(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2017-94655(P2017-94655A)
(43)【公開日】2017年6月1日
(54)【発明の名称】発泡成形体の製造方法及び発泡成形体の製造装置
(51)【国際特許分類】
B29C 49/18 20060101AFI20170428BHJP
C08J 9/04 20060101ALI20170428BHJP
B29C 49/04 20060101ALI20170428BHJP
【FI】
B29C49/18
C08J9/04CEQ
C08J9/04CER
C08J9/04CEZ
B29C49/04
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2015-231469(P2015-231469)
(22)【出願日】2015年11月27日
(71)【出願人】
【識別番号】000104674
【氏名又は名称】キョーラク株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001139
【氏名又は名称】SK特許業務法人
(74)【代理人】
【識別番号】100130328
【弁理士】
【氏名又は名称】奥野 彰彦
(74)【代理人】
【識別番号】100130672
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 寛之
(72)【発明者】
【氏名】大野 慶詞
(72)【発明者】
【氏名】小野寺 正明
(72)【発明者】
【氏名】五十嵐 優
【テーマコード(参考)】
4F074
4F208
【Fターム(参考)】
4F074AA16
4F074AA17
4F074AA24
4F074AA25
4F074BA01
4F074BA31
4F074BA32
4F074BA33
4F074BA34
4F074BA37
4F074BA38
4F074BA39
4F074BA45
4F074BA48
4F074CA22
4F074DA24
4F074DA59
4F208AA03
4F208AB02
4F208AG20
4F208AR13
4F208LA03
4F208LA08
4F208LG04
4F208LG11
4F208LG23
4F208LG38
4F208LH02
4F208LH18
4F208LJ09
4F208LN05
4F208LN09
(57)【要約】
【課題】発泡パリソンを萎縮させずに略円筒形状に形成可能であり、またパリソン径が小さくなることを緩和し、更にカーテン現象を抑制することで折肉不良の発生を低減することができる発泡成形体の製造方法を提供する。
【解決手段】本発明によれば、環状スリットから発泡剤を含む溶融混練樹脂を一対の分割金型の間に挟まれる成形領域のある押出方向へ押出すことにより発泡パリソンを形成するパリソン形成工程と、前記成形領域に位置する前記発泡パリソンに対して前記分割金型の型締めを行って発泡成形体の成形を行う成形工程とを備える発泡成形体の製造方法において、前記パリソン形成工程では、前記押出方向に対して45度以上135度以下である方向に前記発泡パリソンの内面に向かってエアーを噴射することによってプリブローが行われる、発泡成形体の製造方法が提供される。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
環状スリットから発泡剤を含む溶融混練樹脂を一対の分割金型の間に挟まれる成形領域のある押出方向へ押出すことにより発泡パリソンを形成するパリソン形成工程と、前記成形領域に位置する前記発泡パリソンに対して前記分割金型の型締めを行って発泡成形体の成形を行う成形工程とを備える発泡成形体の製造方法において、
前記パリソン形成工程では、前記押出方向に対して45度以上135度以下である方向に前記発泡パリソンの内面に向かってエアーを噴射することによってプリブローが行われる、発泡成形体の製造方法。
【請求項2】
前記プリブローは、前記成形領域の上方又は下方に位置するプリブローノズルを用いて行われる、請求項1に記載の発泡成形体の製造方法。
【請求項3】
前記パリソン形成工程では、まず前記発泡パリソンを前記成形領域の略全体に位置させ、続いて前記発泡パリソンを挟んで密閉する下ピンチが行われ、続いて前記プリブローが行われる、請求項1又は請求項2に記載の発泡成形体の製造方法。
【請求項4】
