(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2017-94502(P2017-94502A)
(43)【公開日】2017年6月1日
(54)【発明の名称】ブロー成形機を用いた樹脂製板状体の製造方法
(51)【国際特許分類】
B29C 49/28 20060101AFI20170428BHJP
B29C 49/48 20060101ALI20170428BHJP
B29C 49/04 20060101ALI20170428BHJP
【FI】
B29C49/28
B29C49/48
B29C49/04
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2015-225719(P2015-225719)
(22)【出願日】2015年11月18日
(71)【出願人】
【識別番号】593209286
【氏名又は名称】マリンブルーブロー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100091373
【弁理士】
【氏名又は名称】吉井 剛
(74)【代理人】
【識別番号】100097065
【弁理士】
【氏名又は名称】吉井 雅栄
(72)【発明者】
【氏名】大竹 猛
【テーマコード(参考)】
4F202
4F208
【Fターム(参考)】
4F202AF01
4F202AG01
4F202AG05
4F202AH81
4F202AM35
4F202CA15
4F202CB02
4F202CK12
4F208AF01
4F208AG01
4F208AG02
4F208AG03
4F208AG05
4F208AH46
4F208AH81
4F208AM35
4F208LA01
4F208LA07
4F208LA09
4F208LG04
4F208LG33
4F208LG38
4F208LG40
4F208LH02
4F208LH16
4F208LH18
4F208LJ09
(57)【要約】
【課題】ブロー成形機を用いて反りが少ない高品質の樹脂製板状体を低コストで効率的に製造するブロー成形機を用いた樹脂製板状体の製造方法を提案する。
【解決手段】ブロー成形機の上部に設けられた押出機1から筒状に形成されて下方に向かって押し出された溶融状態の熱可塑性樹脂部材2を、前記押出機1の下方に設けられ開閉動作を繰り返すピンチ装置3の一対の挟込部4間を通過させて、前記挟込部4の挟み込みにより前記熱可塑性樹脂部材2の移動方向となる上下方向に沿って次々と多数の重合部5を該熱可塑性樹脂部材2に形成し、この多数の重合部5が形成された熱可塑性樹脂部材2をブロー成形金型取り付け部6に設けた一対の板状体形成金型7で挟圧してブローせずにそのまま冷却して固化するブロー成形機を用いた樹脂製板状体の製造方法。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ブロー成形機を用いて樹脂製の板状体を製造する樹脂製板状体の製造方法であって、前記ブロー成形機の上部に設けられた押出機から筒状に形成されて下方に向かって押し出された溶融状態の熱可塑性樹脂部材を、前記押出機の下方に設けられ開閉動作を繰り返すピンチ装置の一対の挟込部間を通過させて、前記挟込部の挟み込みにより前記熱可塑性樹脂部材の移動方向となる上下方向に沿って次々と多数の重合部を該熱可塑性樹脂部材に形成し、この多数の重合部が形成された熱可塑性樹脂部材をブロー成形金型取り付け部に設けた一対の板状体形成金型で挟圧してブローせずにそのまま冷却して固化することを特徴とするブロー成形機を用いた樹脂製板状体の製造方法。
【請求項2】
前記ピンチ装置は、筒状の前記熱可塑性樹脂部材の幅方向両端部間寸法よりも長い棒状体から成る一対の前記挟込部を備え、この挟込部を前記筒状の熱可塑性樹脂部材が通過し得る間隔をおいて水平方向に対向配設すると共に相対接近離反移動自在に設けて開閉動作自在に設けた構成として、前記押出機から連続的に押し出される前記筒状の熱可塑性樹脂部材を前記一対の挟込部の相対接近移動による閉じ動作で挟み込んで該熱可塑性樹脂部材に一の重合部を形成し、この一の重合部を形成した後の前記一対の挟込部の相対離反移動による開き動作から次の前記閉じ動作の間に前記熱可塑性樹脂部材が下方に移動し、前記一対の挟込部の次の前記閉じ動作で前記一の重合部の上側箇所を挟み込んで他の重合部を前記一の重合部の上方に次々と形成することを特徴とする請求項1記載のブロー成形機を用いた樹脂製板状体の製造方法。
