(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2017-94089(P2017-94089A)
(43)【公開日】2017年6月1日
(54)【発明の名称】2本のAC連結電線を使用するデジタル通信用改良安全方法及びシステム
(51)【国際特許分類】
A61N 1/39 20060101AFI20170428BHJP
【FI】
A61N1/39
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
【外国語出願】
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2016-226644(P2016-226644)
(22)【出願日】2016年11月22日
(31)【優先権主張番号】62/259,370
(32)【優先日】2015年11月24日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】15/340,547
(32)【優先日】2016年11月1日
(33)【優先権主張国】US
(71)【出願人】
【識別番号】511099630
【氏名又は名称】バイオセンス・ウエブスター・(イスラエル)・リミテッド
【氏名又は名称原語表記】Biosense Webster (Israel), Ltd.
(74)【代理人】
【識別番号】100088605
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 公延
(74)【代理人】
【識別番号】100130384
【弁理士】
【氏名又は名称】大島 孝文
(72)【発明者】
【氏名】マイケル・レビン
(72)【発明者】
【氏名】アビ・レウベニ
【テーマコード(参考)】
4C053
【Fターム(参考)】
4C053JJ23
(57)【要約】
【課題】 医療用カテーテルの外部に配設された電力回路、及び医療用カテーテルの内部に配設された遠隔内部回路を使用する医療用カテーテル法を実行するための方法及び装置を提供する。
【解決手段】 電力回路及び内部回路のうちの少なくとも1つは、電気的アースから絶縁されている。ちょうど2本の電線が、電力回路を内部回路に接続し、信号発生器が、電力回路から内部回路まで電線を介して通信される交流搬送波を生成するために提供されている。復号器が、電力回路及び内部回路に配設され、送受信器が、電力回路及び内部回路のうちの一方において搬送波電圧振幅を変調することと、電力回路及び内部回路のうちの他方において被変調搬送波電圧振幅を復号することと、を交互に行うことによって電力回路と内部回路との間で半二重データ通信を実行する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
方法であって、
電力回路を医療用カテーテルの外部に配設する工程と、
遠隔内部回路を前記医療用カテーテルの内部に配設する工程と、
前記電力回路及び前記内部回路を電気的アースから絶縁する工程と、
ちょうど2本の電線によって前記電力回路を前記内部回路に接続する工程と、
交流搬送波を前記電力回路から前記内部回路まで前記電線を介して通信する工程であって、前記搬送波は、搬送波電圧振幅を有する、工程と、
前記電力回路及び前記内部回路のうちの一方を用いて前記搬送波電圧振幅を変調することと、前記電力回路及び前記内部回路のうちの他方を用いて前記被変調搬送波電圧振幅を復号することと、を交互に行うことによって、前記電力回路と前記内部回路との間で半二重データ通信を実行する工程と、を含む、方法。
【請求項2】
前記電力回路は、前記搬送波電圧振幅を変調するための送受信器と、前記搬送波電圧振幅を復調するための復号器と、を備える、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記内部回路は、前記搬送波電圧振幅を復調するための復号器を備える、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記内部回路の中で、前記医療用カテーテルのセンサからデータを取得及び処理することと、
