【実施例1】
【0011】
まず、本発明の実施例1の原理について説明する。
図1(a)は誘導結合型プラズマ(Induced Coupled Plasma:ICP)エッチングを示す図である。
図1(a)に示すように、プラズマエッチング装置20はチャンバー22、ステージ24、高周波電源25、キャパシタ26およびコイル28を備える。ステージ24は、チャンバー22内であって、コイル28と対向する位置に設けられている。ステージ24はキャパシタ26を介して高周波電源25に接続されている。ウェーハ10は、チャンバー22内のステージ24上に配置される。ウェーハ10は、例えば窒化物半導体層などの半導体層を含む。ウェーハ10は、
図4(a)および
図4(b)で後述する不活性化処理の実行後のものである。
【0012】
図1(b)は実施例1に係るウェーハ10を示す断面図である。
図1(b)に示すように、ウェーハ10は、活性領域12および不活性領域14を含む。
図1(b)に示すように、ウェーハ10のうち、半導体チップとなる領域(第1領域16)およびスクライブラインとなる領域(第2領域18)、および端部19において、ウェーハ10の下面から上面にかけて活性領域12が形成されている。第2領域18の活性領域と端部19の活性領域とは連続している。ウェーハ10のうち一部の領域の上面側に不活性領域14が形成されている。金属層30が、ウェーハ10の下面から上面の端部にかけて設けられている。金属層30は、活性領域12の上面、側面および下面に接触している。また、ウェーハ10の上面には、窒化シリコン(SiN)膜などの絶縁膜44が設けられ、絶縁膜44上にはレジスト46が設けられている。レジスト46は第1領域16上に開口部46aを有し、第2領域18上に開口部46bを有する。
【0013】
図1(c)は比較例に係るウェーハ10Rを示す断面図である。ウェーハ10Rにおいては、第2領域18および端部19の上面側は不活性領域14である。また、金属層30はウェーハ10Rに設けられていない。
【0014】
図1(a)に示したプラズマエッチング装置20を用いてプラズマエッチング処理を行う。チャンバー22内には例えばSF
6ガスなどのエッチングガスが導入される。チャンバー22内の圧力は例えば0.1〜5Paである。コイル28に電流を流すことで発生する電界および磁界により、SF
6ガスがプラズマ化する。高周波電源25のバイアスパワーは例えば10Wである。
図1(b)および
図1(c)に破線の矢印で示すように、イオンおよびラジカルをウェーハ10および10Rに衝突させることで、絶縁膜44のエッチングを行う。絶縁膜44を除去することにより、ウェーハ10および10Rの上面が露出する。
【0015】
図1(b)および
図1(c)に示すように、プラズマエッチングが行われることで、絶縁膜44およびレジスト46の表面に正の電荷(チャージ)が蓄積する、いわゆるチャージアップが起こる。
【0016】
図1(c)に示した比較例では、チャージアップにより、プラズマとウェーハ10Rとの間に電位差が生じ、電位差によって誘発されるプラズマからの電流がウェーハに流れる。
図1(c)中に実線の矢印で示すように、チャージが第1領域16の活性領域12に集中するため、第1領域16の活性領域12に大きな電流A1が流れる。電流A1が流れることにより第1領域16の活性領域12にダメージが発生する。この結果、ウェーハ10Rに形成される電界効果トランジスタ(Field Effect Transistor:FET)などの半導体装置が劣化する。活性領域12のうちゲート電極直下のチャネル層などの半導体層(ゲート領域)にダメージが生じると、FETを駆動させた際のゲートリーク電流が増大する。また、プラズマエッチング工程などにおいてアーキングが発生し、ウェーハ10Rに形成されたキャパシタなどの受動素子またはFETなどが破損することもある。ウェーハ10Rに含まれる絶縁基板、およびGaNなどの窒化物半導体は高抵抗であるため、チャージはウェーハ10Rの表面に集中しやすく、特にウェーハの中心にたまりやすい。したがって、チャージアップに起因するダメージが発生しやすい。
【0017】
一方、
図1(b)に示した実施例1では、プラズマエッチングにより、第1領域16および第2領域18の活性領域12が露出する。このため、実施例1において露出する活性領域12の面積が比較例よりも大きくなる。したがって、
