【解決手段】有機酸の含有量が0.01〜2.0g/100mLであり、ミネラルの含有量が0.01〜1000mg/100mLであり、かつ、重合度2以上の澱粉分解物又は転移反応物の還元末端側のアルデヒド基が酸化された糖カルボン酸、その塩類及びそのラクトンからなる群から選択される少なくとも1つ以上からなる成分を含む飲料組成物である。
  前記糖カルボン酸が、マルトビオン酸、イソマルトビオン酸、マルトトリオン酸、イソマルトトリオン酸、マルトテトラオン酸、マルトヘキサオン酸、ラクトビオン酸、及びセロビオン酸からなる群から選択される少なくとも1つ以上を含む、請求項1又は2に記載の飲料組成物。
  前記糖カルボン酸が、マルトオリゴ糖酸化物、分岐オリゴ糖酸化物、水飴酸化物、粉飴酸化物又はデキストリン酸化物の形態で含まれる、請求項1から3のいずれかに記載の飲料組成物。
  前記ミネラルが、カルシウム、マグネシウム、鉄、亜鉛、銅及びカリウムからなる群から選択される少なくとも1つ以上を含む、請求項1から6のいずれかに記載の飲料組成物。
  重合度2以上の澱粉分解物又は転移反応物の還元末端側のアルデヒド基が酸化された糖カルボン酸、その塩類及びそのラクトンからなる群から選択される少なくとも1つ以上からなる、有機酸及びミネラルを含有する飲料における沈殿発生抑制剤。
  有機酸及びミネラルを含有する飲料において、重合度2以上の澱粉分解物又は転移反応物の還元末端側のアルデヒド基が酸化された糖カルボン酸、その塩類及びそのラクトンからなる群から選択される少なくとも1つ以上からなる成分を含有させることによって、沈殿の発生を抑制する方法。
  重合度2以上の澱粉分解物又は転移反応物の還元末端側のアルデヒド基が酸化された糖カルボン酸、その塩類及びそのラクトンからなる群から選択される少なくとも1つ以上からなる、ミネラルを含有する飲料における苦み低減剤。
  ミネラルを含有する飲料において、重合度2以上の澱粉分解物又は転移反応物の還元末端側のアルデヒド基が酸化された糖カルボン酸、その塩類及びそのラクトンからなる群から選択される少なくとも1つ以上からなる成分を含有させることによって、苦味を低減する方法。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
  しかしながら、上記特許文献1、3の飲料組成物においては、ミネラルによる沈殿の発生を抑制できるものの、飲料組成物に溶解するミネラルの含有量が多くなるため、ミネラル自身の苦みが強くなってしまう。特許文献2の飲料組成物においては、苦みを抑制できるものの、有機酸の存在下においては沈殿の発生を十分に抑制できない。
【0007】
  本発明は以上の実情に鑑みてなされたものであり、ミネラル成分を含有する飲料において、沈殿の発生を抑制しつつ、苦みを抑制可能な飲料組成物を提供することを目的とする。
 
【課題を解決するための手段】
【0008】
  本発明者らは、有機酸及びミネラル塩と、重合度2以上の澱粉分解物又は転移反応物の還元末端側のアルデヒド基が酸化された糖カルボン酸、その塩類及びそのラクトンからなる群から選択される少なくとも1つ以上からなる成分とを併用することで、殺菌時において沈殿の発生を抑え、苦味を抑制できることを見出し、本発明に至った。より具体的には、本発明は以下のようなものを提供する。
【0009】
  (1)  有機酸の含有量が0.01〜2.0g/100mLであり、
  ミネラルの含有量が0.01〜1000mg/100mLであり、かつ、
  重合度2以上の澱粉分解物又は転移反応物の還元末端側のアルデヒド基が酸化された糖カルボン酸、その塩類及びそのラクトンからなる群から選択される少なくとも1つ以上からなる成分を含む、飲料組成物。
【0010】
  (2)  前記成分以外の炭水化物の含有量が、0.1〜25g/100mLである、請求項1に記載の飲料組成物。
【0011】
  (3)  前記糖カルボン酸が、マルトビオン酸、イソマルトビオン酸、マルトトリオン酸、イソマルトトリオン酸、マルトテトラオン酸、マルトヘキサオン酸、ラクトビオン酸、及びセロビオン酸からなる群から選択される少なくとも1つ以上を含む、(1)又は(2)に記載の飲料組成物。
【0012】
  (4)  前記糖カルボン酸が、マルトオリゴ糖酸化物、分岐オリゴ糖酸化物、水飴酸化物、粉飴酸化物又はデキストリン酸化物の形態で含まれる、(1)から(3)のいずれかに記載の飲料組成物。
【0013】
  (5)  前記塩類が、カルシウム塩、マグネシウム塩及びナトリウム塩からなる群から選択される少なくとも1つ以上を含む、(1)から(4)のいずれかに記載の飲料組成物。
【0014】
  (6)  前記有機酸が、クエン酸、リンゴ酸、酒石酸、乳酸及び酢酸からなる群から選択される少なくとも1つ以上を含む、(1)から(5)のいずれかに記載の飲料組成物。
【0015】
  (7)  前記ミネラルが、カルシウム、マグネシウム、鉄、亜鉛、銅及びカリウムからなる群から選択される少なくとも1つ以上を含む、(1)から(6)のいずれかに記載の飲料組成物。
【0016】
  (8)  pHが2.0超6.0以下である、(1)から(7)のいずれかに記載の飲料組成。
【0017】
  (9)  前記成分の含有量(A)に対する前記ミネラルの含有量(B)の質量比(B/A)が、1.0以下である、(1)から(8)のいずれかに記載の飲料組成物。
【0018】
  (10)  重合度2以上の澱粉分解物又は転移反応物の還元末端側のアルデヒド基が酸化された糖カルボン酸、その塩類及びそのラクトンからなる群から選択される少なくとも1つ以上からなる、有機酸及びミネラルを含有する飲料における沈殿発生抑制剤。
【0019】
  (11)  有機酸及びミネラルを含有する飲料において、重合度2以上の澱粉分解物又は転移反応物の還元末端側のアルデヒド基が酸化された糖カルボン酸、その塩類及びそのラクトンからなる群から選択される少なくとも1つ以上からなる成分を含有させることによって、沈殿の発生を抑制する方法。
【0020】
  (12)  重合度2以上の澱粉分解物又は転移反応物の還元末端側のアルデヒド基が酸化された糖カルボン酸、その塩類及びそのラクトンからなる群から選択される少なくとも1つ以上からなる、ミネラルを含有する飲料における苦み低減剤。
【0021】
  (13)  ミネラルを含有する飲料において、重合度2以上の澱粉分解物又は転移反応物の還元末端側のアルデヒド基が酸化された糖カルボン酸、その塩類及びそのラクトンからなる群から選択される少なくとも1つ以上からなる成分を含有させることによって、苦味を低減する方法。
 
