特開2017-93823(P2017-93823A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2017-93823(P2017-93823A)
(43)【公開日】2017年6月1日
(54)【発明の名称】傷痕修復用シート
(51)【国際特許分類】
   A61F 13/00 20060101AFI20170428BHJP
   A61F 13/02 20060101ALI20170428BHJP
【FI】
   A61F13/00 305
   A61F13/02 310M
   A61F13/02 310R
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2015-229324(P2015-229324)
(22)【出願日】2015年11月25日
(71)【出願人】
【識別番号】515327100
【氏名又は名称】ギネマム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100137338
【弁理士】
【氏名又は名称】辻田 朋子
(72)【発明者】
【氏名】久保田 秀一
(57)【要約】      (修正有)
【課題】細長く形成された傷痕に、適した剥離し難い傷痕修復用シートを提供する。
【解決手段】皮膚の傷痕部位を修復する傷痕修復用シートであって、帯状に形成されたシート本体1を備え、前記シート本体1は、前記傷痕部位に当接される当接面1aと、この当接面1aと反対側の外表面1bと、を有し、前記当接面1aには、前記シート本体1の長さ方向に対して交差する方向に延びる溝部11が設けられていることを特徴とする構成となっている。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
皮膚の傷痕部位を修復する傷痕修復用シートであって、帯状に形成されたシート本体を備え、前記シート本体は、前記傷痕部位に当接される当接面と、この当接面と反対側の外表面と、を有し、
前記当接面には、前記シート本体の長さ方向に対して交差する方向に延びる溝部が設けられていることを特徴とする、傷痕修復用シート。
【請求項2】
前記当接面は、前記溝部によって区画されていることを特徴とする、請求項1に記載の傷痕修復用シート。
【請求項3】
前記外表面には、前記シート本体の長さ方向に延びる隆起部が設けられており、
前記溝部は、前記隆起部の反対側に設けられていることを特徴とする、請求項1又は請求項2に記載の傷痕修復用シート。
【請求項4】
前記シート本体の両端には、固定用平面が設けられ、
この固定用平面は、前記隆起部より肉薄に設定されていることを特徴とする、請求項3に記載の傷痕修復用シート。
【請求項5】
前記固定用平面と前記皮膚とを固定する固定部材をさらに備えることを特徴とする、請求項4に記載の傷痕修復用シート。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、帝王切開、Laparoscopy等の手術、火傷、外傷等の創傷部位に形成される瘢痕・ケロイドを予防し修復することができる傷痕修復用シートに関する。
【背景技術】
【0002】
帝王切開、laparoscopy手術は近年増加傾向を示している。手術で損傷を受けた皮膚は、その損傷部の組織がコラーゲンを産生し再生することにより皮膚の修復が行われる。しかしながら、この修復の際、損傷部が過剰にコラーゲンを産生する事により皮膚の異常な盛り上がりを生じる事が知られている(肥厚性瘢痕・ケロイド)。その原因は未だ特定されていない。瘢痕・ケロイドは、一旦形成されると自然に消えることは殆んどないばかりか痛みや皮膚の引きつりを伴う事も多い。特に腹部は、瘢痕・ケロイドの後発部位であり、その発生の予防及び修復することが求められていた。
また、火傷やその他の外傷等の損傷を受けた皮膚においても、同様に瘢痕・ケロイドが形成されるため、これらを予防し修復することが求められていた。
【0003】
このような瘢痕・ケロイドの予防及び修復する方法の一つに、傷痕部位を圧迫、密閉する方法がある。この方法では、シリコーンゲルシートやシリコーンゴムシート等を傷痕箇所に貼付することにより、傷痕箇所を圧迫して平坦化させることができる。
【0004】
従来、このように傷痕を解消する様々な傷痕修復用シートが提案されている。
例えば、特許文献1には、「シリコーンゴムシートの患部当接面は平坦に形成されており、該患部当接面が患部に当接した際に外側に位置する面には縦方向および/または横方向に多数の溝部が形成されており、該外側に面する面の表面が該溝部によって区画されている」傷痕修復用シートが示されている。
【0005】
この傷痕修復用シートは、患部当接面の反対側の表面には溝部(及び薄肉部)が設けられ、これらの溝部によって区画されている。この溝部及び薄肉部は、切断予定部となるほか、この傷痕修復用シートを円弧状の傷痕に貼着する場合には、容易屈曲部になることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第4413500号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1に記載の傷痕修復用シートは、患部当接面の反対側の表面に、溝部が設けられているため、シートが剥離しやすいという問題があった。すなわち、患部当接面の反対側の表面には、溝部の凹凸形状が形成されており、この凹凸形状が衣服等との摩擦や引っ掛かりによって容易に剥離してしまう。
【0008】