図1(b)中に実線の矢印で示すように、チャージが第1領域16および第2領域18両方の活性領域12に分散する。また、金属層30は活性領域12の下面、側面および上面に接触する。このため、チャージは、第2領域18および端部19の活性領域12を通じて金属層30に流れ込み、さらにウェーハ10の下面に流れる。
【0018】
これにより、ウェーハ10上面のチャージが除去される。この結果、ウェーハ10に流れる電流A1は、比較例より小さくなる。したがって、第1領域16の活性領域12のダメージが抑制される。活性領域12のゲート領域のダメージが抑制されることにより、FETを駆動させた際のリーク電流も低減する。また、アーキングも抑制される。後述の
図5(a)に示すように、第2領域18の活性領域は第2領域18の延在方向に延在する。また
図1(b)に示すように、活性領域12はウェーハ10の端部19において金属層30と接触している。このため、ウェーハ10の中央部のチャージが、第2領域18および端部19の活性領域12を通じて、金属層30に流れる。この結果、ウェーハ10の中央部におけるチャージの集中が抑制され、チャージアップによるダメージが抑制される。また、ウェーハ10全体がほぼ同一電位となるため、プラズマエッチングのエッチングレートがほぼ一定となる。この結果、安定したエッチングが可能となる。
【0019】
次に、ウェーハ10の層構造について説明する。
図2(a)はウェーハ10を例示する平面図である。
図2(b)はウェーハ10を例示する断面図である。
図2(b)に示すように、ウェーハ10においては、下から基板32、チャネル層34、電子供給層36およびキャップ層38が積層されている。電子供給層36はチャネル層34の上面に接触している。基板32とチャネル層34との間にバッファ層が設けられていてもよい。
【0020】
基板32は例えばSiC(炭化シリコン)、Si(シリコン)またはサファイアなどにより形成されている。チャネル層34、電子供給層36、及びキャップ層38は、例えばエピタキシャル成長された窒化物半導体層である。チャネル層34は例えばi−GaN(ノンドープの窒化ガリウム)により形成されている。電子供給層36は、例えばAlGaN(窒化アルミニウムガリウム)により形成されている。キャップ層38は例えばGaNにより形成されている。
【0021】
次に、実施例1に係る半導体装置の製造方法について、詳しく説明する。
図3(a)はウェーハ10を例示する平面図である。
図3(b)は
図3(a)の線B−Bに沿った断面図である。
図3(a)および
図3(b)に示すように、蒸着法(真空蒸着法)またはスパッタリング法などにより、ウェーハ10の下面に向かって原料を照射することで、ウェーハ10に金属層30を形成する。蒸着法またはスパッタリング法などによれば、照射された原料は、
図3(a)に示すように、ウェーハ10の下面のみならず、側面および上面の端部にまで連続して延在し、金属層30はウェーハ10を囲む。
図3(b)に示すように、金属層30はウェーハ10の下面、側面、および上面の端部に接触する。金属層30は例えばウェーハ10に近い方からチタン/タングステン(Ti/W)を積層した膜であり、200nmの厚さを有する。
【0022】
図4(a)は第1領域16を例示する断面図である。
図4(b)は第2領域18を例示する断面図である。
図4(a)に示すように第1領域16における活性領域を活性領域12aと記載し、
図4(b)に示すように第2領域18における活性領域を活性領域12bと記載することがある。
図4(a)および
図4(b)に示すように、ウェーハ10の上面にレジスト40を形成する。
図4(a)に示すように、第1領域16の中央部はレジスト40に覆われ、周縁部はレジスト40から露出する。
図4(b)に示すように、第2領域18の中央部はレジスト40に覆われ、周縁部はレジスト40から露出する。レジスト40を形成した後、例えば加速電圧30〜120keV、ドーズ量1〜5×10
12/cm
2で、アルゴン(Ar)イオンを注入することにより、ウェーハ10のレジスト40から露出した領域を不活性化する。
図4(a)および
