特開2017-93724(P2017-93724A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2017-93724(P2017-93724A)
(43)【公開日】2017年6月1日
(54)【発明の名称】微粒化した液体の放出装置
(51)【国際特許分類】
   A61L 9/14 20060101AFI20170428BHJP
【FI】
   A61L9/14
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
【全頁数】22
(21)【出願番号】特願2015-227420(P2015-227420)
(22)【出願日】2015年11月20日
(71)【出願人】
【識別番号】596171384
【氏名又は名称】株式会社 徳武製作所
(71)【出願人】
【識別番号】594095349
【氏名又は名称】株式会社クボタ
(74)【代理人】
【識別番号】100086221
【弁理士】
【氏名又は名称】矢野 裕也
(72)【発明者】
【氏名】徳武 利洋
(72)【発明者】
【氏名】田代 哲
(72)【発明者】
【氏名】久保田 強
【テーマコード(参考)】
4C080
【Fターム(参考)】
4C080AA03
4C080BB02
4C080BB03
4C080BB05
4C080BB06
4C080CC01
4C080HH03
4C080JJ01
4C080KK06
4C080LL04
4C080LL06
4C080LL07
4C080MM02
4C080MM07
4C080MM09
4C080MM14
4C080MM15
4C080MM31
4C080NN01
4C080NN23
4C080NN24
4C080NN26
4C080QQ11
4C080QQ20
(57)【要約】      (修正有)
【課題】シンプルで消費電力も著しく少なく、液体を微粒化して放出した時に、放出した付近に留まらせておくことのできる、微粒化した液体の放出装置の提供。
【解決手段】上部に開口2を有する容器1内に、マイナスの高電圧が印加される針電極3を設け、針電極3の下方に第一の円筒電極4、上方に第二の円筒電極5を設け、第一の円筒電極4の下方に液体又はゲル状薬剤8の収納部9を設け、開口2の先に、ディフューザーを設け、針電極3と第一の円筒電極4間で、薬剤8の表面へと向かう下向流のイオン風を生じさせ、針電極3と第二の円筒電極5間で、薬剤8の表面から開口2へと向かう上向流のイオン風を生じさせ、前記下向流のイオン風を利用して、薬剤8を蒸散、微粒化させると共にマイナスの電荷を帯びさせ、前記上向流のイオン風を利用して上昇させディフューザーへと送り、減速、拡散させながら、外部放出させる微粒化した液体の放出装置。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
上部に開口を有する容器内に;
針の両端が上下方向に向いた、マイナスの高電圧が印加される針電極を設け;
前記針電極の下方に第一の円筒電極を設け;
前記針電極の上方に、先端に前記開口を備えた第二の円筒電極を設け;
前記容器の側面に吸込み口を開口させ;
前記吸込み口から前記第一の円筒電極に通じるダクトを設け;
前記ダクト内に前記針電極の下部を露出させ;
前記第一の円筒電極の下方に液体又はゲル状薬剤の収納部を設け;
さらに前記開口の先に、ディフューザーを設け;
前記ダクト内において、前記針電極の下端と前記第一の円筒電極との間でコロナ放電がなされて、前記吸込み口から前記第一の円筒電極を通過し前記液体又はゲル状薬剤の収納部に収納されている液体又はゲル状薬剤の表面へと向かう下向流のイオン風を生じさせ、かつ;
前記針電極の上端と前記第二の円筒電極との間でコロナ放電がなされて、前記液体又はゲル状薬剤の収納部に収納されている液体又はゲル状薬剤の表面から前記第二の円筒電極を通過し前記開口へと向かう上向流のイオン風を生じさせ;
前記下向流のイオン風を利用して、前記液体又はゲル状薬剤の収納部に収納されている液体、或いは前記液体又はゲル状薬剤収納部に収納されているゲル状薬剤中に取り込まれている水溶性薬剤、を蒸散させ微粒化させると共にこの微粒化した液体にマイナスの電荷を帯びさせ、;
前記上向流のイオン風を利用して、この微粒化しマイナスの電荷を帯びた液体を上昇させて前記第二の円筒電極先端の前記開口を通じて前記ディフューザーへと送り;
前記開口から前記ディフューザーへと送られた、微粒化しマイナスの電荷を帯びた液体を、前記ディフューザーにより、減速かつ拡散させながら、外部へ放出させる;
ことを特徴とする、
微粒化した液体の放出装置。
【請求項2】
前記第一の円筒電極の直径が、前記第二の円筒電極の直径より大きいものである、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記液体が、水又は化粧水である、請求項1又は2に記載の装置。
【請求項4】
前記液体が、芳香成分、除菌成分、及び消臭成分から選ばれた1種以上の成分を含むものである、請求項1乃至3のいずれかに記載の装置。
【請求項5】
前記ゲル状薬剤が、ゲル化剤に水溶性薬剤を取り込んでいるものである、請求項1乃至4のいずれかに記載の装置。
【請求項6】
前記ゲル化剤が、高吸水性樹脂、カラギーナン、ローカストビーンガム、寒天、ゼラチン、グアーガム、ジェランガム、ペクチン、及びキサンタンガムよりなる群から選ばれた1種以上のものである、請求項5に記載の装置。
【請求項7】
前記ゲル状薬剤が、高吸水性樹脂に水溶性薬剤を染み込ませてこれに取り込まれているビーズ状のものである、請求項5に記載の装置。
【請求項8】
前記水溶性薬剤が、芳香成分、除菌成分、及び消臭成分から選ばれた1種以上の成分を含むものである、請求項5乃至7のいずれかに記載の装置に関するものである。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、微粒化した液体の放出装置に関し、詳しくは微粒化した液体にマイナスの電荷を帯びさせ放出する装置に関する。
【背景技術】
【0002】
消臭剤、芳香剤、除菌剤などを含む液体を微粒化して放出する装置が知られている。
例えば、消臭剤液が供給されるタンクと、消臭剤液を微粒化させるためのアトマイザと、該タンク内において微粒化された消臭剤液を所定の空気に対して噴霧するノズルを備えた消臭システムが提案されている(特許文献1参照)。
