【解決手段】レーザーにより、第1の板状部材E1、E2および第2の板状部材F1、F2のカシメ突部形成領域の外周縁の一部に沿って切断線を形成し、その後、カシメ突部形成領域を、厚さ方向に沿って一方側から他方側に押圧することによってカシメ突部40を形成する。その後、カシメ凹部形成領域を切断してカシメ凹部50を形成する。第1の板状部材E1、E2と第2の板状部材F1、F2では、カシメ突部40の配設位置とカシメ凹部50の配設位置が互い違いとなっている。第1の板状部材E1のカシメ凹部50に第2の板状部材F1のカシメ突部40を圧入し、第2の板状部材F1のカシメ凹部50に第1の板状部材E2のカシメ突部を圧入し、第1の板状部材E2のカシメ凹部50に第2の板状部材F2のカシメ突部40を圧入する。
積層された複数の板状部材により構成され、積層された2つの板状部材のうちの第1の板状部材に形成されたカシメ凹部に、積層された2つの板状部材のうちの第2の板状部材に形成されたカシメ凸部が嵌合されている積層体であって、
前記カシメ凹部は、前記第1の板状部材の、厚さ方向に沿った両側の面を連通する貫通孔であり、
前記第2の板状部材は、厚さ方向に沿った一方側の面に開口を有し、
前記カシメ突部は、前記第2の板状部材に形成された前記開口に連設されているとともに、前記第2の板状部材の、厚さ方向に沿った他方側の面から突出しており、
前記カシメ突部の幅は、前記開口の幅より狭いことを特徴とする積層体。
【背景技術】
【0002】
回転機の固定子や回転子等は、板状部材を積層した積層体により構成されている。このような積層体では、板状部材を積層しただけでは積層された板状部材がずれるため、積層された板状部材を固定する必要がある。
従来、積層された板状部材を固定する方法としては、一般的には、カシメ突部を用いてカシメ積層する方法が用いられている。例えば、電磁鋼板等を金型により所定形状に打ち抜いて板状部材を形成する際に、板状部材にカシメ突部を形成する。カシメ突部は、板状部材のカシメ突部形成領域の中央部分を、厚さ方向に沿った一方側から他方側に押圧し、厚さ方向に沿った他方側の面から突出させることによって形成される。この時、カシメ突部形成領域の、厚さ方向に沿った一方側の面によってカシメ凹部が形成される。すなわち、カシメ突部を形成する際にカシメ凹部も形成される。そして、圧入等により、一方の板状部材に形成されたカシメ突部を他方の板状部材に形成されたカシメ凹部に嵌合させることによって、複数の板状部材を固定しながら積層する。
ここで、電磁鋼板等を打ち抜いて板状部材を形成するには、高価な金型が必要である。
そこで、高価な金型を不要とするために、電磁鋼板等をレーザーによって切断して板状部材を形成する方法が考えられる。例えば、レーザーによって、カシメ突部形成領域の外周縁の一部に沿って切断線を形成し、その後、カシメ突部形成領域の中央部分を、厚さ方向に沿った一方側から他方側に押圧し、厚さ方向に沿った他方側の面から突出させることによって厚さ方向に沿った他方側にカシメ突部を形成するとともに、厚さ方向に沿った一方側にカシメ凹部を形成する。
しかしながら、レーザーによって、カシメ突部形成領域の外周縁の一部に沿って切断線を形成すると、幅が約0.1mmの切断線が形成される。このため、カシメ突部形成領域の外周縁の一部に沿ってレーザーにより切断線を形成した後に、カシメ突部の中央部分を押圧してカシメ突部を形成した場合、カシメ突部の幅が、カシメ凹部の開口の幅より狭くなる。この場合、一方の板状部材に形成されたカシメ突部を他方の板状部材に形成されたカシメ凹部に噛み合わせることができないため、積層された板状部材を強固に固定することができない。
したがって、電磁鋼板等をレーザーによって切断して形成した板状部材を積層して積層体を構成する場合には、積層した複数の板状部材を固定する方法として、例えば、特許文献1に開示されているような、複数の板状部材を溶接する方法が用いられている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
積層した複数の板状部材を固定する方法として、複数の板状部材を溶接する方法を用いた場合には、溶接による熱歪み等が発生するため、積層体の寸法精度を高めるには限界がある。
