【実施例】
【0033】
本発明の一実施例として、本発明による縦型ビーズミルの構成を
図1〜5に示す。
図1は、縦型ビーズミル1の全体構成を示す概略側断面図であり、
図2は、
図1の縦型ビーズミル1の回転翼の配列構成を変更する際の分解状態を示す容器部分の概略斜視図である。
図3は、
図1の縦型ビーズミル1に装着されている回転翼を示す模式図であり、(a)は上向き流れ発生用の回転翼をビーズミルの下流側からみた状態の斜視図、(b)は下向き流れ発生用の回転翼をビーズミルの下流側からみた状態の斜視図である。
図4は、
図1の縦型ビーズミルに装着されている円筒状フィルタ部材を示す模式図であり、(a)ビーズミルの上流側からみた概略斜視図、(b)は下流側からみた概略斜視図、(c)は断面斜視図である。
図5は、本発明における縦型ビーズミルに装着可能な他の回転翼の例を示す概略斜視図である。
図6は、本発明による微粒化装置の全体構成の例を示す概略構成図である。
【0034】
本実施例による縦型ビーズミル1は、内部が撹拌室3となる円筒状の容器2と、撹拌室内で容器2の中心軸上に配置された回転軸9と、容器上端6から軸シール部8を経て突出する回転軸9の上端部に連通して該回転軸9を回転させる駆動装置としてのモータ10を備えている。回転軸9には、複数の回転翼11がそれぞれ交換可能に装着されている。
【0035】
なお、軸シール部8としては、従来よりシールに用いられている各種部材を回転軸周りに配置して構成できる。例えば、耐摩耗性に優れた超高分子量ポリエチレン樹脂(UHMW−PE)のシール材やOリング等を組み合わせたものなどが望ましい。
【0036】
本実施例においては、回転軸9に装着される回転翼11は、回転軸9に沿って二方向への流れをそれぞれ形成する二種類のプロペラ構造の回転翼を複数個ずつ用意し、これら二種から任意に選択することによって、上向き(ビーズミルの下流側)への流れを発生する状態のもの11aと、下向き(ビーズミルの上流側)への流れを発生する状態のもの11bとを任意に選択して回転軸9に配列して装着できるものとした。
【0037】
図3に示すように、回転翼11は、いずれのタイプ(11a,11b)も、回転軸9が貫通挿入される円筒状本体12の外周に、所定のプロペラ形状を有する数枚の羽根(14a,14b)が等角度間隔で形成される共通の基本構成を有している。本体12に形成された貫通孔13は、回転軸9と嵌合する断面形状を有しており、回転軸9の貫通挿入による装着状態にて、回転翼(11a,11b)は回転軸9の回転に伴って回転する。二種の回転翼(11a,11b)、円筒状本体12の両端面(12a、12b)を、互いに同一形状とすることによって、どの位置に配置されても隣合う回転翼11の対面する端面同士がどちら向きであっても、互いに良好に当接でき、あるいは回転翼11同士の間隔を調整する嵌合貫通孔を備えたリング状のスペーサや円筒状本体12の両端に嵌合できるアダプタを介在させることもできる。
【0038】
これら複数の回転翼11は、所定の個数、向きで、また必要に応じてスペーサやアダプタを介して、順次回転軸9を相対的に貫通挿入していき、最後に回転軸9の下端をワッシャ及びナット等の締結部材15で締めることにより、これら回転翼11は抜け止め状態で装着固定が完了する。そして、複数の回転翼11は、回転軸9に対して交換可能で配列構成を変更することができ、所望の撹拌条件に応じて設定された個数と間隔、向きで再配列することができる。
【0039】
そこで、少なくとも最下端に位置する回転翼11aを上向きの流れを発生させる状態で回転軸9に装着することによって、重力により容器2の下端側に滞る傾向にある混合液やビーズBを上方下流側へ流すことができる。一方、少なくとも最上端に位置する回転翼11bを下向きの流れを発生させる状態で回転軸9に装着することによって、比較的混合液の粘性が高く、ビーズBが容器上方へ偏在する傾向にある場合でも、容器上方に来たビーズBを下向きに流すことができる。このように、上向きの流れを発生する回転翼11aと下向きの流れを発生する回転翼11bとを適宜選択して配列することによって、微粒化工程においてビーズBをより均一に分布させ、良好な撹拌処理の持続に寄与することができる。
【0040】
回転翼11の配列構成を変更する場合、
図2に示すように、容器部分を分解して再び逆手順で組み立てるという簡便な方法で行える。具体的には、まず容器2の上下端からフェルール(F4、F7)を取り外し、容器2を外して撹拌室3内にあった回転軸9を露出させて、回転軸下端の締結部材15を外せば、下端側の回転翼11から順次回転軸9より抜いて取り外すことができる。組み付けは、予め設定された回転翼11の個数と向き、間隔という配列構成に従って、逆の手順で装着していくだけである。
【0041】
