特開2017-94246(P2017-94246A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2017-94246(P2017-94246A)
(43)【公開日】2017年6月1日
(54)【発明の名称】微粒化装置
(51)【国際特許分類】
   B02C 17/16 20060101AFI20170428BHJP
   B02C 17/18 20060101ALI20170428BHJP
   B02C 17/24 20060101ALI20170428BHJP
【FI】
   B02C17/16 B
   B02C17/18 Z
   B02C17/24
   B02C17/18 E
【審査請求】有
【請求項の数】6
【出願形態】OL
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2015-226980(P2015-226980)
(22)【出願日】2015年11月19日
(71)【出願人】
【識別番号】000132161
【氏名又は名称】株式会社スギノマシン
(74)【代理人】
【識別番号】100101432
【弁理士】
【氏名又は名称】花村 太
(72)【発明者】
【氏名】前田 巧
(72)【発明者】
【氏名】原島 謙一
(72)【発明者】
【氏名】徳道 世一
(72)【発明者】
【氏名】村山 誠悟
(72)【発明者】
【氏名】澤▲崎▼ 良二
(72)【発明者】
【氏名】森岡 勇樹
【テーマコード(参考)】
4D063
【Fターム(参考)】
4D063FF14
4D063FF35
4D063GB07
4D063GC12
4D063GC14
4D063GC17
4D063GC21
(57)【要約】      (修正有)
【課題】混合液に応じて設定された撹拌に適切な流量、流速やビーズ径を変更することなく、常にビーズ及び原料を良好に撹拌できるビーズミルを備えた微粒化装置を提供する。
【解決手段】容器2を回転軸9と共に鉛直方向に対して予め定められた角度で傾斜させた状態で保持されるビーズミル1と、混合液が収容され、前記ビーズミルに接続される原料タンクと、混合液をビーズミルに送るポンプと、を有する微粒化装置において、前記ビーズミルの複数の回転翼11a,11bは、個数及び間隔の配列構成を変更可能に且つそれぞれ交換可能に前記回転軸に装着されるものであり、前記ビーズミルの複数の回転翼の1つ以上が、前記回転軸に沿って一方向への流れを形成するプロペラ構造を有しているものである。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ビーズが収容されると共に、原料粒子を含む混合液が一端側導入口から他端の排出口側へ流動する撹拌室を内部に有する円筒状の容器と、撹拌室内で容器の中心軸上に配置された回転軸と、回転軸に沿って互いに間隔を持って装着されているビーズおよび混合液を撹拌するための複数の回転翼と、容器上端から軸シール部を経て突出する回転軸の端部に連通して該回転軸を回転させる駆動装置と、容器上方で撹拌処理後の混合液とビーズとを分離して排出口側へ混合液を通過させるフィルタ部とを備え、前記容器を前記回転軸と共に鉛直方向に対して予め定められた角度で傾斜させた状態で保持されるビーズミルと、混合液が収容され、前記ビーズミルに接続される原料タンクと、混合液をビーズミルに送るポンプと、を有する微粒化装置において、
前記ビーズミルの複数の回転翼は、個数及び間隔の配列構成を変更可能に且つそれぞれ交換可能に前記回転軸に装着されるものであり、
前記ビーズミルの複数の回転翼の1つ以上が、前記回転軸に沿って一方向への流れを形成するプロペラ構造を有していることを特徴とする微粒化装置。
【請求項2】
前記ビーズミルのプロペラ構造を有する回転翼として、前記回転軸の装着状態でビーズミルの上向き下流側への撹拌流れを形成するものと、ビーズミルの下向き上流側への撹拌流れを形成するものとを備えていることを特徴とする請求項1に記載の微粒化装置。
【請求項3】
前記ビーズミルのプロペラ構造を有する回転翼として、前記回転軸の装着状態でビーズミルの上向き下流側への撹拌流れを形成するものが、少なくとも前記回転軸の最下端に装着されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の微粒化装置。
【請求項4】