【0003】
しかしながら、この消臭システムは、「制御盤40からの命令に基づいてエアポンプ30が稼動し、タンク2内の消臭剤液3はアトマイザ25によって微粒化される。こうして微粒化された消臭剤液3は、搬送管35によって搬送されてノズル36から噴霧される。従って、ノズル36から所定の空気に対して消臭剤液3を噴霧することにより、その空気を消臭することができる。」(特許文献1の段落0020参照)ものとされており、全体としてかなり大掛かりなシステムとなっている。
【0004】
また、アロマテラピー用のエッセンシャルオイルを含んだ水を貯留するタンク、前記タンク内に空気を吸引導入するファン羽根、前記ファン羽根を回転させる電気モータなど、を備えた電気芳香拡散機が提案されている(特許文献2参照)。
さらに、超音波振動子を配置した超音波式の芳香拡散機も提案されている(例えば、特許文献3参照)。
しかしながら、これらの芳香拡散機は、ファンなどのモータ類や超音波発生器などを用いる必要がある。
【0005】
このように従来から提案されている装置は、かなり大掛かりなシステムであったり、或いは、ファンなどのモータ類や超音波発生器などを用いる必要があることから、消費電力もある程度必要とされており、よりシンプルで消費電力も著しく少なく、しかも液体を微粒化して放出する能力が高いことから、消臭能力や芳香拡散能力や除菌能力などにも優れたものとすることができる、液体を微粒化して放出する装置が要望されている。
【0006】
本発明者らは、上記従来の問題点を解消しうる装置として、液体を微粒化して放出する装置を開発し、出願している(特願2015−105543号)。
上記装置は、ファンなどのモータ類や超音波発生器などを一切用いる必要がなく、よりシンプルで消費電力も著しく少なく、しかも液体を微粒化して放出する能力が高いことから、消臭能力や芳香拡散能力や除菌能力などにも優れたものとすることができるものであった。
【0007】
上記装置は、液体を微粒化して放出する能力に優れており、霧化、蒸散させられた微粒化物が層流として出てくることから、これを遠くへ飛ばす力があって、部屋などの隅々まで行き渡らせることができるものの、いい意味で放出する勢いが良すぎていて、霧化、蒸散させられた微粒化物を放出した付近に留まらせることは想定されていなかった。
このため、例えば、人の顔(顔肌)など近くに向けて放出したときに、特に就寝時などに、顔の付近に長い間漂わせておくことが困難であり、美顔、美肌などの用途に対しては相応しいものとは言えなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特許第3495124号公報
【特許文献2】特開2004−147799号公報
【特許文献3】実用新案登録第3157629号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、上記従来の問題点を解消し、ファンなどのモータ類や超音波発生器などを一切用いる必要がなく、よりシンプルで消費電力も著しく少なく、しかも液体を微粒化して放出したときに、これを放出した付近に留まらせておくことのできる、微粒化した液体の放出装置を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、以下の(1)〜(8)に関するものである。
(1):上部に開口を有する容器内に;
針の両端が上下方向に向いた、マイナスの高電圧が印加される針電極を設け;
前記針電極の下方に第一の円筒電極を設け;
前記針電極の上方に、先端に前記開口を備えた第二の円筒電極を設け;
前記容器の側面に吸込み口を開口させ;
前記吸込み口から前記第一の円筒電極に通じるダクトを設け;
前記ダクト内に前記針電極の下部を露出させ;
前記第一の円筒電極の下方に液体又はゲル状薬剤の収納部を設け;
さらに前記開口の先に、ディフューザーを設け;
前記ダクト内において、前記針電極の下端と前記第一の円筒電極との間でコロナ放電がなされて、前記吸込み口から前記第一の円筒電極を通過し前記液体又はゲル状薬剤の収納部に収納されている液体又はゲル状薬剤の表面へと向かう下向流のイオン風を生じさせ、かつ;
前記針電極の上端と前記第二の円筒電極との間でコロナ放電がなされて、前記液体又はゲル状薬剤の収納部に収納されている液体又はゲル状薬剤の表面から前記第二の円筒電極を通過し前記開口へと向かう上向流のイオン風を生じさせ;
前記下向流のイオン風を利用して、前記液体又はゲル状薬剤の収納部に収納されている液体、或いは前記液体又はゲル状薬剤収納部に収納されているゲル状薬剤中に取り込まれている水溶性薬剤、を蒸散させ微粒化させると共にこの微粒化した液体にマイナスの電荷を帯びさせ、;
前記上向流のイオン風を利用して、この微粒化しマイナスの電荷を帯びた液体を上昇させて前記第二の円筒電極先端の前記開口を通じて前記ディフューザーへと送り;
前記開口から前記ディフューザーへと送られた、微粒化しマイナスの電荷を帯びた液体を、前記ディフューザーにより、減速かつ拡散させながら、外部へ放出させる;
ことを特徴とする、
微粒化した液体の放出装置に関するものである。


(2):前記第一の円筒電極の直径が、前記第二の円筒電極の直径より大きいものである、前記(1)に記載の装置に関するものである。

(3):前記液体が、水又は化粧水である、前記(1)又は前記(2)に記載の装置に関するものである。

(4):前記液体が、芳香成分、除菌成分、及び消臭成分から選ばれた1種以上の成分を含むものである、前記(1)乃至前記(3)のいずれかに記載の装置に関するものである。

(5):前記ゲル状薬剤が、ゲル化剤に水溶性薬剤を取り込んでいるものである、前記(1)乃至前記(4)に記載の装置に関するものである。

(6):前記ゲル化剤が、高吸水性樹脂、カラギーナン、ローカストビーンガム、寒天、ゼラチン、グアーガム、ジェランガム、ペクチン、及びキサンタンガムよりなる群から選ばれた1種以上のものである、前記(5)に記載の装置に関するものである。

(7):前記ゲル状薬剤が、高吸水性樹脂に水溶性薬剤を染み込ませてこれに取り込まれているビーズ状のものである、前記(5)に記載の装置に関するものである。

(8):前記水溶性薬剤が、芳香成分、除菌成分、及び消臭成分から選ばれた1種以上の成分を含むものである、前記(5)乃至前記(7)のいずれかに記載の装置に関するものである。
【発明の効果】