【請求項3】
前記ピンチ装置により形成される多数の前記重合部の隣接する重合部同士が、近接状態または当接若しくは一部が重なり合った連設状態となるように前記熱可塑性樹脂部材に形成することを特徴とする請求項1,2のいずれか1項に記載のブロー成形機を用いた樹脂製板状体の製造方法。
【請求項4】
上下方向に隣接する前記重合部の下側の重合部の上端部と上側の重合部の下端部とが重なり合うようにして、前記熱可塑性樹脂部材に前記重合部を次々と連設状態に形成することを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載のブロー成形機を用いた樹脂製板状体の製造方法。
【請求項5】
前記押出機から押し出された筒状の前記熱可塑性樹脂部材内を、吸引手段で吸引しながら前記ピンチ装置で挟み込むことを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載のブロー成形機を用いた樹脂製板状体の製造方法。
【請求項6】
前記板状体は、敷板であることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載のブロー成形機を用いた樹脂製板状体の製造方法。
【請求項7】
一対の前記板状体形成金型のプレス面に凹凸部を設け、成形される前記敷板の表面に滑り止め用の凹凸模様部を形成することを特徴とする請求項6記載のブロー成形機を用いた樹脂製板状体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、既存のブロー成形機をそのまま用いて非中空の樹脂製板状体、例えば敷板を製造するブロー成形機を用いた樹脂製板状体の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えば建設現場や工事現場における砂地や泥地等の未整地面は、降雨によりぬかるみ易くなり車両や通行人(作業者など)の通行が困難になる。そのため、このような未整地面には、従来、敷板を敷設して安定な路面の確保が行われている。
【0003】
この種の敷板としては、従来は金属製(例えば鋼製)のものが多く用いられていたが、この金属製のものは重量が重く運搬、設置作業を一人で行うことが困難であり、非常に作業性が悪いことから、近年、この金属製の敷板の代わりに樹脂製の敷板を用いるようになってきている。
【0004】
しかしながら、従来の樹脂製の敷板は、押出機から溶融状態の成形材料を型に流し込み、これをプレスして成形する成形方法により製造されるものが一般的であったが、前記成形方法では成形後の反り量が大きくなり、そのため連続して敷設した場合、敷板同士の境界に段差が生じたり、或いは、一側に重みが加わることで他側が浮いてしまい通行を妨げる不具合が生じることがあった。また更に、成形サイクル(成形に係る時間)が長く生産性が低い問題もあった。
【0005】
上述した樹脂製敷板の製造方法(成形方法)の問題を解決するため、従来、様々な製造方法が提案されており、その中のひとつにブロー成形機を用いた製造方法が提案されている。
【0006】
例えば、特許文献1は、ブロー成形機の押出ダイ下方に一対の圧着ローラを設け、この圧着ローラで押出ダイから押し出された筒状のパリソンを押し潰して略板状にし、この略板状に形成した成形材料を所定の成形用金型でプレスして非中空の樹脂製成形品を製造するものである。
【0007】
また、特許文献2は、ブロー成形機のダイヘッドにパリソンカッターとパリソン展開装置を設け、このパリソンカッターとパリソン展開装置とでダイヘッドから押し出された筒状のパリソンを切り開きつつシート状に展開し、このシート状に形成した成形材料を所定の成形用金型でプレスして非中空の樹脂製成形品を製造するものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開昭62−255121号公報
【特許文献2】特開平6−285888号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、上述した従来のブロー成形機を用いた方法は、既存のブロー成形機の機能に上述したような圧着ローラやパリソンカッター、パリソン展開装置等の特殊装置を追加する設備改造が必要となり、この特殊装置の追加設備改造は容易でなく、また多額の費用も掛かってしまう。
【0010】
