂れている状態で、偏心しているディスクのトラックが内周側へ最大に振れたときにトラッキング制御の引き込みが完了しトラッキング制御が可能な状態になったとする。この場合に、その後に偏心によりトラックが外周方向へ振れたときに、対物レンズに対して、自重で垂れた位置からさらに外周側へ移動させようとする制御力が作用する。このとき、対物レンズが可動範囲の限界位置に至ることがあり、対物レンズがトラックの振れに追従できなくなり、トラッキングが外れるなどの新たな問題が生じやすくなる。
【0010】
本発明は、上記従来の課題を解決するものであり、レンズホルダが自重で変位しているときにも、対物レンズとトラックとの相対位置が適正な状態でトラッキング制御に移行でき、ディスクの偏心にも追従できるようにしたディスク装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明のディスク装置は、ディスク装置に、ディスクを回転させる回転駆動部と、ディスクの記録面に沿ってディスクの半径方向へ移動する移動ベースと、前記移動ベースに搭載されたレンズホルダおよび前記レンズホルダに保持された対物レンズと、前記レンズホルダを前記記録面上のトラックを横断するトラッキング方向へ動作自在に支持する弾性支持部材と、前記レンズホルダをトラッキング方向へ動作させる駆動機構と、トラッキングエラー信号に基づいて前記駆動機構にトラッキング補正動作を行わせる制御部とが設けられており、
前記レンズホルダが重力の作用でトラッキング方向のいずれかに変位する方向を重力変位方向としたときに、
前記制御部では、ディスクの偏心により前記トラックが前記重力変位方向へ最も移動したときにトラッキング制御の引き込みを行うことを特徴とするものである。
【0012】
本発明のディスク装置は、前記制御部では、前記トラッキングエラー信号の周期から、前記トラックの前記重力変位方向への移動速度がゼロになったかあるいはゼロに近づいたと判断したときにトラッキング制御の引き込みを行うものである。
【0013】
本発明のディスク装置は、前記制御部では、前記対物レンズで捕捉した再生信号と、前記トラッキングエラー信号とから前記トラックが前記重力変位方向へ移動しているか否かを判定する。
【0014】
例えば、本発明のディスク装置は、前記制御部では、前記トラッキングエラー信号を波形整形した信号の立ち上がりまたは立ち下がりを基準時とし、前記基準時に、前記再生信号のエンベロープ波形を波形整形した信号がハイかローかを検出して、前記トラックが前記重力変位方向へ移動しているか否かを判定するものである。
【発明の効果】
【0015】
本発明は、レンズホルダが自重によりトラッキング方向の外周側または内周側のいずれかである重力変位方向へ移動している状態で、ディスクの偏心によるトラックの振れが重力変位方向へ最大となったときにトラッキング制御の引き込みを行っている。これにより、その偏心によりトラックが重力変位方向と逆側に振れたときに、レンズホルダが重力変位方向と逆側へ戻されるようになり、対物レンズの位置が補正可動範囲内で動けるようになり、対物レンズが可動範囲の限界位置に至ってトラッキング制御が外れるなどの問題が生じにくくなる。
【発明を実施するための形態】
【0017】
図1に示すディスク装置1は、ケース2とノーズ部3とを有しており、ケース2とノーズ部3とで筐体が構成されている。ノーズ部3にはディスクDが挿入されるスリット状の挿入・排出口4が開口している。
【0018】
図1のG方向が重力方向であり、このディスク装置1は、いわゆる縦置きの姿勢で使用されることを想定している。例えば、ディスク装置1の設置個所は自動車の車内のアームレストの内部やダッシュボードの水平部の内部などである。
【0019】
ケース2の内部では、挿入・排出口4の内側に搬送ローラ(図示せず)が設けられており、挿入・排出口4から挿入されたディスクDは、搬送ローラの回転力でケース2の内部に向けて下向きに搬入される。再生動作などが完了したディスクDは、搬送ローラの回転力で挿入・排出口4から図示上方へ排出される。
【0020】
ケース2の内部に機構シャーシ(図示せず)が設けられており、ケース2の内部の中央では、前記機構シャースに回転駆動部5が設けられている。