【発明の効果】
【0022】
  本発明によると、ミネラル成分を含有する飲料において、沈殿の発生を抑制しつつ、苦みを抑制可能な飲料組成物を提供することができる。
 
 
【発明を実施するための形態】
【0023】
  以下、本発明の具体的な実施形態について詳細に説明するが、本発明は以下の実施形態に何ら限定されるものではなく、本発明の目的の範囲内において、適宜変更を加えて実施することができる。なお、説明が重複する箇所については、適宜説明を省略する場合があるが、発明の要旨を限定するものではない。
 
【0024】
  <飲料組成物>
  本発明の飲料組成物は、有機酸の含有量が0.01〜2.0g/100mLであり、ミネラルの含有量が0.01〜1000mg/100mLであり、かつ、重合度2以上の澱粉分解物又は転移反応物の還元末端側のアルデヒド基が酸化された糖カルボン酸、その塩類及びそのラクトンからなる群から選択される少なくとも1つ以上からなる成分(以下、単に「糖カルボン酸」と称する場合がある)を含む。
 
【0025】
  本発明の飲料組成物によれば、ミネラルを多く含む飲料組成物においても、糖カルボン酸を併用することにより、有機酸とミネラルとが反応することによる沈殿の発生を抑制して清澄な溶液状態を維持し、かつ、ミネラル中の金属イオンに起因する苦味を抑制することで、呈味を改善した飲料を得ることができる。その理由は、ミネラルと糖カルボン酸の相互作用により、ミネラルと有機酸との塩形成を阻害したためであると考えられる。
 
【0026】
  (有機酸)
  本発明の飲料組成物に用いられる有機酸としては、クエン酸、リンゴ酸、酒石酸、乳酸、酢酸、リン酸、コハク酸、フマル酸、アジピン酸、イタコン酸、グルコン酸等が挙げられ、これらの有機酸塩である、クエン酸ナトリウム、クエン酸カルシウム、クエン酸カリウム、リンゴ酸ナトリウム、リンゴ酸カリウム、乳酸ナトリウム、乳酸カルシウム、乳酸カリウム、酢酸ナトリウム、酢酸カルシウム、酢酸カリウム、酒石酸ナトリウム、酒石酸カリウム、リン酸ナトリウム、グルコン酸ナトリウム、グルコン酸カリウム、グルコン酸カルシウム等が挙げられる。有機酸がミネラルと反応し、沈殿が発生しやすく苦味が出やすいが、糖カルボン酸を併用することにより、沈殿の発生を抑制し苦味を抑制し得る点から、クエン酸、リンゴ酸、酒石酸、乳酸及び酢酸が好ましい。また、酸味を呈するリンゴ、オレンジ、レモン、みかん、グレープフルーツ、いよかん、ポンカン、うめ、ぶどう、パインアップル、いちご、メロン、キウイフルーツ、シークワサー等から得られる果汁により有機酸を配合できる。これらは、単独で使用してもよく、2種類以上を併用してもよい。
 
【0027】
  有機酸の含有量は、飲料組成物中0.01〜2g/100mLであり、0.05〜2.0g/100mLが好ましく、0.2〜1.5g/100mLがより好ましく、0.4〜1.2g/100mLであることが好ましい。本発明の飲料組成物は、糖カルボン酸を含有し、かつ、有機酸の含有量が上記範囲であることにより、ミネラル成分中の金属イオンに起因する苦味を抑制し、かつ沈殿の発生を抑制することが可能である。特に、有機酸の含有量が多くなると、ミネラルとの反応により沈殿物が生じやすくなるが、本発明の飲料組成物は、さらに糖カルボン酸との併用により沈殿の発生を抑制し苦味を抑制し得ることができるため、飲料組成物中の有機酸の含有量が多いもの(例えば、0.5g/100mL以上、1.0g/100mL以上、1.5g/mL以上等)の有機酸を含有させることが可能である。有機酸の含有量は、高速液体クロマトグラフィ(BTBポストカラム法)により測定する。
 
