特開2017-93372(P2017-93372A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2017-93372(P2017-93372A)
(43)【公開日】2017年6月1日
(54)【発明の名称】製糖装置
(51)【国際特許分類】
   C13B 30/02 20110101AFI20170428BHJP
【FI】
   C13B30/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2015-230269(P2015-230269)
(22)【出願日】2015年11月26日
(71)【出願人】
【識別番号】592006132
【氏名又は名称】八甲エンジニアリング株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100129632
【弁理士】
【氏名又は名称】仲 晃一
(74)【代理人】
【識別番号】100148426
【弁理士】
【氏名又は名称】森貞 好昭
(74)【代理人】
【識別番号】100118038
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 勲
(72)【発明者】
【氏名】弥園 崇征
(57)【要約】
【課題】固定軸受け109及び軸受け用ブッシュ137と、攪拌軸107と、の接点部を真空結晶缶3内部と区画することで当該接点部より発生する摩耗片を真空結晶缶103内部の液糖及び結晶スラリーに混入することを防止可能な製糖装置1の提供を目的とする。
【解決手段】結晶スラリーを精製する製糖装置1であって、少なくとも、真空結晶缶3と、攪拌用プロペラ5と、攪拌軸7と、固定軸受け9と、隔離ボックス41と、ボックス用蓋43と、パイプ脚45と、を備え、前記固定軸受け9を前記隔離ボックス41内部に固定して前記ボックス用蓋43で閉じ、前記真空結晶缶3内部と完全に区画し、前記隔離ボックス41の中空層が前記パイプ脚45の中空層を介して前記真空結晶缶3の外部に連通されていること、を特徴とする。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
結晶スラリーを精製する製糖装置1であって、
少なくとも、真空結晶缶3と、攪拌用プロペラ5と、攪拌軸7と、固定軸受け9と、隔離ボックス41と、ボックス用蓋43と、中空のパイプ脚45と、を備え、
前記固定軸受け9を前記隔離ボックス41内部に固定して前記ボックス用蓋43で閉じ、前記真空結晶缶3の内部から区画されており、
前記隔離ボックス41の内部が前記パイプ脚45の中空部分を介して前記真空結晶缶3の外部に連通している構成を有すること、
を特徴とする製糖装置1。
【請求項2】
前記パイプ脚45を3本又は4本具備すること、
を特徴とする請求項1に記載の製糖装置1。
【請求項3】
前記ボックス用蓋43が攪拌軸7を通すための軸通し孔47を具備し、前記攪拌軸7と、軸通し孔47と、の接点にメカニカルシールを具備すること、
を特徴とする請求項1又は2に記載の製糖装置1。
【請求項4】
前記真空結晶缶3の最下部に結晶スラリー排出バルブ21を具備すること、
を特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の製糖装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、結晶スラリーの精製中に装置から発生する摩耗片等の異物が、加工中の液糖及び結晶スラリーに混入することを防止可能な製糖装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、砂糖の製造過程には、原料糖を加工して精製した液糖を真空結晶缶に入れ、当該液糖を攪拌及び加熱することで結晶スラリーを精製する工程が必要となる(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