また、本実施例では、ビーズBの容器2内への投入および原料粒子を含む混合液を撹拌室3へ供給する導入口4を容器2の下端底部側に設けた。具体的には、導入口4は、円筒状の容器2の下端開口を固定スクリーンフィルタ5を介して塞ぐフェルールF4の中央に形成された貫通孔から構成されている。また、この導入口4は、従来と同様に円筒状容器の下方側面に形成してもよい。
【0042】
容器2の上端6には、撹拌室内側に円筒状フィルタ部材20が配置されている。該円筒状フィルタ部材20は、回転軸9に同軸状に装着されており、回転軸9の回転に伴って回転する。さらに、容器2の上端開口には、排出口7を形成するT字状のフェルールF7が接続されている。該フェルールF7の他端側に軸シール部8が設けられており、撹拌室3から円筒状フィルタ部材20を通過したビーズ除去後の混合液は、軸シール部8へ達することなく排出口7へ流れる。
【0043】
円筒状フィルタ部材20は、例えば、
図4に示すように、円筒状のウエッジワイヤースクリーンからなるフィルタ本体21の上下端に固定された各キャップ(22,24)の中心に形成された貫通孔(23,25)によって回転軸9に嵌合装着される。各貫通孔(23,25)は、回転軸9と勘合する断面形状を有しており、回転軸9の貫通装着状態において、回転軸9の回転に伴って、上下端のキャップ(22,24)と共にフィルタ本体21がその中心軸周りに回転される。撹拌微粒化処理されながら容器2の下方から上方へ流れてきた混合液は、フィルタ本体21の外周から内部へ通過し、上端キャップ24の混合液流路26から容器外へ導出され、排出口7へ送られる。
【0044】
以上の構成において、円筒状フィルタ部材20も、微粒化工程における撹拌処理の間回転するため、各本微粒化処理後の混合液を通過させてビーズBを除去しながら、フィルタに付着しようとするビーズBを振り払うことができる。これにより、フィルタ部材20は目詰まりし難くなる。
【0045】
円筒状フィルタ部材20は、微粒化撹拌処理に用いられるビーズ径に応じた網目サイズのものが適宜選択され、回転軸9に装着される。この円筒状フィルタ部材20も前述した回転翼11の配列変更の際の手順とほぼ同様の手順で取り外すことができ、全回転翼11を外した後に回転軸9から抜き取り、新たな別の円筒状フィルタ部材20へと交換することができる。
【0046】
次に、上記に示した縦型ビーズミルの基本構成において、原料タンクとポンプを接続して微粒化装置を構成した例を
図6に示す。
図6に示す微粒化装置の構成においては、縦型ビーズミル1bとして、
図1の縦型ビーズミル1と同様の基本構成で導入口4bを容器の下方側面に設けたものとし、傾斜角度を鉛直方向から10°(水平方向から80°)で保持した状態としたものである。
【0047】
原料粒子を含む混合液が収容された原料タンクTが、ポンプPと熱交換器Hを介してビーズミル1の導入口4bに接続され、排出口7は原料タンクTに連通されている。従って、導入口4bから導入された混合液は、撹拌室3内を撹拌処理されながら上方へ流動し、円筒状フィルタ部材20によってビーズBが除去された状態で排出口7から原料タンクTへ戻され、再びポンプPによって、熱交換器Hを介して冷却された後、ビーズミル1bへ送られる。このような循環を繰り返しながら、連続処理が繰り返し行われる。
【0048】
図6に示した微粒化装置において、
図1に示す回転翼の配列パターン、即ち、最下端から上向きの流れを形成する回転翼11aを1個、それ以外の上方の6個を下向きの流れを形成する回転翼11bとした配列にて、従来のビーズミルにおいては上方にビーズBが偏在してしまっていた比較的粘性の高い混合液に対して同じ条件で撹拌を行ったところ、ビーズBの上方偏在が解消され、全体的に均一な分布となっているのが確認された。
【0049】
以上のように、同じ条件でも、回転翼としてプロペラ構造のものを所定の配列パターンで装着することによってビーズBの均一分布が得られ、これにより良好な撹拌処理を維持することが可能となる。従って、本発明のビーズミルを備えた微粒化装置によれば、対象となる処理混合液の粘性等の問題で、従来行わざるを得なかった好適な撹拌の流量、流量の変更を行わなくても、回転翼の選択、配列構成を変更して対応することで高い微粒化性能が実現可能となる。
【0050】
なお、本発明の微粒化装置において、ビーズミルに装着される回転翼11は、上記のように必ずしも全てプロペラ構造を有するものにする必要はなく、同様に交換、配列変更可能であれば、異なるタイプの回転翼を混在して装着することができる。例えば、流れの形成より強力な撹拌力を発生できるタイプのものを、回転軸9の上下に部分的に配置されるプロペラ構造を有する回転翼(11a,11b)によって所望の流れが確保されていれば、それ以外の中央領域に配置される回転翼11として装着すれば、良好なビーズBの均一分布に加え、強力な混合液撹拌力による粉砕力の向上によって、微粒化性能の向上が期待できる。その他、比較的穏やかな撹拌力の回転翼、例えば
図5に示すような、突起17付きのディスク型回転翼16を混在させて撹拌力の調整を行うことも可能である。