(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2017-93467(P2017-93467A)
(43)【公開日】2017年6月1日
(54)【発明の名称】細胞培養及び傾斜移動アッセイ方法及び装置
(51)【国際特許分類】
C12N 1/00 20060101AFI20170428BHJP
C12M 1/00 20060101ALI20170428BHJP
C12N 5/07 20100101ALI20170428BHJP
C12N 5/10 20060101ALI20170428BHJP
C12M 3/00 20060101ALI20170428BHJP
【FI】
C12N1/00 A
C12M1/00 C
C12N5/07
C12N5/10
C12M3/00 A
【審査請求】有
【請求項の数】60
【出願形態】OL
【全頁数】35
(21)【出願番号】特願2017-19804(P2017-19804)
(22)【出願日】2017年2月6日
(62)【分割の表示】特願2015-503203(P2015-503203)の分割
【原出願日】2013年2月6日
(31)【優先権主張番号】13/436,992
(32)【優先日】2012年4月1日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】61/761,227
(32)【優先日】2013年2月5日
(33)【優先権主張国】US
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.VISUAL BASIC
(71)【出願人】
【識別番号】504115013
【氏名又は名称】イー・エム・デイー・ミリポア・コーポレイシヨン
(74)【代理人】
【識別番号】110000523
【氏名又は名称】アクシス国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】ジュ−サン・ポール・ハン
(72)【発明者】
【氏名】フィリップ・ジェイ・リー
(72)【発明者】
【氏名】アメデオ・ジェイ・カピオネ
【テーマコード(参考)】
4B029
4B065
【Fターム(参考)】
4B029AA02
4B029AA08
4B029BB11
4B029CC01
4B029DG06
4B029FA01
4B029GB06
4B065AA01X
4B065AA90X
4B065AA95X
4B065AB04
4B065AC20
4B065CA44
4B065CA46
4B065CA60
(57)【要約】 (修正有)
【課題】使いやすさ、高スループット又は自動化アプリケーションに必要な多数の観点で従来の浸潤又は移動又は運動性アッセイを超える利点を有する微小流体細胞培養装置、システム及び方法の提供。
【解決手段】微小流体細胞培養システムを使用して細胞を培養及び監視するための方法であって、該微小流体細胞培養システムの細胞チャンバーに細胞の1つ以上の群を導入し;該細胞チャンバー内において該細胞の1つ以上の群を培養し;1個以上の微小流体流路を用いて該細胞チャンバー内に勾配を生成しかつ制御し;ここで、該細胞チャンバーは、培養と勾配の生成及び制御中に、細胞への途切れのない光学経路を与え;培養中及び勾配の制御中に該微小流体培養システム内における細胞の複数の画像を取得し;一連の該複数の画像における1個以上の細胞を分析するための情報システムを使用して該1個以上の細胞の移動特性を決定することを含む方法。
【選択図】
図5A
【特許請求の範囲】
【請求項1】
微小流体細胞培養システムを使用して細胞を培養及び監視するための方法であって、
該微小流体細胞培養システムの細胞チャンバーに細胞の1つ以上の群を導入し;
該細胞チャンバー内において該細胞の1つ以上の群を培養し;
1個以上の微小流体流路を用いて該細胞チャンバー内に勾配を生成しかつ制御し;
ここで、該細胞チャンバーは、培養と勾配の生成及び制御中に、細胞への途切れのない光学経路を与え;
培養中及び勾配の制御中に該微小流体培養システム内における細胞の複数の画像を取得し;
一連の該複数の画像における1個以上の細胞を分析するための情報システムを使用して該1個以上の細胞の移動特性を決定すること
を含み、
該細胞チャンバーは、第1灌流障壁よって第1微小流体流路から分離され、かつ、第2灌流障壁よって該細胞チャンバーの反対側にある第2微小流体流路から分離されており、しかも、該勾配を生成することが、該第1微小流体流路に第1物質を供給し、そして該第2微小流体流路に第2物質を供給することを含む方法。
【請求項2】
前記微小流体流路の1個以上が前記細胞チャンバー内に物質を導入しながら細胞の移動を制限する1個以上の障壁に関連付けられていることをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
1種以上の物質の傾き、濃度及び時間的発達から選択される勾配パラメータを制御することをさらに含む、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
傾き、濃度及び時間的発達から選択される勾配パラメータを制御して異なる期間で定常状態若しくは変動勾配又はその両方を与えることをさらに含む、請求項1〜3のいずれかに記載の方法。
【請求項5】
画像取得中に細胞培養条件の微小流体制御及び化学誘引物質勾配形成を使用して刺激に応答した細胞移動の正確な動的定量を決定することをさらに含む、請求項1〜4のいずれかに記載の方法。
【請求項6】
勾配に対して垂直な方向の動きを勾配に対して平行な方向の動きとは別に分析することにより、物質に向かう走化性を方向性のない移動から区別することをさらに含む、請求項1〜5のいずれかに記載の方法。
【請求項7】
勾配条件に対して総移動距離及びユークリッド距離を決定することをさらに含む、請求項1〜6のいずれかに記載の方法。
【請求項8】
1種以上の腫瘍、創傷、発生組織、免疫応答及び活発な細胞移動に関して特徴付けることのできる他の生体系における細胞の移動性質に及ぼすシグナル伝達分子、成長因子、又は他の物質の効果を決定することをさらに含む、請求項1〜7のいずれかに記載の方法。
【請求項9】
次の3つの異なる段階でMDA−MB−231細胞を培養することをさらに含む、請求項1〜8のいずれかに記載の方法:
完全基質供給;
血清飢餓及び
ウシ胎児血清(FBS)勾配への曝露。
【請求項10】
選択された期間後に勾配の方向を逆転させることをさらに含む、請求項1〜9のいずれかに記載の方法。
【請求項11】
前記選択された期間が3、6、12又は24時間である、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
勾配部分又は培養部分の間で低速度撮影画像を取得し、そして分析のために該画像のデジタル表現を記憶し;ここで、画像は、勾配暴露時間若しくは培養時間又はその両方の間に所望の間隔で取得され;該画像を、情報システムを使用して分析し;ここで、1個以上の個々の細胞を連続シリーズ又は他のシリーズの画像にわたって移動特性のために追跡することをさらに含む、請求項1〜11のいずれかに記載の方法。
【請求項13】
所望の間隔が20分間隔又は1分〜48時間の間隔の任意の数であり;個々の細胞は、10、20、30、40、50、60〜100又は100〜5,000種の代表的な細胞の1種以上を含み;前記一連の画像は、培養の8〜16時間の間に10〜36画像、又は培養の24時間の間に36〜300画像であることをさらに含む、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
1個以上の個々の単一細胞を6時間〜6日の期間又は3日の期間にわたって勾配に応じて監視する、請求項1〜13のいずれかに記載の方法。
【請求項15】
創傷治癒及び腫瘍の転移などの病理学的現象の基礎となるメカニズムを前記移動からさらに決定する、請求項1〜14のいずれかに記載の方法。
【請求項16】
安定した培地中での細胞と栄養素又は他の勾配に暴露された同じ細胞とを比較することによって、細胞移動特性を分析することをさらに含む、請求項1〜15のいずれかに記載の方法。
【請求項17】
細胞の移動を比較して細胞移動が有意に方向付けられるかどうかを決定し、それにより培養チャンバー内における勾配に対する応答を示すことにより細胞移動特性を分析することをさらに含む、請求項1〜16のいずれかに記載の方法。
【請求項18】
細胞を一定の物質中で比較することによって勾配に応答した細胞移動を決定し、そして勾配中における細胞が一定の物質状態における細胞よりもそれらの起点部位から実質的に遠く離れて移動しているかどうかを決定することをさらに含む、請求項1〜17のいずれかに記載の方法。
【請求項19】
一定の物質中での細胞の速度と勾配中での細胞の速度とを比較することにより、該勾配に応答した細胞移動を決定することをさらに含む、請求項1〜18のいずれかに記載の方法。
【請求項20】
4時間〜6日の期間にわたって細胞を培養し、画像を勾配誘導後一定期間撮影することをさらに含む、請求項1〜19のいずれかに記載の方法。
【請求項21】
第1チャネル;該第1チャネルを細胞チャンバーから分離する第1障壁;該細胞チャンバーを第2チャネルから分離する第2障壁;第1物質を含むように構成された第1チャネル;第2物質を含むように構成された第2チャネル;を備える微小流体細胞培養システムを構成することをさらに含み、それによって、該細胞チャンバー内の細胞が、該第1障壁に向かって該細胞を引きつける、該細胞チャンバー内における該第1物質の濃度勾配に曝露される、請求項1〜20のいずれかに記載の方法。
【請求項22】
次の構成:
a.細胞チャンバー;
b.該細胞チャンバーに第1物質を流すための第1流入口;
c.該細胞チャンバーに第2物質を流すための第2流入口;
d.少なくとも1個の細胞入口;
を備える微小流体細胞培養システムを構成することをさらに含み、それによって、該細胞チャンバー内の細胞が、該第1物質及び該第2物質の連続的な安定勾配に曝露される、請求項1〜21のいずれかに記載の方法。
【請求項23】
微小流体細胞培養システムを使用して細胞を培養しかつ監視するための方法であって、
微小流体細胞培養システムの細胞チャンバー内で細胞を培養し、ここで、該細胞チャンバーは、第1微小流体流路と連通した第1灌流障壁と、該第1灌流障壁とは反対の位置にありかつ第2微小流体流路と連通した第2灌流障壁とを備え;
該第1微小流体流路に第1物質を供給し、そして該第2微小流体流路に第2物質を供給することによって該細胞チャンバー内において勾配を生成しかつ制御し、
細胞を監視して該勾配に応答したそれらの動きを決定し;
勾配に曝露された細胞について、該勾配の正の方向における細胞チャンバーの第1灌流障壁に向かうY軸に沿った細胞の移動を検出し;
該勾配の非存在下で培養された1個以上の対照細胞を監視して、はるかにランダムな方向性の動きの少ないものを検出し;
ここで、該勾配に曝露された細胞を、より高い濃度勾配源に向かって優先的に移動すると決定し;しかも、細胞の増殖及び移動の両方が4時間〜6日間隔の間に発生し、勾配生成後の所定時間に画像を取得すること
を含む方法。
【請求項24】
次の構成を備える微小流体装置:
a.第1流路;
b.該第1流路を細胞チャンバーから分離する第1灌流障壁;
c.第2流路;
d.該細胞チャンバーを該第2流路から分離する第2灌流障壁;
e.該第1流路は第1物質が内部を流れるように構成され;
f.該第2流路は第2物質が内部を流れるように構成され;
g.それによって、細胞保持領域における細胞が、該第1灌流障壁に向かって細胞を引き付ける、該細胞チャンバー内の該第1物質の濃度勾配に曝露される。
【請求項25】
前記装置が、1個以上の流路内の流れを毛管力若しくは重力若しくは能動的空気圧マニホールド又はそれらの任意の組み合わせによって駆動するように構成される、請求項24に記載の微小流体装置。
【請求項26】
前記第1若しくは第2流路又はその両方が、8×8ミクロンの断面微小流体細孔又は通路のセットによって前記細胞チャンバーから分離されている、請求項24又は25に記載の微小流体装置。