かかる結晶スラリーの精製に用いられる製糖装置には、少なくとも液糖の攪拌及び加熱を行うための器となる真空結晶缶と、当該真空結晶缶内部の液糖を攪拌するための攪拌用プロペラと、当該攪拌用プロペラの軸となる攪拌軸と、当該攪拌軸の位置決めをする固定軸受けと、が備えられている。
【0004】
ここで、図1に、従来の製糖装置における固定軸受け109の周辺部の部分断面図を示す。真空結晶缶103内部には、攪拌軸107及び攪拌用プロペラ105が備えられており、攪拌軸107における下方側端部は、攪拌用プロペラ105を備えたうえで軸受け用ブッシュ137を備えた固定軸受け109に納められている。
【0005】
また、当該固定軸受け109は、軸受け用フランジ31に固定されており、当該軸受け用フランジ31は複数のアングル脚33を介して真空結晶缶103の最下部に備えられた結晶スラリー受け125と固定されている。
【0006】
真空結晶缶103内部に注入された液糖は、攪拌用プロペラ105によって攪拌されつつ、真空結晶缶103下方部に設けられた蒸気対流室115に吹き入れられる加熱用蒸気等の加熱媒体によって間接的に加熱される。これにより、液糖は加熱及び攪拌工程を経て沸騰蒸発し、徐々に濃縮する。さらに液糖は過飽和領域が形成されて結晶成長を達成し、結晶スラリーが精製される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2005−6520号広報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、従来の製糖装置では固定軸受け109が真空結晶缶103内部の液糖に浸水することから、当該固定軸受け109及び軸受け用ブッシュ137と、攪拌軸107と、が摩擦することで発生する摩耗片が真空結晶缶103内部の液糖及び結晶スラリーに混入してしまう問題があった。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記のような問題に対し、本発明者らは、固定軸受け109及び軸受け用ブッシュ137と、攪拌軸107と、の接点部周辺における構造に着目し、改良設計を繰り返して鋭意検討を行うことにより、上記のような問題を解決する発明に至った。
【0010】
即ち、本発明は、上記問題に鑑みて創作されたものであり、固定軸受け109及び軸受け用ブッシュ137と、攪拌軸107と、の接点部を、真空結晶缶3内部と区画することで、当該接点部より発生する摩耗片を真空結晶缶103内部の液糖及び結晶スラリーに混入することを防止可能な製糖装置1の提供を目的とする。
【0011】
本発明は、
結晶スラリーを精製する製糖装置1であって、
少なくとも、真空結晶缶3と、攪拌用プロペラ5と、攪拌軸7と、固定軸受け9と、隔離ボックス41と、ボックス用蓋43と、中空のパイプ脚45と、を備え、
前記固定軸受け9を前記隔離ボックス41内部に固定して前記ボックス用蓋43で閉じ、前記真空結晶缶3の内部が区画されており、
前記隔離ボックス41の内部が前記パイプ脚45の中空部分を介して前記真空結晶缶3の外部に連通している特徴を有する。
【0012】
攪拌軸7の下方側先端部を納めた固定軸受け9は、隔離ボックス41内部の底面部中央に固定され、ボックス用蓋43で閉じて真空結晶缶3の内部からは完全に区画されている(換言すると隔離されている。)。また、隔離ボックス41は、内部に中空層を有するパイプ脚45を用いて支えられ、当該パイプ脚45を介して隔離ボックス41の中空層と、外部と、が連通されている。
【0013】
これにより、固定軸受け9及び軸受け用ブッシュ37と、攪拌軸7と、の接点部が真空結晶缶3の内部からは完全に区画され、固定軸受け9又は軸受け用ブッシュ37と、攪拌軸7と、の摩擦によって発生する摩耗片を外部へ排出し、真空結晶缶3内部の液糖及び結晶スラリーに混入することを完全に防止可能となる。
