【0010】
本発明の一形態は、(1)第1加熱部を用いて、ベース部の上面に設けられたロウ材を、前記ベース部の下面から、前記ロウ材が溶融する熱量を供給することで前記ロウ材を溶融する工程と、第2加熱部を用いて半導体チップを非接触で加熱する工程と、前記第2加熱部により加熱された半導体チップを前記溶融したロウ材と接触させることで、前記半導体チップを前記ベース部の上面に搭載する工程と、を有する半導体装置の製造方法である。半導体チップが加熱され温度が上昇することにより、ロウ材から半導体チップへの熱の伝導が抑制され、ロウ材の急激な固化が抑制される。このためボイドの発生が抑制され、半導体装置の放熱性が向上する。
(2)前記第2加熱部は赤外線照射装置であり、赤外線を照射することにより前記半導体チップを加熱することが好ましい。これにより、ヒータなどを半導体チップに接触させて加熱する場合よりも半導体チップを均一に加熱することができる。
(3)前記半導体チップの下面に金属層が形成され、前記半導体チップを加熱する工程は、前記赤外線照射装置が前記金属層に赤外線を照射することにより前記半導体チップを加熱する工程であることが好ましい。赤外線の吸収率の高い金属層が赤外線により加熱され、金属層から半導体チップに熱が伝導することにより半導体チップが加熱される。
(4)前記半導体チップは、炭化シリコンにより形成された基板を含むことが好ましい。熱伝導率の高い炭化シリコンを用いる場合でも、ボイドの形成を抑制することができる。この結果、放熱性が高く、かつ高出力の動作が可能な半導体装置を形成することができる。
【実施例1】
【0012】
(製造装置)
図1Aは実施例1に係る半導体装置の製造方法に用いる製造装置100を例示する断面図である。
図1Aに示すように、製造装置100はヒータブロック10および赤外線照射装置12(第2加熱部)を備える。ヒータブロック10は例えば銅(Cu)などの金属で形成されたブロック状の部材であり、内部にヒータ11(第1加熱部)を備える。ヒータ11は例えば電熱線などの発熱素子である。赤外線照射装置12は例えばヒータブロック10の斜め上方に配置され、赤外線を照射することができる。
【0013】
ヒータブロック10の上面にベース部14が配置されている。ベース部14の上面には金属層16が設けられ、金属層16の上面にはロウ材18が設けられている。ベース部14はヒータブロック10の上面に接触し、金属層16はベース部14の上面に接触し、ロウ材18は金属層16の上面に接触している。ベース部14は金属または絶縁体により形成されている。ベース部14は例えば下から順にCu層、モリブデン(Mo)層、Cu層を積層したものでもよいし、セラミックなどの絶縁体で形成してもよい。金属層16は例えば金(Au)などの金属により形成されている。ロウ材18は例えば金および錫(Au−Sn)の合金などの金属により形成されている。ベース部14の厚さは例えば0.1〜5μm、金属層16の厚さは例えば0.5〜10μmである。
【0014】
(半導体チップ)
図1Bは半導体チップ20を例示する断面図である。
図1Bに示すように、半導体チップ20の下面には金属層22が形成されている。半導体チップ20は、例えば電界効果トランジスタ(Field Effect Transistor:FET)を含む。半導体チップ20において、例えば基板は厚さ50〜200μmのSiC、FETのチャネル層は窒化ガリウム(GaN)、電子供給層は窒化アルミニウムガリウム(AlGaN)により形成されている。半導体チップ20の長さは例えば7mm以下である。金属層22は例えばAuなどの金属により形成されており、金属層22の厚さは例えば5〜30μmである。
【0015】
(半導体装置の製造方法)
次に実施例1に係る半導体装置の製造方法を説明する。
図2Aから
図2Cは実施例1に係る半導体装置の製造方法を例示する断面図である。
図2Aおよび
図2Cにおいては赤外線照射装置12の図示を省略している。
図2Dは
図2Cの半導体チップ20付近を拡大した断面図である。
【0016】