図4(b)に示すように、キャップ層38、電子供給層36、およびチャネル層34の上側の一部が不活性領域14となる。第1領域16の中央部および第2領域18の中央部は不活性化されず、活性領域12aが残存する。スクライブラインの幅方向において第2領域18の中央部が活性領域12b、端部が不活性領域14となる。不活性化処理の後、レジスト40を除去する。
【0023】
図5(a)はウェーハ10を例示する平面図である。
図5(b)はウェーハ10の端部付近を拡大した平面図である。
図5(c)は
図5(b)の線C−Cに沿った断面図である。
図6はウェーハ10のうち1つの半導体チップとなる部分を拡大した平面図である。
図5(a)、
図5(b)および
図6に示すように、第1領域16の活性領域12aは不活性領域14に囲まれる。不活性領域14は第2領域18の活性領域12bに囲まれる。
図5(a)から
図5(c)に示すように、複数の活性領域12aの間は、活性領域12bおよび不活性領域14により分離される。また、
図5(c)に示すように、ウェーハ10の端部19は金属層30に覆われているため、Arイオンから保護され、不活性化されない。したがって、ウェーハ10の端部に活性領域12(活性領域12cとする)が残存し、金属層30と接触する。また
図5(b)に示すように活性領域12bは第2領域18の延在方向に延在しており、
図5(c)に示すように端部19の活性領域12cと連続し、電気的に接続されている。
【0024】
図7(a)は第1領域16を例示する断面図である。
図7(b)は第2領域18を例示する断面図である。
図7(a)に示すように、例えば蒸着・リフトオフ法により、第1領域16のキャップ層38の上面に、例えば2つのオーミック電極42を形成する。その後、例えば600℃で熱処理を行うことで、活性領域12aとオーミック電極42との間でオーミック接触を形成する。2つのオーミック電極42のうち一方はソース電極、他方はドレイン電極として機能する。オーミック電極42は、例えばキャップ層に近い方から順にタンタル/アルミニウム/タンタル(Ta/Al/Ta)などの金属を積層した、厚さ300〜500nmの電極である。
図7(b)に示すように、オーミック電極42は第2領域18には形成されない。
【0025】
図8(a)は第1領域16を例示する断面図である。
図8(b)は第2領域18を例示する断面図である。
図8(a)および
図8(b)に示すように、例えばプラズマCVD(Chemical Vapor Deposition)法または原子層堆積(Atomic Layer Deposition:ALD)法などにより、ウェーハ10の上面に絶縁膜44を形成する。絶縁膜44は、例えば厚さ50〜100nmのSiNなどの絶縁体により形成されている。
【0026】
図9(a)は第1領域16を例示する断面図である。
図9(b)は第2領域18を例示する断面図である。
図9(a)および
図9(b)に示すように、絶縁膜44の上にレジスト46を形成する。
図9(a)に示すように、レジスト46は第1領域16のキャップ層38の上に開口部46aを有する。
図9(b)に示すように、レジスト46は第2領域18のキャップ層38の上に開口部46bを有する。開口部46aおよび46bからは絶縁膜44が露出する。
【0027】
図10(a)は第1領域16を例示する断面図であり、
図11の線D−Dに沿った断面図である。
図10(b)は第2領域18を例示する断面図である。
図11はウェーハ10のうち1つの半導体チップとなる部分を拡大した平面図である。
図10(a)、
図10(b)および
図11に示すように、レジスト46の開口部46aおよび46bから露出する絶縁膜44を、プラズマエッチングにより除去する。
図10(a)および
図11に示すように、プラズマエッチングにより、絶縁膜44に開口部44aが形成される。開口部44aはゲート窓であり、活性領域12aの一部(ゲート領域)が開口部44aから露出する。
図10(b)および
図11に示すように、プラズマエッチングにより、絶縁膜44に開口部44bが形成され、活性領域12bが開口部44bから露出する。また
図11に示すように、ソースパッドおよびドレインパッドの設けられる領域には開口部44cが形成される。なお、開口部44cは設けなくてもよい。プラズマエッチングには、例えば
図1(a)に示したプラズマエッチング装置20を用いる。プラズマエッチングは例えばエッチングガスにSF
