【解決手段】生体情報測定装置1は、犬に装着させる複数の圧力センサを含むセンサアレイ30と、センサアレイから出力されるセンサ信号が所定の条件を満たすか否かを判定するセンサ信号判定部12と、所定の条件を満たすと判定されたセンサ信号を出力した圧力センサを特定するセンサ特定部13とを備える。
上記センサ特定部は、上記センサ信号判定部によって、上記所定の条件を満たすと判定されたセンサ信号を出力したセンサの中から、上記生体の第1生体情報に関連する圧力を検知可能な1または複数の第1センサ、および上記生体の第2生体情報に関連する圧力を検知可能な1または複数の第2センサを特定し、上記第1センサから出力されるセンサ信号を、上記第1生体情報に関連した圧力変動として出力し、上記第2センサから出力されるセンサ信号を、上記第2生体情報に関連した圧力変動として出力することを特徴とする請求項1または2に記載の生体情報測定装置。
所定の時間間隔で、上記センサ信号判定部が、上記複数のセンサから出力されるセンサ信号毎に、上記生体情報を測定するための所定の条件を満たすか否かを、判定するタイミングを制御するタイミング制御部をさらに備えることを特徴とする請求項1から6のいずれか1項に記載の生体情報測定装置。
請求項1に記載の生体情報測定装置としてコンピュータを機能させるための制御プログラムであって、上記センサ信号判定部、および上記センサ特定部としてコンピュータを機能させるための制御プログラム。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施の形態について、詳細に説明する。
【0014】
ここでは、本発明に係る生体情報測定装置を、犬9(生体)に装着させて、該犬の心拍(第1生体情報)および呼吸(第2生体情報)を測定することが可能な生体情報測定装置1に適用した場合を例に挙げる。なお、本発明に係る生体情報測定装置は、犬9、猫、兎などの愛玩動物(ペット)(生体)、牛、馬、豚などの家畜(生体)、動物園などで飼育されているライオン、象、猿などの動物、および人間(生体)などに適用可能であり、犬用に限定されない。
【0015】
また、以下では、生体情報測定装置1の複数のセンサとして、犬9の心拍および呼吸に関連する圧力変動(圧力)を同時に検出可能な圧力センサ(例えば、圧電センサ)が配列しているセンサアレイ30(複数のセンサ)を用いる例を挙げて説明する。複数の圧力センサが配列しているセンサアレイ30を用いることにより、複数の圧力センサを簡単に犬9に装着させることができる。なお、センサアレイ30の具体的な構成については後に説明する。
【0016】
なお、センサアレイ30を犬9の体表面の所定の位置(胸部または腹部)に装着させるために、適切な装着具8を用いることができる。装着具8としては、センサアレイ30の位置が犬の体動によって大きく変化したり、外れたりしないようにする機能を有しているものであれば、ハーネス、衣服、およびベルトなどの形状であってもよい。
【0017】
〔実施形態1〕
本発明の実施形態に係る生体情報測定装置1について、
図1〜
図5に基づいて説明すれば、以下のとおりである。
【0018】
(生体情報測定装置1の構成)
まず、生体情報測定装置1の構成について、
図1を用いて説明する。
図1は、本発明の実施形態1に係る生体情報測定装置1の概略構成の一例を示すブロック図である。
【0019】
生体情報測定装置1は、信号解析部10、センサ信号取得部20、センサアレイ30、およびスキャンタイミング制御部40(タイミング制御部)を備えている。信号解析部10は、センサ信号解析部11、センサ信号判定部12、およびセンサ特定部13を備えている。センサ信号取得部20は、センサスキャン部21およびセンサ信号処理部22を備えている。
【0020】
センサアレイ30は、複数の圧力センサ(
図1の各黒点は、それぞれの圧力センサを示す)を含んでいる。センサアレイ30の形状は、例えば、長方形形状であってよく、ある場合には、横方向に(図中のL方向)10個、縦方向(図中のV方向)16個の圧力センサが、1.27cm間隔で配列している。図示されたセンサアレイ30は、160個の圧力センサを含んでおり、各圧力センサに対して、L1V1〜L10V16の座標(アドレス)が対応付けられている。
【0021】
なお、センサアレイ30の大きさは、犬9の胸部の一部および腹部の一部が被覆されるような大きさであればよく、犬9の動作を阻害しないような大きさとすることが好ましい。また、センサアレイ30の大きさは、犬種(すなわち体の大きさ)に応じて変更できる構成であってもよい。例えば、各圧力センサのすべての間隔を固定してセンサアレイ30の大きさを変更してもよい。この場合には、センサアレイ30の大きさを変更することによって、センサアレイ30に含まれる圧力センサの数が増減する。あるいは、各圧力センサのすべての間隔を狭くしたり広くしたりすることにより、センサアレイ30の大きさを変更してもよい。この場合には、センサアレイ30の大きさを変更しても、センサアレイ30に含まれる圧力センサの数は増減しない。これにより、様々な犬種に対して、センサアレイ30を適用することができる。すなわち、センサアレイ30の大きさを変更する場合、センサアレイ30に含まれる圧力センサの数が変動する構成、およびセンサアレイ30に含まれる圧力センサの数が変動しない構成の両方が考えられる。ただし、犬9の心拍および呼吸を同時に測定する場合には、センサアレイ30が、心拍に関連する圧力変動と、呼吸に関連する圧力変動とを検出可能な領域に当接することが必要である。
【0022】
センサアレイ30に含まれる各圧力センサの間隔は、1〜10cm間隔で設けられることが望ましい。ただし、各圧力センサの間隔を狭くする(センサアレイ30の圧力センサを密に構成する)とセンサアレイ30の圧力センサの数が多くなり、センサアレイ30の重量が増し、消費電力量も増加する。反対に、各圧力センサの間隔を広くする(センサアレイ30の圧力センサを疎らに構成する)と、センサアレイ30を軽量化することができ、消費電力量も低減させることができる。しかし、一般に心拍に関連する圧力変化を検出可能な、犬9の体表の領域は狭いため(
図3参照)、各圧力センサの間隔を広くすると、心拍の検出ができない虞がある。それゆえ、犬9の体の大きさに合わせて、センサアレイ30の大きさおよびセンサアレイ30に含まれる圧力センサの密度を適切に設定することにより、心拍と呼吸を同時に測定可能な生体情報測定装置1を構成することができる。
【0023】