前記パリソン形成工程では、前記発泡パリソンの下端が前記成形領域の下端に到達する前に前記プリブローが開始される、請求項1又は請求項2に記載の発泡成形体の製造方法。
【請求項5】
前記パリソン形成工程では、前記発泡パリソンの下端が前記成形領域の下端に到達する前に、前記発泡パリソンをピンチ部で挟んで密閉し、前記発泡パリソンの下端の下降に伴って前記ピンチ部を下降させながら前記プリブローが行われる、請求項1、請求項2又は請求項4に記載の発泡成形体の製造方法。
【請求項6】
前記パリソン形成工程において、前記成形領域の上側一部又は上方に位置するように形成された前記発泡パリソンを挟んで密閉する上ピンチが行われる、請求項4又は請求項5に記載の発泡成形体の製造方法。
【請求項7】
発泡剤を含む溶融混練樹脂を環状スリットを介して押出方向に押出すことにより成形領域の少なくとも一部に発泡パリソンを形成する発泡押出機と、
前記押出方向に対して45度以上135度以下である方向に前記発泡パリソンの内面に向かってエアーを噴射することによってプリブローを行うプリブローノズルと、
型締めにより前記発泡パリソンから発泡成形体を成形する一対の分割金型と
を備える発泡成形体の製造装置。
【請求項8】
前記プリブローノズルは、前記成形領域の上方又は下方に設けられる、請求項7に記載の発泡成形体の製造装置。
【請求項9】
前記発泡パリソンを挟んで密閉するピンチ部を更に備える、請求項7又は請求項8に記載の発泡成形体の製造装置。
【請求項10】
前記ピンチ部は、前記成形領域の略全体に位置するように形成された前記発泡パリソンを挟んで密閉する下ピンチを行う、請求項9に記載の発泡成形体の製造装置。
【請求項11】
前記ピンチ部は、前記成形領域の上側一部又は上方に位置するように形成された前記発泡パリソンを挟んで密閉する上ピンチを行う、請求項9に記載の発泡成形体の製造装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発泡成形体の製造方法及び発泡成形体製造装置に関する。
【背景技術】
【0002】
発泡成形体の製造方法は、発泡ブロー成形を用いる方法である。発泡ブロー成形とは、発泡ブロー成形機を用いて発泡ブロー成形品を成形することである。換言すると、発泡剤を添加した熱可塑性樹脂をパリソンとして大気中に押出し、その後、分割金型で挟み込むことにより行われる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許4955853号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、発泡ブロー成形では、分割金型で挟み込む前に発泡パリソンに「プリブロー」を行いパリソン内部に適切な圧力をかけることが行われる。しかし、
図1に示すように従来技術に係るプリブローは矢印B
0方向(押出方向)にエアーを噴出することにより行われるため、当該プリブローを伴う発泡ブロー成形では以下のような問題が生じる。
1)
図1(a)に示すように、従来技術ではパリソン内部に空気の流れが発生し周囲の空気が引き寄せられ(コアンダ効果)、パリソン内部のうち特にプリブローノズル周辺が陰圧となり、パリソンの形状がひょうたん形に萎縮しやすい。
2)発泡ブロー成形では通常のブロー成形に比して熱可塑性樹脂の溶解張力が低く、重力の影響で発泡パリソンが重力方向(通常は押出方向)に引き伸ばされ、その結果パリソン径が小さくなる。
3)
図1(b)に示すように、発泡パリソンではカーテン現象が往々にして発生するが、従来技術ではこれを適切に抑制することができず、折肉不良が発生する。
【0005】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたものであり、発泡パリソンを萎縮させずに略円筒形状に形成可能であり、またパリソン径が小さくなることを緩和し、更にカーテン現象を抑制することで折肉不良の発生を低減することができる発泡成形体の製造方法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明によれば、環状スリットから発泡剤を含む溶融混練樹脂を一対の分割金型の間に挟まれる成形領域のある押出方向へ押出すことにより発泡パリソンを形成するパリソン形成工程と、前記成形領域に位置する前記発泡パリソンに対して前記分割金型の型締めを行って発泡成形体の成形を行う成形工程とを備える発泡成形体の製造方法において、前記パリソン形成工程では、前記押出方向に対して45度以上135度以下である方向に前記発泡パリソンの内面に向かってエアーを噴射することによってプリブローが行われる、発泡成形体の製造方法が提供される。
