特開2017-94447(P2017-94447A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特開2017094447-缶体のシームカッター装置 図000003
  • 特開2017094447-缶体のシームカッター装置 図000004
  • 特開2017094447-缶体のシームカッター装置 図000005
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2017-94447(P2017-94447A)
(43)【公開日】2017年6月1日
(54)【発明の名称】缶体のシームカッター装置
(51)【国際特許分類】
   B23D 21/02 20060101AFI20170428BHJP
   B23D 21/08 20060101ALI20170428BHJP
【FI】
   B23D21/02 B
   B23D21/08 A
【審査請求】有
【請求項の数】4
【出願形態】OL
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2015-229304(P2015-229304)
(22)【出願日】2015年11月25日
(71)【出願人】
【識別番号】594191168
【氏名又は名称】小林 清弘
(74)【代理人】
【識別番号】100112416
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 定信
(72)【発明者】
【氏名】小林 清弘
(57)【要約】
【課題】 マニュアル操作によって昇降される缶体の巻締部のうち複数の測定箇所を自動的に切断することにより、面倒な準備作業をすることなく迅速かつ容易に前記切断部位の測定を実施可能にする。
【解決手段】 スピンドル15の上端に外周の複数箇所に切り込み溝孔20を有するリフタープレート2を設け、モータ3の駆動軸3aにカッターホルダ4を取り付け、このカッターホルダ4にカッター刃5を着脱自在に保持し、基台1上に支柱6を介して支持された上部支持台7に、前記リフタープレート2との間に缶体Kを挟持するアッパープレート8を同心配置し、ハンドル9の操作によってそのアッパープレート8を昇降可能にし、前記基台1上に安全保護カバー10を載置および取り外し可能にして、前記ハンドル9の操作により下降させたアッパープレート8とリフタープレート2との間に缶体Kを挟持させた状態で、缶体Kの巻締め部を含む缶胴の所定領域をカッター刃5により切り込ませる構成である。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基台に設置されて上方に付勢されたスピンドルと、
該スピンドルの上端に取り付けられ、缶体の一端を支承するとともに外周の複数箇所に切り込み溝孔を有するリフタープレートと、
前記基台上に設置したモータの駆動軸に取り付けられたカッターホルダと、
該カッターホルダに着脱自在に保持されて、前記スピンドル周辺に外周部分が臨むカッター刃と、
前記基台上に支柱を介して支持された上部支持台に前記リフタープレートに対向するように同心配置され、該リフタープレートとの間に前記缶体を挟持するアッパープレートと、
前記基台に設置されたハンドルの操作によって、前記アッパープレートを昇降可能にする動力伝達機構と、
少なくとも前記モータおよびカッターホルダを被うように前記基台上に載置および載置解除可能に設置され、天部に前記リフタープレートの昇降を許容する開口を持つ安全保護カバーと、
を備えてなり、
前記アッパープレートとの間に挟持するように前記リフタープレート上に載置した前記缶体を、前記ハンドルの操作により下降させながら、前記モータにより駆動される前記カッター刃を前記缶体の巻締め部を含む所定領域に切り込ませることを特徴とする缶体のシームカッター装置。
【請求項2】
前記モータはスピンドルを中心とする所定の円周上に複数台が等間隔配置されていることを特徴とする請求項1記載の缶体のシームカッター装置。
【請求項3】
前記カッター刃は前記モータごとのカッターホルダに2枚宛設けられていることを特徴とする請求項1記載の缶体のシームカッター装置。
【請求項4】