本発明は、このような点に鑑みて創案されたものであり、レーザーによる切断を可能としながら複数の板状部材を適切にカシメ積層することができる技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
第一の発明は、複数の板状部材を積層した積層体に関する。
本発明の積層体は、積層される2つの板状部材のうちの第1の板状部材に形成されたカシメ凹部に、第2の板状部材に形成されたカシメ突部が、圧入等により嵌合されてカシメ積層されることによって形成される。
第1の板状部材は、厚さ方向に沿った両側の面を連通し、カシメ突部が嵌合されるカシメ凹部として用いられる貫通孔を有している。第1の板状部材は、好適には、レーザーにより電磁鋼板等を切断することによって形成される。また、貫通孔は、好適には、レーザーにより、第1の板状部材の貫通孔形成領域を切断することによって形成される。
第2の板状部材は、厚さ方向に沿った一方側の面に開口を有している。そして、カシメ突部は、第2の板状部材に形成された開口の一部に連設されているとともに、第2の板状部材の、厚さ方向に沿った他方側の面から突出している。本発明では、カシメ突部の幅は、開口の幅より小さい。第2の板状部材は、好適には、レーザーにより電磁鋼板等を切断することによって形成される。また、カシメ突部は、好適には、レーザーにより、第2の板状部材のカシメ突部形成領域の外周縁の一部に沿って切断線を形成し、切断線が形成されたカシメ突部形成領域を、厚さ方向に沿った一方側から他方側に押圧して厚さ方向に沿った他方側の面から突出させることによって形成される。第2の板状部材の、厚さ方向に沿った他方側の面からのカシメ突部の突出長さは、第1の板状部材の厚さより長く、好適には、第2の板状部材の厚さの約2倍〜3倍の長さに設定される。なお、好適には、第1の板状部材の厚さと第2の板状部材の厚さは等しい。
カシメ突部の幅およびカシメ凹部の幅は、圧入等によってカシメ突部をカシメ凹部に嵌合させた場合にカシメ突部の外周面とカシメ凹部の内周面が当接する箇所の間隔を表す。カシメ突部およびカシメ凹部の形状は、カシメ突部をカシメ凹部に嵌合させることによって、カシメ突部とカシメ凹部が噛み付く適宜の形状に設定される。
本発明では、積層される2つの板状部材のうちの第1の板状部材にカシメ突部を形成し、第2の板状部材に、カシメ突部が嵌合されるカシメ凹部として、厚さ方向に沿った両側の面を連通する貫通孔を形成しているため、レーザーによる切断を可能としながら第1の板状部材と第2の板状部材を適切にカシメ積層することができる。これにより、金型等を用いることなく、容易に積層体を構成することがきる。
第一の発明の異なる形態では、カシメ突部は、V字形状を有し、また、カシメ凹部は、四角形状の断面を有している。V字形状のカシメ突部は、好適には、長方形形状のカシメ突部形成領域を、対向する長辺の中央部を結ぶ線を折り線として折り曲げることによって形成される。また、カシメ凹部の断面は、好適には、長方形形状に形成される。
本形態では、カシメ突部とカシメ凹部を、簡単な構成で、確実に噛み付けることができる。
第一の発明の他の異なる形態では、カシメ凹部の幅が、カシメ突部の幅より狭く設定されている。
本形態では、カシメ突部をカシメ凹部に圧入することによって、カシメ突部とカシメ凹部を噛み付けることができる。
第一の発明の他の異なる形態では、第1の板状部材には、カシメ凹部とともにカシメ突部が形成され、第2の板状部材には、カシメ突部とともにカシメ凹部が形成されている。第2の板状部材のカシメ突部およびカシメ凹部は、第1の板状部材の、カシメ凹部およびカシメ突部が形成された箇所と対向する箇所に形成されている。すなわち、第1の板状部材と第2の板状部材には、カシメ突部およびカシメ凹部が互い違いに形成されている。
本形態では、複数の板状部材を、簡単に、且つ確実に積層することができる。また、積層される第1の板状部材と第2の板状部材にカシメ突部とカシメ凹部が互い違いに形成されているため、荷重バランスがよい積層体を構成することができる。