【0007】
本発明に係る発泡成形体の製造方法によれば、パリソン形成工程における押出方向に対して45度以上135度以下である方向にエアーを噴射することによりプリブローが行われる。
その結果、
第1に、パリソン内部が陰圧になることを防止し、分割金型による成形前の発泡パリソンを萎縮させずに略筒状に形成することができる。
第2に、重力の影響によってパリソン径が小さくなる現象を緩和することができる。
第3に、発泡パリソンで発生しやすいカーテン現象を抑制することで折肉不良の発生を低減することができる。
【0008】
また、本発明によれば、発泡剤を含む溶融混練樹脂を環状スリットを介して押出方向に押出すことにより成形領域の少なくとも一部に発泡パリソンを形成する発泡押出機と、前記押出方向に対して45度以上135度以下である方向に前記発泡パリソンの内面に向かってエアーを噴射することによってプリブローを行うプリブローノズルと、型締めにより前記発泡パリソンから発泡成形体を成形する一対の分割金型とを備える、発泡成形体の製造装置が提供される。
【0009】
本発明に係る発泡成形体の製造装置によれば、パリソン形成工程における押出方向に対して45度以上135度以下である方向にエアーを噴射することによりプリブローが行われる。
その結果、
第1に、パリソン内部が陰圧になることを防止し、分割金型による成形前の発泡パリソンを萎縮させずに略筒状に形成することができる。
第2に、重力の影響によってパリソン径が小さくなる現象を緩和することができる。
第3に、発泡パリソンで発生しやすいカーテン現象を抑制することで折肉不良の発生を低減することができる。
【0010】
以下、本発明の種々の実施形態を例示する。以下に示す実施形態は互いに組合せ可能である。
好ましくは、発泡成形体の製造方法において、前記プリブローは、前記成形領域の上方又は下方に位置するプリブローノズルを用いて行われる。
好ましくは、発泡成形体の製造方法において、前記パリソン形成工程では、まず前記発泡パリソンを前記成形領域の略全体に位置させ、続いて前記発泡パリソンを挟んで密閉する下ピンチが行われ、続いて前記プリブローが行われる。
好ましくは、発泡成形体の製造方法において、前記パリソン形成工程では、前記発泡パリソンの下端が前記成形領域の下端に到達する前に前記プリブローが開始される。
好ましくは、発泡成形体の製造方法において、前記パリソン形成工程では、前記発泡パリソンの下端が前記成形領域の下端に到達する前に、前記発泡パリソンをピンチ部で挟んで密閉し、前記発泡パリソンの下端の下降に伴って前記ピンチ部を下降させながら前記プリブローが行われる。
好ましくは、発泡成形体の製造方法において、前記パリソン形成工程において、前記成形領域の上側一部又は上方に位置するように形成された前記発泡パリソンを挟んで密閉する上ピンチが行われる。
好ましくは、発泡成形体の製造装置において、前記プリブローノズルは、前記成形領域の上方又は下方に設けられる。
好ましくは、発泡成形体の製造装置において、前記発泡パリソンを挟んで密閉するピンチ部を更に備える。
好ましくは、発泡成形体の製造装置において、前記ピンチ部は、前記成形領域の略全体に位置するように形成された前記発泡パリソンを挟んで密閉する下ピンチを行う。
好ましくは、発泡成形体の製造装置において、前記ピンチ部は、前記成形領域の上側一部又は上方に位置するように形成された前記発泡パリソンを挟んで密閉する上ピンチを行う。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】従来技術に係る発泡成形体の製造方法を用いて形成された発泡パリソンの例を示す図である。
【
図2】本発明の第1実施形態に係る発泡成形体の製造装置の構成を示す図である。
【
図4】発泡パリソン13が形成された状態を示す図である。
【
図5】
図4の状態からピンチ部15で発泡パリソン13を挟んだ状態を示す図である。
【
図6】
図5の状態からパリソン外周方向へのプリブローを行った状態を示す図である。
【
図7】
図6の状態から分割金型14の型締めを行った状態を示す図である。
【
図9】
図8の状態からピンチ部15で発泡パリソン13を挟んだ状態を示す図である。
【
図11】