【0014】
上記のような構成を有する本発明の製糖装置1においては、さらに前記パイプ脚45が3本又は4本備わっていることが望ましい。
【0015】
隔離ボックス41は固定軸受け9を介して回転する攪拌軸7及び攪拌用プロペラ5を支持するため、パイプ脚45を3本又は4本用いて強固に隔離ボックス41を固定することが望ましい。
【0016】
上記のような構成を有する本発明の製糖装置1においては、さらに前記ボックス用蓋43が攪拌軸7を通すための軸通し孔47を備え、前記攪拌軸7と、軸通し孔47と、の接点にメカニカルシールを備える。
【0017】
ボックス用蓋43に備わった軸通し孔47と、攪拌軸7と、の接点にはメカニカルシールを備え、攪拌軸7の回転時においても真空結晶缶3内部と、隔離ボックス41と、を完全に区画し、真空結晶缶3内部の液糖及び結晶スラリーが隔離ボックス41内部に侵入しないよう封止することが望ましい。
【0018】
また、上記のような構成を有する本発明の製糖装置1においては、さらに前記真空結晶缶3の最下部に結晶スラリー排出バルブ21を備える特徴を有する。
【0019】
結晶スラリー精製後、真空結晶缶3の最下部に備えられた結晶スラリー排出バルブ21から結晶スラリーを外部に排出可能な構造とすることが望ましい。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】従来の製糖装置における固定軸受け109周辺部の詳細を示す部分断面図である。
図2】本発明の実施形態における製糖装置1の概要を示す断面図である。
図3図2に示す固定軸受け9周辺部の詳細を示す部分断面図である。
図4図2に示す隔離ボックス41及びパイプ脚45の詳細を示す部分断面図である。
図5図2に示す真空結晶缶3内部における液糖の対流を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明に係る製糖装置の代表的な実施形態を、図1図5を参照しながら詳細に説明するが、本発明が図示されるものに限られないことはいうまでもない。また、各図面は本発明を概念的に説明するためのものであるから、理解容易のために、必要に応じて寸法、比又は数を誇張又は簡略化して表している場合もある。更に、以下の説明では、同一又は相当部分には同一符号を付し、重複する説明は省略することもある。
【0022】
まず、図2を用いて、本発明の実施形態に係る製糖装置1の概要について説明する。図2は、本発明の実施形態に係る製糖装置1の概要を示す断面図である。図2に示すように、本発明の製糖装置1は砂糖を製造する工程における結晶スラリー精製装置であって、液糖を加熱しつつ攪拌することで液糖に含まれた水分を蒸発させて、所定粒径まで砂糖の結晶を成長させるものである。
【0023】
本実施形態の製糖装置1は、概ね真空結晶缶3と、攪拌用プロペラ5と、攪拌軸7と、固定軸受け9と、電動回転機11と、蒸気吹き入れ口13と、蒸気対流室15と、伝熱管16と、ガス抜き口17と、水抜きドレン19と、排出バルブ21と、液糖チャージパイプ23と、結晶スラリー受け25と、軸受け用ブッシュ37と、隔離ボックス41と、ボックス用蓋43と、パイプ脚45と、軸通し孔47と、メカニカルシール49と、から構成されている。
【0024】
真空結晶缶3は、内部に中空層を有した円蓋形状をしており、当該中空層内部に液糖を挿入し、加熱及び攪拌処理を行うためのものである。当該真空結晶缶3内部には、軸方向に通された攪拌軸7と、当該攪拌軸7に設けられる攪拌用プロペラ5と、が備えられている。当該攪拌軸7は、真空結晶缶3内部の下方部から上部まで伸びており、上方側端部は真空結晶缶3の外部に突出している。
【0025】