第二の発明は、回転機に関する。
本発明の回転機は、固定子と、固定子に空隙を介して回転可能に配置された回転子を備えている。固定子および回転子は、複数の板状部材を積層した積層体により構成されている。そして、固定子および回転子のうちの少なくとも一方の積層体として、前述した積層体のいずれかが用いられている。本発明の回転機は、電動機や発電機として構成することができる。
固定子を構成する積層体に関しては、カシメ突部およびカシメ凹部は、好適には、ヨークの、ティース部に対応する箇所あるいは周方向に隣接するティース部の間の周方向中央の箇所に形成される。また、回転子を構成する積層体に関しては、カシメ突部およびカシメ凹部は、好適には、主磁極のd軸近傍あるいは補助磁極のq軸近傍の箇所であって、回転子の外周側の箇所に形成される。
本発明の回転機は、前述した積層体と同様の効果を有している。
第三の発明は、第1の板状部材と第2の板状部材を積層する積層方法に関する。
本発明は、カシメ凹部形成工程、切断線形成工程、カシメ突部形成工程および積層工程を備えている。
カシメ凹部形成工程では、第1の板状部材に対して、厚さ方向に沿った両側の面を連通する貫通孔を形成する。貫通孔は、カシメ突部が嵌合されるカシメ凹部として用いられる。好適には、貫通孔は、レーザーにより、第1の板状部材のカシメ凹部形成領域を切断することによって形成される。
切断線形成工程では、第2の板状部材に対して、カシメ突部形成領域の外周縁の一部に沿って、レーザーにより切断線を形成する。好適には、長方形形状を有するカシメ突部形成領域の長辺に沿って切断線を形成する。
カシメ突部形成工程では、切断線が形成された第2の板状部材のカシメ突部形成領域に対して、厚さ方向に沿った一方側から他方側に押圧力を印加して、第2の板状部材の、厚さ方向に沿った他方側の面から突出するカシメ突部を形成する。好適には、長方形形状を有するカシメ突部形成領域の、対向する長辺の中央部を結ぶ線に沿った箇所を、厚さ方向に沿った一方側から他方側に押圧し、厚さ方向に沿った他方側の面から突出させる。ここで、カシメ突部形成領域の外周縁の一部に沿った切断線をレーザーによって形成した場合には、カシメ突部の幅は、カシメ突部形成領域の幅より狭くなる。
積層工程では、第2の板状部材に形成されたカシメ突部を第1の板状部材に形成されたカシメ凹部に圧入等により嵌合させることによって、第1の板状部材と第2の板状部材を積層する。
本発明では、レーザーによる切断を可能としながら第1の板状部材と第2の板状部材を適切にカシメ積層することができる。
第四の発明は、積層された複数の板状部材により構成される積層体を製造する積層体製造方法に関する。
本発明は、カシメ凹部形成工程、切断線形成工程、カシメ突部形成工程および積層工程を備えている。
カシメ凹部形成工程では、板状部材に対して、当該板状部材の厚さ方向に沿った両側の面を連通する貫通孔を形成する。貫通孔は、カシメ突部が嵌合されるカシメ凹部として用いられる。好適には、貫通孔は、レーザーにより、板状部材のカシメ凹部形成領域を切断することによって形成される。
切断線形成工程では、板状部材に対して、レーザーにより、カシメ突部形成領域の外周縁の一部に沿って切断線を形成する。好適には、長方形形状を有するカシメ突部形成領域の長辺に沿って切断線を形成する。
カシメ突部形成工程では、切断線が形成された板状部材のカシメ突部形成領域に対して、板状部材の厚さ方向に沿った一方側から他方側に押圧力を印加して、板状部材の厚さ方向に沿った他方側の面から突出するカシメ突部を形成する。好適には、長方形形状を有するカシメ突部形成領域の、対向する長辺の中央部を結ぶ線に沿った箇所を、厚さ方向に沿った一方側から他方側に押圧し、厚さ方向に沿った他方側の面から突出させる。
積層工程では、複数の板状部材を積層する。