図2Aに示すように、例えばピンセットまたは吸着コレットなど(不図示)で半導体チップ20をロウ材18の上まで搬送する。ヒータ11はベース部14の下面からロウ材18を加熱する。すなわちヒータ11が発熱すると、熱はヒータブロック10、ベース部14および金属層16を介して、ロウ材18に伝わる。これによりロウ材18の融点以上の温度までロウ材18を加熱し、ロウ材18を溶融させる。Au−Sn合金のロウ材18(Sn組成比が20%)の融点は282〜283℃程度であるため、例えば300℃まで加熱する。ヒータ11によるロウ材18の加熱は半導体チップ20の搬送の前でも後でもよいが、半導体チップ20がロウ材18に接触する前にロウ材18を溶融させる。
【0017】
図2Bにブロック矢印で示すように、赤外線照射装置12は半導体チップ20および金属層22に、例えば波長0.75〜15μmの赤外線を照射する。金属層22は赤外線により加熱され、金属層22から半導体チップ20に熱が伝導する。これにより半導体チップ20および金属層22の温度は例えば約50〜30℃に上昇する。赤外線の照射中、ヒータ11は発熱し続けている。
【0018】
図2Cおよび
図2Dに示すように、金属層22をロウ材18に接触させ、半導体チップ20をベース部14に搭載する。溶融したロウ材18は金属層22の下面を流動し、下面全体に行き渡る。半導体チップ20の搭載の後、赤外線照射装置12は赤外線の照射を停止する。赤外線の停止後、ヒータ11は発熱を停止する。これによりロウ材18が冷却され、固化する。固化したロウ材18により、金属層16と金属層22とが接合され、半導体チップ20がベース部14に固定される。以上の工程により、半導体装置が形成される。
【0019】
実施例1によれば、赤外線により半導体チップ20を加熱するため、半導体チップの温度が上昇し、半導体チップ20とロウ材18との温度差が小さくなる。したがってロウ材18と金属層22とを接触させたときの、ロウ材18から半導体チップ20への熱伝導が抑制される。このためロウ材18の急激な固化が抑制され、ロウ材18が金属層22の下面の全体に行き渡る。この結果、ボイドの形成が抑制される。これにより半導体装置の放熱性が向上し、動作時に半導体チップ20から発生する熱はロウ材18およびベース部14を介して放出される。また、半導体チップ20のベース部14への接合強度が高くなる。
【0020】
ヒータ11は、ロウ材18を融点以上の温度まで加熱し、溶融させる。すなわちヒータ11は、赤外線の照射がされていなくともロウ材18を溶融させることが可能な熱量をロウ材18に供給する。これにより金属層22をロウ材18に接触させたとき、溶融したロウ材18が金属層22の下面を流動し、下面全体に行き渡る。この結果、ボイドが生じにくくなる。
【0021】
ヒータ11の発熱だけでロウ材18が溶融しない場合、金属層22とロウ材18とを接触させたときに、ヒータ11からの熱に金属層22からの熱が加わることでロウ材18が溶融する。しかし金属層22とロウ材18との接触前においてロウ材18が固体であるため、ロウ材18が金属層22の下面に十分に行き渡らず、ボイドが生じる可能性もある。したがって、ヒータ11は、ロウ材18を融点以上の温度まで加熱することが好ましい。
【0022】
また、ロウ材18が赤外線を吸収し、ヒータ11および赤外線による加熱でロウ材18が溶融することもある。しかし半導体チップ20をベース部14の上に搬送すると、赤外線が半導体チップ20および金属層22によって遮断され、赤外線によるロウ材18の加熱が停止する。これによりロウ材18が固化してしまう恐れがある。したがって、ヒータ11は、ロウ材18を融点以上の温度まで加熱することが好ましい。赤外線の停止後にヒータ11の発熱を停止するため、ロウ材18の急速な冷却は抑制される。このためロウ材18の亀裂の発生が抑制される。
【0023】
赤外線照射装置12は赤外線が半導体チップ20に到達するような位置に配置すればよい。半導体チップ20を効果的に加熱するため、
図2Bに示すように赤外線照射装置12は例えば半導体チップ20の斜め上方に配置することが好ましい。
【0024】