また、真空結晶缶3における上部には電動式のモータ等を用いて駆動可能な電動回転機11が備えられている。当該電動回転機11は、真空結晶缶3上部から突出した攪拌軸7の上方側端部と直接的又は間接的に嵌合して駆動中の回転運動を攪拌軸7に伝えることが可能である。
【0026】
さらに、真空結晶缶3の下方部には略円環形状の蒸気対流室15が備わっており、当該蒸気対流室15と、真空結晶缶3外部と、を連通した蒸気吹き入れ口13によって当該蒸気対流室15内部に加熱用蒸気等における加熱媒体の吹き入れが可能となっている。また、蒸気対流室15には、天面から下面を貫通するパイプ状の伝熱管16が複数本備わっており、液糖は当該伝熱管16内部を移動することで真空結晶缶3を対流し、効果的に加熱されることになる。
【0027】
さらに、蒸気対流室15には、当該蒸気対流室15内部から外部に連通されたガス抜き口17及び水抜きドレン19が備えられており、蒸気対流室15に吹き入れられた加熱用蒸気の排出と、冷やされて溜まった水の排出と、が可能である。
【0028】
真空結晶缶3の最下部には略円錐状の結晶スラリー受け25が備えられており、真空結晶缶3内部で加工された結晶スラリーを受けている。さらに、当該結晶スラリー受け25の下方先端部には結晶スラリー排出バルブ21が備えられている。当該結晶スラリー排出バルブ21は、液糖を加熱及び攪拌時、結晶スラリー受け25と完全に密着された状態となるが、結晶スラリーの精製終了後は下方に引き下げることによって結晶スラリー受け25に受けられた結晶スラリーを外部に排出することが可能となる。
【0029】
攪拌軸7は円柱状で、上述の通り真空結晶缶3内部の下方部から上方部にまで伸びており、当該攪拌軸7の上方側端部は真空結晶缶3の外部に突出している。攪拌軸7と、真空結晶缶3と、の接点には第1固定メカニカルシール49が備えられており、真空結晶缶3内部に外気が吸い込まれないよう封止されている。当該第1固定メカニカルシール49は、スタフィングボックスと、グランドパッキンと、で代替使用されることも容易に想定されるものである。
【0030】
攪拌軸7における下方側端部は、攪拌用プロペラ5を備えたうえで固定軸受け9に納められている。また、攪拌軸7は複数のジョイント及びガイドを用いて一体的に構成されており、真空結晶缶3内部中心で回転可能に備え付けられている。なお、攪拌用プロペラ5は、攪拌軸7に応じて回転する。
【0031】
攪拌用プロペラ5は、3枚又は4枚から成る複数枚の羽根と、当該複数枚の羽根を支持する軸部と、が一体的に構成されており、軸部の中心を攪拌軸7が貫通している。当該攪拌用プロペラ5は、真空結晶缶3下方部に備えられた蒸気対流室15における中心の開口部内に配置されており、当該開口部内で回転することとなる。
【0032】
また、攪拌用プロペラ5近傍には液糖チャージパイプ23が配置されており、真空結晶缶3外部から注入した液糖が攪拌用プロペラ5近傍に流れ込むことで効果的に攪拌されるよう構成されている。
【0033】
次に、図3を用いて、本実施形態の製糖装置1における固定軸受け9周辺部の詳細について説明する。図3は、図2に示す固定軸受け9周辺部の詳細を示す部分断面図である。図3に示すように、上述した攪拌軸7の下方側端部には攪拌用プロペラ5を備えたうえで固定軸受け9に納められている。
【0034】
攪拌軸7の下方側端部側面と、固定軸受け9の内面と、は直接当接せず軸受け用ブッシュ37を介して嵌合されているため、攪拌軸7が回転時に固定軸受け9と摩擦して互いに摩耗することを防ぎつつ攪拌軸7の回転を円滑にしている。なお、軸受け用ブッシュ37は、ころ軸受けで代替してもよい。
【0035】
攪拌軸7の下方側先端部を納めた固定軸受け9は、隔離ボックス41内部の底面部中央に固定され、ボックス用蓋43で閉じて真空結晶缶3の内部からは完全に区画(隔離)されている。当該隔離ボックス41は、内部に中空層を有した箱状又は円筒状等であって、固定軸受け9の固定前は上部が開口されている。