なお、センサアレイ30に含まれる各圧力センサの間隔が一様である構成に限定されず、例えば、センサアレイ30の、犬9の胸部(心臓付近)に当接する部分に配置された各圧力センサの間隔は狭くし、一方、センサアレイ30の、犬9の腹部に当接する部分に配置された各圧力センサの間隔は広くしてもよい。センサアレイ30をこのように構成すれば、圧力センサの数の増加を適切に抑制しつつ、心拍および呼吸の測定を確実に行うことができる。
【0024】
スキャンタイミング制御部40は、所定の時間間隔でセンサスキャン部21に対して、センサアレイ30に含まれる圧力センサのセンサ信号を走査(スキャン)するよう指示する。なお、生体情報測定装置1を装着する犬9の性格や行動態様に応じて、所望のタイミングを設定できるように構成してもよい。例えば、おとなしい気性の犬9の場合には10分間隔(所定の時間間隔)、行動的な犬9の場合には2分間隔(所定の時間間隔)で、センサアレイ30に含まれる圧力センサのセンサ信号を走査(スキャン)するよう指示してもよい。
【0025】
センサスキャン部21は、スキャンタイミング制御部40からの指示に応じて、センサアレイ30に含まれるすべての圧力センサから出力されるセンサ信号を、一定時間分(例えば、5秒間)取得・蓄積する。また、センサスキャン部21は、後述のセンサ特定部13が心拍を測定可能な圧力センサとして特定した圧力センサ、および、後述のセンサ特定部13が呼吸を測定可能なセンサとして特定した圧力センサ(特定の圧力センサ)から出力されるセンサ信号を取得する。センサスキャン部21は、圧力センサから出力されるセンサ信号を、所定の周期(例えば、1秒に10回)で取得する。
【0026】
センサ信号処理部22は、バンドパスフィルタを備え、センサスキャン部21が圧力センサから取得したセンサ信号のオフセットの除去および高周波ノイズの除去を行う。またセンサ信号処理部22は、アナログ/デジタル(A/D)変換、およびアンプによる増幅などを行ってもよい。なお、センサスキャン部21が圧力センサから、所定の基準値(例えば、S/N=100)以上のシグナル/ノイズ比(S/N比)のセンサ信号を取得できる場合には、センサ信号処理部22を、バンドパスフィルタおよびアンプなどを除いた構成としてもよい。このように構成すれば、生体情報測定装置1の消費電力量を低減させるとともに、生体情報測定装置1の製造に要する費用を低減させることができる。
【0027】
また、センサ信号処理部22は、処理済のセンサ信号を信号解析部10に送信する。なお、センサ信号処理部22は、処理後のセンサ信号を、外部機器(例えば、
図12に示す生体情報管理サーバ100および通信端末200など)に送信する構成であってもよい。そのような場合、生体情報測定装置1の信号解析部10の機能を、生体情報管理サーバ100および通信端末200が備える構成であってもよい。すなわち、生体情報測定装置1は生体情報管理サーバ100および通信端末200などの外部機器にセンサ信号を送信したり、該外部機器が特定した圧力センサのアドレスなどの情報を受信したりする通信部をさらに備えていてもよい。なお、この場合、生体情報測定装置1が外部機器から受信した圧力センサのアドレスはセンサスキャン部21に送られ、犬9の心拍の周期および呼吸の周期などの生体情報に関連した圧力変動を検出するために利用する圧力センサのアドレスとして設定される。
【0028】
センサ信号解析部11は、センサ信号処理部22から受信したセンサ信号を解析する。例えば、センサ信号解析部11は、各圧力センサから出力されたセンサ信号を、フーリエ変換などを用いて解析することにより、圧力センサから出力されたセンサ信号が示す圧力変動のピーク周波数とスペクトル(パワースペクトル)密度(分布)を算出し、そのリストを作成する。なお、センサ信号解析部11は、ウェーブレット変換を用いてセンサ信号を解析してもよい。また、センサ信号を解析する方法としては、受信したセンサ信号に対して閾値検出を行い、該センサ信号に含まれる、心拍および呼吸などに応じて検出されているピークを特定し、各ピーク間の間隔から拍動の周期(周波数)および呼吸の周期(周波数)などを算出してもよい。
【0029】
センサ信号判定部12は、センサアレイ30の各圧力センサ(複数のセンサ)から出力されるセンサ信号毎に、圧力の変動が所定の条件を満たすか否かを判定する。具体的には、センサ信号判定部12は、センサ信号解析部11が作成した、ピーク周波数とスペクトル(パワースペクトル)密度(分布)のリストを参照して、圧力センサ毎に出力されるセンサ信号が、所定の条件を満たすか否かを判定する。ここで、所定の条件とは、生体情報を測定するための条件であり、具体的には、心拍に関連する圧力変化、および呼吸に関連する圧力変化などを検出可能な圧力センサであるか否かを判定するために、予め設定された条件である。例えば、センサ信号判定部12は、ピーク周波数が50Hz以下(所定の条件)であり、かつ、スペクトル密度が所定の閾値より大きい(所定の条件)センサ信号を出力した圧力センサが存在するか否かを判定する。センサアレイ30に含まれる圧力センサのうち、このような条件を満たす圧力センサには、少なくとも呼吸に関連する圧力変化を検出可能な圧力センサが含まれ得る。
【0030】
センサ特定部13は、センサ信号判定部12によって、出力したセンサ信号が所定の条件を満たすと判定された圧力センサの中から、心拍に関連する圧力変化を検出可能な圧力センサ(第1センサ)のアドレスと、呼吸に関連する圧力変化を検出可能な圧力センサ(第2センサ)のアドレスを特定する。センサ特定部13が特定した圧力センサから出力されるセンサ信号は、犬9の心拍の周期および呼吸の周期などの生体情報に関連した圧力変動として出力される。なお、センサ特定部13は、心拍の周期(第1生体情報)として予め設定された範囲内の圧力および周期的な圧力変動を検出した圧力センサを、心拍に関連する圧力変化を検出可能な圧力センサと特定し(
図3の「A」参照)、一方、呼吸の周期(第2生体情報)として予め設定された範囲内の圧力および周期的な圧力変動を検出した圧力センサを、呼吸に関連する圧力変化を検出可能な圧力センサとして特定する(
図3の「B」参照)。
【0031】
なお、センサ特定部13によってアドレスが特定される圧力センサの数は、1つであってもよいし、複数であってもよい。センサ特定部13は、センサスキャン部21に対して、センサ信号を取得する圧力センサのアドレスを設定する。センサアレイ30に含まれるすべての圧力センサのアドレスを設定してもよいし、予め定められた数の圧力センサのアドレスを設定してもよい。センサ信号を取得する圧力センサの数を制限することにより、センサアレイ30に含まれるすべての圧力センサからのセンサ信号を常時取得し続ける場合に比べて、電力消費量を低減させることができる。