本発明では、積層される第1〜第3の板状部材に対してカシメ凹部形成工程、切断線形成工程およびカシメ突部形成工程を実行することによって、第1〜第3の板状部材にカシメ凹部およびカシメ突部を形成する。好適には、カシメ突部およびカシメ凹部は、積層される一方の板状部材と他方の板状部材におけるカシメ突部およびカシメ凹部の配設位置が互い違いになるように形成される。そして、積層工程では、第1の板状部材に形成されたカシメ凹部に第2の板状部材に形成されたカシメ突部を嵌合させ、また、第2の板状部材に形成されたカシメ凹部に第3の板状部材に形成されたカシメ突部を嵌合させることによって、第1〜第3の板状部材を積層する。
本発明では、レーザーによる切断を可能としながら、複数の板状部材を適切にカシメ積層した積層体を製造することができる。
【発明の効果】
【0006】
本発明では、レーザーによる切断を可能としながら複数の板状部材を適切にカシメ積層することができる。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下に、本発明の実施形態を、図面を参照して説明する。
本明細書では、「軸方向」という記載は、回転子が固定子に対して回転可能に配置されている状態において、回転子(回転軸)の回転中心を通る回転中心線の方向を示す。「周方向」という記載は、回転子が固定子に対して回転可能に配置されている状態において、軸方向に直角な断面でみて、回転中心を中心とする円周方向を示す。「径方向」という記載は、回転子が固定子に対して回転可能に配置されている状態において、軸方向に直角な断面でみて、回転中心を通る方向を示す。
【0009】
先ず、本発明の概要を、
図1〜
図6を参照して説明する。
なお、
図1は、レーザーにより、第1の板状部材のカシメ突部形成領域の外周縁の一部に沿って切断線を形成する切断線形成工程を説明する図であり、
図2は、カシメ突部形成領域を押圧してカシメ突部を形成するカシメ突部形成工程を説明する図である。
図3は、
図2のIII−III線断面図であり、
図4は、
図2のIV−IV線断面図である。
図5は、第2の板状部材にカシメ凹部を形成するカシメ凹部形成工程を説明する図である。
図6は、第1の板状部材と第2の板状部材を積層する積層工程を説明する図である。
また、以下で説明する実施形態では、回転機の固定子や回転子を構成する積層体について説明するため、電磁鋼板等の軟磁性材料により形成される、厚さDを有する板状部材が用いられている。
【0010】
先ず、切断線形成工程を、
図1を参照して説明する。
積層される2つの板状部材のうちの一方の第1の板状部材Aのカシメ突部形成領域10の外周縁の一部に沿って切断線21および22を形成する。カシメ突部形成領域10の形状としては、適宜の形状に設定することができる。
図1では、長辺の長さL、短辺の長さW1の長方形形状を有するカシメ突部形成領域10が設定されている。そして、長方形形状のカシメ突部形成領域10の、対向する長辺に沿って切断線21および22が形成される。
本発明では、切断線21および22は、レーザーによって形成される。
ここで、切断線21および22をレーザーによって形成すると、切断線21および22の幅sが約0.1mmとなる。すなわち、レーザーにより、対向する長辺に沿って切断線21および22を形成した後のカシメ突部形成領域10の幅W2は、切断線21および22が形成される前の幅W1より、切断線21および22の幅s分だけ狭く(短く)なり、[W2=W1−2×s]となる。
【0011】
次に、カシメ突部形成工程を、
図2〜
図4を参照して説明する。
切断線21および22が形成された状態で、ベンドパンチ30を用いて、カシメ突部形成領域10を、第1の板状部材Aの厚さ方向に沿った一方側から他方側(
図2の上方側から下方側)に押圧する。ベンドパンチ30は、当接面31および32を有する三角形状の突部を有しているため、カシメ突部形成領域10は、ベンドパンチ30の当接面31および32によって押圧される。
これにより、カシメ突部形成領域10が折り線40A、40Bおよび40Cの箇所で折り曲げられ、折り線40Cの両側の突部形成片41および42からなるV字形状のカシメ突部40が形成される。突部形成片41および42は、突部形成面41aおよび42a、凹部形成面41bおよび42b、側面41cと41dおよび42cと42dを有している。突部形成面41aおよび42aによりカシメ突部40の突面が形成され、凹部形成面41bおよび42bにより凹部40aが形成される。
