(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2017-93431(P2017-93431A)
(43)【公開日】2017年6月1日
(54)【発明の名称】脂肪由来間葉系幹細胞、脂肪由来間葉系幹細胞の培養方法、及び治療薬
(51)【国際特許分類】
C12N 5/0775 20100101AFI20170428BHJP
A61K 35/28 20150101ALI20170428BHJP
A61P 37/08 20060101ALI20170428BHJP
A61P 17/00 20060101ALI20170428BHJP
A61P 25/00 20060101ALI20170428BHJP
A61P 9/10 20060101ALI20170428BHJP
A61P 27/16 20060101ALI20170428BHJP
A61P 7/00 20060101ALI20170428BHJP
A61P 19/00 20060101ALI20170428BHJP
A61P 19/02 20060101ALI20170428BHJP
【FI】
C12N5/0775
A61K35/28
A61P37/08
A61P17/00
A61P25/00
A61P9/10
A61P27/16
A61P7/00
A61P19/00
A61P19/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】150
【出願形態】OL
【全頁数】40
(21)【出願番号】特願2016-224984(P2016-224984)
(22)【出願日】2016年11月18日
(31)【優先権主張番号】特願2015-225886(P2015-225886)
(32)【優先日】2015年11月18日
(33)【優先権主張国】JP
(71)【出願人】
【識別番号】514084923
【氏名又は名称】株式会社AWSホールディングス
(71)【出願人】
【識別番号】515321119
【氏名又は名称】ファースト・ステムセル・ジャパン株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】515321120
【氏名又は名称】社会医療法人孝仁会
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【弁理士】
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【弁理士】
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【弁理士】
【氏名又は名称】江口 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【弁理士】
【氏名又は名称】内藤 和彦
(72)【発明者】
【氏名】齋藤 孝次
(72)【発明者】
【氏名】大星 茂樹
【テーマコード(参考)】
4B065
4C087
【Fターム(参考)】
4B065AA93X
4B065BA22
4B065BB32
4B065CA44
4C087AA01
4C087AA02
4C087AA03
4C087BB64
4C087MA66
4C087NA14
4C087ZA02
4C087ZA34
4C087ZA36
4C087ZA51
4C087ZA59
4C087ZA89
4C087ZA96
4C087ZB11
4C087ZB13
(57)【要約】
【課題】少量の投与量で疾患の治療に有用な脂肪組織由来間葉系幹細胞を提供する。
【解決手段】脂肪組織から間葉系幹細胞を分離し、血清を含む培地で間葉系幹細胞を初代培養し、初代培養から継代された間葉系幹細胞を無血清培地で増殖培養して得られた、脂肪組織由来間葉系幹細胞。初代培養の培地に含まれる血清が、脂肪組織を採取した検体由来の血清であってもよい。当該脂肪組織由来間葉系幹細胞において、CD73、CD90、CD105、及びCD44が陽性であり、CD11b、CD19、CD34、CD45、及びHLA−DRが陰性であってもよい。また、当該脂肪組織由来間葉系幹細胞は、骨芽細胞、脂肪細胞、及び軟骨細胞への分化能を有していてもよい。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
脂肪組織から間葉系幹細胞を分離し、
血清を含む培地で前記間葉系幹細胞を初代培養し、
前記初代培養から継代された間葉系幹細胞を無血清培地で増殖培養して得られた、
脂肪組織由来間葉系幹細胞。
【請求項2】
前記初代培養の培地に含まれる血清が、前記脂肪組織を採取した検体由来の血清である、請求項1に記載の脂肪組織由来間葉系幹細胞。
【請求項3】
前記初代培養の培地に含まれる血清の濃度が0.5体積%以上20体積%以下である、請求項1又は2に記載の脂肪組織由来間葉系幹細胞。
【請求項4】
前記初代培養の培地に含まれる血清の濃度が1体積%以上10体積%以下である、請求項1又は2に記載の脂肪組織由来間葉系幹細胞。
【請求項5】
CD73、CD90、CD105、及びCD44が陽性であり、CD11b、CD19、CD34、CD45、及びHLA−DRが陰性である、請求項1から4のいずれか1項に記載の脂肪組織由来間葉系幹細胞。
【請求項6】
骨芽細胞、脂肪細胞、及び軟骨細胞への分化能を有する、請求項1から5のいずれか1項に記載の脂肪組織由来間葉系幹細胞。
【請求項7】
脂肪組織から間葉系幹細胞を分離することと、
血清を含む培地で前記間葉系幹細胞を初代培養することと、
前記初代培養から継代された間葉系幹細胞を無血清培地で増殖培養することと、
を含む、脂肪組織由来間葉系幹細胞の培養方法。
【請求項8】
前記初代培養の培地に含まれる血清が、前記脂肪組織を採取した検体由来の血清である、請求項7に記載の脂肪組織由来間葉系幹細胞の培養方法。
【請求項9】
前記初代培養の培地に含まれる血清の濃度が0.5体積%以上20体積%以下である、請求項7又は8に記載の脂肪組織由来間葉系幹細胞の培養方法。
【請求項10】
前記初代培養の培地に含まれる血清の濃度が1体積%以上10体積%以下である、請求項7又は8に記載の脂肪組織由来間葉系幹細胞の培養方法。
【請求項11】
当該培養方法で得られる脂肪組織由来間葉系幹細胞において、CD73、CD90、CD105、及びCD44が陽性であり、CD11b、CD19、CD34、CD45、及びHLA−DRが陰性である、請求項7から10のいずれか1項に記載の脂肪組織由来間葉系幹細胞の培養方法。
【請求項12】
当該培養方法で得られる脂肪組織由来間葉系幹細胞が、骨芽細胞、脂肪細胞、及び軟骨細胞への分化能を有する、請求項8から11のいずれか1項に記載の脂肪組織由来間葉系幹細胞の培養方法。
【請求項13】
脂肪組織由来間葉系幹細胞を含むアトピー性皮膚炎の治療薬であって、
前記脂肪組織由来間葉系幹細胞が、
脂肪組織から間葉系幹細胞を分離し、
血清を含む培地で前記間葉系幹細胞を初代培養し、
前記初代培養から継代された間葉系幹細胞を無血清培地で増殖培養して得られた、
アトピー性皮膚炎の治療薬。
【請求項14】
前記脂肪組織が患者の自己脂肪組織である、請求項13に記載のアトピー性皮膚炎の治療薬。
【請求項15】
患者に静脈投与される、請求項13又は14に記載のアトピー性皮膚炎の治療薬。
【請求項16】
1回当たり前記患者に投与される前記脂肪組織由来間葉系幹細胞の数が1億個以下である、請求項15に記載のアトピー性皮膚炎の治療薬。
【請求項17】
1回当たり前記患者に投与される前記脂肪組織由来間葉系幹細胞の数が5千万個以下である、請求項15に記載のアトピー性皮膚炎の治療薬。
【請求項18】
患者の患部に局注投与される、請求項13又は14に記載のアトピー性皮膚炎の治療薬。
【請求項19】
1回当たり前記患者に投与される前記脂肪組織由来間葉系幹細胞の数が5千万個以下である、請求項18に記載のアトピー性皮膚炎の治療薬。
【請求項20】
前記初代培養の培地に含まれる血清が、前記脂肪組織を採取した検体由来の血清である、請求項13から19のいずれか1項に記載のアトピー性皮膚炎の治療薬。
【請求項21】
前記初代培養の培地に含まれる血清の濃度が0.5体積%以上20体積%以下である、請求項13から20のいずれか1項に記載のアトピー性皮膚炎の治療薬。
【請求項22】
前記初代培養の培地に含まれる血清の濃度が1体積%以上10体積%以下である、請求項13から20のいずれか1項に記載のアトピー性皮膚炎の治療薬。
【請求項23】
前記脂肪組織由来間葉系幹細胞において、CD73、CD90、CD105、及びCD44が陽性であり、CD11b、CD19、CD34、CD45、及びHLA−DRが陰性である、請求項13から22のいずれか1項に記載のアトピー性皮膚炎の治療薬。
【請求項24】
前記脂肪組織由来間葉系幹細胞が、骨芽細胞、脂肪細胞、及び軟骨細胞への分化能を有する、請求項13から23のいずれか1項に記載のアトピー性皮膚炎の治療薬。
【請求項25】
脂肪組織由来間葉系幹細胞を含む脳挫傷の治療薬であって、
前記脂肪組織由来間葉系幹細胞が
脂肪組織から間葉系幹細胞を分離し、
血清を含む培地で前記間葉系幹細胞を初代培養し、
前記初代培養から継代された間葉系幹細胞を無血清培地で増殖培養して得られた、
脳挫傷の治療薬。
【請求項26】
前記脂肪組織が患者の自己脂肪組織である、請求項25に記載の脳挫傷の治療薬。
【請求項27】
患者に静脈投与される、請求項25又は26に記載の脳挫傷の治療薬。
【請求項28】
1回当たり前記患者に投与される前記脂肪組織由来間葉系幹細胞の数が1億個以下である、請求項27に記載の脳挫傷の治療薬。
【請求項29】
前記初代培養の培地に含まれる血清が、前記脂肪組織を採取した検体由来の血清である、請求項25から28のいずれか1項に記載の脳挫傷の治療薬。
【請求項30】
前記初代培養の培地に含まれる血清の濃度が0.5体積%以上20体積%以下である、請求項25から29のいずれか1項に記載の脳挫傷の治療薬。
【請求項31】
前記初代培養の培地に含まれる血清の濃度が1体積%以上10体積%以下である、請求項25から29のいずれか1項に記載の脳挫傷の治療薬。
【請求項32】
前記脂肪組織由来間葉系幹細胞において、CD73、CD90、CD105、及びCD44が陽性であり、CD11b、CD19、CD34、CD45、及びHLA−DRが陰性である、請求項25から31のいずれか1項に記載の脳挫傷の治療薬。
【請求項33】
前記脂肪組織由来間葉系幹細胞が、骨芽細胞、脂肪細胞、及び軟骨細胞への分化能を有する、請求項25から32のいずれか1項に記載の脳挫傷の治療薬。
【請求項34】
脂肪組織由来間葉系幹細胞を含む脳梗塞の治療薬であって、
前記脂肪組織由来間葉系幹細胞が
脂肪組織から間葉系幹細胞を分離し、
血清を含む培地で前記間葉系幹細胞を初代培養し、
前記初代培養から継代された間葉系幹細胞を無血清培地で増殖培養して得られた、
脳梗塞の治療薬。
【請求項35】
前記脂肪組織が患者の自己脂肪組織である、請求項34に記載の脳梗塞の治療薬。
【請求項36】
患者に静脈投与される、請求項34又は35に記載の脳梗塞の治療薬。
【請求項37】
1回当たり前記患者に投与される前記脂肪組織由来間葉系幹細胞の数が1億個以下である、請求項36に記載の脳梗塞の治療薬。
【請求項38】
前記初代培養の培地に含まれる血清が、前記脂肪組織を採取した検体由来の血清である、請求項34から37のいずれか1項に記載の脳梗塞の治療薬。
【請求項39】
前記初代培養の培地に含まれる血清の濃度が0.5体積%以上20体積%以下である、請求項34から38のいずれか1項に記載の脳梗塞の治療薬。
【請求項40】
前記初代培養の培地に含まれる血清の濃度が1体積%以上10体積%以下である、請求項34から38のいずれか1項に記載の脳梗塞の治療薬。
【請求項41】
前記脂肪組織由来間葉系幹細胞において、CD73、CD90、CD105、及びCD44が陽性であり、CD11b、CD19、CD34、CD45、及びHLA−DRが陰性である、請求項34から40のいずれか1項に記載の脳梗塞の治療薬。