図3に示すように、回転駆動部5は、機構シャーシに固定されたスピンドルモータと、スピンドルモータで回転させられるターンテーブル5aと、ディスクDの中心穴をターンテーブルに保持させるクランパ5bとを有している。挿入・排出口4から挿入されたディスクDは、搬送ローラによってケース2の内部に向けて搬入され、ディスクDの中心穴が前記ターンテーブル5aに保持される。
【0021】
機構シャーシには、光ピックアップ10が支持されている。光ピックアップ10は移動ベース11を有している。移動ベース11にはレンズホルダ12が支持されており、レンズホルダ12に対物レンズ13が搭載されている。対物レンズ13の光軸O2は、ディスクDの記録面に垂直に向けられている。
【0022】
機構シャーシには、移動ベース11を移動させるピックアップ移動機構が設けられている。
図3ではピックアップ移動機構が符号21で示されている。ピックアップ移動機構21によって、移動ベース11が移動させられ、対物レンズ13の光軸O2(
図2参照)が、回転駆動部5の回転中心O1から延びる半径線Rに沿って往復移動させられる。
図1では、移動ベース11がディスクDの内周側で停止している姿勢が(i)で示され、外周側で停止している姿勢が(ii)で示されている。
【0023】
図1と
図2および
図8に示すように、レンズホルダ12は弾性支持部材である4本のサスペンションワイヤ14で支持されている。サスペンションワイヤ14の基端部は、移動ベース11に設けられた固定支持部15,15に固定されている。
図2に示すように、レンズホルダ12には、半径線Rと平行なトラッキング方向Trに突出する突起12aが一体に形成されており、サスペンションワイヤ14の先端部は突起12aに個別に固定されている。
【0024】
図2に示すように、レンズホルダ12には、導線の巻き中心線が光軸O2と平行に延びるフォーカスコイルCfと、導線の巻き中心線がトラッキング方向Trと直交する方向に延びる4個のトラッキングコイルCtとが取り付けられている。移動ベース11には、フォーカスコイルCfと各トラッキングコイルCtに対向する磁石が固定されている。
図3のブロック図に示すように、フォーカスコイルCfならびにトラッキングコイルCtと、磁石とで対物レンズ駆動機構16が構成されている。
【0025】
図3のブロック図に示すように、光ピックアップ10の移動ベース11内には、発光素子17と受光素子18とが設けられている。また、発光素子17からの検知光(レーザ光)を対物レンズ13に与え、ディスクDの記録面で反射されて対物レンズ13で捕捉された反射戻り光を受光素子18に与えるビームスプリッタ(ハーフミラー)19が設けられている。
【0026】
光ピックアップ10には各種制御回路が設けられている。
図3のブロック図に示すように、受光素子18でディスクDの記録面からの反射戻り光を受光した受光検知出力25は、フォーカスエラー検出部22と、トラッキングエラー検出部23および再生信号検出部24に与えられる。
【0027】
フォーカスエラー検出部22で得られたフォーカスエラー信号26と、トラッキングエラー検出部23で得られたトラッキングエラー信号27と、再生信号検出部24で得られた再生信号28は、主制御部30に与えられる。フォーカスエラー信号26は、ディスクの記録面に対する検知光のスポットの合焦のずれ量に対応して変化する信号であり、トラッキングエラー信号27は、記録面に形成されたトラックに対する前記対物レンズの位置ずれ量に対応して変化する信号である。
【0028】
主制御部30はCPUとメモリを主体として構成されており、予め格納されたプログラムによって、各種制御動作が行われる。その制御動作は、フォーカス制御部31、トラッキング制御部32、再生信号処理部33などである。
【0029】
フォーカス制御部31では、フォーカスエラー検出部22から送られるフォーカスエラー信号26に基づいてフォーカス補正信号34が生成される。フォーカス補正信号34は、対物レンズ駆動機構16のフォーカスコイルCfに与えられ、レンズホルダ12がフォーカス方向Fに駆動される。フォーカス方向Fは対物レンズ13の光軸O2と平行である。
【0030】
トラッキング制御部32では、トラッキングエラー検出部23で得られるトラッキングエラー信号27に基づいてトラッキング補正信号35が生成される。トラッキング補正信号35は、対物レンズ駆動機構16のトラッキングコイルCtに与えられ、レンズホルダ12がトラッキング方向Trへ駆動される。