6ガス、圧力0.1〜5Pa、バイアスパワー10Wの条件で実施する。金属層30はプラズマエッチング装置20の接地電位に接続する。プラズマエッチングの後、レジスト46を除去する。
【0028】
プラズマエッチングにより、ウェーハ10の表面がチャージアップする。
図1(b)において説明したように、チャージは第1領域16および第2領域18の活性領域12に分散する。第2領域18の活性領域12bはウェーハ10の端部まで延在し、端部19の活性領域12cと連続している。金属層30はウェーハ10の端部において活性領域12cと接触している。ウェーハ10の下面の金属層30はプラズマエッチング装置20の接地電位に接続されるため、チャージは第2領域18を通じて金属層30に流れ、ウェーハ10の裏面側に流れ込む。したがって、チャージはウェーハ10の上面から除去される。この結果、チャージアップに起因する第1領域16の活性領域12aのダメージが抑制される。第1領域16の活性領域12aのうちゲート電極の直下となるチャネル層34など半導体層のダメージが抑制されるため、リーク電流が低減する。
【0029】
ウェーハ10の基板32が例えばSiCまたはサファイアなどにより形成された絶縁基板の場合、ウェーハ10の表面はチャージアップしやすい。また、ウェーハ10に含まれる半導体がGaNのような窒化物半導体の場合、ウェーハ10の表面はチャージアップしやすい。実施例1によれば、ウェーハ10が絶縁基板および窒化物半導体を含んでいる場合でも、チャージを除去することができる。この結果、チャージアップに起因するダメージを抑制することができる。
【0030】
図12(a)は第1領域16を例示する断面図である。
図12(b)は第2領域18を例示する断面図である。
図12(a)に示すように、例えば蒸着・リフトオフ法により、プラズマエッチングにより露出した第1領域16のキャップ層38の上面に、ゲート電極48を形成する。ゲート電極48は、キャップ層38に近い方から順にニッケル/パラジウム/金(Ni/Pd/Au)を積層して形成されており、厚さは例えば300〜600nmである。
図12(b)に示すように、ゲート電極48は、第2領域18には形成されない。
【0031】
図13(a)は第1領域16を例示する断面図である。
図13(b)は第2領域18を例示する断面図である。
図13(a)および
図13(b)に示すように、例えばプラズマCVD法またはALD法などにより、絶縁膜50を形成する。
図13(a)に示すように、絶縁膜50は絶縁膜44およびゲート電極48を覆う。
図13(b)に示すように、絶縁膜50は第2領域18におけるキャップ層38を覆う。絶縁膜50は、例えば厚さ50〜400nmのSiNなどの絶縁体により形成されている。
【0032】
図14(a)は第1領域16を例示する断面図である。
図14(b)は第2領域18を例示する断面図である。
図14(a)および
図14(b)に示すように、絶縁膜50の上にレジスト52を形成する。
図14(a)に示すように、レジスト52は第1領域16において、オーミック電極42の上に開口部52aを有する。
図14(b)に示すように、レジスト52は第2領域18の絶縁膜50の上に開口部52bを有する。開口部52aおよび52bからは絶縁膜50が露出する。
【0033】
図15(a)は第1領域16を例示する断面図であり、
図16の線E−Eに沿った断面図である。
図15(b)は第2領域18を例示する断面図である。
図16はウェーハ10のうち1つの半導体チップとなる部分を拡大した平面図である。
図15(a)、
図15(b)および
図16に示すように、プラズマエッチングを行い、レジスト52の開口部52aおよび52bから露出する絶縁膜50を除去する。
図15(a)および
図16に示すように、プラズマエッチングにより、絶縁膜44および50に開口部51が形成され、オーミック電極42の表面が開口部51から露出する。
図15(b)および
図16に示すように、プラズマエッチングにより、絶縁膜44および50に開口部53が形成され、活性領域12bが開口部53から露出する。また
図16に示すように、ゲートパッド、ソースパッドおよびドレインパッドの設けられる領域には開口部55が形成される。プラズマエッチングには、例えば