【請求項27】
第1及び第2チャネルウェル内の液体と出口ウェル内の液体とが前記流路と接触した状態にある、請求項24〜26のいずれかに記載の微小流体装置。
【請求項28】
前記細胞チャンバー上のウェルが良好なイメージング品質のために空のまま放置され、そして前記微小流体装置の底面がガラススライドである、請求項24〜27のいずれかに記載の微小流体装置。
【請求項29】
1個以上の流路は、幅が550μm及び高さが50μmである、請求項24〜28のいずれかに記載の微小流体装置。
【請求項30】
1個以上の灌流障壁が50×8×8μm(長さ×幅×高さ)の通路のネットワークからなる、請求項24〜29のいずれかに記載の微小流体装置。
【請求項31】
1個以上の灌流障壁が、100×4×2μm(長さ×幅×高さ)の通路のネットワークからなり、さらに、該通路の狭い断面は、細胞が該灌流障壁を通過するのを防止し、さらに、培地及び/又は化学誘引物質、染料若しくは他の材料の任意の物質が該灌流障壁を越えて拡散し、そして該細胞に対して勾配を形成する、請求項24〜30のいずれかに記載の微小流体装置。
【請求項32】
前記細胞チャンバーが4.8×0.5×0.05mm(長さ×幅×高さ)の寸法であり、かつ、移動する細胞の数をカウントするために使用される、請求項24〜31のいずれかに記載の微小流体装置。
【請求項33】
前記細胞チャンバー内の細胞が、手動又は自動顕微鏡により計数され、そして定量される、請求項24〜32のいずれかに記載の微小流体装置。
【請求項34】
1個以上の流路が100×50μm(幅×高さ)であり、少なくとも1個の流路が障壁に沿って流入口ウェルから流出口ウェルに流体を運んで流体を空にし、前記灌流障壁を介した流路からの物質の拡散を可能にする、請求項24〜33のいずれかに記載の微小流体装置。
【請求項35】
前記装置が、細胞を様々な物質、ホルモン又は他の刺激、薬剤、化学誘引物質にさらすアッセイを含めて、1以上のアッセイ実験の同時実施を可能にするようにウェルプレートに構成されている、請求項24〜34のいずれかに記載の微小流体装置。
【請求項36】
空気通路及び空気孔によって促進される前記流路を画定する材料を介した細胞及び空気の拡散を維持する前記チャンバー内の培養環境を与える構造をさらに含む、請求項24〜35のいずれかに記載の微小流体装置。
【請求項37】
さらに、1個以上の流路内における物質又は液体の流れが前記細胞培養チャンバーに拡散し、かつ、細胞を引き付けつつ細胞に培養のための栄養を与える、請求項24〜36のいずれかに記載の微小流体装置。
【請求項38】
各チャンバーが1.5×0.5mmのサイズであり、高さが200μmである、請求項24〜37のいずれかに記載の微小流体装置。
【請求項39】
1ユニット当たりの予想細胞数が500個の細胞である、請求項24〜38のいずれかに記載の微小流体装置。
【請求項40】
灌流速度が40μl/日である、請求項24〜39のいずれかに記載の微小流体装置。
【請求項41】
細胞チャンバー容積が150nLであり、該チャンバーの寸法が1.5×0.5×0.2mmである、請求項24〜40のいずれかに記載の微小流体装置。
【請求項42】
次の構成を備える微小流体システム:
a.請求項24〜41のいずれかに記載の1個以上の装置;
b.該1個以上の装置のそれぞれに関連付けられた少なくとも3個のウェルを有する微小流体プレート;
c.少なくとも1個のウェルが前記第1流路又は第2流路に化学誘引剤を導入するように構成される。
【請求項43】
次の構成を備える微小流体システム:
a.請求項24〜41のいずれかに記載の1個以上の装置;
b.該装置のそれぞれに接続された少なくとも3個のウェルを有するアクティブ制御微小流体プレート;
c.少なくとも1個のウェルが前記第1流路又は第2流路に化学誘引剤を導入するように構成され;及び
d.細胞培養中に少なくとも1個の装置に連結された少なくとも1個のウェル中において圧力及び/又は内容物を制御するためのマニホールド。
【請求項44】
圧力を前記マニホールドによって制御する前記少なくとも1個のウェルの他に、流体を受け取り、かつ、受動的な重力駆動流により前記装置に流体を灌流するように構成された少なくとも1個のウェルをさらに備える、請求項43に記載のシステム。
【請求項45】
前記1個以上の装置のそれぞれに関連付けられた少なくとも3個の入口ウェル及び1個の出口ウェルをさらに備える、請求項43又は44に記載のシステム。
【請求項46】
少なくとも3個の流入口ウェルと、少なくとも1個の細胞入口ウェルと、少なくとも1個の細胞出口ウェルと、1個以上の装置のそれぞれに関連付けられた少なくとも1個の撮像/表示窓又はウェルとをさらに備える、請求項43〜45のいずれかに記載のシステム。
【請求項47】
次の構成を備える微小流体システム:
a.請求項24〜41のいずれかに記載の1個以上の装置;
b.該装置のそれぞれに接続された少なくとも3個の入口ウェルを有するアクティブ制御微小流体プレート;
c.少なくとも1個ウェルが前記第1流路又は第2流路に化学誘引剤を導入するように構成され;及び
d.細胞培養中に少なくとも1個の装置に接続された少なくとも1個のウェル内で圧力及び/又は内容物を制御するためのマニホールド。
【請求項48】
前記1個以上の装置のそれぞれに関連付けられた少なくとも3個の入口ウェル及び1個の出口ウェルをさらに備える、請求項47に記載のシステム。
【請求項49】
前記1個以上の装置のそれぞれに関連付けられた少なくとも4個の入口ウェル及び1個の出口ウェルをさらに備える、請求項47又は48に記載のシステム。
【請求項50】
前記装置の少なくとも4個をさらに備え、それぞれ少なくとも2個の入口ウェル、少なくとも1個の出口ウェル及び撮像ウェル又は領域に関連付けられている、請求項47〜49のいずれかに記載のシステム。
【請求項51】
1個以上の微小流体装置であってそれぞれ複数の入口ウェルに関連付けられたものを含むウェルプレート;及び
該プレートに一体化し、かつ、該入口ウェル内の溶液の圧力駆動制御を可能にするための空気圧マニホールド
をさらに備える、請求項43〜50のいずれかに記載のシステム。
【請求項52】
前記マニホールドを介して前記ウェル内の圧力を制御するための論理プロセッサを有する自動化デジタルコントローラをさらに備える、請求項51に記載のシステム。
【請求項53】
複数の液体又は試薬入口ウェルが、請求項1〜23のいずれかに記載の方法に従う制御実験を可能にすることをさらに含む、請求項51又は52に記載のシステム。
【請求項54】
複数の液体又は試薬入口ウェルは、細胞が前記入口を介して導入された異なる薬剤又は他の刺激に応答する方法に関する制御実験を可能にすることをさらに含む、請求項51〜53のいずれかに記載のシステム。
【請求項55】
前記プレートをマニホールドに取り付けそして実験を実行する前に細胞を保持するのを容易にするために1個以上の装置に関連付けられた重力ウェルをさらに備える、請求項51〜54のいずれかに記載のシステム。
【請求項56】
複数の液体又は試薬入口ウェルが、溶液を細胞に対して迅速に変化させる該入口を介して導入された異なる薬剤又は他の刺激に細胞が応答する方法に関する制御実験を可能にする、請求項51〜55のいずれかに記載のシステム。
【請求項57】
1個以上の細胞チャンバー内における細胞の画像を取得するためのデジタル画像取得装置と、該取得画像を読み取って細胞を計数し又は個々の細胞若しくは細胞の群又はその両方の移動を決定するための情報処理システムをさらに備える、請求項51〜56のいずれかに記載のシステム。
【請求項58】
前記情報処理システムが、前記マニホールドの圧力駆動流を制御する、請求項57に記載のシステム。
【請求項59】
前記細胞チャンバー内の細胞が制御勾配にさらされるように、請求項24〜41のいずれかに記載の微小流体装置を構成することをさらに含む、請求項1〜22のいずれかに記載の方法。
【請求項60】
複数の微小流体細胞培養システムにおける複数の細胞チャンバー内の細胞が1以上の制御勾配に暴露されるように請求項42〜50のいずれかに記載の微小流体システムを構成することをさらに含む、請求項1〜23のいずれかに記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本願は、「MICROFLUIDIC CELL CULTURE SYSTEMS」という発明の名称で2011年1月21日に出願され、かつ、「MICROFLUIDIC CELL CULTURE ARRAYS」という発明の名称で2010年1月21日に出願された61/297278に対して優先権を主張する米国一部継続特許出願第13/011857号である。
【0002】
本願は、「CULTURE AND INVASION ASSAY METHOD AND SYSTEM」という発明の名称で2012年4月1日に出願され、かつ、「CELL CULTURE AND INVASION ASSAY METHOD AND SYSTEMS」という名称で2011年4月1日に出願された61/471103に対して優先権を主張する一部継続米国特許出願第13/436992号である。また、本願は、「CELL CULTURE AND INVASION ASSAY METHOD AND SYSTEM」という発明の名称で2013年2月5日に出願された61/761227に対して優先権を主張する。
【0003】
著作権表示
37 CFR 1.71(e)の規定により、出願人は、この開示の一部に、著作権保護の対象である素材(限定されないが、図、装置の写真又は著作権保護が任意の法域で利用できる若しくは利用できる場合があるこの提出の任意の他の側面など)を含むことに言及する。著作権者は、米国特許商標庁の特許ファイル又は記録に見られるように、誰でも特許文書又は特許開示の複写をすることに対して異議がないが、ただし、全ての著作権を留保する場合を除く。
【0004】
発明の分野
本発明は、様々な実施形態において、微小流体システムを使用して細胞の浸潤挙動又は他の微小対象物の関連挙動を検出するためのアッセイ、システム及び装置に関する。特定の実施形態は、様々な標準的な自動処理システムと共に使用でき、媒体の能動的又は受動的装填及び灌流と共に使用でき、そして細胞浸潤、移動、走化性その他の特性を分析するためのハイスループットマルチアッセイの自動化システムを提供するために使用できる構成を伴う。
【背景技術】
【0005】
発明の背景
本願と共に提出された任意書類を含め、本願におけるあらゆる場所の任意の研究、出版、販売又は活動についての議論は、このような研究が先行技術を構成することを認めるものと解釈してはならない。ここでの任意の活動、研究又は出版についての議論は、そのような活動、研究又は出版が任意の特定の法域において存在していた又は知られていたことを認めるものではない。
【0006】
微小流体細胞培養は、薬剤スクリーニング、組織培養、毒性スクリーニング及び生物学的研究における用途にとって重要な技術であり、改善された生物学的機能、より高い品質の細胞ベースのデータ、試薬消費の減少及び低コストを与えることができる。高品質の分子及び細胞試料の調製は、様々な臨床、研究及び他の用途にとって重要である。生体内特性を密接に表す試験管内試料は、潜在的に、幅広い分子及び細胞用途の利益となる場合がある。細胞又は他の生物学的若しくは化学的活性材料(例えば、様々な生体分子でコーティングされたビーズなど)の取り扱い、特徴付け、培養及び可視化は、創薬、疾患の診断及び分析並びに様々な他の治療及び実験的研究の分野においてますます評価されるようになってきている。
【0007】
微小流体システム、装置、方法及び製造に関連する多くの側面は、上記関連特許出願で議論されている。これらの出願から特定の限定を読み取るべきではないが、これらの援用された文書は、具体的な実施形態に関連する有益な背景資料を提供する。
【0008】
細胞アッセイ系において関心のある領域は、細胞移動の特性を決定することのできるアッセイである。このようなアッセイは、様々な刺激下で様々なタイプの悪性細胞を特徴付け、また他の細胞も特徴付けるのに重要である。
【0009】