図10の状態からピンチ部15で発泡パリソン13を挟んだ状態を示す図である。
【
図12】本発明の第3実施形態の変形例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態について説明する。以下に示す実施形態中で示した各種特徴事項は、互いに組合せ可能である。また、各特徴事項について独立して発明が成立する。
【0013】
1.第1実施形態
最初に、本発明の第1実施形態の発泡成形体の製造方法を実施するのに適した、発泡成形体の製造装置について説明し、その後、本実施形態の発泡成形体の製造方法について説明する。
【0014】
1.1 発泡成形体の製造装置
本発明の第1実施形態の発泡成形体の製造装置は、
図2〜
図4に示すように、発泡押出機1、分割金型14、及びピンチ部15を備える。発泡押出機1は、シリンダ3と、樹脂投入口5と、スクリュー7と、発泡剤注入口Pと、温度制御部9と、樹脂押出口11と、ダイヘッド12を備える。
【0016】
<樹脂投入口5>
樹脂投入口5は、いわゆるホッパーであり、ここから、原料樹脂を投入する。原料樹脂の形態は、特に限定されないが、通常は、ペレット状である。原料樹脂は、例えばポリオレフィンなどの熱可塑性樹脂であり、ポリオレフィンとしては、低密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−プロピレン共重合体及びその混合物などが挙げられる。原料樹脂は、樹脂投入口5からシリンダ3内に投入された後、シリンダ3内で加熱されることによって溶融されて溶融樹脂になる。また、シリンダ3内に配置されたスクリュー7の回転によってシリンダ3の一端に設けられた樹脂押出口11に向けて搬送される。
【0017】
<スクリュー7>
スクリュー7は、シリンダ3内に配置され、その回転によって溶融樹脂を混練しながら樹脂押出口11に向けて搬送する。スクリュー7の一端にはギア装置8が設けられており、ギア装置8によってスクリュー7が回転駆動される。シリンダ3内に配置されるスクリュー7の数は、1本でもよく、2本以上であってもよい。
【0018】
<発泡剤注入口P>
シリンダ3には、シリンダ3内に発泡剤を注入するための発泡剤注入口Pが設けられる。発泡剤注入口Pを設ける位置は特に限定されないが、シリンダ3の樹脂投入口5側の端部の位置を0、樹脂押出口11側の端部の位置をLとした場合、発泡剤注入口Pは、0.3L〜0.7L(好ましくは0.4〜0.6L)の位置に設けることが好ましい。発泡剤注入口Pが0.3Lよりも樹脂投入口5側に設けられると、溶融樹脂の混練が不十分な状態で発泡剤が注入されてしまって発泡剤の分散が不十分になる場合がある。また、溶融樹脂の温度は通常樹脂押出口11に向かって徐々に低下するように制御されるので、発泡剤注入口P0.7Lよりも樹脂押出口11側に設けられると、発泡剤を注入する部位での溶融樹脂の温度が低すぎて発泡剤の注入量が減少してしまう場合がある。
【0019】
発泡剤注入口Pから注入される発泡剤は、物理発泡剤、化学発泡剤、及びその混合物が挙げられるが、物理発泡剤が好ましい。物理発泡剤としては、空気、炭酸ガス、窒素ガス、水等の無機系物理発泡剤、およびブタン、ペンタン、ヘキサン、ジクロロメタン、ジクロロエタン等の有機系物理発泡剤、さらにはそれらの超臨界流体を用いることができる。超臨界流体としては、二酸化炭素、窒素などを用いて作ることが好ましく、窒素であれば臨界温度−149.1℃、臨界圧力3.4MPa以上、二酸化炭素であれば臨界温度31℃、臨界圧力7.4MPa以上とすることにより得られる。化学発泡剤としては、酸(例:クエン酸又はその塩)と塩基(例:重曹)との化学反応により炭酸ガスを発生させるものが挙げられる。化学発泡剤は、発泡剤注入口Pから注入する代わりに、樹脂投入口5から投入してもよい。
【0020】
<温度制御部9>
温度制御部9は、シリンダ3に沿って設けられた複数の温調ユニットを個別に制御して、シリンダ3の各部分の温度を制御するように構成されている。また、温度制御部9は、発泡パリソン13を形成するためのダイヘッド12の温度、及びシリンダ3とダイヘッド12の間の連結部10の温度も制御可能である。
【0021】
<樹脂押出口11・ダイヘッド12>
原料樹脂と発泡剤が溶融混練されてなる溶融混練樹脂は、樹脂押出口11から押出され、連結部10を通じてダイヘッド12内に注入される。ダイヘッド12は、