また更に、特許文献1のような圧着ローラで筒状のパリソンを押し潰す構成とした場合、押出ダイからのパリソンの押し出し速度と、圧着ローラの回転速度をぴったり同じにしないと押出ダイから押し出されるパリソンに弛み(皺)が生じるか、逆に引っ張られて伸長が生じで部材の厚みが変わってしまうため、その設定・管理が容易でなく、ゆえに、高速処理が困難であり、生産性向上の阻害要因となる可能性がある。
【0011】
また、特許文献2のようなパリソンカッターとパリソン展開装置とで筒状のパリソンをシート状に形成する構成とした場合、プレス成形前の成形部材に厚みを持たせることができず、厚みを要する樹脂成形品には不向きであること、更には筒状からシート状とすることでプレス前の成形部材が平面形状にならず、プレス成形時に皺が生じてしまう可能性がある等の問題がある。
【0012】
本発明は、このような従来の問題点に鑑みなされたもので、設備改造を要せず既設のブロー成形機をそのまま利用して、反り(変形)が少なく且つ皺が生じることなく高品質の樹脂製板状体を低コストで効率的に製造することができる実用性に優れた画期的なブロー成形機を用いた樹脂製板状体の製造方法を提案することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
添付図面を参照して本発明の要旨を説明する。
【0014】
ブロー成形機を用いて樹脂製の板状体を製造する樹脂製板状体の製造方法であって、前記ブロー成形機の上部に設けられた押出機1から筒状に形成されて下方に向かって押し出された溶融状態の熱可塑性樹脂部材2を、前記押出機1の下方に設けられ開閉動作を繰り返すピンチ装置3の一対の挟込部4間を通過させて、前記挟込部4の挟み込みにより前記熱可塑性樹脂部材2の移動方向となる上下方向に沿って次々と多数の重合部5を該熱可塑性樹脂部材2に形成し、この多数の重合部5が形成された熱可塑性樹脂部材2をブロー成形金型取り付け部6に設けた一対の板状体形成金型7で挟圧してブローせずにそのまま冷却して固化することを特徴とするブロー成形機を用いた樹脂製板状体の製造方法に係るものである。
【0015】
また、前記ピンチ装置3は、筒状の前記熱可塑性樹脂部材2の幅方向両端部間寸法よりも長い棒状体から成る一対の前記挟込部4を備え、この挟込部4を前記筒状の熱可塑性樹脂部材2が通過し得る間隔をおいて水平方向に対向配設すると共に相対接近離反移動自在に設けて開閉動作自在に設けた構成として、前記押出機1から連続的に押し出される前記筒状の熱可塑性樹脂部材2を前記一対の挟込部4の相対接近移動による閉じ動作で挟み込んで該熱可塑性樹脂部材2に一の重合部5を形成し、この一の重合部5を形成した後の前記一対の挟込部4の相対離反移動による開き動作から次の前記閉じ動作の間に前記熱可塑性樹脂部材2が下方に移動し、前記一対の挟込部4の次の前記閉じ動作で前記一の重合部5の上側箇所を挟み込んで他の重合部5を前記一の重合部5の上方に次々と形成することを特徴とする請求項1記載のブロー成形機を用いた樹脂製板状体の製造方法に係るものである。
【0016】
また、前記ピンチ装置3により形成される多数の前記重合部5の隣接する重合部5同士が、近接状態または当接若しくは一部が重なり合った連設状態となるように前記熱可塑性樹脂部材2に形成することを特徴とする請求項1,2のいずれか1項に記載のブロー成形機を用いた樹脂製板状体の製造方法に係るものである。
【0017】
また、上下方向に隣接する重合部5の下側の重合部5の上端部と上側の重合部5の下端部とが重なり合うようにして、前記熱可塑性樹脂部材2に前記重合部5を次々と連設状態に形成することを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載のブロー成形機を用いた樹脂製板状体の製造方法に係るものである。
【0018】
また、前記押出機1から押し出された筒状の前記熱可塑性樹脂部材2内を、吸引手段で吸引しながら前記ピンチ装置3で挟み込むことを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載のブロー成形機を用いた樹脂製板状体の製造方法に係るものである。
【0019】
また、前記板状体は、敷板12であることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載のブロー成形機を用いた樹脂製板状体の製造方法に係るものである。
【0020】
また、一対の前記板状体形成金型7のプレス面に凹凸部を設け、成形される前記敷板12の表面に滑り止め用の凹凸模様部8を形成することを特徴とする請求項6記載のブロー成形機を用いた樹脂製板状体の製造方法に係るものである。
