【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り 公益社団法人 高分子学会、第64回高分子学会予稿集、64巻1号[2015]、平成27年5月12日 第64回高分子学会年次大会、平成27年5月29日
【課題】広い温度領域で柔粘性結晶としての特性を発揮することができ、かつ高いイオン伝導性を発揮することができる柔粘性結晶を含む固体電解質及びこれを用いた電気化学デバイスの提供。
【解決手段】テトラメチルアンモニウムカチオン、トリメチルエチルアンモニウムカチオン、ジメチルジエチルアンモニウムカチオン、メチルトリエチルアンモニウムカチオン、およびテトラエチルアンモニウムカチオンからなる群より選択される少なくとも1種のカチオンと、ビスフルオロスルホニルイミドアニオンと、からなる柔粘性結晶を含むイオン伝導性を有する固体電解質及びこれを用いた電気化学デバイス。又、リチウム塩を前記柔粘性結晶に対して0.1〜20モル%更に含む固体電解質。
テトラメチルアンモニウムカチオン、トリメチルエチルアンモニウムカチオン、ジメチルジエチルアンモニウムカチオン、メチルトリエチルアンモニウムカチオン、およびテトラエチルアンモニウムカチオンからなる群より選択される少なくとも1種のカチオンと、
ビスフルオロスルホニルイミドアニオンと、
からなる柔粘性結晶を含むイオン伝導性を有する固体電解質。
前記カチオンがトリメチルエチルアンモニウムカチオン、ジメチルジエチルアンモニウムカチオン、およびメチルトリエチルアンモニウムカチオンからなる群より選択される少なくとも1種である、請求項1に記載のイオン伝導性を有する固体電解質。
前記N−アルキル−N−イソプロピルピロリジニウムカチオンは、N−イソプロピル−N−メチルピロリジニウムカチオンである、請求項6に記載のイオン伝導性を有する固体電解質。
前記リチウム塩は、リチウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドおよびリチウムビス(フルオロスルホニル)イミドの少なくとも一方である、請求項8または9に記載のイオン伝導性を有する固体電解質。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、図面を参照しながら、本発明のイオン伝導性を有する固体電解質(以下、単に「固体電解質」、「本発明の固体電解質」とも称する)、ならびにこれを用いてなる電気化学デバイス、組電池、および車両の実施形態を説明する。但し、本発明の技術的範囲は、特許請求の範囲の記載に基づいて定められるべきであり、以下の形態のみには制限されない。なお、図面の説明において同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。また、図面の寸法比率は、説明の都合上誇張されており、実際の比率とは異なる場合がある。
【0021】
以下、本発明の固体電解質が適用され得る電気化学デバイスの基本的な構成を、図面を用いて説明する。本実施形態では、電気化学デバイスとしてリチウムイオン二次電池を例示して説明する。なお、本発明において「電極層」とは、負極活物質、導電助剤、およびバインダを含む合剤層を意味するが、本明細書の説明では「負極活物質層」とも称することがある。同様に、正極側の電極層を「正極活物質層」とも称する。
【0022】
まず、本発明の固体電解質およびこれを用いてなるリチウムイオン二次電池では、セル(単電池層)の電圧が大きく、高エネルギー密度、高出力密度が達成できる。そのため本実施形態の固体電解質を用いてなるリチウムイオン二次電池では、車両の駆動電源用や補助電源用として優れている。その結果、車両の駆動電源用等のリチウムイオン二次電池として好適に利用できる。このほかにも、携帯電話などの携帯機器向けのリチウムイオン二次電池にも十分に適用可能である。
【0023】
すなわち、本実施形態の対象となるリチウムイオン二次電池は、以下に説明する本実施形態の固体電解質を用いてなるものであればよく、他の構成要件に関しては、特に制限されるべきものではない。
【0024】
例えば、上記リチウムイオン二次電池を形態・構造で区別した場合には、積層型(扁平型)電池、巻回型(円筒型)電池など、従来公知のいずれの形態・構造にも適用し得るものである。積層型(扁平型)電池構造を採用することで簡単な熱圧着などのシール技術により長期信頼性を確保でき、コスト面や作業性の点では有利である。
【0025】
また、リチウムイオン二次電池内の電気的な接続形態(電極構造)で見た場合、非双極型(内部並列接続タイプ)電池および双極型(内部直列接続タイプ)電池のいずれにも適用し得るものである。
【0026】
[電気化学デバイス]
本実施形態に係る電気化学デバイスは、典型的にはリチウムイオン二次電池が挙げられる。すなわち、リチウムイオンを挿入・脱離可能な正極活物質を含有する正極と、リチウムイオンを挿入・脱離可能な負極活物質を含有する負極と、前記正極および前記負極の間に介在する電解質層とを備える電気化学デバイスである。以下の説明では、リチウムイオン二次電池を例に挙げて説明するが、本発明はこれに限定されない。
【0027】
図1は、本発明の一実施形態に係る、高出力(低抵抗)で高容量の並列に積層したリチウムイオン二次電池(以下、単に「並列積層型電池」とも称する)の全体構造を模式的に表した断面概略図である。
図1に示すように、本実施形態の並列積層型電池10aは、実際に充放電反応が進行する略矩形の発電要素17が、電池外装材であるラミネートフィルム22の内部に封止された構造を有する。詳しくは、高分子−金属複合ラミネートフィルムを電池外装材として用いて、その周辺部の全部を熱融着にて接合することにより、発電要素17を収納し密封した構成を有している。
【0028】
発電要素17は、負極集電体11の両面(発電要素の最下層用および最上層用は片面のみ)に負極活物質層12が配置された負極と、電解質層13と、正極集電体14の両面に正極活物質層15が配置された正極とを積層した構成を有している。具体的には、1つの負極活物質層12とこれに隣接する正極活物質層15とが、電解質層13を介して対向するようにして、負極、電解質層13、正極がこの順に積層されている。正極活物質層には、後述するように、特定の組成および構造の正極活物質を使用する。
【0029】
これにより、隣接する負極、電解質層13、および正極は、1つの単電池層16を構成する。したがって、本実施形態の並列積層型電池10は、単電池層16が複数積層されることで、電気的に並列接続されてなる構成を有するといえる。また、単電池層16の外周には、隣接する負極集電体11と正極集電体14との間を絶縁するためのシール部(絶縁層)(図示せず)が設けられていてもよい。発電要素17の両最外層に位置する最外層負極集電体11aには、いずれも片面のみに負極活物質層12が配置されている。なお、
図1とは負極および正極の配置を逆にすることで、発電要素17の両最外層に最外層正極集電体が位置するようにし、該最外層正極集電体の片面のみに正極活物質層が配置されているようにしてもよい。
【0030】
負極集電体11および正極集電体14には、各電極(負極および正極)と導通される負極集電板18および正極集電板19がそれぞれ取り付けられ、ラミネートフィルム22の端部に挟まれるようにラミネートフィルム22の外部に導出される構造を有している。負極集電板18および正極集電板19は、必要に応じて負極端子リード20および正極端子リード21を介して、各電極の負極集電体11および正極集電体14に超音波溶接や抵抗溶接等により取り付けられていてもよい(
図1にはこの形態を示す)。ただし、負極集電体11が延長されて負極集電板18とされ、ラミネートフィルム22から導出されていてもよい。同様に、正極集電体14が延長されて正極集電板19とされ、同様に電池外装材22から導出される構造としてもよい。
【0031】
図2は、本発明の一実施形態に係る、高出力(低抵抗)で高容量の直列に積層した双極型のリチウムイオン二次電池(以下、単に「直列積層型電池」とも称する)の全体構造を模式的に表した断面概略図である。
図2に示す直列積層型電池10bは、実際に充放電反応が進行する略矩形の発電要素17が、電池外装材であるラミネートフィルム22の内部に封止された構造を有する。
【0032】
図2に示すように、直列積層型電池10bの発電要素17は、集電体23の一方の面に電気的に結合した正極活物質層15が形成され、集電体11の反対側の面に電気的に結合した負極活物質層12が形成された複数の双極型電極24を有する。正極活物質層には、後述するように、特定の組成および構造の正極活物質を使用する。各双極型電極24は、電解質層13を介して積層されて発電要素17を形成する。なお、電解質層13は、基材としてのセパレータの面方向中央部に電解質が保持されてなる構成を有する。この際、一の双極型電極24の正極活物質層15と前記一の双極型電極24に隣接する他の双極型電極24の負極活物質層12とが電解質層13を介して向き合うように、各双極型電極24および電解質層13が交互に積層されている。すなわち、一の双極型電極24の正極活物質層15と前記一の双極型電極24に隣接する他の双極型電極24の負極活物質層12との間に電解質層13が挟まれて配置されている。
【0033】
隣接する正極活物質層15、電解質層13、および負極活物質層12は、一つの単電池層16を構成する。したがって、本実施形態の直列積層型電池10bは、単電池層16が複数積層されることで、電気的に直列接続されてなる構成を有するといえる。また、電解質層13からの電解液の漏れによる液絡を防止する目的で、単電池層16の外周部にはシール部(絶縁部)25が配置されている。なお、発電要素17の最外層に位置する正極側の最外層集電体23aには、片面のみに正極活物質層15が形成されている。また、発電要素17の最外層に位置する負極側の最外層集電体23bには、片面のみに負極活物質層12が形成されている。ただし、正極側の最外層集電体23aの両面に正極活物質層15が形成されてもよい。同様に、負極側の最外層集電体23bの両面に負極活物質層12が形成されてもよい。
【0034】
さらに、
図2に示す直列積層型電池10bでは、正極側の最外層集電体23aに隣接するように正極集電板19が配置され、これが延長されて電池外装材であるラミネートフィルム22から導出している。一方、負極側の最外層集電体23bに隣接するように負極集電板18が配置され、同様にこれが延長されて電池の外装であるラミネートフィルム22から導出している。