【0028】
  本発明の飲料組成物のpHは、上記有機酸の種類や量の調整等により、所望の値に調整することが可能である。沈殿の発生を抑制する点からは、pHが2.0超6.0以下であることが好ましく、pHが3.0以上4.0以下であることがより好ましい。pHは、pHメーター(ガラス電極法)により測定する。
 
【0029】
  (ミネラル)
  本発明の飲料組成物に用いられるミネラルは、栄養素としての無機質であり、カルシウム、マグネシウム、ナトリウム、鉄、カリウム、リン、クロム、マンガン、銅、亜鉛、セレン、モリブデン、ヨウ素等が挙げられる。ミネラルが有機酸と反応し、沈殿が発生しやすく苦味が出やすいが、糖カルボン酸の併用により沈殿の発生を抑制し苦味を抑制し得る点から、カルシウム、マグネシウム、鉄、亜鉛、銅及びカリウムが好ましい。これらは単独で使用してもよく、2種類以上を併用してもよい。
 
【0030】
  ミネラルの含有量は、飲料組成物中、0.01〜1000mg/100mLであり、1.0〜800mg/100mLが好ましく、50〜500mg/100mLがより好ましく、100〜500mg/mLがよりさらに好ましい。本発明の飲料組成物は、糖カルボン酸を含有し、かつ、ミネラルの含有量が上記範囲であることにより、ミネラル成分中の金属イオンに起因する苦味を抑制しつつ、沈殿の発生を抑制し、かつ飲料組成物による体内へのミネラルの供給が可能である。特に、ミネラルの含有量が100mg/mLを超えると、有機酸との反応により沈殿物が生じやすくなるが、本発明の飲料組成物は、さらに糖カルボン酸との併用により沈殿の発生を抑制し苦味を抑制し得ることから、飲料組成物中100mg/mL超(200mg/mL以上、400mg/mL以上、600mg/mL以上、800mg/mL等)のミネラルを含有させることが可能である。但し、ミネラルの含有量が1000mgを超えると、苦味を感じやすくなるため好ましくない。飲料組成物中のミネラルの含有量は、ICP(誘導結合プラズマ)発光分析法装置により、測定する。
 
【0031】
  ミネラルは、原料となる水の性質や、有機酸塩、糖カルボン酸塩等の添加剤の種類や量の調製等により所望の成分、含有量の値に調整することが可能である。例えば、カルシウムは、イオン交換水、蒸留水、水道水、井戸水、天然水、海水、海洋深層水へ、炭酸カルシウム、塩化カルシウム、乳酸カルシウム、酢酸カルシウム、アスコルビン酸カルシウムを溶解させることで調整可能である。マグネシウムは、イオン交換水、蒸留水、水道水、井戸水、天然水、海水、海洋深層水へ、酸化マグネシウム、塩化マグネシウム、リン酸マグネシウム等を溶解させることで調整可能である。また、鉄は、イオン交換水、蒸留水、水道水、井戸水、天然水、海水、海洋深層水へ、酸鉄、塩化鉄、硫酸第一鉄、クエン酸第一鉄、クエン酸鉄アンモニウム、クエン酸鉄ナトリウム、グルコン酸第一鉄等を溶解させることで調整可能である。
 
【0032】
  (糖カルボン酸)
  本発明の飲料組成物は、重合度2以上の澱粉分解物又は転移反応物の還元末端側のアルデヒド基が酸化された糖カルボン酸、その塩類及びそのラクトンからなる群から選択される少なくとも1つ以上からなる成分を含有する。糖カルボン酸は、重合度2以上の澱粉分解物又は転移反応物の還元末端側のアルデヒド基が酸化されたものであれば、特に限定されない。澱粉分解物又は転移反応物の重合度は、例えば、2〜100等であってもよい。より具体的には、糖カルボン酸は、マルトビオン酸、イソマルトビオン酸、マルトトリオン酸、イソマルトトリオン酸、マルトテトラオン酸、マルトヘキサオン酸、ラクトビオン酸、セロビオン酸、パノース酸化物等が挙げられる。これらのうち、沈殿の発生を抑制しつつ、苦味を抑制し得る能力が高い点で、マルトビオン酸、マルトトリオン酸が好ましく、マルトビオン酸がより好ましい。これらは、単独で使用してよく、2種以上を併用してもよい。また、糖カルボン酸は、遊離の酸であってもよく、塩又はラクトンであってもよい。
 
【0033】
  上記成分(重合度2以上の澱粉分解物又は転移反応物の還元末端側のアルデヒド基が酸化された糖カルボン酸、その塩類及びそのラクトンからなる群から選択される少なくとも1つ以上からなる成分)の含有量(A)に対する、上記ミネラルの含有量(B)の質量比(B/A)は、1.0以下であることが好ましく、0.2以下であることがより好ましく、0.04以下であることがさらにより好ましい。上記成分の含有量(A)に対するミネラルの含有量(B)の質量比(B/A)が上記範囲であることにより、ミネラル成分中の金属イオンに起因する苦味を抑制し、かつ沈殿の発生を抑制することが可能である。また、上記成分の含有量(A)に対するミネラルの含有量(B)の質量比(B/A)の下限は、特に限定されず、例えば、0.01以上であってもよい。
 
【0034】
  糖カルボン酸の含有量は、HPAED−PAD法(パルスドアンペロメトリー検出器、CarboPac  PA1カラム)により測定する。測定は、溶出:35℃、1.0ml/min、水酸化ナトリウム濃度:100mM、酢酸ナトリウム濃度:0分−0mM、5分−0mM、10分−40mM、30分−50mMの条件で行う。
 