前記搬送波電圧振幅を、前記電力回路への通信のために、処理された前記データに従って変調することと、を更に含む、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記搬送波電圧振幅を交互に変調することは、前記交流搬送波にわたって第1の抵抗及び第2の抵抗を変えるために、それぞれ、前記電力回路の第1のスイッチ及び前記内部回路の第2のスイッチを用いて実行されている、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
装置であって、
医療用カテーテルと、
前記医療用カテーテルの外部に配設されている電力回路と、
前記医療用カテーテルの内部に配設された遠隔内部回路であって、前記電力回路及び前記内部回路は、電気的アースから絶縁されている、遠隔内部回路と、
前記電力回路を前記内部回路に接続する、ちょうど2本の電線と、
交流搬送波を生成するための信号発生器であって、前記搬送波は、前記電力回路から前記内部回路まで前記電線を介して通信されており、前記搬送波は、搬送波電圧振幅を有する、信号発生器と、
前記電力回路及び前記内部回路にあるそれぞれの復号器と、
前記電力回路と前記内部回路との間で半二重データ通信を実行するための送受信器であって、前記送受信器は、前記電力回路及び前記内部回路のうちの一方において前記搬送波電圧振幅を変調することと、前記電力回路及び前記内部回路のうちの他方の前記復号器において前記被変調搬送波電圧振幅を復号することと、を交互に行うように動作する、送受信器と、を備える、装置。
【請求項7】
前記復号器は、前記搬送波電圧振幅を復調するように動作する、請求項6に記載の装置。
【請求項8】
前記カテーテルにセンサを更に備え、前記内部回路は、それからデータを取得及び処理して、前記電力回路への通信のために、処理された前記データに従って前記搬送波電圧振幅を変調するように動作する、請求項6に記載の装置。
【請求項9】
前記電力回路の第1のスイッチと、
前記内部回路の第2のスイッチと、を更に備え、前記第1のスイッチ及び前記第2のスイッチは、それぞれ、前記信号発生器にわたる第1及び第2の抵抗を変えるように動作する、請求項6に記載の装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(著作権情報)
本特許の開示は、著作権保護の適用を受ける部分を含む。著作権者は、特許文献又は特許情報開示のうちの任意のものによる複製に対して、それが特許商標庁特許出願又は記録において明らかであるとき、異議を唱えないが、そうでなければ、たとえ何であっても全ての著作権を保有する。
【0002】
(関連出願の相互参照)
本願は、参照によって本明細書に組み込まれる、2015年11月24日に出願された米国仮特許出願第62/259,370号の利益を主張する。
【0003】
(発明の分野)
本明細書で説明する主題は、非機械的形式のエネルギーを身体まで又は身体から転送することに関する。より具体的には、説明する主題は、アブレーションのために心臓の中に高周波エネルギーを転送することに関する。
【背景技術】
【0004】
今日、心臓の電気的活動のマッピングのために電気生理学的センサを含む心臓カテーテルを用いて心臓内の電位をマッピングすることが、一般的に行われている。典型的には、時間的に変化する心内膜内の電位を感知し、心臓内における位置の関数として記録した後に、これを用いて局所電位図又は局所興奮到達時間のマッピングを行う。
【0005】
心房細動のような伝導異常が存在する場合、心臓の高周波(RF)アブレーションは、問題を含む心臓状態を矯正するために広く用いられる手技である。この手技は典型的に、電極を有するカテーテルを心臓に挿入することと、心臓内部において選択された領域を、電極を介して伝送されたRFエネルギーでアブレーションすることと、を含む。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0006】
安全要件は、体内適用のためのデバイスの小型化における制限因子であり得る。例えば、電気生理学的手技に使用されるカテーテルは、それらの遠位部分に様々なセンサを有し、一方、センサからの信号の処理は、近位において行われ得る。しかし、カテーテルの遠位部分における信号処理能力を提供すれば、電気生理学的データ及び測定値の質を改善することができる。信号処理回路は、カテーテルの遠位部分に供給されるべき電力を必要とする。カテーテルシャフトの機械的破損、又は信号処理回路に供給する電力電線で短絡が生じると、被検者は感電する可能性がある。本明細書で説明する主題は、体内適用のためのデバイスにおける電気的安全性を提供する方法及びシステムを目的とする。
