【実施例1】
【0011】
図1Aは実施例1に係る半導体装置100を例示する平面図である。
図1Bは
図1Aの線A−Aに沿った断面図である。
図1Aおよび
図1Bに示すように、半導体装置100は、ベース10、枠体12、チップ14、16、20および22、半導体チップ18、ならびに2つのフィードスルー30を備える。2つのフィードスルー30のうち+X側のものをフィードスルー30a、−X側のものをフィードスルー30bとする。X方向は2つのフィードスルー30aおよび30bが並ぶ方向である。Y方向は、枠体12の壁のうちフィードスルー30の設けられる壁が延伸する方向である。Z方向はXY平面の法線方向である。
【0012】
図1Bに示すように枠体12上側(Z側)には、例えばコバールなどの金属により形成されたリッド13が設けられている。
図1Aではリッド13を透視している。また
図1Aおよび
図1Bでは金属層38およびロウ材42の図示は省略している。
【0013】
ベース10は、例えばモリブデン/銅/モリブデン(Mo/Cu/Mo)の積層体の表面に金(Au)メッキ層を形成したものである。ベース10は他の金属により形成されてもよい。ベース10の±Y側の側面には凹部11が設けられている。凹部11に例えばネジをはめ込むことで、ベース10を基板に実装する。
【0014】
ベース10、枠体12、リッド13およびフィードスルー30はパッケージを構成する。パッケージに収納される電子部品は、例えばチップ14、16、20および22、半導体チップ18である。これらの電子部品はベース10の上面に搭載される。枠体12は、リング状の部材であり、例えばコバールなどの金属により形成されている。
図1Aに示すように、枠体12は、XY平面内において、チップ14、16、20および22、半導体チップ18を囲んでいる。ベース10、枠体12およびリッド13により、チップ14、16、20および22、半導体チップ18は気密封止される。
【0015】
図1Aに示すように、枠体12のX方向において対向する2つの壁には開口部12aが設けられており、2つの開口部12aのそれぞれにはフィードスルー30が挿入されている。
【0016】
図1Aに示すように、フィードスルー30aの配線パターン36とチップ14、チップ14とチップ16、チップ16と半導体チップ18、半導体チップ18とチップ20、チップ20とチップ22、チップ22とフィードスルー30bが有する配線パターン36とは、それぞれボンディングワイヤ24により電気的に接続されている。ボンディングワイヤ24は例えばAuなどの金属により形成されている。
【0017】
半導体チップ18は例えば窒化物半導体を用いた電界効果トランジスタ(Field Effect Transistor:FET)を含む。例えば半導体チップ18のチャネル層は窒化ガリウム(GaN)、電子供給層は窒化アルミニウムガリウム(AlGaN)により形成されている。チップ14、16、20および22は例えばインダクタおよびキャパシタなどを含む。チップ14および16は、フィードスルー30aと半導体チップ18との間のインピーダンスを整合する整合回路として機能する。チップ20および22は、フィードスルー30bと半導体チップ18との間のインピーダンスを整合する整合回路として機能する。
【0018】
2つのリード40の一方から配線パターン36に、例えば高周波(Radio Frequency:RF)信号が入力され、2つのリード40のうち他方からRF信号が出力される。またリード40には、半導体チップ18のFETのバイアス電圧が入力される。フィードスルー30は伝送線路として機能し、RF信号がフィードスルー30を流れる。半導体装置100は例えばRF信号を増幅する増幅器として機能する。
【0019】
図2Aは
図1Aの円C1で囲んだ部分を拡大した平面図である。
図2Bは
図2Aの線B−Bに沿った断面図である。
図2Bに示すように、フィードスルー30は、ボディ32および34、配線パターン36、ならびに金属層38を備える。ボディ34はボディ32の上に配置されている。
図2Aに示すように、ボディ32は、突出部32aを有するT字形状の部材である。突出部32aは、ボディ32と一体である。突出部32aは開口部12aのY方向の両側において枠体12の外壁に沿って、開口部12aより広い幅で突出する。突出部32aの突出量L1は例えば0.5mmである。ボディ32および34は、例えばセラミック等の絶縁体により形成されている。
【0020】
図2Aおよび
図2Bに示すように、配線パターン36は、ボディ32の上面に設けられ、X方向に伸びている。配線パターン36の一部はボディ32および34の間に位置する。配線パターン36にはRF信号が流れる。金属層38は、ボディ32の下面および側面、ボディ34の側面および上面に設けられている。金属層38は基準電位(例えばグランド電位)を有する。配線パターン36と金属層38とは電気的に接続されていない。フィードスルー30は、開口部12a内では同軸ケーブルと同様の機能の伝送線路、開口部12aの外ではマイクロストリップラインなどの伝送線路として機能する。配線パターン36にはリード40が電気的に接続されている。配線パターン36および金属層38は例えば金(Au)などの金属により形成されている。リード40は例えば銅(Cu)などの金属により形成されている。
【0021】