なお、カシメ突部形成領域10が第1の板状部材Aの厚さ方向に沿って一方側から他方側に押圧されることによって、第1の板状部材Aの、厚さ方向に沿った一方側に開口10aが形成される。開口10aは、切断線21および22により形成された壁部21aおよび22aと、折り線40Aおよび40Bにより形成される。開口10aは、凹部40aと連通している。すなわち、カシメ突部40は、折り線40Aおよび40Bの箇所で開口10aに連設されている。
図2に示されているように、カシメ突部40を形成する突部形成片41および42の突部形成面41aおよび42aは、第1の板状部材Aの、厚さ方向に沿った他方側の面に連設され、また、凹部形成面41bおよび42bは、第1の板状部材Aの、厚さ方向に沿った一方側の面に連設されている。すなわち、開口10aおよび凹部40aは、本発明の「板状部材の、厚さ方向に沿った両側の面を連通する貫通孔」に対応しない。
ここで、前述したように、切断線21および22がレーザーによって形成されているため、
図3に示されているように、カシメ突部40の幅W2は、開口10aの幅(壁部21aと22aの間の間隔)W1より、切断線21および22の幅sの分だけ狭くなる(短くなる)。
カシメ突部40は、後述する他方の第2の板状部材Bのカシメ凹部50に、圧入等によって嵌合される。このため、カシメ突部40の突出長さ(第1の板状部材Aの、厚さ方向に沿った他方側の面から突出している長さ)Tは、カシメ凹部50が形成されている第2の板状部材Bの厚さDより長く設定される。好適には、厚さDの約2倍〜3倍に設定される。なお、好適には、積層される第1の板状部材Aと第2の板状部材Bは同じ厚さの電磁鋼板等により形成される。すなわち、第1の板状部材Aの厚さと第2の板状部材Bの厚さは等しく設定される。
【0012】
次に、カシメ凹部形成工程を、
図5を参照して説明する。
積層される2つの板状部材のうちの他方の第2の板状部材Bのカシメ凹部形成領域を切断してカシメ凹部50を形成する。これにより、カシメ凹部50は、第2の板状部材Bの、厚さ方向に沿った両側の面を連通する貫通孔として形成される。カシメ凹部形成領域の形状は、カシメ突部40と噛み付け可能な適宜の形状に形成される。
図2に示すカシメ突部40は、長方形形状のカシメ突部形成領域10を押圧してV字形状に形成されているため、
図5に示すカシメ凹部形成領域は、長辺の長さがL、短辺の長さ(幅)がW3の長方形形状に設定されている。なお、カシメ凹部形成領域の短辺の長さW3は、カシメ突部40の幅W2より少し狭く設定される。これにより、カシメ突部40は、圧入等によりカシメ凹部50に嵌合される。
カシメ凹部50が、本発明の「板状部材の、厚さ方向に沿った両側の面を連通する貫通孔」に対応する。
本発明では、レーザーにより、第2の板状部材Bのカシメ凹部形成領域を切断することによってカシメ凹部50を形成する。レーザーによりカシメ凹部形成領域を切断する場合には、レーザーによる切断線が幅を有することを考慮して切断する。
【0013】
次に、積層工程を、
図6を参照して説明する。
第1の板状部材Aと第2の板状部材Bを積層する場合には、第2の板状部材Bに形成されたカシメ凹部50に、第1の板状部材Aに形成されたカシメ突部40を、圧入等により嵌合させる。これにより、カシメ突部40を形成する突部形成片41および42の側壁41c、41dおよび42c,42dがカシメ凹部50を形成する側壁50aおよび50bと噛み付けられ、第1の板状部材Aと第2の板状部材Bが固定された状態で積層される。
【0014】
本発明の回転機の一実施形態を、
図7、
図8を参照して説明する。
図7は、永久磁石電動機100の概略構成を示す図であり、
図8は、
図7のVIII−VIII線断面図である。
永久磁石電動機100は、固定子110と、固定子110に対して回転可能に配置されている回転子150により構成されている。
【0015】