【0007】
本明細書で説明する主題は、電力回路を医療用カテーテルの外部に配設する工程と、遠隔内部回路を医療用カテーテルの内部に配設する工程と、電力回路及び内部回路のうちの少なくとも1つを電気的アースから絶縁する工程と、2本の電線によって、例えばちょうど2本の電線によって電力回路を内部回路に接続する工程と、交流搬送波を電力回路から内部回路まで2本の電線を介して通信する工程と、を含む方法を目的とする。方法は、例えば、電力回路及び内部回路のうちの一方を用いて搬送波電圧振幅を変調することと、電力回路及び内部回路のうちの他方を用いて、被変調搬送波電圧振幅を復号することと、を交互に行うことによって、電力回路と内部回路との間で半二重データ通信を実行する工程を更に含み得る。
【0008】
本明細書で説明する方法の1つの態様によると、電力回路は、搬送波電圧振幅を変調するための送受信器と、搬送波電圧振幅を復調するための復号器と、を備えることができる。
【0009】
本明細書で説明する方法の更なる態様によると、内部回路は、搬送波電圧振幅を復調するための復号器を備えることができる。
【0010】
方法についての更に別の態様は、内部回路の中で、カテーテルのセンサからデータを取得及び処理することと、搬送波電圧振幅を、復号器の電力回路への通信のために、処理されたデータに従って変調することと、を含むことができる。
【0011】
方法の更に別の態様によると、搬送波電圧振幅を交互に変調することは、交流搬送波にわたって第1の抵抗及び第2の抵抗を変えるために、それぞれ、電力回路の第1のスイッチ及び内部回路の第2のスイッチを用いて実行されている。
【0012】
本明細書で説明する主題の特定の実施形態によると、装置であって、医療用カテーテルと、カテーテルの外部に配設された電力回路と、カテーテルの内部に配設された遠隔内部回路と、を備える装置が更に提供される。電力回路及び内部回路のうちの少なくとも1つは、電気的アースから絶縁されている。装置は、電力回路を内部回路に接続する2本の電線、例えばちょうど2本の電線と、電力回路から内部回路まで電線を介して通信される交流搬送波を生成する信号発生器と、を更に備えてもよい。復号器が、電力回路及び内部回路に配設されており、送受信器が、電力回路と内部回路との間で半二重データ通信を実行する。送受信器は、電力回路及び内部回路のうちの一方において搬送波電圧振幅を変調することと、電力回路及び内部回路のうちの他方の復号器において被変調搬送波電圧振幅を復号することと、を交互に行うように動作する。
【図面の簡単な説明】
【0013】
本明細書で説明する主題をより良く理解するために、以下の図面と関連して読まれるべき、本明細書で説明する主題についての詳細な説明を例として参照するが、図面においては、同様の要素は、同様の参照番号が付与されている。
【
図1】本明細書で説明する主題の開示された実施形態に従って構成されて動作する、システムについての絵入り説明図である。
【
図2】本明細書で説明する主題の実施形態に従う、デジタル通信用システムの実施形態についての電気回路図である。
【
図3】本明細書で説明する主題の実施形態に従う、
図2に示すシステムを用いる動作の順序を図示する流れ図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下の説明では、本明細書で説明する主題の様々な原理についての完全な理解を提供するために多数の具体的な詳細が述べられている。しかし、これらの詳細の全てが、本明細書で説明する主題の実施に必ずしも必要であるわけではないことが、当業者には明らかであろう。この場合、一般的な概念を無用に分かりにくくすることのないよう、周知の回路、制御論理、並びに従来のアルゴリズム及びプロセスに対するコンピュータプログラム命令の詳細については、詳しく示していない。
【0015】
参照により本明細書に組み込まれる文書は本出願の一体部分と見なされるべきであり、いずれかの用語が、それらの組み込まれた文書内で、本明細書で明示的又は暗示的に行われる定義と相反するように定義される場合を除き、本明細書における定義のみが考慮されるべきである。