前記モータは変速機付きであることを特徴とする請求項1記載の缶体のシームカッター装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、缶体の巻締部(シーム)を切断し、その切断面の形態を検査する場合等に用いる缶体のシームカッター装置に関する。
【0002】
缶詰製品の容器保存を可能にするために、食品や飲料などの内容物を缶胴内に充填した後、蓋を被せて缶体内を完全に密封することが肝要である。この缶詰の密封は二重巻締機を用いて、缶胴のフランジ部に蓋のカール部を抱き合わせるようにシーリングコンパウンドとともに巻き込んで圧着することでなされる。すなわち、二重巻締機のリフター、巻締チャック、第1および第2の巻締ロールの作動によって、缶胴のフランジ部に蓋のカール部を重ねて折り曲げるように巻締めることにより、缶体内の気密状態を確保することができる。
【0003】
缶詰の不完全な密封では、過熱殺菌後において微生物に汚染された冷却水や空気を缶内に吸い込むことで、内容物の変敗や品質劣化を招き、製品の長期保存が妨げられるばかりでなく、消費者の健康を害する惧れがある。従って、巻締機の適切な調整、完成した巻締の状態および諸寸法を適正に管理することが重要である。また、変形した缶胴および蓋からなる空缶の使用は密封不良になるので、空缶の保管や輸送には注意が必要である。
【0004】
また、缶詰において、缶胴のフランジ部には内容物の例えば魚のヒレや骨などの一部が乗る場合があり、良好な巻締状態を確保できなくなる場合があり、かかる観点からの食品の充填管理も適切に行われる必要がある。さらに、缶体の巻締部は構造上強度が高いものの、粗雑な扱い方によって大きな衝撃や振動を受けると密封性が損なわれる場合がある。このため、殺菌装置への積載時や搬送時に巻締済の缶詰は丁寧に扱う必要がある。
【0005】
一方、前述のような缶体の密閉不良解消の観点から、空缶や缶詰の缶体における巻締部の状態および諸寸法を適正かつ高精度に管理することが重要である。すなわち、その巻締部の状態を正しく把握し、完全密封された製缶技術の向上に寄与するために、従来から缶体の巻締部を切断して、その切断面を目視したり、計測器により切断面各部の寸法を計測したり、更には画像診断装置などを用いて切断面各部の形態や寸法を詳細に診断したりすることが行われている。
【背景技術】
【0006】
従来、かかる巻締部の切断面の診断のために、これまでは糸鋸や丸鋸を用いてマニュアルで、前記巻締部をこの巻締部の巻締方向とは交差する方向に切断する方法が広く採用されている(例えば、非特許文献1参照)。
しかしながら、かかる従来の巻締部の切断装置である缶体のシームカッター装置にあっては、糸鋸や丸鋸を用いて予め決められた巻締部の切断部位を注視しながら切断する必要があり、この場合にその切断の作業効率に個人差が生じることにより、切断面の診断のための切断作業の準備段階で多大の時間と手間がかかるという不都合があった。
【0007】
そこで、缶の巻締部の切断作業を迅速に行うことのできる缶の切断装置が提供されている(例えば、特許文献1参照)。この缶の切断装置は、缶の巻締部を容易、迅速に切断できるもので好ましいものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2008−36764号公報
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】缶詰用金属缶と二重巻締(平成19年2月10日社団法人日本缶詰協会発行)第72頁
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、この缶の切断装置においても、作業者が缶を切断刃に手で押圧して切断するため、その反発力で缶がふらつくことが発生したり、また、切断刃から缶を引き上げるときにふらつくこともあり、これにより缶の巻締部の切断面がきれいに切断できないという課題があった。
【0011】
本発明は前述のような従来の問題点を解消するものであり、その目的とするところは、マニュアル操作によって昇降される缶体の巻締部のうち複数の測定箇所を自動的に、かつ、切断面をきれいに切断することにより、面倒な準備作業をすることなく誰でもが迅速かつ容易に前記切断部位の測定を実施可能にする缶体のシームカッター装置を得ることにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