【0035】
図2に示す直列積層型電池10bにおいては、通常、各単電池層16の周囲に絶縁部25が設けられる。この絶縁部25は、電池内で隣り合う集電体23どうしが接触したり、発電要素17における単電池層16の端部の僅かな不揃いなどに起因する短絡が起こったりするのを防止する目的で設けられる。かような絶縁部25の設置により、長期間の信頼性および安全性が確保され、高品質の直列積層型電池10bが提供されうる。
【0036】
なお、単電池層16の積層回数は、所望する電圧に応じて調節する。また、直列積層型電池10bでは、電池の厚みを極力薄くしても十分な出力が確保できれば、単電池層16の積層回数を少なくしてもよい。直列積層型電池10bでも、使用する際の外部からの衝撃、環境劣化を防止する必要がある。よって、発電要素17を電池外装材であるラミネートフィルム22に減圧封入し、正極集電板19および負極集電板18をラミネートフィルム22の外部に取り出した構造とするのがよい。
【0037】
上記で説明したリチウムイオン二次電池は、固体電解質に特徴を有する。以下、当該固体電解質を含めた電池の主要な構成部材について、さらに詳細に説明する。
【0038】
[正極]
正極は、負極とともにリチウムイオンの授受により電気エネルギーを生み出す機能を有する。正極は、集電体および正極活物質層を必須に含み、集電体の表面に正極活物質層が形成されてなる。
【0039】
(集電体)
集電体は導電性材料から構成され、その一方の面または両面に正極活物質層が配置される。集電体を構成する材料に特に制限はなく、例えば、金属や、導電性高分子材料または非導電性高分子材料に導電性フィラーが添加された導電性を有する樹脂が採用されうる。
【0040】
金属としては、アルミニウム、ニッケル、鉄、ステンレス鋼(SUS)、チタン、銅などが挙げられる。これらのほか、ニッケルとアルミニウムとのクラッド材、銅とアルミニウムとのクラッド材、あるいはこれらの金属の組み合わせのめっき材などが好ましく用いられうる。また、金属表面にアルミニウムが被覆されてなる箔であってもよい。これらのうち、導電性や電池作動電位の観点からは、アルミニウム、ステンレス鋼、または銅を用いることが好ましい。
【0041】
また、導電性高分子材料としては、例えば、ポリアニリン、ポリピロール、ポリチオフェン、ポリアセチレン、ポリパラフェニレン、ポリフェニレンビニレン、ポリアクリロニトリル、およびポリオキサジアゾールなどが挙げられる。かような導電性高分子材料は、導電性フィラーを添加しなくても十分な導電性を有するため、製造工程の容易化または集電体の軽量化の点において有利である。
【0042】
非導電性高分子材料としては、例えば、ポリエチレン(PE;高密度ポリエチレン(HDPE)、低密度ポリエチレン(LDPE))、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエーテルニトリル(PEN)、ポリイミド(PI)、ポリアミドイミド(PAI)、ポリアミド(PA)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、スチレン−ブタジエンゴム(SBR)、ポリアクリロニトリル(PAN)、ポリメチルアクリレート(PMA)、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリフッ化ビニリデン(PVdF)、およびポリスチレン(PS)などが挙げられる。かような非導電性高分子材料は、優れた耐電位性または耐溶媒性を有しうる。
【0043】
上記の導電性高分子材料または非導電性高分子材料には、必要に応じて導電性フィラーが添加されうる。特に、集電体の基材となる樹脂が非導電性高分子のみからなる場合は、樹脂に導電性を付与するために必然的に導電性フィラーが必須となる。導電性フィラーは、導電性を有する物質であれば特に制限なく用いることができる。例えば、導電性、耐電位性、またはリチウムイオン遮断性に優れた材料として、金属および導電性カーボンなどが挙げられる。金属としては、特に制限されないが、Ni、Ti、Al、Cu、Pt、Fe、Cr、Sn、Zn、In、Sb、およびKからなる群から選択される少なくとも1種の金属もしくはこれらの金属を含む合金または金属酸化物を含むことが好ましい。また、導電性カーボンとしては、特に制限されないが、アセチレンブラック、バルカン、ブラックパール、カーボンナノファイバー、ケッチェンブラック、カーボンナノチューブ、カーボンナノホーン、カーボンナノバルーン、およびフラーレンからなる群から選択される少なくとも1種を含むことが好ましい。導電性フィラーの添加量は、集電体に十分な導電性を付与できる量であれば特に制限はなく、一般的には、5〜35質量%程度である。
【0044】
集電体の大きさは、電池の使用用途に応じて決定される。例えば、高エネルギー密度が要求される大型の電池に用いられるのであれば、面積の大きな集電体が用いられる。集電体の厚さについても特に制限はないが、通常は1〜100μm程度である。
【0045】
(正極活物質層)
正極活物質層は、活物質と導電助剤とを必須に含み、この活物質と導電助剤との間のゼータ(ζ)電位が所定の範囲にあることを特徴とするものである。前記正極活物質層は、活物質と導電助剤の他に、バインダ、電解質(ポリマーマトリックス、イオン伝導性ポリマー、電解液など)、イオン伝導性を高めるためのリチウム塩などのその他の添加剤をさらに含んでもよい。
【0046】
<正極活物質>
正極活物質は、充電時にリチウムイオンを放出し、放電時にリチウムイオンを吸蔵できる組成を有する。正極活物質としては、例えば、LiMn
2O
4、LiCoO
2、LiNiO
2、Li(Ni−Mn−Co)O
2およびこれらの遷移金属の一部が他の元素により置換されたもの等のリチウム遷移金属複合酸化物、リン酸鉄リチウム等のリチウム遷移金属リン酸化合物、リチウム−遷移金属硫酸化合物などが挙げられる。場合によっては、2種以上の正極活物質が併用されてもよい。好ましくは、容量、出力特性の観点から、リチウム遷移金属複合酸化物またはリチウム遷移金属リン酸化合物が、正極活物質として用いられる。さらに、Li(Ni−Mn−Co)O
2およびこれらの遷移金属の一部が他の元素により置換されたもの(以下、単に「NMC複合酸化物」とも称する)も用いられうる。NMC複合酸化物は、リチウム原子層と遷移金属(Mn、NiおよびCoが秩序正しく配置)原子層とが酸素原子層を介して交互に積み重なった層状結晶構造を持ち、遷移金属Mの1原子あたり1個のLi原子が含まれ、取り出せるLi量が、スピネル系リチウムマンガン酸化物の2倍、つまり供給能力が2倍になり、高い容量を持つことができる。
【0047】
NMC複合酸化物は、上述したように、遷移金属元素の一部が他の金属元素により置換されている複合酸化物も含む。その場合の他の元素としては、Ti、Zr、Nb、W、P、Al、Mg、V、Ca、Sr、Cr、Fe、B、Ga、In、Si、Mo、Y、Sn、V、Cu、Ag、Znなどが挙げられ、好ましくは、Ti、Zr、Nb、W、P、Al、Mg、V、Ca、Sr、Crであり、より好ましくは、Ti、Zr、P、Al、Mg、Crであり、サイクル特性向上の観点から、さらに好ましくは、Ti、Zr、Al、Mg、Crである。
【0048】
NMC複合酸化物は、理論放電容量が高いことから、好ましくは、一般式(1):Li
aNi
bMn
cCo
dM
xO
2(但し、式中、a、b、c、d、xは、0.9≦a≦1.2、0<b<1、0<c≦0.5、0<d≦0.5、0≦x≦0.3、b+c+d=1を満たす。MはTi、Zr、Nb、W、P、Al、Mg、V、Ca、Sr、Crから選ばれる元素で少なくとも1種類である)で表される組成を有する。ここで、aは、Liの原子比を表し、bは、Niの原子比を表し、cは、Mnの原子比を表し、dは、Coの原子比を表し、xは、Mの原子比を表す。サイクル特性の観点からは、一般式(1)において、0.4≦b≦0.6であることが好ましい。なお、各元素の組成は、例えば、誘導結合プラズマ(ICP)発光分析法により測定できる。
【0049】
一般に、ニッケル(Ni)、コバルト(Co)およびマンガン(Mn)は、材料の純度向上および電子伝導性向上という観点から、容量および出力特性に寄与することが知られている。Ti等は、結晶格子中の遷移金属を一部置換するものである。サイクル特性の観点からは、遷移元素の一部が他の金属元素により置換されていることが好ましく、特に一般式(1)において0<x≦0.3であることが好ましい。Ti、Zr、Nb、W、P、Al、Mg、V、Ca、SrおよびCrからなる群から選ばれる少なくとも1種が固溶することにより結晶構造が安定化されるため、その結果、充放電を繰り返しても電池の容量低下が防止でき、優れたサイクル特性が実現し得ると考えられる。
【0050】
より好ましい実施形態としては、一般式(1)において、b、cおよびdが、0.44≦b≦0.51、0.27≦c≦0.31、0.19≦d≦0.26であることが、容量と耐久性とのバランスに優れる点で好ましい。
【0051】
なお、上記以外の正極活物質が用いられてもよいことは勿論である。
【0052】
正極活物質層に含まれるそれぞれの活物質の平均粒子径は特に制限されないが、高出力化の観点からは、好ましくは1〜100μm、より好ましくは1〜30μmである。さらに好ましくは10〜30μmであり、大面積電極を取扱う高出力(低抵抗)で高容量な電池とする上で望ましい。
【0053】
<導電助剤>
導電助剤は、活物質層の導電性を向上させるために配合される添加物をいう。導電助剤としては、特に制限されないが、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、ファーネスブラック等のカーボンブラック、チャンネルブラック、サーマルブラック、グラファイト等のカーボン粉末や、気相成長炭素繊維(VGCF;登録商標)等の種々の炭素繊維、膨張黒鉛などの炭素材料が挙げられる。活物質層が導電助剤を含むと、活物質層の内部における電子ネットワークが効果的に形成され、電池の出力特性の向上に寄与しうる。
【0054】