【0032】
(センサアレイ30の構成)
次に、センサアレイ30の構成について、
図2を用いて説明する。
図2は、複数の圧力センサが配列するセンサアレイ30の構成の一例を示す図である。センサアレイ30は、シート31〜33の3つのシートを含んでいる。
【0033】
シート32は、導電性を有する高分子材料などにより作成された、伸縮性を有するシートであり、圧力が加えられると抵抗値が変化する性質を有するシートである。シート32は、後述のシート31とシート33とによって挟まれるように配されている。
【0034】
シート31はV方向に平行に配設された電極35を有する。隣り合う電極35の間には高い絶縁性を有する材料が配されている。一方、シート33は、V方向とは異なるL方向(例えばV方向と垂直な方向)に平行に配設された電極36を備えている。そして、隣り合う電極36の間にも高い絶縁性を有する材料が配されている。それゆえ、シート31平面内、およびシート33平面内における電極間には絶縁されている。
【0035】
電極35および電極36との間には、ドライバ回路34から所定の電圧が印加されている。図示のように、シート31およびシート33によってシート32を挟んだ場合、電極35と電極36とがシート32を挟んで立体交差する。電極35と電極36との立体交差において、電極35と電極36との間に流れる電流値は、各立体交差におけるシート32に加わった圧力の大きさに応じて変化する。例えば、加わる圧力が周期的に変動する場合、電極35と電極36との間に流れる電流値も周期的に変動する。すなわち、
図2に示すように、電極35と電極36とをシート32を挟んで立体交差させることにより、各立体交差を、圧力(圧電)センサとして機能させることができる。
【0036】
なお、センサアレイ30は、
図2に示すようにシート31〜33を重畳させた層構造として構成するのではなく、導電性繊維が織り込まれた布を利用して構成してもよいし、導電性ゴムを利用して構成してもよい。
【0037】
センサアレイ30を利用することにより、複数の圧力センサを簡単に犬9に装着させることができる。よって、複数の圧力センサを犬9に装着させる煩わしさを回避し、生体情報測定装置1の利便性を向上させることができる。センサアレイ30を犬9に装着させるために、ハーネス形状および衣服形状などの装着具8を使用してもよい(
図12参照)。
【0038】
犬9にセンサアレイ30を装着させるのではなく、センサアレイ30を犬9の胸部および腹部が当接するマット、カーペット、および板などの一部または全体にセンサアレイ30を配してもよい。例えば、犬9が腹這いになったり寝ころんだりする場所に敷かれているカーペットにセンサアレイ30を配することにより、犬9が該カーペットの上で腹這いになったときにカーペットに該犬9の胸部および腹部などが当接する。犬9の胸部および腹部などが当接している位置の圧力センサによって該犬9の心拍に関連する圧力変動と、呼吸に関連する圧力変動とを検出することができる。ただし、犬9が自由に動く場合には、犬9の胸部および腹部がセンサアレイ30と当接した状態を維持することができないため、心拍および呼吸の長時間の測定は困難である。それゆえ、心拍および呼吸を長時間測定する場合には、犬9にセンサアレイ30を装着させることが望ましい。
【0039】
なお、人間にセンサアレイ30を適用する場合は、センサアレイ30を配した衣服および装具などを着用させて心拍および呼吸を測定してもよい。あるいはセンサアレイ30が配されたベッドなどの上に臥した状態で心拍および呼吸を測定してもよい。
【0040】
(センサアレイ30による心拍・呼吸に関連する圧力変動の検出)
続いて、センサアレイ30による心拍・呼吸に関連する圧力変動の検出について、具体例を挙げて、
図3および4を用いて説明する。
図3は、センサアレイ30において、心拍を測定可能なセンサ、および呼吸を測定可能なセンサとして特定されたセンサの位置の具体例を示す図である。
【0041】
図3の、L方向に10個、V方向に16個配列している四角は、センサアレイ30の各圧力センサを模式的に示している。すなわち、図中のL1V1、L2V1などの各四角は、電極35と電極36とがシート32を挟んで立体交差を形成することにより構成される各圧力センサに対応している。
【0042】
そして、
図3では、実際の犬9(2歳の雌のビーグル犬)に取り付けたセンサアレイ30において、心拍が測定可能な圧力センサおよび呼吸が測定可能な圧力センサの分布例を示している。センサ特定部13によって、心拍に関連する圧力変化を検出可能な圧力センサと特定された圧力センサを「A」と表し、一方、呼吸に関連する圧力変化を検出可能な圧力センサを「B」と表している。L2V11〜L2V14およびL3V11〜L3V12のアドレスに対応する圧力センサは、心拍に関連する圧力変化を検出可能な圧力センサであり、L2V9、L2V10、L3V9、L3V10、など多くの圧力センサが、呼吸に関連する圧力変化を検出可能な圧力センサである。なお、「A」および「B」などの文字が記入されていない、空の四角に対応する圧力センサからは、心拍および呼吸などに特有の周期的なセンサ信号が得られなかったことを示している。
【0043】
このように、心拍に相関の高いセンサ信号を出力し得る圧力センサと、呼吸に相関が高いセンサ信号を出力し得る圧力センサとは異なっている。そして、一般に、心拍に相関の高いセンサ信号を出力し得る圧力センサとして特定される圧力センサの分布は、狭い領域に制限される。センサ特定部13は、心拍を測定するために用いる圧力センサを、
図3において「A」が記入された圧力センサの中から特定し、一方、呼吸を測定するために用いる圧力センサを、
図3において「B」が記入された圧力センサの中から特定する。
【0044】
例えば、以下の(1)〜(3)の工程によって、心拍および呼吸を測定するために用いる圧力センサを特定することができる。(1)センサ信号解析部11が、圧力センサからのセンサ信号が示す圧力変動のピーク周波数とパワースペクトル密度を算出する。(2)センサ信号判定部12は、算出されたパワースペクトル密度のピークのピーク値が所定値より大きく、かつ該ピークの半値幅が所定の幅よりも狭い圧力センサがどれであるかを判定する。(3)センサ特定部13は、上記(2)における判定結果に基づいて、心拍および呼吸を測定するために用いる圧力センサのアドレスを特定する。
【0045】