マイクロチャンバー又はマイクロフルイディクスを用いたいくつかのアッセイが提案されている。他のシステムは、様々な障壁インサートを有する標準的な培養プレートを使用して細胞浸潤を検出しようとしている。しかしながら、現在利用可能なシステムは、使いやすさ、高スループット又は自動化アプリケーションに必要な多数の観点に関して失敗している。
【0010】
上記で引用した初期の研究及び特許出願は、微小流体細胞培養に関連する様々な構成、方法及びシステムを議論するものであり、その研究及び刊行物は、引用により本明細書に含める。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0011】
要約
本発明は、改良された微小流体細胞培養装置及びシステム、特に侵襲性又はそうでなければ転移性若しくは運動性細胞の培養及び分析のための特定のシステムに関連する様々な構成要素、システム、及び方法を含む。一態様では、本発明は、マルチ培養チャンバープレート又は微小流体構造のいずれかを使用して、以前に提案された浸潤又は移動又は運動性アッセイを超える利点を有する新規微小流体細胞培養装置、システム及び方法を含む。別の態様では、本発明は、複数の微小流体細胞培養及び/又は細胞侵襲アッセイユニットを様々な多細胞培養ユニットシステム、例えば、様々な標準的なウェルプレートフォーマット(例えば、ここで説明する微小流体構造への取り付けを可能にする、96ウェルSBS培養プレート又は6、12、24、96、384若しくは1536個のサンプルウェル並びに開底標準ウェルプレートを含めた他のプレートフォーマット)を含むマイクロタイターウェルプレート構造に組み込むための新規な構造及び方法を含む。
【0012】
特定の実施形態及び実施例では、設計上の特徴は、プレート自体への配管及びコネクタの排除を可能にする便利なフォーマットの浸潤アッセイ装置を提供すること、受動重力駆動流を用いて長期連続灌流細胞培養物を維持することができること、微小流体プレートの出口ウェル及び/又は細胞浸潤観察ウェル又は培養ウェル上で直接分析を実行することができること、ゲル培地を効果的に処理することができることを含む。
【0013】
ここで詳細に説明する例の多くは、標準的な又はカスタムウェルプレートと共に使用されるように設計されており、ここで説明する様々な構成の微小流体構造及び培養装置及びシステム及び方法は、ウェルプレート又は様々な他の微小流体装置又はシステムと共に使用されるようには構成されていない様々な一体型ラボオンチップシステムのように、任意のウェルプレートから独立して配置できる。
【0014】
明確にする目的のために、具体例の観点から装置、方法、及び概念に対して議論する。しかしながら、本発明及びその態様は、様々な種類の装置及びシステムに適用することもできる。したがって、本発明は、特許請求の範囲及びその均等物において提供される以外には限定されないものとする。
【0015】
さらに、ここで説明するシステム及び方法は、多様な異なる構成要素及び異なる機能をモジュール方式で備えることができることは当技術分野において周知である。本発明の様々な実施形態は、構成要素と機能の様々な組み合わせを含むことができ、かつ、様々な構成要素の一部分として様々な機能を分類することができる。明確にする目的のために、本発明を、多くの異なる革新的な部品及び革新的な部品と公知の部品との革新的な組み合わせを備えるシステムの観点から説明する。本発明を、本明細書中における任意の例示的な実施形態に列挙された革新的な部品の全てを含む組み合わせに本発明を限定するものと推論すべきではない。本明細書に別段の記載がない限り、ここで説明した構成要素の任意の組み合わせは、当業者であれば理解するように、これらの構成要素の任意のサブセットのあらゆるサブコンビネーションのみならず、ここで説明する任意の他の構成要素と組み合わされた、これらの構成要素の任意のサブセットの任意のサブコンビネーションをも含むと理解すべきである。
【0016】
図面及び以下の詳細な説明のいくつかでは、本発明は、多部品装置又はシステムの重要な独立した実施形態に関して記載されている。これは、ここで提供される教示を使用して、多数の他の状況に適用できる本発明の様々な新規な態様を制限するように解釈されるべきではない。以下の図面及び説明のいくつかでは、本発明は、構造の寸法、液体の圧力又は容積、温度、電気値、持続時間等に関連する特定のパラメータを含む多数の特定の例示実施形態の観点から記載されている。特許請求の範囲内で与えられている場合を除き、これらのパラメータは、例示として提供されるものであり、異なる寸法を有する他の装置又はシステムを包含する本発明を限定するものではない。より明確な説明を提供する目的で、特定の既知の製造工程、細胞処理工程、試薬、化学的又は機械的プロセス、及び本発明の特定の実施形態に従ってシステムを作製する又は装置を製造するために備えられ得る他の公知の部品を例として与える。当業者であれば、例外が本明細書に具体的に注記された場合を除き、様々な既知の置換をここで説明したプロセスになすことができることが分かるであろう。
【0017】
この明細書で引用した全ての参考文献、刊行物、特許及び特許出願は、全ての目的のためにその全体を引用により援用される。
【0018】
図面の簡単な説明
本特許出願は、カラーで作成された少なくとも一つの図面を含む。カラー図面を伴う本特許出願のコピーは、リクエスト及び必要な料金の支払いに基づき米国特許商標庁によって提供される。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1A】
図1(A)は、特定の実施形態による例示微小流体プレート設計の概略図であり、この例では、96ウェルプレート上に24個の浸潤アッセイユニットを有し、この例では、各ユニットは、4個のウェル:流入口、細胞/ゲル入口、浸潤チャンバー及び流出口を備える。
【
図1B】
図1(B)は、本発明の特定の実施形態による一つの浸潤培養ユニットの詳細を示す模式図である。
【
図2】
図2A、Bは、青色染料が充填された例示単一フローユニットを示す写真図であり、該画像は頂部(A)及び底部(B)から採取され、底部の写真は、プレートを上下方向に反転させることにより撮影されたものであり、それにより入口ウェルは、両方の写真では左にある。
【
図3A-C】
図3A−Cは、本発明の特定の実施形態による勾配における浸潤アッセイ操作及び細胞移動を示すためにゲルをロードした後の浸潤チャンバー領域の一連の顕微鏡写真である。
【
図4A】
図4Aは、本発明の特定の実施形態によるアッセイシステム及び装置における勾配での癌細胞浸潤及び細胞移動を示す顕微鏡写真である。
【
図4B】
図4Bは、本発明の特定の実施形態によるアッセイシステム及び装置における勾配での癌細胞浸潤及び細胞移動を示す顕微鏡写真である。
【
図5A】
図5Aは、本発明の特定の実施形態に従う多数の入口を有する例示細胞培養チャンバー設計の構成及び動作を示す。
【
図5B】
図5Bは、本発明の特定の実施形態に従う多数の入口を有する例示細胞培養チャンバー設計の構成及び動作を示す。
【
図6A】
図6Aは、本発明の特定の実施形態に係る例示略矩形細胞培養チャンバー設計及び勾配チャンバー設計の構成及び動作を示す。
【
図6B】
図6Bは、本発明の特定の実施形態に係る例示略矩形細胞培養チャンバー設計及び勾配チャンバー設計の構成及び動作を示す。
【
図6C】
図6Cは、本発明の特定の実施形態に係る例示略矩形細胞培養チャンバー設計及び勾配チャンバー設計の構成及び動作を示す。
【
図7】
図7は、微小流体生細胞イメージングのための例示カスタマイズプレートフレームの機械製図を示しており、4個の独立したユニット(例えば、行)、改善された光学部品用の大きな撮像窓、空気入/出ポート(例えば該撮像窓に隣接)及びこの例ではマニホールドの真空封止を向上させるためのウェル間の拡張空間を示す。この例では、1個のユニット当たり6個の入口ウェルが2個の出口ウェルと共に存在する(この例では、1個がより多くの容量を収容するために拡張されている)。
【
図8】
図8は、特定の実施形態に係る、各ユニットについて3個の流入口、撮像窓、細胞入口及び流出口を有する2個の培養ユニットプレートを示す。
【
図9】
図9は、特定の実施形態に係る、各ユニットについて3個の流入口、撮像窓、細胞入口及び流出口を揺する培養ユニットプレートの16ユニットバージョンを示す。
【
図10】
図10は、本発明の特定の実施形態に係るガス灌流ラインを有する例示プレートマニホールドの図を示す。
【
図11A】
図11Aは、それぞれが6個の流入口、培養チャンバー及び2個の流出口を有する4個の独立した培養ユニットを有する特定の実施形態に係る能動制御プレートの一例を示す概略図である。
【
図11B】
図11Bは、それぞれが6個の流入口、培養チャンバー及び2個の流出口を有する4個の独立した培養ユニットを有する特定の実施形態に係る能動制御プレートの一例を示す写真である。
【
図12A】
図12Aは、特定の実施形態に従ってここで説明した一つ以上の方法を実施するために使用できる、それぞれ6個の流入口、培養チャンバー及び2個の流出口を有する4個の独立した培養ユニットを有するさらなる例示培養プレートを示す図である。
【
図12B】
図12Bは、特定の実施形態に従ってここで説明した一つ以上の方法を実施するために使用できる、それぞれ6個の流入口、培養チャンバー及び2個の流出口を有する4個の独立した培養ユニットを有するさらなる例示培養プレートを示す図である。
【
図12C】
図12Cは、特定の実施形態に従ってここで説明した一つ以上の方法を実施するために使用できる、それぞれ6個の流入口、培養チャンバー及び2個の流出口を有する4個の独立した培養ユニットを有するさらなる例示培養プレートを示す図である。
【
図13】
図13は、特定の実施形態に係る安定な勾配への曝露後の細胞移動の一例を示す。
【
図14】
図14は、一例として、特定の実施形態に係る微小流体細胞培養装置中における細胞の動きに及ぼす勾配の影響をよく示すためのX/Y細胞移動プロットを示す。
【
図15】
図15は、特定の実施形態に係る微小流体細胞培養装置内での移動距離に応じた細胞移動を一例として示す。
【
図16】
図16は、特定の実施形態に従って、微小流体細胞培養装置内における安定勾配に曝露された細胞が安定な媒体環境中におけるよりも速く移動することを示す図を一例として示す。
【
図17】
図17は、特定の実施形態に従って、勾配への曝露が高濃度シンクに向かう細胞の能動的移動を刺激したことを示す一例を示す図である。
【
図18A】
図18Aは、本発明の特定の実施形態に係る例示マニホールドの概略図の上面図を示す。この例では、右の8個の配管ラインは、圧縮空気のためのものであり、それぞれは、微小流体アレイ内における細胞入口ウェルのカラムに圧力を与えるように構成されている。図中の一番左のラインは、真空のためのものであり、かつ、マニホールドの周辺にある外側真空リングに接続している。ウェルの各カラムは、一般に、イメージング領域上のウェルをスキップした状態で単一の圧力ラインに連通している。
【
図18B】
図18Bは、本発明の特定の実施形態に係る例示マニホールドの概略図の側面図を示す。この例では、右の8個の配管ラインは、圧縮空気のためのものであり、それぞれは、微小流体アレイ内における細胞入口ウェルのカラムに圧力を与えるように構成されている。図中の一番左のラインは、真空のためのものであり、かつ、マニホールドの周辺にある外側真空リングに接続している。ウェルの各カラムは、一般に、イメージング領域上のウェルをスキップした状態で単一の圧力ラインに連通している。
【
図18C】
図18Cは、本発明の特定の実施形態に係る例示マニホールドの概略図の平面図を示す。この例では、右の8個の配管ラインは、圧縮空気のためのものであり、それぞれは、微小流体アレイ内における細胞入口ウェルのカラムに圧力を与えるように構成されている。図中の一番左のラインは、真空のためのものであり、かつ、マニホールドの周辺にある外側真空リングに接続している。ウェルの各カラムは、一般に、イメージング領域上のウェルをスキップした状態で単一の圧力ラインに連通している。
【