前記目的達成のために、本発明にかかる缶体のシームカッター装置は、基台に設置されて上方に付勢されたスピンドルと、該スピンドルの上端に取り付けられ、缶体の一端を支承するとともに外周の複数箇所に切り込み溝孔を有するリフタープレートと、前記基台上に設置したモータの駆動軸に取り付けられたカッターホルダと、該カッターホルダに着脱自在に保持されて、前記スピンドル周辺に外周部分が臨むカッター刃と、前記基台上に支柱を介して支持された上部支持台に前記リフタープレートに対向するように同心配置され、該リフタープレートとの間に前記缶体を挟持するアッパープレートと、前記基台に設置されたハンドルの操作によって、前記アッパープレートを昇降可能にする動力伝達機構と、少なくとも前記モータおよびカッターホルダを被うように前記基台上に載置および載置解除可能に設置され、天部に前記リフタープレートの昇降を許容する開口を持つ安全保護カバーと、を備えてなり、前記アッパープレートとの間に挟持するように前記リフタープレート上に載置した前記缶体を、前記ハンドルの操作により下降させながら、前記モータにより駆動される前記カッター刃を前記缶体の巻締め部を含む所定領域に切り込ませることを特徴とする。
【0013】
この構成により、リフタープレート上に缶体を載置することで、この缶体を切断加工の中心位置に設置可能にし、モータを駆動させて前記カッターホルダに保持されたカッター刃を前記リフタープレートに設けられた前記切り込み溝内で回転させる。一方、前記ハンドルの回転操作によりアッパープレートを前記リフタープレート上の缶体にこれを挟むように押し当てて、該缶体を徐々に下降させる。この缶体の下降によって缶体は下端部の巻締部に始まって缶胴の所定高さまで自動切断される。このカッター刃による巻締部の切断面は平滑となり、その切断面をそのまま目視観察したり、その切断部を含む部分の缶胴を外側に折り曲げるなどしてその切断面を目視観察したり、あるいはその切断部の構成を計測器を用いて手動的にまたは自動的に計測可能にして、その巻締部における逃げ巻締やラップ割れなどによる密封不良を判定可能にすることができる。
【0014】
また、前記缶体のシームカッター装置において、スピンドルを中心とする所定の円周上に前記モータを複数台等間隔配置したことで、缶体の巻締部を円周方向の複数箇所に亘って同時に切り込むことができ、切り込み部が1箇所の場合に比べて、その巻締部の切断面の状況をより正確かつ明確に観察および計測することができる。さらに、前記カッター刃を前記モータごとのカッターホルダに2枚宛設けたことで、各2枚のカッター刃による切断部間の缶胴部分を折り曲げ自在とすることができ、この折り曲げによって巻締部の切断面の観察及び測定がより迅速化及び容易化することができる。また、前記モータを変速機付きとしたことで、カッター刃の回転数を任意に設定することができ、巻締部の厚さや硬さに合った最適の切断面を観察および測定可能とすることができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、マニュアル操作によって昇降される缶体の巻締部のうち複数の測定箇所を自動的にきれいな切断面に切断することにより、面倒な準備作業をすることなく迅速かつ容易に前記切断部位の観察または計測を容易かつ迅速に実施可能にする。
【0016】
以上、本発明について簡潔に説明した。更に、本発明を実施するための最良の形態を添付の図面を参照して、詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の実施形態による缶体のシームカッター装置を示す縦断正面図である。
図2図1に示す缶体のシームカッター装置の縦断側面図である。
図3図1に示す缶体のシームカッター装置要部の平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施の形態による缶体のシームカッター装置を、図面を参照して詳細に説明する。
【0019】