【0011】
本発明に係る微粒化した液体の放出装置(以下、単に「本発明の装置」と称することがある。)によれば、ファンなどのモータ類や超音波発生器などを一切用いる必要がなく、よりシンプルで消費電力も著しく少ない。
また、本発明の装置によれば、液体を微粒化して放出したときに、これを放出した付近に長く留まらせておくことができる。
しかも、本発明の装置によれば、これらの効果を奏すると共に、微粒化した液体にマイナスの電荷を帯びさせ放出する装置が提供される。
【0012】
本発明の装置によれば、微粒化した液体にマイナスの電荷を帯びさせ、空気中などの空間に放出することができる。
放出される微粒化した液体(液滴)は、マイナスに帯電しており、放出された後は、プラスに帯電している場所へと向かう。
一般的な室内においては、人、衣服、壁紙、カーテン等はプラスに帯電しやすくなっている。
従って、本発明の装置により放出された、マイナスの電荷を帯びた微粒化した液体(液滴)は、プラスに帯電している人、衣服、壁紙、カーテン等へと向かうことになる。
このため、本発明の装置によれば、微粒化した液体(液滴)を人の顔などに向けて放出したときに、顔の付近など狭い範囲に長い間漂わせておくことができ、例えば液体として水や化粧水などを用いることにより、顔肌などを保湿したり、整えたり、滑らかにすることができる。
本発明の装置は、就寝時のように寝ている間などにも、顔の脇に置いておくだけで、顔肌などを保湿したり、整えたり、滑らかにすることができ、美肌、美顔器として好適に用いられる。
従って、本発明の装置は、美顔、美肌などの用途に対して、極めて相応しいものとなっている。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明に係る装置の一実施形態を示す正面からみた一部切り欠き説明図である。
図2】本発明に係る装置の他の実施形態を示す正面からみた一部切り欠き説明図である。
図3】本発明に係る装置のさらに他の実施形態を示す斜視説明図である。
図4】本発明に係る装置における微粒化の原理を示す説明図である。
図5】本発明に係る装置におけるディフューザーを除く部分の一実施形態を示す正面からみた説明図である。
図6】本発明に係る装置におけるディフューザーを除く部分の一実施形態を示す背面からみた説明図である。
図7】本発明に係る装置におけるディフューザーを除く部分の一実施形態を示す平面からみた説明図である。
図8】本発明に係る装置におけるディフューザーを除く部分の一実施形態を示す底面からみた説明図である。
図9】本発明に係る装置におけるディフューザーを除く部分の一実施形態を示す右側面からみた説明図である。
図10】本発明に係る装置におけるディフューザーを除く部分の一実施形態を示す左側面からみた説明図である。
図11図10の断面説明図である。
図12】本発明に係る装置におけるディフューザーを除く部分の一実施形態を示す斜視図である。
図13図12を別の角度からみた斜視図である。
図14図13の分解説明図である。
図15】本発明に係る装置におけるディフューザーを除く部分を、これを構成する部品に分解したときの、吸込み口付近の部品(中間部外容器)の一例を示す斜視説明図である。
図16図15に示す部品を別の角度からみた斜視説明図である。
図17】本発明に係る装置におけるディフューザーの一実施形態を示す正面からみた説明図である。
図18】本発明に係る装置におけるディフューザーの一実施形態を示す説明図であって、上段は平面からみた説明図であり、下段は正面からみた説明図である。
図19】本発明に係る装置におけるディフューザーの一実施形態を示す説明図であって、上段は平面からみた説明図であり、下段は正面からみた説明図である。
図20】本発明に係る装置におけるディフューザーの一実施形態を示す説明図であって、上段は平面からみた説明図であり、下段は正面からみた説明図である。
図21】本発明に係る装置におけるディフューザーの一実施形態を示す説明図であって、上段は平面からみた説明図であり、下段は正面からみた説明図である。
図22】本発明に係る装置におけるディフューザーの一実施形態を示す説明図であって、上段は平面からみた説明図であり、下段は正面からみた説明図である。
図23】ハンドモイスチャー用のアタッチメントの一例を示す斜視説明図である。
図24】ハンドモイスチャー用のアタッチメントを先端に取付けた、本発明に係る装置の一例を示す、斜め上方から見た斜視説明図である。
図25】ハンドモイスチャー用のアタッチメントを先端に取付けた、本発明に係る装置の一例を示す、斜め下方から見た斜視説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明は、微粒化した液体の放出装置(即ち、前記液体又はゲル状薬剤の収納部に収納されている液体、或いは前記液体又はゲル状薬剤収納部に収納されているゲル状薬剤中に取り込まれている水溶性薬剤、を微粒化させて放出する装置)に関し、
上部に開口を有する容器内に;
針の両端が上下方向に向いた、マイナスの高電圧が印加される針電極を設け;
前記針電極の下方に第一の円筒電極を設け;
前記針電極の上方に、先端に前記開口を備えた第二の円筒電極を設け;
前記容器の側面に吸込み口を開口させ;
前記吸込み口から前記第一の円筒電極に通じるダクトを設け;
前記ダクト内に前記針電極の下部を露出させ;
前記第一の円筒電極の下方に液体又はゲル状薬剤の収納部を設け;
さらに前記開口の先に、ディフューザーを設け;
前記ダクト内において、前記針電極の下端と前記第一の円筒電極との間でコロナ放電がなされて、前記吸込み口から前記第一の円筒電極を通過し前記液体又はゲル状薬剤の収納部に収納されている液体又はゲル状薬剤の表面へと向かう下向流のイオン風を生じさせ、かつ;
前記針電極の上端と前記第二の円筒電極との間でコロナ放電がなされて、前記液体又はゲル状薬剤の収納部に収納されている液体又はゲル状薬剤の表面から前記第二の円筒電極を通過し前記開口へと向かう上向流のイオン風を生じさせ;
前記下向流のイオン風を利用して、前記液体又はゲル状薬剤の収納部に収納されている液体、或いは前記液体又はゲル状薬剤収納部に収納されているゲル状薬剤中に取り込まれている水溶性薬剤、を蒸散させ微粒化させると共にこの微粒化した液体にマイナスの電荷を帯びさせ、;
前記上向流のイオン風を利用して、この微粒化しマイナスの電荷を帯びた液体を上昇させて前記第二の円筒電極先端の前記開口を通じて前記ディフューザーへと送り;