また、特許文献1に記載の傷痕修復用シートは、患部当接面の全面が皮膚に当接されているため、皮膚の伸縮やねじれによって、剥離しやすいという問題があった。特に、帝王切開の手術痕のように細長く形成された傷痕に使用する場合には、傷痕修復用シートの患部当接面の全面が、皮膚の伸縮やねじれに合わせて十分に変形することができないため容易に剥離してしまう。このような傷痕修復用シートにおいては、シートが傷痕箇所に密着(密閉)する必要があるため、剥離することを抑制する必要がある。
【0009】
本発明は、かかる実情に鑑み、細長く形成された傷痕に適した剥離し難い傷痕修復用シートを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するため、本発明に係る傷痕修復用シートは、皮膚の傷痕部位を修復する傷痕修復用シートであって、帯状に形成されたシート本体を備え、前記シート本体は、前記傷痕部位に当接される当接面と、この当接面と反対側の外表面と、を有し、前記当接面には、前記シート本体の長さ方向に対して交差する方向に延びる溝部が設けられていることを特徴とする。
【0011】
このように、シート本体に溝部を設けたことにより、皮膚の動きに対するシート本体のズレを、この溝部が吸収できる構造になっている。そのため、シート本体が創傷部位から剥離してしまうことを防止することができる。
また、このように溝部を当接面に設けたことにより、外表面に凹凸形状が表出しない。そのため、凹凸形状が服等との摩擦や引っ掛かりによって剥離してしまうことを防止することができる。
【0012】
本発明の好ましい形態によれば、前記当接面は、前記溝部によって区画されていることを特徴とする。
このように当接面は、溝部によって区画されていることにより、皮膚にねじれや張力が生じた場合でも、シート本体が容易に剥離してしまうことを抑制することができる。
【0013】
本発明の好ましい形態によれば、前記外表面には、前記シート本体の長さ方向に延びる隆起部が設けられており、前記溝部は、前記隆起部の反対側に設けられていることを特徴とする。
このように、溝部と隆起部とが別の面に形成されていることにより、隆起部を大きく設けることができ、シート本体が皮膚を押圧する圧力(圧迫力)を高く設定することができる。
【0014】
本発明の好ましい形態によれば、前記シート本体の両端には、固定用平面が設けられ、この固定用平面は、前記隆起部より肉薄に設定されていることを特徴とする。
このように、シート本体の両端に肉薄な固定用平面を設けることにより、シート本体の両端が容易に剥離してしまうことを抑制することができると共にテープ等での固定が容易となる。
【0015】
本発明の好ましい形態によれば、前記固定用平面と前記皮膚とを固定する固定部材をさらに備えることを特徴とする。
このように、固定用平面に固定部材を設けることにより、シート本体が容易に剥離してしまうことを抑制することができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明は、細長く形成された傷痕に適した剥離し難い傷痕修復用シートを提供することを課題とする。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の実施形態1に係る傷痕修復用シートの斜視図である。
図2】本発明の実施形態1に係る傷痕修復用シートであり、図1のX―X線縦断面図である。
図3】本発明の実施形態1に係る傷痕修復用シートの底面図である。
図4】本発明の実施形態1に係る傷痕修復用シートの固定用平面に固定部材を取付けた様子を示す平面図である。
図5】本発明の実施形態1に係る傷痕修復用シートを皮膚に貼り付けた様子を示す側面図である。
図6】本発明の実施形態2に係る傷痕修復用シートの斜視図である。
図7】本発明の実施形態2に係る傷痕修復用シートのであり、図6のXI―XI線縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明を図面に示した好ましい実施形態1又は実施形態2について詳細に説明する。本発明の技術的範囲は、添付図面に示した実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された範囲内において、適宜変更が可能である。
【0019】
<実施形態1>
本発明の実施形態1に係る傷痕修復用シートAは、図1及び図2に示すように、帯状に形成されたシート本体1を備え、このシート本体1は、傷痕部位に当接される当接面1aと、この当接面1aに対面する外表面1bと、を有している。
【0020】
シート本体1は、シリコーンゲルやシリコーンゴム等の粘着性を有する弾性材料により形成されており、材料の持つ粘着力によって皮膚Sに貼り付けられる。なお、粘着力を向上させるために、軟らかい材料を採用することが望ましい。
また、このシート本体1は、1つの材料で一体に形成しても良いし、当接面1aと外表面1bを別々の材料で形成して組み合わせても良い。なお、シート本体1の長さは50〜100mmの範囲内にあり、幅は10〜40mmの範囲内にあり、厚みは3〜10mmの範囲内にある。
【0021】
当接面1aは、手術・外傷における創傷部位を粘着面で均一に押圧可能なよう、平坦に形成されている。この当接面1aは、図3に示すように、シート本体1の長さ方向に対して交差する方向に延びる溝部11を有し、この溝部11によって2つの区域に区画されている。この溝部11は、複数設けても良く、その場合には当接面1aは複数の区域に区画される。
【0022】