前記ビーズミルのプロペラ構造を有する回転翼として、その回転方向は正逆切換可能なものを備えていることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の微粒化装置。
【請求項5】
前記フィルタ部は、前記容器の上端より撹拌室内側で前記回転軸に同軸状に装着されて該回転軸の回転に伴って回転し、ビーズが除去された混合液を排出口側へ通過させる円筒状フィルタ部材を備え、
前記排出口は、前記円筒状フィルタ部材を通過した前記容器の上端より下流側で前記軸シール部より上流側に配設されていることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の微粒化装置。
【請求項6】
前記ビーズミルの駆動装置は、前記回転軸を正方向と逆方向とに切換可能に回転駆動させるものであることを特徴とする請求項5に記載の微粒化装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、撹拌室内でビーズがより均一に分布できる縦型ビーズミルを備えた微粒化装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
各種原料粒子を微粒化する際、高圧ホモジナイザーや湿式ジェットミル、あるいはビーズミルやボールミル等で原料の粉砕、分散処理を行っている。そして、湿式ジェットミルとビーズミルとを複合化させた複合型の微粒化装置も発明されている(特許文献1参照。)。
【0003】
ビーズミルは、複合型の微粒化装置に組み込まれるもの、単体のもののいずれも、例えば図7に示すように、容器102内に球形ビーズBを投入しておき、互いに平面同士が平行な複数の回転翼111が設けられている回転軸109を容器内で回転させることによって回転翼111の回転によってビーズBと共に原料粒子を含む混合液を撹拌するものである。回転翼111としては、ディスク型と呼ばれる円板状のものや、中心軸から複数本のピンが放射状に突出しているピン型のものなどが採用されている。
【0004】
このように、混合液は、撹拌されながら容器102の下方側面に設けられた導入口104から上方側面に設けられた排出口106へ向かって流動される。従って、容器102内では、回転力により撹拌流動する混合液中で、ビーズB間を移動する原料粒子がビーズBに挟み込まれ、その圧壊力や摩擦力で粉砕される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2013−163162号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記の如き従来の縦型ビーズミルにおいては、容器内の混合液の流れが速い場合や粘性が高い場合、特にビーズ径が小さくなった場合に、ビーズの質量による沈降が困難となり、媒体に流されて容器内の上部に偏在するという問題があった。このようなビーズの偏在によってビーズおよび原料が過密となって撹拌羽根の回転を阻害する領域が生じ、結果として容器内で撹拌ができなくなり、微粒化処理が停止する恐れがあった。
【0007】
このため、流速を遅くするかビーズを大径のものに切り換えることによって、ビーズを比較的沈降しやすくして下方へも分布させることが考えられる。しかし、この方法では、微粒化処理量の減少や、目標粒子径が小さい場合には微粒化の目標に達成しない問題が生じる。一方、混合液の粘性が低い場合には、ビーズはその重力の方が勝り、殆どが下方へ沈降し、容器内での均一な分布を得るのが困難であった。
【0008】
なお、ビーズミルの容器を回転軸と共に鉛直方向より傾斜させることによって、回転軸を鉛直方向に沿って設置した場合よりも、いくらか原料粒子が容器下方に溜まり難く、ビーズの局所偏も比較的小さくすることはできていたが、それだけでは不十分であった。
【0009】
また、従来の縦型ビーズミルは、図7に示すように、容器側面の下方に混合液の導入口104、上方に排出口106が設けられており、いずれの開口にもフィルタ(105,107)が配設されている。この排出口106側のフィルタ107によって、ビーズBが取り除かれた状態で処理後混合液が排出される。また、容器上端103には、駆動装置110との間で回転軸109や軸受け周辺をシールする軸シール部108が設けられている。
【0010】
しかし、排出口に面するフィルタが目詰まりを起こすと、容器内の圧力が高くなり、軸シール部は、高圧が付与されたビーズや原料粒子との接触により損傷が生じることがあるため、シールを強化する手段を講じる必要があった。