前記開口から前記ディフューザーへと送られた、微粒化しマイナスの電荷を帯びた液体を、前記ディフューザーにより、減速かつ拡散させながら、外部へ放出させる;
ことを特徴とするものである。
【0015】
以下、本発明に係る、微粒化した液体の放出装置の一実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。
図1は、本発明に係る装置の一実施形態を示す正面からみた一部切り欠き説明図であり、図2は、本発明に係る装置の他の実施形態を示す正面からみた一部切り欠き説明図であり、図3は、本発明に係る装置のさらに他の実施形態を示す斜視説明図である。
図1〜3については、ディフューザー10の後方(一番出口側;図では上方)に、顔の形状に合わせ顔全体を覆うことのできるボウル状(半球状、椀状、鉢状)のフード10Aを備えたものが示されている。
【0016】
本発明に係る、微粒化した液体の放出装置は、先に出願した、いわば微粒化放出装置に関する特願2015−105543号に係る装置(本発明では、微粒化した液体の放出装置本体Aと称している)における放出口(開口)の先に、さらにディフューザーを備えたことを特徴とするものである。
なお、図1、2では、ディフューザー10より前の部分にあたる、図の下方にある、微粒化した液体の放出装置本体Aに関しては、容器1と開口2以外は、内部構造は省略して記載してある。また、図3では、ディフューザー10の下方(出口と反対側)には、微粒化した液体の放出装置本体Aの外部構造のみを示してあり、容器1と開口2も含めた詳しい内部構造は省略されている。従って、省略されて記載されていたりする内部構造については、詳しくは図4以降の図面が参照される。
【0017】
そこで、本発明に係る装置における「微粒化の原理」を図4に基づいて説明する。
図4は、本発明に係る装置における微粒化の原理を示す説明図である。図1中の矢印は、イオン風の流れを示している。
【0018】
また、図5は、本発明に係る装置におけるディフューザーを除く部分の一実施形態を示す、正面からみた説明図であり、図6は、これを背面からみた説明図であり、図7は、平面からみた説明図であり、図8は、底面からみた説明図であり、図9は、右側面からみた説明図であり、図10は、左側面からみた説明図である。図11は、図10の断面説明図である。
次に、図12は、本発明に係る装置におけるディフューザーを除く部分の一実施形態を示す斜視図であり、図13は、図12を別の角度からみた斜視図である。また、図14は、図13の分解説明図である。
さらに、図15は、本発明に係る装置におけるディフューザーを除く部分を、これを構成する部品に分解したときの、吸込み口付近の部品(中間部外容器)の一例を示す斜視説明図であり、図16は、図15に示す部品を別の角度からみた斜視説明図である。
これら図5図16は、微粒化した液体の放出装置本体Aの内部構造を示すものといえる。
但し、図面は、いずれも本発明の装置を示す概略図である。従って、製品化に際しては、必要に応じて、適宜より実用的な設計をなすことができる。
【0019】
図中、符号1は容器であり、この容器1の上部に開口2が備えられている。
本実施形態において、容器1は管状を、より詳しくは円筒管状をなしているが、本発明の精神を逸脱しない限り、これに限定されるものではなく、例えば角筒型の管状のものとすることもできる。
【0020】
このような容器1内に、針の両端が上下方向に向いた針電極3が設けられている。
この針電極3には、高電圧、特にマイナスの高電圧が印加される。正放電よりも負放電のほうが高い流速のイオン風を得やすいからである。但し、必要に応じて、プラスの高電圧を印加できるようにしておくこともできる。
針電極3にマイナスの高電圧が印加されることで、針電極3の尖った先端(上端31と下端32のそれぞれ)からコロナ放電を生じさせることができる。
なお、針電極3に高電圧を印加するために、図示されていないが、別途高圧電源装置が備えられ、針電極3に接続されている。
【0021】
なお、高圧電源装置からは、−4,000V〜−15,000Vという、マイナスの高電圧の直流電流が印加される。但し、上記したように、必要に応じて、プラスの高電圧の直流電流を、特に4,000V〜15,000Vという、プラスの高電圧の直流電流を印加できるようにしておくこともできる。
【0022】
針電極3の下方には、詳しくは針電極3の下端32の下方には容器1の底面11よりも上方に、第一の円筒電極4(下側の円筒電極4)が設けられている。
【0023】
また、針電極3の上方には、詳しくは針電極3の上端31の上方であって、開口2よりも下方には、先端に開口2を備えた第二の円筒電極5(上側の円筒電極5)が設けられている。
【0024】
このように本発明の装置では、針電極3を、上下の円筒電極、即ち第一の円筒電極4(下側の円筒電極4)と第二の円筒電極5(上側の円筒電極5)とに共通のものとし、無駄を防いでいる。
通常、マイナスの高電圧(−4,000〜−15,000V)を印加する場合、針電極3側をプラス側(陽極)に、第一の円筒電極4(下側の円筒電極4)と第二の円筒電極5(上側の円筒電極5)側をマイナス側(陰極)とされる。
【0025】
このようにして針電極3と、第一の円筒電極4(下側の円筒電極4)、第二の円筒電極5(上側の円筒電極5)との間に、高電圧の直流電流を印加することにより、針電極3と第一の円筒電極4(下側の円筒電極4)、第二の円筒電極5(上側の円筒電極5)との間でコロナ放電を行い、針電極3側から第一の円筒電極4(下側の円筒電極4)側へ向かってと、針電極3側から第二の円筒電極5(上側の円筒電極5)側へ向かって、それぞれイオン風が流れるようにしている。
【0026】
ここで第一の円筒電極4(下側の円筒電極4)と第二の円筒電極5(上側の円筒電極5)とは、円筒電極という点では同様であるが、図示するように、その直径や筒の長さが異なったものとされている。特に、第一の円筒電極4(下側の円筒電極4)の直径を、第二の円筒電極5(上側の円筒電極5)の直径より大きいものとしておくことが好ましく、これにより、第一の円筒電極4(下側の円筒電極4)から放出した電子(e-)を、液体表面により広角的に(広い範囲に)当てることができる。但し、必要に応じて、その直径や筒の長さを同様のものとすることも可能である。
【0027】