溝部11の幅は0.1〜1.5mmの範囲内に設定されており、当接面1aの当接箇所が減少しないよう細く形成されている。また、この溝部11の深さは、1〜9mmの範囲内に設定されており、シート本体1の厚さよりも小さく形成されている。このように溝部11が設けられた箇所は、シート本体1が肉薄に形成されるため、容易に屈曲させることができる。
また、図3においては、溝部11がシート本体1の長さ方向に対して垂直に形成されているが、シート本体1の長さ方向に対して斜めに交差する方向に形成してもよい。
【0023】
外表面1bには、隆起部12と固定用平面13が設けられており、隆起部12はシート本体1の長さ方向に沿って形成されており、固定用平面13はシート本体1の両端付近に形成されている。そのため、シート本体1の中間部は隆起部12によって肉厚に形成されており、シート本体1の両端部は固定用平面13によって肉薄に形成されている(図2参照)。
【0024】
隆起部12は、1〜10mmの範囲内の高さに設定されており、隆起部12の外周にテーパーが設けられていることが望ましい。このように、テーパーを設けることにより、外表面1bが接触する服等に引っ掛りにくく構成されている。
【0025】
固定用平面13は、隆起部12よりも低い位置に平坦面が形成されており、また、固定用平面13の外縁部が円弧状に形成されていることが望ましい。このように、シート本体1の両端部の角を丸く形成することにより、皮膚からの剥離を抑制することができる。
【0026】
図4は、固定用平面13に固定部材2を取付けた様子を示す平面図である。この固定部材2は、テープ等の粘着性材料によって、固定用平面13よりも大径に形成されており、固定用平面13と皮膚Sに貼り付けることにより、シート本体1を皮膚Sに固定している。また、この固定部材2は、固定用平面13の外縁部に対応した形状に形成されている。
【0027】
図5は本発明に係る傷痕修復用シートAを、湾曲した皮膚Sに貼り付けた様子を示す縦断面図である。このように溝部11で区画された2つの当接面1aが、皮膚Sと密着している。また、シート本体1が皮膚S側に湾曲することにより、溝部11の幅が狭められており、またシート本体1の曲率によっては溝部11の幅は消失する。そのため、溝部11の幅は、当接箇所の曲率に対応した幅に設定しても良い。
【0028】
本発明によれば、外表面1bに溝部11の凹凸形状が形成されないため、シート本体1を剥がれにくくすることができる。すなわち、溝部11を当接面1a側に形成して、外表面1bに凹凸形状を露出させないことにより、外表面1bが接触する服等との摩擦や引っ掛かりを抑制して、剥離しにくい傷痕用修復シートとすることができる。
【0029】
また、本発明によれば、当接面1aを溝部11によって区画して、当接面1aの密着箇所を区分けすることにより、シート本体1を剥がれにくくすることができる。すなわち、皮膚Sが引っ張られたりねじれたりした場合には、溝部11の幅が狭まったり広がったりすることで、当接面1aにかかる力を和らげて、剥離してしまうことを抑制することができる。すなわち、皮膚の動きに対するシート本体1のズレを、この溝部11が吸収できる構成とすることにより、シート本体1が容易に剥離してしまうことを抑制することができる。
【0030】
また、本発明によれば、シート本体1が皮膚Sに沿って屈曲することにより、溝部11の幅を狭めて、創傷部位全体を押圧することができる。すなわち、シート本体1が皮膚Sに沿って屈曲する際には、当接面1a側は縮むため、溝部11の幅が狭められる。そのため、溝部11を形成したことによる間隙を無くすことができ、より広い範囲の創傷部位を押圧することができる。
【0031】
また、本発明によれば、当接面1aに溝部11を設け、外表面1bに隆起部12を設けたことにより、シート本体1の重量を重くして、皮膚Sへの押圧する圧力を向上させることができる。すなわち、隆起部12の体積が溝部11によって制限されないため、隆起部12を大径に形成して、シート本体1の重量を重くすることができる。
【0032】
また、本発明によれば、帯状に形成されたシート本体1と固定部材2を備え、このシート本体1の両端位置に固定部材2を設けることにより、シート本体1を剥がれにくく構成することができる。すなわち、シート本体1を帝王切開等の手術痕で形成される瘢痕・ケロイドの長大な傷痕を覆うために、帯状に形成する場合には、シート本体1の両端部が剥がれやすい。そのため、帯状のシート本体1の剥がれやすい両端位置に固定部材2を設けることにより、剥がれにくい傷痕用修復シートとすることができる。
【0033】
<実施形態2>
以下、本発明の実施形態2に係る傷痕修復用シートBについて、図6及び図7を参照して詳細に説明する。この実施形態2に係る傷痕修復用シートBは、シート本体1が先の実施形態1よりも長く形成されており、溝部11が複数設けられていることを特徴とする。なお、同実施形態において、先の実施形態と基本的に同一の構成要素については、同一の符号を付してその説明を簡略化する。
【0034】
本発明の実施形態2に係る傷痕修復用シートBは、図6及び図7に示すように、先の実施形態によりも長い帯状に形成されたシート本体1を備え、当接面1aには溝部11が複数設けられている。
【0035】
このシート本体1の長さは100〜300mmの範囲内で形成されており、幅は20〜50mmの範囲内で形成されている。
【0036】
本実施形態によれば、帝王切開等の手術痕で形成される瘢痕・ケロイドの長い傷痕にも対応することができる。
【符号の説明】
【0037】
A、B 傷痕修復用シート
1 シート本体
1a 当接面
1b 外表面
11 溝部
12 隆起部
13 固定用平面
2 固定部材
S 皮膚

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7