【0036】
当該開口には上述したようにボックス用蓋43で閉じられることとなるが、ボックス用蓋43の中央には攪拌軸7を通すための軸通し孔47が備えられており、攪拌軸7の下方側先端部を通した状態で隔離ボックス41を閉じることが可能である。
【0037】
また、攪拌軸7と、軸通し孔47と、の接点には第2メカニカルシール50が備えられており、真空結晶缶3内部の液糖及び結晶スラリーが隔離ボックス41内部に侵入しないよう封止されている。当該第2メカニカルシール50は、第1メカニカルシール49と同様に、スタフィングボックスと、グランドパッキンと、で代替されることも容易に想定される。
【0038】
次に、図4を用いて、本実施形態の製糖装置1における隔離ボックス41及びパイプ脚45の詳細について説明する。図4は、図2に示す隔離ボックス41及びパイプ脚45の詳細を示す部分断面図である。
【0039】
隔離ボックス41は、内部に中空部分を有するパイプ状のパイプ脚45を3本又は4本用いて支えられている。当該パイプ脚45の一方の端部は、隔離ボックス41の側面部と、底面部と、の当接部に溶接されており、それぞれのパイプ脚45は隔離ボックス41を均等に支持するよう配置されている。なお、隔離ボックス41は必ずしも複数本のパイプ脚45で支持する必要はなく、少なくともパイプ脚45が一本あればよい。また、アングル等で構成された他の脚を組み合わせて使用してもよい。
【0040】
また、パイプ脚45におけるもう一方の端部は、所定長さを結晶スラリー受け25から外部に貫通させて溶接している。即ち、上記の構造から、隔離ボックス41の中空部分と、パイプ脚45の中空部分と、外部と、が連通する構成を有することとなる。換言すると、隔離ボックス41の中空部分及びパイプ脚45の中空部分は、真空結晶缶3の内部からは隔離されつつ外部に開放されることになる。
【0041】
攪拌軸7の下方側先端部を納めた固定軸受け9は、上述において説明した隔離ボックス41の内部に固定されることにより、真空結晶缶3の内部とは完全に隔離される。これにより、攪拌軸7と、軸受け用ブッシュ37又は固定軸受け9と、の摩擦によって発生する摩耗片が真空結晶缶3内部の液糖及び結晶スラリーに混入することを完全に防止することが可能となる。
【0042】
また、隔離ボックス41における中空層は、パイプ脚45の中空層を介して外部に連通しているため、摩耗片が隔離ボックス41の中空層に溜まることなくパイプ脚45によって作られた摩耗片排出路51を通り、外部に排出されることとなる。
【0043】
次に、図5を用いて、本発明の製糖装置1を用いて液糖から結晶スラリーを精製する工程について詳細に説明する。図5は、図2に示す真空結晶缶3内部における液糖の対流を示す模式図である。まず、原料糖を種々の装置を用いて加工し、ろ過機及びファインリカータンクを経て精製された液糖を真空結晶缶3に備えられた液糖チャージパイプから当該真空結晶缶3内部に注入する。
【0044】
真空結晶缶3内部に所定量の液糖注入が完了した後、当該真空結晶缶3の下方部に備えられた蒸気吹き入れ口13から蒸気対流室15内部に高温の加熱用蒸気を吹き入れ、当該蒸気対流室15内部で加熱用蒸気を対流させる。この時、蒸気対流室15に備えられたガス抜き口17及び水抜きドレン19により、蒸気対流室15に吹き入れられた加熱用蒸気と、冷やされて溜まった水と、を外部に排出する。
【0045】
また、加熱用蒸気の吹き入れと略同時に電動回転機11を駆動させ、当該電動回転機11と直接的又は間接的に嵌合した攪拌軸7及び攪拌プロペラ5を回転させる。なお、攪拌用プロペラ5の回転方向は下方側へ液糖を攪拌させるように設定されている。
【0046】