図3は
図2Aの線D−Dに沿った断面図である。
図3に示す高さH1は例えば2.2mm、高さH2は例えば2.01mm、幅W1は例えば3.2mm、幅W2は例えば3.01mmである。開口部12aの高さH1はフィードスルー30の高さH2より大きい。開口部12aの幅W1はフィードスルー30の幅W2より大きい。これにより、フィードスルー30の寸法の固有差、および加熱時のフィードスルー30の膨張がある場合でも、フィードスルー30の開口部12aへの挿入が可能である。
図2Bおよび
図3に示すように、ロウ材42がフィードスルー30の金属層38と枠体12との間に設けられ、フィードスルー30を固定する。具体的に、ロウ材42は、フィードスルー30のボディ32および34の側面、およびボディ34の上面と、枠体12の内壁との間に充填され、またボディ32の下面とベース10の上面との間に充填されている。ロウ材42は例えば銀(Ag)、金および錫(Au−Sn)の合金、または半田など金属により形成されている。
【0022】
次に半導体装置100のパッケージの製造方法について説明する。
図4Aから
図5Bはパッケージの製造方法を例示する正面図である。
【0023】
図4Aに示すように、ベース10上にロウ材のペレット44を配置する。
図4Bに示すように、ペレット44の上にフィードスルー30を配置する。
図5Aに示すように、フィードスルー30のボディ32および34の側面にペレット46を配置する。またフィードスルー30のボディ34の上面にペレット48を配置する。
図5Bに示すように、枠体12をベース10の上に配置する。フィードスルー30、ペレット44、46および48は、枠体12の開口部12aの内側に位置することになる。枠体12は、例えばロウ材または接着剤などでベース10の上面に固定される。
【0024】
ベース10を炉に投入し、ロウ材の融点以上の温度まで加熱する。これによりペレット44、46および48が溶融し、ロウ材42としてフィードスルー30の金属層38に濡れ広がる。炉内の温度がロウ材42の融点以下まで低下すると、ロウ材42が固化する。これにより、フィードスルー30はベース10の上面および枠体12の開口部12aの内周面に固定される。ロウ材42の固化の後、ベース10を炉から取り出す。これによりパッケージが形成される。
【0025】
その後、例えば接着剤またはロウ材などを用いて、ベース10の上面にチップ14、16、20および22、ならびに半導体チップ18を固定する。さらに、ワイヤボンディングを行う。これにより、チップ14および16の間、チップ20および22の間、チップ16および20と半導体チップ18との間を、
図1Aおよび
図1Bに示したボンディングワイヤ24を用いて電気的に接続する。また、チップ14および22とフィードスルー30の配線パターン36との間を、ボンディングワイヤ24を用いて電気的に接続する。なお、枠体12およびフィードスルー30を設ける前に、チップ14、16、20および22、ならびに半導体チップ18をベース10上に固定してもよい。
【0026】
枠体12の上にリッド13(
図1B参照)を設け、ロウ材などで枠体12に固定する。これにより、枠体12の内側の電子部品は気密封止される。以上の方法により半導体装置100が形成される。
【0027】
次にフィードスルーの回転について説明する。
図6は比較例に係る半導体装置100Rを例示する平面図である。
図7は
図6の円C2で囲んだ部分を拡大した平面図である。
図7および後述の
図9においては、図の簡略化のため、リード40およびロウ材42を省略している。
【0028】
図6および
図7に示すように、比較例に係るフィードスルー30Rは突出部32aを有していない。他の構成は、実施例1と同じである。
図4Aから
図5Bに示した製造方法で、フィードスルー30Rは枠体12に挿入される。
【0029】
図4Bのようにフィードスルー30Rをベース10上に配置する際、所定の位置から傾いてしまうことがある。また
図3において説明したように、枠体12の開口部12aの幅はフィードスルーの幅よりも大きい。このため、
図5Bに示したように枠体12をフィードスルー30Rにかぶせた際、作業者などの接触または周囲からの振動などにより、ロウ材42による固定前のフィードスルー30RがXY平面内で回転することもある。フィードスルー30Rは、突出部を有さないため、例えばボディ32側面の金属層38が枠体12に接触するまで回転する。比較例におけるフィードスルー30RのX方向に対する回転角度θ1は例えば25°である。
【0030】
図7に示すように、フィードスルー30Rが回転することで、フィードスルー30Rが斜めに配置される。このため、枠体12の内壁からのフィードスルー30Rの枠体12からの突出量L2が大きくなる。回転しない際のフィードスルー30Rとチップ14との距離と比較して、回転した際のフィードスルー30Rとチップ14との距離D1は小さくなる。フィードスルー30Rが大きく回転すると、フィードスルー30Rとチップ14とが接触することもある。また、複数の半導体装置100Rにおいてフィードスルー30Rの回転角度にばらつきが生じることで、突出量L2にばらつきが生じる。フィードスルー30Rの回転角度が大きいことを想定し、接触などを抑制するためのマージンを距離D1に加えると、距離D1が大きくなる。これによりフィードスルー30Rが回転しても、フィードスルー30Rとチップ14との間隔を広げることができる。しかしこの場合、ベース10および枠体12を大型化することになるため、半導体装置100Rが大型化する。