【0011】
そこで、まず所謂メカニカルシールを使用することが考えられるが、回転による摩耗が大きくなるため、駆動系をその分大きくする必要が生じ、装置の小型化が困難になる。また、メカニカルシールの交換には技術を要するため、ビーズミルへの使用は実際的ではない。良好な撹拌を維持するために、フィルタの目詰まりに起因する軸シールの損傷を回避できる効率的な手段が望まれていた。
【0012】
本発明の目的は、上記問題点に鑑み、原料粒子及びこれを含む混合液に応じて設定された撹拌に適切な流量、流速あるいはビーズ径を変更することなく、常にビーズ及び原料を良好に撹拌できるビーズミルを備えた微粒化装置を提供することにある。また、本発明は、従来よりもビーズミルの軸シール部に損傷を生じ難く、より良好な撹拌が持続できるビーズミルを備えた微粒化装置を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記目的を達成するため、請求項1に記載の発明に係る微粒化装置は、ビーズが収容されると共に、原料粒子を含む混合液が一端側導入口から他端の排出口側へ流動する撹拌室を内部に有する円筒状の容器と、撹拌室内で容器の中心軸上に配置された回転軸と、回転軸に沿って互いに間隔を持って装着されているビーズおよび混合液を撹拌するための複数の回転翼と、容器上端から軸シール部を経て突出する回転軸の端部に連通して該回転軸を回転させる駆動装置と、容器上方で撹拌処理後の混合液とビーズとを分離して排出口側へ混合液を通過させるフィルタ部とを備え、前記容器を前記回転軸と共に鉛直方向に対して予め定められた角度で傾斜させた状態で保持されるビーズミルと、混合液が収容され、前記ビーズミルに接続される原料タンクと、混合液をビーズミルに送るポンプと、を有する微粒化装置において、前記ビーズミルの複数の回転翼は、個数及び間隔の配列構成を変更可能に且つそれぞれ交換可能に前記回転軸に装着されるものであり、前記ビーズミルの複数の回転翼の1つ以上が、前記回転軸に沿って一方向への流れを形成するプロペラ構造を有しているものである。
【0014】
請求項2に記載の発明に係る微粒化装置は、請求項1に記載の微粒化装置において、前記ビーズミルのプロペラ構造を有する回転翼として、前記回転軸の装着状態でビーズミルの上向き下流側への撹拌流れを形成するものと、ビーズミルの下向き上流側への撹拌流れを形成するものとを備えていることを特徴とする。
【0015】
請求項3に記載の発明に係る微粒化装置は、請求項1又は2に記載の微粒化装置において、前記ビーズミルのプロペラ構造を有する回転翼として、前記回転軸の装着状態でビーズミルの上向き下流側への撹拌流れを形成するものが、少なくとも前記回転軸の最下端に装着されているものである。
【0016】
請求項4に記載の発明に係る微粒化装置は、請求項1〜3のいずれか1項に記載の微粒化装置において、前記ビーズミルのプロペラ構造を有する回転翼として、その回転方向が正逆切換可能なものを備えていることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の微粒化装置。
【0017】
請求項5に記載の発明に係る微粒化装置は、請求項1〜4のいずれか1項に記載の微粒化装置において、前記フィルタ部は、前記容器の上端より撹拌室内側で前記回転軸に同軸状に装着されて該回転軸の回転に伴って回転し、ビーズが除去された混合液を排出口側へ通過させる円筒状フィルタ部材を備え、前記排出口は、前記円筒状フィルタ部材を通過した前記容器の上端より下流側で前記軸シール部より上流側に配設されているものである。
【0018】
請求項6に記載の発明に係る微粒化装置は、請求項5に記載の微粒化装置において、前記ビーズミルの駆動装置は、前記回転軸を正方向と逆方向とに切換可能に回転駆動させるものである。
【発明の効果】
【0019】
本発明の微粒化装置によれば、ビーズミルの回転翼の配列構成を適宜変更することができ、また複数の回転翼の1つ以上が回転軸に沿って一方向への流れを形成するプロペラ構造を有しているものであるため、処理対象である混合液の粘性等の問題があっても、好適な撹拌時の流速、流量を変更することなく、回転翼の配列構成の変更で撹拌室内の流れを制御して良好な微粒化撹拌処理を維持することが可能となるという効果がある。
【0020】