【0016】
概論
ここで図面に着目して、最初に
図1を参照すると、この図は、生体の心臓12において電気的活動を評価し、アブレーション手技を実行するためのシステム10の絵入り説明図であり、このシステムは、本明細書で説明する主題の開示された実施形態に従って構成され、動作する。システムは、操作者16によって、患者の脈管系を通して、心臓12の心腔又は脈管構造の中に経皮的に挿入されるカテーテル14を備える。操作者16は、典型的には医師であって、カテーテルの遠位先端部18を、例えば、アブレーション標的部位において心臓壁と接触させる。その開示が参照により本明細書に援用される、米国特許第6,226,542号及び同第6,301,496号、並びに本願と同一譲受人に譲渡された米国特許第6,892,091号に開示される方法に従って、電気的活性化マップが作成され得る。システム10の要素を具現化する1つの市販製品は、Biosense Webster社(3333 Diamond Canyon Road,Diamond Bar,CA 91765)から入手可能なCARTO(登録商標)3システムが利用可能である。このシステムは、当業者によって修正されて、本明細書で説明する主題の原理を具現化してもよい。
【0017】
例えば電気活動マップの評価によって異常と判定された区域は、熱エネルギーの適用によって、例えば、心筋に高周波エネルギーを印加する、遠位先端部18にある1つ又は2つ以上の電極までのカテーテル中の電線を通る高周波電流の通過によって、アブレーションされ得る。エネルギーは、組織中に吸収されて、組織をその電気的興奮性を永久に失う段階(典型的には、約50℃)まで加熱する。良好に行われた場合、この処置は、心臓組織に非導電性の損傷部を形成し、この損傷部が、不整脈の原因である異常な電気経路を遮断する。本明細書で説明する主題の原理は、異なる心腔に適用されて、多くの異なる心不整脈を診断及び治療することができる。
【0018】
カテーテル14は、操作者16が、アブレーションのために望まれるようにカテーテルの遠位端部を操縦、位置決め、及び方向付けすることを可能にするのに好適な制御部を有するハンドル20を備えることができる。操作者16を支援するために、カテーテル14の遠位部分は、信号をコンソール24に位置するプロセッサ22に提供する位置センサ(図示せず)を具備する。プロセッサ22は、下記で説明するようないくつかの処理機能を果たすことができる。
【0019】
アブレーションエネルギー及び電気信号は、コンソール24までケーブル34を介して、遠位先端部18に又はその近傍に位置する1つ又は2つ以上のアブレーション電極32を通して、心臓12を行き来して送られ得る。ペーシング信号及び別の制御信号は、コンソール24からケーブル34及び電極32を通して心臓12まで送られてもよい。検出電極33は、コンソール24にも接続されているが、アブレーション電極32の間に配設されており、ケーブル34への結合部を有する。
【0020】
電線接続部35は、コンソール24を身体表面電極30及びカテーテル14の位置及び向き座標を測定するための位置決めサブシステムの他の構成要素と連結する。プロセッサ22又は別のプロセッサ(図示せず)は、位置決めサブシステムの要素であってもよい。電極32及び身体表面電極30は、参照によって本明細書に組み込まれる、Govariらに発行された米国特許第7,536,218号において教示されるように、アブレーション部位での組織インピーダンスを測定するために使用されてもよい。例えば熱電対又はサーミスタを含む温度センサ(図示せず)が、電極32のそれぞれに又はその近傍に装着されてもよい。
【0021】
コンソール24は、1つ又は2つ以上のアブレーション電力発生装置25を具備してもよい。カテーテル14は、例えば、高周波エネルギー、超音波エネルギー、及びレーザー生成光エネルギーを含むが、それに限定されない任意の公知のアブレーション技術を使用して、アブレーションエネルギーを心臓まで伝導するように構成されてもよい。そのような方法は、共に譲渡された米国特許第6,814,733号、同第6,997,924号、及び同第7,156,816号に開示されており、これらは両方とも参照によって本明細書に組み込まれる。
【0022】
