【解決手段】作用電極10Wと対向電極10Cと参照電極10Rとを電解質10E中に配置し外気に接触するセンサ素子10を備えた定電位電解式ガスセンサ100において、ポテンショスタット回路20の非反転入力部21bと出力回路30の反転入力部31aとが接続されポテンショスタット回路20の非反転入力部21bの電位をガス検出用電位から異常判定用電位に変更する電位変更操作を実行可能な電位変更回路40と、そのときのセンサ出力の挙動に基づいて作用電極10Wの異常状態を判定する異常判定処理部63とを備える。
前記電位変更回路が、前記ポテンショスタット回路の非反転入力部の電位を前記出力回路の反転入力部に対して低下させる分圧回路で構成されている請求項1に記載の定電位電解式ガスセンサ。
前記分圧回路が、前記ポテンショスタット回路の非反転入力部と前記出力回路の反転入力部との接続部に配置された高位側分圧抵抗と、前記ポテンショスタット回路の非反転入力部と接地電位との間に配置された低位側分圧抵抗と、当該接地電位との接続を開閉可能なスイッチとを有して構成されている請求項2に記載の定電位電解式ガスセンサ。
【背景技術】
【0002】
従来、外気中の一酸化炭素や硫化水素などの検出対象ガスの有無や濃度等を検出するための定電位電解式ガスセンサが知られている(例えば特許文献1を参照。)。
この種の定電位電解式ガスセンサは、作用電極と対向電極と参照電極とを電解質中に配置し外気に接触するセンサ素子と、参照電極の電位が負帰還して、当該参照電極に対する作用電極の電位差を所定のガス検出用電位差に維持するように出力電圧を対向電極に出力するポテンショスタット回路と、作用電極に流れる電流に応じたセンサ出力を出力する出力回路とを備える。
【0003】
そして、外気に含まれる検出対象ガスがガス透過膜を介して作用電極に供給されることにより、参照電極に対して定電位に維持された作用電極上において検出対象ガスの酸化又は還元反応が発生し、これにより、作用電極と対向電極との間には外気中の検出対象ガスの濃度に比例した電解電流が流れる。その電解電流に応じて出力されるセンサ出力を分析することにより、外気中の検出対象ガスの有無やその濃度等を検出することができる。
【0004】
かかる定電位電解式ガスセンサでは、センサ素子において断線や短絡や劣化等の異常状態が発生した場合に、検出対象ガスの検出が正常に行えなくなることから、この異常状態の有無を定期的に判定する必要がある。
そこで、特許文献1の定電位電解式ガスセンサでは、参照電極に対して作用電極が定電位に保たれた状態で対向電極の電位を変更し、そのときの出力回路のセンサ出力の挙動が正常なものでない場合に、異常状態であると判定するように構成されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記特許文献1の定電位電解式ガスセンサでは、対向電極や作用電極の何れかに異常が生じている場合には、それを異常状態として判定可能であるが、作用電極のみを特定して異常状態を判定することはできなかった。即ち、対向電極の電位を変更して対向電極の作用電極に対する電位差を変化させた際の出力回路のセンサ出力の挙動は、作用電極と参照電極との間に流れる電流値を示すものであることから、作用電極が正常であったとしても、対向電極に異常が生じている場合には、そのセンサ出力の挙動が異常なものとなり、異常状態として判定することになる。
【0007】
この実情に鑑み、本発明の主たる課題は、定電位電解式ガスセンサにおいて、作用電極の異常状態を簡単且つ合理的に判定することができる異常判定技術を提供する点にある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の第1特徴構成は、作用電極と対向電極と参照電極とを電解質中に配置し外気に接触するセンサ素子と、
前記参照電極の電位を負帰還して、当該参照電極に対する前記作用電極の電位差を所定のガス検出用電位差に維持するように出力電圧を前記対向電極に出力するポテンショスタット回路と、
前記出力電位を負帰還して、前記作用電極に流れる電流に応じたセンサ出力を出力する出力回路と、
前記出力回路からのセンサ出力に基づいて、外気中の検出対象ガスを検出するガス検出処理部と、を備えた定電位電解式ガスセンサであって、
前記ポテンショスタット回路の非反転入力部と前記出力回路の反転入力部とが接続され、
前記ポテンショスタット回路の非反転入力部の電位を、前記ガス検出処理部によるガス検出時のガス検出用電位からそれとは異なる異常判定用電位に変更する電位変更操作を実行可能な電位変更回路と、