図1図2および図3は本実施の形態にかかる缶体のシームカッター装置の構成を示す。同図において、本実施形態による缶体のシームカッター装置は基台1と、リフタープレート2と、モータ3と、カッターホルダ4と、カッター刃5と、支柱6と、上部支持台7と、アッパープレート8と、ハンドル9と、安全保護カバー10と、を備えて構成される。これらのうち、基台1は所定長のL型鋼材を用いて立方枠状に組み付けられた下台1aと、この下台1a上に短支柱11を介して水平に取り付けられた上台1bとからなる。
【0020】
下台1aはコンクリート製や鋼材製の基礎12上にボルトなどの締結具によって固定されている。下台1aの天部中央には縦方向に長い取付け用ブラケット一体型のスライドベアリング部材13がボルト・ナットなどの締結具14により取り付けられている。このスライドベアリング部材13の上端部は上台1bの中心部に溶接等により固定されている。このスライドベアリング部材13内にはスピンドル15が昇降方向に摺動自在に挿通されている。また下台1aには複数の支持棒17が締結具17aにより垂下固定され、これらの支持棒17の下端には支持板18が吊持状態にて水平に締結具18aを用いて取り付けられている。この支持板18の中央部にはこれを貫通するように空気スプリング(ガススプリング)19が固定され、この空気スプリング19のロッド19a上端に前記スピンドル15の下端が支承されている。
【0021】
前記リフタープレート2はスライドベアリング13内を摺動するスピンドル15の上端に取り付けられており、その上面には、切断対象である缶体の巻締部(シーム)に適合してこれを安定保持するリング形状の凹所(図示しない)が形成されている。また、このリフタープレート2を円周方向に3等分した所定の角度位置に、外周から内径方向の所定長に亘って切り込み溝孔20が、図3に示すように設けられている。これらの切り込み溝孔20は各角度位置において2本1組設けられ、これらの切り込み溝孔20内に後述のカッター刃5を回転自在にガイド可能にしている。
【0022】
前記モータ3は上台1b上においてスピンドル15を中心とする所定の等間隔の各位置に(3箇所)に設置されており、これらのモータ3の駆動軸3aが同じくスピンドル15の周辺に等間隔に、かつ所定距離を保って水平方向に延びている。そして、これらの駆動軸3aの各端部には2個1組のカッターホルダ4が取り付けられている。このカッターホルダ4には駆動軸3aを中心として垂直回転するカッター刃5がボルト・ナットなどの締結具5aによって着脱可能に固着されている。これらのカッター刃5はスピンドル15周辺のリフタープレート2下部に臨んでいる。なお、図1および図2においてはモータ3およびカッターホルダ4を1箇所に設けて分かり易く示しているが、実際には、図3に示すように円周方向の3箇所に等間隔配置されている。なお、モータ3が変速機付きである場合には、カッター刃5の回転数を例えば毎分10〜3000回転の範囲内で任意に設定することができ、巻締部の厚さや硬さに合った最適の切断面を得ることができる。
【0023】
前記支柱6は基台1の上台1b上に複数本が垂直に設立され、ボルト・ナットなどの締結具21を用いて固定されており、その支柱6の上端に上部支持台7が締結具22を用いて水平に固定されている。この上部支持台7上にはプレート昇降装置23が設置されており、この昇降装置23の入力軸は変速機24を介してブラケット25に回転自在に支承された水平回転軸26端に連結されている。昇降装置23は上部に昇降シリンダ34を有し、この昇降シリンダ34の下降作用により昇降軸27を介して前記アッパープレート8を所定圧で下方へ付勢するように作用する。このアッパープレート8はリフタープレート2上に載置された缶体の上端に圧接して、これを安定保持する形状、サイズに形成されている。このアッパープレート8はリフタープレート2の上方に臨んで、これと共に同心配置されている。
【0024】
前記ハンドル9は上台1bの正面に回転操作可能に設置されてリング状をなし、このハンドル9の中心に固定された長尺のハンドル軸28の端部が上台1bの後方に延びて、この延端にスプロケット29が固定されている。なお、図示しないが、ハンドル軸28の両端がブラケットやスラスト軸受など(図示しない)を介して回転自在に支承されている。また、スプロケット29と前記水平回転軸26に固定されたスプロケット30とに、エンドレスタイプのチェーン31が張設状態にて掛けわたされている。これにより、ハンドル9の回転がスプロケット29、チェーン31およびスプロケット30を介して水平回転軸26に伝えることができる。これらのスプロケット29、30およびチェーン31は回転伝達機構Dを構成している。従って、ハンドル9の回転操作によって昇降装置23の昇降軸27とともにアッパープレート8を任意の速度および移動量にて下降可能にしている。