【請求項42】
前記脂肪組織由来間葉系幹細胞が、骨芽細胞、脂肪細胞、及び軟骨細胞への分化能を有する、請求項34から41のいずれか1項に記載の脳梗塞の治療薬。
【請求項43】
脂肪組織由来間葉系幹細胞を含む脳出血の治療薬であって、
前記脂肪組織由来間葉系幹細胞が
脂肪組織から間葉系幹細胞を分離し、
血清を含む培地で前記間葉系幹細胞を初代培養し、
前記初代培養から継代された間葉系幹細胞を無血清培地で増殖培養して得られた、
脳出血の治療薬。
【請求項44】
前記脂肪組織が患者の自己脂肪組織である、請求項43に記載の脳出血の治療薬。
【請求項45】
患者に静脈投与される、請求項43又は44に記載の脳出血の治療薬。
【請求項46】
1回当たり前記患者に投与される前記脂肪組織由来間葉系幹細胞の数が1億個以下である、請求項45に記載の脳出血の治療薬。
【請求項47】
前記初代培養の培地に含まれる血清が、前記脂肪組織を採取した検体由来の血清である、請求項43から46のいずれか1項に記載の脳出血の治療薬。
【請求項48】
前記初代培養の培地に含まれる血清の濃度が0.5体積%以上20体積%以下である、請求項43から47のいずれか1項に記載の脳出血の治療薬。
【請求項49】
前記初代培養の培地に含まれる血清の濃度が1体積%以上10体積%以下である、請求項43から47のいずれか1項に記載の脳出血の治療薬。
【請求項50】
前記脂肪組織由来間葉系幹細胞において、CD73、CD90、CD105、及びCD44が陽性であり、CD11b、CD19、CD34、CD45、及びHLA−DRが陰性である、請求項43から49のいずれか1項に記載の脳出血の治療薬。
【請求項51】
前記脂肪組織由来間葉系幹細胞が、骨芽細胞、脂肪細胞、及び軟骨細胞への分化能を有する、請求項43から50のいずれか1項に記載の脳出血の治療薬。
【請求項52】
脂肪組織由来間葉系幹細胞を含む突発性難聴の治療薬であって、
前記脂肪組織由来間葉系幹細胞が
脂肪組織から間葉系幹細胞を分離し、
血清を含む培地で前記間葉系幹細胞を初代培養し、
前記初代培養から継代された間葉系幹細胞を無血清培地で増殖培養して得られた、
突発性難聴の治療薬。
【請求項53】
前記脂肪組織が患者の自己脂肪組織である、請求項52に記載の突発性難聴の治療薬。
【請求項54】
患者に静脈投与される、請求項52又は53に記載の突発性難聴の治療薬。
【請求項55】
1回当たり前記患者に投与される前記脂肪組織由来間葉系幹細胞の数が1億個以下である、請求項54に記載の突発性難聴の治療薬。
【請求項56】
前記初代培養の培地に含まれる血清が、前記脂肪組織を採取した検体由来の血清である、請求項52から55のいずれか1項に記載の突発性難聴の治療薬。
【請求項57】
前記初代培養の培地に含まれる血清の濃度が0.5体積%以上20体積%以下である、請求項52から56のいずれか1項に記載の突発性難聴の治療薬。
【請求項58】
前記初代培養の培地に含まれる血清の濃度が1体積%以上10体積%以下である、請求項52から56のいずれか1項に記載の突発性難聴の治療薬。
【請求項59】
前記脂肪組織由来間葉系幹細胞において、CD73、CD90、CD105、及びCD44が陽性であり、CD11b、CD19、CD34、CD45、及びHLA−DRが陰性である、請求項52から58のいずれか1項に記載の突発性難聴の治療薬。
【請求項60】
前記脂肪組織由来間葉系幹細胞が、骨芽細胞、脂肪細胞、及び軟骨細胞への分化能を有する、請求項52から59のいずれか1項に記載の突発性難聴の治療薬。
【請求項61】
脂肪組織由来間葉系幹細胞を含む肩関節周囲炎の治療薬であって、
前記脂肪組織由来間葉系幹細胞が
脂肪組織から間葉系幹細胞を分離し、
血清を含む培地で前記間葉系幹細胞を初代培養し、
前記初代培養から継代された間葉系幹細胞を無血清培地で増殖培養して得られた、
肩関節周囲炎の治療薬。
【請求項62】
前記脂肪組織が患者の自己脂肪組織である、請求項61に記載の肩関節周囲炎の治療薬。
【請求項63】
患者に静脈投与される、請求項61又は62に記載の肩関節周囲炎の治療薬。
【請求項64】
1回当たり前記患者に投与される前記脂肪組織由来間葉系幹細胞の数が1億個以下である、請求項63に記載の肩関節周囲炎の治療薬。
【請求項65】
前記初代培養の培地に含まれる血清が、前記脂肪組織を採取した検体由来の血清である、請求項61から64のいずれか1項に記載の肩関節周囲炎の治療薬。
【請求項66】
前記初代培養の培地に含まれる血清の濃度が0.5体積%以上20体積%以下である、請求項61から65のいずれか1項に記載の肩関節周囲炎の治療薬。
【請求項67】
前記初代培養の培地に含まれる血清の濃度が1体積%以上10体積%以下である、請求項61から65のいずれか1項に記載の肩関節周囲炎の治療薬。
【請求項68】
前記脂肪組織由来間葉系幹細胞において、CD73、CD90、CD105、及びCD44が陽性であり、CD11b、CD19、CD34、CD45、及びHLA−DRが陰性である、請求項61から67のいずれか1項に記載の肩関節周囲炎の治療薬。
【請求項69】
前記脂肪組織由来間葉系幹細胞が、骨芽細胞、脂肪細胞、及び軟骨細胞への分化能を有する、請求項61から68のいずれか1項に記載の肩関節周囲炎の治療薬。
【請求項70】
脂肪組織由来間葉系幹細胞を含む結核性脊椎炎の治療薬であって、
前記脂肪組織由来間葉系幹細胞が
脂肪組織から間葉系幹細胞を分離し、
血清を含む培地で前記間葉系幹細胞を初代培養し、
前記初代培養から継代された間葉系幹細胞を無血清培地で増殖培養して得られた、
結核性脊椎炎の治療薬。
【請求項71】
前記脂肪組織が患者の自己脂肪組織である、請求項70に記載の結核性脊椎炎の治療薬。
【請求項72】
患者に静脈投与される、請求項70又は71に記載の結核性脊椎炎の治療薬。
【請求項73】
1回当たり前記患者に投与される前記脂肪組織由来間葉系幹細胞の数が1億個以下である、請求項72に記載の結核性脊椎炎の治療薬。
【請求項74】
前記初代培養の培地に含まれる血清が、前記脂肪組織を採取した検体由来の血清である、請求項70から73のいずれか1項に記載の結核性脊椎炎の治療薬。
【請求項75】
前記初代培養の培地に含まれる血清の濃度が0.5体積%以上20体積%以下である、請求項70から74のいずれか1項に記載の結核性脊椎炎の治療薬。
【請求項76】
前記初代培養の培地に含まれる血清の濃度が1体積%以上10体積%以下である、請求項70から74のいずれか1項に記載の結核性脊椎炎の治療薬。
【請求項77】
前記脂肪組織由来間葉系幹細胞において、CD73、CD90、CD105、及びCD44が陽性であり、CD11b、CD19、CD34、CD45、及びHLA−DRが陰性である、請求項70から76のいずれか1項に記載の結核性脊椎炎の治療薬。
【請求項78】
前記脂肪組織由来間葉系幹細胞が、骨芽細胞、脂肪細胞、及び軟骨細胞への分化能を有する、請求項70から77のいずれか1項に記載の結核性脊椎炎の治療薬。
【請求項79】
脂肪組織由来間葉系幹細胞を含む胸椎黄色靭帯骨化症の治療薬であって、
前記脂肪組織由来間葉系幹細胞が
脂肪組織から間葉系幹細胞を分離し、
血清を含む培地で前記間葉系幹細胞を初代培養し、
前記初代培養から継代された間葉系幹細胞を無血清培地で増殖培養して得られた、
胸椎黄色靭帯骨化症の治療薬。
【請求項80】
前記脂肪組織が患者の自己脂肪組織である、請求項79に記載の胸椎黄色靭帯骨化症の治療薬。
【請求項81】
患者に静脈投与される、請求項79又は80に記載の胸椎黄色靭帯骨化症の治療薬。
【請求項82】
1回当たり前記患者に投与される前記脂肪組織由来間葉系幹細胞の数が1億個以下である、請求項81に記載の胸椎黄色靭帯骨化症の治療薬。
【請求項83】
前記初代培養の培地に含まれる血清が、前記脂肪組織を採取した検体由来の血清である、請求項79から82のいずれか1項に記載の胸椎黄色靭帯骨化症の治療薬。
【請求項84】
前記初代培養の培地に含まれる血清の濃度が0.5体積%以上20体積%以下である、請求項79から83のいずれか1項に記載の胸椎黄色靭帯骨化症の治療薬。
【請求項85】
前記初代培養の培地に含まれる血清の濃度が1体積%以上10体積%以下である、請求項79から83のいずれか1項に記載の胸椎黄色靭帯骨化症の治療薬。
【請求項86】
前記脂肪組織由来間葉系幹細胞において、CD73、CD90、CD105、及びCD44が陽性であり、CD11b、CD19、CD34、CD45、及びHLA−DRが陰性である、請求項79から85のいずれか1項に記載の胸椎黄色靭帯骨化症の治療薬。
【請求項87】
前記脂肪組織由来間葉系幹細胞が、骨芽細胞、脂肪細胞、及び軟骨細胞への分化能を有する、請求項79から86のいずれか1項に記載の胸椎黄色靭帯骨化症の治療薬。
【請求項88】
脂肪組織由来間葉系幹細胞を含む脊髄損傷の治療薬であって、
前記脂肪組織由来間葉系幹細胞が
脂肪組織から間葉系幹細胞を分離し、
血清を含む培地で前記間葉系幹細胞を初代培養し、
前記初代培養から継代された間葉系幹細胞を無血清培地で増殖培養して得られた、
脊髄損傷の治療薬。
【請求項89】
前記脂肪組織が患者の自己脂肪組織である、請求項88に記載の脊髄損傷の治療薬。
【請求項90】
患者に静脈投与される、請求項88又は89に記載の脊髄損傷の治療薬。
【請求項91】
1回当たり前記患者に投与される前記脂肪組織由来間葉系幹細胞の数が1億個以下である、請求項90に記載の脊髄損傷の治療薬。
【請求項92】
前記初代培養の培地に含まれる血清が、前記脂肪組織を採取した検体由来の血清である、請求項88から91のいずれか1項に記載の脊髄損傷の治療薬。
【請求項93】
前記初代培養の培地に含まれる血清の濃度が0.5体積%以上20体積%以下である、請求項88から92のいずれか1項に記載の脊髄損傷の治療薬。
【請求項94】
前記初代培養の培地に含まれる血清の濃度が1体積%以上10体積%以下である、請求項88から92のいずれか1項に記載の脊髄損傷の治療薬。
【請求項95】
前記脂肪組織由来間葉系幹細胞において、CD73、CD90、CD105、及びCD44が陽性であり、CD11b、CD19、CD34、CD45、及びHLA−DRが陰性である、請求項88から94のいずれか1項に記載の脊髄損傷の治療薬。
【請求項96】
前記脂肪組織由来間葉系幹細胞が、骨芽細胞、脂肪細胞、及び軟骨細胞への分化能を有する、請求項88から95のいずれか1項に記載の脊髄損傷の治療薬。
【請求項97】
脂肪組織由来間葉系幹細胞を含む脊髄梗塞の治療薬であって、
前記脂肪組織由来間葉系幹細胞が
脂肪組織から間葉系幹細胞を分離し、
血清を含む培地で前記間葉系幹細胞を初代培養し、
前記初代培養から継代された間葉系幹細胞を無血清培地で増殖培養して得られた、
脊髄梗塞の治療薬。
【請求項98】
前記脂肪組織が患者の自己脂肪組織である、請求項97に記載の脊髄梗塞の治療薬。
【請求項99】
患者に静脈投与される、請求項97又は98に記載の脊髄梗塞の治療薬。
【請求項100】
1回当たり前記患者に投与される前記脂肪組織由来間葉系幹細胞の数が1億個以下である、請求項99に記載の脊髄梗塞の治療薬。
【請求項101】
前記初代培養の培地に含まれる血清が、前記脂肪組織を採取した検体由来の血清である、請求項97から100のいずれか1項に記載の脊髄梗塞の治療薬。
【請求項102】
前記初代培養の培地に含まれる血清の濃度が0.5体積%以上20体積%以下である、請求項97から101のいずれか1項に記載の脊髄梗塞の治療薬。
【請求項103】
前記初代培養の培地に含まれる血清の濃度が1体積%以上10体積%以下である、請求項97から101のいずれか1項に記載の脊髄梗塞の治療薬。
【請求項104】
前記脂肪組織由来間葉系幹細胞において、CD73、CD90、CD105、及びCD44が陽性であり、CD11b、CD19、CD34、CD45、及びHLA−DRが陰性である、請求項97から103のいずれか1項に記載の脊髄梗塞の治療薬。