前記電位変更回路による電位変更操作の実行に伴う前記出力回路からのセンサ出力の挙動に基づいて、前記作用電極の異常状態を判定する異常判定処理部と、を備えた点にある。
【0009】
本構成によれば、上記電位変更回路により電位変更操作を実行して、ポテンショスタット回路の非反転入力部の電位をガス検出用電位から異常判定用電位に変更すれば、当該ポテンショスタット回路を構成するオペアンプのイマジナリショートにより、反転入力部の電位即ち参照電極の電位が変更されることになる。これにより、参照電極に対する作用電極の電位差を上記ガス検出用電位差とは異なる上記異常判定用電位差に変更することができる。
【0010】
そして、上記電位変更操作により、参照電極の電位が変更されることにより、作用電極の参照電極に対する電位差がガス検出時のガス検出用電位差からそれとは異なる異常判定用電位差に変更される。すると、正常状態の作用電極ではその電位差の変更に応じて正常な電流値の変化が生じるが、断線や短絡や劣化などが生じている異常状態の作用電極ではその電流値の変化が正常なものとは乖離した異常なものとなる。よって、この電位変更操作に併せて上記異常判定処理が実行されることで、上述のような作用電極の異常な電流値の変化をセンサ出力の挙動として捉えるという簡単且つ合理的な方法により、作用電極の異常状態が判定されることになる。
従って、本発明により、作用電極の異常状態を簡単且つ合理的に判定することができる定電位電解式ガスセンサを実現することができる。
【0011】
本発明の第2特徴構成は、前記電位変更回路が、前記ポテンショスタット回路の非反転入力部の電位を前記出力回路の反転入力部に対して低下させる分圧回路で構成されている点にある。
【0012】
本構成によれば、分圧回路により、ポテンショスタット回路の非反転入力部の電位を出力回路の反転入力部に対して低下させることで、反転入力部の電位即ち参照電極の電位が低下させる。これにより、上記電位変更操作において参照電極の電位を低下させるので、当該電位を上昇させるための別の電源等を準備する必要がないという簡単な構成により、参照電極に対する作用電極の電位差をガス検出用電位差から異常判定用電位差に変更することができる。
【0013】
本発明の第3特徴構成は、前記分圧回路が、前記ポテンショスタット回路の非反転入力部と前記出力回路の反転入力部との接続部に配置された高位側分圧抵抗と、前記ポテンショスタット回路の非反転入力部と接地電位との間に配置された低位側分圧抵抗と、当該接地電位との接続を開閉可能なスイッチとを有して構成されている点にある。
【0014】
本構成によれば、上記分圧回路は、高位側分圧抵抗及び低位側分圧抵抗とスイッチとで簡単に構成することができ、このスイッチを開状態から閉状態に切替える形態で、ポテンショスタット回路の非反転入力部の電位をガス検出用電位から異常判定用電位に変更することができる。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明の実施形態について図面に基づいて説明する。
先ず、本実施形態の定電位電解式ガスセンサ100(以下、単に「ガスセンサ100」と呼ぶ。)の基本構成について、
図1に基づいて説明する。尚、
図1は、ガスセンサ100の概略構成を示す図である。
【0017】
ガスセンサ100は、外気中の一酸化炭素や硫化水素などの検出対象ガスの有無やその濃度等を検出するように構成され、詳細については後述するが、センサ素子10、ポテンショスタット回路20、出力回路30、並びに、所定のコンピュータプログラムを実行することにより各種制御や演算等を行うための各種処理部として機能するCPU60等を備える。
【0018】
センサ素子10は、公知の三極タイプのセンサ素子を利用しており、作用電極10Wと対向電極10Cと参照電極10Rとを電解質10E中に配置し外気に接触する。
そして、このように構成されたセンサ素子10は、検出対象ガスの検出を行うガス検出時には、参照電極10Rに対する作用電極10Wの電位差を所定のガス検出用電位差に維持することで、検出対象ガスを検知するガス検出状態とされる。
【0019】
このガス検出状態では、センサ素子10に接触する外気に一酸化炭素や硫化水素などの検出対象ガスが含まれている場合には、その検出対象ガスが電解質10Eと外気とを隔離するガス透過膜(図示省略)を介して作用電極10Wに供給されることにより、参照電極10Rに対して定電位に維持された作用電極10W上において、検出対象ガスの酸化又は還元反応が発生する。