【0035】
  上記成分(重合度2以上の澱粉分解物又は転移反応物の還元末端側のアルデヒド基が酸化された糖カルボン酸、その塩類及びそのラクトンからなる群から選択される少なくとも1つ以上からなる成分)は、本発明の飲料組成物中、沈殿の発生を抑制しつつ、苦味を抑制し得る点で、0.0002g/100mL以上の含有量であることが好ましく、0.02g/100mL以上の含有量であることがより好ましく、0.1g/100mL以上の含有量であることがさらに好ましく、0.5g/100mL以上の含有量であることがさらにより好ましく、1.0g/100mL以上の含有量であることがさらによりいっそう好ましい。また、上記成分の本発明の飲料組成物中の含有量の上限は、特に限定されず、例えば、30g/100mL以下(25g/100mL以下、20g/100mL以下、10g/100mL以下等)であってもよい。
 
【0036】
  糖カルボン酸の塩としては、特に限定されないが、カルシウム塩、マグネシウム塩、カリウム塩、ナトリウム塩、亜鉛塩、鉄塩、銅塩等が挙げられる。これらのうち、沈殿の発生を抑制しつつ、苦味を抑制し得る点で、カルシウム塩、マグネシウム塩、カリウム塩、ナトリウム塩が好ましい。これらは、単独で使用してよく、2種以上を併用してもよい。
 
【0037】
  糖カルボン酸は、どのような形態で含まれてもよく、例えば、マルトオリゴ糖酸化物、分岐オリゴ糖酸化物、水飴酸化物、粉飴酸化物又はデキストリン酸化物の形態で含まれてもよい。また、液体であっても粉末であってもよい。
 
【0038】
  糖カルボン酸は、常法に従って製造することができる。例えば、澱粉分解物又は転移反応物を化学的な酸化反応により酸化する方法や、澱粉分解物又は転移反応物にオリゴ糖酸化能を有する微生物、又は酸化酵素を作用させる反応により製造することができる。
 
【0039】
  化学的な酸化反応としては、例えば、パラジウム、白金、ビスマス等を活性炭に担持させた酸化触媒の存在下で、マルトース等の重合度2以上のアルドースと酸素をアルカリ雰囲気下で接触酸化させることにより、糖カルボン酸を製造することができる。以下に、化学的な酸化反応によるマルトビオン酸の製造方法について、より具体的な一例を説明する。
 
【0040】
  まず、50℃に保持した20%マルトース溶液100mlに白金−活性炭触媒3gを加え、100mL/minで酸素を吹き込みながら600rpmで攪拌する。反応pHは、10N水酸化ナトリウム溶液を滴下することによって、pH9.0に維持する。そして、反応開始から5時間後、遠心分離とメンブレンフィルターろ過により触媒を取り除いて、マルトビオン酸ナトリウム溶液を得ることができる。得られたマルトビオン酸ナトリウム溶液をカチオン交換樹脂又は電気透析により脱塩することで、マルトビオン酸を得ることができる。
 
【0041】
  マルトビオン酸に塩類を添加することで、マルトビオン酸塩を調製可能である。例えば、マルトビオン酸カルシウムを製造するには、上記の方法で得られたマルトビオン酸溶液に炭酸カルシウム等のカルシウム源を2:1のモル比となるように添加し、溶解させることで、マルトビオン酸カルシウムを調製することができる。この際に使用されるカルシウム源は、可食性のカルシウムであれば特に限定されず、例えば、卵殻粉末、サンゴ粉末、骨粉末、貝殻粉末等の天然素材、或いは、炭酸カルシウム、塩化カルシウム等の化学合成品等が挙げられる。
 
【0042】
  ラクトンを調製する方法は、特に限定されないが、脱水操作により調製することができ、例えばマルトビオン酸を脱水操作することで、マルトビオノラクトンを調製することができる。また、マルトビオノラクトン等のラクトンは、水に溶かすと速やかにマルトビオン酸等の糖カルボン酸となる。
 
【0043】
  オリゴ糖酸化能を有する微生物を用いた方法としては、例えば、アシネトバクター属、ブルクホルデリア属、アセトバクター属、グルコノバクター属等を用いた微生物変換・発酵法により糖カルボン酸を製造することができる。
 
【0044】
  酵素反応による製造方法としては、例えば、オリゴ糖酸化能を有する微生物から酸化酵素を抽出する方法で製造することができる。
 
【0045】
  (炭水化物)
  また、本発明の飲料組成物は、上記成分(重合度2以上の澱粉分解物又は転移反応物の還元末端側のアルデヒド基が酸化された糖カルボン酸、その塩類及びそのラクトンからなる群から選択される少なくとも1つ以上からなる成分)以外の炭水化物を含有していることが好ましい。これにより、ミネラルの苦みをより抑制することができる。上記成分以外の炭水化物としては、特に限定されないが、砂糖、異性化糖、ぶどう糖、果糖、果糖ぶどう糖液糖、ぶどう糖果糖液糖、はちみつ、水飴、粉飴、マルトデキストリン、ソルビトール、マルチトール、還元水飴、マルトース、トレハロース、黒糖等が挙げられる。これらは1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
 