【0031】
再生信号検出部24で得られた再生信号28は再生信号処理部33に与えられる。再生信号処理部33では、ディスクDの記録面に記録された情報の再生動作が行われる。さらに、主制御部30では、トラッキングエラー信号と再生信号とからトラッキング制御の引き込み動作のタイミングが演算され、その演算結果がトラッキング制御部32に与えられる。
【0032】
前述のように、光ピックアップ10の移動ベース11は、ピックアップ移動機構21によって
図1に示す半径線Rに沿って移動させられるが、このピックアップ移動機構21の移動は主制御部30によって制御される。
【0033】
次に、前記光ディスク装置1における制御方法を説明する。以下では、トラッキング制御の引き込みタイミングについて説明する。
【0034】
図7にディスクの記録面の拡大図が示されている。実施の形態のディスクはCDやDVDなどであり、記録面に記録トラックTmが螺旋状に形成されている。記録トラックTm上には記録ピットPが形成されている。ディスクDの記録面は記録ピットPの部分が凹部であり、記録ピットPが形成されていない部分が反射面である。記録ピットPの記録トラックTmに沿う方向の長さは、1T,2T,3Tなどの情報の長さを意味しており、この記録ピットPが記録情報の内容に応じて組み合わされて配列されている。
【0035】
図3に示すように、発光素子17から発せられた検知光(レーザ光)は、移動ベース11内に設けられた回折格子(図示せず)で分光され、
図7に示すように、ディスクDの記録面に3ビーム方式で集光させられる。検知光が集光して形成された光スポットは、0次回折光による中央の情報再生用の光スポットS0と、再生光スポットS0を挟んで配置された1次回折光によるトラッキングエラー検出用の光スポットSe,Sfである。
【0036】
光スポットSeと光スポットSfは、中央の光スポットS0を挟んで記録トラックTmに沿う方向へ等距離離れて集光しており、光スポットSeは中央の光スポットS0よりもディスク外周側に集光し、光スポットSfは光スポットS0よりもディスク内周側に集光している。トラッキングエラー検出部23では、光スポットSeを検知したE検知出力と、光スポットSfを検知したF検知出力との差であるE−F出力が演算される。この演算結果がトラッキングエラー信号27としてトラッキング制御部32に送られ、トラッキング制御部32では、E−F出力をゼロとするように光スポットの位置を制御するトラッキング補正信号35が生成されてトラッキングコイルCtに与えられる。そして、中央の光スポットS0が記録トラックTmにオントラックとなるように、レンズホルダ12のトラッキング方向Trの位置が制御される。
【0037】
また、光スポットS0からの反射戻り光がフォーカスエラー検出部22に与えられて、フォーカスエラー信号が生成されてフォーカス制御部31に与えられる。
【0038】
中央の光スポットS0からの反射戻り光は、再生信号検出部24にも与えられ、再生信号が生成されて再生信号処理部33に与えられる。
【0039】
図1に示すように、回転駆動部5の回転中心O1とディスクDの中心は一致しないことが多い。
図1では、偏心が生じていないディスクDを実線で示している。また、偏心によって、半径線Rに沿う方向で最も外周側に移動したときのディスクDoを破線で示し、偏心によって、半径線Rに沿う方向で最も内周側に移動したときのディスクDiを一転鎖線で示している。
【0040】
図4は、トラッキング制御の引き込みが完了していない状態で、ディスクDが回転駆動部5によって回転させられているときの検出動作を示しており、(A)は、トラッキングエラー検出部23で検出されるトラッキングエラー信号27を示し、(B)は、再生信号検出部24で検出される再生信号28を示している。
【0041】
ここで、トラッキング制御の引き込みとは、トラッキング制御が成立していない状態から、
図7に示す中央の光スポットS0が記録トラックTmにオントラックとなるトラッキング制御に移行させることを意味している。また、トラッキング制御は、トラッキングエラー信号を位相補償回路などを通した駆動電圧として駆動機構に印加させることで行われる。