すると、作用電極10Wと対向電極10Cとの間には外気中の検出対象ガスの濃度に比例した電解電流が流れ、それに伴って対向電極10C上において、作用電極10W上での反応とは逆の還元又は酸化反応が発生することになる。
よって、対向電極10Cとの間で作用電極10Wに生じる電解電流を計測することにより、外気中の検出対象ガスの有無やその濃度を検出することができる。
【0020】
ポテンショスタット回路20は、参照電極10Rをオペアンプ21の反転入力部21aに接続する形態で、当該参照電極10Rの電位を負帰還する負帰還回路として構成されている。更に、対向電極10Cをオペアンプ21の出力部21cに接続すると共に、作用電極10Wをオペアンプ21の非反転入力部21bに高位側分圧抵抗42を介して接続している。これにより、ポテンショスタット回路20は、上記ガス検出状態において、参照電極10Rに対する作用電極10Wの電位差を所定のガス検出用電位差としての0mVに維持するように出力電圧を対向電極10Cに出力するように構成されている。即ち、このガス検出状態では、反転入力部21aと非反転入力部21bとはオペアンプ21のイマジナリショートにより同電位となることから、夫々に接続された参照電極10Rと作用電極10Wとは同電位となる。
【0021】
尚、対向電極10Cに断線や短絡などの異常が生じている場合には、このポテンショスタット回路20が正常に機能せず、参照電極10Rに対する作用電極10Wの電位差が所定のガス検出用電位差に設定できない。そこで、ポテンショスタット回路20を作動させてガス検出状態とした起動時等において、センサ出力が正常な値に収束しない場合には、対向電極10Cに異常が生じていると判定することができる。
【0022】
出力回路30は、抵抗32を介して出力部31cを反転入力部31aに接続する形態で、当該出力部31cの出力電位を負帰還する負帰還回路として構成されている。更に、電源50をオペアンプ31の非反転入力部31bに接続すると共に、作用電極10Wを反転入力部31aに接続している。これにより、出力回路30は、作用電極10Wに流れる電流の大きさを出力電圧の大きさとして出力部31cから出力するように構成されており、その出力電圧がA/Dコンバータ35によりデジタル信号に変換された上でセンサ出力としてCPU60に入力される。
尚、この出力回路30では、反転入力部31aと非反転入力部31bとはオペアンプ31のイマジナリショートにより同電位であることから、作用電極10Wの電位は電源50と同じ電位になる。また、作用電極10Wが接続された出力回路30の反転入力部31aは、ポテンショスタット回路20の非反転入力部21bに高位側分圧抵抗42を介して接続されている。
【0023】
CPU60は、入力されたセンサ出力に基づいて外気中の検出対象ガスを検出するガス検出処理部61として機能する。そして、このガス検出処理部61は、上述のように参照電極10Rに対する作用電極10Wの電位差をガス検出用電位差に維持したガス検出状態において、センサ素子10の作用電極10Wに生じた電解電流を出力回路30のセンサ出力として受け、そのセンサ出力から外気中の検出対象ガスの有無やその濃度を検出するように構成されている。
【0024】
以上がガスセンサ100の基本構成であるが、このガスセンサ100は、所定の電位変更操作及び異常判定処理からなる異常判定方法を実行して、作用電極10Wの断線や短絡や劣化などの異常状態を簡単且つ合理的に判定することができるように構成されている。以下、その詳細構成について、
図1及び
図2に基づいて説明を加える。
尚、
図2は、ガスセンサ100により異常判定方法を実行した際におけるスイッチ45の状態変化(a)、及び出力回路30のセンサ出力の状態変化(b)を示すグラフ図である。
【0025】
図1を参照して、ガスセンサ100では、上述したようにポテンショスタット回路20の非反転入力部21bと出力回路30の反転入力部31aとが接続されており、更には、参照電極10Rと同電位であるポテンショスタット回路20の非反転入力部21bの電位を、ガス検出処理部61によるガス検出時のガス検出用電位からそれとは異なる異常判定用電位に変更する電位変更操作を実行可能な電位変更回路40を備える、そして、CPU60が機能する電位変更操作部62によりこの電位変更操作が実行される。
【0026】
電位変更回路40は、ポテンショスタット回路20の非反転入力部21bの電位を出力回路30の反転入力部31aに対して低下させる分圧回路41で構成されている。この分圧回路41は、ポテンショスタット回路20の非反転入力部21bと出力回路30の反転入力部31aとの接続部に配置された高位側分圧抵抗42と、ポテンショスタット回路20の非反転入力部21bとグランドGの接地電位との間に配置された低位側分圧抵抗43と、当該グランドGとの接続を開閉可能な常開形のスイッチ45とを有して構成されている。