図1(a)に示したプラズマエッチング装置20を用いる。プラズマエッチングは例えばエッチングガスにSF
6ガス、圧力0.1〜5Pa、バイアスパワー10Wの条件で実施する。
【0034】
プラズマエッチングにより、ウェーハ10の表面がチャージアップする。
図1(b)において説明したものと同様の原理により、チャージは第1領域16および第2領域18の活性領域に分散し、第2領域18を通じて金属層30に流れ、ウェーハ10の裏面側に流れ込む。したがって、チャージはウェーハ10の上面から除去される。この結果、チャージアップに起因するウェーハ10のダメージが抑制される。
【0035】
図17(a)は第1領域16を例示する断面図である。
図17(b)は第2領域18を例示する断面図である。
図17(a)に示すように、例えば電解メッキ法により、オーミック電極42の上面に配線層54を形成する。具体的には、オーミック電極42および絶縁膜50の上にシードメタル(不図示)を設け、シードメタルに電流を流すことで、配線層54を形成する。配線層54は例えば厚さ1〜5μmのAuにより形成され、オーミック電極42と電気的に接続されている。配線層54の形成後、シードメタルは、例えばエッチングなどにより除去する。また、
図17(b)に示すように、配線層54は第2領域18には形成されない。
【0036】
図18(a)はウェーハ10を例示する断面図である。
図18(b)は半導体チップ60を例示する断面図である。
図18(a)に示すように、複数の第1領域16の間には第2領域18が位置する。
図18(b)に示すように、ブレード62を用いて、第2領域18をスクライブラインとして、ウェーハ10を切断する。これにより、ウェーハ10を個片化し、複数の半導体チップ60を形成する。
図18(a)に示すように、第2領域18の中央部は活性領域12bである。またスクライブラインの幅W1(例えば100μm)は、活性領域12bの幅W2(例えば80μm)より大きい。このため、第2領域18の活性領域12bはダイシングにより除去される。したがって、半導体チップ60の端部は不活性領域14となる。これにより、例えばゲートパッドなどに接続されるワイヤが半導体チップ60の端部に接触しても、ワイヤと活性領域12とのショートが抑制される。
【0037】
次に、実施例1に係る製造方法により製造された半導体チップ60と、比較例に係る製造方法により製造された半導体チップとにおける、リーク電流の測定結果について説明する。
図1(c)に示したように、比較例では、第2領域18および端部19が不活性領域14であり、かつ金属層30がウェーハ10Rに設けられていない。他の処理は、実施例1と同じである。ここでは、半導体チップのFETにおけるゲート・ドレイン間の逆方向2端子ゲートリーク電流(以下、リーク電流)を比較している。FETの基板32はSiC、チャネル層34はGaN、電子供給層36はAlGaN、キャップ層38はGaNにより形成されている。
【0038】
図19はリーク電流の測定結果を示す図である。横軸はドレイン・ソース間電圧Vds、縦軸はリーク電流Igを示す。実線は実施例1、破線は比較例の実験結果を示す。
【0039】
図19に示すように、実施例1および比較例の両方において、ドレイン・ソース間電圧Vdsの上昇と共に、リーク電流は上昇する。実施例1におけるリーク電流は、比較例におけるリーク電流の1000分の1程度である。
【0040】
比較例においては、チャージが第1領域16の活性領域に集中する。このため、第1領域16のゲート電極付近の部分に大きなダメージが生じる。これによりリーク電流が増大する。
【0041】
一方、実施例1によれば、第2領域18に活性領域12bが残存し、ウェーハ10の端部の活性領域12cは金属層30に接触する。このため、プラズマエッチングにおいて発生するチャージを、第2領域18を通じて、金属層30に逃がすことができる。これにより、チャージアップに起因する第1領域16の活性領域12aのダメージを抑制することができる。
図10(a)に示したように、絶縁膜44に開口部44a(ゲート窓)を設ける際、活性領域12a、特にゲート電極48直下の領域(ゲート領域)のダメージが抑制される。この結果、
図19に示したように、半導体チップ60のFETにおけるリーク電流を大幅に低減することができる。また、アーキングによる破損を抑制することもできる。