正極活物質層中に含まれる導電助剤の含有量は、活物質の導電性を向上させることができる量であれば特に限定されるものではなく、正極活物質層に対して、好ましくは0.5〜15質量%の範囲である。より好ましくは1〜10質量%であり、さらに好ましくは2〜8質量%であり、特に好ましくは3〜7質量%の範囲である。
【0055】
正極活物質層は、上記活物質および導電助剤のほかに、必要に応じて、バインダ、電解質(ポリマーマトリックス、イオン伝導性ポリマー、電解液など)、イオン伝導性を高めるためのリチウム塩などのその他の添加剤をさらに含みうる。
【0056】
<バインダ>
バインダは、活物質層中の構成部材同士または活物質層と集電体とを結着させて電極構造を維持する目的で添加される。正極活物質層に用いられるバインダとしては、特に限定されないが、例えば、以下の材料が挙げられる。ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエーテルニトリル、ポリアクリロニトリル、ポリイミド、ポリアミド、セルロース、カルボキシメチルセルロース(CMC)およびその塩、エチレン−酢酸ビニル共重合体、ポリ塩化ビニル、スチレン・ブタジエンゴム(SBR)、イソプレンゴム、ブタジエンゴム、エチレン・プロピレンゴム、エチレン・プロピレン・ジエン共重合体、スチレン・ブタジエン・スチレンブロック共重合体およびその水素添加物、スチレン・イソプレン・スチレンブロック共重合体およびその水素添加物などの熱可塑性高分子、ポリフッ化ビニリデン(PVdF)、フッ化ビニリデン系共重合体(変性PVdF)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、テトラフルオロエチレン・ヘキサフルオロプロピレン共重合体(FEP)、テトラフルオロエチレン・パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)、エチレン・テトラフルオロエチレン共重合体(ETFE)、ポリクロロトリフルオロエチレン(PCTFE)、エチレン・クロロトリフルオロエチレン共重合体(ECTFE)、ポリフッ化ビニル(PVF)等のフッ素樹脂、ビニリデンフルオライド−ヘキサフルオロプロピレン系フッ素ゴム(VDF−HFP系フッ素ゴム)、ビニリデンフルオライド−ヘキサフルオロプロピレン−テトラフルオロエチレン系フッ素ゴム(VDF−HFP−TFE系フッ素ゴム)、ビニリデンフルオライド−ペンタフルオロプロピレン系フッ素ゴム(VDF−PFP系フッ素ゴム)、ビニリデンフルオライド−ペンタフルオロプロピレン−テトラフルオロエチレン系フッ素ゴム(VDF−PFP−TFE系フッ素ゴム)、ビニリデンフルオライド−パーフルオロメチルビニルエーテル−テトラフルオロエチレン系フッ素ゴム(VDF−PFMVE−TFE系フッ素ゴム)、ビニリデンフルオライド−クロロトリフルオロエチレン系フッ素ゴム(VDF−CTFE系フッ素ゴム)等のビニリデンフルオライド系フッ素ゴム、エポキシ樹脂等が挙げられる。これらのバインダは、単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0057】
正極活物質層中に含まれるバインダの含有量は、活物質を結着することができる量であれば特に限定されるものではないが、正極活物質層に対して、好ましくは0〜30質量%である。より好ましくは0.5〜15質量%であり、さらに好ましくは1〜10質量%であり、よりさらに好ましくは2〜8質量%であり、特に好ましくは3〜7質量%である。親水性の変性PVdF等のバインダ(有機溶媒系バインダ)は、その含有量を増加させることによって吸液速度が上がるが、エネルギー密度の観点では不利になる。また、多すぎるバインダ量は電池の抵抗を増加させてしまう。よって、正極活物質層中に含まれるバインダ量を上記範囲内とすることにより、活物質を効率よく結着することができ、本実施形態の効果をより一層高めることができる。
【0058】
<リチウム塩>
電解質塩(リチウム塩)としては、Li(C
2F
5SO
2)
2N、LiPF
6、LiBF
4、LiClO
4、LiAsF
6、LiCF
3SO
3等が挙げられる。
【0059】
<イオン伝導性ポリマー>
イオン伝導性ポリマーとしては、例えば、ポリエチレンオキシド(PEO)系およびポリプロピレンオキシド(PPO)系のポリマーが挙げられる。
【0060】
また、正極活物質層の空孔率は好ましくは20〜30%、より好ましくは22〜28%、さらに好ましくは23〜25%である。上記範囲内であれば、活物質層内への電解液の吸液速度が向上し、活物質層内のイオン伝導性が向上する。また十分なエネルギー密度を確保することができ、サイクル耐久性の向上にもつながる。
【0061】
正極活物質層および後述する負極活物質層中に含まれる成分の配合比は、特に規定していないものについては、限定されるものではなく、これらの配合量(配合比)は、リチウムイオン二次電池についての公知の知見を適宜参照することにより、調整されうる。
【0062】
正極活物質層および後述する負極活物質層の厚さについては、特に制限はなく、電池についての従来公知の知見が適宜参照されうる。一例を挙げると、各活物質層の厚さは、2〜100μm程度である。
【0063】
正極(正極活物質層)は、通常のスラリーを塗布(コーティング)する方法のほか、混練法、スパッタ法、蒸着法、CVD法、PVD法、イオンプレーティング法および溶射法のいずれかの方法によって形成することができる。
【0064】
[負極]
負極は、正極とともにリチウムイオンの授受により電気エネルギーを生み出す機能を有する。負極は、集電体および負極活物質層を必須に含み、集電体の表面に負極活物質層が形成されてなる。
【0065】
(集電体)
負極に用いられうる集電体は、正極に用いられうる集電体と同様であるため、ここでは説明を省略する。
【0066】
(負極活物質層)
負極活物質層は、負極活物質を含む。負極活物質層は、導電助剤、バインダ等の添加剤をさらに含んでもよい。
【0067】
<負極活物質>
負極活物質は、放電時にリチウムイオンを脱離し、充電時にリチウムイオンを吸蔵できる組成を有する。負極活物質は、リチウムを可逆的に吸蔵脱離することができるものであれば特に制限されない。負極活物質の例としては、SiやSnなどの金属、あるいはTiO、Ti
2O
3、TiO
2、もしくはSiO
2、SiO、SnO
2などの金属酸化物、Li
4Ti
5O
12もしくはLi
7MnNなどのリチウムと遷移金属との複合酸化物、Li−Pb系合金、Li−Al系合金、Li、または炭素粉末、グラファイト(天然黒鉛、人造黒鉛)、カーボンブラック、活性炭、カーボンファイバー、コークス、ソフトカーボン、もしくはハードカーボンなどの炭素材料などが好ましく挙げられる。このうち、リチウムと合金化する元素を用いることにより、従来の炭素系材料に比べて高いエネルギー密度を有する高容量および優れた出力特性の電池を得ることが可能となる。上記負極活物質は、単独で使用されてもあるいは2種以上の混合物の形態で使用されてもよい。上記のリチウムと合金化する元素としては、以下に制限されることはないが、具体的には、Si、Ge、Sn、Pb、Al、In、Zn、H、Ca、Sr、Ba、Ru、Rh、Ir、Pd、Pt、Ag、Au、Cd、Hg、Ga、Tl、C、N、Sb、Bi、O、S、Se、Te、Cl等が挙げられる。
【0068】
上記負極活物質のうち、炭素材料、ならびに/またはSi、Ge、Sn、Pb、Al、In、およびZnからなる群より選択される少なくとも1種以上の元素を含むことが好ましく、炭素材料、Si、またはSnの元素を含むことがより好ましく、炭素材料またはSiを用いることが特に好ましい。
【0069】
また、負極活物質は、リチウム、炭素、アルミニウム、スズ、亜鉛、ニッケル、銅、チタン、バナジウムおよびマグネシウムからなる群から選ばれる少なくとも1種の元素を含むシリコン化合物、シリコンを主成分として含有する純シリコン、ならびにホウ素、リン、およびアンチモンからなる群より選択される少なくとも1種のドーパントを含有する半導体シリコンからなる群より選択される少なくとも1種であることが好ましい。
【0070】
前記炭素材料としては、リチウム対比放電電位が低い炭素質粒子が好ましく、例えば、天然黒鉛、人造黒鉛、天然黒鉛と人造黒鉛とのブレンド、天然黒鉛に非晶質炭素をコートした材料、ソフトカーボン、ハードカーボン等を使用し得る。炭素質粒子の形状は、特に制限されず、塊状、球状、繊維状等のいずれの形状であってもよいが、鱗片状ではないことが好ましく、球状、塊状であることが好ましい。鱗片状でないものは、性能および耐久性の観点から好ましい。
【0071】
また、炭素質粒子は、その表面を非晶質炭素で被覆したものが好ましい。その際、非晶質炭素は、炭素質粒子の全表面を被覆していることがより好ましいが、一部の表面のみの被覆であってもよい。炭素質粒子の表面が非晶質炭素で被覆されていることにより、電池の充放電時に、黒鉛と電解液とが反応することを防止できる。黒鉛粒子の表面に非晶質炭素を被覆する方法としては、特に制限はない。例えば、非晶質炭素を溶媒に溶解、または分散させた混合溶液に核となる炭素質粒子(粉末)を分散・混合した後、溶媒を除去する湿式方式が挙げられる。他にも、炭素質粒子と非晶質炭素を固体同士で混合し、その混合物に力学エネルギーを加え非晶質炭素を被覆する乾式方式、CVD法などの気相法等が挙げられる。炭素質粒子が非晶質炭素で被覆されていることは、レーザー分光法などの方法により確認することができる。
【0072】
負極活物質のBET比表面積は、0.8〜1.5m
2/gであることが好ましい。比表面積が前記範囲にあれば、非水電解質二次電池のサイクル特性が向上しうる。また、負極活物質のタップ密度は、0.9〜1.2g/cm
3であることが好ましい。タップ密度が上記範囲であると、エネルギー密度の観点から好ましい。
【0073】
負極活物質の平均粒径は、特に制限されないが、負極活物質の高容量化、反応性、サイクル耐久性の観点からは、1〜100μmであることが好ましく、1〜30μmであることがより好ましい。
【0074】
負極活物質層は、必要に応じて、バインダ、導電助剤、電解質(ポリマーマトリックス、イオン伝導性ポリマー、電解液など)、イオン伝導性を高めるためのリチウム塩などのその他の添加剤をさらに含む。
【0075】
<導電助剤>