即ち、まず、第一の円筒電極4(下側の円筒電極4)は、放出した電子(e-)を、後記する、液体貯留部9に貯留されている液体の表面に広角的に当てて蒸散させ微粒化させる反応を促進するため、直径を比較的大きく、筒の長さも比較的短くしている。
一方、第二の円筒電極5(上側の円筒電極5)は、上記のようにして微粒化した液体(液滴)について、確実にマイナスの電荷を帯びさせ、かつ、これを層流で噴出させるため、直径を第一の円筒電極4(下側の円筒電極4)より小さくして、直径を比較的小さいものとし、しかも筒の長さは第一の円筒電極4(下側の円筒電極4)より長くして、筒の長さを比較的長いものとしている。
【0028】
針電極3の下方と上方には、第一の円筒電極4(下側の円筒電極4)と第二の円筒電極5(上側の円筒電極5)が、それぞれ円筒形状に設けられ、接地されて、それぞれ針電極3とこれら二つの電極間でコロナ放電がなされて、針電極3と第一の円筒電極4(下側の円筒電極4)との間では下向流(下降流)のイオン風を、針電極3と第二の円筒電極5(上側の円筒電極5)との間では上向流(上昇流)のイオン風を、それぞれ生じさせている。いずれも円筒電極としていることにより、強いイオン風を生じさせることができる。
なお、コロナ放電は、火花が散るような放電ではなく、また、運転中、万一電極に触れたとしても、静電気程度のものであり、安全性についての心配はない。必要に応じて、適宜、既知の安全回路を組み込むことができる。
【0029】
さらに、容器1の側面12には、吸込み口6が開口している。
この吸込み口6付近の形状、構造は、特に図4図5図11図12図13図14図15図16に詳しく示されている。
【0030】
容器1の側面12に開けられた吸込み口6から、第一の円筒電極4(下側の円筒電極4)に通じるダクト7が設けられ、一つの流路を形成している。
これにより、管状の容器1の内側に、ダクト7を出現せしめて、いわゆる二重管構造としている。
即ち、吸込み口6より内側のダクト7を通じて外気を取り込むようにすると共に、このダクト7の外側と管状の容器1の内側との間に、もう一つの流路を形成せしめている。
【0031】
このダクト7内には、針電極3の下端32を含む下部だけを露出させており、針電極3の上端31を含む上部は、このダクト7内には露出させられていない。
このため、上記のように二つの流路が形成されていることと相俟って、一つの針電極3だけで、その上下に存在する、第二の円筒電極5(上側の円筒電極5)と第一の円筒電極4(下側の円筒電極4)との間のコロナ放電に対応し得るものとなっている。
【0032】
さらに、第一の円筒電極4(下側の円筒電極4)の下方には、液体又はゲル状薬剤8を入れた、液体又はゲル状薬剤の収納部9が設けられている。
【0033】
液体又はゲル状薬剤の収納部9に収納(貯留)される液体としては、水又は化粧水を挙げることができる。この場合には、美顔器や美肌器、保湿器などとして用いることができる。ここで水としては、水道水、純水などを用いればよい。また、化粧水としては、皮膚を保湿し、整え、滑らかにしたりする機能を有する液状化粧品であればよく、特に制限はない。化粧水に含まれる成分としては、水の他に、例えば、アルコール、グリセリン、プラチナ、銀、ヒアルロン酸、コラーゲン、カテキンなどが挙げられる。
従って、例えば、水にナノプラチナ(粒子)やカテキンなどを配合した、ナノプラチナ(粒子)水やナノプラチナ・カテキン配合水などは、化粧水と言えるが、次に述べる芳香成分、除菌成分、消臭成分を含む液体とも考えられることから、芳香成分、除菌成分、及び消臭成分から選ばれた1種以上の成分を含む液体とも言えるものである。
【0034】
水又は化粧水の他に、液体又はゲル状薬剤の収納部9に収納される液体としては、芳香成分、除菌成分、及び消臭成分から選ばれた1種以上の成分を含む液体を挙げることができる。この場合には、これら成分の拡散器として用いることができる。
これら芳香成分、除菌成分、及び消臭成分としては、市販されているものなど、公知のものを用いることができる。
例えば、芳香成分としては、植物に由来する天然香料、精油(エッセンシャルオイル)や、これらの他に合成香料を含むアロマオイルなどを挙げることができる。
【0035】
また、液体又はゲル状薬剤の収納部9には、上記液体の他に、ゲル状薬剤が収納される。
ゲル状薬剤は、ゲル化剤と水溶性薬剤とを組合せたものであって、ゲル化剤に水溶性薬剤を取り込むことにより、ゲル化剤に水溶性薬剤が取り込まれている形にして用いられるものである。
このゲル状薬剤としては、例えばゲル化剤に水溶性薬剤を取り込んだものを密封したものが用いられるが、これに限られることなく、ゲル化剤と水溶性薬剤が別々に配置されたものを開封して、ゲル化剤に水溶性薬剤を取り込むようにしたものであってもよい。
【0036】
ここで、ゲル化剤としては、高吸水性樹脂、カラギーナン、ローカストビーンガム、寒天、ゼラチン、グアーガム、ジェランガム、ペクチン、キサンタンガムなどを挙げることができ、本発明においては、これらのうちの1種を単独で、或いは、これらの2種以上を組合せて用いることができる。
【0037】
このうち高吸水性樹脂(Super AbsorbentPolymer;略称 SAP)は、高吸水性ポリマー或いは高吸水性高分子などとも呼ばれ、多量の水を吸水してゲル化し、吸水した水を保持する機能を有する高分子材料である。
この高吸水性樹脂(高吸水性ポリマー)としては、ポリアクリル酸系樹脂などの合成ポリマー系のものと;デンプン系、セルロース系などの天然物由来系のものと;が挙げられ、本発明においては、これらのいずれを用いることができる。
【0038】
高吸水性樹脂のうち、ポリアクリル酸系樹脂、なかでもポリアクリル酸ナトリウムなどのポリアクリル酸塩系樹脂は、非常に親水性が高く、さらに網目構造に架橋し、3次元に架橋した分子構造を有していることから、高い吸水性・保水性を持つゲルとなっている(自重の数百倍から約千倍までの吸水力・保水力がある)ので、本発明において好ましく用いられる。但し、ポリアクリル酸塩系樹脂は、吸水力・保水力が高いことから、一旦吸収した水などは、多少の圧力をかけてもほとんど放出しないという特質がある。
【0039】
ゲル状薬剤は、上記した如きゲル化剤に水溶性薬剤を取り込んでいるものである。
上記した如きゲル化剤に水溶性薬剤を取り込んでいるゲル状薬剤とする態様としては、特に制限はない。