また、本発明の微粒化装置において、排出口を容器の上端より下流側で軸シール部より上流側に配設し、円筒状フィルタ部材を容器上端より撹拌室内側で回転軸に同軸状に装着して該回転軸の回転に伴って回転される構成とすることによって、微粒化撹拌処理の間、混合液から除去されたビーズがフィルタ部材に付着しようとするのを振り払って目詰まりを低減できるという効果を有する。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】本願発明の一実施例における縦型ビーズミルの全体構成を示す概略側断面図である。
図2図1の縦型ビーズミルの回転翼の配列構成を変更する際の分解状態を示す容器部分の概略斜視図である。
図3図1の縦型ビーズミル1に装着されている2種の回転翼を示す模式図であり、(a)は上向き流れ発生用の回転翼をビーズミルの下流側からみた状態の斜視図、(b)は下向き流れ発生用の回転翼をビーズミルの下流側からみた状態の斜視図である。
図4図1の縦型ビーズミルに装着されている円筒状フィルタ部材を示す模式図であり、(a)ビーズミルの上流側からみた概略斜視図、(b)は下流側からみた概略斜視図、(c)は断面斜視図である。
図5】本発明の微粒化装置における縦型ビーズミルに装着可能な別の回転翼の例を示す斜視図である。
図6】本発明による微粒化装置の全体構成の例を示す概略構成図である。
図7】従来の縦型ビーズミルの一例を示す概略側断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明の微粒化装置においては、ビーズが収容されると共に、原料粒子を含む混合液が一端側導入口から他端の排出口側へ流動する撹拌室を内部に有する円筒状の容器が、撹拌室内で容器の中心軸上に配置されてビーズおよび混合液を撹拌するための複数の回転翼が互いに間隔を持って装着されている回転軸と共に鉛直方向に対して予め定められた角度で傾斜している縦型ビーズミルを備え、駆動装置によって容器の上端から軸シール部を経て突出する端部に連通して回転軸を回転させ、容器上方でフィルタ部によって撹拌処理後の混合液とビーズとを分離して排出口側へ混合液を通過させるものであり、前記複数の回転翼が、個数及び間隔の配列構成を変更可能に且つそれぞれ交換可能に前記回転軸に装着され、これら複数の回転翼の1つ以上が、前記回転軸に沿って一方向への流れを形成するプロペラ構造を有しているものである。
【0023】
以上の構成において、本発明の微粒化装置では、適宜、ビーズミルにて撹拌される混合液の粘性やビーズ径に応じて、それぞれ交換可能な回転翼を個数や間隔を変更して配列構成を変更することができるため、回転軸の回転速度によって決定される撹拌流速、流量を変更することなく、処理対象である混合液中の原料粒子のために設定された好適な条件のまま、良好な撹拌微粒化処理が続けられる。なお、ビーズミルの導入口には、混合液を収容する原料タンクに連通したポンプによって混合液が導入されるが、ビーズミルの排出口から排出される混合液を原料タンクに戻す回路を構成することによって、ビーズミルによる連続微粒化処理が行える。
【0024】
本発明においては、特に、複数の回転翼の1つ以上が、前記回転軸に沿って一方向への流れを形成するプロペラ構造を有しているものとすることで、そのプロペラ構造を有する回転翼を含む複数の回転翼の配列構成を選択、制御することによって、撹拌室内での混合液の流れが制御しやすくなり、ビーズの偏在を低減してより均一な分布が可能となり、従来より良好な撹拌処理を持続することができる。
【0025】
撹拌室内の流れ方向としては、回転軸に沿って容器の上方下流側へ向かう流れと、容器の下方上流側へ向かう流れとの二方向があり、両方向の流れの組み合わせによってビーズの均一分布とこれによる良好なビーズミルの微粒化性能を得ることができる。そこで、各方向用のプロペラ構造を有するを回転翼を二種類、即ち回転軸への装着状態にてビーズミルの上向き下流側への撹拌流れを形成するものとビーズミルの下向き上流側への撹拌流れを形成するものとを用意する構成を基準とする。
【0026】
また、一種の回転翼でも、その回転方向を正逆切換可能とすれば、上向き・下向きの両方の流れを得ることができる。この場合、一方向の流れを形成するプロペラ構造を有する回転翼だけの配列構成でも、所望の向きの流れを形成することが可能となる。
【0027】
ビーズミルの回転軸に装着される各回転翼は、該回転軸が貫通挿入される筒状本体の上下両端を同一形状とすることによって、どの位置に配されても、隣り合う回転翼の本体と、あるいは所定間隔をとるためのスペーサやアダプタと当接または連結することができる。