負極活物質層に用いられうる導電助剤は、正極活物質層に用いられうる導電助剤と同様である。即ち、導電助剤とは、負極活物質層の導電性を向上させるために配合される添加物をいう。導電助剤としては、アセチレンブラック等のカーボンブラック、グラファイト、炭素繊維などの炭素材料が挙げられる。活物質層が導電助剤を含むと、活物質層の内部における電子ネットワークが効果的に形成され、電池の出力特性の向上に寄与しうる。
【0076】
<バインダ>
負極活物質層に用いられうるバインダは、正極活物質層に用いられうるバインダと同様のものを用いることができる。即ち、活物質層中の構成部材同士または活物質層と集電体とを結着させて電極構造を維持する目的で添加される。負極活物質層に用いられるバインダとしては、特に限定されないが、例えば、以下の材料が挙げられる。ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエーテルニトリル、ポリアクリロニトリル、ポリイミド、ポリアミド、セルロース、カルボキシメチルセルロース(CMC)およびその塩、エチレン−酢酸ビニル共重合体、ポリ塩化ビニル、スチレン・ブタジエンゴム(SBR)、イソプレンゴム、ブタジエンゴム、エチレン・プロピレンゴム、エチレン・プロピレン・ジエン共重合体、スチレン・ブタジエン・スチレンブロック共重合体およびその水素添加物、スチレン・イソプレン・スチレンブロック共重合体およびその水素添加物などの熱可塑性高分子、ポリフッ化ビニリデン(PVdF)、フッ化ビニリデン系共重合体(変性PVdF)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、テトラフルオロエチレン・ヘキサフルオロプロピレン共重合体(FEP)、テトラフルオロエチレン・パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)、エチレン・テトラフルオロエチレン共重合体(ETFE)、ポリクロロトリフルオロエチレン(PCTFE)、エチレン・クロロトリフルオロエチレン共重合体(ECTFE)、ポリフッ化ビニル(PVF)等のフッ素樹脂、ビニリデンフルオライド−ヘキサフルオロプロピレン系フッ素ゴム(VDF−HFP系フッ素ゴム)、ビニリデンフルオライド−ヘキサフルオロプロピレン−テトラフルオロエチレン系フッ素ゴム(VDF−HFP−TFE系フッ素ゴム)、ビニリデンフルオライド−ペンタフルオロプロピレン系フッ素ゴム(VDF−PFP系フッ素ゴム)、ビニリデンフルオライド−ペンタフルオロプロピレン−テトラフルオロエチレン系フッ素ゴム(VDF−PFP−TFE系フッ素ゴム)、ビニリデンフルオライド−パーフルオロメチルビニルエーテル−テトラフルオロエチレン系フッ素ゴム(VDF−PFMVE−TFE系フッ素ゴム)、ビニリデンフルオライド−クロロトリフルオロエチレン系フッ素ゴム(VDF−CTFE系フッ素ゴム)等のビニリデンフルオライド系フッ素ゴム、エポキシ樹脂等が挙げられる。これらのバインダは、単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0077】
負極活物質層中に含まれるバインダの含有量は、活物質を結着することができる量であれば特に限定されるものではないが、好ましくは負極活物質層に対して、0〜30質量%である。より好ましくは0.5〜15質量%であり、さらに好ましくは1〜10質量%であり、よりさらに好ましくは2〜8質量%、特に好ましくは3〜7質量%の範囲である。親水性の変性PVdF等のバインダ(有機溶媒系バインダ)は、その含有量を増加させることによって吸液速度が上がるが、エネルギー密度の観点では不利になる場合がある。また、多すぎるバインダ量は電池の抵抗を増加させてしまう虞がある。よって、負極活物質層中に含まれるバインダ量を上記範囲内とすることにより、活物質を効率よく結着することができ、本実施形態の効果をより一層高めることができる。
【0078】
さらに、負極活物質層は、水系バインダを含んでいてもよい。水系バインダは、原料としての水の調達が容易であることに加え、乾燥時に発生するのは水蒸気であるため、製造ラインへの設備投資が大幅に抑制でき、環境負荷の低減を図ることができるという利点がある。また、活物質を結着する結着力も高く、負極活物質層中のバインダの質量比を低減でき、その分、活物質の質量比を高めることができる。
【0079】
水系バインダとは水を溶媒または分散媒体とするバインダをいい、具体的には熱可塑性樹脂、ゴム弾性を有するポリマー、水溶性高分子など、またはこれらの混合物が該当する。ここで、水を分散媒体とするバインダとは、ラテックスまたはエマルジョンと表現される全てを含み、水と乳化または水に懸濁したポリマーを指し、例えば自己乳化するような系で乳化重合したポリマーラテックス類が挙げられる。
【0080】
水系バインダとしては、具体的にはスチレン系高分子(スチレン−ブタジエンゴム、スチレン−酢酸ビニル共重合体、スチレン−アクリル共重合体等)、アクリロニトリル−ブタジエンゴム、メタクリル酸メチル−ブタジエンゴム、(メタ)アクリル系高分子(ポリエチルアクリレート、ポリエチルメタクリレート、ポリプロピルアクリレート、ポリメチルメタクリレート(メタクリル酸メチルゴム)、ポリプロピルメタクリレート、ポリイソプロピルアクリレート、ポリイソプロピルメタクリレート、ポリブチルアクリレート、ポリブチルメタクリレート、ポリヘキシルアクリレート、ポリヘキシルメタクリレート、ポリエチルヘキシルアクリレート、ポリエチルヘキシルメタクリレート、ポリラウリルアクリレート、ポリラウリルメタクリレート等)、ポリテトラフルオロエチレン、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−プロピレン共重合体、ポリブタジエン、ブチルゴム、フッ素ゴム、ポリエチレンオキシド、ポリエピクロルヒドリン、ポリフォスファゼン、ポリアクリロニトリル、ポリスチレン、エチレン−プロピレン−ジエン共重合体、ポリビニルピリジン、クロロスルホン化ポリエチレン、ポリエステル樹脂、フェノール樹脂、エポキシ樹脂;ポリビニルアルコール(平均重合度は、好適には200〜4000、より好適には、1000〜3000、ケン化度は好適には80モル%以上、より好適には90モル%以上)およびその変性体(エチレン/酢酸ビニル=2/98〜30/70モル比の共重合体の酢酸ビニル単位のうちの1〜80モル%ケン化物、ポリビニルアルコールの1〜50モル%部分アセタール化物等)、デンプンおよびその変性体(酸化デンプン、リン酸エステル化デンプン、カチオン化デンプン等)、セルロース誘導体(カルボキシメチルセルロース、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、およびこれらの塩等)、ポリビニルピロリドン、ポリアクリル酸(塩)、ポリエチレングリコール、(メタ)アクリルアミドおよび/または(メタ)アクリル酸塩の共重合体[(メタ)アクリルアミド重合体、(メタ)アクリルアミド−(メタ)アクリル酸塩共重合体、(メタ)アクリル酸アルキル(炭素数1〜4)エステル−(メタ)アクリル酸塩共重合体など]、スチレン−マレイン酸塩共重合体、ポリアクリルアミドのマンニッヒ変性体、ホルマリン縮合型樹脂(尿素−ホルマリン樹脂、メラミン−ホルマリン樹脂等)、ポリアミドポリアミンもしくはジアルキルアミン−エピクロルヒドリン共重合体、ポリエチレンイミン、カゼイン、大豆蛋白、合成蛋白、並びにマンナンガラクタン誘導体等の水溶性高分子などが挙げられる。これらの水系バインダは1種単独で用いてもよいし、2種以上併用して用いてもよい。
【0081】
上記水系バインダは、結着性の観点から、スチレン−ブタジエンゴム、アクリロニトリル−ブタジエンゴム、メタクリル酸メチル−ブタジエンゴム、およびメタクリル酸メチルゴムからなる群から選択される少なくとも1つのゴム系バインダを含むことが好ましい。さらに、結着性が良好であることから、水系バインダはスチレン−ブタジエンゴム(SBR)を含むことが好ましい。また、本実施形態では、結着性に優れる反面、電解液の含浸が進みにくいSBRを含むバインダを用いた負極を使用する場合でも、上記した正極、負極活物質層の吸液速度の比を適切な範囲(即ち、上記Tc/Ta=0.6〜1.3の範囲)にすることで、含浸が適切に進行する。その結果、初回充電工程での表面皮膜形成が均一に行われ、電池の抵抗が抑制でき、長期サイクル後の維持率も維持、向上できるなど十分な電池性能を発現できる点で特に優れている。
【0082】
水系バインダとしてスチレン−ブタジエンゴムを用いる場合、塗工性向上の観点から、上記水溶性高分子を併用することが好ましい。スチレン−ブタジエンゴムと併用することが好適な水溶性高分子としては、ポリビニルアルコールおよびその変性体、デンプンおよびその変性体、セルロース誘導体(カルボキシメチルセルロース(CMC)、メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、およびこれらの塩等)、ポリビニルピロリドン、ポリアクリル酸(塩)、またはポリエチレングリコールが挙げられる。中でも、バインダとして、スチレン−ブタジエンゴムと、カルボキシメチルセルロースとを組み合わせることが好ましい。スチレン−ブタジエンゴムと、水溶性高分子との含有質量比は、特に制限されるものではないが、スチレン−ブタジエンゴム:水溶性高分子=1:0.2〜2が好ましく、1:0.5〜1であることがより好ましい。上記水溶性高分子は、水系バインダとは別に、増粘剤として分類される場合もある。この場合には、上記スチレン−ブタジエンゴム:水溶性高分子の混合比率は、水系バインダと増粘剤との混合比率と読み替えることができる。
【0083】