固定子110は、複数の板状部材を積層した積層体からなる固定子コア120により構成されている。好適には、板状部材は、レーザーにより電磁鋼板等を切断することによって形成される。固定子コア120を構成する板状部材には、カシメ突部130およびカシメ凹部140が形成されている。そして、複数の板状部材は、一方の板状部材のカシメ突部130を他方の板状部材のカシメ凹部140に圧入等により嵌合させることによってカシメ積層されている。板状部材をカシメ積層する方法は、後述する。
固定子コア120は、
図8に示されているように、軸方向に直角な断面で見て、周方向に沿って延在するヨーク121と、ヨーク121から径方向に沿って回転中心O側に延在するティース122を有している。ティース122は、径方向に沿って延在するティース基部123と、ティース基部123の回転中心O側に連設され、周方向に沿って延在するティース先端部124により形成されている。ティース先端部124の回転中心O側には、ティース先端面124aが形成されている。ティース先端面124aは、固定子110(固定子コア120)の内周面に対応する。
周方向に隣接するティース122によりスロット125が形成されている。スロット125内には、固定子巻線126が挿入されている。
【0016】
回転子150は、複数の板状部材を積層した積層体からなる回転子コア160により構成されている。好適には、板状部材は、レーザーにより電磁鋼板等を切断することによって形成される。回転子コア160を構成する板状部材には、カシメ突部170およびカシメ凹部180が形成されている。そして、複数の板状部材は、一方の板状部材のカシメ突部170を他方の板状部材のカシメ凹部180に圧入等により嵌合させることによってカシメ積層されている。板状部材をカシメ積層する方法は、後述する。
回転子コア160の内周面162により形成される回転軸挿入孔には、回転軸165が圧入等により挿入されている。
回転子コア160は、
図8に示されているように、軸方向に直角な断面で見て、周方向に沿って主磁極と補助磁極が交互に配置されている。
各主磁極には磁石挿入孔163が形成され、磁石挿入孔163には永久磁石164が挿入されている。磁石挿入孔163は、主磁極のd軸(回転中心Oと主磁極の周方向中心を結ぶ線)と交差する方向に延在している。磁石挿入孔163および永久磁石164の形状、数や配設位置等は、適宜変更可能である。
【0017】
次に、本実施形態の永久磁石電動機100で用いている板状部材の積層方法について説明する。先ず、本実施形態で用いている板状部材の積層方法の概要を、
図9を参照して説明する。なお、
図9は、第1の板状部材E1、E2と第2の板状部材F1、F2を積層する動作が示している。
第1の板状部材E1、E2および第2の板状部材F1、F2それぞれに、カシメ突部40およびカシメ凹部50が形成されている。カシメ突部40およびカシメ凹部50を形成する方法としては、前述した方法(
図1〜
図4)を用いることができる。
本実施形態では、第1の板状部材E1、E2と第2の板状部材F1、F2に、カシメ突部40およびカシメ凹部50が互い違いに形成されている。すなわち、第2の板状部材F1、F2は、第1の板状部材E1、E2の、カシメ突部40およびカシメ凹部50が形成されている箇所に対応する箇所に、カシメ凹部50およびカシメ突部40が形成されている。
【0018】
第1の板状部材(E1、E2)と第2の板状部材(F1、F2)は、以下のようにして積層される。
先ず、第1の板状部材(E1)に形成されているカシメ凹部50に、第2の板状部材(F)に形成されているカシメ突部40を圧入等により嵌合させることによって、第1の板状部材(E1)に第2の板状部材(F1)を積層する。
次に、第2の板状部材(F1)に形成されているカシメ凹部50に、第1の板状部材(E2)に形成されているカシメ突部40を圧入等により嵌合させることによって、第2の板状部材(F1)に第1の板状部材(E2)を積層する。
次に、第1の板状部材(E2)に形成されているカシメ凹部50に、第2の板状部材(F2)に形成されているカシメ突部40を圧入等により嵌合させることによって、第2の板状部材(F2)を第1の板状部材(E2)に積層する。