図3に示すように、筒状のダイ外筒41と、その内部に収容されるマンドレル43を備え、その間の空間46にシリンダ3から押出された溶融混練樹脂を貯留する。また、ダイヘッド12の先端には、ダイコア47とこれを囲むダイシェル48が設けられ、その間に環状スリット49が設けられる。そして、空間46に溶融混練樹脂が所定量貯留された後にリング状ピストン45を重力方向に押下げることによって、溶融混練樹脂が環状スリット49を介して押出され筒状の発泡パリソン13が形成される。発泡パリソン13は、一対の分割金型14間にある成形領域Rに押出される。
【0022】
<分割金型14・ピンチ部15・プリブローノズル20>
一対の分割金型14は、発泡パリソン13の成形を行って発泡成形体を得るために用いられる。
図3に示すように、分割金型14のそれぞれには、キャビティ14bを取り囲むようにピンチオフ部14aが設けられている。また、ピンチオフ部14aを取り囲むようにバリ逃し部14cが設けられている。発泡パリソン13がピンチオフ部14aで挟まれた部位が、パーティングラインとなり、ピンチオフ部14aの外側の部分がバリとなる。更に
図4〜
図7に示すように、分割金型14の間に挟まれる領域を成形領域Rと定義する。
【0023】
分割金型14を用いた成形の方法は特に限定されず、分割金型14のキャビティ14b内にエアーを吹き込んで(噴射して)成形を行うブロー成形(ここでは後述のプリブローを除く)であってもよく、分割金型14のキャビティ14bの内面からキャビティ14b内を減圧して発泡パリソン13の成形を行う真空成形であってもよく、その組合せであってもよい。ピンチ部15は、
図4〜
図5に示すように、発泡パリソン13の下部を挟んで(ピンチ)発泡パリソン13内に閉空間13aを形成するために用いられる。本実施形態におけるピンチ部15は、成形領域Rの下方に位置するため、特に下ピンチ部とも呼ばれる。また下ピンチ部によるピンチを下ピンチと呼ぶ。分割金型14は、下ピンチの後に型締めされる。
【0024】
プリブローノズル20は、不図示ではあるが側面に複数の微細孔を有する。微細孔からエアーが噴射される。微細孔の形状は特に限定されず、例えば、円形、楕円形、又は四角形等の多角形であればよい。微細孔が円形の場合、1つの微細孔の直径は、好ましくは0.3mm〜40.0mm程度であり、更に好ましくは、3.0mmである。なお、上記範囲よりも小径ではプリブローの発泡パリソン13に対する拡張効果が不十分であり、万一樹脂が付着した場合に微細孔が閉塞するおそれがある。一方、上記範囲よりも大径では、そもそも加工が困難(ダイコア47の大きさに制限される)であり、樹脂が穴内に流入するおそれが有る。かかる微細孔は、微細孔の直径にも依存するが、好ましくは3個〜8個設けられ、更に好ましくは4個設けられる。
【0025】
プリブローノズル20は、閉空間13aにおいて発泡パリソン13の内面に対して
図4〜
図7の示す押出方向と45度以上135度以下の角αを成す方向にエアーを噴射するプリブローを行う。角αについては具体的には例えば、45度、50度、55度、60度、65度、70度、75度、80度、85度、90度、95度、100度、105度、110度、115度、120度、125度、130度、及び135度であり、ここに例示した数値の何れか2つの間の範囲内でもよい。角αは、好ましくは、60度以上120度以下である。ここでいうプリブローとは、分割金型14による成形の前に行われるブローである。なお、本実施形態では押出方向は、重力方向であり、プリブローノズル20は、閉空間13aにおいて発泡パリソン13の内面に対して
図4〜
図7の示す押出方向と垂直なパリソン外周方向(すなわち角α=90度)にエアーを噴射するプリブローを行う。プリブローするためのガスの元圧は、例えば0.3bar〜7.0bar程度であり、好ましくは4.0barである。上記範囲よりも低圧ではパリソン拡張機能が不十分であり、上記範囲よりも高圧ではパリソンにかかる内圧により発泡倍率が往々にして低下する。
【0026】
プリブローノズル20は、ダイヘッド12の下部であって環状スリット49の略中心に設けられる。なお、プリブローノズル20は、例えば上下に位置を制御可能に構成されてもよいし、取り外し可能に設けられてもよい。また、プリブローノズル20は、エアーの噴射中に回転するように構成されてもよい。
【0027】
1.2 発泡成形体の製造方法
本発明の第1実施形態の発泡成形体の製造方法は、パリソン形成工程と成形工程とを備える。