【0046】
  苦味を抑制し得る点で、上記成分以外の炭水化物の含有量は、0.1〜25g/100mLであることが好ましく、0.5〜25g/100mLの含有量であることがより好ましく、1〜15g/100mLの含有量であることがさらにより好ましい。炭水化物の含有量は、飲料組成物より、水分の含有量(常圧加熱乾燥法により測定する)、たんぱく質の含有量(ケルダール法により測定する)、脂質の含有量(酸分解法により測定する)、灰分の含有量(直接灰分法により測定する)を差し引くことで算出する。上記成分以外の炭水化物の含有量は、上記測定により得られる炭水化物の含有量と上記成分の含有量との差から算出する。
 
【0047】
  (他の成分)
  また、本発明の飲料組成物は、上記以外の従来公知のいずれの成分を加えてもよく、加えなくてもよい。このような成分としては、例えば、香料、増粘剤、甘味料、乳化剤、機能性成分、保存料、安定剤、酸化防止剤、ビタミン類等が挙げられる。これらの成分の添加量は、得ようとする効果に応じて適宜調整できる。
 
【0048】
  本発明の飲料組成物は、上記成分の含有により、ミネラルを多く含有していても沈殿の発生を抑制し得ることから、炭酸飲料等の透明性が求められる飲料に好適であり、乳酸飲料等へも適用できる。例えば、本発明の飲料組成物は、乳清飲料、コーヒー、紅茶、緑茶、ウーロン茶その他茶類ほか、スポーツドリンク、ミネラルウオーター、果汁飲料等の清涼飲料やゼリー飲料にも好適である。果汁飲料として用いる場合には、柑橘類に含まれる苦味成分であるナリンギンを含有していてもよい。或いは、ナリンギンそれ自身の味を抑制するために、含有量を少なくしてもよく、例えば、飲料組成物中のナリンギンの含有量を1μg/100mL未満(0を含む)、0.05μg以下、0.01μg/mL以下等にしてもよい。
 
【0049】
  本発明の飲料組成物の製法は、特に限定されないが、各種成分を混合する際、加熱して各種成分を溶解させてもよいし、容器詰めした後加熱殺菌し、常温で長期保存可能なようにしてもよい。例えば、容器としては、ポリエチレンテレフタラート(PET)等のプラスチックボトル、スチールやアルミ等の金属缶、紙パック、パウチ容器等が挙げられる。本発明の飲料組成物は、糖カルボン酸の併用により、加熱されても沈殿の発生を抑制しつつ苦味が抑制し得ることから、加熱工程(特に、80℃以上、100℃以上、120℃以上糖の高温での加熱工程)が必要な清涼組成物に好適である。
 
【0050】
  <沈殿発生抑制剤>
  本発明の沈殿発生抑制剤は、重合度2以上の澱粉分解物又は転移反応物の還元末端側のアルデヒド基が酸化された糖カルボン酸、その塩類及びそのラクトンからなる群から選択される少なくとも1つ以上からなる、有機酸及びミネラルを含有する飲料における沈殿発生抑制剤である。
 
【0051】
  本発明の沈殿発生抑制剤によれば、ミネラルを多く含む飲料組成物においても、有機酸とミネラルとが反応することによる沈殿の発生を抑制して清澄な溶液状態を維持することができる。
 
【0052】
  なお、上記沈殿発生抑制剤の糖カルボン酸は、重合度2以上の澱粉分解物又は転移反応物の還元末端側のアルデヒド基が酸化されたものであれば、特に限定されない。澱粉分解物又は転移反応物の重合度は、例えば、2〜100等であってもよい。より具体的には、糖カルボン酸は、マルトビオン酸、イソマルトビオン酸、マルトトリオン酸、イソマルトトリオン酸、マルトテトラオン酸、マルトヘキサオン酸、ラクトビオン酸、セロビオン酸、パノース酸化物等が挙げられる。これらは、単独で使用してよく、2種以上を併用してもよい。また、糖カルボン酸は、遊離の酸であってもよく、塩又はラクトンであってもよい。
 
【0053】
  上記有機酸及び上記ミネラルとしては、上述した本発明に係る飲料組成物で説明した有機酸及びミネラルと同様のものが挙げられる。
 
【0054】
  <沈殿の発生を抑制する方法>
  本発明の沈殿の発生を抑制する方法は、有機酸及びミネラルを含有する飲料において、重合度2以上の澱粉分解物又は転移反応物の還元末端側のアルデヒド基が酸化された糖カルボン酸、その塩類及びそのラクトンからなる群から選択される少なくとも1つ以上からなる成分を含有させることによって、沈殿の発生を抑制する方法である。
 
【0055】
  本発明の沈殿の発生を抑制する方法によれば、ミネラルを多く含む飲料組成物においても、有機酸とミネラルとが反応することによる沈殿の発生を抑制して清澄な溶液状態を維持することができる。
 
【0056】
  なお、上記沈殿の発生を抑制する方法で使用される糖カルボン酸は、重合度2以上の澱粉分解物又は転移反応物の還元末端側のアルデヒド基が酸化されたものであれば、特に限定されない。澱粉分解物又は転移反応物の重合度は、例えば、2〜100等であってもよい。より具体的には、糖カルボン酸は、マルトビオン酸、イソマルトビオン酸、マルトトリオン酸、イソマルトトリオン酸、マルトテトラオン酸、マルトヘキサオン酸、ラクトビオン酸、セロビオン酸、パノース酸化物等が挙げられる。これらは、単独で使用してよく、2種以上を併用してもよい。また、糖カルボン酸は、遊離の酸であってもよく、塩又はラクトンであってもよい。
 