【請求項105】
前記脂肪組織由来間葉系幹細胞が、骨芽細胞、脂肪細胞、及び軟骨細胞への分化能を有する、請求項97から104のいずれか1項に記載の脊髄梗塞の治療薬。
【請求項106】
脂肪組織由来間葉系幹細胞を含む頸部脊柱管狭窄症の治療薬であって、
前記脂肪組織由来間葉系幹細胞が
脂肪組織から間葉系幹細胞を分離し、
血清を含む培地で前記間葉系幹細胞を初代培養し、
前記初代培養から継代された間葉系幹細胞を無血清培地で増殖培養して得られた、
頸部脊柱管狭窄症の治療薬。
【請求項107】
前記脂肪組織が患者の自己脂肪組織である、請求項106に記載の頸部脊柱管狭窄症の治療薬。
【請求項108】
患者に静脈投与される、請求項106又は107に記載の頸部脊柱管狭窄症の治療薬。
【請求項109】
1回当たり前記患者に投与される前記脂肪組織由来間葉系幹細胞の数が1億個以下である、請求項108に記載の頸部脊柱管狭窄症の治療薬。
【請求項110】
前記初代培養の培地に含まれる血清が、前記脂肪組織を採取した検体由来の血清である、請求項106から109のいずれか1項に記載の頸部脊柱管狭窄症の治療薬。
【請求項111】
前記初代培養の培地に含まれる血清の濃度が0.5体積%以上20体積%以下である、請求項106から110のいずれか1項に記載の頸部脊柱管狭窄症の治療薬。
【請求項112】
前記初代培養の培地に含まれる血清の濃度が1体積%以上10体積%以下である、請求項106から110のいずれか1項に記載の頸部脊柱管狭窄症の治療薬。
【請求項113】
前記脂肪組織由来間葉系幹細胞において、CD73、CD90、CD105、及びCD44が陽性であり、CD11b、CD19、CD34、CD45、及びHLA−DRが陰性である、請求項106から112のいずれか1項に記載の頸部脊柱管狭窄症の治療薬。
【請求項114】
前記脂肪組織由来間葉系幹細胞が、骨芽細胞、脂肪細胞、及び軟骨細胞への分化能を有する、請求項106から113のいずれか1項に記載の頸部脊柱管狭窄症の治療薬。
【請求項115】
脂肪組織由来間葉系幹細胞を含む腰部脊柱管狭窄症の治療薬であって、
前記脂肪組織由来間葉系幹細胞が
脂肪組織から間葉系幹細胞を分離し、
血清を含む培地で前記間葉系幹細胞を初代培養し、
前記初代培養から継代された間葉系幹細胞を無血清培地で増殖培養して得られた、
腰部脊柱管狭窄症の治療薬。
【請求項116】
前記脂肪組織が患者の自己脂肪組織である、請求項115に記載の腰部脊柱管狭窄症の治療薬。
【請求項117】
患者に静脈投与される、請求項115又は116に記載の腰部脊柱管狭窄症の治療薬。
【請求項118】
1回当たり前記患者に投与される前記脂肪組織由来間葉系幹細胞の数が1億個以下である、請求項117に記載の腰部脊柱管狭窄症の治療薬。
【請求項119】
前記初代培養の培地に含まれる血清が、前記脂肪組織を採取した検体由来の血清である、請求項115から118のいずれか1項に記載の腰部脊柱管狭窄症の治療薬。
【請求項120】
前記初代培養の培地に含まれる血清の濃度が0.5体積%以上20体積%以下である、請求項115から119のいずれか1項に記載の腰部脊柱管狭窄症の治療薬。
【請求項121】
前記初代培養の培地に含まれる血清の濃度が1体積%以上10体積%以下である、請求項115から119のいずれか1項に記載の腰部脊柱管狭窄症の治療薬。
【請求項122】
前記脂肪組織由来間葉系幹細胞において、CD73、CD90、CD105、及びCD44が陽性であり、CD11b、CD19、CD34、CD45、及びHLA−DRが陰性である、請求項115から121のいずれか1項に記載の腰部脊柱管狭窄症の治療薬。
【請求項123】
前記脂肪組織由来間葉系幹細胞が、骨芽細胞、脂肪細胞、及び軟骨細胞への分化能を有する、請求項115から122のいずれか1項に記載の腰部脊柱管狭窄症の治療薬。
【請求項124】
脂肪組織由来間葉系幹細胞を含む腰椎変性側弯症の治療薬であって、
前記脂肪組織由来間葉系幹細胞が
脂肪組織から間葉系幹細胞を分離し、
血清を含む培地で前記間葉系幹細胞を初代培養し、
前記初代培養から継代された間葉系幹細胞を無血清培地で増殖培養して得られた、
腰椎変性側弯症の治療薬。
【請求項125】
前記脂肪組織が患者の自己脂肪組織である、請求項124に記載の腰椎変性側弯症の治療薬。
【請求項126】
患者に静脈投与される、請求項124又は125に記載の腰椎変性側弯症の治療薬。
【請求項127】
1回当たり前記患者に投与される前記脂肪組織由来間葉系幹細胞の数が1億個以下である、請求項126に記載の腰椎変性側弯症の治療薬。
【請求項128】
前記初代培養の培地に含まれる血清が、前記脂肪組織を採取した検体由来の血清である、請求項124から127のいずれか1項に記載の腰椎変性側弯症の治療薬。
【請求項129】
前記初代培養の培地に含まれる血清の濃度が0.5体積%以上20体積%以下である、請求項124から128のいずれか1項に記載の腰椎変性側弯症の治療薬。
【請求項130】
前記初代培養の培地に含まれる血清の濃度が1体積%以上10体積%以下である、請求項124から128のいずれか1項に記載の腰椎変性側弯症の治療薬。
【請求項131】
前記脂肪組織由来間葉系幹細胞において、CD73、CD90、CD105、及びCD44が陽性であり、CD11b、CD19、CD34、CD45、及びHLA−DRが陰性である、請求項124から130のいずれか1項に記載の腰椎変性側弯症の治療薬。
【請求項132】
前記脂肪組織由来間葉系幹細胞が、骨芽細胞、脂肪細胞、及び軟骨細胞への分化能を有する、請求項124から131のいずれか1項に記載の腰椎変性側弯症の治療薬。
【請求項133】
脂肪組織由来間葉系幹細胞を含む腰椎症の治療薬であって、
前記脂肪組織由来間葉系幹細胞が
脂肪組織から間葉系幹細胞を分離し、
血清を含む培地で前記間葉系幹細胞を初代培養し、
前記初代培養から継代された間葉系幹細胞を無血清培地で増殖培養して得られた、
腰椎症の治療薬。
【請求項134】
前記脂肪組織が患者の自己脂肪組織である、請求項133に記載の腰椎症の治療薬。
【請求項135】
患者に静脈投与される、請求項133又は134に記載の腰椎症の治療薬。
【請求項136】
1回当たり前記患者に投与される前記脂肪組織由来間葉系幹細胞の数が1億個以下である、請求項135に記載の腰椎症の治療薬。
【請求項137】
前記初代培養の培地に含まれる血清が、前記脂肪組織を採取した検体由来の血清である、請求項133から136のいずれか1項に記載の腰椎症の治療薬。
【請求項138】
前記初代培養の培地に含まれる血清の濃度が0.5体積%以上20体積%以下である、請求項133から137のいずれか1項に記載の腰椎症の治療薬。
【請求項139】
前記初代培養の培地に含まれる血清の濃度が1体積%以上10体積%以下である、請求項133から137のいずれか1項に記載の腰椎症の治療薬。
【請求項140】
前記脂肪組織由来間葉系幹細胞において、CD73、CD90、CD105、及びCD44が陽性であり、CD11b、CD19、CD34、CD45、及びHLA−DRが陰性である、請求項133から139のいずれか1項に記載の腰椎症の治療薬。
【請求項141】
前記脂肪組織由来間葉系幹細胞が、骨芽細胞、脂肪細胞、及び軟骨細胞への分化能を有する、請求項133から140のいずれか1項に記載の腰椎症の治療薬。
【請求項142】
脂肪組織由来間葉系幹細胞を含む変形性膝関節症の治療薬であって、
前記脂肪組織由来間葉系幹細胞が
脂肪組織から間葉系幹細胞を分離し、
血清を含む培地で前記間葉系幹細胞を初代培養し、
前記初代培養から継代された間葉系幹細胞を無血清培地で増殖培養して得られた、
変形性膝関節症の治療薬。
【請求項143】
前記脂肪組織が患者の自己脂肪組織である、請求項142に記載の変形性膝関節症の治療薬。
【請求項144】
患者の関節内に投与される、請求項142又は143に記載の変形性膝関節症の治療薬。
【請求項145】
1回当たり前記患者に投与される前記脂肪組織由来間葉系幹細胞の数が1億個以下である、請求項144に記載の変形性膝関節症の治療薬。
【請求項146】
前記初代培養の培地に含まれる血清が、前記脂肪組織を採取した検体由来の血清である、請求項142から145のいずれか1項に記載の変形性膝関節症の治療薬。
【請求項147】
前記初代培養の培地に含まれる血清の濃度が0.5体積%以上20体積%以下である、請求項142から146のいずれか1項に記載の変形性膝関節症の治療薬。
【請求項148】
前記初代培養の培地に含まれる血清の濃度が1体積%以上10体積%以下である、請求項142から146のいずれか1項に記載の変形性膝関節症の治療薬。
【請求項149】
前記脂肪組織由来間葉系幹細胞において、CD73、CD90、CD105、及びCD44が陽性であり、CD11b、CD19、CD34、CD45、及びHLA−DRが陰性である、請求項142から148のいずれか1項に記載の変形性膝関節症の治療薬。
【請求項150】
前記脂肪組織由来間葉系幹細胞が、軟骨細胞への分化能を有する、請求項142から149のいずれか1項に記載の変形性膝関節症の治療薬。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は細胞に関し、脂肪由来間葉系幹細胞、脂肪由来間葉系幹細胞の培養方法、及び治療薬に関する。
【背景技術】
【0002】
間葉系幹細胞は、疾患の治療に有用であることが報告されている(例えば、特許文献1及び非特許文献1から12参照。)。脂肪組織から培養、増殖される脂肪由来間葉系幹細胞は、分化により組織再生に参画、あるいは成長因子を分泌して組織再生を促進する。脂肪由来間葉系幹細胞は、骨髄由来間葉系幹細胞と比較して、細胞増殖が速い、再生促成因子を多く分泌する、免疫抑制能が高い、という有利な特徴を有する。さらに、脂肪由来間葉系幹細胞は、腹部又は臀部の脂肪組織から得られるため、骨髄を採取する必要のある骨髄由来間葉系幹細胞と比較して、安全に十分量確保しやすいという有利な特徴も有する。また、患者の自己脂肪組織由来の間葉系幹細胞を患者の治療に用いることは、倫理的な問題がない、免疫拒絶反応がない、感染症等の問題が少ない、静脈投与で治療効果がある等の点で優れている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許5541845号公報
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】Ra et al、「Stem cell treatment for patients with autoimmune disease by systemic infusion of culture-expanded autologous adipose tissue derived mesenchymal stem cells」、Journal of Translational Medicine、2011、9:181
【非特許文献2】Jeong Chan Ra et al、「Safety of Intravenous Infusion of Human Adipose Tissue-Derived Mesenchymal Stem Cells in Animals and Humans」、STEM CELLS AND DEVELOPMENT、Volume 20, Number 8、2011
【非特許文献3】Choi HJ, et al、「Establishment of Efficacy and Safety Assessment of Human Adipose Tissue-Derived Mesenchymal Stem Cells (hATMSCs) in a Nude Rat Femoral Segmental Defect Model」、J Korean Med Sci 2011; 26: 482-491