赤外線照射装置12のように非接触の加熱装置を用いることで、例えばヒータなどを半導体チップ20に接触させる場合よりも均一に加熱することができる。温度の不均一性をさらに小さくするため、赤外線の照射は半導体チップ20の搭載の直前に開始することが好ましい。赤外線照射装置12以外に、例えば波長0.5〜2.5μmの光を照射するハロゲンランプなど、半導体チップ20に接触することなく加熱することができる装置を用いてもよい。電磁波以外に温風などで加熱してもよい。半導体チップ20が温風で加熱される場合、金属層22を設けなくてもよい。
【0025】
半導体チップ20に窒化物半導体を含むFETなど高出力の素子を形成する場合、基板はSiCとすることが好ましい。半導体チップ20の基板を形成するSiCは、例えばシリコン(Si)の2倍以上の高い熱伝導率を有する。このため、熱はロウ材18から半導体チップ20に伝導しやすい。実施例1によれば赤外線により半導体チップ20を加熱するため、熱伝導が抑制される。したがって、ボイドを抑制することができる。この結果、放熱性が高く、かつ高出力の動作が可能な半導体装置が形成される。
【0026】
半導体チップ20の基板は赤外線の吸収率が小さい。特にSiC基板は赤外線を吸収しにくい。半導体チップ20の下面に赤外線の吸収率の高い金属層22を設けることで、金属層22が赤外線により加熱される。金属層22から半導体チップ20に熱が伝導することで、半導体チップ20が加熱される。金属層22にAuを用いる場合、赤外線は波長0.75〜15μmの近赤外線または中赤外線とすることが好ましい。金属層22は、例えばCu、金とゲルマニウムとの合金(Au−Ge)などAu以外の金属により形成されていてもよい。赤外線の波長は金属層22に吸収されやすい波長とすることができる。半導体チップ20は、少なくとも室温より高い温度に加熱されればよい。
【0027】
(比較例)
比較例について説明する。
図3Aは比較例に係る半導体装置の製造方法を例示する断面図である。
図3Bは半導体チップ20付近を拡大した断面図である。
【0028】
図3Aに示すように、比較例では赤外線照射装置12を使用せず、また金属層22は設けられていない。ヒータ11によりロウ材18を溶融させ、半導体チップ20を接合する。しかし、半導体チップ20をロウ材18に接触させたとき、熱がロウ材18から半導体チップ20に伝わり、ロウ材18が急激に固化する。この結果、
図3Aおよび
図3Bに示すように、ロウ材18の内部にボイド24が発生する。ロウ材18の量を少なくすると、ボイド24が発生しやすい。また半導体チップ20の基板をSiCなど熱伝導率の高いものとすると、ロウ材18から熱が急速に奪われるため、特にボイド24が発生しやすい。ボイド24内の空気の熱伝導率はロウ材18より低いため、半導体装置の放熱性が低下する。
【0029】
前述のように実施例1によれば、ボイドの発生を抑制することができる。このため半導体装置の放熱性を高めることができる。またロウ材18の量を少なくして、ロウ材18の熱抵抗を小さくすることができるため、半導体装置の放熱性をより高めることができる。
【0030】
実施例1において、半導体チップ20は基板、および基板上に設けられた半導体層を含む。基板はSiC、シリコン(Si)、サファイア、GaNなどにより形成される。半導体層には、例えば窒化物半導体を含むFETなどが形成されている。窒化物半導体とは、窒素(N)を含む半導体であり、例えばGaN、AlGaN、窒化インジウムガリウム(InGaN)、窒化インジウム(InN)、および窒化アルミニウムインジウムガリウム(AlInGaN)などがある。半導体チップ20には、窒化物半導体以外に、例えば砒素系半導体などの化合物半導体を用いてもよい。砒素系半導体とはガリウム砒素(GaAs)など砒素(As)を含む半導体である。この場合、半導体チップ20の基板をGaAsで形成してもよい。FETの動作層をSiCとしてもよい。また半導体チップ20にはFET以外のトランジスタなどが形成されていてもよい。半導体装置は例えば増幅器としたが、他の機能を有してもよい。ロウ材18はAu−Sn以外に、例えば銀(Ag)、鉛フリー半田などを用いてもよい。
【0031】
以上、本発明の実施例について詳述したが、本発明はかかる特定の実施例に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の要旨の範囲内において、種々の変形・変更が可能である。