例えば、ゲル化剤として、高吸水性樹脂を用いた場合には、高吸水性樹脂に水溶性薬剤を染み込ませるなどして取り込んだ後に、ビーズ状に膨らませることで、「高吸水性樹脂に水溶性薬剤を染み込ませてこれに取り込まれているビーズ状のゲル状薬剤」を得ることができる。また、ビーズ状の他、粉状、短冊状などの各種形状のゲル状薬剤を得ることもできる。
このように、ゲル化剤として、高吸水性樹脂を用いたゲル状薬剤は、本来、ゲル状薬剤中に染み込ませるなどして、これに取り込まれている水溶性薬剤を少しずつ放出することができるものである。
【0040】
本発明に係る装置によれば、コロナ放電により発生した前記下向流のイオン風を利用して、前記液体又はゲル状薬剤の収納部9に収納されている液体、或いは前記液体又はゲル状薬剤収納部9に収納されているゲル状薬剤中に取り込まれている水溶性薬剤、を霧化、蒸散させ微粒化させて微粒化物とし、さらに、前記上向流(上昇流)のイオン風を利用して、この微粒化物を上昇させて前記第二の円筒電極5先端の前記放出口から外部へ放出させることから、前記液体又はゲル状薬剤の収納部9に収納されている液体、或いは前記液体又はゲル状薬剤収納部9に収納されているゲル状薬剤中に取り込まれている水溶性薬剤(芳香成分、除菌成分、消臭成分)の放出(拡散)速度を速めることができる。従って、これを消臭装置や芳香拡散装置や除菌装置などとした場合に、消臭能力や芳香拡散能力や除菌能力などに優れたものとなる。
さらに、本発明に係る装置によれば、前記液体又はゲル状薬剤の収納部9に収納されている液体、或いは前記液体又はゲル状薬剤収納部9に収納されているゲル状薬剤中に取り込まれている水溶性薬剤(芳香成分、除菌成分、消臭成分)の放出(拡散)速度を自由に変更したりすることができる。
【0041】
また、例えば、ゲル化剤として、カラギーナン、ローカストビーンガム、寒天、ゼラチン、グアーガム、ジェランガム、ペクチン、キサンタンガムなどを用いた場合には、これらは水溶性薬剤と一緒にするとこれを吸収し、取り込んでゲル化することから、これらを混合することにより、このようなゲル化剤に、水溶性薬剤を取り込むことができる。
【0042】
ここで、水溶性薬剤は、芳香成分、除菌成分、及び消臭成分から選ばれた1種以上の成分を含むものである。
従って、ゲル状薬剤中には、芳香成分、除菌成分、及び消臭成分から選ばれた1種以上の成分を含む水溶性薬剤が取り込まれている。
【0043】
それ故、この液体又はゲル状薬剤の収納部9には、水や化粧水などの液体や、ゲル化剤に、芳香成分、除菌成分、及び消臭成分から選ばれた1種以上の成分を含む水溶性薬剤を取り込んでいるゲル状薬剤、が収納される。
【0044】
これら芳香成分、除菌成分、及び消臭成分としては、市販されているものなど、公知のものを用いることができる。
ここで、芳香成分としては、例えば植物に由来する天然香料、精油(エッセンシャルオイル)や、これらの他に合成香料を含むアロマオイルなどを挙げることができる。
また、除菌成分としては、例えば二酸化塩素、次亜塩素などを挙げることができる。
さらに、消臭成分としては、例えば重曹、クエン酸、カテキン、白金、植物系抽出液などを挙げることができる。
【0045】
本発明に係る微粒化した液体にマイナスの電荷を帯びさせ放出する装置は、図11図13図14などに示したように、これを幾つかの部品に分けて作製し、分解可能なものとしておくことができる。
【0046】
図11は、本発明に係る装置におけるディフューザーを除く部分の一実施形態を示す、左側面からみた説明図(図10)の断面説明図であると共に、分解されたときの構成部品をも示す図でもある。
次に、図12は、本発明に係る装置におけるディフューザーを除く部分の一実施形態を示す斜視図であり、図13は、図12を別の角度からみた斜視図である。また、図14は、図13の分解説明図である。
さらに、図15は、本発明に係る装置におけるディフューザーを除く部分を、これを構成する部品に分解したときの、吸込み口付近の部品(中間部外容器)の一例を示す斜視説明図であり、図16は、図15に示す部品を別の角度からみた斜視説明図である。
【0047】
本発明の装置は、上から順に、第二の円筒電極5(上側の円筒電極5)、上部外容器13、吸込み口6が開口している中間部外容器14、及び下部外容器15と;下部外容器15内に収容されている内容器16;に分けられている。この内容器16は、前記した液体又はゲル状薬剤の収納部9を構成しているものである。
【0048】
図示してはいないが、液体又はゲル状薬剤の収納部9において、ゲル状薬剤は、カートリッジ式のもの(カートリッジカップ)とし、これを下部容器15内の液体又はゲル状薬剤の収納部9に収納・装着して用いることができる。
なお、カートリッジ式のもの(カートリッジカップ)の場合、使用時には、カートリッジ式(カートリッジカップ)のゲル状薬剤の表面に貼られている封鎖部材(シール部材)を除去して、ゲル状薬剤表面を露出させる。
【0049】
なお、上記カートリッジカップを複数、例えば2連のものとすることができ、この場合、ゲル状薬剤の種類や用途を異なるものとすることができる。
具体的には例えば、2連タイプとした場合には、朝夕などで、ゲル状薬剤中に取り込まれている水溶性薬剤、例えば芳香成分の種類を換えることが、1連のものよりも容易となる。
【0050】
また、前記したように、この液体又はゲル状薬剤の収納部9に収納されているゲル状薬剤は、前記ゲル化剤に、前記水溶性薬剤を、取り込んでいるものである。
【0051】
なお、内容器16の上部には、第一の円筒電極4(下側の円筒電極4)が備えられている。
また、針電極3は、吸込み口6が開口している中間部外容器14の針電極取付け部17に上下方向を向いて取り付けられており、針電極3の上端31は、上部外容器13内に存在せしめられ、針電極3の下端32は、吸込み口6が開口している中間部外容器14内に存在せしめられるようになっている。
【0052】
本発明の装置においては、ダクト7内において、針電極3の下端32と第一の円筒電極4(下側の円筒電極4)との間でコロナ放電がなされて、吸込み口6から第一の円筒電極4(下側の円筒電極4)を通過し液体又はゲル状薬剤の収納部9に収納されている液体又はゲル状薬剤の表面へと向かう下向流(下降流)のイオン風を生じさせる。
【0053】
一方、本発明に係る装置においては、ダクト7外において、針電極3の上端と第二の円筒電極5(上側の円筒電極5)との間でコロナ放電がなされて、液体又はゲル状薬剤の収納部9に収納されている液体又はゲル状薬剤の表面から第二の円筒電極5(上側の円筒電極5)を通過し放出口2へと向かう上向流(上昇流)のイオン風を生じさせる。