図19】
図19は、本発明の特定の実施形態に係る微小流体プレートを操作するための例示システム及びマニホールドを示す。
【
図20】
図20は、本発明の実施形態に係る、追加のガスライン及び対物レンズを有し、かつ、培養装置に接続された微小流体プレート内にある5個の活性ウェルを示すマニホールドを示す。
【
図21】
図21は、本発明の様々な態様を具現化することができる、代表例の論理装置を示すブロック図である。
【
図22】
図22(表1)は、本発明の特定の実施形態に従って評価できる又は薬剤その他の治療を試験できる病気、疾患、又は状態の例を示す。
【発明を実施するための形態】
【0020】
1.概要
「粒子」とは、本発明によるアッセイを受けることのできる哺乳動物細胞又は細菌細胞、ウイルス粒子、又はリポソームその他の粒子などの生体細胞をいう。このような粒子は、約50〜100nmの最小寸法を有し、また20ミクロン以上の大きさであることができる。本発明に係る細胞アッセイを説明するために使用される場合に、用語「粒子」及び「細胞」は区別なく使用できる。
【0021】
「マイクロチャネル」又は「チャネル」又は「流路」は、一般に、本発明の具体的な実施形態に係るシステム及び装置の様々な部品を流体連結するために使用されるミクロンスケールのチャネルをいう。マイクロチャネルは、典型的には、好ましい実施形態ではそれぞれ10〜500ミクロン及び10〜500ミクロンの側及び深さの寸法を有する矩形、例えば正方形又は丸みを帯びた断面を有する。マイクロチャネル内を流れる流体は、微小流体挙動を示すことができる。本発明のマイクロウェルアレイ装置内のマイクロチャネルをいうために使用される場合、用語「マイクロチャネル」と「チャンネル」とは区別なく使用される。「流路」とは、一般に、培地、試薬その他の流体又はゲル及びいくつかの実施形態では細胞の通路のために設計されたチャネルを意味する。「培養チャンネル」又は「細胞培養チャネル」とは、一般に、細胞が細胞培養の間に流れ、またとどまるように設計される細胞培養構造の一部分をいう(ただし、いくつかの実施形態では、細胞は培養チャネルの特定の培養領域にとどまることができる)。「空気チャネル」とは、一般に、空気、酸素富化混合物など気体を、流路又は培養領域に接して通過させるために使用される略ミクロンスケールのチャネルをいう。「灌流チャネル」は、培地を培養領域に灌流させる流路及び任意の灌流通路又は構造を示すために使用する場合がある。
【0022】
「障壁」又は「拡散障壁」又は「灌流障壁」又は「物質移動障壁」とは、一般に、細胞培養領域又はチャンバーから流路を分離する流路よりも小さい、固体構造と通路との組み合わせをいう。通路は、マイクロチャネルの高さ及び/又は幅(例えば、約5〜50%程度又は約10%)よりも一般に小さく、いくつかの実施形態では、細胞、他の培養アイテム及びいくつかの実施形態ではゲルを流路への移動から保持するように設計されると共に、拡散、潅流、又は一般に流路内の流体の流れよりもはるかに高い流体抵抗の物質移動メカニズムの任意の組み合わせによりいくつかの流体の流れを可能にする。一実施例では、障壁は4ミクロンの高さ、そうでなければ、マイクロチャネルの長さのほとんどに及ぶ通路を有する。他の実施形態では、障壁は、微小流体チャネルと同じくらいの高さであるが、ただし約4ミクロンの幅の多くの通路を有する。また、障壁は、障壁を通して細胞若しくは細胞成分、又は通路を通過する程度に十分小さい他の材料又は粒子をいくらか移動させることを可能にすることもできる。
【0023】
「微小流体装置」とは、流体がチャネルを通したその流れにおいて微小流体挙動を示すミクロンスケールのマイクロチャネルによって連結された様々なステーション又はウェルを有する装置をいう。
【0024】
「マイクロウェルアレイ」とは、基材上に形成された2個以上のマイクロウェルの配列をいう。
【0025】
「装置」とは、当該技術分野において広く使用されている語であり、かつ、広い範囲の意味を包含する。例えば、その最も基本的かつ最小の精巧化レベルでは、「装置」とは、単に、チャネル、チャンバー及びポートなどの機能を備えた基材を意味する場合がある。精巧さの増したレベルでは、「装置」は、該機能を包囲する基材、又は協調して又は独立して動作する微小流体機能を有する他の層をさらに備えることができる。その最も精巧なレベルでは、「装置」は、外界と基材の微小流体機能との間の相互作用を促進させる対象物と対になる完全に機能的な基材を備えることができる。このような対象物を、後述するように、ホルダー、筐体、ハウジング又は類似の用語と様々にいうことができる。ここで使用されるときに、用語「装置」とは、これらの実施形態又はその文脈が示すことができる精巧化のレベルのいずれかをいう。
【0026】
ここで使用するときに、部材又は請求の範囲の「任意の組み合わせ」とは、部材、参照物又は参照された個別の部材の組み合わせをいう。
【0027】
微小流体システムは、生物学的な実験を行うための強力なツールとなる。近年では、エラストマー系マイクロフルイディクスは、その光透過性、ガス透過性及びシンプルな製造方法のため特に好評を博している。しかし、エンドユーザーとの連絡は、エラストマーへの労働集約型の穴開け、及び管とシリンジポンプとの接続の追加工程が必要になる。
【0028】
本発明は、様々な培養及びアッセイの用途に使用される一体化マイクロフルイディクスを含む。さらに、本発明は、微小流体及び構成要素の製造方法及びそのようなプレートを使用して細胞培養を自動化するためのシステムを含む。特定の実施形態の利点は、標準的なマイクロタイタープレートフォーマット、チューブ遊離細胞培養、及び浸潤、移動又は走化性細胞挙動を分析するための生体模倣微小環境を使用することを含む。
【0029】
本発明の特定の実施形態に係るシステム(例えば、96ウェル標準プレートを使用)は、当技術分野において周知のように、標準的なマイクロタイタープレートを取り扱うための標準的な技術及び装置を用いて操作できる。例えば、液体及び/又はゲル又は細胞分配は、標準的なピペット力学を用いて達成され、そして細胞培養及び分析は、既存のインキュベーター及びプレートリーダーに適合できる。
【0030】
本発明のさらなる実施形態によれば、新規細胞ローディングシステムは、空気圧マニホールド及び空気圧を使用して細胞をマイクロ培養領域に配置する。この細胞ローディングシステムを付加して、微小流体細胞培養及び分析は、標準的なタイタープレートを取り扱うために存在する他の自動化装置を用いて完全に自動化できる。
【0031】
さらなる実施形態では、重力駆動流培養構成は、出口と入口との培地レベルの差を利用するのみならず、流体抵抗を設計してnL/分レジームでの望ましい流量を達成する。これは、かさばる外部ポンプ又はチューブを使用せずに長期間(例えば、4日まで)にわたって培地を「受動的に」流すことができるという重要な利点を与えるところ、これは、浸潤アッセイの場合には、このアッセイの簡単なセットアップを可能にし、また培養開始後に1以上の時間周期で浸潤アッセイ結果を読むことを容易にする。
【0032】
さらなる実施形態では、本発明は、接着及び/又は浸潤性又は移動細胞の長期低速度撮影顕微鏡検査のために細胞培養環境の制御を可能にするための微小流体システムを含む。本発明の特定の実施形態によれば、本発明は、他のアッセイのうち低速度撮影顕微鏡実験及び細胞浸潤の検査を可能にする多重化微小流体フローチャンバーを提供する。微小流体チャンバーは、培養チャンバーと浸潤チャンバーとの細胞の浸潤特性を検討するために、灌流障壁を使用して流路及び浸潤障壁から細胞を分離する。例示の実施形態は、標準ウェルプレートに適合され、液体及び細胞/ゲルのサンプルを標準的な装置を使用して適切な入口リザーバに直接ピペッティングすることが可能になる。
【0033】
いくつかの実施形態では、カスタムの空気圧式流量制御装置を使用して、細胞を培養領域にロードするだけでなく、異なる露光溶液を切り替えることができる。デジタルソフトウェアインターフェイスを使用して、ユーザーが低速度撮影イメージング中に細胞を複雑な機能にさらすために経時的に特定の入力(パルス、ランプなど)をプログラムすることを可能にすることができる。
【0034】
生細胞の動的応答は、生体信号処理、遺伝子発現調節、分化及び細胞分裂などの現象のための基礎である。特定の実施形態では、本発明は、現在の細胞培養法と適合できる多重化フォーマットで細胞微小環境を制御することのできるシステムを含む。細胞応答は、細胞内解像度で動態情報を導出するために高倍率蛍光顕微鏡を用いて定量できる。この特性は、動的単一細胞応答実験が現在のところ実用的ではない細胞系生物学において幅広い用途を有する。特定の実施形態に係るいくつかの浸潤アッセイの実施形態は、1種のみの培地/試薬混合物への暴露を伴うほとんど又は完全に受動的なシステムを使用することができ、特定の実施形態に係る試薬混合物の他の浸潤アッセイは、ここで説明したマニホールドを使用して複雑な試薬スケジューリングを用いて実施できる。
【0035】
2.微小流体培養システム及びアレイ
上で参照した出願は、広く様々な細胞培養構成及び製造技術を議論した。細胞培養領域及び材料の操作の部分は、本発明の背景として有用である。その中のいくつかの例では、1以上のマイクロ培養領域は、流体通路(又は拡散入口又は導管)のグリッドを介して媒体又は試薬チャネルに連通し、ここで、このグリッドは、複数の交差高流体抵抗灌流通路を備える。議論された一例では、グリッド内の通路は、約1〜4μmの高さ、25〜50μmの長さ及び5〜10μmの幅であり、このグリッドは、培地又は試薬チャネルと培養領域とでのより均一な拡散を可能にし、かつ、より容易な製造及びより均一な分散を可能にする。さらに、先の出願は、マイクロチャンバーと灌流/拡散通路又はグリッドとの間の高い流体抵抗比(例えば約10:1、20:1〜30:1の範囲の比)により、以下のような細胞培養のための多くの利点が得られることを議論した:(1)細胞のサイズ排除;(2)マイクロチャンバー内部の細胞の局在;(3)細胞増殖のために均一な流体環境を促進すること;(4)マイクロチャンバー又は培養領域のアレイを構成する能力;(4)製造の容易さ、及び(5)広範囲にわたる弁ネットワークなしでの試薬の操作。発明の特定の実施形態に従ってグリッド状の灌流障壁を培養面積よりもはるかに短くすることができる例、及び近くに又は同じ高さにすることができる培養装置のための様々な構成が示された例が例示された。
【0036】
3.浸潤アッセイユニット
特定の実施形態では、本発明は、さらに、3D癌細胞浸潤アッセイ用の微小流体プレートを備える。特定の実装例では、プレートは、微小流体チャネルによって連通した4個のウェルと標準的な96ウェルプレートフォーマットを使用して個別フロー及び浸潤アッセイユニット(例えば、特定の実施形態では、1個のプレート当たり24個のユニットを有する)を作製している。いくつかの実施形態では、流れは、本明細書の他の箇所で議論したとおり、毛管力と重力とによって駆動され、プレートを細胞及び培地の最初の導入後に外部連絡を有しない標準的なインキュベーター内で動作させることが可能になる。特定の実施形態では、本発明の装置は、培養チャンバー内にある3Dゲル中で細胞を受け取る。培養チャンバーは、浸潤チャンバーから浸潤障壁によって分離され、両者は、例えば、8×8ミクロンの断面の微小流体細孔又は通路のセットにより流路から分離される(ここでは「浸潤障壁」という場合がある)、それによって腫瘍浸潤のための生体内環境がモデリングされる。
【0037】
図1(A)は、特定の実施形態に係る例示微小流体プレート設計の概略図であり、この例では96ウェルプレート上に24個の浸潤アッセイユニットを有し、この例では各ユニットは4個ウェル:流入口、細胞/ゲル入口、浸潤チャンバー及び流出口を備える。この実施形態では、流入口、細胞/ゲル入口及び流出口における液体は、マイクロチャネルと接触した状態にある。浸潤チャンバー上のウェルは、良好なイメージング品質のために空のまま保持されている。プレートの底面はガラススライドである。プレート当たり24個の流れユニットが存在する(各ユニットは、4個のウェル毎に1ウェルであり、8×12ウェルプレート上に8×3アレイを形成する)。