【0028】
なお、縦型ビーズミルでは、重力によって容器の底部に混合液やビーズが滞る傾向にあるため、複数の回転翼のうち、少なくとも回転軸の最下端に位置には、ビーズミルの上向き下流側へ向かう撹拌流れを形成するプロペラ構造を有する回転翼を装着することが望ましい。また、混合液の粘性が高く、ビーズが容器の上方に偏在しやすい場合には、回転軸の上方位置に、下向き上流側への撹拌流れを形成するプロペラ構造を有する回転翼を配置することによって、ビーズの上方偏在を解消できる。
【0029】
以上のように、上向き流れ用の回転翼と下向き流れ用の回転翼とを適宜配列して、撹拌室内の混合液流れを制御することによって、ビーズの均一分布を図ることができる。また、ビーズミルに装着される全回転翼をこのようなプロペラ構造を有する回転翼のみとすることもできるが、異なるタイプの回転翼を混在させることも可能である。例えば、プロペラ構造を有する回転翼の部分的な配列による所望の流れが確保できれば、他の回転翼として、例えば、より強力な撹拌力を発揮できるタイプの回転翼を配置することにより、粉砕力の向上も期待できる。
【0030】
また、排出口を、容器の上端より下流側で軸シール部より上流側に配設すると共に、フィルタ部として、円筒状フィルタ部材を容器の上端より撹拌室内側に設けることによって、軸シール部より上流側でビーズが除去された混合液が排出口側へ通過導出されるため、従来タイプのように圧力が付与されたビーズや混合液中の原料粒子が軸シール部に接して損傷を生じさせることがなくなる。縦型ビーズミルでは、このように配置された円筒状フィルタ部材より下流側の上方部では、空気の層が存在し、軸シール部は混合液にも接触することがなく、損耗することがほとんど無くなる。そして、円筒状フィルタ部材を回転軸に同軸状に装着し、該回転軸の回転に伴って回転させる構成によって、ビーズがフィルタ部材に付着し難くなり、目詰まりを低減して良好な撹拌が維持し易くなる。
【0031】
さらに、駆動装置を、回転軸を正方向と逆方向とに選択的に切換可能に回転駆動させるものとすることによって、円筒状フィルタ部材も正転、逆転を繰り替えさせて、フィルタに付着したビーズを強制的に振り払うことが可能となる。
【0032】
本発明の微粒化装置は、以上の構成を備えた縦型ビーズミルを単独で混合液を収容する原料タンクとポンプに接続させた構成はもちろん、さらにジェットミルを直列または並列で接続した複合型の微粒化装置であっても良い。
【実施例】
【0033】
本発明の一実施例として、本発明による縦型ビーズミルの構成を図1〜5に示す。図1は、縦型ビーズミル1の全体構成を示す概略側断面図であり、図2は、図1の縦型ビーズミル1の回転翼の配列構成を変更する際の分解状態を示す容器部分の概略斜視図である。図3は、図1の縦型ビーズミル1に装着されている回転翼を示す模式図であり、(a)は上向き流れ発生用の回転翼をビーズミルの下流側からみた状態の斜視図、(b)は下向き流れ発生用の回転翼をビーズミルの下流側からみた状態の斜視図である。図4は、図1の縦型ビーズミルに装着されている円筒状フィルタ部材を示す模式図であり、(a)ビーズミルの上流側からみた概略斜視図、(b)は下流側からみた概略斜視図、(c)は断面斜視図である。図5は、本発明における縦型ビーズミルに装着可能な他の回転翼の例を示す概略斜視図である。図6は、本発明による微粒化装置の全体構成の例を示す概略構成図である。
【0034】
本実施例による縦型ビーズミル1は、内部が撹拌室3となる円筒状の容器2と、撹拌室内で容器2の中心軸上に配置された回転軸9と、容器上端6から軸シール部8を経て突出する回転軸9の上端部に連通して該回転軸9を回転させる駆動装置としてのモータ10を備えている。回転軸9には、複数の回転翼11がそれぞれ交換可能に装着されている。
【0035】
なお、軸シール部8としては、従来よりシールに用いられている各種部材を回転軸周りに配置して構成できる。例えば、耐摩耗性に優れた超高分子量ポリエチレン樹脂(UHMW−PE)のシール材やOリング等を組み合わせたものなどが望ましい。
【0036】
本実施例においては、回転軸9に装着される回転翼11は、回転軸9に沿って二方向への流れをそれぞれ形成する二種類のプロペラ構造の回転翼を複数個ずつ用意し、これら二種から任意に選択することによって、上向き(ビーズミルの下流側)への流れを発生する状態のもの11aと、下向き(ビーズミルの上流側)への流れを発生する状態のもの11bとを任意に選択して回転軸9に配列して装着できるものとした。