なお、上記の(1)において、センサ信号解析部11が、受信したセンサ信号に対して閾値検出を行う場合には、該センサ信号の振幅を算出すればよい。この場合、センサ信号判定部12は、上記の(2)において、所定の振幅より大きい振幅のセンサ信号を出力している圧力センサがどれであるかを判定する。そして、(3)センサ特定部13は、最も大きい振幅のセンサ信号を出力している圧力センサを、心拍および呼吸を測定するために用いる圧力センサのアドレスを特定する。
【0046】
このように特定された圧力センサから取得したセンサ信号に基づいて、周期的な圧力変動をグラフに示した結果を
図4に示す。
図4の(a)は心拍を測定可能な圧力センサによって検出された圧力変化の様子を示す図であり、
図4の(b)は呼吸を測定可能な圧力センサによって検出された圧力変化の様子を示す図である。
【0047】
図4の(a)に示す例では、1分間に約60回の圧力変動(約1Hz)が測定されており、
図4の(b)に示す例では、1分間に約18回の圧力変動(約0.3Hz)が測定されている。なお、
図4の(a)および(b)において測定されている圧力変動はそれぞれ、他の測定方法(例えば、心拍測定は心電計、呼吸は目視による測定)によって測定された、心拍の周波数および呼吸の周波数と一致することが確認された。
【0048】
犬9の場合、人間よりも、姿勢の変化による心臓の位置の移動が大きい。生体情報測定装置1は、心拍を測定可能な圧力センサ、および呼吸を測定可能な圧力センサを特定するための処理を、定期的に繰り返す(例えば、10分間に1回)ため、心拍に関連する圧力変化を検出可能な圧力センサが変化しても、圧力センサの特定処理をやり直して、適切な圧力センサを用いて心拍および呼吸を測定し続けることができる。
【0049】
同一の圧力センサから出力されるセンサ信号から、心拍に関連する圧力変動を示す信号と呼吸に関連する圧力変動を示す信号とを分離する場合、双方の信号が混在している信号から分離するための処理(例えば、フィルタを用いた信号の分離処理)が必要となる。しかし、犬9の場合、心拍の周期と呼吸の周期とが状態変化により近い数値となり得るため、フィルタを用いた信号の分離処理が効果的にできない虞がある。
【0050】
一般に、1つの圧力センサを犬9に装着させて、該圧力センサから出力されるセンサ信号に、心拍に関連する圧力変動と呼吸に関連する圧力変動とが混在しているような場合、心拍に関連する圧力変動を、フィルタ処理によって分離することは困難である。なぜなら、呼吸による体動の大きさと心拍による体動の大きさとを比較した場合、呼吸による体動の大きさの方が、心拍による体動よりも大きいため、心拍に関連する圧力変動のS/N比がフィルタ処理によって低下する可能性が高いからである。
【0051】
生体情報測定装置1は、センサアレイ30に含まれる複数の圧力センサの中から、心拍を測定可能な圧力センサと、呼吸を測定可能な圧力センサとを特定し、それぞれの圧力センサから出力されるセンサ信号を取得することにより、S/N比を低下させるフィルタ処理による分離を行うことなく、心拍および呼吸を同時に測定することが可能である。
【0052】
(圧力センサを特定する処理)
続いて、生体情報測定装置1が、心拍および呼吸をそれぞれ測定可能な圧力センサを、センサアレイ30に含まれる圧力センサの中から特定する処理について、
図5を用いて説明する。
図5は、生体情報測定装置1が行う、センサ特定処理の流れの一例を示すフローチャートである。
【0053】
センサスキャン部21は、スキャンタイミング制御部40からの指示に従い、各圧力センサからのセンサ信号をスキャンして、一定時間分(例えば、5秒間)のセンサ信号を取得・蓄積する(S1)。例えば、スキャンタイミング制御部40は、生体情報測定装置1の主電源がONになったとき、およびその後10分おきに各圧力センサからのセンサ信号をスキャンするよう、センサスキャン部21に指示してもよい。
【0054】
センサスキャン部21が取得したセンサ信号は、センサ信号処理部22において、バンドパスフィルタ処理およびノイズ除去処理などが行われ、その後、センサ信号解析部11に送信される。
【0055】
センサ信号解析部11は、センサ信号処理部22から受信した、各圧力センサからのセンサ信号を解析し、ピーク周波数、およびスペクトル密度などを算出する(S2)。
【0056】
次に、センサ信号判定部12は、センサ信号解析部11が算出したピーク周波数、およびスペクトル密度を参照して、50Hz以下にピークを有するセンサ信号を出力している圧力センサが存在するか否かを判定する(S3、センサ信号判定ステップ)。なお、犬9が興奮して激しく動いているときには、呼吸の周期と心拍の周期とが互いに接近する可能性があるため、この判定は、犬9が落ち着いているときに行われることが望ましい。
【0057】
上記の条件を満たす圧力センサが存在しない場合(S3にてNO)、センサスキャン部21が、各圧力センサからのセンサ信号をスキャンするまで待機する。すなわち、50Hz以下のピークが検出可能な場合は、犬9が比較的落ち着いている状態であり、犬が落ち着いていない場合には、検出可能になるまで、待機することになる。犬が落ち着いている状態を待つことにより、センサアレイ30の複数の圧力センサの中から、確実に心拍および呼吸を測定可能な圧力センサを特定することができる。一方、上記の条件を満たす圧力センサが存在している場合(S3にてYES)、心拍に関連する(基づく)圧力変化を検出している圧力センサ、および呼吸に関連する(基づく)圧力変化を検出している圧力センサのアドレスを特定する(S4、センサ特定ステップ)。
【0058】
センサスキャン部21は、センサ特定部13が特定したアドレスに対応する圧力センサから出力されるセンサ信号の取得・蓄積を開始する(S5)。センサ信号処理部22は、取得されたセンサ信号のバンドパスフィルタ処理およびノイズ除去処理などを行い、処理済のセンサ信号を、例えば、外部機器(例えば、
図12に示す生体情報管理サーバ100および通信端末200など)に送信する(出力ステップ)。
【0059】
生体情報測定装置1は、心拍を測定可能な圧力センサ、および呼吸を測定可能な圧力センサを特定するための処理を定期的に繰り返すため、心拍に関連する圧力変化を検出可能な圧力センサが変化しても、圧力センサの特定処理をやり直して、適切な圧力センサを用いて心拍および呼吸を測定し続けることができる。また、生体情報測定装置1は、連続して心拍および呼吸を測定するために、センサアレイ30に含まれるすべての圧力センサからのセンサ信号を取得・蓄積するのではなく、特定されたアドレスに対応する圧力センサからのセンサ信号のみ取得する。それゆえ、心拍の周期および呼吸の周期などの生体情報の測定に要する消費電力量を低減させることができる。