【0038】
図1A、Bに示された概略図に戻ると、この図は、3つのレベルの倍率を与えている。例示96ウェルプレート内における特定のウェルの位置を示すために
図1A、BにおいてF7と示された最も拡大された領域は、特定の実施形態に係る1個の浸潤チャンバーの詳細を示す。この浸潤アッセイ/培養領域は、5個の主要領域を含むものと解することができる。
【0039】
細胞/ゲルローディングチャネルを図の下部に示している。特定の実施形態によれば、ゲル(例えばマトリゲル、コラーゲン、フィブリンなど)中に混合された細胞は、毛細管流動又は本明細書に記載される他の能動的又は受動的ローディング手段のいずれかを使用して底部チャネルにロードされる。操作中に、このチャネルは、ゲルがローディングチャネルを満たし、また、浸潤障壁及び浸潤チャンバーの一部又は全てを満たすが、灌流障壁を越えないように設計されている。一例示実施形態では、ローディングチャネルは、幅550μm及び高さ50μmである。
【0040】
特定の実施形態によれば、ローディングチャネルは、浸潤障壁によって浸潤チャンバーから分離されている。具体例では、浸潤障壁は、約50x8x8μm(長さ×幅×高さ)の寸法のチャンネルネットワークからなる。これらのものは、いくつかの実施形態ではゲル又は液体で充填され、かつ、組織内の内皮障壁を模倣する。浸潤性癌細胞は、浸潤障壁の狭いチャネルを通って浸潤チャンバーに移動することができる。この例では、浸潤チャンバーは、約4.8×0.5×0.05ミリメートル(長さ×幅×高さ)の寸法であり、浸潤障壁を越えてローディングチャネルから侵入又は移動する細胞の数をカウントするために使用される。アッセイ操作の間に、このチャンバー内の細胞を手動若しくは自動顕微鏡又は他の手段によって計数し、そして定量してウェルについての浸潤指数を決定することができる。
【0041】
灌流障壁は、流路から浸潤チャンバーを分離する、特定の実施形態では100x4x2ミクロン(長さ×幅×高さ)の寸法のチャネルのネットワークである。狭い断面は、細胞及びゲルが注入障壁を通過するのを防止する。培地(及び化学誘引物質、染料又は浸潤アッセイ若しくは細胞培養に使用される他の材料を含めて、培地中に運ばれる薬剤)は、灌流障壁を越えて拡散し、かつ、浸潤細胞に対して勾配を形成し、血管系における腫瘍環境をモデリングする。
【0042】
100×50μm(幅×高)の流路は、流体を流入口ウェルから浸潤チャンバーを越えて流出口ウェルに運び、そして空になる。灌流障壁を通過する流れからの栄養素の拡散が細胞を供給する。このチャネルは、体内の血流をシミュレートする。特定の例示実施形態では、重力駆動流量は〜20μl/日に設定され、ウェルを補充することなく3日以上連続して流れ実験するのを可能にする。
【0043】
上記のように、ここで提供される寸法は、例えば、培養ユニットについてのものである。様々な特定の実施形態によれば、特定の培地又は培養アイテムに好適な任意の寸法をここで提供される他の教示に従って使用することができる。
【0044】
4.浸潤アッセイプレート
特定の実施形態によれば、上記浸潤アッセイユニットは、複数の浸潤アッセイ実験の同時実施を可能にするために、標準的な培養ウェルプレートに構成されている。これらの実験は、同一の又は異なる組織試料のいずれかの単一対象物に対する複数のアッセイ、異なる対象物からの複数のアッセイを含むことができ、かつ、細胞を異なる培地、ホルモン又は他の刺激、薬剤、化学誘引物質などに暴露するアッセイを含むことができる。
【0045】
96ウェルプレートの4ウェルアッセイ手段の一例を示しているが、ここでした議論及び関連する援用された出願においてした議論から明らかなように、異なるユニットサイズ及び異なる培養プレートサイズも本発明を具現することができる。
【0046】
図2は、青色染料で満たされた例示単一流れユニットを示す写真であり、該画像は、頂部(A)及び底部(B)から撮影され、底部写真は、プレートを上下方向に反転させることによって撮影され、その結果、入口ウェルは両方の写真において左側にある。
【0047】
5.例示操作
図3A−Cは、本発明の特定の実施形態に従う浸潤アッセイ操作及び勾配での細胞移動を示すための、ゲルをロードした後の浸潤チャンバー領域の一連の顕微鏡写真である。蛍光色素(赤色)と混合されたマトリゲルをローディングチャネルへの毛細管流動によってロードし、そして37℃で15分間重合させた。
図3Aは、ゲルがローディングチャネル、浸潤障壁及び浸潤チャンバーの一部分を満たすことを示す浸潤チャンバーの40×倍率を示す。
図3Bは、浸潤障壁の200×倍率を示す。重合したゲルは、浸潤障壁の内側、並びに浸潤チャンバー内で見ることができる。
図3Cは、灌流障壁の200×倍率を示し、これはゲルが狭いチャネルネットワークを横断することができないことを示している。さらに、ここでの教示からさらに理解されるように、「ゲル」は、特定の実施形態及び特定のテストにおいて様々な粘度を液体粘度まで低下させることができる。特定の実施形態では、灌流障壁は、本発明の広範囲のゲル粘度の使用を可能にする。
【0048】
図4A−Bは、本発明の特定の実施形態に係るアッセイシステム及び装置における勾配での癌細胞浸潤及び細胞移動を示す顕微鏡写真である。この例では、HT−1080浸潤性ヒト乳癌細胞を3Dマトリゲルにロードし、10%血清を含む培地で灌流した。
図4Aは、ゲルのロード及び重合直後の細胞が浸潤障壁の底部側に位置することを示す。
図4Bは、血清含有培地での灌流培養の24時間後の細胞を示し(HT−1080浸潤についての既知のシグナル)、これらの細胞のいくらかはマトリゲル及び浸潤の障壁を通って移動して浸潤チャンバーを占めている。画像は、40×倍率で位相コントラストで撮影した。
【0049】
さらなる実施形態では、様々な戦略を使用してさらなる分析のために浸潤チャンバー中の細胞の全てのいくらかを除去することができる。特定の実施形態によれば、本発明は、細胞をそれらが除去されるまで維持する浸潤チャンバー内に培養環境を与えることによってこれをさらに容易にする。
【0050】
さらなる実施形態では、微小流体チャネル構造を画定する材料(シリコーンエラストマーポリジメチルシロキサン(PDMS)など)を通した培養領域への空気拡散をここで説明した空気通路及び空気孔によって促進させることができる。
【0051】
他の場所で議論するように、様々な改変を上記細胞培養領域に行うことができる。様々な構成は、格子状通路構造などの灌流障壁に対しても可能である。ここで提供された教示を有する当業者であれば他の変形例を提案するであろう。
【0052】
また、上記構造は、参考文献及びここでの他の例に記載されているような、標準的なマイクロタイターウェルプレート又は完全にカスタマイズされた又は部分的にカスタマイズされたプレートの上により多い又はより少ないウェルを使用するシステムにも適合できる。
【0053】
ここで説明するプレート及びシステムは、上で参照した特許出願に記載されているような細胞培養領域及び浸潤チャンバー及び微小流体流れ構造の他の構成と共に使用できる。一つの変更された設計では、設けられる細胞培養領域は、本質的に長方形の細胞培養チャンバーである。細胞培養チャンバーは、右に細胞入口及び出口通路を有し、また右に流出口も有する。この例では、細胞通路は対になっており、中央の対が細胞流れのロードのために使用され、いずれかの側の対が細胞流出口として使用される。
【0054】
細胞がロードされると、任意の浸潤細胞が浸潤障壁を通って移動するのに十分な時間があった後に、浸潤アッセイが上記のように進行する。
【0055】
図5A−Bは、本発明の特定の実施形態に係る複数の入口を有する例示細胞培養チャンバー設計の構成及び動作を示す。この例としては、上記のようなクロスハッチ灌流通路設計及び浸潤障壁を有する細胞/ゲル灌流障壁が挙げられる。クロスハッチ設計は、ゲルマトリックス内の細胞をチャンバーに流入させることを可能にし、かつ、培地の灌流を可能にする。クロスハッチ灌流障壁が現在のところいくつかの設計において好ましいが、異なる灌流障壁を有する又は灌流障壁を有しない培養チャンバーも特定の実施形態に従って実施される。培地用の流れ周辺チャネルは、該障壁の同じ側に出口及び入口の両方を備える。
図5Aは一般的な実施形態を示し、ここでは、出口及び入口の開口部が右に示されている。
図5Bは、に左に入口チャネル及び右に出口チャネルを示すところ、この構成は、ここで説明するウェルプレートを使用するいくつかの例示システムにより適している。また、この図は、本発明の特定の実施形態に係る試料設計の詳細な例示寸法を提供する。したがって、さらなる実施形態では、細胞培養チャンバーは、3Dゲルマトリックス内における細胞の培養をさらに容易にするのを可能にするように改変される。この設計では、灌流障壁は、図示されたように細胞培養領域と流路とを分離する。この障壁は、培養チャンバー内で三次元ゲルを保持するように設計されている。障壁と上記3チャネル細胞/ゲル入口設計とを結合することは、性能の改善を与える重要な特徴である。障壁の両側に別個の流入口/出口を具備することにより、培養チャンバー内に流体ゲルを局所化し、それが流路を妨害させないことが可能である。
【0056】
上記浸潤障壁は、図中において破線で示す領域に配置されており、本明細書の教示から理解されるように、浸潤チャンバーから細胞入口及び培養チャンバーを分離するために使用される。別の実施形態では、灌流チャネルを、これらが浸潤チャンバーにのみ隣接するように設けることができる。
【0057】
別の場所で説明したように、特定の実施形態は、本発明は、例えばMatrigel(商標)、Geltrex(商標)、コラーゲンなどの温度感受性ゲル培養マトリックスを使用して、生物学的細胞培養及び浸潤アッセイのための3Dゲル環境を提供する。例示ゲルは4℃では液体であり、これは、例えば37℃の室温で重合する。一例の方法では、細胞をまず氷上で細胞懸濁液と混合させる。次いで、この溶液を細胞入口ウェルにピペットで入れ、そして毛細管流動により微小流体チャンバーと培養及び浸潤チャンバーとに運ぶ。特定の例では、プレートは室温に維持される。流量は、十分な細胞/ゲル溶液が重合前に培養チャンバーを完全に満たすと共に、細胞が浸潤通路のサイズのため流体流れ中に浸潤チャンバーに入らないことを可能にする。灌流障壁は、ゲル溶液のうち任意のものが流路に漏れるのを防ぐ。ゲルが温まったら、このものは重合して半固体の塊になり、細胞が培養領域に埋め込まれる。流路内での培地の流れは、浸潤チャンバー及びゲルを介して細胞培養チャンバーに拡散し、そして細胞に培養のための栄養を与えると同時に、浸潤性細胞が浸潤障壁を介して浸潤チャンバーに移動するための誘引材料となる。この新規な設計は、本発明が微小流体装置内に3Dゲル培養系を提供すると共に、ゲルが流路を遮断するという問題を回避することを可能にする。
【0058】
図5Bに示す例では、青色の領域は空気の流れを示し、かつ、随意であり全ての実施形態で存在するわけではない。灰色の領域は、約40μmの例示高さを有する流体流路を示しており、赤領域は、約200μmの例示高さを有する細胞培養及び浸潤領域を示しており、緑領域は、約2μmの例示高さを有する灌流障壁を示している。黄色の浸潤障壁は、一般に培養領域と同じ高さ又は類似の高さ(例えば、200μm)を有するが、上記の浸潤障壁構造を有する。
【0059】
細胞がロードされると、任意の浸潤細胞が浸潤障壁を通って移動するのに十分な時間があった後に、上記浸潤アッセイが進行する。
【0060】
3Dゲルシステム