【0037】
図3に示すように、回転翼11は、いずれのタイプ(11a,11b)も、回転軸9が貫通挿入される円筒状本体12の外周に、所定のプロペラ形状を有する数枚の羽根(14a,14b)が等角度間隔で形成される共通の基本構成を有している。本体12に形成された貫通孔13は、回転軸9と嵌合する断面形状を有しており、回転軸9の貫通挿入による装着状態にて、回転翼(11a,11b)は回転軸9の回転に伴って回転する。二種の回転翼(11a,11b)、円筒状本体12の両端面(12a、12b)を、互いに同一形状とすることによって、どの位置に配置されても隣合う回転翼11の対面する端面同士がどちら向きであっても、互いに良好に当接でき、あるいは回転翼11同士の間隔を調整する嵌合貫通孔を備えたリング状のスペーサや円筒状本体12の両端に嵌合できるアダプタを介在させることもできる。
【0038】
これら複数の回転翼11は、所定の個数、向きで、また必要に応じてスペーサやアダプタを介して、順次回転軸9を相対的に貫通挿入していき、最後に回転軸9の下端をワッシャ及びナット等の締結部材15で締めることにより、これら回転翼11は抜け止め状態で装着固定が完了する。そして、複数の回転翼11は、回転軸9に対して交換可能で配列構成を変更することができ、所望の撹拌条件に応じて設定された個数と間隔、向きで再配列することができる。
【0039】
そこで、少なくとも最下端に位置する回転翼11aを上向きの流れを発生させる状態で回転軸9に装着することによって、重力により容器2の下端側に滞る傾向にある混合液やビーズBを上方下流側へ流すことができる。一方、少なくとも最上端に位置する回転翼11bを下向きの流れを発生させる状態で回転軸9に装着することによって、比較的混合液の粘性が高く、ビーズBが容器上方へ偏在する傾向にある場合でも、容器上方に来たビーズBを下向きに流すことができる。このように、上向きの流れを発生する回転翼11aと下向きの流れを発生する回転翼11bとを適宜選択して配列することによって、微粒化工程においてビーズBをより均一に分布させ、良好な撹拌処理の持続に寄与することができる。
【0040】
回転翼11の配列構成を変更する場合、図2に示すように、容器部分を分解して再び逆手順で組み立てるという簡便な方法で行える。具体的には、まず容器2の上下端からフェルール(F4、F7)を取り外し、容器2を外して撹拌室3内にあった回転軸9を露出させて、回転軸下端の締結部材15を外せば、下端側の回転翼11から順次回転軸9より抜いて取り外すことができる。組み付けは、予め設定された回転翼11の個数と向き、間隔という配列構成に従って、逆の手順で装着していくだけである。
【0041】
また、本実施例では、ビーズBの容器2内への投入および原料粒子を含む混合液を撹拌室3へ供給する導入口4を容器2の下端底部側に設けた。具体的には、導入口4は、円筒状の容器2の下端開口を固定スクリーンフィルタ5を介して塞ぐフェルールF4の中央に形成された貫通孔から構成されている。また、この導入口4は、従来と同様に円筒状容器の下方側面に形成してもよい。
【0042】
容器2の上端6には、撹拌室内側に円筒状フィルタ部材20が配置されている。該円筒状フィルタ部材20は、回転軸9に同軸状に装着されており、回転軸9の回転に伴って回転する。さらに、容器2の上端開口には、排出口7を形成するT字状のフェルールF7が接続されている。該フェルールF7の他端側に軸シール部8が設けられており、撹拌室3から円筒状フィルタ部材20を通過したビーズ除去後の混合液は、軸シール部8へ達することなく排出口7へ流れる。
【0043】
円筒状フィルタ部材20は、例えば、図4に示すように、円筒状のウエッジワイヤースクリーンからなるフィルタ本体21の上下端に固定された各キャップ(22,24)の中心に形成された貫通孔(23,25)によって回転軸9に嵌合装着される。各貫通孔(23,25)は、回転軸9と勘合する断面形状を有しており、回転軸9の貫通装着状態において、回転軸9の回転に伴って、上下端のキャップ(22,24)と共にフィルタ本体21がその中心軸周りに回転される。撹拌微粒化処理されながら容器2の下方から上方へ流れてきた混合液は、フィルタ本体21の外周から内部へ通過し、上端キャップ24の混合液流路26から容器外へ導出され、排出口7へ送られる。
【0044】