【発明の効果】
【0021】
本発明は上述のようにしたから、設備改造を要せず既設のブロー成形機をそのまま利用して、反り(変形)が少なく且つ皺が生じることなく高品質の樹脂製板状体を低コストで効率的に製造することができる実用性に優れた画期的なブロー成形機を用いた樹脂製板状体の製造方法となる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】本実施例のブロー成形機を示す説明正面図である。
【
図2】本実施例のブロー成形機の要部を示す説明斜視図である。
【
図3】本実施例のブロー成形機のピンチ装置を示す説明正面図である。
【
図4】本実施例のブロー成形機のピンチ装置を示す説明側面図である。
【
図5】本実施例のブロー成形機を用いた樹脂製板状体(敷板)の製造方法を示す説明断面図(本型締め前状態)である。
【
図6】本実施例のブロー成形機を用いた樹脂製板状体(敷板)の製造方法を示す説明断面図(本型締め時状態)である。
【
図7】本実施例のブロー成形機を用いた樹脂製板状体(敷板)の製造方法を示す説明図である。
【
図9】本実施例における押出機とピンチ装置の動作状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
好適と考える本発明の実施形態を、図面に基づいて本発明の作用を示して簡単に説明する。
【0024】
通常のブロー成形と同様、ブロー成形機の上部に設けられた押出機1から下方に向かって筒状に形成した溶融状態の熱可塑性樹脂部材2を押し出す。
【0025】
この押出機1から押し出した筒状の熱可塑性樹脂部材2を、押出機1の下方に設けられ開閉動作を繰り返すピンチ装置3の一対の挟込部4間を通過させる。
【0026】
通常のブロー成形では、ピンチ装置3は、垂下する筒状の熱可塑性樹脂部材2の先端(下端)を挟込部4で挟み込んで、この先端(下端)を閉塞して熱可塑性樹脂部材2を袋状にするために用いられる。本発明においては、このピンチ装置3の挟込部4の開閉動作を繰り返し行い(例えば連続的に開閉動作させ)、押出機1から押し出され下方に移動する筒状の熱可塑性樹脂部材2をこの開閉動作を繰り返すピンチ装置3の一対の挟込部4間を通過させることで、この一対の挟込部4が次々と筒状の熱可塑性樹脂部材2の異なる位置を挟み込んで熱可塑性樹脂部材2に多数の重合部5を形成する。
【0027】
具体的には、一対の挟込部4の一の閉じ動作で筒状の熱可塑性樹脂部材2を挟み込んで押し潰し一の重合部5を形成し、この一の閉じ動作後の開き動作から次の閉じ動作(二の閉じ動作)の間に前記熱可塑性樹脂部材2が下方に移動し、次の閉じ動作(二の閉じ動作)で一の閉じ動作で形成した一の重合部5の上方を挟み込んで同様に熱可塑性樹脂部材2を押し潰してこの一の重合部5の上方に二の重合部5を形成する。この動作が繰り返されることで熱可塑性樹脂部材2の移動方向、即ち上下方向に沿って次々と多数の重合部5が形成されてゆく。
【0028】
この押出機1から押し出された筒状の熱可塑性樹脂部材2をピンチ装置3の挟込部4で次々と挟み込んで押し潰し、筒状の熱可塑性樹脂部材2の対向面同士が貼り合わされた重合部5を上下方向に並設状態または連設(連続)状態に形成することで、ピンチ装置3(一対の挟込部4間)を通過した熱可塑性樹脂部材2は、筒状からほぼ板状に変形する。
【0029】
例えば、この押出機1から押し出された筒状の熱可塑性樹脂部材2に多数の重合部5を形成する際に、重合部5を連続状態、好ましくは下側の一の重合部5の上端部と、この一の重合部5の上側に形成される二の重合部5の下端部とがオーバーラップするように次々と挟込部4で挟み込んで重合部5を連続的に形成することで、筒状の熱可塑性樹脂部材2を、空気溜まりを作ることなく板状の熱可塑性樹脂部材2に形成することができ、成形した際に、斑、寄り皺、反り(歪み)等の外観上の不具合が生じず精度の良い板状体を形成することができる。
【0030】
そして、この多数の重合部5を形成したことでほぼ板状に変形した熱可塑性樹脂部材2をブロー成形金型取り付け部6に取り付けた板状体形成金型7で挟圧(プレス)してブローせずにそのまま冷却して固化することで所定形状の板状体が成形されることとなる。
【0031】