【0054】
そして、本発明の装置においては、コロナ放電により発生した上記下向流(下降流)のイオン風を利用して、液体又はゲル状薬剤の収納部9に収納されている液体、或いは液体又はゲル状薬剤収納部9に収納されているゲル状薬剤中に取り込まれている水溶性薬剤、を霧化、蒸散させ微粒化させると共に、この微粒化した液体にマイナスの電荷を帯びさせる。
即ち、コロナ放電により発生した上記下向流(下降流)のイオン風を、液体又はゲル状薬剤の収納部9に収納されている液体、或いは液体又はゲル状薬剤収納部9に収納されているゲル状薬剤中に取り込まれている水溶性薬剤に当てて、これを蒸散させ微粒化させると共に、この微粒化した液体にマイナスの電荷を帯びさせる。
【0055】
次いで、コロナ放電により発生した上記上向流(上昇流)のイオン風を利用して、この微粒化しマイナスの電荷を帯びた液体を上昇させて、第二の円筒電極5(上側の円筒電極5)先端の開口2へと移動させる。
【0056】
このときの微粒化しマイナスの電荷を帯びた液体は、いわば層流をなしており、そのままこれを放出させた場合、遠くへは飛ぶ(放出される)ものの、いい意味で放出させる勢いが良すぎていて、放出した付近に留まらせることは難しかった。
【0057】
そこで本発明に係る装置においては、さらにこの開口2の先(後ろ側・出口側)に、ディフューザー(diffuser;拡散、散布する器具)10を設け、このディフューザー10により、微粒化しマイナスの電荷を帯びた液体は、減速かつ拡散させられ、いわば層流状態から乱流状態へと変化(遷移)させられる。
このディフューザー10の採用によって、装置の100mm程度上方の流速を落とすことが可能となり、この結果、微粒化した液体(液滴)を放出したときに、顔の付近など狭い範囲に長い間漂わせておくことができる。
【0058】
即ち、本発明に係る装置は、前記上向流のイオン風を利用して、微粒化しマイナスの電荷を帯びた液体を上昇させて前記第二の円筒電極5先端の前記開口2を通じて前記ディフューザー10へと送り、前記開口から前記ディフューザー10へと送られた、微粒化しマイナスの電荷を帯びた液体を、前記ディフューザー10により、減速かつ拡散させながら、いわば層流状態から乱流状態へと変化(遷移)させ、外部へ放出させるものである。
【0059】
本発明に係る装置におけるディフューザー10は、開口2から送られてくる(排出・放出されてくる)、微粒化しマイナスの電荷を帯びた液体を、減速かつ拡散させながら、外部へ放出させる機能を有するものである。例えば、空調用などに用いられているディフューザー(空調用吹き出し口)を用途に合わせて修正して用いることができる。
【0060】
このディフューザー10として、具体的には例えば、多層コーン型ディフューザー、メッシュ状ディフューザー、羽根型ディフューザーなどを挙げることができる。
【0061】
ここで多層コーン型ディフューザーとは、空調用吹き出し口として広く用いられている形状のディフューザーであって、図17図18の下段に示すように、コーン型、つまり錐型をなし、しかも多層であるから、吹き出し口が複数あるディフューザーを指している。
図17図18では、いずれも略ドーナツ型をした同軸の吹き出し口が複数(それぞれ2箇所と4箇所)あるディフューザーを示しているが、これに限定されるものではない。
なお、多層コーン型ディフューザーの全体形状としては、丸型の略ドーナツ型のものであってもよいし、角型のものであってもよい。
【0062】
次に、メッシュ状ディフューザーとは、図19に示すように、メッシュ状、つまり網目状の吹き出し口を有するディフューザーを指している。網目の程度は特に限定されない。
【0063】
また、プロペラ型ディフューザーとは、図20図22に示すように、内部にプロペラ(羽根)を有するディフューザーを指している。プロペラは、少なくとも2本以上あればよい。また、プロペラには角度をつけておいてもよい。さらに、プロペラは回転するようにしたものであってもよい。
【0064】
本発明に係る装置においては、このディフューザーにより、微粒化しマイナスの電荷を帯びた液体を、減速かつ拡散させながら、外部へ放出させるものであるから、上記のような多層コーン型ディフューザー、メッシュ状ディフューザー、羽根型ディフューザーであり、しかも図17図22に示すように、内部の流路が拡開するように構成されている。
【0065】
上記したように、本発明に係る装置においては、このディフューザーにより、微粒化しマイナスの電荷を帯びた液体を、減速かつ拡散させながら、外部へ放出させるものであるから、必要に応じて、純粋なディフューザーではなく、簡易ディフューザーとでもいうような「邪魔板」のようなものを、拡開する流路内に設置したものであってもよい。
【0066】
このようにして、微粒化した液体にマイナスの電荷を帯びさせ、第二の円筒電極5(上側の円筒電極5)先端の開口2から放出させた後、この開口から放出される、微粒化しマイナスの電荷を帯びた液体を、ディフューザー10により、減速かつ拡散させながら、外部へ放出させる。
【0067】
本発明に係る装置においては、微粒化した液体(液滴)を人の顔などに向けて放出できるように、ディフューザー10の後方(一番出口側)に、ディフューザー10を覆う、フード(覆い)10Aを備えたものとすることができる。
【0068】
フード10Aとしては、図1に示すように、先端が横方向に曲げられたもの(例えばエルボウ状に曲げられたもの)や、図2図3に示すように、顔の形状に合わせ、少なくとも顔の大半(好ましくは、顔全体)を覆うことのできる、例えば、ボウル状(半球状、椀状、鉢状)のものが挙げられる。
なお、必要に応じて、これらフードを取り替えて取付けられるように、アタッチメント(付属品)として構成しておくこともできる。
フード10Aの材質としては、特に限定されないが、マイナスに帯電し易い材質のもの(例えば、金属製など)が好ましい。
【0069】
図1に示すように、先端が、例えばエルボウ状に曲げられたフード10Aを備えたものとしておくと、この先端を顔の付近に向けておくことにより、微粒化した液体(液滴)を放出したときに、顔の付近など狭い範囲に長い間漂わせておくことができる。
【0070】