【0060】
〔実施形態2〕
本発明の他の実施形態について、
図6〜
図7に基づいて説明すれば、以下のとおりである。なお、説明の便宜上、前記実施形態にて説明した部材と同じ機能を有する部材については、同じ符号を付記し、その説明を省略する。
【0061】
(生体情報測定装置1aの構成)
図6は、本発明の実施形態2に係る生体情報測定装置1aの概略構成の一例を示すブロック図である。図示の生体情報測定装置1aは、体動検知部41および体動解析部42をさらに備えている点で、
図1の生体情報測定装置1と異なっている。すなわち、生体情報測定装置1は、心拍を測定可能な圧力センサ、および呼吸を測定可能な圧力センサを特定するための処理を定期的に繰り返す構成であったが、生体情報測定装置1aは、犬9が所定の閾値を超える大きさの加速度を伴う体動を行った場合にも、心拍を測定可能な圧力センサ、および呼吸を測定可能な圧力センサを特定するための処理をやり直す構成である。
【0062】
体動検知部41は、犬9の体動(動き)を検知するセンサであり、例えば、加速度センサであってよい。体動検知部41は、センサアレイ30と同様に犬9に装着されており(
図12の各種処理回路7などに設置され得る)、犬9の体動を検知し、検知信号を体動解析部42に送信する。
【0063】
体動解析部42は、犬9の体動の大きさが所定の閾値を超えた場合に、センサスキャン部21に対して、センサアレイ30のスキャンを行うように指示する信号を出力する。体動検知部41が加速度センサである場合、犬9の体動の大きさの所定の閾値は、例えば、0点からの出力変動が±2Gなどと設定すればよい。ここで、1Gは重力加速度である。
【0064】
なお、犬9の行動性、気性、および装着具8によって固定されたセンサアレイ30の固定具合に応じて、この所定の閾値を低く(例えば、±1G)設定してもよいし、高く(例えば、±3G)設定してもよい。
【0065】
なお、犬9が興奮して激しく動いているときには、呼吸の周期と心拍の周期とが互いに接近する可能性がある。一方、犬9の体動が小さい、すなわち犬9が安静状態である場合、心拍の周期と呼吸の周期とが十分に離れている。それゆえ、圧力センサを特定する処理は、犬9が落ち着いているときに行われることが望ましい。そこで、体動検知部41によって、犬9が安静状態であることを検知した場合に、呼吸を測定可能な圧力センサ、および心拍を測定可能な圧力センサを特定してもよい。
【0066】
(犬9の体動を検知して、圧力センサの特定をやり直す処理)
生体情報測定装置1aが、犬9の体動を検知して、圧力センサの特定をやり直す処理の流れについて、
図7を用いて説明する。
図7は、生体情報測定装置1aが、犬9の体動を検出したことに基づいて、センサ特定をやり直す処理の流れの一例を示すフローチャートである。
【0067】
体動検知部41が体動を検知すると(S11)、体動解析部42は、検知された体動が所定の閾値を超える大きさの体動か否かを判定する(S12)。検知された体動が所定の閾値を超える大きさの体動であった場合(S12にてYES)、センサスキャン部21は、体動解析部42からの指示に従い、圧力センサの特定(
図5に示すセンサ特定処理)をやり直す(S13、センサ特定ステップ)。
【0068】
犬9の体動によって、装着させているセンサアレイ30の位置がずれる可能性がある。また、犬9が姿勢を変化させることによって、該犬9の心臓の位置が変わる可能性もある。それゆえ、犬9の体動を検知して、その体動が所定の閾値を超える大きさの体動であれば、心拍を測定可能な圧力センサ、および呼吸を測定可能な圧力センサを特定するための処理をやり直すことが望ましい。そこで、生体情報測定装置1aは、犬9の体動が検出されたタイミングで、圧力センサの特定をやり直す。これにより、犬9が自由に動くことを許容しつつ、心拍および呼吸の測定を安定的に継続することができる。
【0069】
〔実施形態3〕
本発明の他の実施形態について、
図8〜
図9に基づいて説明すれば、以下のとおりである。なお、説明の便宜上、前記実施形態にて説明した部材と同じ機能を有する部材については、同じ符号を付記し、その説明を省略する。
【0070】
(生体情報測定装置1bの構成)
図8は、本発明の実施形態3に係る生体情報測定装置1bの概略構成の一例を示すブロック図である。図示の生体情報測定装置1bは、生体情報算出部43およびセンサ状態評価部44をさらに備えている点で、
図1の生体情報測定装置1と異なっている。すなわち、生体情報測定装置1は、心拍を測定可能な圧力センサ、および呼吸を測定可能な圧力センサを特定するための処理を定期的に繰り返す構成であったが、生体情報測定装置1bは、センサ信号処理部22から送信される、特定の圧力センサからのセンサ信号に基づいて算出される、犬9の心拍の周期および呼吸の周期が所定の許容範囲からずれた場合にも、圧力センサの特定をやり直す構成である。すなわち、生体情報測定装置1bは、実際に測定されている心拍数および呼吸数を常に監視して、これらの測定結果が異常な値になったときに、圧力センサの特定をやり直す。
【0071】
生体情報算出部43は、心拍を測定可能な圧力センサとして特定された圧力センサからのセンサ信号、および呼吸を測定可能な圧力センサとして特定された圧力センサからのセンサ信号をセンサ信号処理部22から取得して、心拍の周期、および呼吸の周期を算出する。心拍の周期および呼吸の周期は、パワースペクトル密度をフーリエ変換することによって算出してもよい。または、所定の値より大きいピーク値のピークを検出し、該ピークが検出される周期に基づいて心拍の周期および呼吸の周期を算出してもよい。
【0072】
センサ状態評価部44は、生体情報算出部43が算出した心拍の周期、および呼吸の周期が所定の許容範囲からずれている場合に、センサスキャン部21に対して、センサアレイ30のスキャンを行うように指示する信号を出力する。ここで、所定の許容範囲とは、例えば、呼吸の周期として10回/分以上200回/分以下、心拍の周期として60回/分以上200回/分以下などと設定すればよい。なお、この所定の許容範囲は、犬9の状態に応じて、適宜、設定を変更可能であってもよい。例えば、一般的に犬9の呼吸の周期は、小型犬で20〜30回/分、大型犬で15回/分と言われている。
【0073】
(算出された生体情報を監視して、圧力センサの特定をやり直す処理)