即ち、通常のブロー成形では、熱可塑性樹脂部材を型で挟み込んだ状態で、型内の熱可塑性樹脂部材の内側から空気を注入して熱可塑性樹脂部材を膨出させて型に押し付けて所定形状の中空成形品を成形するが、本発明は、ブロー成形機を用いながら、上述したように、板状体形成金型7で挟圧(プレス)すると共に冷却して固化するだけでブローを行なわずに成形する。
【0032】
このように、本発明は、筒状の熱可塑性樹脂部材2を押し出す押出機1と、押出機1から押し出された筒状の熱可塑性樹脂部材2を挟み込んで押し潰すピンチ装置3とを備えた既存のブロー成形機をそのまま用いるから、設備改造などが必要なくコストを抑えることができる。
【0033】
更に、この既存のブロー成形機の押出機1から押し出した筒状の熱可塑性樹脂部材2をそのまま板状体形成金型7で挟圧するのではなく、板状体形成金型7で挟圧して成形する前に、予めピンチ装置3で挟み込んで押し潰し多数の重合部5を形成するから、板状体形成金型7での挟圧成形時に斑、寄り皺、反り(歪み)等の外観上の不具合の無い平坦な樹脂製板状体を成形することができる。
【0034】
しかも、ブロー成形機を用いることで、ブロー成形同様、成形サイクルが短時間で済むので、効率良く非中空の樹脂製板状体を製造することができ生産性も向上する。
【実施例】
【0035】
本発明の具体的な実施例について図面に基づいて説明する。
【0036】
本実施例は、ブロー成形機を用いて樹脂製の板状体(具体的には、敷板)を製造する樹脂製敷板の製造方法に係るものである。
【0037】
まず、本実施例で使用するブロー成形機について説明する。
【0038】
本実施例で使用するブロー成形機は、一般的なブロー成形に用いられるブロー成形機であり、筒状の熱可塑性樹脂部材2(以下、この筒状に形成された熱可塑性樹脂部材2をパリソン2と称す)を押し出す押出機1と、押出機1から押し出された熱可塑性樹脂部材2を挟み込んで押し潰すピンチ装置3とを備えた構成としている。
【0039】
具体的には、ピンチ装置3は、押出機1から押し出されたパリソン2の直径(幅方向両端部間寸法)よりも長い長さの棒状体から成る一対の挟込部4を備え、この挟込部4をパリソン2が通過できる間隔をおいて水平方向に対向配設すると共に相対接近離反移動自在に設けて開閉動作自在に設けた構成とし、押出機1から連続的に押し出されるパリソン2をこの一対の挟込部4の相対接近移動による閉じ動作で挟み込んでパリソン2を押し潰して対向面同士が貼り合わせられるように重合した一の重合部5を形成し、この一の重合部5を形成した後の一対の挟込部4の相対離反移動による開き動作から次の閉じ動作の間にパリソン2が下方に移動し、一対の挟込部4の次の閉じ動作で一の重合部5の上側箇所を挟み込んで他の重合部5を一の重合部5の上方に次々と形成する構成としている。
【0040】
更に具体的に説明すると、本実施例では、図示するように、押出機1から押し出されたパリソン2に多数の重合部5を形成する際に、重合部5を連続状態、具体的には、先に形成した下側の一の重合部5の上端部と、この一の重合部5の上側に形成される二の重合部5の下端部とがオーバーラップするように挟込部4で挟み込み、次に、同様にこの二の重合部5の上側に形成される三の重合部5の下端部とがオーバーラップするように挟込部4で挟み込み、前記操作を繰り返し行い、この上側と下側との夫々の重合部5の端部同士をオーバーラップさせながら挟込部4で挟み込んで隙間なく連続的にパリソン2に重合部5を次々と形成してゆく構成としている。
【0041】
即ち、通常のブロー成形機のピンチ装置(通常のブロー成形を行う際のピンチ装置)は、押出機1から押し出されたパリソンの下端を挟み込んでこのパリソンを袋状にする際に用いるもので、1成形サイクルで一度動作する設定となっているが、本実施例では、ピンチ装置3の挟み込み動作を連続的に繰り返し行う設定に変更し、次々とパリソン2を挟み込んで多数の重合部5を形成するように構成している。
【0042】
即ち、本実施例のブロー成形機は、挟込部4の閉じ動作完了後から次の閉じ動作完了までの間の押出機1のパリソン2の押し出し量(長さ)を、ピンチ装置3の挟込部4の上下(鉛直)方向寸法よりやや少なく押し出されるように設定し、重合部5と重合部5とをオーバーラップさせて隙間を生じさせることなくピンチ装置3でパリソン2を押し潰してゆき、このパリソン2全体に連続した重合部5を形成し、このパリソン2を後述する板状体形成金型7で本型締め(プレス成形)する前にほぼ均一な板状の熱可塑性樹脂部材2に形成する構成としている。
【0043】
また、本実施例に用いるブロー成形機は、押出機1から押し出したパリソン2の内部(筒内)の空気を吸引する吸引手段を備えたものを用いている。