【0057】
  上記有機酸及び上記ミネラルとしては、上述した本発明に係る飲料組成物で説明した有機酸及びミネラルと同様のものが挙げられる。
 
【0058】
  <苦味低減剤>
  本発明の苦味低減剤は、重合度2以上の澱粉分解物又は転移反応物の還元末端側のアルデヒド基が酸化された糖カルボン酸、その塩類及びそのラクトンからなる群から選択される少なくとも1つ以上からなる、ミネラルを含有する飲料における苦味低減剤である。
 
【0059】
  本発明の苦味低減剤によれば、ミネラルを多く含む飲料組成物においても、ミネラル中の金属イオンに起因する苦味を抑制することで、呈味を改善した飲料を得ることができる。
 
【0060】
  なお、上記苦味低減剤中の糖カルボン酸は、重合度2以上の澱粉分解物又は転移反応物の還元末端側のアルデヒド基が酸化されたものであれば、特に限定されない。澱粉分解物又は転移反応物の重合度は、例えば、2〜100等であってもよい。より具体的には、糖カルボン酸は、マルトビオン酸、イソマルトビオン酸、マルトトリオン酸、イソマルトトリオン酸、マルトテトラオン酸、マルトヘキサオン酸、ラクトビオン酸、セロビオン酸、パノース酸化物等が挙げられる。これらは、単独で使用してよく、2種以上を併用してもよい。また、糖カルボン酸は、遊離の酸であってもよく、塩又はラクトンであってもよい。
 
【0061】
  上記ミネラルとしては、上述した本発明に係る飲料組成物で説明したミネラルと同様のものが挙げられる。
 
【0062】
  <苦味を低減する方法>
  ミネラルを含有する飲料において、重合度2以上の澱粉分解物又は転移反応物の還元末端側のアルデヒド基が酸化された糖カルボン酸、その塩類及びそのラクトンからなる群から選択される少なくとも1つ以上からなる成分を含有させることによって、苦味を低減する方法である。
 
【0063】
  本発明の苦味を低減する方法によれば、ミネラルを多く含む飲料組成物においても、ミネラル中の金属イオンに起因する苦味を抑制することで、呈味を改善した飲料を得ることができる。
 
【0064】
  なお、上記苦味を低減する方法で使用される糖カルボン酸は、重合度2以上の澱粉分解物又は転移反応物の還元末端側のアルデヒド基が酸化されたものであれば、特に限定されない。澱粉分解物又は転移反応物の重合度は、例えば、2〜100等であってもよい。より具体的には、糖カルボン酸は、マルトビオン酸、イソマルトビオン酸、マルトトリオン酸、イソマルトトリオン酸、マルトテトラオン酸、マルトヘキサオン酸、ラクトビオン酸、セロビオン酸、パノース酸化物等が挙げられる。これらは、単独で使用してよく、2種以上を併用してもよい。また、糖カルボン酸は、遊離の酸であってもよく、塩又はラクトンであってもよい。
 