生体情報測定装置1bが、算出された心拍の周期および呼吸の周期などの生体情報に基づいて、圧力センサの特定をやり直す処理の流れについて、
図9を用いて説明する。
図9は、生体情報測定装置1bが、生体情報測定装置1bが算出した生体情報に基づいて、センサ特定をやり直す処理の流れの一例を示すフローチャートである。
【0074】
生体情報算出部43は、生体情報算出部43からセンサ信号を取得して、心拍の周期および呼吸の周期等の生体情報を算出する(S21)。算出された生体情報が所定の許容範囲からずれている場合(S22にてNO)、センサスキャン部21は、生体情報算出部43からの指示に従い、圧力センサの特定(
図5に示すセンサ特定処理)をやり直す(S23、センサ特定ステップ)。
【0075】
このように、生体情報測定装置1bは、測定された生体情報を常に監視して、所定の許容範囲からずれた異常な値が測定された場合には、心拍を測定可能な圧力センサ、および呼吸を測定可能な圧力センサの特定をやり直す構成である。これにより、何らかの理由で、犬9の心臓の位置が変化した場合においても、正しい心拍および呼吸の測定を安定的に継続することができる。
【0076】
〔実施形態4〕
本発明の他の実施形態について、
図10〜
図11に基づいて説明すれば、以下のとおりである。なお、説明の便宜上、前記実施形態にて説明した部材と同じ機能を有する部材については、同じ符号を付記し、その説明を省略する。
【0077】
(生体情報測定装置1cの構成)
図10は、本発明の実施形態4に係る生体情報測定装置1cの概略構成の一例を示すブロック図である。図示の生体情報測定装置1cは、表示部45をさらに備えている点で、
図1の生体情報測定装置1と異なっている。すなわち、生体情報測定装置1cは、犬9の飼い主などのユーザがセンサアレイ30を犬9に装着させたときに、該センサアレイ30が適切に装着されているか否かをユーザに知らせるための表示部45を備えている。
【0078】
表示部45は、センサアレイ30と同様に犬9に装着されており(
図12の各種処理回路7などに設置され得る)、LEDのランプを点灯するものであってもよいし、液晶画面に文字などを表示するものであってもよい。なお、表示部45は、ユーザの通信端末200の表示部であってもよい。この場合、センサアレイ30が適切に装着されているか否かを示す情報を、各種処理回路7(送信装置)に含まれる無線通信の回路を用いて、ユーザの通信端末200へ送信する構成とすればよい。
【0079】
(センサアレイ30の取り付けの適否を通知する処理)
生体情報測定装置1cが、センサアレイ30が犬9に適切に装着されているか否かをユーザに知らせる処理の流れについて、
図11を用いて説明する。
図11は、生体情報測定装置1cが、センサアレイ30の取り付け状態の適否を通知する処理の流れの一例を示すフローチャートである。
【0080】
犬9にセンサアレイ30が装着され、生体情報測定装置1cの電源がONになると(S31)、生体情報測定装置1cは、
図5に示すようなセンサ特定処理を実行する(S32)。圧力センサを特定することができなかった場合(S33にてNO)、センサアレイ30の取り付けのやり直しをユーザに促す指示を表示部45に表示する(S35)。一方、圧力センサの特定が完了した場合(S33にてYES)には、その旨を表示部45に表示する。
【0081】
これにより、センサアレイ30を犬に取り付けた時点で、正しく装着できているか否かをユーザに知らせることができる。よって、心拍および呼吸の測定を着実に開始することができる。
【0082】
〔実施形態5〕
(生体情報管理システム300)
次に、生体情報測定装置1を適用した生体情報管理システム300について、
図12を用いて説明する。なお、生体情報測定装置1a〜1cを生体情報管理システム300に適用してもよい。
図12は、センサアレイ30を犬9に装着させて、犬9の健康状態を管理する生体情報管理システム300の構成例を示す図である。図示の生体情報管理システム300は、測定された犬9の心拍数(生体情報)および心拍の周期(生体情報)と、呼吸数(生体情報)および呼吸周期(生体情報)とを生体情報管理サーバ100にて管理する構成である。
【0083】
生体情報管理システム300は、犬9に装着させた生体情報測定装置1、生体情報管理サーバ100、および通信端末200を含み、これらが通信ネットワーク150を介して相互に通信可能に接続されている。ここで、通信端末200とは、携帯電話機、スマートフォン、タブレットなどの携帯機器であってもよいし、パーソナルコンピュータ(PC)であってもよい。通信端末200は、犬9の飼い主の所有する通信端末200であってもよいし、動物病院の医師などが所有する通信端末200であってもよい。
【0084】
図示の犬9には、衣服状の装着具8を装着させている。装着具8の、犬9の胸部に当接する位置にはセンサアレイ30が配され、一方、装着具8の、犬9の背中側に相当する位置には、各種処理回路7が配されている。各種処理回路7には、電池(二次電池など)および無線通信の回路(通信装置)などが含まれ得る。また、各種処理回路は、例えば、センサアレイ30に所定の電圧を印加するドライバ回路34、およびセンサ信号取得部20などを含んでいてもよい。すなわち、この装着具8によって、生体情報測定装置1を、犬に着せる衣服状の形状を有するウェラブルな形態の装置として実現することができる。
【0085】
なお、ここでは、犬9の心拍および呼吸に関連する圧力変化を同時に測定するために、センサアレイ30を犬9の胸部に当接する位置に配した例を示している。例えば、脈波(生体情報)および心拍など関連する圧力変化を測定する場合には、センサアレイ30を犬9の腋窩および肢など、血管に近い皮膚に当接する位置に配してもよい。また、筋肉などの収縮の周期(生体情報)を測定する場合には、センサアレイ30を背筋または大腿部などに当接する位置に配してもよい。
【0086】
または、体動を制約しないようにセンサアレイ30を犬9に装着させて、該犬9の姿勢および行動など(立っている、座っている、寝ている、餌を食べている、および尻尾を振っているなど)を検出してもよい。すなわち、生体情報測定装置1は、犬9の健康状態および習慣的行動などを検出することが可能である。
【0087】
センサアレイ30は、犬9の胸部から腹部にかけて当接する。犬9の胸部から腹部は、犬9の心臓の拍動、および呼吸における吸気および排気に伴う肺動に応じて、周期的に動いている。それゆえ、犬9の胸部から腹部にかけて当接するセンサアレイ30に含まれる複数の圧力センサのうち、いくつかの圧力センサは、犬9の心拍に関連した圧力変動を検出し、いくつかの圧力センサは、犬9の呼吸に関連した圧力変動を検出することができる。