一実施形態では、位置決めサブシステムは、磁気位置追跡配列を備えることができ、その配列は、磁場生成コイル28を使用して磁場を所定の作業体積中に生成して、カテーテルにおけるこれらの磁場を検知することによって、カテーテル14の位置及び向きを決定する。位置決めサブシステムは、参照により本明細書に組み込まれる米国特許第7,756,576号、及び上記の米国特許第7,536,218号に記載されている。
【0023】
上記のように、カテーテル14は、コンソール24に連結されており、操作者16がカテーテル14の動作を観察して、調節することを可能にする。コンソール24は、プロセッサ、好ましくは、適切な信号処理回路を有するコンピュータを含む。プロセッサは、モニタ29を駆動するように連結されている。信号処理回路は、典型的には、カテーテル14から信号を受け取り、増幅し、フィルタリングし、及びデジタル化するが、その信号は、例えば、電気、温度及び接触力センサを含むがそれらに限定されないセンサ、並びにカテーテル14の遠位に位置する複数の位置検出電極(図示せず)によって生成された信号を含む。デジタル化信号は、カテーテル14の位置及び向きを計算し、電極からの電気信号を分析するために、コンソール24及び位置決めシステムによって受け取られて使用される。
【0024】
典型的には、システム10は他の要素を含み、それらは簡略化のために図には示されていない。例えば、システム10は、1つ又は2つ以上の身体表面電極から信号を受け取るように連結された心電図(ECG)モニタを含むことにより、ECG同期信号をコンソール24に提供してもよい。上記のように、システム10は、また、被検者の身体の外部に取り付けられた外部適用型参照パッチ、又は内部設置型カテーテルのいずれかに参照位置センサを含んでもよく、その参照位置センサは、心臓12の中に挿入されて、心臓12に対する固定位置に維持される。従来のポンプ及びラインを提供することにより、アブレーション部位を冷却するために液体をカテーテル14を通して循環させることができる。システム10は、外部の画像診断法、例えばMRI装置又は同類のものから画像データを受け取り得、そして、画像を生成及び表示するために、プロセッサ22に組み込むか又はそれによって起動することができる画像プロセッサを含む。
【0025】
ここで、
図2を参照すると、この図は、本明細書で説明する主題の実施形態に従って、2本の交流(AC)連結電線を使用する、カテーテルにおけるデジタル通信用システムの実施形態の電気回路図である。示された構成要素は、体内カテーテルに寸法決めされている。
【0026】
システム40は、電力回路42を備え、この回路は、例えば、コンソール24(
図1)の中のカテーテルの外部に位置することができる。電力回路42は、電源回路46の中に接続された交流信号発生器44を備える。信号発生器44は、数十又は数百kHzの範囲の搬送波周波数を発生させる。AC電流は、抵抗器R1、R2と、コンデンサC1、C2と、を備えるネットワークを通過する。AC電流は、遠隔回路48のための電気エネルギー源として、及び電力回路42と遠隔回路48との間の情報伝達のための搬送波周波数としての両方に使用される。
【0027】
電力回路42は、信号処理モジュール50を含み、このモジュールは、スイッチ52(ON/OFF)を制御して搬送波周波数を変調する。信号処理モジュール50は、増幅器54と、送受信器56と、を含む。増幅器54は、内部の遠隔回路48から受け取る信号を受け取って、これを復号又は復調する。送受信器56は、遠隔回路48に向けられた通信を処理する。
【0028】
遠隔回路48は、エネルギー取得構成要素58と、測定・処理構成要素60と、搬送波電圧振幅を復調するための増幅器・復号器62と、を備える。エネルギー取得構成要素58は、Linear TechnologyからのモデルLTC3331であってもよいが、その入力のAC電圧をDC電圧に変換して、3〜10直流ボルト(VDC)の範囲にあり得る一定値で蓄積コンデンサC5を充電する。測定・処理構成要素60及び増幅器・復号器62は、コンデンサC5におけるDC電圧が所定値に達したときにスイッチ64によってスイッチが入れられる。
【0029】
上記のように、遠隔回路48は、電力回路42から離れている。電力回路42及び遠隔回路48は、電線対66によって接続されている。電線対66は、外部磁場に対する感受性を低減する撚り対によって実施され得る。
【0030】
動作.