本明細書において3D:Mということがある一例のシステムでは、細胞の多重化灌流イメージングを3Dゲルマトリックスで行うことができる。例示プレートは、ユーザーの選択として細胞/ゲルがロードできる24個の独立した培養ユニットを含む。例示システムでは、プレートの各行(A〜H)は、媒体入口(例えば、カラム1、5、9)、細胞培養/浸潤/イメージングウェル(カラム26、10)、細胞/ゲル入口(カラム3、7、10)及び出口(カラム4、8、12)からなる3個の完全に独立した流れユニット(それぞれ4ウェル)を含む。空気拡散チャネル(青)は、細胞への気体移動を与える。入口は、重力駆動プロセスにより40μl/日での培養培地の細胞への連続流れを可能にするように設計されている。この例では、各チャンバーは、1.5×0.5mmのサイズであり、200μmの高さを有する。灌流障壁は、ゲルマトリックスを通した均一な栄養素移動を確保し、薄いカバーガラス底(170μm)は最適な画質を可能にする。浸潤障壁は、培養領域と侵入領域との間に分離を与える。このようなシステムにおける3Dゲルローディングは、上記のとおり及び援用した参考文献に記載されたとおりに実施できる。
【0061】
本明細書の他の箇所で説明したように、様々な新規微小流体細胞培養チャンバー及び関連する微小流体構造のいずれかは、本発明の特定の実施形態に従って、マクロ細胞培養アッセイにおいて一般に使用されているようにウェルタイタープレート装置と一体化できる。多数の具体例を以下に与えるが、本発明は、微小流体装置と一体化するための他のシステムを包含する。
【0062】
この設計では、各培養ユニットは、4つのウェル位置からなる。第1ウェルは、灌流媒体用であり、第2ウェルは細胞入口用であり、第3ウェルは微小流体チャンバーを撮像するためのものであり、第4ウェルは出口である。細胞障壁/灌流チャネルは、細胞を細胞領域に局在化させ、かつ、連続灌流培養中に栄養素の輸送を改善する。細胞入口の出口路に対する低い流体抵抗は、細胞が外部細胞ローディング機構なしに重力や表面張力法により迅速にロードすることを可能にする。灌流入口流路の高い流体抵抗は、外部ポンプ機構なしに重力流により培地の長期間にわたる連続的灌流を可能にする。浸潤障壁は、浸潤アッセイのために侵入領域から培養細胞を分離するように動作する。
【0063】
例えば、特定のシステムでは、細胞チャンバーは間質組織環境を模倣するように設計され、細胞は、生理学的細胞外マトリックス(ECM)に埋め込まれ又は重層され、かつ、灌流毛細管チャネルからの拡散を介して連続的に供給される。細胞の微小環境は、例えば、200ミクロンの厚さのゲル層中において長期的な成長を可能にする。酸素化チャネルは、適切なガス輸送を維持し、ガラスカバースライド底部は、高品質の細胞イメージングを可能にする。標準的なレイアウトは、高度な微小流体ユニットを典型的な96ウェルプレートのように操作することを可能にする。重力駆動型灌流設計は、上記のようにポンプや配管接続の必要性を排除する。
【0064】
一例のシステムでは、ユニット当たりの予想細胞数は、約500個の細胞である。例示灌流速度は、単一のユニットについて40ul/日である。細胞チャンバー容積は150nLであり、このチャンバーの寸法は1.5×0.5×0.2mmである。ガス拡散膜は、底面#1.5厚カバーガラスを有する50μmのシリコーンである。
【0065】
また、連続灌流のための開頂部微小流体細胞培養チャンバーを、培養領域から浸潤領域を分離する第2障壁を用いて改変することもできる。
【0066】
6.例示勾配培養チャンバー
図6A−Cは、本発明の特定の実施形態に係る例示略矩形細胞培養チャンバー設計及び勾配チャンバー設計の構成及び動作を示している。この例の設計では、備えられる細胞培養領域は、本質的に矩形細胞培養チャンバーである。
図6A及びBに示される細胞培養チャンバーは、右側に示される細胞入口及び出口通路E2と、右側に示される流出口E1とを有する。この例では、細胞通路は対になり、中央の対は、細胞流れのロードのために使用され、いずれかの側の対は、細胞流出口として使用される。複数の別個の流入口は左側に示され、A1、A2、B1、B2、C1、C2と表示されており、この例の設計では、流入口は細胞による閉塞を防止するために格子パターンを有する。チャンバーを囲む空気拡散チャネルが示されている。出口E1は、培養チャンバーから部分的に隔離される流体の流れのための出口となる。
【0067】
図6Bは、
図6Aに示される培養ユニットにおける細胞ローディングを示す。細胞は、低抵抗流体路(流路内での抵抗がより高い)を介してロードされる。細胞は、流路を抵抗比によって遮断することを妨げられる(細胞は、流路の代わりに細胞出口に優先的に流れる)。チャネルは、この特定の実施形態では、チャネルに入る細胞とチャネルを出る細胞とが、チャンバーの右側にあるように配置されている。これにより、細胞流入通路から細胞流出通路まで
図6Bに示す鋭く湾曲した流線によって示されるように、細胞の流れがチャンバーに入り、180度回転させ、そして流出するユニークな特徴が得られる。したがって、本発明の特定の実施形態によれば、細胞は、中央右チャンネルから(毛管力により)ロードされ、そして頂部及び底部のチャンネルから出る。非常に少量の流れは、側出口チャネルに向けられる(チャンバーの左端から出る
図6Bに示す長く湾曲の少ない流線)。側方流れは、細胞ローディングにとって重要ではないが、チャンバー内において細胞をさらに均一に分散させるのに役立つ。この流れの低い速度のため、細胞は、いかなる物理的障壁を必要とすることなくチャンバー床に自然に沈降する。細胞出口通路は、ローディングを対称にするだけでなく、チャンバー内にロードされる細胞数を増加させるのに役立つ。このローディング機構を使用して、細胞、粒子、ビーズ、ゲル、細胞を有するゲルをロードすることができる。
【0068】
図6Cは、本発明の特定の実施形態に係る細胞培養チャンバー設計において安定な勾配を確立するために、
図6A−Bのような設計を使用することを示している。
図6Cにおける例の設計は
図6A−Bのそれとはほんのわずかしか相違せず、これら2つの設計について説明した操作モードは他のものにも適用される。
図6Cの例では、細胞通路は対になっていない。3個の不対流入口が左側に示されており、これらは、細胞による閉塞を防止するためにグリッドパターンを有する。空気拡散チャネルは、一般に、チャンバーの近くに配置されるが、この図には示されていない。
図6Cは、本発明の特定の実施形態に従って上記微小流体装置において2種(又はそれ以上)の溶液を流すことによって培養チャンバー内に勾配を生じさせることをさらに示す。
【0069】
7.アクティブ制御灌流プレート
図7は、微小流体生細胞イメージングのための例示カスタマイズプレートフレームの機械製図を示し、4つの独立したユニット(例えば、行)、改善された光学部品用の大きな撮像窓、空気流入/流出ポート(例えば撮像窓に隣接する)、及びこの例ではマニホールドの真空封止を向上させるためのウェル間での拡張空間を示す。この例では、ユニット当たり6個の入口ウェルが2個の出口ウェル(この例では、1個はより多くの容量を収容するために拡張されている)と共に存在する。
【0070】
図8は、特定の実施形態に係る、各ユニットについて3個の流入口、撮像窓、細胞入口及び流出口を有する2個の培養ユニットプレート示す。
【0071】
図9は、特定の実施形態に係る、各ユニットについて3個の流入口、撮像窓、細胞入口及び流出口を有する培養ユニットプレートの16ユニットバージョンを示す。
【0072】
図10は、本発明の特定の実施形態に係るガス灌流ラインを有する例示プレートマニホールド図を示す。
【0073】
図11A−Bは、それぞれが6個流入口、培養チャンバー及び2個の流出口を備える4個の独立した培養ユニットを有する特定の実施形態に係るアクティブ制御プレートの一例を示す回路図及び写真である。
図11Aは、6個の入口解決手段、開放チャンバー又は他の培養チャンバー、出口及び重力流チャネルを有する4つの独立した流れユニット(プレートの行)を有するプレート設計を示す。
図11Bは、4つの開放チャンバー(緑の円)を示し、この開放チャンバーの上には入口流れがあり、下に出口流れがある。この設計は、開放チャンバーを溢れさせることなく流れを入口から出口チャンネルまで通すことを可能にする。複数の液体又は試薬入口の利用可能性は、生細胞イメージング並びに細胞生物学における他の実験及びアッセイに特に優れるシステムを提供する。このようなシステムでは、研究者は、膵臓その他の臓器細胞又は癌細胞の培養を検討して、これらが入口を介して導入された様々な薬剤又は他の刺激に応答するかどうかを決定することができる。この設計の特定の実施形態では、実験を実行する前に細胞を維持する(例えば供給する)のを容易にするために重力ウェルも設ける。プレートは、空気圧マニホールドに密閉され、6個の入口解決手段の圧力駆動制御を可能にすることができる。これは、この解決手段を細胞によって迅速に変化させる実験を可能にする。入口チャンバーと培養チャンバーとの大きい抵抗領域のため10PSIまでの圧力駆動流が可能であり、これは、入力圧力の1/1000未満であるチャンバー付近の圧力につながる。
【0074】
図は、4つの独立したユニット(行)、6個の上流入口(A1〜A6、B1〜B6、C1〜C6、D1〜D6)、4個の培養チャンバーを有する中央撮像窓、大規模な出口ウェル(楕円形A7、B7、C7、D7)、及び重力灌流ウェル(最後の列A8、B8、C8、D8)を有するアクティブ制御プレートのレイアウトを示している。
【0075】
図12A−Cは、それぞれ特定の実施形態に係るここで説明した1以上の方法を実施するために使用できる6個の流入口、培養チャンバー及び2個の流出口を有する4つの独立した培養ユニットを具備するさらなる例示の培養プレートを示す図である。2010年6月に最初に販売されたこのプレートは、4つの独立した培養チャンバー(例えば、A−D)を有し、それぞれ、重力流入口(1)、4個の溶液入口(2〜5)、細胞入口(6)及び2個の共有出口ウェル(7及び8)を有する。ウェルの各行と同様に、(A−D)は対応する培養チャンバーに対処する。(b)4個の培養チャンバーの全ては、高倍率位相目標の移動距離を最小にするために、単一の撮像窓下に配置されている。(c)チャンバーは、流路からチャンバーを分離するために上端と下端とにある灌流障壁によって結合されている。入口ウェル2及び3は培地を上部チャネルに流すと共に、4及び5は、培地を下部チャネルを介して流す。勾配は、上部及び下部のチャネルを介して様々な組成の培地を同時に流すことによって確立される。連続灌流により、安定した勾配が長時間(>2日間)にわたって維持できる。
【0076】
8.アプリケーションノート、微小流体培養装置における安定勾配での細胞移動
一般に、細胞移動は、細胞と、細胞外マトリックス(ECM)、隣接細胞又は化学誘引物質との相互作用によって刺激され、そして方向付けられる。胚発生時には、細胞移動は、原腸形成から神経の発達に至るまでのほぼ全ての形態形成のプロセスに関与する。成体生物では、細胞移動は、生理学的及び病理学的状態に寄与し、かつ、創傷治癒及び腫瘍転移に影響を与える治療薬の開発の中心となる。最終的に、移動のメカニズムは、移動のモジュレーター(阻害剤又は活性化剤のいずれか)に対する細胞応答を分析することによって理解できる。したがって、移動細胞の定量及び可視化のための技術がライフサイエンス研究の中心となっている。
【0077】
最も広く受け入れられている細胞移動アッセイは、各ウェル中の膜が2個のチャンバー間に多孔質の境界面を与える2個チャンバーマルチウェルプレートを使用するBoydenチャンバーアッセイである。化学誘引物質が下部チャンバー内に配置され、そしてこのシステムを、勾配が上部ウェルと下部ウェルとの間に形成されるであろうという見込みで平衡化させる。しかし、実際には、かなりの急勾配が膜の表面に対して垂直な単一軸に沿って形成し、上部ウェルと下部ウェルと間に化学誘引物質濃度の予想を下回る差が生じる場合がある。結果として、この方法は、特定の勾配特性(すなわち、傾き、濃度、時間的発達など)を備えた特定の細胞応答を相関させること及びマルチ勾配信号積分を研究することには不向きである。さらに、勾配は、「静的な」細胞培養条件下ではあまり安定ではなく、生細胞イメージングを妨げる。
【0078】
特定の実施形態によれば、上記の図に示すような細胞培養チャンバー又はシステムをさらに使用して、日数の経過により長期的な生細胞イメージングのために十分に安定な、定量的に規定された拡散勾配を生じさせることができる。特定の実施形態及び本明細書に記載の方法に従うこのようなプレートの微小流体勾配培養チャンバーは、培養領域において空間的勾配を生じさせるために、灌流障壁を横切る精密に制御された化学誘引物質拡散を可能にする。