【0088】
生体情報測定装置1によって測定された生体情報は、図示のように、無線通信によって(通信ネットワーク150を介して)、生体情報管理サーバ100および飼い主が所有する通信端末200へと送信されてもよい。また、生体情報測定装置1が犬9の姿勢および習慣的行動を測定した場合も、通信ネットワーク150を介して、生体情報管理サーバ100および飼い主が所有する通信端末200へと送信されてもよい。これにより、犬9と離れた場所の飼い主に、犬9の健康状態および行動を知らせることができる。
【0089】
なお、生体情報測定装置1の信号解析部10を、生体情報管理サーバ100および通信端末200などに配する構成であってもよい。この場合、生体情報管理サーバ100および通信端末200は、受信したセンサ信号を受信し、該センサ信号が出力された時刻(あるいは、該センサ信号を受信した時刻)とともに蓄積されてもよい。
【0090】
なお、犬9に装着させた生体情報測定装置1と通信端末200とが直接通信する構成であってもよい。例えば、犬9の生体情報を測定した結果を生体情報管理サーバ100にて記憶・管理する構成であってもよいし、生体情報管理サーバ100と複数の通信端末200とが通信可能な構成であってもよい。すなわち、生体情報管理サーバの代わりに、通信端末200が備える記憶部(図示せず)に犬9の生体情報を測定した結果を記憶・管理する構成であってもよい。
【0091】
なお、生体情報管理システム300に、複数の生体情報測定装置1および複数の通信端末200が含まれる構成であってもよい。生体情報管理システム300は、複数の犬9の生体情報を測定し、該測定した生体情報を各犬9について記憶・管理し、通信端末200に該生体情報を配信することができる。
【0092】
〔ソフトウェアによる実現例〕
生体情報測定装置1、1a、1b、1cの制御ブロック(特にセンサ信号解析部11、センサ信号判定部12、およびセンサ特定部13)は、集積回路(ICチップ)等に形成された論理回路(ハードウェア)によって実現してもよいし、CPU(Central Processing Unit)を用いてソフトウェアによって実現してもよい。
【0093】
後者の場合、生体情報測定装置1、1a、1b、1cは、各機能を実現するソフトウェアであるプログラムの命令を実行するCPU、上記プログラムおよび各種データがコンピュータ(またはCPU)で読み取り可能に記録されたROM(Read Only Memory)または記憶装置(これらを「記録媒体」と称する)、上記プログラムを展開するRAM(Random Access Memory)などを備えている。そして、コンピュータ(またはCPU)が上記プログラムを上記記録媒体から読み取って実行することにより、本発明の目的が達成される。上記記録媒体としては、「一時的でない有形の媒体」、例えば、テープ、ディスク、カード、半導体メモリ、プログラマブルな論理回路などを用いることができる。また、上記プログラムは、該プログラムを伝送可能な任意の伝送媒体(通信ネットワークおよび放送波など)を介して上記コンピュータに供給されてもよい。なお、本発明は、上記プログラムが電子的な伝送によって具現化された、搬送波に埋め込まれたデータ信号の形態でも実現され得る。
【0094】
〔まとめ〕
本発明の態様1に係る生体情報測定装置1、1a〜1cは、生体(犬9)に装着され、該生体の生体情報に関連した圧力を検知する複数のセンサ(センサアレイ30)と、上記複数のセンサから出力されるセンサ信号毎に、上記圧力の変動が所定の条件を満たすか否かを判定するセンサ信号判定部12と、上記センサ信号判定部によって、上記所定の条件を満たすと判定されたセンサ信号を出力したセンサの中から1または複数のセンサを特定するセンサ特定部13と、を備え、上記センサ特定部が特定したセンサから出力されるセンサ信号を、上記生体の上記生体情報に関連した圧力変動として出力する。
【0095】
上記の構成によれば、生体に装着され、該生体の生体情報に関連した圧力を検知する複数のセンサのうち、上記圧力の変動が所定の条件を満たすセンサ信号を出力するセンサを特定して、特定したセンサからのセンサ信号を、上記生体の上記生体情報に関連した圧力変動として出力する。これにより、複数のセンサのうち、生体の生体情報に関連した圧力変動を検知しているセンサを特定して、該特定されたセンサから出力されるセンサ信号を、該生体の生体情報に関連した状態を示す信号として出力することができる。よって、生体の姿勢および体動などによって、生体情報に関連する圧力変化を検出可能なセンサが変化した場合にも、適切なセンサを特定して生体情報を測定することができる。
【0096】
また、生体情報測定装置は、連続して生体情報を測定するために、全てのセンサからのセンサ信号を出力するのではなく、特定のセンサからのセンサ信号のみを出力する。それゆえ、長時間の測定に要する消費電力量を低減させることができる。
【0097】
本発明の態様2に係る生体情報測定装置は、上記態様1において、上記センサは、上記複数のセンサが配列してなるセンサアレイ30に含まれるセンサであってもよい。
【0098】
このように構成すれば、複数のセンサを簡単に生体に装着させることができる。よって、複数のセンサを生体に装着させる煩わしさを回避して、生体情報測定装置1の利便性を向上させることができる。なお、センサアレイを生体に装着させるために、ハーネス形状および衣服形状などの装着具などを使用してもよい。
【0099】
本発明の態様3に係る生体情報測定装置は、上記態様1または2において、上記センサ特定部は、上記センサ信号判定部によって、上記所定の条件を満たすと判定されたセンサ信号を出力したセンサの中から、上記生体の第1生体情報に関連する圧力を検知可能な1または複数の第1センサ、および上記生体の第2生体情報に関連する圧力を検知可能な1または複数の第2センサを特定し、上記第1センサから出力されるセンサ信号を、上記第1生体情報に関連した圧力変動として出力し、上記第2センサから出力されるセンサ信号を、上記第2生体情報に関連した圧力変動として出力する構成であってもよい。
【0100】