信号発生器44によって生成されたAC搬送波電流は、電力回路42において抵抗器R3、R4及びコンデンサC3、C4を通過し、次に、電線対66を通って遠隔回路48の中に入る。電力回路42と遠隔回路48との間のデータ通信は、搬送波電圧振幅変調によって実施される。信号発生器44は、抵抗器R1及びR2と共に電流源として作用し、電線対66の電線にわたる電圧は、2本の電線にわたるインピーダンスに依存する。
【0031】
両方のスイッチ52、64が開いている、すなわち、オフ状態にあるとき、搬送波周波数でのコンデンサC1及びC2のインピーダンスは、R1及びR2の値よりもずっと小さく、電線同士の間の伝送(Tx)電圧が第1の値
Tx=V1
*[Rc/(R1+R2+Rc)]をとり、
ここで、V1は、信号発生器44の出力電圧であり、Rcは、寄生容量のインピーダンス及び搬送波周波数での遠隔回路48の負荷である。
【0032】
上述のように、信号処理モジュール50は、スイッチ52を開閉位置の間で変えることによって、搬送波電圧振幅を変調する。信号処理モジュール50は、スイッチ52だけに影響を及ぼし、遠隔回路48は、スイッチ64に影響を及ぼす。スイッチ52が閉じていて、スッチ64が開いているとき、電線対66にわたるTx電圧は、第2の値
Tx=V1
*(Rc/R1+R2+Rc+R6)をとる。
【0033】
スイッチ52が開いていて、スイッチ64が閉じているとき、電線対66にわたるTx電圧は、第3の値
Tx=V1
*(Rc/R1+R2+Rc+R5)をとる。
【0034】
遠隔回路48の増幅器・復号器62は、被変調搬送波電圧を受け取り、入力信号に埋め込まれている情報を復調する。
【0035】
ここで、
図3を参照すると、この図は、本明細書で説明する主題の実施形態に従う、システム40(
図2)を使用する動作の順序を図示する流れ図である。プロセスの工程は、説明を分かりやすくするために、特定の線形的順序で示されている。しかしながら、かかる工程の多くは、並行して、非同期的に、又は異なる順序で行われてもよい点は明らかであろう。当業者であれば、プロセスを、例えば、状態図において、多数の相互に関連する状態又は事象としても代替的に表現され得ることを理解するであろう。更に、例示されているプロセスの工程の全てが、かかる方法の実施に必要とされるわけではない。
【0036】
初期工程68では、スイッチ52、64は、両方とも開いている。エネルギー取得構成要素58での電圧は、最大であり、それが蓄積コンデンサC5を充電する。蓄積コンデンサが充電されると、遠隔装置48は作動準備が整う。
【0037】
次に、2つの工程72、74を含む通信工程70が実行され、これらの2つの工程は、交互に実行される、すなわち、通信は半二重である。任意の好適な通信プロトコルを使用してもよい。
【0038】
工程72では、遠隔回路48は、データを信号処理モジュール50に送って、開閉スイッチ64によって搬送波電圧を変調する。スイッチ52は、工程72の間、開いたままである。
【0039】
工程74では、信号処理モジュール50は、コマンドを遠隔回路48に送って、開閉スイッチ52によって搬送波電圧を変調する。スイッチ64は、工程74の間、開いたままである。
【0040】
留意すべきは、遠隔回路48は、電力回路42から完全に絶縁されていることである。2つの構成要素の間に、共通の接地接続はない。電線対66の電線同士の間で短絡が生じても、患者は、低電圧にだけ曝されることになる。断線は、結果として、正常電圧よりも高いがそれでも低い範囲にある電圧を生じさせ、そのため、患者の安全性が損なわれることがない。例えば、発電器の出力電圧が2V以下であり、抵抗器R1、R2が50kΩの範囲にあるならば、患者の身体を通る最大電流は、2V/100kΩ=20uAである。これに関して、標準IEC60601−1に従う、単一故障状態において患者の身体を通る最大許容電流は50uAであることに留意されたい。