本発明に係る装置においては、図1に示すように、先端が、例えばエルボウ状に曲げられたフード10Aを備えたものとしておくことにより、微粒化した液体(液滴)を人の顔などに向けて放出したときに、顔の付近など狭い範囲に長い間漂わせておくことができることから、美顔器、美肌器などとして用いる場合にも、必ずしも顔の形状に合わせ顔全体を覆うことのできるような、ボウル状(半球状、椀状、鉢状)のフードを備える必要はない。
【0071】
しかし、図2図3に示すようにディフューザー10の後方(一番出口側)に、顔の形状に合わせ顔全体を覆うことのできるボウル状(半球状、椀状、鉢状)のフード10Aを備えることにより、より美顔、美肌効果を強めることができる。
前記したように、図3は、本発明に係る装置のさらに他の実施形態を示す斜視説明図であって、ディフューザー10の後方(一番出口側;図では上方)に、顔の形状に合わせ顔全体を覆うことのできるボウル状(半球状、椀状、鉢状)のフード10Aを備えたものの一例を示す斜視説明図である。
このように顔の形状に合わせ顔全体を覆うことのできる、ボウル状(半球状、椀状、鉢状)のフード10Aを備えたものとすることにより、顔肌などに向けて放出・噴霧させる美顔器、美肌器などとして用いることができる。
【0072】
上記のように、本発明に係る装置においては、微粒化した液体(液滴)を人の顔などに向けて放出できるように、ディフューザー10の後方(一番出口側)に、ディフューザー10を覆う、フード(覆い)10Aを備えたものとすることができるが、さらに、図23図24図25に示すように、このフード(覆い)10Aを装置の下側付近まで延設し、この先に、手(片手又は両手)を差し込むことのできる空間10Bを設けて、ハンドモイスチャー用のものとすることもできる。
図23は、このようなハンドモイスチャー用のアタッチメントの一例を示す斜視説明図である。また、図24は、このハンドモイスチャー用のアタッチメントを、微粒化した液体の放出装置本体Aの先端(上端)に取付けた、本発明に係る装置の一例を示す、斜め上方から見た斜視説明図であり、図25は、これを斜め下方から見た斜視説明図である。
なお、図23図25に示すハンドモイスチャー用のアタッチメントは、あくまで典型的な一例を示すものであり、これと同様の効果を奏することができるものであれば、この形状、構造に限定されるものではない。
この場合、手(片手又は両手)を差し込むことのできる空間10Bから、微粒化した液体(液滴)をゆっくりと放出させ、この空間に長い間滞留させることができることから、例えば液体として保湿成分などを加えたものを用いることにより、この空間に差し込んだ手を保湿したり、整えたり、滑らかにしたりすることができる。
【0073】
さらに、本発明においては、必要に応じて、別途、温熱化手段を設けて、霧化、蒸散させられた液体(ミスト)を温めることもでき、この場合には、美顔用・美肌用スチーマーや美肌用ハンドスチーマーなどとして用いることができる。
【0074】
以上の構成による本発明の装置によれば、ファンなどのモータ類や超音波発生器などを一切用いる必要がなく、よりシンプルで消費電力も著しく少なく、しかも液体を微粒化して放出したときに、これを放出した付近に留まらせておくことができる。
このため、本発明の装置によれば、微粒化した液体(液滴)を人の顔などに向けて放出したときに、顔の付近など狭い範囲に長い間漂わせておくことができ、例えば液体として水や化粧水などを用いることにより、顔肌などを保湿したり、整えたり、滑らかにすることができる。
【0075】
また、本発明の装置によれば、顔を覆うフードを備えたものとして、そのフードの中に顔を入れておくばかりでなく、顔に向けて曲げられた先端を有するものとすることにより、就寝時のように寝ている間などにも、顔の脇に置いておくだけで、顔肌などを保湿したり、整えたり、滑らかにすることができ、美肌、美顔器として好適に用いられる。
【0076】
さらに、上記した本発明に係る微粒化した液体にマイナスの電荷を帯びさせ放出する装置を、加湿空気清浄装置と組合せて、微粒化した液体にマイナスの電荷を帯びさせ放出する機能と加湿空気清浄機能とを備えたものとすることができる。
ここで加湿空気清浄装置としては、市販されているものなど、公知のものを用いることができ、特に限定されない。
このように、微粒化した液体にマイナスの電荷を帯びさせ放出する装置と加湿空気清浄装置とを備えたものとした場合、両装置を一緒に運転させても、或いは、それぞれ別々に運転させてもよく、季節や時間など様々な条件に応じて、適宜選定することができる。
【0077】
以上、本発明につき好適な形態例を挙げて種々説明してきたが、本発明はこの形態例に限定されるものではなく、本発明の精神を逸脱しない範囲内で多くの改変を施し得るのは勿諭のことである。
【産業上の利用可能性】
【0078】
ここで本発明に係る微粒化した液体にマイナスの電荷を帯びさせ放出する装置を、例えば芳香成分を放出させる装置(芳香拡散装置)に適用した場合、ファンなどのモータ類や超音波発生器などを一切用いる必要がなく、よりシンプルで消費電力も著しく少なくて効率が良い上に、人に芳香を与える効果をより強くすることができることから、アロマテラピーをはじめ、認知症の予防など、幅広い分野で利用することが期待される。
【符号の説明】
【0079】
1 容器
2 開口
3 針電極
4 第一の円筒電極(下側の円筒電極)
5 第二の円筒電極(上側の円筒電極)
6 吸込み口
7 ダクト
8 液体又はゲル状薬剤
9 液体又はゲル状薬剤の収納部
10 ディフューザー
10A フード
11 容器1の底面
12 容器1の側面
13 上部外容器
14 中間部外容器
15 下部外容器
16 内容器
17 針電極取付け部
31 針電極の上端
32 針電極の下端
A 微粒化した液体の放出装置本体
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
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図15
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図17
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図20
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図22
図23
図24
図25