【0042】
トラッキング制御の引き込みが行われる前では、ディスクDが偏心で振れると、記録トラックTmが、集光している光スポットS0,Se,Sfを、半径線Rに沿って横切ることになり、記録トラックTmが横切るたびにトレッキングエラー信号27と再生信号28が変化する。
【0043】
図1に実線で示すディスクDを中心として、ディスクが外周側と内周側へそれぞれ0.21mmだけ振れるとすると、光スポットS0,Se,Sfを半径線Rに沿って横切るディスクDの記録面の移動量は、最大で0.42mmである。CDなどでは、記録トラックTmのピッチが1.6μmである。よって
図4に示すように、ディスクDが半回転する間に、光スポットS0,Se,Sfを横断する記録トラックTmの数は260である。ディスクDが1回転する間に、260本の記録トラックTmが、光スポットS0,Se,Sfを一往復するように横断する。
【0044】
図4には、光ピックアップ10の移動ベース11が
図1において(ii)で示す外周側で停止し、トラッキング制御の引き込みが完了していないときのトラッキングエラー信号27の波形と再生信号28の波形が示されている。この波形は、移動ベース11が
図1において(i)で示す内周側で停止しているときも同じであり、移動ベース11が(i)の位置と(ii)の位置の中間のいずれかの位置で停止しているときも基本的に同じである。
【0045】
図4に示す範囲Vは、偏心で振れているディスクが半径線Rに沿う方向で最も外周側に移動してDoに至ったときであり、
図5にはこのときの波形が時間方向に拡大して示されている。
図4に示す範囲VIは、偏心で振れているディスクが半径線Rに沿う方向で最も内周側に移動してDiに至ったときであり、
図5にはこのときの波形が時間方向に拡大して示されている。
【0046】
図5と
図6では、(A)がトラッキングエラー信号27、(B)はトラッキングエラー信号27を波形整形した矩形波、(C)は再生信号28のエンベロープ波形、(D)は再生信号28のエンベロープ波形を波形整形した矩形波である。
【0047】
トラッキングエラー信号27は、
図7に示す光スポットSeからの戻り光の検知出力Eと光スポットSfからの戻り光の検知出力Fとの差(E−F)であるため、光スポットSeが記録ピットP上に位置し、光スポットSfが反射面上に位置しているとE−F出力は負となり、光スポットSeが反射面上に位置し、光スポットSfが記録ピットP上に位置しているとE−F出力は正となる。(A)の波形が正のときは、波形整形した(B)の矩形波はハイである。
【0048】
(C)の再生信号28のエンベロープ波形は、光スポットSoが記録ピットP上に位置するときに、ミラー部(反射面)からの反射光とピット部からの反射光が干渉・打ち消し合うことにより最小値となり、光スポットSoが記録ピットPから外れて反射面上に位置していると、ピットPからの反射光による干渉が起きなくなるため出力が最大値となる。ただし、
図5と
図6の(D)の矩形波は、(C)の再生信号28を波形整形して正負を反転させたものとなっており、(D)のハイの矩形波は、光スポットS0がピット列上に位置する(オントラック)ことを意味する。
【0049】
図5(A)に示すように、偏心によりディスクDが外周側(Do側)へ最大限振れてその後内周側へ移動しようとする折り返しの時間帯Toでは、光スポットSo,Se,Sfと記録トラックTmとの半径線R方向の相対速度がゼロまたはほぼゼロとなる。この時間帯Toに
図3に示すトラッキング制御部32からトラッキングコイルCtにトラッキング補正信号35を与えることで、トラッキング制御の引き込みを容易に行うことが可能になる。
【0050】
同様に、
図6(A)に示すように、偏心によりディスクDが内周側(Di側)へ最大限振れてその後外周側へ移動しようとする折り返しの時間帯Tiにおいても、光スポットSo,Se,Sfと記録トラックTmとの半径線R方向の相対速度がゼロまたはほぼゼロとなる。よって、この時間帯Tiにおいてもトラッキング制御の引き込みを容易に行うことが可能になる。
【0051】
ただし、
図1に示すディスク装置1では、レンズホルダ12を支持するサスペンションワイヤ14の延びる方向が、重力方向Gに対して傾いているため、トラッキング制御が行われていない自由状態でのレンズホルダ12は、