【非特許文献4】S. Takikawa et al、「Human umbilical cord-derived mesenchymal stromal cells promote sensory recovery in a spinal cord injury rat model」、Stem Cell Discovery、3、(2013)、155-163
【非特許文献5】Liu et al、「Therapeutic potential of human umbilical cord mesenchymal stem cells in the treatment of rheumatoid arthritis」、Arthritis Research & Therapy、2010、12:R210
【非特許文献6】Shengchang Zhang et al、「Anti-Aging Effect of Adipose-Derived Stem Cells in a Mouse Model of Skin Aging Induced by D-Galactose」、PLOS ONE、May 2014、Volume 9、Issue 5
【非特許文献7】Mitsuhara et al、「Simulated microgravity facilitates cell migration and neuroprotection after bone marrow stromal cell transplantation in spinal cord injury」、Stem Cell Research & Therapy、2013、4:35
【非特許文献8】Fukuki Saito et al、「Administration of cultured autologous bone marrow stromal cells into cerebrospinal fluid in spinal injury patients: A pilot study」、Restorative Neurology and Neuroscience、30、(2012)、127-136
【非特許文献9】Maarten Albersen, MD et al、「Injections of adipose tissue-derived stem cells and stem cell lysate improve recovery of erectile function in a rat model of cavernous nerve injury」、J Sex Med、2010、October、7(10)
【非特許文献10】Osamu Honmou et al、「Intravenous administration of auto serum-expanded autologous mesenchymal stem cells in stroke」、Brain、2011
【非特許文献11】Jeong-Min Kim et al、「Systemic transplantation of human adipose stem cells attenuated cerebral inflammation and degeneration in a hemorrhagic stroke model」、BRAINRESEARCH、1183、(2007)、43-50
【非特許文献12】Chris Hyunchul Jo, et al、「Intra-Articular Injection of Mesenchymal Stem Cells for the Treatment of Osteoarthritis of the Knee: A Proof-of-Concept Clinical Trial」、STEM CELLS、32、(2014)、1254-1266
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、従来の有血清培地で増殖培養及び拡大培養された脂肪由来間葉系幹細胞は、治療効果を発揮させるためには、患者に多量に投与する必要がある。そこで、本発明は、少量の投与量で疾患の治療に有用な脂肪組織由来間葉系幹細胞、脂肪由来間葉系幹細胞の培養方法、及び治療薬を提供することを目的の一つとする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の態様によれば、脂肪組織から間葉系幹細胞を分離し、血清を含む培地で間葉系幹細胞を初代培養し、初代培養から継代された間葉系幹細胞を無血清培地で増殖培養して得られた、脂肪組織由来間葉系幹細胞が提供される。
【0007】
また、本発明の態様によれば、脂肪組織から間葉系幹細胞を分離することと、血清を含む培地で間葉系幹細胞を初代培養することと、初代培養から継代された間葉系幹細胞を無血清培地で増殖培養することと、を含む、脂肪組織由来間葉系幹細胞の培養方法が提供される。
【0008】
初代培養の培地に含まれる血清が、脂肪組織を採取した検体由来の血清であってもよい。初代培養の培地に含まれる血清の濃度が0.5体積%以上20体積%以下であってもよい。初代培養の培地に含まれる血清の濃度が1体積%以上10体積%以下であってもよい。
【0009】
上記の脂肪組織由来間葉系幹細胞において、CD73、CD90、CD105、及びCD44が陽性であり、CD11b、CD19、CD34、CD45、及びHLA−DRが陰性であってもよい。上記の脂肪組織由来間葉系幹細胞が、骨芽細胞、脂肪細胞、及び軟骨細胞への分化能を有していてもよい。
【0010】
さらに、本発明の態様によれば、脂肪組織由来間葉系幹細胞を含むアトピー性皮膚炎の治療薬であって、脂肪組織由来間葉系幹細胞が、脂肪組織から間葉系幹細胞を分離し、血清を含む培地で間葉系幹細胞を初代培養し、初代培養から継代された間葉系幹細胞を無血清培地で増殖培養して得られた、アトピー性皮膚炎の治療薬が提供される。
【0011】
上記のアトピー性皮膚炎の治療薬において、脂肪組織が患者の自己脂肪組織であってもよい。
【0012】
上記のアトピー性皮膚炎の治療薬は、患者に静脈投与されてもよい。この場合、上記のアトピー性皮膚炎の治療薬において、1回当たり患者に投与される脂肪組織由来間葉系幹細胞の数が1億個以下、又は5千万個以下であってもよい。
【0013】
上記のアトピー性皮膚炎の治療薬は、患者の患部に局注投与されてもよい。この場合、上記のアトピー性皮膚炎の治療薬において、1回当たり患者に投与される脂肪組織由来間葉系幹細胞の数が5千万個以下であってもよい。
【0014】
上記のアトピー性皮膚炎の治療薬において、初代培養の培地に含まれる血清が、脂肪組織を採取した検体由来の血清であってもよい。初代培養の培地に含まれる血清の濃度が0.5体積%以上20体積%以下であってもよい。初代培養の培地に含まれる血清の濃度が1体積%以上10体積%以下であってもよい。
【0015】
上記のアトピー性皮膚炎の治療薬に含まれる脂肪組織由来間葉系幹細胞において、CD73、CD90、CD105、及びCD44が陽性であり、CD11b、CD19、CD34、CD45、及びHLA−DRが陰性であってもよい。脂肪組織由来間葉系幹細胞が、骨芽細胞、脂肪細胞、及び軟骨細胞への分化能を有してもよい。
【0016】
またさらに、本発明の態様によれば、脳挫傷、脳梗塞、脳出血、突発性難聴、肩関節周囲炎、結核性脊椎炎、胸椎黄色靭帯骨化症、脊髄損傷、脊髄梗塞、頸部脊柱管狭窄症、腰部脊柱管狭窄症、腰椎変性側弯症、腰椎症、関節リウマチ、及び変形性膝関節症からなる群から選択される疾患の治療薬であって、脂肪組織由来間葉系幹細胞を含む治療薬であり、脂肪組織由来間葉系幹細胞が、脂肪組織から間葉系幹細胞を分離し、血清を含む培地で間葉系幹細胞を初代培養し、初代培養から継代された間葉系幹細胞を無血清培地で増殖培養して得られた、疾患の治療薬が提供される。
【0017】
上記の疾患の治療薬において、脂肪組織が患者の自己脂肪組織であってもよい。
【0018】
上記の疾患の治療薬は、患者に静脈投与されてもよい。この場合、上記の疾患の治療薬において、1回当たり患者に投与される脂肪組織由来間葉系幹細胞の数が1億個以下、又は5千万個以下であってもよい。
【0019】
上記の疾患の治療薬は、患者の患部に局注投与されてもよい。この場合、上記の疾患の治療薬において、1回当たり患者に投与される脂肪組織由来間葉系幹細胞の数が5千万個以下であってもよい。
【0020】
上記の疾患の治療薬において、初代培養の培地に含まれる血清が、脂肪組織を採取した検体由来の血清であってもよい。初代培養の培地に含まれる血清の濃度が0.5体積%以上20体積%以下であってもよい。初代培養の培地に含まれる血清の濃度が1体積%以上10体積%以下であってもよい。
【0021】
上記の疾患の治療薬に含まれる脂肪組織由来間葉系幹細胞において、CD73、CD90、CD105、及びCD44が陽性であり、CD11b、CD19、CD34、CD45、及びHLA−DRが陰性であってもよい。脂肪組織由来間葉系幹細胞が、骨芽細胞、脂肪細胞、及び軟骨細胞への分化能を有してもよい。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、少量の投与量で疾患の治療に有用な脂肪組織由来間葉系幹細胞、脂肪由来間葉系幹細胞の培養方法、及び治療薬を提供可能である。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】実施例2に係る脂肪細胞に分化した細胞である。
【
図2】実施例3に係る軟骨細胞に分化した細胞である。
【
図3】実施例4に係る骨芽細胞に分化した細胞である。
【
図4】実施例5に係るフローサイトメトリーの結果を示す表である。
【
図5】実施例6に係るEASIの結果を示す表である。
【
図6】実施例7に係る血液検査の基準値を示す表である。
【
図7】実施例7に係るアトピー性皮膚炎の患者に対する治療効果を示す表である。
【
図8】実施例8に係るリハビリテストの概要を示す表である。
【
図9】実施例8に係るリハビリテストの概要を示す表である。
【
図10】実施例8に係るリハビリテストの概要を示す表である。
【
図11】実施例8に係る脳挫傷の患者に対する治療効果を示す表である。
【
図12】実施例9に係る脳梗塞の患者に対する治療効果を示す表である。
【
図13】実施例10に係る脳梗塞の患者に対する治療効果を示す表である。
【
図14】実施例11に係る脳梗塞及び結核性脊椎炎の患者に対する治療効果を示す表である。
【
図15】実施例12に係る脳出血の患者に対する治療効果を示す表である。
【
図16】実施例13に係る脳出血の患者に対する治療効果を示す表である。
【
図17】実施例14に係る突発性難聴の患者に対する治療効果を示す表である。
【
図18】実施例15に係る肩関節周囲炎の患者に対する治療効果を示す表である。
【
図19】実施例16に係る肩関節周囲炎の患者に対する治療効果を示す表である。
【
図20】実施例17に係る胸椎黄色靭帯骨化症の患者に対する治療効果を示す表である。
【
図21】実施例18に係る脊髄損傷の患者に対する治療効果を示す表である。
【
図22】実施例19に係る脊髄損傷の患者に対する治療効果を示す表である。
【
図23】実施例20に係る脊髄損傷の患者に対する治療効果を示す表である。
【
図24】実施例21に係る脊髄梗塞の患者に対する治療効果を示す表である。
【
図25】実施例22に係る頸部脊柱管狭窄症の患者に対する治療効果を示す表である。
【
図26】実施例23に係る腰部脊柱管狭窄症の患者に対する治療効果を示す表である。
【
図27】実施例24に係る腰椎変性側弯症の患者に対する治療効果を示す表である。
【
図28】実施例25に係る腰椎症の患者に対する治療効果を示す表である。
【
図29】実施例26に係る関節リウマチの患者に対する治療効果を示す表である。
【