加熱用蒸気によって熱された蒸気対流室15により真空結晶缶3内部の液糖が間接的に加熱される。さらに、真空結晶缶3内部の液糖は攪拌プロペラ5の回転によって下方側へ押されるため、蒸気対流室15に備わった伝熱管16を通って当該蒸気対流室15の下面側から天面側へ移動する。蒸気対流室15の天面側へ移動した液糖は攪拌プロペラ5回転に誘導され、再度当該攪拌プロペラ5の下方側へ移動する。このように、液糖は攪拌プロペラ5が形成する循環流よって継続的に攪拌されるため、真空結晶缶3内において均等に加熱されることとなる。なお、液糖の加熱中は真空結晶缶3内部が略真空状態に保たれ、液糖の沸点を低下させている。
【0047】
真空結晶缶3内部の液糖は上述した加熱及び攪拌工程を経て沸騰蒸発し、徐々に濃縮される。これにより、液糖は過飽和領域が形成されて結晶成長を達成し、結晶スラリーが精製されることとなる。所定濃度の結晶スラリーが精製された後、電動回転機11の駆動及び蒸気吹き入れ口13から加熱用蒸気の吹き入れを停止し、攪拌軸7及び攪拌用プロペラ5の回転と、蒸気対流室の加熱と、を終了させる。
【0048】
真空結晶缶3内部で精製された結晶スラリーは、結晶スラリー排出バルブ21を下方に引き下げることによって外部に排出可能となり、真空結晶缶3内部から当該結晶スラリーを取り出すことが可能となる。
【0049】
上述において結晶スラリーの精製工程を説明してきたが、全ての工程で真空結晶缶3内部に注入された液糖が隔離ボックス41内部に侵入することはない。従って、攪拌軸7と、軸受け用ブッシュ37又は固定軸受け9と、の摩擦によって発生する摩耗片は液糖及び精製後の結晶スラリーに混入することがなく、隔離ボックス41の中空層及びパイプ脚45の中空層から構成された摩耗片排出路51を介して真空結晶缶3外部へ排出されることとなる。
【0050】
攪拌軸7と、軸受け用ブッシュ37又は固定軸受け9と、の摩擦によって発生する摩耗片の混入を完全に防止して精製された結晶スラリーにより、異物混入のない清潔な砂糖を製造することが可能となり、消費者により安全な砂糖の提供ができる。
【0051】
以上、本発明の代表的な実施形態について図面を参照しつつ説明してきたが、本発明は、これらの実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲の記載の精神及び教示を逸脱しない範囲でその他の改良例、変形が存在することを当業者に容易に理解されるであろう。
【産業上の利用可能性】
【0052】
本発明の製糖装置1は、攪拌軸7の下方側先端部を納めた固定軸受け9は、隔離ボックス41内部の底面部中央に固定され、ボックス用蓋43で閉じて真空結晶缶3内部と完全に区画される。また、隔離ボックス41は、内部に中空層を有するパイプ脚45を用いて支えられ、当該パイプ脚45を介して隔離ボックス41の中空層と、外部と、が連通されている。これにより、固定軸受け9及び軸受け用ブッシュ37と、攪拌軸7と、の接点部が真空結晶缶3内部とは完全に区画され、固定軸受け9又は軸受け用ブッシュ37と、攪拌軸7と、の摩擦によって発生する摩耗片を外部へ排出し、真空結晶缶3内部の液糖及び結晶スラリーに混入することを完全に防止可能とするものである。
【符号の説明】
【0053】
103 真空結晶缶
105 攪拌用プロペラ
107 攪拌軸
109 固定軸受け
115 蒸気対流室
125 結晶スラリー受け
137 軸受け用ブッシュ
1 製糖装置
3 真空結晶缶
5 攪拌用プロペラ
7 攪拌軸
9 固定軸受け
11 電動回転機
13 蒸気吹き入れ口
15 蒸気対流室
16 伝熱管
17 ガス抜き口
19 水抜きドレン
21 結晶スラリー排出バルブ
23 液糖チャージパイプ
25 結晶スラリー受け
31 軸受け用フランジ
33 アングル脚
37 軸受け用ブッシュ
41 隔離ボックス
43 ボックス用蓋
45 パイプ脚
47 軸通し孔
49 第1固定メカニカルシール
50 第2メカニカルシール
51 摩耗片排出路
図1
図2
図3
図4
図5