【0025】
安全保護カバー10はモータ3およびカッターホルダ4を上方から被うように上台1b上に任意に載置可能であり、全体として透明の合成樹脂材により作られている。この安全保護カバー10は全体として下方が開放した矩形の容器の形態をなし、これで被った前記モータ3やカッターホルダ4をその安全保護カバーの外から容易に透視可能となっている。この安全保護カバー10は天部上面に複数個の取手32を有し、この取手32を手で掴み上げることで安全保護カバー10を容易に上台1b上に上げ降ろしすることができる。
【0026】
また、安全保護カバー10の天板の略中央部には前記スピンドル15に支承されたリフタープレート2の昇降を許容する透孔33が設けられている。なお、安全保護カバー10の上台1b上における載置位置は予め決められており、前記リフタープレート2の昇降を許容する位置から透孔33が位置ずれしたことを検知するリミットスイッチ(図示しない)がこの上台1b上の安全保護カバー10付近に設けられている。このリミットスイッチはオン時にモータ3の駆動制御回路によってモータ3の駆動を強制的に緊急停止するように機能する。なお、下台1aには、作業部位を照らす照明灯の照明スイッチS1、サイクルスイッチS2、缶体Kの切断時における緊急事態発生時等に操作される緊急停止スイッチS3が設置されている。
【0027】
本実施形態による缶体のシームカッター装置は以上のように構成されており、かかるシームカッター装置を用いて缶体の巻締部(シーム)を切断する手順を、以下に説明する。先ず、安全保護カバー10を基台1の上台1b上に載置する。この場合に、安全保護カバー10を、その透孔33内をスピンドル15に支持されたリフタープレート2が干渉することなく自由に昇降可能となる位置に載置する。また、そのリフタープレート2上に切断対象の缶体Kを載置する。この缶体Kの載置は缶体Kの下端部をリフタープレート2上面にセンタリングを行って保持せるように実施する。
【0028】
続いて、電源スイッチ(図示しない)を投入し、モータ3の駆動を開始し、駆動軸3aに取り付けられたカッターホルダ4上の各カッター刃5を高速回転させる。これらのカッター刃5はリフタープレート4に形成された前記切り込み溝孔20に対向して臨み、まだ切り込み溝孔20内には侵入していない。
【0029】
次に、昇降シリンダ26を作動させて昇降装置23を、昇降軸27に取り付けられたアッパープレート8とともに下方に付勢し、このアッパープレート8をリフタープレート2に載置された缶体Kの上端部に押し当てるようにする。これにより、缶体Kはアッパープレート8とリフタープレート2との間に弾性的に挟み込まれて安定的に保持される。これにより、続いて実施されるカッター刃5による切断作業の準備が整うこととなる。
【0030】
かかる缶体Kの安定的な支持状態において、作業者はハンドル9をゆっくりと手動で回転操作する。このハンドル9の回転は、ハンドル軸20に取り付けられたスプロケット29、このスプロケット29に掛けられたチェーン31、このチェーン31が掛けられたもう一方のスプロケット30を介して、上部支持台7上のブラケット25に支持された水平回転軸26に伝えられる。従って、この水平回転軸26の回転は変速機24を介して昇降装置23内に伝えられ、この昇降装置23は昇降軸27を下降させる。この昇降軸27の下降量はハンドルの回転量に対応する。
【0031】
そしてこの昇降軸27の下降に伴いアッパープレート8が缶体の上部(頭部)を下方に徐々に押し込んでいく。このためガススプリング19により弾性的に支持されたスピンドル15は、そのガススプリング19の反発力に抗してスライドベアリング13にスムースにガイドされながら下降する。従って、スピンドル15に支持されたリフタープレート2は缶体Kとともに下方へ徐々に下降し、缶体Kを支持しているリフタープレート2の前記複数の切り込み溝孔20内に、前記モータ3によって駆動されているカッター刃5が下方から進入してくる。このため、これらの切り込み溝孔20に臨む缶体Kは下部の巻締部から缶胴部にかけて切断されていく。このカッター刃5による切断深さ(切断量)は作業者が前記安全保護カバー10の内部を監視しながら前記ハンドル9を回転操作することにより、任意に決定することができる。