水溶性高分子を増粘剤として分類した場合、当該水溶性高分子(CMCなど)の重量平均分子量は、好ましくは5000〜1200000、より好ましくは6000〜1100000、さらに好ましくは7000〜1000000の範囲である。水溶性高分子の重量平均分子量が5000以上であれば、水系スラリーの粘度を適度に保つことができるなど、増粘剤を水に溶解した際に、水系スラリーの粘度を適度に保つことができる。その結果、負極の製造段階で増粘剤として有効に利用することができる点で有利である。水溶性高分子の重量平均分子量が1200000以下であれば、増粘剤を水等の水系溶媒に溶解した際にゲル状態となることなく、水系スラリーの粘度を適度に保つことができる。その結果、負極の製造段階で増粘剤として有効に利用することができる点で有利である。水溶性高分子の重量平均分子量の測定方法としては、例えば、金属−アミン錯体および/または金属−アルカリ錯体を含有する溶媒を移動相溶媒としたゲルパーミュエーションクロマトグラフィーを用いて水溶性高分子の分子量分布の測定を行なうことができる。かかる分子量分布から、水溶性高分子の重量平均分子量の分子量を算出することができる。なお、水溶性高分子の重量平均分子量の測定方法としては、上記方法に何ら制限されるものではなく、従来公知の方法により測定、算出することができる。
【0084】
水溶性高分子を増粘剤として分類した場合、当該水溶性高分子の含有量は、負極活物質層の総量に対して、好ましくは0.1〜10質量%、より好ましくは0.5〜2質量%の範囲である。水溶性高分子の含有量が0.1質量%以上であれば、負極製造過程での増粘効果を十分に発現し、平坦で滑らかな表面の負極活物質層とすることができる。また、得られた負極の初回充電でのガス発生のみならず充放電効率の改善による容量の優れた負極を提供できる。また10質量%以下であれば、優れた増粘効果により水系スラリーの粘度を適当に調整することができ、所望の負極活物質層とすることができる。また、得られた負極の初回充電でのガス発生のみならず充放電効率の改善による容量の優れた負極を提供できる。
【0085】
負極活物質層に用いられるバインダのうち、水系バインダの含有量は80〜100質量%であることが好ましく、90〜100質量%であることがより好ましく、100質量%であることがさらに好ましい。水系バインダ以外のバインダとしては、下記正極活物質層に用いられるバインダ(有機溶媒系バインダ)が挙げられる。
【0086】
負極活物質層中に含まれるバインダ量は、活物質を結着することができる量であれば特に限定されるものではないが、好ましくは負極活物質層に対して、0.5〜15質量%であり、より好ましくは1〜10質量%であり、さらに好ましくは2〜5質量%である。
【0087】
また、水系バインダは結着力が高いことから、有機溶媒系バインダと比較して少量の添加で負極活物質層を形成できる。このことから、負極活物質層中に含まれる水系バインダの含有量は、負極活物質層に対して、好ましくは0.5〜15質量%であり、より好ましくは1〜10質量%であり、さらに好ましくは2〜5質量%である。負極活物質層中に含まれる水系バインダの含有量が上記範囲内であれば、集電体との界面に水系バインダが適量で存在することができる。そのため、上記した摩擦係数の範囲となり、外部より振動が入力されて活物質層がずれた際に凝集破壊を生じさせることなく、最適な密着性、耐剥離性、耐振動性を発現させることができる点で特に優れている。
【0088】
さらに、親水性の変性PVdF等のバインダ(有機溶媒系バインダ)は、その含有量を増加させることによって吸液速度が上がるが、エネルギー密度の観点では不利になる。また、多すぎるバインダ量は電池の抵抗を増加させてしまう。よって、負極活物質層中に含まれる水系バインダ量を上記範囲内とすることにより、活物質を効率よく結着することができ、上記した本発明の効果をより一層向上することができる。即ち、均質な皮膜形成と、エネルギー密度の高さと、良好なサイクル特性をより一層向上することができる。
【0089】
<リチウム塩>
負極活物質層に用いられうるリチウム塩は、正極活物質層に用いられうるリチウム塩と同様である。即ち、電解質塩(リチウム塩)としては、Li(C
2F
5SO
2)
2N、LiPF
6、LiBF
4、LiClO
4、LiAsF
6、LiCF
3SO
3等が挙げられる。
【0090】
<イオン伝導性ポリマー>
負極活物質層に用いられうるイオン伝導性ポリマーは、正極活物質層に用いられうるイオン伝導性ポリマーと同様である。即ち、イオン伝導性ポリマーとしては、例えば、ポリエチレンオキシド(PEO)系およびポリプロピレンオキシド(PPO)系のポリマーが挙げられる。
【0091】
また、負極活物質層の空孔率は好ましくは25〜40%、より好ましくは30〜35%、さらに好ましくは32〜33%である。上記範囲内であれば、活物質層内への電解液の吸液速度が向上し、活物質層内のイオン伝導性が向上する。また十分なエネルギー密度を確保することができ、サイクル耐久性の向上にもつながる。正極および負極活物質層の空孔率は、活物質層の原料の密度と最終製品の活物質層の密度から体積比として求められる値を採用する。例えば、原料の密度をρ、活物質層のかさ密度をρ’とすると、活物質層の空孔率=100×(1−ρ’/ρ)で表される。
【0092】
負極(負極活物質層)も、正極(正極活物質層)と同様に、通常のスラリーを塗布(コーティング)する方法により形成することができる。このほか、混練法、スパッタ法、蒸着法、CVD法、PVD法、イオンプレーティング法および溶射法のいずれかの方法によっても形成することができる。
【0093】
[固体電解質]
本実施形態のリチウムイオン二次電池は、柔粘性結晶を含むイオン伝導性を有する固体電解質を含む。
【0094】
ここで、柔粘性結晶とは、規則的に整列した三次元結晶格子から構成されるが、分子種もしくは分子イオンのレベルでは配向的、回転的な無秩序さが存在する物質として定義される。
【0095】
本発明の一実施形態によれば、前記柔粘性結晶は、テトラメチルアンモニウムカチオン、トリメチルエチルアンモニウムカチオン、ジメチルジエチルアンモニウムカチオン、メチルトリエチルアンモニウムカチオン、およびテトラエチルアンモニウムカチオンからなる群より選択される少なくとも1種のカチオンと、ビスフルオロスルホニルイミド(FSI)アニオンと、からなる柔粘性結晶を含むことが好ましい。これらの柔粘性結晶は、FSIアニオンと炭素鎖数が1〜2となる短いアルキル鎖を有するアンモニウムカチオンとから構成される。これにより、有機カチオンの回転運動性を阻害する回転障壁を低減することができるため、柔粘性結晶としての特性を発揮できる温度域を拡大でき、また高いイオン伝導性を発揮することができる。
【0096】
これらの中でも、前記カチオンがテトラメチルアンモニウムカチオンまたはテトラエチルアンモニウムカチオンであることが好ましい。これにより、アンモニウムカチオンのアルキル鎖の炭素数を揃えることで、さらに特性の性能向上が可能となる。特に、全てをメチル基とすれば、柔粘性結晶の性質を発揮できる温度域を容易に拡張できる。一方、全てをエチル基にすれば、イオン伝導性を向上することが可能となる。
【0097】
また、前記カチオンが、トリメチルエチルアンモニウムカチオン、ジメチルジエチルアンモニウムカチオン、およびメチルトリエチルアンモニウムカチオンからなる群より選択される少なくとも1種であることが好ましい。これらカチオンは、アンモニウムカチオンを構成する4つのアルキル基のうち、少なくとも1つがメチル基である。これにより、有機カチオンの分子形状を球状に近づけることになるので、柔粘性結晶としての特性を発揮することが可能となる。なかでも、前記カチオンがメチルトリエチルアンモニウムカチオンであることが好ましい。これにより、上記のカチオンの中から、より好ましいカチオン分子形状を提供することができる。
【0098】
また、本発明に係る柔粘性結晶は、N、N−ジメチルピロリジニウムカチオンおよびN、N−ジエチルピロリジニウムカチオンの少なくとも一方のカチオンと、ビスフルオロスルホニルイミドアニオンと、からなることが好ましい。このような柔粘性結晶は、ピロリジニウムカチオンに結合するアルキル鎖の炭素数が揃っており、特性に優れた柔粘性結晶を含む電解質を提供することができる。なかでも、前記カチオンがN、N−ジメチルピロリジニウムカチオンであることが好ましい。このカチオンは、短いアルキル鎖を含む形態であり、より望ましい特性を発揮することができる。
【0099】
さらに、前記カチオンがN、N−ジエチルピロリジニウムカチオンであることが好ましい。このカチオンでも、電解質としての優れた特性を発揮することができる。
【0100】
本発明に係る柔粘性結晶は、炭素数1〜3のアルキル基を有するN−アルキル−N−イソプロピルピロリジニウムカチオンと、ビスフルオロスルホニルイミドアニオンと、からなることが好ましい。ピロリジニウムカチオンの含まれるアルキル鎖のうち、少なくとも1つをイソプロピル基とすることで、特性に優れた柔粘性結晶を提供することができる。前記N−アルキル−N−イソプロピルピロリジニウムカチオンは、N−イソプロピル−N−メチルピロリジニウムカチオンであることが好ましい。このカチオンは、メチル基とイソプロピル基との組み合わせであり、より特性に優れた柔粘性結晶を限定できる。
【0101】
これらの柔粘性結晶は、従来の柔粘性結晶よりも広い温度域で柔粘性を示し、イオン伝導性も向上する。FSIアニオンの分子サイズはTFSIアニオンと比べて小さい。TFSIは末端に嵩高いCF
3基を持っており、分子形状の異方性が高い。これに対し、よりコンパクトで球状形状に近いFSIアニオンは、カチオンとの距離も近くなる。このように、より結晶性が向上するとともに分子形状が球状に近くなるため、分子の回転障壁が低く、結晶格子点に配列されながらも高速の分子の回転運動が保持されることから、柔粘性結晶としての特性が幅広い温度域で発現するとともに、分子の回転運動および結晶中の空隙を介して、キャリアーイオンを高速で移動することができる。
【0102】
カチオンの回転運動の障壁を下げるためには、分子形状ができるだけ球状形状に近くなることが好ましい。さらには、回転半径が小さくなることも好ましい。球状形状に近づけるためには、窒素原子に結合する官能基のサイズができるだけ近しいモノが望ましく、同じ官能基である形態であればさらに好ましい。また、回転半径を小さくするためには、窒素原子に結合する官能基のサイズをできるだけ小さく、かつコンパクトにおさめることも好ましい。
【0103】
このように、本発明に係る柔粘性結晶は、結晶という固体形態をとりながら柔粘性を兼ね備えるため、電極と電解質との界面の微細な凹凸に応じた形態に変化でき、電極と電解質との密着した界面形成が可能となる。本発明に係る柔粘性結晶は、広い温度領域で柔粘性結晶としての特性を発揮することができ、かつ高いイオン伝導性を発揮することができる。したがって、本発明に係る柔粘性結晶を含む固体電解質を含む電気化学デバイスは、高いエネルギー容量の保持が可能となり、また高い技術水準で安全性を確保することが可能となる。