図30】実施例27に係る変形性膝関節症の患者に対する治療効果を示す、関節鏡検査で得られた写真である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下に本発明の実施の形態を説明する。ただし、この開示の一部をなす記述及び図面はこの発明を限定するものであると理解するべきではない。この開示から当業者には様々な代替実施の形態、実施例及び運用技術が明らかになるはずである。したがて、本発明はここでは記載していない様々な実施の形態等を包含するということを理解すべきである。
【0025】
本発明の実施の形態に係る脂肪組織由来間葉系幹細胞(Adipose Tissue Derived MesenchymalStem Cell)は、脂肪組織から間葉系幹細胞を分離し、血清を含む培地で間葉系幹細胞を初代培養し、初代培養から継代された間葉系幹細胞を無血清培地で増殖培養して得られる。
【0026】
脂肪組織は、例えばヒト等のほ乳類から外科的切除されて得られる。外科的切除の際には、局所麻酔をしてもよい。あるいは、脂肪組織は、カテーテルを腹部、大腿部、又は臀部の皮下脂肪組織に挿管することによって、吸引により得られてもよい。得られる脂肪組織の量は、例えば1gから100g、2gから50g、2gから40g、あるいは2gから20gであるが、これらに限定されない。
【0027】
得られた脂肪組織は、肉眼試験で、腫瘍性病変がないこと、汚染がないことが確認されることが好ましい。また、脂肪組織は、HBV、HCV、HIV、HTLV−1、及びTPHA/RPRがいずれも陰性であることが確認されることが好ましい。さらに、脂肪組織は、マイコプラズマが128倍未満(PA法)、単純ヘルペスが320倍未満(CF法)であることが確認されることが好ましい。
【0028】
得られた脂肪組織は、例えば生理食塩水で洗浄され、ハンクス平衡塩溶液(HBSS)に0.1%の濃度で希釈されたコラゲナーゼを含む溶液に37℃で70分間浸され、分散される。脂肪組織から分散された脂肪組織由来細胞は、1800rpmで10分間遠心分離される。さらに、遠心分離によって得られた間質血管細胞群(SVF:stromal vascular fluid)を溶液で希釈し、100μmのナイロンメッシュで濾過する。濾過された細胞は、MEMαで洗浄される。
【0029】
遠心分離及び濾過された細胞は、血清を含む培地で無菌的に初代培養される。血清を含む培地としては、例えば、初代間葉系幹細胞用無血清培地STK1(登録商標、DSファーマバイオメディカル株式会社)と、α改変最小必須培地(MEMα、ライフテクノロジーズ社)と、を混合した後、血清を添加した培地が使用可能である。STK1と、MEMαと、の混合体積比は、100:0から10:90、あるいは75:25から25:75、好ましくは50:50である。なお、MEMαの代わりに、ダルベッコ改変イーグル培地(DMEM)、ダルベッコ改変イーグル培地/ハムF−12混合培地(DMEM/F12)、及びMEM等も使用可能である。STK1に対するDMEM、DMEM/F12、又はMEMの体積比は、MEMαと同様である。血清を含む培地における血清の濃度は、0.5体積%以上20体積%以下、好ましくは1体積%以上10体積%以下、より好ましくは1体積%以上2体積%以下である。初代培養の培地に含まれる血清は、脂肪組織を採取した検体由来の血清であってもよいし、脂肪組織を採取した検体以外の検体由来の血清であってもよい。血清は、例えば、検体から3mL以上の血液を採取することにより用意される。
【0030】
初代培養とは、継代操作を行う前の培養を意味する。初代培養は、例えば、T−25フラスコ等の培養容器を用いて、5%二酸化炭素含有空気下、37℃で行われる。初代培養開始後、3日目に培地を交換し、以後、細胞が70%から90%コンフルエトになるまで1日おきに培地を交換する。10日ほどで細胞が70%から90%コンフルエトになったら、細胞剥離剤を用いて、初代培養の培養容器から細胞を剥離する。細胞剥離剤としては、哺乳動物及びバクテリア成分を含まないAccutase(登録商標、ライフテクノロジーズ社等)、TrypLE(登録商標)Express(ライフテクノロジーズ社)、TrypLE(登録商標)Select(ライフテクノロジーズ社)、及びTrypZean(シグマ社)等が使用可能である。以下に説明する継代においても、同様である。
【0031】
初代培養で回収される細胞の総数は、例えば40万個以上である。細胞の生存率は、70%以上であることが好ましい。
【0032】
初代培養の培養容器から剥離した細胞は、無血清培地で無菌的に増殖培養される。無血清培地としては、例えば、間葉系幹細胞用無血清培地STK2(登録商標、DSファーマバイオメディカル株式会社)と、α改変最小必須培地(MEMα、ライフテクノロジーズ社)と、を混合した培地が使用可能である。STK2と、MEMαと、の混合体積比は、100:0から10:90、あるいは75:25から25:75、好ましくは50:50である。なお、MEMαの代わりに、DMEM、DMEM/F12、及びMEM等も使用可能である。STK2に対するDMEM、DMEM/F12、又はMEMの体積比は、MEMαと同様である。
【0033】
増殖培養は、例えば、T−75フラスコ等の培養容器を用いて、5%二酸化炭素含有空気下、37℃で行われる。継代時、細胞は、例えば約5000細胞/cm
2から約8000細胞/cm
2の密度で播種される。増殖培養開始後、細胞がコンフルエトになるまで1日おきに培地を交換する。2週間ほどで細胞がコンフルエトになったら、例えば、T−175フラスコ等のより大きな培養容器に細胞を継代する。T−175フラスコ内で細胞がコンフルエトになったら、例えば、T−525フラスコ等のより大きな培養容器に細胞を継代する。増殖培養中において、培養容器の大きさ以外は、同一の培養条件を用いる。
【0034】
T−525フラスコ内で細胞がコンフルエトになったら、例えば、T−875フラスコ等のより大きな培養容器に細胞を継代し、無菌的に拡大培養を行う。増殖培養で回収される細胞の総数は、例えば2000万個以上である。細胞の生存率は、70%以上であることが好ましい。拡大培養の培養条件は、例えば、培地の交換を半量ずつ行うこと以外は、増殖培養の培養条件と同じである。4日から6日ほどで細胞がコンフルエトになったら、細胞剥離剤を用いて、拡大培養の培養容器から細胞を剥離する。これにより、実施の形態に係る脂肪組織由来間葉系幹細胞が得られる。
【0035】
初代培養においても、無血清培地を用いると、脂肪組織由来間葉系幹細胞の培養は困難とされている。これに対し、初代培養にのみ血清を含む培地を用いると、その後の増殖培養及び拡大培養において無血清培地を用いても、脂肪組織由来間葉系幹細胞の培養が可能となる。
【0036】
拡大培養で回収される細胞の総数は、例えば4000万個以上である。細胞の生存率は、70%以上であることが好ましい。なお、拡大培養終了後、培養液上清を回収し、感染症検査をしてもよい。例えば、微生物限度試験において、コロニーが認められないこと、マイコプラズマ否定試験において、陰性であること、エンドトキシン試験において、0.25EU/mL未満であること、を確認してもよい。
【0037】
実施の形態に係る脂肪組織由来間葉系幹細胞は、CD73、CD90、CD105、及びCD44が陽性であり、CD11b、CD19、CD34、CD45、及びHLA−DRが陰性である。また、実施の形態に係る脂肪組織由来間葉系幹細胞は、骨芽細胞、脂肪細胞、及び軟骨細胞への分化能を有する。また、実施の形態に係る脂肪組織由来間葉系幹細胞は、プラスチックプレートに対して接着性を有する。
【0038】
上記の培養方法で得られた脂肪組織由来間葉系幹細胞は、凍結保存液に分散させ、必要になるまで液体窒素を用いて―80℃で凍結保存してもよい。凍結保存液としては、STEM−CELLBANKER(登録商標、タカラバイオ株式会社)、バンバンカー(日本ジェネティクス株式会社)、及びラボバンカー(登録商標)2(十慈フィールド株式会社)等が使用可能である。凍結された脂肪組織由来間葉系幹細胞は、必要とされるときに解凍及び洗浄され、例えば水性注射剤等の水性溶液に添加される。解凍時の脂肪組織由来間葉系幹細胞の生存率は、例えば90%以上、あるいは95%以上である。水性注射剤としては、ラクテック(登録商標)注(株式会社大塚製薬工場)等の乳酸リンゲル液が使用可能である。他に、水性注射剤としては、ソルラクト(登録商標)輸液(テルモ株式会社)、及びハルトマン液「コバヤシ」(共和クリティケア株式会社)も使用可能である。脂肪組織由来間葉系幹細胞は、水性注射剤に、例えば、1千万個/mLの濃度となるよう、添加される。脂肪組織由来間葉系幹細胞を含有する注射剤は、注射筒に充填され、密閉される。脂肪組織由来間葉系幹細胞を含有する注射剤は、例えば4℃から10℃で24時間保存可能である。
【0039】
上記の培養方法で得られた脂肪組織由来間葉系幹細胞は、例えば、アトピー性皮膚炎の治療に有用である。
【0040】
本発明の実施の形態に係るアトピー性皮膚炎の治療薬は、上記の培養方法で得られた脂肪組織由来間葉系幹細胞を有効成分として含む。実施の形態に係るアトピー性皮膚炎の治療薬は、上記の培養方法で得られた脂肪組織由来間葉系幹細胞を有効成分として含み、当該脂肪組織由来間葉系幹細胞が、水性注射剤等の水性溶液に分散している静脈内投与用注射剤であってもよい。
【0041】
アトピー性皮膚炎の治療薬に含まれる間葉系幹細胞は、例えば、アトピー性皮膚炎の患者の自己脂肪組織由来であってもよいし、他者の脂肪組織由来であってもよい。脂肪組織由来間葉系幹細胞を含むアトピー性皮膚炎の治療薬は、患者に例えば静脈投与される。例えば脂肪組織由来間葉系幹細胞を含む水性注射剤250mLを含む点滴パックが用意される。
【0042】
その後、患者の肘窩皮静脈に20G留置針でルートを確保し、脂肪組織由来間葉系幹細胞を含む水性注射剤を患者に点滴することを開始する。点滴開始後、10分毎に点滴パックを振盪し、点滴パック内の脂肪組織由来間葉系幹細胞の沈殿を防ぐとよい。例えば、250mLの脂肪組織由来間葉系幹細胞を含む水性注射剤を、1時間かけて滴下する(約80滴/分)。
【0043】
アトピー性皮膚炎の治療において、1回当たり患者に投与される脂肪組織由来間葉系幹細胞の数は、例えば1千万個以上、あるいは2千万個以上であり、かつ、1億個以下、9千万個以下、8千万個以下、7千万個以下、6千万個以下、5千万個以下、4千万個以下、あるいは3千万個以下である。例えば、アトピー性皮膚炎の患者に、脂肪組織由来間葉系幹細胞を静脈投与し、1回目の静脈投与の5日後、6日後、1週間後、あるいは1週間から2週間後に、脂肪組織由来間葉系幹細胞の2回目の静脈投与をしてもよい。上記期間内にされる1回目と2回目に投与される脂肪組織由来間葉系幹細胞の合計が、1億個以下であってもよい。
【0044】
例えば、アトピー性皮膚炎の患者に、1回目に3500万から4000万個の脂肪組織由来間葉系幹細胞を静脈投与し、5日後、6日後、1週間後、あるいは1週間から2週間後の2回目に、2500万から3000万個の脂肪組織由来間葉系幹細胞を静脈投与してもよい。
【0045】
また、アトピー性皮膚炎の治療薬は、アトピー性皮膚炎の患者の患部に局注投与されてもよい。この場合、1回当たり患者に投与される脂肪組織由来間葉系幹細胞の数は、例えば1千万個以上であり、かつ、5千万個以下、4千万個以下、3千万個以下、あるいは2千万個以下である。
【0046】
従来、アトピー性皮膚炎の治療において、1回当たり患者に投与される、有血清培地で増殖培養及び拡大培養された間葉系幹細胞の数は、2億個以上である。しかし、多量の幹細胞を静脈投与すると、静脈に細胞が詰まる懸念がある。また、例えば、4億個の幹細胞を投与された患者が、投与後、血栓が肺動脈に詰まる肺塞栓で死亡した事例があり、多量の幹細胞を一度に投与することを躊躇する医師もいる。これに対し、上記の培養方法で培養された脂肪組織由来間葉系幹細胞は、治療効果が高いため、1回当たりの投与数を減らすことが可能となり、ひいては投与時間(点滴時間)を短縮することが可能となる。そのため、治療の安全性を高め、かつ、患者の治療による苦痛を低減することが可能となる。
【0047】