【0065】
  上記ミネラルとしては、上述した本発明に係る飲料組成物で説明した有機酸及びミネラルと同様のものが挙げられる。
 
【実施例】
【0066】
  (糖カルボン酸試験物質)
  以下の評価試験では、マルトビオン酸(サンエイ糖化株式会社製)、マルトビオン酸カルシウム(サンエイ糖化株式会社製)、ラクトビオン酸(サンエイ糖化株式会社製)、セロビオン酸(サンエイ糖化株式会社製)、マルトオリゴ糖酸化物(サンエイ糖化株式会社製)及びマルトオリゴ糖酸化カルシウム(サンエイ糖化株式会社製)を用いた。なお、マルトオリゴ糖酸化物中(HPLC法;固形分換算)には、マルトビオン酸  70.0wt%に加えて、グルコン酸  1.0wt%、マルトトリオン酸  15.0wt%及びマルトテトラオン酸(重合度4)以上のマルトオリゴ糖酸化物14.0wt%を含み、マルトオリゴ糖酸化カルシウム中(HPLC法;固形分換算)には、マルトビオン酸  67.1wt%に加えて、グルコン酸  0.9wt%、マルトトリオン酸  14.4wt%及びマルトテトラオン酸(重合度4)以上のマルトオリゴ糖酸化物13.4wt%とカルシウム4.1%を含む。また、マルトビオン酸カルシウム、マルトビオン酸、ラクトビオン酸及びセロビオン酸は純品相当のものを用いた。
【0067】
  <クエン酸とカルシウム塩存在下での加熱殺菌による影響>
  クエン酸(和光純薬工業製)及びマルトオリゴ糖酸化カルシウム(サンエイ製、カルシウム含有量4.1%)又は乳酸カルシウム(扶桑化学工業製、カルシウム含有量13%)を用い、下記の表1〜5に示す飲料組成物(実施例1〜33、比較例1〜7)を調製した。調製した飲料組成物10mLを15ml容プラスチックチューブにそれぞれ分注し、105℃で1分間オートクレーブによる加熱殺菌を行った。放冷後に沈殿の有無を確認し、沈殿が認められたものを×、沈殿が認められなかったものを〇として、清澄性を評価した。その評価結果を、調製した飲料組成物のpHとともに、表1〜表5に併せて示す。なお、以下の表において、「Ca」はカルシウム、「Mg」はマグネシウム、「Fe」は鉄、「Zn」は亜鉛を指す。また、表中、「B/A」は、マルトオリゴ糖酸化カルシウム、マルトビオン酸カルシウム、マルトビオン酸、ラクトビオン酸、セロビオン酸等の糖カルボン酸又はその塩の含有量に対する、カルシウム、マグネシウム、鉄、亜鉛等のミネラルの含有量の質量比である。
【0068】
【表1】
【0069】
【表2】
【0070】
【表3】
【0071】
【表4】
【0072】
【表5】
【0073】
  評価の結果、表1〜5に示すように、実施例1〜33に係る飲料組成物では、糖カルボン酸であるマルトオリゴ糖酸化物存在下の、クエン酸濃度0.05〜2%の範囲において、ミネラル成分であるカルシウムの濃度が0.01〜1000mg/mLとなるように配合しても、加熱殺菌後に沈殿は観察されず、清澄な溶液が得られた。一方、カルシウム濃度が300mg/mL以上である比較例1〜7に係る飲料組成物では、加熱殺菌により沈殿析出が確認された。
【0074】
  <各種有機酸とカルシウム塩存在下での加熱殺菌による影響>
  クエン酸(和光純薬工業製)、 リンゴ酸(関東化学工業製)、酒石酸(関東化学工業製)、乳酸(扶桑化学工業製)、酢酸(大東化学工業製)の5種類の有機酸と、マルトオリゴ糖酸化カルシウム(サンエイ製、カルシウム含有量4.1%)又は乳酸カルシウム(扶桑化学工業製、カルシウム含有量13%)を用い、下記の表6及び表7に示す飲料組成物(実施例34〜46)を調製した。調製した試料10mLを15mL容プラスチックチューブにそれぞれ分注し、105℃で1分間オートクレーブによる加熱殺菌を行った。放冷後に沈殿の有無を確認し、沈殿が認められたものを×、沈殿が認められなかったものを〇として、清澄性を評価した。その評価結果を、調製した飲料組成物のpHとともに、表6及び表7に併せて示す。
【0075】
【表6】
【0076】
【表7】
【0077】
  評価の結果、表6及び表7に示すように、実施例34〜46に係る飲料組成物では、クエン酸、リンゴ酸、酒石酸、乳酸、酢酸のいずれの有機酸を用いた場合でも、加熱殺菌後に沈殿は観察されず、清澄な溶液が得られた。
【0078】
  クエン酸(和光純薬工業製)、リンゴ酸(関東化学工業製)と、マルトオリゴ糖酸化カルシウム(サンエイ製、カルシウム含有量4.1%)又は乳酸カルシウム(扶桑化学工業製、カルシウム含有量13%)を用い、下記の表8及び表9に示す実施例47〜54及び比較例8〜11に係る飲料組成物を調製した。調製した飲料組成物10mLを15mL容プラスチックチューブにそれぞれ分注し、105℃で1分間オートクレーブによる加熱殺菌を行った。放冷後に沈殿の有無を確認し、沈殿が認められたものを×、沈殿が認められなかったものを〇として、清澄性を評価した。その評価結果を、調製した飲料組成物のpHとともに、表8及び表9に併せて示す。
【0079】
【表8】
【0080】
【表9】
【0081】
  評価の結果、表8及び表9に示すように、実施例47〜54に係る飲料組成物では、糖カルボン酸であるマルトオリゴ糖酸化物存在下、クエン酸とリンゴ酸を様々な比率で組み合わせた場合において、1000mg/100mLのカルシウムを含有しても、加熱殺菌後に沈殿は観察されず、清澄な溶液が得られた。一方、糖カルボン酸であるマルトオリゴ糖酸化カルシウムの代わりに、乳酸カルシウムを配合した比較例8〜11に係る飲料組成物においては、加熱殺菌により沈殿析出が確認された。
【0082】
  <糖カルボン酸の種類の違いによる影響>
  クエン酸(和光純薬工業製)に、糖カルボン酸として、マルトビオン酸カルシウム(サンエイ製、カルシウム含有量5.3%),又はマルトビオン酸(サンエイ製)及びラクトビオン酸(サンエイ製)を、ミネラルとして炭酸カルシウム(日東粉化工業製、カルシウム含有量40%)を用いて、下記の表10に示す飲料組成物(実施例55〜58及び比較例12)を調製した。調製した飲料組成物10mLを15mL容プラスチックチューブにそれぞれ分注し、105℃で1分間オートクレーブによる加熱殺菌を行った。放冷後に沈殿の有無を確認し、沈殿が認められたものを×、沈殿が認められなかったものを〇として、清澄性を評価した。その評価結果を、調製した飲料組成物のpHとともに、表10に併せて示す。