【0104】
柔粘性結晶の製造方法は特に制限されないが、例えば、以下の製造方法を挙げることができる。まず、蒸留水にビス(フルオロスルホニル)イミドアニオンを含むアルカリ金属塩を溶解し、アルカリ金属塩溶液を調製する。続いて、ビス(フルオロスルホニル)イミドアニオンを含むアルカリ金属塩と等モル量のハロゲン化した有機カチオンを同様に蒸留水に溶解し、有機カチオン水溶液を調製する。有機カチオン水溶液を攪拌しながら、ビス(フルオロスルホニル)イミドアニオンを含むアルカリ金属塩溶液を少しずつ滴下して徐々に塩交換反応を行っていく。等モル量添加した後、所定時間攪拌することで目的とする柔粘性結晶を含む沈殿物を得る。この沈殿物をろ過回収したのち、きれいな蒸留水で洗浄後、真空乾燥することで、柔粘性結晶を得ることができる。ビス(フルオロスルホニル)イミドアニオンを含むアルカリ金属塩のアルカリ金属としては、Na、K、Li、Csが挙げられるが、好ましくはNa、Kである。ハロゲン化した有機カチオンのハロゲンとしては、F、Cl、Br、Iが挙げられるが、ハンドリングの面からClまたはBrが好ましい。
【0105】
本実施形態の固体電解質は、リチウム塩(支持塩)を含んでもよい。リチウム塩としては、Li(CF
3SO
2)
2N(リチウムビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミド)、Li(FSO
2)
2N(リチウムビス(フルオロスルホニル)イミド)、Li(C
2F
5SO
2)
2N、LiPF
6、LiBF
4、LiAsF
6、LiTaF
6、LiClO
4、LiCF
3SO
3等が挙げられる。なかでも、リチウムビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミドおよびリチウムビス(フルオロスルホニル)イミドの少なくとも一方が好ましい。
【0106】
リチウム塩の添加量は、柔粘性結晶に対して、0.1〜20mol%であることが好ましく、2〜20mol%がより好ましい。この範囲であれば、高いイオン伝導性を発揮することができる固体電解質が提供される。
【0107】
[集電板(タブ)]
リチウムイオン二次電池においては、電池外部に電流を取り出す目的で、集電体に電気的に接続された集電板(タブ)が外装材であるラミネートフィルムの外部に取り出されている。
【0108】
集電板(18、19)を構成する材料は、特に制限されず、リチウムイオン二次電池用の集電板として従来用いられている公知の高導電性材料が用いられうる。集電板の構成材料としては、例えば、アルミニウム、銅、チタン、ニッケル、ステンレス鋼(SUS)、これらの合金等の金属材料が好ましい。軽量、耐食性、高導電性の観点から、より好ましくはアルミニウム、銅であり、特に好ましくはアルミニウムである。なお、正極集電板19と負極集電板18とでは、同一の材料が用いられてもよいし、異なる材料が用いられてもよい。
【0109】
[シール部]
シール部は、直列積層型電池に特有の部材であり、電解質層の漏れを防止する機能を有する。このほかにも、電池内で隣り合う集電体同士が接触したり、積層電極の端部の僅かな不ぞろいなどによる短絡が起こったりするのを防止することもできる。
【0110】
シール部の構成材料としては、特に制限されないが、ポリエチレン、ポリプロピレンなどのポリオレフィン樹脂、エポキシ樹脂、ゴム、ポリイミド等が用いられうる。これらのうち、耐蝕性、耐薬品性、製膜性、経済性などの観点からは、ポリオレフィン樹脂を用いることが好ましい。
【0111】
[正極リードおよび負極リード]
また、図示は省略するが、集電体23と集電板(18、19)との間を正極リードや負極リードを介して電気的に接続してもよい。正極および負極リードの構成材料としては、公知のリチウムイオン二次電池において用いられる材料が同様に採用されうる。なお、外装から取り出された部分は、周辺機器や配線などに接触して漏電したりして製品(例えば、自動車部品、特に電子機器等)に影響を与えないように、耐熱絶縁性の熱収縮チューブなどにより被覆することが好ましい。
【0112】
[電池外装体]
電池外装体22は、その内部に発電要素を封入する部材であり、発電要素を覆うことができる、アルミニウムを含むラミネートフィルムを用いた袋状のケースなどが用いられうる。該ラミネートフィルムとしては、例えば、ポリプロピレン(PP)、アルミニウム、ナイロンをこの順に積層してなる3層構造のラミネートフィルム等を用いることができるが、これらに何ら制限されるものではない。高出力化や冷却性能に優れ、EV、HEV用の大型機器用電池に好適に利用することができるという観点から、ラミネートフィルムが望ましい。また、外部から掛かる発電要素への群圧を容易に調整することができ、電池が大型化できることから、発電要素が積層構造であり、かつ外装体はアルミニウムを含むラミネートフィルムがより好ましい。
【0113】
電池外装体22の内容積は発電要素17を封入できるように、発電要素17の容積よりも大きくなるように構成されている。ここで外装体の内容積とは、外装体で封止した後の真空引きを行う前の外装体内の容積を指す。また、発電要素の容積とは、発電要素が空間的に占める部分の容積であり、発電要素内の空孔部を含む。外装体の内容積が発電要素の容積よりも大きいことで、ガスが発生した際にガスを溜めることができる空間が存在する。これにより、発電要素からのガスの放出性が向上し、発生したガスが電池挙動に影響することが少なく、電池特性が向上する。
【0114】
[組電池]
組電池は、電池を複数個接続して構成した物である。詳しくは少なくとも2つ以上用いて、直列化あるいは並列化あるいはその両方で構成されるものである。直列、並列化することで容量および電圧を自由に調節することが可能になる。
【0115】
電池が複数、直列にまたは並列に接続して装脱着可能な小型の組電池を形成することもできる。そして、この装脱着可能な小型の組電池をさらに複数、直列に又は並列に接続して、高体積エネルギー密度、高体積出力密度が求められる車両駆動用電源や補助電源に適した大容量、大出力を持つ組電池を形成することもできる。何個の電池を接続して組電池を作製するか、また、何段の小型組電池を積層して大容量の組電池を作製するかは、搭載される車両(電気自動車)の電池容量や出力に応じて決めればよい。
【0116】
[車両]
本実施形態の自動車用の高出力(低抵抗)で高容量の非水電解質二次電池は、出力特性に優れ、また長期使用しても放電容量が維持され、サイクル特性が良好である。電気自動車やハイブリッド電気自動車や燃料電池車やハイブリッド燃料電池自動車などの車両用途においては、電気・携帯電子機器用途と比較して、高容量、大型化が求められるとともに、長寿命化が必要となる。したがって、本実施形態の自動車用の高出力(低抵抗)で高容量の非水電解質二次電池は、車両用の電源として、例えば、車両駆動用電源や補助電源に好適に利用することができる。
【0117】
具体的には、本実施形態の電池またはこれらを複数個組み合わせてなる組電池を車両に搭載することができる。本実施形態では、長期信頼性および出力特性に優れた高寿命の電池を構成できることから、こうした電池を搭載するとEV走行距離の長いプラグインハイブリッド電気自動車や、一充電走行距離の長い電気自動車を構成できる。本実施形態の電池またはこれらを複数個組み合わせてなる組電池を、例えば、自動車ならばハイブリット車、燃料電池車、電気自動車(いずれも四輪車(乗用車、トラック、バスなどの商用車、軽自動車など)のほか、二輪車(バイク)や三輪車を含む)に用いることにより高寿命で信頼性の高い自動車となるからである。ただし、用途が自動車に限定されるわけではなく、例えば、他の車両、例えば、電車などの移動体の各種電源であっても適用は可能であるし、無停電電源装置などの載置用電源として利用することも可能である。
【実施例】
【0118】
以下、実施例にて本発明をさらに詳細に説明する。なお、下記の室温は20〜25℃を示す。
【0119】
(実施例1)
[N
1111FSI電解質の合成]
購入したテトラメチルアンモニウムクロライド(以下N
1111Clと表記する)(和光純薬工業株式会社製:3.80g、23.0mmol)をそのまま量りとり、蒸留水(15mL)に加えて、室温にて5分攪拌することで水溶液を調製した。同様にカリウムビス(フルオロスルホニル)イミド(以下KFSIと表記する)(三菱マテリアル電子化成株式会社製:6.04g、27.6mmol)をそのまま量りとり、蒸留水(15mL)に加えて、室温にて5分攪拌することで水溶液を調製した。N
1111Cl溶液を室温で攪拌したまま、KFSI水溶液をゆっくりと滴下した。全量滴下後、室温で24時間攪拌を行った。24時間後、水溶液中で沈殿している粘調物をデカンテーションして固液分離を行った。得られた粘調物は、きれいな蒸留水で洗浄を繰り返し3回行った後、減圧で一晩乾燥を行うことで目的とするN
1111FSI(5.77g、収率81%)を得た。得られた固体物は、無色透明な結晶性固体物の様相を示した。
【0120】
[DSC測定]
電解質試料をアルミパンに約10mg量りとり、示差走査熱量計日立ハイテクDSC7020にセットした。室温からスタートし、上限温度320℃、下限温度−120℃の温度範囲で測定を行った。71℃に相転移に起因する極めて明確な吸熱ピークが観測され、この71℃〜294℃の間で柔粘性結晶相を発現していることを確認した(
図3参照)。
【0121】
(実施例2)
[N
1112FSI電解質の合成]
実施例1のN
1111Clをエチルトリメチルアンモニウムヨーダイド(以下N
1112Iと表記する)(東京化成工業株式会社製)に置き換え、仕込みモル数を37.3mmolに変更した以外は、実施例1の手順に従って電解質合成を行った。得られた粘調物は、ジクロロメタンを用いて抽出を行い、活性炭による脱色を行った。目的とするN
1112FSI(5.31g、収率50%)は、無色透明な結晶性固体物であった。
【0122】
[DSC測定]
実施例1と同様に計測を行った。−53℃、および−22℃に相転移に起因する極めて明確な吸熱ピークが観測され、−22℃〜232℃の間で柔粘性結晶相を発現していることを確認した。