また、アトピー性皮膚炎に対する治療は、これまで外用療法が主体であり、ステロイド外用薬が用いられてきている。ステロイド外用薬は、適切に使用すれば優れた治療効果を得られるが、皮膚萎縮、毛細血管拡張などの局所的副作用に注意が必要である。これに対し、上記の培養方法で培養された脂肪組織由来間葉系幹細胞は、副作用を抑制することが可能となる。
【0048】
また、上記の培養方法で得られた脂肪組織由来間葉系幹細胞は、アトピー性皮膚炎以外の、例えば、脳挫傷、脳梗塞、脳出血、突発性難聴、肩関節周囲炎、結核性脊椎炎、胸椎黄色靭帯骨化症、脊髄損傷、脊髄梗塞、頸部脊柱管狭窄症、腰部脊柱管狭窄症、腰椎変性側弯症、腰椎症、関節リウマチ、及び変形性膝関節症等の疾患の治療にも有用である。
【0049】
本発明の実施の形態に係る疾患の治療薬は、上記の培養方法で得られた脂肪組織由来間葉系幹細胞を有効成分として含む。実施の形態に係る疾患の治療薬は、上記の培養方法で得られた脂肪組織由来間葉系幹細胞を有効成分として含み、当該脂肪組織由来間葉系幹細胞が、水性注射剤等の水性溶液に分散している静脈内投与用注射剤であってもよい。
【0050】
疾患の治療薬に含まれる間葉系幹細胞は、例えば、疾患の患者の自己脂肪組織由来であってもよいし、他者の脂肪組織由来であってもよい。脂肪組織由来間葉系幹細胞を含む疾患の治療薬は、患者に例えば静脈投与される。例えば脂肪組織由来間葉系幹細胞を含む水性注射剤250mLを含む点滴パックが用意される。
【0051】
その後、患者の肘窩皮静脈に20G留置針でルートを確保し、脂肪組織由来間葉系幹細胞を含む水性注射剤を患者に点滴することを開始する。点滴開始後、10分毎に点滴パックを振盪し、点滴パック内の脂肪組織由来間葉系幹細胞の沈殿を防ぐとよい。例えば、250mLの脂肪組織由来間葉系幹細胞を含む水性注射剤を、1時間かけて滴下する(約80滴/分)。
【0052】
疾患の治療において、1回当たり患者に投与される脂肪組織由来間葉系幹細胞の数は、例えば1千万個以上、あるいは2千万個以上であり、かつ、1億個以下、9千万個以下、8千万個以下、7千万個以下、6千万個以下、5千万個以下、4千万個以下、あるいは3千万個以下である。例えば、疾患の患者に、脂肪組織由来間葉系幹細胞を静脈投与し、1回目の静脈投与の5日後、6日後、1週間後、あるいは1週間から2週間後に、脂肪組織由来間葉系幹細胞の2回目の静脈投与をしてもよい。上記期間内にされる1回目と2回目に投与される脂肪組織由来間葉系幹細胞の合計が、1億個以下であってもよい。
【0053】
例えば、疾患の患者に、1回目に3500万から4000万個の脂肪組織由来間葉系幹細胞を静脈投与し、5日後、6日後、1週間後、あるいは1週間から2週間後の2回目に、2500万から3000万個の脂肪組織由来間葉系幹細胞を静脈投与してもよい。
【0054】
また、疾患の治療薬は、疾患の患者の患部に局注投与されてもよい。この場合、1回当たり患者に投与される脂肪組織由来間葉系幹細胞の数は、例えば1千万個以上であり、かつ、5千万個以下、4千万個以下、3千万個以下、あるいは2千万個以下である。
【0055】
従来、アトピー性皮膚炎以外の疾患の治療においても、1回当たり患者に投与される、有血清培地で増殖培養及び拡大培養された間葉系幹細胞の数は多い。これに対し、上記の培養方法で培養された脂肪組織由来間葉系幹細胞は、アトピー性皮膚炎以外の疾患に対しても治療効果が高いため、1回当たりの投与数を減らすことが可能となり、ひいては投与時間(点滴時間)を短縮することが可能となる。
【0056】
(実施例1)
アトピー性皮膚炎の患者から、湿重量が5.58gの皮下脂肪組織を、局所麻酔下の手術によって採取した。得られた脂肪組織は、肉眼試験で、腫瘍性病変がないこと、汚染がないことが確認され、目視観察で、体積が2.5mL以上あることが確認された。また、脂肪組織は、HBV、HCV、HIV、HTLV−1、及びTPHA/RPRがいずれも陰性であることが確認された。さらに、脂肪組織は、マイコプラズマが128倍未満(PA法)、単純ヘルペスが320倍未満(CF法)であることが確認された。
【0057】
得られた脂肪組織は、生理食塩水で洗浄され、ハンクス平衡塩溶液(HBSS)に0.1%の濃度で希釈されたコラゲナーゼを含む溶液に37℃で70分間浸され、分散された。脂肪組織から分散された脂肪組織由来細胞は、1800rpmで10分間遠心分離された。さらに、遠心分離によって得られた間質血管細胞群(SVF:stromal vascular fluid)を溶液で希釈し、100μmのナイロンメッシュで濾過した。濾過された細胞を、MEMα(ライフテクノロジーズ社)で洗浄した。
【0058】
遠心分離及び濾過された細胞は、血清を含む培地で無菌的に初代培養された。血清を含む培地としては、初代間葉系幹細胞用無血清培地STK1(登録商標、DSファーマバイオメディカル株式会社)と、α改変最小必須培地(MEMα、ライフテクノロジーズ社)と、を1:1(体積比)で混合した後、血清を添加した培地を使用した。血清を含む培地における血清の濃度は、1体積%であった。血清は、脂肪組織を採取したアトピー性皮膚炎の患者から3mL以上の血液を採取することにより用意された。
【0059】
初代培養は、T−25フラスコを用いて、5%二酸化炭素含有空気下、37℃で行った。初代培養開始後、3日目に培地を交換し、以後、細胞が約70%コンフルエトになるまで1日おきに培地を交換した。8日で細胞が70%コンフルエトになったら、細胞剥離剤を用いて、T−25フラスコから細胞を剥離した。細胞剥離剤としては、哺乳動物及びバクテリア成分を含まないAccutase(登録商標、ライフテクノロジーズ社)を用いた。以下に説明する継代においても、同様である。
【0060】
初代培養で回収された細胞の総数は、38万個であった。細胞の生存率は、100%であった。
【0061】
初代培養の培養容器から剥離した細胞は、無血清培地で無菌的に増殖培養された。無血清培地としては、間葉系幹細胞用無血清培地STK2(登録商標、DSファーマバイオメディカル株式会社)と、α改変最小必須培地(MEMα、ライフテクノロジーズ社)と、を1:1(体積比)で混合した培地を使用した。
【0062】
増殖培養は、最初に、T−75フラスコを用いて、5%二酸化炭素含有空気下、37℃で行われた。継代時、細胞は、5000細胞/cm
2の密度で播種された。増殖培養開始後、細胞がコンフルエトになるまで1日おきに培地を交換した。細胞がコンフルエトになったら、T−175フラスコに細胞を継代した。T−175フラスコ内で細胞がコンフルエトになったら、T−525フラスコに細胞を継代した。増殖培養中において、フラスコの大きさ以外は、同一の培養条件を用いた。
【0063】
T−525フラスコ内で細胞がコンフルエトになったら、T−875フラスコに細胞を継代し、無菌的に拡大培養を行った。拡大培養で回収された細胞の総数は、9450万個であった。細胞の生存率は、98.6%であった。拡大培養の培養条件は、培地の交換を半量ずつ行うこと以外は、増殖培養の培養条件と同じであった。4日で細胞がコンフルエトになったら、細胞剥離剤を用いて、T−875フラスコから細胞を剥離し、脂肪組織由来間葉系幹細胞を得た。培養期間は、合計して21日間であった。
【0064】
拡大培養で回収される細胞の総数は、約9450万個であった。細胞の生存率は、98.6%であった。なお、拡大培養終了後、培養液上清を回収し、微生物限度試験において、コロニーが認められないこと、マイコプラズマ否定試験において、陰性であること、エンドトキシン試験において、0.25EU/mL未満であること、を確認した。
【0065】
上記の培養方法で得られた脂肪組織由来間葉系幹細胞は、凍結保存液(STEM−CELLBANKER、登録商標、タカラバイオ株式会社)に分散させ、必要になるまでディープフリーザーを用いて―80℃で凍結保存した。
【0066】
(実施例2)
実施例1と同じ培養方法を用いて、2名の検体(腰椎症と脊髄損傷の患者)由来の脂肪組織由来間葉系幹細胞を得た。得られた脂肪組織由来間葉系幹細胞を、in vitroで、脂肪細胞分化試薬を含む培地(StemPro Adipogenesis Differentiation Kit、登録商標、ライフテクノロジーズ社)で37℃、5%CO
2加空気の気相下で14日間培養し、脂肪細胞への分化を誘導した。細胞をオイルレッドO(シグマ社、カタログナンバー:O0625)で染色したところ、
図1に示すように、両方の検体由来の細胞が染色された。さらに、PrimeScript(登録商標)RT−PCR Kit(タカラバイオ社)を用いたRT−PCRによる定性試験により、両方の検体由来の細胞において、PPAGg2遺伝子の発現が上昇していることが確認された。よって、脂肪組織由来間葉系幹細胞が脂肪細胞に分化したことが確認された。
【0067】
(実施例3)
実施例2で得られた脂肪組織由来間葉系幹細胞を、in vitroで、軟骨細胞分化試薬を含む培地(StemPro Chondrogenesis Differentiation Kit、登録商標、ライフテクノロジーズ社)で37℃、5%CO
2加空気の気相下で21日間培養し、軟骨細胞への分化を誘導した。細胞をアルシアンブルー(和光純薬工業株式会社)で染色したところ、
図2に示すように、両方の検体由来の細胞が染色された。よって、脂肪組織由来間葉系幹細胞が軟骨細胞に分化したことが確認された。
【0068】
(実施例4)
実施例2で得られた脂肪組織由来間葉系幹細胞を、in vitroで、骨芽細胞分化試薬を含む培地(StemPro Osteogenesis Differentiation Kit、登録商標、ライフテクノロジーズ社)で37℃、5%CO
2加空気の気相下で21日間培養し、骨芽細胞への分化を誘導した。細胞をアリザリンレッド(Sigma−Aldrich社)で染色したところ、
図3に示すように、両方の検体由来の細胞が染色された。さらに、PrimeScript(登録商標)RT−PCR Kit(タカラバイオ社)を用いたRT−PCRによる定性試験により、両方の検体由来の細胞において、アルカリフォスファターゼ遺伝子の発現が上昇していることが確認された。よって、脂肪組織由来間葉系幹細胞が骨芽細胞に分化したことが確認された。
【0069】
(実施例5)
FACSCantoII フローサイトメーター(ベクトン・ディッキンソン社)により、実施例2で得られた脂肪組織由来間葉系幹細胞の細胞表面抗原(CD73、CD90、CD105、CD44、CD11b、CD19、CD34、CD45、及びHLA−DR)を解析した。CD73、CD90、CD105、CD44の陽性率は、
図4に示すとおりであった。CD11b、CD19、CD34、CD45、及びHLA−DRの陽性率は、いずれも0.3%であった。表面マーカーの解析結果から、実施例2で得られた脂肪組織由来間葉系幹細胞には造血系幹細胞が含まれていないことが確認された。
【0070】
(実施例6)
実施例1の患者は、当時33才の女性であり、幼少期よりアトピー性皮膚炎に苦しんでいた。脂肪組織由来間葉系幹細胞の投与前において、頭頚部、体幹部、及び下肢に、紅斑、苔癬化、丘疹、及び掻破痕の症状が軽度に出ていた。また、上肢に、紅斑、及び掻破痕の症状が中等度に出ていた。さらに、上肢に、丘疹、及び苔癬化の症状が重度に出ていた。脂肪組織由来間葉系幹細胞の投与前における実施例1の患者のEASI(Eczema Area and Severity Index)による重症度分類を行った。結果を
図5に示す。頭頚部、体幹部、上肢、及び下肢の合計点の総計は24.8点であった。なお、EASIにおいて、重症度の最高点は72点となる。
【0071】