【0083】
【表10】
【0084】
  評価の結果、表10に示すように、実施例55〜58に係る飲料組成物では、マルトビオン酸カルシウム、マルトビオン酸、ラクトビオン酸、セロビオン酸のいずれの糖カルボン酸を用いても、加熱殺菌後に沈殿は観察されず、清澄な溶液が得られた。一方、糖カルボン酸を入れない比較例12では、加熱殺菌により沈殿析出が確認された。
【0085】
  <ミネラルの種類の違いによる影響>
  クエン酸(和光純薬工業製)と、マルトオリゴ糖酸化物(サンエイ製)、或いはマルトオリゴ糖酸化カルシウム(サンエイ製、カルシウム含有量4.1%)に、硫酸マグネシウム(関東化学工業製、マグネシウム含有量9.86%)又はクエン酸鉄アンモニウム(昭和化工製、鉄含有量17.0%)、硫酸亜鉛七水和物(関東化学工業製、亜鉛含有量22.74%)を用いて、下記の表11に示す飲料組成物(実施例59〜実施例65)を調製した。調製した飲料組成物10mLを15mL容プラスチックチューブにそれぞれ分注し、105℃で1分間オートクレーブによる加熱殺菌を行った。放冷後に沈殿の有無を確認し、沈殿が認められたものを×、沈殿が認められなかったものを〇として、清澄性を評価した。その評価結果を、調製した飲料組成物のpHとともに、表11に併せて示す。
【0086】
【表11】
【0087】
  評価の結果、表11に示すように、実施例59〜実施例65に係る飲料組成物においては、カルシウム以外に、マグネシウム、鉄、亜鉛等のミネラルが配合されていても、加熱殺菌後に沈殿は観察されず、清澄な溶液が得られた。
【0088】
  <加熱殺菌条件の違いによる影響>
  クエン酸(和光純薬工業製)及びマルトオリゴ糖酸化カルシウム(サンエイ製、カルシウム含有量4.1%)又は乳酸カルシウム(扶桑化学工業製、カルシウム含有量13%)を用い、下記の表12及び表13に示す飲料組成物(実施例66〜73及び比較例13〜20)を調製した。調製した飲料組成物10mLを15mL容プラスチックチューブにそれぞれ分注し、121℃で20分又は、105℃で1分、80℃で30分の条件で、オートクレーブによる加熱殺菌処理を行った。放冷後に沈殿の有無を確認し、沈殿が認められたものを×、沈殿が認められなかったものを〇として、清澄性を評価した。その評価結果を、調製した飲料組成物のpHとともに、表12及び表13に併せて示す。
【0089】
【表12】
【0090】
【表13】
【0091】
  評価の結果、表12及び表13に示すように、実施例66〜実施例73に係る飲料組成物では、糖カルボン酸であるマルトオリゴ糖酸化物存在下の条件において、いずれの加熱殺菌条件でも沈殿は観察されず、清澄な溶液が得られた。一方、糖カルボン酸であるマルトオリゴ糖酸化カルシウムの代わりに、乳酸カルシウムを配合した比較例13〜20に係る飲料組成物では、いずれの加熱殺菌条件でも、加熱殺菌により沈殿析出が確認された。
【0092】
<炭水化物配合による呈味への影響>
【0093】
  クエン酸(和光純薬工業製)及び、マルトオリゴ糖酸化カルシウム(サンエイ製、カルシウム含有量4.1%)又は乳酸カルシウム(扶桑化学工業製、カルシウム含有量13%)、及び、砂糖(日新製糖製)を用い、下記の表14及び表15に示す飲料組成物(実施例20、実施例74〜81及び比較例21〜26)を調製した。調製した飲料組成物10mLを15mL容プラスチックチューブにそれぞれ分注し、105℃で1分間オートクレーブによる加熱殺菌を行った。放冷後に沈殿の有無を確認し、沈殿が認められたものを×、沈殿が認められなかったものを〇として、清澄性を評価した。また、調製した試料の苦味について官能評価は、苦味を感じず呈味が良好であると感じる場合は◎、苦味を感じない又は許容範囲内である場合は〇、不快な苦みを感じる場合を×として評価を行った。その評価結果を、調製した飲料組成物のpHとともに、表14及び15に併せて示す。
【0094】
【表14】
【0095】
【表15】
【0096】
  評価の結果、表14及び15に示すように、実施例20に係る飲料組成物では、糖カルボン酸であるマルトオリゴ糖酸化カルシウムの存在下、カルシウム濃度が1000mg/100mL添加された場合においても、加熱時に沈殿を生じず、苦味を感じない飲料を調製することが出来た。特に、前記成分以外の炭水化物として砂糖が添加された実施例74〜81に係る飲料組成物では、糖カルボン酸であるマルトオリゴ糖酸化カルシウムの存在下、カルシウム濃度が500或いは1000mg/100mL添加された場合においても、加熱時に沈殿を生じず、呈味の良好な飲料を調製することが出来た。一方、糖カルボン酸であるマルトオリゴ糖酸化カルシウムの代わりに、乳酸カルシウムを配合した比較例21〜26に係る飲料組成物では、加熱時の沈殿の有無に関わらず、砂糖が添加されていても苦みを強く感じた。
【0097】
<糖カルボン酸の含有量に対するミネラルの含有量の質量比(B/A)の違いによる影響>
  クエン酸(和光純薬工業製)と、マルトオリゴ糖酸化物(サンエイ製)に、硫酸マグネシウム(関東化学工業製、マグネシウム含有量9.86%)又は炭酸カルシウム(日東粉化工業製、カルシウム含有量40%)を用いて、下記の表16及び表17に示す飲料組成物(実施例82〜89及び比較例27〜30)を調製した。調製した飲料組成物10mLを15mL容プラスチックチューブにそれぞれ分注し、105℃で1分間オートクレーブによる加熱殺菌を行った。放冷後に沈殿の有無を確認し、沈殿が認められたものを×、沈殿が認められなかったものを〇として、清澄性を評価した。その評価結果を、調製した飲料組成物のpHとともに、表16及び表17に併せて示す。
【0098】
【表16】
【0099】
【表17】
【0100】
  評価の結果、表16及び表17に示すように、糖カルボン酸の含有量(B)に対するミネラルの含有量(A)の質量比(B)/(A)が、1.0以下である実施例82〜89に係る飲料組成物では、沈殿を生じない清澄な溶液を得ることができた。一方、糖カルボン酸を含有しない比較例27〜30に係る飲料組成物では、加熱殺菌により沈殿析出が確認された。