【0123】
(実施例3)
[N
1122FSI電解質の合成]
ジエチルメチルアミン(東京化成工業株式会社製:15.04g、172mmol)をそのまま量りとり、アセトン溶媒(100mL)に室温で溶解させた。ここへ、ヨードメタン(和光純薬工業株式会社製:25g、176mmol)をそのまま量りとり、ジエチルメチルアミンが溶解しているエチルアセテート溶液中に加えた。混合後、室温で1時間混合攪拌した後、エーテルを用いて生成物の洗浄を行うことで、目的とするジエチルジメチルアンモニウムのヨウ化物(以下N
1122Iと表記する)(34.13g、収率86%)を得た。続いて、所定量(8.14g、35.5mmol)を量り取ったN
1122Iを蒸留水(20mL)に溶解させて、室温にて5分攪拌することで水溶液を調製した。同様にKFSI(三菱マテリアル電子化成株式会社製)(9.37g、42.8mmol)をそのまま量りとり、蒸留水(20mL)に加えて、室温にて5分攪拌することで水溶液を調製した。N
1122I水溶液を室温で攪拌したまま、KFSI水溶液をゆっくりと滴下した。全量滴下後、室温で24時間攪拌を行った。24時間後、水溶液中で沈殿している粘調物を、ジクロロメタンを用いて抽出を行い活性炭による脱色を行った。減圧で一晩乾燥を行うことで目的とする無色透明な結晶性固体物N
1122FSI(6.34g、収率63%)を得た。
【0124】
[DSC測定]
実施例1と同様に計測を行った。−82℃、および−32℃に相転移に起因する極めて明確な吸熱ピークが観測され、−32℃〜201℃の間で柔粘性結晶相を発現していることを確認した。
【0125】
(実施例4)
[N
1222FSI電解質の合成]
購入したトリエチルメチルアンモニウムクロライド(以下N
1222Clと表記する)(日本特殊化学工業(株)製151.7g、1.00mol)をそのまま量りとり、イオン交換水(371mL)に加えて、室温にて30分攪拌することでN
1222Clの水溶液を調製した。同様にKFSI(三菱マテリアル電子化成(株)製:219.2g、1.00mol)をそのまま量りとり、予め調製しておいたN
1222Clの水溶液に投入した。下層を分液後、イオン交換水で3回洗浄し、水を留去して目的とするN
1222FSI(266.7g、0.90mol、収率90%)を得た。得られた固体物は、無色透明な結晶性固体物の様相を示した。
【0126】
[DSC測定]
実施例1と同様に計測を行った。−13℃に相転移に起因する極めて明確な吸熱ピークが観測され、この−13℃〜130℃の間で柔粘性結晶相を発現していることを確認した。
【0127】
(実施例5)
[N
2222FSI電解質の合成]
実施例1のN
1111Clをテトラエチルアンモニウムクロライド(以下N
2222Clと表記する)(和光純薬工業株式会社製)に置き換え、仕込みモル数を23.0mmolに変更したこと以外は、実施例1の手順に従って電解質合成を行った。目的とするN
2222FSI(5.77g、収率81%)は、無色透明な結晶性固体物であった。
【0128】
[イオン伝導度測定]
ここで得られた試料をシート状に加圧プレスして得られた電解質シートから、φ15mmとなるように切り出し、ステンレス板で挟み込んで市販の簡易型評価セルの中心部にセットした。密閉式セル中において交流インピーダンス法によりイオン伝導度を測定し、固体状態でイオン伝導性を示すことを確認した(
図4参照)。
【0129】
(実施例6)
[P
11FSI電解質の合成]
購入したN−メチルピロリジン(Aldrich:6.24g、73.3mmol)をそのまま量りとり、エチルアセテート溶媒(200mL)に室温で溶解させた。ここへ、ヨードメタン(和光純薬工業株式会社製:25g、176mmol)をそのまま量りとり、N−メチルピロリジンが溶解しているエチルアセテート溶液中に加えた。混合後、室温で24時間混合攪拌した後、エーテルを用いて生成物の洗浄を行うことで、目的とするN,N−ジメチルピロリジニウムのヨウ化物(以下P
11Iと表記する)(13.4g、収率81%)を得た。続いて、所定量(11.6g、51.1mmol)を量り取ったP
11Iを蒸留水(25mL)に溶解させて、室温にて5分攪拌することで水溶液を調製した。同様にKFSI(三菱マテリアル電子化成株式会社製)(13.4g、61.3mmol)をそのまま量りとり、蒸留水(25mL)に加えて、室温にて30分攪拌することで水溶液を調製した。P
11I水溶液を室温で攪拌したまま、KFSI水溶液をゆっくりと滴下した。全量滴下後、室温で24時間攪拌を行った。24時間後、水溶液中で沈殿している粘調物をデカンテーションして固液分離を行った。得られた粘調物は、きれいな蒸留水で洗浄を繰り返し3回行った後、減圧で一晩乾燥を行うことで目的とする無色透明な結晶性固体物P
11FSI(10.6g、収率74%)を得た。
【0130】
[DSC測定]
実施例1と同様に計測を行った。−43℃、および−24℃に相転移に起因する極めて明確な吸熱ピークが観測され、この−24℃〜300℃と幅広い温度領域で柔粘性結晶相を発現していることを確認した(
図3参照)。
【0131】
(実施例7)
[P
22FSI電解質の合成]
実施例6のN−メチルピロリジンをN−エチルピロリジン(Aldrich:9.74g、98.3mmol)に、実施例6のヨードメタンをヨードエタン(和光純薬:17.0g、109mmol)に変更したこと以外は、実施例6の手順に従って電解質合成を行った。目的とする無色透明な結晶性固体物P
22FSI(11.0g、収率91%)を得た。
図11に試作した結晶性固体物の外観を示す。
【0132】
[DSC測定]
実施例1と同様に計測を行った。−38℃に相転移に起因する極めて明確な吸熱ピークが観測され、この−38℃〜119℃といった温度領域で柔粘性結晶相を発現していることを確認した(
図3参照)。
【0133】
[イオン伝導度測定]
実施例5と同様な手法でイオン伝導性を確認した。密閉式セル中において交流インピーダンス法によりイオン伝導度を測定し、固体状態でイオン伝導性を示すことを確認した(
図4参照)。
【0134】
(実施例8)
[P
13iFSI電解質の合成]
購入した2−ブロモプロパン(東京化成工業株式会社製:135.3g、1.10mol)をそのまま量りとり、アセトニトリル(140mL)に室温で溶解させ60℃に加熱した。ここへ、N−メチルピロリジン(東京化成工業株式会社製:85.2g、1.00mol)をそのまま量りとり、2−ブロモプロパンが溶解しているアセトニトリル中に65℃〜70℃で4時間かけて滴下した。全量滴下後65℃〜70℃で24時間攪拌した後、アセトニトリルおよび過剰の2−ブロモプロパンを留去することで、目的とするN−イソプロピル−N−メチルピロリジニウムの臭化物(以下P
13iBrと表記する)(208.2g、1.00mol、収率100%)を得た。続いて、P
13iBr(208.2g、1.00mol)をイオン交換水(427mL)に溶解させて、室温にて30分攪拌することでP
13iBrの水溶液を調製した。同様にKFSI(三菱マテリアル電子化成(株)製)(219.2g、1.00mol)をそのまま量りとり、予め調製したP
13iBrの水溶液に投入した。下層を分液後、高純度のイオン交換水で洗浄を3回繰り返し行った後、減圧で一晩乾燥を行うことで目的とするP
13iFSI(286.8g、0.93mol、収率93%)を得た。得られた固体物は、無色透明な結晶性固体物の様相を示した。
【0135】
[DSC測定]
実施例1と同様に計測を行った。−32℃、−29℃、および8.5℃に相転移に起因する極めて明確な吸熱ピークが観測され、この8.5℃〜188℃といった温度領域で柔粘性結晶相を発現していることを確認した。
【0136】
[イオン伝導度測定]
実施例5と同様な手法でイオン伝導性を確認した。密閉式セル中において交流インピーダンス法によりイオン伝導度を測定し、固体状態でイオン伝導性を示すことを確認した。
【0137】
(比較例1)
H. Matsumoto, N. Terasawa, T. Umecky, S. Tsuzuki, H. Sakaebe, K. Asaka, K. Tatsumi, Chem. Lett., Vol.37, 2008, p1020、にてN
1113FSIの物性が報告されている。当該文献では、融点が42℃となる結晶性固体が得られることが報告されており、柔粘性結晶は得られなかった。
【0138】
(比較例2)
A. Tagiuri, K. Z. Sumon, A. Henni, K. Zanganeh, A. Shafeen, Fluid Phase Equilibria, Vol.375, 2014, p324、にてN
1223FSIの物性が報告されている。当該文献によると、N
1223FSIは、イオン液体の状態を呈していた。
【0139】
(比較例3)
M. Ishikawa, T. Sugimoto, M. Kikuta, E. Ishiko, M. Kono, J. Power Sources, Vol.162, 2006, p658、にてP
13FSIの物性が報告されている。当該文献によると、P
13FSIはイオン液体の状態を呈し、その融点は−18℃を示した。
【0140】
(比較例4)
D. R. MacFarlane, J. Sun, J. Golding, P. Meakin, M. Forsyth, Electrochim. Acta, Vol.45, 2000, p1271、にてN
1111TFSIの物性が報告されている。当該文献によると、N
1111TFSIは固相間転移を示さない結晶で、その融点は133℃を示した。
【0141】
(比較例5)
D. R. MacFarlane, J. Sun, J. Golding, P. Meakin, M. Forsyth, Electrochim. Acta, Vol.45, 2000, p1271、にてN
1112TFSIの物性が報告されている。当該文献によると、N
1112TFSIも固相間転移を示さない結晶で、その融点は109℃を示した。
【0142】
(比較例6)
D. R. MacFarlane, J. Sun, J. Golding, P. Meakin, M. Forsyth, Electrochim. Acta, Vol.45, 2000, p1271、にてN