実施例1で得られた、凍結された脂肪組織由来間葉系幹細胞を、解凍及び洗浄し、ラクテック(登録商標)注(株式会社大塚製薬工場)に分散させ、3910万個の脂肪組織由来間葉系幹細胞が分散されたラクテック(登録商標)注250mLを用意した。解凍した脂肪組織由来間葉系幹細胞の生存率は97.9%であった。その後、実施例1の患者の肘窩皮静脈に20G留置針でルートを確保し、脂肪組織由来間葉系幹細胞を含むラクテック(登録商標)注を患者に点滴することを開始した。点滴開始後、10分毎に点滴パックを振盪し、点滴パック内の脂肪組織由来間葉系幹細胞の沈殿を防いだ。250mLの脂肪組織由来間葉系幹細胞を含む水性注射剤を、1時間かけて滴下した(約80滴/分)。これを1回目の静脈投与とした。実施例1の患者には、1回目の静脈投与後、ステロイド外用薬の塗布等、他の治療手段を併用しなかった。
【0072】
1回目の静脈投与から1週間後、脂肪組織由来間葉系幹細胞の数が2915万個である以外は、1回目の静脈投与と同じ条件で、実施例1の患者に2回目の静脈投与を行った。なお、2回目の投与時に解凍した脂肪組織由来間葉系幹細胞の生存率は97.7%であった。1回目の静脈投与から4ヶ月後、実施例1の患者のEASIによる重症度分類を行った。結果を
図5に示す。頭頚部、体幹部、上肢、及び下肢の合計点の総計は14.0点であった。したがって、1回目の静脈投与前と比較して、EASIの点数において4割程度改善していた。
【0073】
また、掻痒感が減少した、頭頚部は苔癬化のみ軽度に残り、紅斑、掻破痕、及び丘疹は消失した、体幹部は丘疹が消失した、下肢は丘疹、及び掻破痕が消失した、上肢は紅斑、丘疹、及び掻破痕の症状が軽度へと改善した、との医師の所見を得た。
【0074】
(実施例7)
実施例6の1回目の投与から7ヶ月後に、脂肪組織由来間葉系幹細胞の数が7200万個である以外は、1回目の静脈投与と同じ条件で、実施例1の患者に3回目の静脈投与を行った。また、同日に、実施例1の患者の右手足に、合計2400万個の脂肪組織由来間葉系幹細胞を局注した。なお、局注した脂肪組織由来間葉系幹細胞も、実施例1で得られた細胞である。
【0075】
実施例6の1回目の投与から8ヶ月後に、脂肪組織由来間葉系幹細胞の数が3665万個である以外は、1回目の静脈投与と同じ条件で、実施例1の患者に4回目の静脈投与を行った。また、同日に、実施例1の患者の右手足に、合計1335万個の脂肪組織由来間葉系幹細胞を局注した。なお、局注した脂肪組織由来間葉系幹細胞も、実施例1で得られた細胞である。
【0076】
実施例6の1回目の投与前、1回目投与から4ヶ月後、1回目投与から7ヶ月後、1回目投与から8ヶ月後、及び1回目投与から8ヶ月8日後(4回目投与後)に、血液検査等を行った。正常な検体の血液検査の基準値は、
図6に示すとおりである。
図7に示すように、実施例1の患者は、200IU/mL以上であると高いとされるIgEについて、1回目投与前が3401IU/mLであったのが、1回目投与から4ヶ月後には、3136IU/mLに減少していた。また、湿疹病変の広がり具合の指標となる乳酸脱水酵素(LDH)については、1回目投与前が361U/Lであったのが、1回目投与から4ヶ月後には、193U/Lに減少した。通常2%から5%である、病勢の推移を判断する目安となる好酸球(Eosino)については、14.3%から5.0%に減少した。炎症の強さに比例する傾向にあり、450pg/mL未満が基準値とされ、700pg/mLを超えると中等以上の重症度とされるTARCについては、1回目投与前が3488pg/mLであったのが、1回目投与から4ヶ月後には、539pg/mLに減少した。
【0077】
したがって、1回目の投与と、1回目の投与から1週間後の2回目の投与をすれば、1回目の投与から4ヶ月間、投与の効果が持続することが示された。また、脂肪組織由来間葉系幹細胞を投与したことによる副作用は確認されなかった。
【0078】
(実施例8)
発症から22年経過している、44才の男性の脳挫傷の患者から、実施例1と同様の方法で脂肪組織由来間葉系幹細胞を得た。実施例6と同様の方法で、当該患者に、2720万個の脂肪組織由来間葉系幹細胞を静脈投与し、これを1回目の静脈投与とした。実施例8の患者には、1回目の静脈投与後、リハビリ以外は他の治療手段を併用しなかった。1回目の静脈投与から6日後、脂肪組織由来間葉系幹細胞の数が2795万個である以外は、1回目の静脈投与と同じ条件で、実施例8の患者に2回目の静脈投与を行った。
【0079】
1回目の静脈投与から2ヶ月14日後、脂肪組織由来間葉系幹細胞の数が4252万個である以外は、1回目の静脈投与と同じ条件で、実施例8の患者に3回目の静脈投与を行った。さらに、1回目の静脈投与から3ヶ月11日後、脂肪組織由来間葉系幹細胞の数が4820万個である以外は、1回目の静脈投与と同じ条件で、実施例8の患者に4回目の静脈投与を行った。
【0080】
実施例8の患者には、血液検査等の他、
図8、
図9、及び
図10に示すようなリハビリテストを施した。結果を
図11に示す。実施例8の患者には、1回目の投与前は、発話が明瞭でない、まっすぐ座れない、及び立位保持ができない等の障害があったが、脂肪組織由来間葉系幹細胞の投与により、発話が明瞭になり、歩行器を用いて歩行できるようになった。また、少し発語が多くなり、車椅子移乗もゆっくり行えるようになった。さらに、脂肪組織由来間葉系幹細胞を投与したことによる副作用は確認されなかった。
【0081】
(実施例9)
発症から2年11ヶ月経過している、39才の女性の脳梗塞の患者から、実施例1と同様の方法で脂肪組織由来間葉系幹細胞を得た。実施例6と同様の方法で、当該患者に、2845万個の脂肪組織由来間葉系幹細胞を静脈投与し、これを1回目の静脈投与とした。実施例9の患者には、1回目の静脈投与後、他の治療手段を併用しなかった。1回目の静脈投与から6日後、脂肪組織由来間葉系幹細胞の数が2250万個である以外は、1回目の静脈投与と同じ条件で、実施例9の患者に2回目の静脈投与を行った。
【0082】
1回目の静脈投与から4ヶ月27日後、脂肪組織由来間葉系幹細胞の数が6985万個である以外は、1回目の静脈投与と同じ条件で、実施例9の患者に3回目の静脈投与を行った。さらに、1回目の静脈投与から5ヶ月3日後、脂肪組織由来間葉系幹細胞の数が6570万個である以外は、1回目の静脈投与と同じ条件で、実施例9の患者に4回目の静脈投与を行った。
【0083】
その結果、
図12に示すように、実施例9の患者は、1回目の投与前は、呼吸機能に異常がみられたが、脂肪組織由来間葉系幹細胞の投与により、呼吸機能が改善した。また、脂肪組織由来間葉系幹細胞を投与したことによる副作用は確認されなかった。
【0084】
(実施例10)
発症から1年5ヶ月経過している、60才の男性の脳梗塞の患者から、実施例1と同様の方法で脂肪組織由来間葉系幹細胞を得た。実施例6と同様の方法で、当該患者に、5995万個の脂肪組織由来間葉系幹細胞を静脈投与し、これを1回目の静脈投与とした。実施例10の患者には、1回目の静脈投与後、他の治療手段を併用しなかった。1回目の静脈投与から21日後、脂肪組織由来間葉系幹細胞の数が5005万個である以外は、1回目の静脈投与と同じ条件で、実施例10の患者に2回目の静脈投与を行った。
【0085】
その結果、
図13に示すように、実施例10の患者は、1回目の投与前は、上肢にしびれがあり、足の動きに障害があったが、脂肪組織由来間葉系幹細胞の投与により、上肢のしびれ及び足の動きに改善がみられた。また、1回目の投与前は、立ち上がって歩くまでに立ちくらみ様の感じがあったが、脂肪組織由来間葉系幹細胞の投与により、立ちくらみ様の感じがなくなり、立ち上がって歩くまでがスムーズになった。さらに、1回目の投与前は、歩行20分で足が重くなったが、脂肪組織由来間葉系幹細胞の投与により、1時間の歩行が可能になった。加えて、脂肪組織由来間葉系幹細胞を投与したことによる副作用は確認されなかった。
【0086】
(実施例11)
発症から11年9ヶ月経過している、70才の男性の脳梗塞及び結核性脊椎炎の患者から、実施例1と同様の方法で脂肪組織由来間葉系幹細胞を得た。実施例6と同様の方法で、当該患者に、4620万個の脂肪組織由来間葉系幹細胞を静脈投与し、これを1回目の静脈投与とした。実施例11の患者には、1回目の静脈投与後、他の治療手段を併用しなかった。1回目の静脈投与から6日後、脂肪組織由来間葉系幹細胞の数が4900万個である以外は、1回目の静脈投与と同じ条件で、実施例11の患者に2回目の静脈投与を行った。
【0087】
その結果、
図14に示すように、実施例11の患者は、1回目の投与前は、車いすへの移乗が不可能であり、左下肢に疼痛があったが、脂肪組織由来間葉系幹細胞の投与により、車いすへの移乗が可能になり、左下肢の疼痛に改善がみられた。また、脂肪組織由来間葉系幹細胞を投与したことによる副作用は確認されなかった。
【0088】
(実施例12)
発症から7年経過している、62才の男性の脳出血の患者から、実施例1と同様の方法で脂肪組織由来間葉系幹細胞を得た。実施例6と同様の方法で、当該患者に、4375万個の脂肪組織由来間葉系幹細胞を静脈投与し、これを1回目の静脈投与とした。実施例12の患者には、1回目の静脈投与後、他の治療手段を併用しなかった。1回目の静脈投与から6日後、脂肪組織由来間葉系幹細胞の数が5465万個である以外は、1回目の静脈投与と同じ条件で、実施例12の患者に2回目の静脈投与を行った。
【0089】
その結果、
図15に示すように、実施例12の患者は、1回目の投与前は、歩行障害、腰回りの痛み、及び左上肢の失調症状があったが、脂肪組織由来間葉系幹細胞の投与により、歩行障害、腰回りの痛み、及び左上肢の失調症状に改善がみられ、呼吸機能においてスパイログラムが正常となった。また、脂肪組織由来間葉系幹細胞を投与したことによる副作用は確認されなかった。
【0090】
(実施例13)
発症から1年9ヶ月経過している、55才の男性の脳出血の患者に、サイトリ・セラピューティクス株式会社のセルーション遠心分離器を用いて採取された脂肪組織由来再生細胞を投与した。セルーション遠心分離器を用いて採取された脂肪組織由来再生細胞は、間葉系幹細胞(MSC)、血管内皮前駆細胞、血管内皮細胞、平滑筋細胞、周皮細胞、マクロファージ、及び血球等から構成される、粗精製細胞群であった。さらに、当該患者から、実施例1と同様の方法で脂肪組織由来間葉系幹細胞を得た。実施例6と同様の方法で、当該患者に、粗精製細胞群の投与から1ヶ月4日後、7760万個の脂肪組織由来間葉系幹細胞を静脈投与し、これを1回目の静脈投与とした。実施例13の患者には、1回目の静脈投与後、他の治療手段を併用しなかった。1回目の静脈投与から7日後、脂肪組織由来間葉系幹細胞の数が5090万個である以外は、1回目の静脈投与と同じ条件で、実施例13の患者に2回目の静脈投与を行った。
【0091】
その結果、
図16に示すように、実施例13の患者は、治療により、リハビリの評価が向上した。また、脂肪組織由来間葉系幹細胞を投与したことによる副作用は確認されなかった。
【0092】
(実施例14)
発症から3年ほど経過している、40才の男性の突発性難聴の患者から、実施例1と同様の方法で脂肪組織由来間葉系幹細胞を得た。実施例6と同様の方法で、当該患者に、6705万個の脂肪組織由来間葉系幹細胞を静脈投与し、これを1回目の静脈投与とした。実施例14の患者には、1回目の静脈投与後、他の治療手段を併用しなかった。1回目の静脈投与から8日後、脂肪組織由来間葉系幹細胞の数が5410万個である以外は、1回目の静脈投与と同じ条件で、実施例14の患者に2回目の静脈投与を行った。さらに、1回目の静脈投与から3ヶ月19日後、脂肪組織由来間葉系幹細胞の数が5990万個である以外は、1回目の静脈投与と同じ条件で、実施例14の患者に3回目の静脈投与を行った。
【0093】
その結果、
図17に示すように、実施例14の患者は、治療により、IVからV波が誘発されるようになった。また、脂肪組織由来間葉系幹細胞を投与したことによる副作用は確認されなかった。
【0094】
(実施例15)
発症から3年ほど経過している、73才の男性の肩関節周囲炎の患者に、セルーション遠心分離器を用いて採取された粗精製細胞群を投与した。さらに、当該患者から、実施例1と同様の方法で脂肪組織由来間葉系幹細胞を得た。実施例6と同様の方法で、当該患者に、粗精製細胞群の投与から1ヶ月3日後、5000万個の脂肪組織由来間葉系幹細胞を静脈投与した。また、同日に、当該患者に、1320万個の脂肪組織由来間葉系幹細胞を肩に局注した。実施例15の患者には、他の治療手段を併用しなかった。