以上の構成において、円筒状フィルタ部材20も、微粒化工程における撹拌処理の間回転するため、各本微粒化処理後の混合液を通過させてビーズBを除去しながら、フィルタに付着しようとするビーズBを振り払うことができる。これにより、フィルタ部材20は目詰まりし難くなる。
【0045】
円筒状フィルタ部材20は、微粒化撹拌処理に用いられるビーズ径に応じた網目サイズのものが適宜選択され、回転軸9に装着される。この円筒状フィルタ部材20も前述した回転翼11の配列変更の際の手順とほぼ同様の手順で取り外すことができ、全回転翼11を外した後に回転軸9から抜き取り、新たな別の円筒状フィルタ部材20へと交換することができる。
【0046】
次に、上記に示した縦型ビーズミルの基本構成において、原料タンクとポンプを接続して微粒化装置を構成した例を図6に示す。図6に示す微粒化装置の構成においては、縦型ビーズミル1bとして、図1の縦型ビーズミル1と同様の基本構成で導入口4bを容器の下方側面に設けたものとし、傾斜角度を鉛直方向から10°(水平方向から80°)で保持した状態としたものである。
【0047】
原料粒子を含む混合液が収容された原料タンクTが、ポンプPと熱交換器Hを介してビーズミル1の導入口4bに接続され、排出口7は原料タンクTに連通されている。従って、導入口4bから導入された混合液は、撹拌室3内を撹拌処理されながら上方へ流動し、円筒状フィルタ部材20によってビーズBが除去された状態で排出口7から原料タンクTへ戻され、再びポンプPによって、熱交換器Hを介して冷却された後、ビーズミル1bへ送られる。このような循環を繰り返しながら、連続処理が繰り返し行われる。
【0048】
図6に示した微粒化装置において、図1に示す回転翼の配列パターン、即ち、最下端から上向きの流れを形成する回転翼11aを1個、それ以外の上方の6個を下向きの流れを形成する回転翼11bとした配列にて、従来のビーズミルにおいては上方にビーズBが偏在してしまっていた比較的粘性の高い混合液に対して同じ条件で撹拌を行ったところ、ビーズBの上方偏在が解消され、全体的に均一な分布となっているのが確認された。
【0049】
以上のように、同じ条件でも、回転翼としてプロペラ構造のものを所定の配列パターンで装着することによってビーズBの均一分布が得られ、これにより良好な撹拌処理を維持することが可能となる。従って、本発明のビーズミルを備えた微粒化装置によれば、対象となる処理混合液の粘性等の問題で、従来行わざるを得なかった好適な撹拌の流量、流量の変更を行わなくても、回転翼の選択、配列構成を変更して対応することで高い微粒化性能が実現可能となる。
【0050】
なお、本発明の微粒化装置において、ビーズミルに装着される回転翼11は、上記のように必ずしも全てプロペラ構造を有するものにする必要はなく、同様に交換、配列変更可能であれば、異なるタイプの回転翼を混在して装着することができる。例えば、流れの形成より強力な撹拌力を発生できるタイプのものを、回転軸9の上下に部分的に配置されるプロペラ構造を有する回転翼(11a,11b)によって所望の流れが確保されていれば、それ以外の中央領域に配置される回転翼11として装着すれば、良好なビーズBの均一分布に加え、強力な混合液撹拌力による粉砕力の向上によって、微粒化性能の向上が期待できる。その他、比較的穏やかな撹拌力の回転翼、例えば図5に示すような、突起17付きのディスク型回転翼16を混在させて撹拌力の調整を行うことも可能である。
【符号の説明】
【0051】
1,1b,101:縦型ビーズミル
2,102:容器
3:撹拌室
4,4b,104:導入口
5,105,107:フィルタ
6,103:容器上端
7,106:排出口
8,108:軸シール部
9,109:回転軸
F4,F7:フェルール
10,110:モータ(駆動装置)
11:回転翼
11a:上向きの流れを発生するプロペラ構造を有する回転翼
11b:下向きの流れを発生するプロペラ構造を有する回転翼
12:回転翼の円筒状本体
12a,12b:本体端面
13:(回転翼の)貫通孔
14a,14b:羽根
15,115:締結部材
16:ディスク型回転翼
17:突起
20:円筒状フィルタ部材
21:フィルタ本体
22:下端キャップ
24:上端キャップ
23,25:(上下端キャップの)貫通孔
26:混合液流路
111:回転翼
T:タンク
P:ダイヤフラムポンプ
H:熱交換器
B:ビーズ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7