【0044】
具体的には、吸引手段は、押出機1に設けた吸引部9(吸引孔)と、この吸引部9に接続された吸引装置10(真空ポンプ)とから成る構成とし、吸引部9は、押出機1の底部に環状に設けられたパリソン押出し口11(パリソン押出し溝)の内側に設けられ、パリソン押出し口11から押し出されるパリソン2の筒内を吸引装置10により吸引する構成としている。
【0045】
即ち、本実施例のブロー成形機は、押出機1(パリソン押出し口11)から押し出されたパリソン2内を吸引部9を通じて吸引装置10で吸引しながらピンチ装置3で挟み込むことで、重合部5の熱可塑性樹脂部材2同士が重合する重合面の間への空気の介在を可及的に低減し、成形品の斑の発生を抑制するように構成している。
【0046】
また、本実施例のブロー成形機に取り付ける板状体形成金型7は、通常のブロー成形用の金型を取り付けるブロー成形金型取り付け部6に取り付ける構成とし、ピンチ装置3の挟み込により板状に形成された板状熱可塑性樹脂部材2を両側から挟み込んで挟圧(プレス)する構成としている。
【0047】
また、本実施例の板状体形成金型7は、熱可塑性樹脂部材2を敷板12に形成する構成とし、対向する板状体形成金型7の一方若しくは双方の熱可塑性樹脂部材2に圧接する圧接面(プレス面)に凹凸部を設け、成形される敷板12の表面に滑り止め用の凹凸模様8を形成するように構成している。
【0048】
次に上述したブロー成形機を用いて樹脂製板状体、具体的には、敷板12を製造する際の製造方法について説明する。
【0049】
本実施例のブロー成形機を用いた敷板の製造方法は、通常のブロー成形と同様、ブロー成形機の上部に設けられた押出機1から下方に向かって筒状に形成した溶融状態の熱可塑性樹脂部材2、所謂パリソン2を押し出す。
【0050】
この押出機1から押し出したパリソン2を、押出機1の下方に設けられ開閉動作を繰り返すピンチ装置3の一対の挟込部4間を通過させ、吸引部9を介して吸引装置10(真空ポンプ)によりパリソン2内の空気を吸引しながら一対の挟込部4で次々とパリソン2の異なる位置を挟み込んでゆき、このパリソン2に多数の重合部5を形成する。
【0051】
具体的には、一対の挟込部4の一の閉じ動作でパリソン2を挟み込んで押し潰し一の重合部5を形成し、この一の閉じ動作後の開き動作から次の閉じ動作(二の閉じ動作)の間にパリソン2が下方に移動し、次の閉じ動作(二の閉じ動作)で一の閉じ動作で形成した一の重合部5の上方を挟み込んで同様にパリソン2を押し潰してこの一の重合部5の上方に二の重合部5を形成し、この動作を所定回数繰り返し行い、パリソン2の移動方向、即ち上下方向に沿って次々と所定数の重合部5を形成する。
【0052】
パリソン2に所定数の重合部5を形成し、板状のパリソン2を形成したら、一旦押出機1、ピンチ装置3及び吸引装置10の稼働を停止し、板状体形成金型7間に垂下する板状の熱可塑性樹脂部材2を板状体形成金型7で挟圧(プレス)しながら、冷却して熱可塑性樹脂部材2を固化する。
【0053】
尚、通常のブロー成形では、金型でプレスした状態でブロー処理(内部に空気を送り込む処理)を行うが、本実施例は、ブローせず、挟圧したままの状態で冷却して熱可塑性樹脂部材2を固化する。
【0054】
そして、この板状体形成金型7で挟圧した熱可塑性樹脂部材2の冷却・固化が終了したら板状体形成金型7を開いて成形品の敷板12を取出し、再び、押出機1、ピンチ装置3及び吸引装置10を稼働させて同様の作業を繰り返す。
【0055】
このように、本実施例は、押出機1から押し出されたパリソン2をピンチ装置3で挟み込んで多数の重合部5を形成する際に、この重合部5を連続状態、具体的には、先に形成した下側の重合部5の上端部と、この下側の重合部5の上側に形成される上側の重合部5の下端部とがオーバーラップするように次々と挟込部4で挟み込んで重合部5を連続的に形成することで、空気溜まりを作ることなく板状の熱可塑性樹脂部材2を形成することができ、敷板12に成形した際に、斑、寄り皺、反り(歪み)等の外観上の不具合が生じず精度の良い敷板12となる。
【0056】
尚、本発明は、本実施例に限られるものではなく、各構成要件の具体的構成は適宜設計し得るものである。
【符号の説明】
【0057】
1 押出機
2 熱可塑性樹脂部材
3 ピンチ装置
4 挟込部
5 重合部
6 ブロー成形金型取り付け部
7 板状体形成金型
8 凹凸模様部
12 敷板