【0027】
このように構成された分圧回路41では、上記ガス検出状態として外気中の検出対象ガスを検出するガス検出時においては、スイッチ45が開状態とされる。
即ち、ガス検出時において、分圧回路41のスイッチ45が開状態とされると、上述したように、参照電極10Rに対する作用電極10Wの電位差は、ガス検出用電位差である0mVに維持される。
【0028】
一方、異常状態を判定する異常状態判定時においては、電位変更操作部62により電位変更操作が実行されることで、スイッチ45が開状態から閉状態へ切替えられる。
即ち、異常状態判定時において、電位変更操作が実行されることで、
図2(a)に示すように、分圧回路41のスイッチ45が開状態から閉状態に切替えられる。すると、高位側分圧抵抗42側から低位側分圧抵抗43及びスイッチ45を介してグランドG側へ電流が流れることにより、これら分圧抵抗42,43の間の分圧電圧出力部44の電位、即ちポテンショスタット回路20の非反転入力部21bの電位が低下する。そして、この非反転入力部21bの電位がオペアンプ21のイマジナリショートにより参照電極10Rが接続された反転入力部21aと同電位であることから、参照電極10Rの電位が低下することになる。
【0029】
例えば、電源50の電位、即ち作用電極10Wの電位がVoであり、高位側分圧抵抗42及び低位側分圧抵抗43の抵抗値が夫々R1,R2であるとすると、スイッチ45が開状態とされるガス検出時では、参照電極10Rの電位はVoに維持され、参照電極10Rに対する作用電極10Wの電位差はガス検出用電位差としての0mVに維持される。そして、この状態から電位変更操作が実行されてスイッチ45が閉状態へ切替えられたときには、参照電極10Rの電位はVo×R2/(R1+R2)に低下し、参照電極10Rに対する作用電極10Wの電位差は上記ガス検出用電位差(0mV)とは異なる異常判定用電位差(Vo−Vo×R2/(R1+R2))に変更されることになる。
【0030】
そして、CPU60は、上記のような電位変更操作の実行に伴うセンサ出力の挙動に基づいて、作用電極10Wの異常状態を判定する異常判定処理を実行する異常判定処理部63として機能する。
【0031】
即ち、この異常判定処理部63は、作用電極10Wの異常を判定する異常判定時において、電位変更操作部62を作動させて作用電極10Wの参照電極10Rに対する電位差をガス検出時のガス検出用電位差からそれとは異なる異常判定用電位差に変更させる。
このとき、作用電極10Wが正常状態である場合には、上記電位差変更操作に伴って作用電極10Wに生じる電流値の変化、即ち出力回路30のセンサ出力の変化が、
図2(b)に示すような予め想定される正常なものとなる。一方、作用電極10Wが断線や短絡等が生じている異常状態である場合には、上記電位差変更操作に伴って作用電極10Wに生じる電流値の変化、即ち出力回路30のセンサ出力の変化が、上記正常なものとは乖離した異常なものとなる。そして、異常判定処理部63は、上述のような作用電極10Wの異常な電流値の変化をセンサ出力の挙動として捉えるという簡単且つ合理的な方法により、作用電極10Wの異常状態を判定することができる。
【0032】
具体的に、
図2(b)に示すように、スイッチ45を開状態から閉状態へ変化させて参照電極10Rに対する作用電極10Wの電位差が変更される電位変更操作の開始時T1において、作用電極10Wが正常状態である場合には、参照電極10Rに対する作用電極10Wの電位差の変更に伴って、作用電極10Wから流れる電流値が変化して、その電流値を示す出力回路30のセンサ出力が電位変更操作の開始時T1前の値(AD0)を基準に低下することになる。
【0033】
しかしながら、作用電極10Wにおいて電流値の変化を阻害する断線や短絡のような異常要因が生じている異常状態である場合には、参照電極10Rに対する作用電極10Wの電位差が変更されたとしても、作用電極10Wに流れる電流は0又は僅かとなることから、出力回路30のセンサ出力が電位変更操作の開始時T1前の値AD0から変化しない、又は、変化した場合でもその変化幅が僅かとなる。
【0034】