これにより、第1の板状部材(E1、E2)と第2の板状部材(F1、F2)は、固定された状態で積層される。また、積層される2つの板状部材のうちの一方の板状部材(例えば、第1の板状部材(E1、E2))におけるカシメ突部40およびカシメ凹部50の配設位置と、他方の板状部材(例えば、第2の板状部材(F1、F2))におけるカシメ突部40およびカシメ凹部50の配設位置が互い違いとなっているため、荷重バランスが良い積層体を構成することができる。
【0019】
次に、複数の板状部材を積層した積層体からなる固定子コア120の第1の実施形態を、
図10を参照して説明する。
図10には、第1の板状部材(120K1、120K2)と第2の板状部材(120L1)が積層された状態が示されている。
第1の板状部材(120K1、120K2)および第2の板状部材(120L1)には、カシメ突部130およびカシメ凹部140が形成されている。
本実施形態では、カシメ突部130として、
図2に示されているV字形状を有するカシメ突部40が用いられ、カシメ凹部140として、
図5に示されている断面が長方形形状を有するカシメ凹部50が用いられている。
また、本実施形態では、カシメ突部130およびカシメ凹部140は、各板状部材(120K1、120K2、120L1)の、ヨーク121に対応する箇所であって、ティース122に対応する箇所に形成されている。さらに、カシメ突部130とカシメ凹部140は、周方向に沿って並んだ位置に、周方向に沿って延在するように形成されている。
なお、第1の板状部材(120K1、120K2)と第2の板状部材(120L1)では、カシメ突部130およびカシメ凹部140の配設位置が互い違いとなっている。
カシメ突部130およびカシメ凹部140を、ヨーク121に対応する箇所であって、ティース122に対応する箇所に、周方向に沿って延在するように形成することによって、カシメ突部130およびカシメ凹部140の存在による、ティース122を流れる磁束の減少を抑制することができる。
【0020】
固定子コア120の第2の実施形態を、
図11を参照して説明する。
図11には、第1の板状部材(120M1、120M2)と第2の板状部材(120N1)が積層された状態が示されている。
第1の板状部材(120M1、120M2)および第2の板状部材(120N1)には、カシメ突部130およびカシメ凹部140が形成されている。
本実施形態は、カシメ突部130およびカシメ凹部140の配設位置が、
図10に示した実施形態と異なっている。すなわち、カシメ突部130およびカシメ凹部140は、各板状部材(120M1、120M2、120N1)の、ヨーク121に対応する箇所であって、周方向に隣接するティース122の間の周方向中央の箇所に形成されている。さらに、カシメ突部130とカシメ凹部140は、周方向に沿って並んだ位置に、周方向に沿って延在するように形成されている。
なお、第1の板状部材(120M1、120M2)と第2の板状部材(120N1)では、カシメ突部130およびカシメ凹部140の配設位置が互い違いとなっている。
カシメ突部130およびカシメ凹部140を、ヨーク121に対応する箇所であって、周方向に隣接するティース122の間の周方向中央の箇所に、周方向に沿って延在するように形成することによって、カシメ突部130およびカシメ凹部140の存在による、ヨーク121を流れる磁束の減少を抑制しながら、複数の板状部材を確実に固定することができる。
【0021】
次に、複数の板状部材を積層した積層体からなる回転子コア160の第1の実施形態を、
図12を参照して説明する。
図12には、第1の板状部材(160P1、160P2)と第2の板状部材(160Q1)が積層された状態が示されている。
第1の板状部材(160P1、160P2)および第2の板状部材(160Q1)には、カシメ突部170およびカシメ凹部180が形成されている。
本実施形態では、カシメ突部170として、
図2に示されているV字形状を有するカシメ突部40が用いられ、カシメ凹部180として、
図5に示されている断面が長方形形状を有するカシメ凹部50が用いられている。