図8に実線で示す定常状態に比べ、破線で示すように重力方向へ傾いた状態となっている。サスペンションワイヤが
図1と
図8に示す方向へ延びていると、レンズホルダ12は、自重によってディスク外周側へ向けて傾くように変位しており、ディスク外周側が重力変位方向となっている。
【0052】
図8において破線で示すように、移動ベース11内でレンズホルダ12が重力変位方向である外周側へ変位している状態で、偏心によるディスクの振れが内周側から外周側への折り返す時間帯Tiで、トラッキング制御の引き込みを行ってトレッキング制御に移行したとする。この場合には、その直後に、偏心しているディスクDがディスク外周側へ振れるため、これに追従してレンズホルダ12が
図8に示す破線の変位姿勢からさらにディスク外周側へ向けてα方向へ大きく移動しようとする。
【0053】
しかし、移動ベース11上でのレンズホルダ12の移動範囲には機構上の限界があり、
図8において破線状態に変位しているレンズホルダ12は既に移動範囲の中心から外周方向へ大きく偏っている。そのため、レンズホルダ12が破線状態からα方向へ移動するとすぐに移動限界位置に至り、対物レンズ13の光軸O2は、偏心の振れによる記録トラックTmの外周方向への動きに追従できなくなる。この場合に、記録トラックTmが光スポットSo,Se,Sfから外れ、トラッキング制御が外れるなどの問題が生じるおそれがある。
【0054】
そこで、実施の形態のディスク装置1では、
図8に示すように、レンズホルダ12の重力変位方向がディスク外周側であるときには、偏心によるディスクの振れが外周側から内周側への折り返す
図5に示す時間帯Toにおいて、トラッキング制御の引き込みを行うように制御している。この場合には、トラッキング制御が開始された直後に、偏心によりディスクが内周側へ振れるため、レンズホルダ12は、ディスク内周側へ向けて
図8に示すβ方向へ移動させられる。しかし、β方向はレンズホルダ12の重力方向への垂れを復帰させる修正方向であるため、レンズホルダ12は移動ベース11上の可動範囲内でトラッキング方向Trへ動くことになり、トラッキング制御が外れるなどの不都合が生じることがなくなる。
【0055】
図3に示す主制御部30では、トラッキング制御を開始しようとするときに、
図5と
図6の(B)に示す矩形波と(D)に示す矩形波とを監視することで、偏心によりディスクDが外周方向へ振れているか、内周方向へ振れているかの判定を行うことができる。
【0056】
図7において、光スポットSo,Se,Sfの位置を停止させて記録トラックTmをディスク外周側(図示左側)へ移動させると、
図5における時間帯Toよりも左側の波形、および
図6における時間帯Tiよりも右側の波形に示すように、E−F出力が負から正に立ち上がるときに、中央の光スポットSoが反射面から記録ピットP上へ移行する。
【0057】
逆に、
図7において、光スポットSo,Se,Sfの位置を停止させて記録トラックTmをディスク内周側(図示右側)へ移動させると、
図5における時間帯Toよりも右側の波形、および
図6における時間帯Tiよりも左側の波形に示すように、E−F出力が負から正に立ち上がる瞬間に、中央の光スポットSoは記録ピット列P上に位置している(オントラックである)。
【0058】
よって、主制御部30では、
図5と
図6の(B)の矩形波のローからハイへの立ち上がり時(基準時)に(D)の矩形波がハイであると、ディスクDが外周側へ振れていると判断できる。このとき、(B)の矩形波の周期をカウントし、ローの周期が所定よりも長くなったら、
図5(A)に示す時間帯Toに至ったと判断して、トラッキング制御の引き込みを行う。これにより、ディスクの振れが重力変位方向である外周方向へ最大限移動して、光スポットSo,Se,Sfと記録トラックTmとの相対速度がゼロまたはほぼゼロになったときにトラッキング制御に移行できるようになる。
【0059】
または、(B)の矩形波がハイからローに立ち下がるときに(D)の波形を監視することで、記録トラックTmが重力変位方向へ移動しているか否かを判定することもできる。
【0060】
なお、重力によるレンズホルダ12の変位方向がディスク内周側であるときには、ディスクの振れが内周側に最大となったときに、トラッキング制御の引き込みを行えばよい。