【0041】
当業者であれば、本明細書で説明する主題が、特に先に示され記載された内容に限定されないことが理解されよう。むしろ、本明細書で説明する主題の範囲は、先に記載された様々な特徴の組合せ及び部分的組合せの両方、並びに、先の説明を読んで当業者が想起するような、先行技術にないそれらについての変更及び修正を含む。
【0042】
〔実施の態様〕
(1) 方法であって、
電力回路を医療用カテーテルの外部に配設する工程と、
遠隔内部回路を前記医療用カテーテルの内部に配設する工程と、
前記電力回路及び前記内部回路を電気的アースから絶縁する工程と、
ちょうど2本の電線によって前記電力回路を前記内部回路に接続する工程と、
交流搬送波を前記電力回路から前記内部回路まで前記電線を介して通信する工程であって、前記搬送波は、搬送波電圧振幅を有する、工程と、
前記電力回路及び前記内部回路のうちの一方を用いて前記搬送波電圧振幅を変調することと、前記電力回路及び前記内部回路のうちの他方を用いて前記被変調搬送波電圧振幅を復号することと、を交互に行うことによって、前記電力回路と前記内部回路との間で半二重データ通信を実行する工程と、を含む、方法。
(2) 前記電力回路は、前記搬送波電圧振幅を変調するための送受信器と、前記搬送波電圧振幅を復調するための復号器と、を備える、実施態様1に記載の方法。
(3) 前記内部回路は、前記搬送波電圧振幅を復調するための復号器を備える、実施態様1に記載の方法。
(4) 前記内部回路の中で、前記医療用カテーテルのセンサからデータを取得及び処理することと、
前記搬送波電圧振幅を、前記電力回路への通信のために、処理された前記データに従って変調することと、を更に含む、実施態様1に記載の方法。
(5) 前記搬送波電圧振幅を交互に変調することは、前記交流搬送波にわたって第1の抵抗及び第2の抵抗を変えるために、それぞれ、前記電力回路の第1のスイッチ及び前記内部回路の第2のスイッチを用いて実行されている、実施態様1に記載の方法。
【0043】
(6) 装置であって、
医療用カテーテルと、
前記医療用カテーテルの外部に配設されている電力回路と、
前記医療用カテーテルの内部に配設された遠隔内部回路であって、前記電力回路及び前記内部回路は、電気的アースから絶縁されている、遠隔内部回路と、
前記電力回路を前記内部回路に接続する、ちょうど2本の電線と、
交流搬送波を生成するための信号発生器であって、前記搬送波は、前記電力回路から前記内部回路まで前記電線を介して通信されており、前記搬送波は、搬送波電圧振幅を有する、信号発生器と、
前記電力回路及び前記内部回路にあるそれぞれの復号器と、
前記電力回路と前記内部回路との間で半二重データ通信を実行するための送受信器であって、前記送受信器は、前記電力回路及び前記内部回路のうちの一方において前記搬送波電圧振幅を変調することと、前記電力回路及び前記内部回路のうちの他方の前記復号器において前記被変調搬送波電圧振幅を復号することと、を交互に行うように動作する、送受信器と、を備える、装置。
(7) 前記復号器は、前記搬送波電圧振幅を復調するように動作する、実施態様6に記載の装置。
(8) 前記カテーテルにセンサを更に備え、前記内部回路は、それからデータを取得及び処理して、前記電力回路への通信のために、処理された前記データに従って前記搬送波電圧振幅を変調するように動作する、実施態様6に記載の装置。
(9) 前記電力回路の第1のスイッチと、
前記内部回路の第2のスイッチと、を更に備え、前記第1のスイッチ及び前記第2のスイッチは、それぞれ、前記信号発生器にわたる第1及び第2の抵抗を変えるように動作する、実施態様6に記載の装置。
【外国語明細書】