【0079】
特定の実施形態によれば、培養チャンバーの流入口及び出口は、所定の日数にわたって安定な濃度勾配プロファイルを維持する連続流の「無限の源/シンク」を形成する。上記の例示システムのいくつかでは、勾配の方向性を変化させること、勾配をオン及びオフにすること及び勾配と単一溶液曝露とをトグルで切り換えることが可能である。
【0080】
さらなる実施形態によれば、安定な化学誘引物質勾配での長期間にわたる生細胞イメージングを使用して、悪性細胞又は運動若しくは移動できる他の細胞を研究することができる。以下に説明する多数の例では、転移性乳癌細胞の移動距離、速度及び走化性の程度に及ぼす特定の実施形態に係る血清勾配の影響を詳細に特徴付ける。
【0081】
転移性乳癌細胞の移動距離、速度、及び走化性の程度に及ぼす血清勾配の影響
一実験例では、MDA−MB−231(HTB−26(商標)、ATCC(登録商標))、転移性胸水部位に由来するヒト乳癌株を、完全培地(1O°/ov/vウシ胎児血清(FBS)、1%非必須アミノ酸、2mMのL−グルタミン及び抗生物質(全てEMDミリポア)が追加されたダルベッコ改変イーグル培地(DMEM))中で保持し、そしてトリプシン処理(GIBCO社製TrypLE(商標)Select)により通常通り継代して対数増殖期を確保した。
【0082】
実験では、細胞をトリプシン処理し、遠心分離により採取し、そして完全培地に再懸濁した。10μLの各細胞試料と190uLのグアバViaCount(登録商標)試薬(EMD Millipore社)とを混合し、室温(RT)で5分間インキュベートした。サンプルデータを、グアバeasyCyte(商標)HT装置で取得し、そしてグアバViaCount(登録商標)ソフトウェア(EMD Millipore)を用いて分析した。
【0083】
図13は、特定の実施形態に係る安定な勾配への曝露後の細胞移動の一例を示している。この具体例では、上記勾配培養チャンバーの1個以上を使用して安定FBS勾配に暴露した後のMDA−MB−231細胞の移動を示す。この例は、細胞を完全培地中でインキュベートし又はY軸(垂直面)に沿って確立された0〜10%のFBS勾配に曝露した細胞チャンバーからの代表的な画像(倍率10倍)を示す。上部のパネルは、細胞ローディング後24時間の撮影画像を含む。中央のパネルは、ローディング後96時間の細胞を示す。培養時間を完全培地中で3日間に分割し、その後24時間の血清飢餓(FBSなし)を行った。これらの画像から、細胞の増殖及び移動の両方が3日間の間隔で生じたことは明らかである。下のパネルの画像は、勾配誘導後12時間で撮影された。
【0084】
図13は、3日間にわたる、FBS勾配に応答する単一MDA−MB−231細胞の移動を示す。細胞の増殖及び移動の両方が頂部の列と中央の列との間で3日間の間隔で生じた。下のパネルの画像は、12時間の勾配誘導後に撮影した。一般に、FBS勾配にさらされる培養について、細胞チャンバーの上部障壁に向かうY軸に沿った細胞の明らかな動きがある。これに対し、空間的血清勾配の非存在下で培養した対照細胞は、はるかにランダムな方向性でのより少ない動きを示した。中央及び下のパネルのボックス(1−8と番号の振られたもの)は、特定の細胞を同定し、かつ、12時間の時間枠内でのそれらの全体的な動きを実証するために使用された。全体的に、FBS勾配にさらされた細胞は、より高いFBS濃度源の方向に優先的に移動する傾向があった。
【0085】
図14は、一例として、特定の実施形態に係る微小流体細胞培養装置での細胞運動に及ぼす勾配の影響を例示するためのX/Y細胞移動プロットを示す。この例では、プロットは、微小流体培養ユニット(例えば、MDA−MB−231上のFBS勾配)細胞運動における安定勾配の影響を説明するためのX/Y移動プロットである。この具体例で示されているのは、4つのプロット:(a)0/0FBS(勾配無し)、(b)10/10FBS(勾配無し)、(c)10/0FBS(底部から頂部への勾配)及び(d)0/10FBS(頂部から底部への勾配)である。この特定の例について、各データセットは、低速度撮影ビデオ(12時間)の最初の36画像フレームについて追跡された単一の細胞培養チャンバーからの50個の代表的な細胞から得た。各プロットでは、黒線及び赤線は、それぞれ、Y軸に対して正味の「上向き」又は「下向き」の動きを有する細胞を特定する。
【0086】
画像Jソフトウェアを使用して、様々な培養条件下での個々の細胞の移動特性を追跡することができる。これらの例のいくつかでは、50個の細胞を合計12時間監視した。結果を
図14のX/Yプロットに示す。この分析は、(1)細胞が栄養勾配にさらされた場合には安定した培地中ではるかに少ない程度に移動する傾向があったこと、及び(2)培養チャンバー内に勾配が確立されたときに細胞移動が有意に方向付けられたことを示す。
【0087】
FBSに向かう走化性を無方向性移動から区別するために、本出願人は、y軸(勾配に平行)の移動とは別にx方向の動き(勾配に垂直)を分析した(
図6)。有意な走化性は、FBS勾配(10/0FBS A〜C及び0/10FBS)に曝露された細胞でしか示されなかった。空間的に一定のFBS培養における細胞は、全体的な動きが非常に少ないことを示した。
【0088】
図15は、一例として、特定の実施形態に係る微小流体細胞培養装置内において移動した距離に応じた細胞移動を示す。この例では、移動距離に応じたMDA−MB−231細胞の移動が示されている。6つの条件のそれぞれ(それぞれn=50の代表的な細胞)について、平均移動距離(μmで表す)を、合計(a)及び(b)ユークリッド距離の関数として測定し、その際、後者は、出発位置から終了位置までの直線を表す。
【0089】
勾配条件に関連する移動プロット、総移動距離及びユークリッド距離から算出された移動距離を使用することが
図15Aに示されている。示されるように、勾配培養についての全体的な移動距離は、安定環境中での細胞と比較してわずかに増加した。興味深いことに、0/0(血清飢餓)と10/10(完全培地)との条件の間にはほとんど差はなかった。これに対し、正味の(ユークリッド)距離を
図15Bで評価したときに、これら2つの条件(安定対勾配)の間には大きな差が見出された。この場合には、FBSの濃度勾配に曝露された細胞は、一定の培地状態における細胞よりも、それらの出現部位からさらに3倍を超えて移動した。このような知見は、細胞が勾配の高いFBS濃度端にある栄養豊富な培地を活発に求め、それによってより大きな方向性移動を示すことを示唆するものである。
【0090】
図16は、一例として、特定の実施形態に従って、微小流体細胞培養装置において安定な勾配に曝露された細胞が安定な培地環境における細胞よりも速く移動することを示すプロットを例示する。この例は、場合によっては、勾配(例えば、FBS)に曝露された細胞が安定培地環境における細胞よりも速く移動することを示す。このグラフは、この例での4つの培養条件間における移動速度(μm/分)の差を示す。速度は、平均総移動距離に基づいて計算した。
【0091】
一般に、細胞は、FBS勾配が確立されたチャンバー内においてわずかに高い速度で移動した。注目すべきことは、4つの勾配培養(10/0FBS(Q))の1つにおける移動細胞が、他の例よりもはるかに高い移動速度を示したことである。この実験中に行われた観察から、加速細胞移動に潜在的に寄与し得る2つの要因がある:(1)細胞は、より低い細胞密度の培養物中では遠くに移動する傾向があったこと、(2)細胞クラスターの一員は、単離された対応物よりも速く移動する傾向があったこと。この後者の応答は、以前に細胞−細胞相互作用と移動速度との関係を分析する研究で報告されたとおり、微小環境内での局在化された細胞間連絡によって製剤的に引き起こされる。
【0092】
図17は、特定の実施形態に従って勾配に曝露すると高濃度シンクに向かう細胞の活発な移動を刺激したことを示す例を示す。この例では、FBS勾配への曝露は、高濃度シンクに向かうMDAMB−231細胞の活発な移動を刺激した。移動指数は、X(勾配に対して垂直)及びY(勾配と平行)の両方の方向での細胞の運動(それらの原点位置に対する)の基準を与える。6つのアッセイのそれぞれについて、両方の平面的な動きについての両方の値を示す(各棒は、単一細胞チャンバー内における50の個別に追跡された細胞の平均を示す)。
【実施例】
【0093】
実施例の設定
上記の特定の実験の前に、細胞培養チャンバー内の周囲温度を、CellASIC(商標)ONIX Microincubatorコントローラー、温度較正プレート及びDirecTemp(商標)温度監視ソフトウェア(EMD Millipore)を使用して37℃に較正した。細胞チャンバーを、CellASIC(商標)プレートのウェル1、6、7及び8から吸引されたリン酸緩衝生理食塩水(PBS)溶液を使用して下塗りし、そして10μLの培地をウェル6にピペットで入れた。この手順をマイクロプレート上の全てのチャンバーユニットについて繰り返した。このプレートをF84マニホールドに真空密封した。CellASIC(商標)ONIX FGソフトウェアを使用して、培地を2分間にわたって0.25psiでウェル6から灌流させるように設定した。
【0094】
細胞ローディングについて、トリプシン処理したMDA−MB−231細胞を完全培地に2×10
6/mLで再懸濁した。培地をウェル1及び6におけるPTFEリングから吸引した。ウェル1を10μLの培地と交換し、そしてウェル6を10μLの細胞懸濁液と置き換えた。このプレートをF84マニホールドに真空密封し、そしてEVOS(商標)fl倒立顕微鏡(Advanced Microscopy Group)のステージ上に配置してローディングプロセスを監視した。細胞を、CellASIC(商標)ONIX FGソフトウェアを使用して、ウェル1及び6から0.3分(18秒)にわたって0.4psiで同時に流すことによってロードした。プレートを、標準的な37℃/5%C0
2インキュベーター内に1時間放置して自動媒体灌流の前に細胞付着を可能にした。
【0095】
これらの例示の実験について、それぞれは、3つ区別できる段階を伴った:培地供給を完了させる(入口ウェル2及び4から、48時間にわたり1psiで流れる)、血清飢餓(入口ウェル3及び5から、24時間にわたり1psiで流れる)及び0〜10%FBS勾配への曝露。培養チャンバー内で勾配を確立するために、300μLの完全培地及び完全培地マイナスFBSを、それぞれ入口ウェル2及び4にロードし、そして1psiで同時に流す。所定の場合には、24時間後に、勾配の向きを、灌流のための源ウェルを切り替えることによって逆転させた。この場合、完全培地マイナスFBS及び完全培地をそれぞれウェル3及び5にロードし、そして1psiで同時に流した。この系における培地灌流は、CellASIC(商標)ONIX微小流体システムを用いて行った。
【0096】
画像を、EVOS(商標)FL倒立顕微鏡を用いて10倍の倍率で撮影した。低速度撮影イメージングを、各実験のFBS勾配部分の間に実行した。画像を、勾配暴露時間の長さについて20分間隔で撮影した。MDA−MB−231細胞移動アッセイからの画像を、Image Jソフトウエア(NIH)をマニュアルトラッキング(NIH)及び走化性ツール(同上)プラグインと組み合わせて用いて分析した。それぞれの場合において、50個の代表的な細胞を、36個の画像の連続シリーズにわたる移動特性について追跡した(培養中12時間)。
【0097】
これらの実験は、高度に制御された細胞移動研究の際におけるリアルタイム生細胞イメージングを使用して、創傷治癒及び腫瘍転移などの病理学的現象の原因となるメカニズムに関与する細胞移動及び浸潤プロセスを観察し、研究することができることを実証した。
【0098】
9.空気圧マニホールド
重力又は受動的ローディングがいくつかの微小流体細胞培養装置にとっては効果的であり、かつ、いくつかの実施形態では望ましいが、本明細書において説明しかつ上で参照した出願に記載された専用の空気圧マニホールドをプレートと一体にすることができ、また、浸潤アッセイの間における細胞ローディング及び培養のために空気圧を細胞入口領域に加える。