【0032】
このようにして、巻締部および缶胴の切断量が所定量となったときは、前記電源スイッチのオフ操作によりモータ3の駆動を停止し、昇降シリンダ26の作動を停止するとともに、ハンドル9を戻し回転して昇降装置23によって下降した昇降軸27およびアッパープレート8を上昇させる。これによりアッパープレート8の缶体Kに対する押圧力が解除され、缶体Kをリフタープレート2上から取り外し、この缶体K下部の巻締部の巻締構造を目視や測定手段を用いて正しく観察および計測することができる。
【0033】
なお、前記モータ3は上台1b上においてスピンドル15を中心とする所定の等間隔の各位置に(3箇所)に設置され、これらのモータ3の駆動軸3aが同じくスピンドル15の周辺に等間隔に、かつ所定距離を保って水平方向に延びている。従って、各駆動軸3aにカッターホルダ4を介して取り付けられた各カッター刃5は缶体Kにおける巻締部の3箇所を等しい間隔および深さに同時に切断することができ、サンプリングした3箇所の切断面を速やかに観察および計測することができる。また、各モータのカッターホルダ4に2枚のカッター刃5を所定間隔離して保持させる構成としたことで、これらのカッター刃5による切断部間の缶胴の一部を折り曲げ可能にし、これにより巻締部の切断面の観察や計測を容易に実施することができる。
【0034】
以上のように、本実施形態による缶体のシームカッター装置は、基台の上方に付勢されるスピンドルの上端に、缶体の一端を支承するとともに外周の複数箇所に切り込み溝孔を有するリフタープレートを設け、前記基台上のモータの水平駆動軸にカッターホルダを取り付け、前記スピンドル周辺に外周部分が臨むカッター刃を、前記カッターホルダに着脱自在に保持し、前記基台上に支柱を介して支持された上部支持台に、前記リフタープレートとの間に缶体を挟持するアッパープレートを同心配置し、前記基台に設置されたハンドルの操作によって、前記アッパープレートを昇降可能にし、前記基台上に前記リフタープレートの昇降を許容する開口を持つ安全保護カバーを載置取り外し可能にして、前記リフタープレート上に載置した缶体を前記ハンドルの操作により下降させた前記アッパープレートとの間に挟持させて、前記モータにより駆動される前記カッター刃を前記缶体の巻締め部を含む缶胴の所定領域に切り込ませる構成としている。
【0035】
従って、カッター刃による巻締部の平滑な切断面をそのまま目視で観察可能にしたり、その巻締部とともに切断された缶胴の一部を外側に折り曲げるなどしてその巻締部の切断面の観察を容易化したり、あるいはその切断面の構成をマイクロメータなどの計測器を用いて手動的にまたは画像解析装置などを用いて自動的にそれぞれ観察および計測可能にし、その巻締部における逃げ巻締やラップ割れなどによる缶体の密封不良を、面倒な準備作業をすることなく迅速かつ容易に測定することができることとなる。
【産業上の利用可能性】
【0036】
本発明の缶体のシームカッター装置はマニュアル操作によって昇降される缶体の巻締部のうち複数の測定箇所を自動的に切断することにより、面倒な準備作業をすることなく迅速かつ容易に前記切断部位の測定を実施できるっという効果を有し、缶体の巻締部を切断し、その断面形態を検査する場合に用いるシームカッター装置等に有用である。
【符号の説明】
【0037】
1 基台
2 リフタープレート
3 モータ
4 カッターホルダ
5 カッター刃
6 支柱
7 上部支持台
8 アッパープレート
9 ハンドル
10 安全保護カバー
11 短支柱
12 基礎
13 スライドベアリング部材
14、21、22 締結具
15 スピンドル
17 支持棒
18 支持板
19 空気スプリング(ガススプリング)
20 切り込み溝孔
23 昇降装置
24 変速機
25 水平回転軸
26 昇降シリンダ
27 昇降軸
28 ハンドル軸
29、30 スプロケット
31 チェーン
32 取手
33 透孔
34 昇降シリンダ
K 缶体
図1
図2
図3