【0031】
また、フィードスルー30Rの回転により、ボンディングワイヤ24の長さにもばらつきが生じる。ボンディングワイヤ24はインダクタ成分を有しているため、ボンディングワイヤ24の長さがばらつくと、ボンディングワイヤ24のインダクタンスもばらつく。ボンディングワイヤ24のインダクタンスは、半導体装置100Rに入力および出力されるRF信号の周波数においては無視できない。したがって、半導体装置100Rの高周波特性にもばらつきが生じてしまう。
【0032】
図8は実施例1に係る半導体装置100を例示する平面図である。
図9は
図8の円C3で囲んだ部分を拡大した平面図である。
図8および
図9に示すように、実施例1によれば、突出部32aが枠体12に接触するためフィードスルー30aの回転が抑制される。また
図8に示すように、フィードスルー30bの回転も抑制される。このように、突出部32aは±Y方向に突出しているため、フィードスルー30のXY平面内における時計回り方向の回転および反時計回り方向の回転が抑制される。
【0033】
図9に示すように、フィードスルー30aの回転角度θ2は例えば3°であり、比較例における回転角度θ1より小さい。したがって、フィードスルー30aが最も回転したときの突出量L3は、比較例における突出量L2より小さくなる。このため、フィードスルー30aとチップ14との接触が抑制される。
図8に示すように、フィードスルー30bの回転も抑制されるため、フィードスルー30bとチップ22との接触も抑制される。また、複数の半導体装置100において、フィードスルー30の回転角度θ2のばらつきが小さくなる。したがって、接触などを抑制するためのマージンを小さくすることができ、距離D1を小さくすることができる。この結果、半導体装置100の小型化が可能となる。
【0034】
フィードスルー30の回転が抑制されるため、ボンディングワイヤ24の長さのばらつきも抑制される。これにより、ボンディングワイヤ24のインダクタンスのばらつきが抑制され、半導体装置100の高周波特性のばらつきが抑制される。
【0035】
図1Aおよび
図1Bに示したように、枠体12の対向する壁のそれぞれに開口部12aが設けられ、2つの開口部12aのそれぞれにフィードスルー30が挿入されている。X方向において対向する2つのフィードスルー30の回転が抑制されるため、X方向において半導体装置100の小型化が可能である。なお、枠体12の1つの壁に開口部12aが設けられ、1つの開口部12aにフィードスルー30が挿入されていてもよい。また枠体12の3つ以上の壁に開口部12aが設けられ、複数の開口部12aのそれぞれにフィードスルー30が挿入されていてもよい。
【0036】
半導体チップ18、チップ14、16、20および22は、2つのフィードスルー30の対向する方向であるX方向に沿って配置されている。フィードスルー30の回転が抑制されるため、X方向におけるフィードスルー30aとチップ14との距離およびフィードスルー30bとチップ22との距離を大きくしなくてよい。このためX方向において半導体装置100を小型化することができる。一方、半導体装置100を小型化しない場合、X方向において、パッケージ内のより広い領域に電子部品を搭載することができる。このため、X方向において電子部品の配置の自由度が高くなる。なお、電子部品は、X方向に沿って配置されなくてもよく、例えばY方向に沿って配置されるものを含んでもよい。
【0037】
半導体装置100は、半導体チップ18、チップ14、16、20および22を含むとしたが,他の部品を含んでもよい。また半導体チップは2つ以上でもよく、チップの数は3つ以下でもよいし、5つ以上でもよい。またチップは整合回路以外の機能を有していてもよい。半導体装置100は半導体チップ18を含む少なくとも1つの電子部品を有していればよい。
【0038】
図3に示すように、フィードスルー30と開口部12aの内壁との間にロウ材42が設けられる。ロウ材42が固化することで、フィードスルー30の回転が抑制された状態で、フィードスルー30が固定される。これにより、半導体装置100の小型化が可能であり、高周波特性の変化も抑制される。
図4A〜
図5Bの工程では、フィードスルー30を開口部12aに挿入した後、枠体12をベース10に接合する。これにより枠体12を配置する際のフィードスルー30の回転が抑制される。枠体12をベース10に接合した後、フィードスルー30を開口部12aに挿入してもよい。これによりフィードスルー30を挿入する際の回転が抑制される。
【0039】
ロウ材42によりフィードスルー30をベース10および枠体12に接合する。したがって、ベース10、枠体12、リッド13、フィードスルー30により、電子部品を気密封止し、異物および水分などから保護することができる。また、金属により形成されたベース10、枠体12およびリッド13により電子部品を封止するため、電気的なノイズを遮断し、かつ信号の入力および出力はフィードスルー30を介して行うことができる。なお、ベース10、枠体12およびリッド13の少なくとも1つは絶縁体により形成されてもよい。