【0099】
本発明のさらなる実施形態によれば、新規な細胞ローディングシステムは、空気圧マニホールド及び空気圧を使用してマイクロ培養領域に細胞を配置する。この細胞ローディングシステムにより、微小流体細胞培養及び分析は、標準タイタープレートを取り扱うために存在する他の自動装置を使用して完全に自動化できる。
【0100】
さらなる実施形態では、本発明は、接着細胞の長期間にわたる低速度撮影顕微鏡検査のための細胞培養環境の制御を可能にする微小流体システムを伴う。「システム生物学」への傾向が続くと、個々の生細胞中における動的挙動を研究することのみならず、ハイスループット生細胞スクリーニングの機能性及び経済性を改善することがますます重要になってくる。本発明の特定の実施形態によれば、本発明は、他のアッセイのうち低速度撮影顕微鏡実験を可能にする多重化された微小流体流れチャンバーを提供する。この微小流体チャンバーは、人工内皮障壁を使用して細胞を流路から分離する。この装置は、標準ウェルプレートにフォーマットされ、液体及び細胞試料を、標準的な装置を使用して適切な入口リザーバに直接ピペットで加えることを可能にする。その後、カスタム空気圧流量コントローラーを使用して、細胞を培養領域にロードするだけでなく、異なる露出溶液を切り替える。デジタルソフトウェアインターフェイスを使用して、ユーザーが低速度撮影イメージング中に複雑な機能に細胞を露出させるように経時的に特定の入力(パルス、傾斜など)をプログラムするのを可能にする。
【0101】
生細胞の動的応答は、生体シグナル処理、遺伝子発現の調節、分化及び細胞分裂などの現象の基礎である。特定の実施形態では、本発明は、現在の細胞培養方法に適合する多重化フォーマットで細胞微小環境を制御することのできるシステムを包含する。細胞応答は、高倍率蛍光顕微鏡を用いて細胞以下の解像度で動態情報を導出して定量できる。この能力は、細胞系において幅広い用途を有する。
【0102】
図18A〜Cは、本発明の特定の実施形態に係る例示マニホールドの概略図の上面図、側面図及び平面図を示す。この例では、右手の8個の配管ラインは、圧縮空気のためのものであり、それぞれ、微小流体アレイ内にある細胞入口ウェルの列に圧力を与えるように構成されている。図の最も左のラインは、真空のためのものであり、マニホールドの周囲にある外側真空リングに連結している。ウェルの各列は、一般に、撮像領域の上にあるウェルをスキップして単一圧力ラインに連結している。マニホールドは、標準ウェルプレート又はプレートの他の構成の頂部に配置される。ゴムガスケットがプレートとマニホールドの間にあり、孔がマニホールドに一致する(図示しない)。真空ラインはウェル間の空洞内に真空を創り出し、プレートとマニホールドとを一緒に保持する。圧力をウェルに加えて液体を微小流体チャネルに流す(図示せず)。1psiの典型的な圧力を使用するため、真空強度は、気密シールを維持するのに十分である。一例では、圧力制御装置に向かう9個の配管ラインが存在する:8個のラインは圧縮空気のためのものであり、1個ラインは真空のためのものである(左端)。特定の例示実施形態では、各列は単一の圧力ラインに接続されている。細胞イメージング領域上の列はスキップされる。
【0103】
本発明の特定の実施形態に係るシステムにおける加圧細胞ローディングは、凝集細胞(例えば、固形腫瘍、肝臓、筋肉など)の培養物を調製する際に特に有効であることが分かった。また、加圧細胞ローディングは、細長い培養領域を有する構造に効果的にロードすることを可能にする。灌流操作及び浸潤アッセイのために細胞ローディング及び受動的流れのために加圧マニホールドを使用すると、本発明は、他の設計で使用されるような追加の入口ウェル及び/又は弁を必要とすることなく、かなり単純な2個の入口設計を利用することが可能になる。
【0104】
改変マニホールド
さらなる実施形態では、プレートマニホールドは、特定のガス環境(例えば、5%のCO
2)を有する微小流体装置内に細胞を浸すように使用される追加の「ガスライン」を備える。他の例としては酸素及び窒素の制御が挙げられるが、任意のガス状混合物を細胞に送ることができる。上記のように、ガスはマニホールドを通って細胞培養領域上にある密封ウェルに流れ、そして微小流体装置内にある孔はガスを特定の微小流体空気流路に流入するのを可能にする。ガス透過性装置層(PDMS)は、細胞を曝露する前に、ガスを培養培地に拡散させることを可能にする。ガスを微小流体プレートを通して連続的に流すことにより、安定したガス環境が維持される。
【0105】
これは、微小流体プレートをインキュベーターに配置するためにガス環境を制御する任意手段を提供する。この改変されたマニホールドでは、このマニホールドを使用して、周囲空気から独立した「マイクロインキュベーター」を創り出すことができる。
【0106】
図19は、本発明の特定の実施形態に係る微小流体プレートを操作するための例示システム及びマニホールドを示す図である。
【0107】
10.自動化システム
プレートは、SBSに準拠した機器を使用して取り扱うように設計されているため、様々な「既製の」機械を使用して自動化システムを作製することができる。この回路図は、これを達成する方法の例を示す。ロボットアーム(プレートハンドラー)が微小流体プレートをステーションからステーションまで移動させる。自動化された培養器は、重力流を介して、長期の灌流にとって適切な温度及び気体環境でプレートを保存する。ピペッターは、入口ウェルに液体(培地、薬剤、アッセイ試薬など)を分配し、かつ、出口ウェルから液体を除去する。プレートリーダーがアッセイのために使用される。実験の開始時に適宜細胞ローダーを使用して微小流体アレイに細胞を導入する。特に、細胞ローダーは、一般に「既製の」ものではなく、かつ、流れを誘導するためにアレイプレートの特定のウェルに空気圧を加えることによって動作する。操作を統合するために標準又はカスタムコンピュータソフトウェアが利用できる。
【0108】
基本的なプロセスは、(1)プレートをインキュベーターから取り出し、(2)ピペッターにより出口ウェルから液体を取り出し、(3)培地/薬剤貯蔵プレートを「プレートスタック」から移動させ、(4)液体をピペッターにより培地/薬剤プレートから微小流体プレートに移し、(5)微小流体プレートをインキュベーターに配置し、(6)各プレートについて繰り返し、(7)特定の時間間隔(例えば24時間)後に繰り返す。
【0109】
96ウェルプレートの規格は、微小流体システムを、標準的な技術及び装置を用いて操作するのを可能にする。例えば、液体分注は、標準的なピペット力学で達成され、細胞培養及び分析は、既存のインキュベーター及びプレートリーダーと互換性がある。カスタム構築された細胞ローディングシステムは、上記のように、空気圧を用いて細胞をロードするために使用できる。重力駆動流培養構成は、入口ウェルと出口ウェルとの間の培地レベル差を利用すると共に流体抵抗を設計してnL/分レジームでの望ましい流量を達成する。これは、かさばる外部ポンプを使用することなく、長期間(例えば、4日まで)にわたって培地を「受動的に」流すことができるという重要な利点を与える。
【0110】
統合システム
細胞及び他のデータの収集及び分析並びに本発明のデータベースの編集、保存及びアクセスのための集積システムは、典型的には、配列の検索及び/又は分析のための命令セット及び任意にハイスループットサンプル制御ソフトウェア、画像分析ソフトウェア、収集データ解釈ソフトウェアの一つ以上を含めたソフトウェア、デジタルコンピュータに動作可能に接続された、ソースからのソルーションを宛先(例えば検出装置)に伝えるためのロボット制御用アーマチュア、被験体データをデジタルコンピュータに入力するための入力装置(例えば、コンピュータ・キーボード)、又はロボット制御アーマチュアにより分析操作若しくはハイスループットサンプル伝達を制御するための装置を有するデジタルコンピュータを備える。任意に、この統合システムは、説明したようにマイクロチャンバーに連結するために弁、濃度勾配、流体マルチプレクサ及び/又は他の微小流体構造を備える。
【0111】
標準的なオペレーティング・システムを用いて容易に利用可できる計算ハードウェアリソースを、本発明の統合システムで使用するために、ここで与えた教示に従って使用しかつ改変することができる。例えばPC(インテルx86又はPentium(商標)チップ互換性DOS(商標)、OS2(商標)、WINDOWS(商標)、Windows NT(商標)、WINDOWS95(商標)、WINDOWS98(商標)LINUX(商標)又はMacintosh、Sun又はPCで十分である)である。ソフトウェア技術における現在の技術は、コンピュータシステム上において本明細書で教示した方法の実施を可能にするのに適切である。したがって、特定の実施形態では、本発明は、本明細書で教示する方法の1つ以上を実行するための論理命令(ソフトウェア又はハードウェアコード化命令のいずれか)のセットを含むことができる。例えば、データ及び/又は統計的分析を提供するためのソフトウェアは、Visual Basic、Fortran、Basic、Java(登録商標)などの標準プログラミング言語を用いて当業者により構築できる。また、このようなソフトウェアは、様々な統計プログラミング言語、ツールキット又はライブラリを利用しても構築できる。
【0112】
図21は、固定媒体722に接続されたサーバ720に任意に接続できる媒体717及び/又はネットワークポート719からの命令を読むことができる論理装置と解することできる情報家電(又はデジタル装置)700を示す。その後、装置700は、当該技術分野において理解されるように、これらの命令をサーバ又はクライアントロジックに指示して本発明の態様を具体化する。コンピュータシステムで本発明を具現化することができる論理装置の一つのタイプは、CPU707、随意の入力装置709及び711、ディスクドライブ715及び随意のモニター705を含む、700に例示されるようなコンピュータシステムである。固定媒体717又はポート719にわたる固定媒体722は、このようなシステムをプログラムするために使用でき、かつ、ディスク型の光学又は磁気媒体、磁気テープ、ソリッドステートダイナミック又はスタティックメモリを表すことができる。特定の実施形態では、本発明は、この固定媒体715に記録されたソフトウェアとして全体的に又は部分的に具現化できる。また、通信ポート719は、このようなシステムをプログラムするために使用される命令を最初に受信するために使用でき、かつ、任意のタイプの通信接続を表すことができる。
【0113】
ここで記載するように、遺伝的アルゴリズム及びニューラルネットワークを含めた様々なプログラミング方法及びアルゴリズムを使用して、データ収集、相関及び記憶機能並びに他の望ましい機能の態様を実行することができる。さらに、デジタル又はアナログコンピュータシステムなどのデジタル又はアナログシステムは、ディスプレイ及び/又は入力及び出力ファイルの制御などの他の様々な機能を制御することができる。また、本発明の電気分析方法を実施するためのソフトウェアも、本発明のコンピュータ・システムに含まれる。
【0114】
他の実施形態
本発明を様々な特定の実施形態に関して説明してきたが、本発明はこれらの実施形態に限定されるものではない。本発明の精神内での改変は当業者であれば明らかであろう。
【0115】
ここで説明した実施例及び実施形態は例示を目的とするものであり、また、それを考慮した様々な修正や変更がここでの教示により当業者に示唆され、かつ、本願の精神及び範囲並びに請求の範囲に含まれるべきであると解する。
【0116】
ここで引用した又は本願と共に提出した全ての刊行物、特許及び特許出願は、情報開示陳述書の一部として提出された参考文献を含めて、その全体を引用により援用する。
【符号の説明】
【0117】
700 装置
705 モニター
707 CPU
715 ディスクドライブ
717 媒体
719 ネットワークポート
720 サーバ
722 固定媒体