上記の構成によれば、上記所定の条件を満たすと判定されたセンサ信号を出力したセンサの中から、上記生体の第1生体情報に関連する圧力を検知可能な1または複数の第1センサ、および上記生体の第2生体情報に関連する圧力を検知可能な1または複数の第2センサを特定する。これにより、複数のセンサの中から、第1生体情報の測定に用いるセンサと、第2生体情報の測定に用いるセンサとを別々に特定し、それぞれのセンサから出力されるセンサ信号を取得することができる。すなわち、第1生体情報と第2生体情報とを同じセンサを用いて測定するのではなく、異なるセンサを用いて測定することができる。よって、S/N比を低下させることなく、第1生体情報および第2生体情報を同時に測定することができる。
【0101】
本発明の態様4に係る生体情報測定装置は、上記態様1から3のいずれかにおいて、上記生体の体動を検知する体動検知部41をさらに備え、上記体動検知部が検知した体動の大きさが所定の閾値を超えた場合に、上記センサ信号判定部は、上記複数のセンサから出力されるセンサ信号毎に、上記圧力の変動が所定の条件を満たすか否かを判定し、または該判定をやり直し、上記センサ特定部は、上記所定の条件を満たすと判定されたセンサ信号を出力したセンサの中から1または複数のセンサを特定してもよい。
【0102】
生体の体動によって、装着させている複数のセンサの位置がずれる可能性がある。また、生体が姿勢を変化させることによって、該生体の心臓の位置が変わる可能性もある。それゆえ、生体の体動を検知して、その体動が所定の閾値を超える大きさの体動であれば、その体動の検知をトリガとして、生体情報を測定するために用いるセンサの特定を行うか、あるいは既に行ったセンサの特定をやり直すことが望ましい。
【0103】
上記の構成によれば、生体情報測定装置は、所定の閾値を超える体動が検知された場合に、センサの特定を行ったり、センサの特定をやり直したりする。これにより、生体が自由に動くことを許容しつつ、適切なタイミングでセンサの特定をやり直すことができる。よって、生体情報の測定を安定的に継続することができる。
【0104】
本発明の態様5に係る生体情報測定装置は、上記態様1から3のいずれかにおいて、上記生体の体動を検知する体動検知部をさらに備え、上記センサ特定部は、上記体動検知部が検知した体動の大きさが所定の閾値以下である場合に、上記センサ信号判定部は、上記複数のセンサから出力されるセンサ信号毎に、上記圧力の変動が所定の条件を満たすか否かを判定し、または該判定をやり直し、上記センサ特定部は、上記所定の条件を満たすと判定されたセンサ信号を出力したセンサの中から1または複数のセンサを特定してもよい。
【0105】
上記の構成によれば、生体情報測定装置は、所定の閾値以下の体動が検知された場合に、センサの特定を行う。これにより、生体が安静状態にあり、適切なセンサを確実に特定が可能であるときに、センサの特定を行うことができる。よって、生体情報の測定を安定的に継続することができる。また、体動が所定の閾値を超えているときにセンサの特定を既に行っていた場合でも、所定の閾値以下の体動が検知されたことをトリガとして、センサの特定をやり直すことによって、適切なセンサをより確実に特定することができる。
【0106】
本発明の態様6に係る生体情報測定装置は、上記態様1から3のいずれかにおいて、上記センサ特定部が特定したセンサから出力されるセンサ信号に基づいて、上記生体情報を算出する生体情報算出部43をさらに備え、上記生体情報算出部が算出した生体情報が、該生体情報として許容される所定の許容範囲内ではない場合に、上記センサ信号判定部は、上記複数のセンサから出力されるセンサ信号毎に、上記圧力の変動が所定の条件を満たすか否かの判定をやり直し、上記センサ特定部は、上記所定の条件を満たすと判定されたセンサ信号を出力したセンサの中から1または複数のセンサを特定してもよい。
【0107】
上記の構成によれば、算出された生体情報が、所定の許容範囲内ではない場合、センサの特定を行う。これにより、生体の生体情報が正常に測定されていない場合に、適切にセンサの特定をやり直すことができる。よって、測定される生体情報の信頼性を維持することができる。
【0108】
本発明の態様7に係る生体情報測定装置は、上記態様1から6のいずれかにおいて、所定の時間間隔で、上記センサ信号判定部が、上記複数のセンサから出力されるセンサ信号毎に、上記生体情報を測定するための所定の条件を満たすか否かを、判定するタイミングを制御するタイミング制御部(スキャンタイミング制御部40)をさらに備えていてもよい。
【0109】
所定の時間間隔で、センサの特定を行うことにより、常に適切なセンサを用いて生体情報を測定することができる。
【0110】
本発明の態様8に係る生体情報管理システム300は、上記態様1から7のいずれかに記載の生体情報測定装置1、1a〜1cと、上記複数のセンサ(センサアレイ30)から出力されるセンサ信号を外部機器(生体情報管理サーバ100、通信端末200)に送信する送信装置(各種処理回路7)と、を備えている。上記の構成によれば、上記態様1から7と同様の効果を奏する。
【0111】
本発明の態様9に係る生体情報測定装置1、1a〜1cの制御方法は、生体(犬9)に装着され、該生体の生体情報に関連した圧力を検知する複数のセンサ(センサアレイ30)を備える生体情報測定装置の制御方法であって、上記複数のセンサから出力されるセンサ信号毎に、上記生体情報を測定するための所定の条件を満たすか否かを判定するセンサ信号判定ステップ(S3)と、上記センサ信号判定ステップにおいて、上記所定の条件を満たすと判定されたセンサ信号を出力したセンサの中から1または複数のセンサを特定するセンサ特定ステップ(S4、S13、S23)と、上記センサ特定ステップにおいて特定したセンサから出力されるセンサ信号を、上記生体の上記生体情報に関連した圧力として出力する出力ステップ、とを含んでいる。上記の構成によれば、上記態様1と同様の効果を奏する。
【0112】
本発明の各態様に係る生体情報測定装置は、コンピュータによって実現してもよく、この場合には、コンピュータを上記生体情報測定装置が備える各部(ソフトウェア要素)として動作させることにより上記生体情報測定装置をコンピュータにて実現させる生体情報測定装置の制御プログラム、およびそれを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体も、本発明の範疇に入る。
【0113】
本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。さらに、各実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を組み合わせることにより、新しい技術的特徴を形成することができる。