【0042】
スクライブライン(第2領域18)には、スクライブラインの延在方向に延在する活性領域12bが形成される。スクライブラインの幅W1は変更することができるが、活性領域12bの幅W2より大きいことが好ましい。また、スクライブラインの幅方向において第2領域18の中央部は活性領域12bであり、端部は不活性領域14であることが好ましい。これにより、活性領域12bがダイシングにより除去され、半導体チップ60の端部が不活性領域14となるためである。この結果、例えばワイヤなどが半導体チップ60の端部に接触しても、活性領域12とワイヤとのショートは抑制される。また、第2領域18の少なくとも一部が活性領域12bであればよい。例えば、第2領域18の全体が活性領域12bである場合、ダイシングにより活性領域12bの全てを除去することが好ましい。
【0043】
金属層30は、蒸着法またはスパッタリング法によりウェーハ10の下面に原料を照射することで形成される。これによりウェーハ10の下面から、側面および上面の端部にかけて金属層30が形成される。金属層30はプラズマエッチング装置20の接地電位に接続することが好ましい。プラズマエッチングにより発生したチャージが金属層30に流れやすくなる。また、金属層30はウェーハ10の外周を囲む。特に、
図3(a)および
図3(b)に示すように、金属層30はウェーハ10の外周を完全に囲むことが好ましい。これにより、チャージはウェーハ10の平面内の各方向に流れ、効率的に除去される。アルゴンのイオン注入以外にウェーハ10に活性領域12または不活性領域14を形成する工程を行ってもよい。これによりスクライブライン(第2領域18)および端部19に活性領域が形成されればよい。
【0044】
図10(a)および
図10(b)に示した絶縁膜44のプラズマエッチング、ならびに
図15(a)および
図15(b)に示した絶縁膜50のプラズマエッチングの両方において、活性領域12bが露出する。このため、2回のプラズマエッチングにおいて発生するチャージが除去される。プラズマエッチングを3回以上行う場合でも、活性領域12bを露出させることで、活性領域12bを通じてチャージを金属層30に逃がすことができる。また、例えばプラズマアッシングおよびプラズマCVDなど、プラズマを用いるエッチング以外の工程において発生するチャージを除去することもできる。特に
図10(a)から
図11に示したように、活性領域12aが露出する工程においては、活性領域12bも露出することが好ましい。これにより、チャージが活性領域12aおよび12bに分散し、ダメージを効果的に抑制することができる。
【0045】
実施例1において、半導体チップ60はFETを含むとしたが、例えばFET以外のトランジスタ、またはトランジスタ以外を含んでもよい。半導体チップ60は複数のFETを含んでもよい。一枚のウェーハ10から得られる半導体チップ60の数はいくつでもよい。スクライブライン(第2領域18)中の活性領域12bが大きくなるほど、チャージが活性領域12bに分散し、金属層30に流れやすくなる。したがって、一枚のウェーハ10から得られる半導体チップ60の数を増やすことで、スクライブラインの本数を増やし、チャージを効果的に除去することができる。
【0046】
ウェーハ10は化合物半導体を含む。化合物半導体は、例えば砒素系半導体および窒化物半導体などを含む。砒素系半導体とはガリウム砒素(GaAs)など砒素(As)を含む半導体である。窒化物半導体とは、窒素(N)を含む半導体であり、例えば窒化ガリウム(GaN)、窒化アルミニウムガリウム(AlGaN)、窒化インジウムガリウム(InGaN)、窒化インジウム(InN)、および窒化アルミニウムインジウムガリウム(AlInGaN)などがある。なお、ウェーハ10は、FET以外のトランジスタ、およびトランジスタ以外の半導体素子を含んでもよい。絶縁膜44および50は、SiN以外に酸化シリコン(SiO
2)、窒化酸化シリコン(SiON)により形成されてもよい。
【0047】
以上、本発明の実施例について詳述したが、本発明はかかる特定の実施例に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の要旨の範囲内において、種々の変形・変更が可能である。