また、本実施形態では、カシメ突部170およびカシメ凹部180は、各板状部材(160P1、160P2、160Q1)の、d軸近傍の(好適には、d軸と交差する)箇所であって、外周側(好適には、磁石挿入孔163より外周側)の箇所に形成されている。さらに、カシメ突部170とカシメ凹部180は、径方向に沿って並んだ位置に、径方向に沿って延在するように形成されている。
なお、第1の板状部材(160P1、160P2)と第2の板状部材(160Q1)では、カシメ突部170およびカシメ凹部180の配設位置が互い違いとなっている。
カシメ突部170およびカシメ凹部180を、d軸近傍の箇所であって、外周側の箇所に、径方向に沿って延在するように形成した場合、カシメ突部170およびカシメ凹部180の存在により、リラクタンストルクに寄与する磁束が流れ難くなるため、リラクタンストルクは減少する。一方、カシメ突部170およびカシメ凹部180の存在により、マグネットトルクに寄与する磁束が逃げ難くなるため、マグネットトルクは増大する。その結果、通電進み角が小さくなって力率が高くなり、効率が向上する。
【0022】
回転子コア160の第2の実施形態を、
図13を参照して説明する。
図13には、第1の板状部材(160R1、160R2)と第2の板状部材(160S1)が積層された状態が示されている。
第1の板状部材(160R1、160R2)および第2の板状部材(160S1)には、カシメ突部170およびカシメ凹部180が形成されている。
本実施形態は、カシメ突部170およびカシメ凹部180の配設位置が、
図12に示した実施形態と異なっている。すなわち、カシメ突部170およびカシメ凹部180は、回転中心Oと補助磁極の周方向中心を結ぶq軸近傍の(好適には、q軸と交差する)箇所であって、外周側の箇所に形成されている。さらに、カシメ突部170とカシメ凹部180は、径方向に沿って並んだ位置に、径方向に沿って延在するように形成されている。
なお、第1の板状部材(160R1、160R2)と第2の板状部材(160S1)では、カシメ突部170およびカシメ凹部180の配設位置が互い違いとなっている。
カシメ突部170およびカシメ凹部180を、q軸近傍の箇所であって、外周側の箇所に、径方向に沿って延在するように形成した場合、カシメ突部170およびカシメ凹部180の存在により、q軸を介して短絡される磁石の磁束が流れ難くなる。これにより、q軸を介して短絡される磁石の磁束が減少し、マグネットトルクが増加する。
【0023】
なお、カシメ突部170およびカシメ凹部180は、d軸近傍の箇所およびq軸近傍の箇所の双方に形成することもできる。
この場合、回転子コア160の強度を高めることができ、振動や騒音の発生を抑制することができる。
【0024】
本発明は、実施形態で説明した構成に限定されず、本発明の要旨を変化しない範囲内で、種々の変更、追加、削除が可能である。
実施形態では、長方形形状を有するカシメ突部形成領域の対向する長辺の中央部を結ぶ箇所を押圧することによって形成されたV字形状を有するカシメ突部と、長方形形状の断面を有するカシメ凹部を用いたが、カシメ突部やカシメ凹部の形状はこれに限定されない。
積層される第1の板状部材と第2の板状部材に、カシメ突部およびカシメ凹部を、カシメ突部およびカシメ凹部の配設位置が第1の板状部材と第2の板状部材で互い違いになるように形成したが、カシメ凹部およびカシメ突部の配設位置は適宜設定可能である。また、少なくとも、積層される一方の第1の板状部材にカシメ突部が形成され、他方の第2の板状部材にカシメ凹部が形成されていればよい。
固定子コアや回転子コアを構成する板状部材におけるカシメ突部やカシメ凹部の数、配設位置、配設方向等は、適宜変更可能である。
本発明は、第1の板状部材と第2の板状部材を積層する積層方法として構成することもできる。
本発明は、複数の板状部材を積層した積層体を製造する積層体製造方法として構成することもできる。
実施形態では、永久磁石電動機について説明したが、本発明は、永久磁石電動機以外の種々の電動機として構成することができ、さらに、電動機以外の回転機、例えば、発電機として構成することもできる。
実施形態で説明した各構成は、単独で用いることもできるし、適宜選択した複数の構成を組み合わせ用いることもできる。