【0095】
その結果、
図18に示すように、実施例15の患者は、治療により、数値上の変化は特になかったが、痛みが減少、腕が上がるようになった。また、脂肪組織由来間葉系幹細胞を投与したことによる副作用は確認されなかった。
【0096】
(実施例16)
発症から1年ほど経過している、71才の女性の肩関節周囲炎の患者に、セルーション遠心分離器を用いて採取された粗精製細胞群を投与した。さらに、当該患者から、実施例1と同様の方法で脂肪組織由来間葉系幹細胞を得た。実施例6と同様の方法で、当該患者に、粗精製細胞群の投与から2ヶ月3日後、4000万個の脂肪組織由来間葉系幹細胞を静脈投与した。また、同日に、当該患者に、1520万個の脂肪組織由来間葉系幹細胞を肩に局注した。実施例16の患者には、他の治療手段を併用しなかった。
【0097】
その結果、
図19に示すように、実施例16の患者は、治療により、数値上の変化は特になかったが、痛みが減少、腕が上がるようになった。また、脂肪組織由来間葉系幹細胞を投与したことによる副作用は確認されなかった。
【0098】
(実施例17)
発症から4ヶ月経過している、
図20に示す33才の男性の胸椎黄色靭帯骨化症の患者から、実施例1と同様の方法で脂肪組織由来間葉系幹細胞を得た。実施例6と同様の方法で、当該患者に、1300万個の脂肪組織由来間葉系幹細胞を静脈投与した。実施例17の患者には、1回目の静脈投与後、他の治療手段を併用しなかった。
【0099】
その結果、実施例17の患者は、治療により、歩行がスムーズになった。また、脂肪組織由来間葉系幹細胞を投与したことによる副作用は確認されなかった。
【0100】
(実施例18)
発症から3年8ヶ月経過している、68才の男性の脊髄損傷の患者から、実施例1と同様の方法で脂肪組織由来間葉系幹細胞を得た。実施例6と同様の方法で、当該患者に、2785万個の脂肪組織由来間葉系幹細胞を静脈投与し、これを1回目の静脈投与とした。実施例18の患者には、1回目の静脈投与後、他の治療手段を併用しなかった。1回目の静脈投与から13日後、脂肪組織由来間葉系幹細胞の数が2480万個である以外は、1回目の静脈投与と同じ条件で、実施例18の患者に2回目の静脈投与を行った。
【0101】
1回目の静脈投与から4ヶ月12日後、脂肪組織由来間葉系幹細胞の数が4645万個である以外は、1回目の静脈投与と同じ条件で、実施例18の患者に3回目の静脈投与を行った。さらに、1回目の静脈投与から5ヶ月3日後、脂肪組織由来間葉系幹細胞の数が4520万個である以外は、1回目の静脈投与と同じ条件で、実施例18の患者に4回目の静脈投与を行った。
【0102】
その結果、
図21に示すように、実施例18の患者は、治療により、リハビリの評価が向上し、両足首が動くようになり、右肩疼痛がなくなり、挙上可能となった。また、脂肪組織由来間葉系幹細胞を投与したことによる副作用は確認されなかった。
【0103】
(実施例19)
発症から7年経過している、39才の男性の脊髄損傷の患者から、実施例1と同様の方法で脂肪組織由来間葉系幹細胞を得た。実施例6と同様の方法で、当該患者に、8920万個の脂肪組織由来間葉系幹細胞を静脈投与し、これを1回目の静脈投与とした。実施例19の患者には、1回目の静脈投与後、他の治療手段を併用しなかった。1回目の静脈投与から21日後、脂肪組織由来間葉系幹細胞の数が4750万個である以外は、1回目の静脈投与と同じ条件で、実施例19の患者に2回目の静脈投与を行った。また、2回目の静脈投与と同日に、1000万個の脂肪組織由来間葉系幹細胞を右足に局注した。
【0104】
その結果、
図22に示すように、実施例19の患者には、脂肪組織由来間葉系幹細胞を投与したことによる副作用は確認されなかった。
【0105】
(実施例20)
発症から4ヶ月経過している、33才の男性の脊髄損傷の患者に、セルーション遠心分離器を用いて採取された粗精製細胞群を投与した。さらに、当該患者から、実施例1と同様の方法で脂肪組織由来間葉系幹細胞を得た。粗精製細胞群の投与から2ヶ月4日後、実施例6と同様の方法で、当該患者に、5890万個の脂肪組織由来間葉系幹細胞を静脈投与し、これを1回目の静脈投与とした。実施例20の患者には、1回目の静脈投与後、他の治療手段を併用しなかった。1回目の静脈投与から13日後、脂肪組織由来間葉系幹細胞の数が5300万個である以外は、1回目の静脈投与と同じ条件で、実施例20の患者に2回目の静脈投与を行った。
【0106】
1回目の静脈投与から3ヶ月4日後、脂肪組織由来間葉系幹細胞の数が7220万個である以外は、1回目の静脈投与と同じ条件で、実施例20の患者に3回目の静脈投与を行った。さらに、1回目の静脈投与から3ヶ月21日後、脂肪組織由来間葉系幹細胞の数が5000万個である以外は、1回目の静脈投与と同じ条件で、実施例20の患者に4回目の静脈投与を行った。また、4回目の静脈投与と同日に、2435万個の脂肪組織由来間葉系幹細胞を下肢筋に局注した。
【0107】
その結果、
図23に示すように、実施例20の患者は、治療により、歩行が不可能であったのが、自立して杖で歩けるようになった。また、脂肪組織由来間葉系幹細胞を投与したことによる副作用は確認されなかった。
【0108】
(実施例21)
発症から1年経過している、68才の女性の脊髄梗塞の患者に、セルーション遠心分離器を用いて採取された粗精製細胞群を投与した。さらに、当該患者から、実施例1と同様の方法で脂肪組織由来間葉系幹細胞を得た。粗精製細胞群の投与から1ヶ月28日後、実施例6と同様の方法で、当該患者に、5465万個の脂肪組織由来間葉系幹細胞を静脈投与し、これを1回目の静脈投与とした。実施例21の患者には、1回目の静脈投与後、他の治療手段を併用しなかった。1回目の静脈投与から7日後、脂肪組織由来間葉系幹細胞の数が4120万個である以外は、1回目の静脈投与と同じ条件で、実施例21の患者に2回目の静脈投与を行った。
【0109】
1回目の静脈投与から1ヶ月24日後、脂肪組織由来間葉系幹細胞の数が6040万個である以外は、1回目の静脈投与と同じ条件で、実施例21の患者に3回目の静脈投与を行った。さらに、1回目の静脈投与から2ヶ月後、脂肪組織由来間葉系幹細胞の数が6540万個である以外は、1回目の静脈投与と同じ条件で、実施例21の患者に4回目の静脈投与を行った。
【0110】
その結果、
図24に示すように、実施例21の患者は、治療により、歩行が困難であったのが改善された。また、脂肪組織由来間葉系幹細胞を投与したことによる副作用は確認されなかった。
【0111】
(実施例22)
発症から4ヶ月経過している、54才の男性の頸部脊柱管狭窄症の患者から、実施例1と同様の方法で脂肪組織由来間葉系幹細胞を得た。実施例6と同様の方法で、当該患者に、9690万個の脂肪組織由来間葉系幹細胞を静脈投与し、これを1回目の静脈投与とした。実施例22の患者には、1回目の静脈投与後、他の治療手段を併用しなかった。1回目の静脈投与から1ヶ月日後、脂肪組織由来間葉系幹細胞の数が8035万個である以外は、1回目の静脈投与と同じ条件で、実施例22の患者に2回目の静脈投与を行った。
【0112】
その結果、
図25に示すように、実施例22の患者は、治療により、リハビリの評価が向上した。また、脂肪組織由来間葉系幹細胞を投与したことによる副作用は確認されなかった。
【0113】
(実施例23)
発症から5年経過している、67才の男性の腰部脊柱管狭窄症の患者から、実施例1と同様の方法で脂肪組織由来間葉系幹細胞を得た。実施例6と同様の方法で、当該患者に、4570万個の脂肪組織由来間葉系幹細胞を静脈投与し、これを1回目の静脈投与とした。実施例23の患者には、1回目の静脈投与後、他の治療手段を併用しなかった。
【0114】
1回目の静脈投与から7日後、実施例23の患者にセルーション遠心分離器を用いて採取された粗精製細胞群を投与した。さらに1回目の静脈投与から6ヶ月15日後、脂肪組織由来間葉系幹細胞の数が5000万個である以外は、1回目の静脈投与と同じ条件で、実施例23の患者に2回目の静脈投与を行った。また、2回目の静脈投与の同日に、実施例23の患者の右上腕、両大腿、背中、及び両鼻粘膜に、合計3350万個の脂肪組織由来間葉系幹細胞を局注した。
【0115】
その結果、実施例23の患者は、治療により、耐久力が向上した。また、
図26に示すように、脂肪組織由来間葉系幹細胞を投与したことによる副作用は確認されなかった。
【0116】
(実施例24)
発症から4月経過している、68才の女性の腰椎変性側弯症の患者から、実施例1と同様の方法で脂肪組織由来間葉系幹細胞を得た。実施例6と同様の方法で、当該患者に、8185万個の脂肪組織由来間葉系幹細胞を静脈投与し、これを1回目の静脈投与とした。実施例24の患者には、1回目の静脈投与後、他の治療手段を併用しなかった。
【0117】
その結果、
図27に示すように、実施例24の患者は、治療により、立位可能となり、疼痛が改善した。また、脂肪組織由来間葉系幹細胞を投与したことによる副作用は確認されなかった。
【0118】
(実施例25)
91才の女性の腰椎症の患者から、実施例1と同様の方法で脂肪組織由来間葉系幹細胞を得た。実施例6と同様の方法で、当該患者に、6060万個の脂肪組織由来間葉系幹細胞を静脈投与し、これを1回目の静脈投与とした。実施例25の患者には、1回目の静脈投与後、他の治療手段を併用しなかった。
【0119】
1回目の静脈投与から5日後、脂肪組織由来間葉系幹細胞の数が7035万個である以外は、1回目の静脈投与と同じ条件で、実施例25の患者に2回目の静脈投与を行った。さらに、1回目の静脈投与から2ヶ月23日後、脂肪組織由来間葉系幹細胞の数が7190万個である以外は、1回目の静脈投与と同じ条件で、実施例25の患者に3回目の静脈投与を行った。
【0120】
その結果、実施例25の患者は、治療により、痛みが軽減した。また、
図28に示すように、脂肪組織由来間葉系幹細胞を投与したことによる副作用は確認されなかった。
【0121】
(実施例26)
65才の男性の関節リウマチの患者から、実施例1と同様の方法で脂肪組織由来間葉系幹細胞を得た。実施例6と同様の方法で、当該患者に、3480万個の脂肪組織由来間葉系幹細胞を静脈投与し、これを1回目の静脈投与とした。実施例26の患者には、1回目の静脈投与後、他の治療手段を併用しなかった。1回目の静脈投与から14日後、脂肪組織由来間葉系幹細胞の数が1895万個である以外は、1回目の静脈投与と同じ条件で、実施例26の患者に2回目の静脈投与を行った。
【0122】
その結果、
図29に示すように、実施例26の患者には、脂肪組織由来間葉系幹細胞を投与したことによる副作用は確認されなかった。
【0123】
(実施例27)
疼痛発症から約5年経過している右変形性膝関節症の52歳男性患者から、実施例1と同様の方法で脂肪組織由来間葉系幹細胞を得た。当該患者に、全身麻酔を施し、関節鏡視下で、当該患者の右膝関節の損傷して剥離しかかっていた大腿骨内顆部の軟骨片の一部を除去し、露出した軟骨欠損部(軟骨下骨)を2.0mm径のキルシュナー鋼線を用いて数ヶ所穿孔した。その後、右膝関節内へ6860万個の脂肪組織由来間葉系幹細胞を注射投与した。細胞投与前の関節鏡検査で得られた写真を
図30(a)に示す。
【0124】
その結果、実施例27の患者は、JKOM(変形性膝関節症患者機能評価尺度)の評価が、脂肪組織由来間葉系幹細胞の投与前が69点であったのに対し、投与3カ月後には17点と改善傾向がみられた。また、膝の痛みのVAS(Visual Analogue Scale)評価が、脂肪組織由来間葉系幹細胞の投与前が25mmであったのに対し、投与3カ月後には0mmと疼痛は消失していた。さらに関節鏡検査の結果、
図30(b)に示すように、投与3カ月後には、病変部が新規の軟骨様組織で被覆されている様子が認められた。