そこで、異常判定処理部63は、このような作用電極10Wの断線や短絡の異常状態を判定するための第1異常判定処理を実行するように構成されている。この第1異常判定処理では、電位変更操作の開始時T1のセンサ出力の変化幅が所定の判定変化幅(即ちAD0からそれよりも低く設定された閾値AD1までの幅)以下となった場合、即ち、電位変更操作の開始時T1後において、作用電極10Wが正常状態であれば低下するはずのセンサ出力が所定の閾値AD1を下回らなかった場合には、作用電極10Wに断線や短絡等が生じている異常状態であると判定することができる。
【0035】
更に、
図2(b)に示すように、スイッチ45を閉状態から開状態に変化させた電位変更操作の終了時T2後において、作用電極10Wが正常状態である場合には、当該電位変更操作の終了により参照電極10Rに対する作用電極10Wの電位差が急激に0mV(ガス検出用電位差)に復帰すると、作用電極10Wの電流が一時的な逆流を伴って停止される。すると、その電流値を示す出力回路30のセンサ出力が電位変更操作の終了時T2後において、一時的にオーバーシュートした後に、電位変更操作の開始時T1前の値AD0付近の正常範囲内に収束することになる。
【0036】
しかしながら、作用電極10Wにおいて電流値の復帰(正常範囲内への収束)を阻害する劣化のような異常要因が生じている異常状態である場合には、参照電極10Rに対する作用電極10Wの電位差が0mV(ガス検出用電位差)に復帰したとしても、作用電極10Wから流れる電流はその電位差の復帰に迅速に追従しない場合がある。
【0037】
そこで、異常判定処理部63は、このような作用電極10Wの劣化の異常状態を判定する第2異常判定処理を実行するように構成されている。即ち、この第2異常判定処理では、電位変更操作の終了時T2後の判定時T3までの判定時間t内にセンサ出力が所定の正常範囲内(即ち電位変更操作の開始時T1前の値AD0を中心に設定された下限値AD2から上限値AD3までの範囲内)に収束しない場合に、作用電極10Wに劣化等が生じている異常状態であると判定することができる。
【0038】
〔別実施形態〕
(1)上記実施形態では、1個のセンサ素子10を備えた構成を説明したが、例えば複数種の検出対象ガスを検出する場合には、夫々の検出対象ガスに対応させて、センサ素子10及びそれに接続される各種回路20,30、40等を複数配置しても構わない。また、この場合には、夫々の電位変更回路40の一部又は全部を共有化することができ、例えば、電位変更回路40を分圧回路41として構成する場合には、低位側分圧抵抗43及びスイッチ45を共有化して、夫々の分圧回路41における分圧電圧出力部44を、共有化した定位側分圧抵抗43のスイッチ45とは反対側に接続すれば、その共有化したスイッチ45を開状態から閉状態へ切替える形態で、夫々のセンサ素子10の参照電極10Rの電位をガス検出用電位からからそれとは異なる異常判定用電位に変更する電位変更操作を行うことができる。
【0039】
(2)上記実施形態では、電位変更操作において、参照電極10Rの電位を低下させる形態で変更したが、別に、参照電極10Rの電位を上昇させる形態で変更しても構わない。尚、このように参照電極10Rの電位を上昇させる場合には、
図1において、スイッチ45の低位側分圧抵抗43とは反対側の端子を、グランドGに接地させるのではなく、作用電極10Wの電位、即ち電源50の電位よりも高い電位に接続することで可能となる。
【0040】
(3)上記実施形態では、ガス検出時の作用電極10Wの参照電極10Rに対する電位差であるガス検出用電位差を0mVに設定したが、検出対象ガスの種類によっては酸化電位又は還元電位が異なることから、このガス検出用電位差をガス種に適したものに適宜設定することができ、これにより、選択的な検出対象ガスの検出が可能となる。
【0041】
(4)上記実施形態では、参照電極10Rの電位、即ちポテンショスタット回路20の非反転入力部21bの電位を変更する電位変更操作を分圧回路40によって実行したが、他の形式の電位変更回路によって参照電極10Rの電位を変更しても構わない。
【0042】
(5)上記実施形態では、作用電極10Wの異常状態を判定する異常判定処理として、参照電極10Rの電位を変更する電位変更操作の開始時T1のセンサ出力の変化幅が所定の判定変化幅(AD0〜AD1の幅)以下となった場合に、作用電極10Wが異常状態であると判定する第1異常判定処理と、同電位変更操作の終了時T2後のセンサ出力が所定の判定時間t内に所定の正常範囲内(下限値AD2〜上限値AD3の範囲内)に収束しない場合に、作用電極10Wが異常状態であると判定する第2異常判定処理とを実行するように構成したが、電位変更操作の実行時におけるセンサ出力の上記とは別の挙動を正常時と比較することにより、作用電極10Wの異常状態を判定しても構わない。