1122TFSIの物性が報告されている。当該文献によると、N
1122TFSIも固相間転移を示さない結晶で、その融点は96℃を示した。
【0143】
(比較例7)
D. R. MacFarlane, J. Sun, J. Golding, P. Meakin, M. Forsyth, Electrochim. Acta, Vol.45, 2000, p1271、にてN
2222TFSIの物性が報告されている。N
2222TFSIも固相間転移を示さない結晶で、その融点は109℃を示した。
【0144】
(比較例8)
上記非特許文献1、およびJ. Huang, A. Hill, M. Forsyth, D. R. MacFarlane, A. Hollenkamp, Solid State Ionics, Vol.177, 2006, p2569、にてP
11TFSIの物性が報告されている。J. Huangらの文献によると、P
11TFSIは、−41℃、−19℃、26℃、および80℃に相転移を示し、26°〜137℃の温度領域で柔粘性結晶相を発現した。
【0145】
比較例8の柔粘性結晶相の発現温度領域は、実施例より温度領域が狭くなっていることが確認された(イオン伝導性は
図5参照)。
【0146】
(比較例9)
上記非特許文献1、およびJ. Huang, A. Hill, M. Forsyth, D. R. MacFarlane, A. Hollenkamp, Solid State Ionics, Vol.177, 2006, p2569、にてP
12TFSIの物性が報告されている。J. Huangらの文献によると、P
12TFSIは、−89℃、および20℃で相転移を示し、20°〜89℃の温度領域で柔粘性結晶相を発現した。
【0147】
比較例9の柔粘性結晶相の発現温度領域は、実施例より温度領域が狭くなっていることが確認された(DSCは
図3参照、イオン伝導性は
図4参照)。
【0148】
(比較例10)
上記特許文献1にてN
1223CF
3BF
3の物性が報告されている。特許文献1によればN
1223CF
3BF
3は−30℃で相転移を示し、−30°〜80℃の領域で柔粘性結晶相を発現した。
【0149】
比較例10の柔粘性結晶相の発現温度領域は、実施例より温度領域が狭くなっていることが確認された(イオン伝導性は
図5参照)。
【0150】
(比較例11)
上記特許文献2にてLi{TFSI}{C
6H
2F
2(OCH
3)
2}
2に関する物性が報告されている。Li{TFSI}{C
6H
2F
2(OCH
3)
2}
2のイオン伝導性を
図5に示す。
【0151】
(実施例9)
[支持塩の添加]
以下の作業は、アルゴンガス雰囲気下のグローブボックス内で操作を行った。
【0152】
実施例6で得られたP
22FSI(1.0g、3.57mmol)を量りとった。ここへ2 mol%濃度となるリチウムビス(フルオロスルホニル)イミド(以下、LiFSIと表記する)(三菱マテリアル電子化成株式会社製)を量りとり、ジクロロメタン(0.6971g)を加え、室温にて10分間攪拌にて溶解させた。これにより、P
22FSI+2mol%LiFSIのジクロロメタン溶液を得た。
【0153】
[イオン伝導度測定]
実施例5と同様な手法でイオン伝導性を確認した。ここで得られた試料を50μmのガラスペーパーにキャストし、4時間減圧乾燥を行うことにより溶媒を留去した。密閉式セル中において交流インピーダンス法によりイオン伝導度を測定し、固体状態でイオン伝導性を示すことを確認した(
図6参照)。
【0154】
(実施例10)
[支持塩添加]
実施例9で示したLiFSIの添加濃度を2mol%から0.1mol%に変更したこと以外は、実施例9の手順に従ってP
22FSI+0.1mol%LiFSIのジクロロメタン溶液を得た。
【0155】
[イオン伝導度測定]
実施例9と同様の方法でイオン伝導性を確認した。密閉式セル中において交流インピーダンス法によりイオン伝導度を測定し、固体状態でイオン伝導性を示すことを確認した(
図6参照)。
【0156】
(実施例11)
[支持塩添加]
実施例9で示したLiFSIの添加濃度を2mol%から10mol%に変更したこと以外は、実施例9の手順に従ってP
22FSI+10mol%LiFSIのジクロロメタン溶液を得た。
【0157】
[イオン伝導度測定]
実施例9と同様の方法でイオン伝導性を確認した。密閉式セル中において交流インピーダンス法によりイオン伝導度を測定し、固体状態でイオン伝導性を示すことを確認した(
図6参照)。
【0158】
(実施例12)
[支持塩添加]
実施例9で示したLiFSIの添加濃度を2mol%から20mol%に変更したこと以外は、実施例9の手順に従ってP
22FSI+20mol%LiFSIのジクロロメタン溶液を得た。
【0159】
[イオン伝導度測定]
実施例9と同様の方法でイオン伝導性を確認した。密閉式セル中において交流インピーダンス法によりイオン伝導度を測定し、固体状態でイオン伝導性を示すことを確認した(
図6参照)。
【0160】
(実施例13)
[支持塩添加]
実施例9で示したLiFSIをリチウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド(以下LiTFSIと表記する)(三菱マテリアル電子化成(株)製)に変更したこと以外は、実施例9の手順に従ってP
22FSI+2mol%LiTFSIのジクロロメタン溶液を得た。
【0161】
[イオン伝導度測定]
実施例9と同様の方法でイオン伝導性を確認した。密閉式セル中において交流インピーダンス法によりイオン伝導度を測定し、固体状態でイオン伝導性を示すことを確認した(
図6参照)。
【0162】
(実施例14)
[支持塩添加]
実施例13で示したLiTFSIの添加濃度を2mol%から10mol%に変更したこと以外は、実施例9の手順に従ってP
22FSI+10mol%LiTFSIのジクロロメタン溶液を得た。
【0163】
[イオン伝導度測定]
実施例9と同様の方法でイオン伝導性を確認した。密閉式セル中において交流インピーダンス法によりイオン伝導度を測定し、固体状態でイオン伝導性を示すことを確認した(実施例6参照)。実施例9〜14の測定結果を実施例7で得られた測定結果を基準に整理した結果を
図6にまとめた。
【0164】
(比較例12)
上記非特許文献1にてP
11TFSIへ2.65mol%のLiTFSIを添加した系の物性が報告されている。このイオン伝導挙動を
図5に示した。
【0165】
(実施例15)
[正極電極の作動確認]
実施例11で得られたP
22FSI+10mol%LiFSIを電解質として用いて、正極電極での作動確認を以下の手順で行った。
【0166】
正極電極材として、リン酸鉄リチウム(以下、LFPと表記する)を選んだ。LFPは予め120℃にて一晩減圧乾燥したものを量りとり(2.25g)、ここに導電助剤としてアセチレンブラック(0.25g)、溶媒としてテトラヒドロフラン(以下、THFと表記する)を5mLと、20質量%濃度に調整した、P
22FSI+10mol%LiFSIを含有するTHF溶液を電解質質量として1.53gとなるように添加した。この混合物を自転公転ミキサーで混合攪拌することで、電極スラリーを作製した。
【0167】
得られた電極スラリーをAl箔上に塗布し、バーコーターを用いて電極塗布を行い、プレスすることで正極電極を得た。
図7に試作した電極の外観を示す。
【0168】
この電極から、φ15mmに電極を打ち抜き、別途電解質を含浸させた多孔質ガラスフィルム(200μm)をセパレータとして挟み込み、対極にLi箔を用いて、コインセルに組み込んだ。100mAの電流値にて、2.5−3.9Vの電位範囲で、CCモードで充放電を行った。
【0169】
図8に得られた初回充放電カーブを示す。
【0170】
放電容量を100%として規格化したところ、放電量に対して20%の容量であるが充電をおこなうことが確認された。電極試作に対して、検討の余地が多く残されてはいるが、この固体電解質を用いたハーフセル電池において、正極材料は充放電を行うことが確認できた。
【0171】
特に、今回の電極仕様はバインダを使用しないで電極が形成できており、この固体電解質は、バインダの機能も兼用できることも確認できた。
【0172】
(実施例16)
[負極電極の作動確認]
実施例11で得られたP
22FSI+10mol%LiFSIを電解質として用いて、負極電極での作動確認を以下の手順で行った。
【0173】
負極電極は、Ni箔(20μm厚み)の上にスパッタ成膜法にて100nm厚みのSiのアモルファス層を形成した電極シートを形成した。(□100mm×100mm)。
【0174】
この電極から、φ15mmに電極を打ち抜き、別途電解質を含浸させた多孔質ガラスフィルム(200μm)をセパレータとして挟み込み、対極にLi箔を用いて、コインセルに組み込んだ。0.5Cの電流値にて、5mV−2.0Vの電位範囲で、CCモードで充放電を行った。
【0175】
図9に得られた初回充放電カーブを示す。
【0176】
充電容量(Si電極へのLiドープ過程)を100%として規格化したところ、充電量に対して約10%の容量であるが放電(Si電極からのLi脱ドープ過程)をおこなうことが確認された。電極試作に対して、検討の余地が多く残されてはいるが、この固体電解質を用いたハーフセル電池において、負極材料は充放電を行うことが確認できた。
【0177】
(実施例17)
[フルセル評価]
市販のNMC電極(正極)、グラファイト電極(負極)を用いて電池試作を以下の手順で行った。φ15mmに正極、負極の両電極を打ち抜き、別途電解質を含浸させた多孔質ガラスフィルム(200μm)をセパレータとして挟み込み、対極Li箔を用いて、市販の組み立て式セルにて正極、負極のハーフセルを作製した。それぞれの電極で10サイクル充放電を行った後、それぞれの組み立て式セルを解体し、正極、負極を回収した。回収したセルを用いて、電解質を含浸させた多孔質ガラスフィルム(200μm)をセパレータとして挟み込み、再度コインセル内に組み込んで電池試作を行った。
得られた電池の充放電試験結果を
図10に示す。本発明の固体電解質を用いて、正極−負極間で充放電を行うことが確認できた。
【0178】
【表1】
【0179】
【表2】