【0028】
<パリソン形成工程>
まず、
図4に示すように、ダイコア47とこれを囲むダイシェル48の間の環状スリット49から発泡剤を含む溶融混練樹脂を成形領域Rの略全体に位置するように押出して筒状(例えば略円筒状)の発泡パリソン13を形成する。パリソン形成工程では、分割金型14及びピンチ部15は開状態になっている。
【0029】
次に、
図4〜
図5に示すように、分割金型14の下側に配置されたピンチ部15において発泡パリソン13を挟む。具体的には、ピンチ部15を
図4の矢印X方向に移動させて、
図5に示す下ピンチ状態にする。これによって、発泡パリソン13に閉空間13aが形成される。
【0030】
続いて、
図5〜
図6に示すように、プリブローノズル20により矢印B
1方向(パリソン外周方向)にエアーが噴射されるプリブローが行われる。
図1に示すように、従来技術ではプリブローノズル周辺の発泡パリソンが萎縮していたが、本発明の第1実施形態では
図6に示すように、発泡パリソン13が外周方向に加圧され発泡パリソン13が膨らむことで、プリブローノズル20周辺の萎縮を抑制することができる。また、重力の影響で発泡パリソン13の径が小さくなる現象が緩和される。加えて、発泡パリソン13に生じるカーテン現象が抑制され、折肉の発生率を低減することができる。
【0031】
<成形工程>
図6〜
図7に示すように、成形工程は、分割金型14の型締めによって行われる。具体的には、成型工程では、分割金型14を
図6の矢印Y方向に移動させることで分割金型14を型締めし、続いて、発泡パリソン13を分割金型14に押し付けることで発泡成形体13bを成形することができる。このように、発泡パリソン13を分割金型14のキャビティ14bの面に対応する形状に賦形することで、発泡成形体13bが成形される。成形工程において、発泡パリソン13を金型に押し付ける方法は、ブロー成形、真空成形、その組合せの何れであってもよい。
【0032】
本発明に係る発泡成形体の製造方法及び発泡成形体の製造装置は、以下の態様においても実施することができる。
【0033】
2.第2実施形態
第1実施形態において、プリブローノズル20は、ダイヘッド12の下部であって環状スリット49の略中心に設けられる。一方、第2実施形態では、
図8〜
図9に示すように、プリブローノズル20はピンチ部15の下方に設けられる。第2実施形態においても、プリブローノズル20は矢印B
1方向にエアーを噴射することによりプリブローを行う。かかる場合、
図9に示すように、ピンチ部15が発泡パリソン13とともにプリブローノズル20を挟み込むようにピンチすることが好ましい。
【0034】
第2実施形態でも、
図9に示すように、発泡パリソン13が外周方向に加圧され発泡パリソン13が膨らむことで、プリブローノズル20周辺の萎縮を抑制することができる。また、重力の影響で発泡パリソン13の径が小さくなる現象が緩和される。加えて、発泡パリソン13に生じるカーテン現象が抑制され、折肉の発生率を低減することができる。
【0035】
3.第3実施形態
第1実施形態及び第2実施形態において、ピンチ部15は、成形領域Rの下方に位置し、いわゆる下ピンチ部である。一方、第3実施形態では、
図10〜
図11に示すように、ピンチ部15は、成形領域Rの上側一部(分割金型14の大きさ次第では成形領域Rの上方)に設けられ、いわゆる上ピンチ部である。第1実施形態及び第2実施形態では、パリソン形成工程において、発泡パリソン13を成形領域Rの略全体に位置させ、その後下ピンチが行われる。一方、第3実施形態では、パリソン形成工程において、発泡パリソン13の押出しが徐々に行われるとともに矢印B
1方向にプリブローが徐々に行われる。そして、発泡パリソン13が、成形領域Rの上側一部に位置する所定のタイミングにおいて、ピンチ部15を矢印X方向に移動させて上ピンチが行われる。
【0036】
また、発泡パリソン13の所定量の押出しとプリブローとを交互に複数回行ってもよい。すなわち、
図10に示すように、まず発泡パリソン13を成形領域Rの上側一部に位置させるための所定量の押出しが行われる。続いて、
図11に示すように、発泡パリソン13を挟んで密閉する上ピンチが行われ、更にプリブローが行われる。その後は、発泡パリソン13の押出しとプリブローとが少なくとも1回行なわれるか、或いは上記同様、発泡パリソン13の押出しが徐々に行われるとともにプリブローも徐々に行われるようにしてもよい。なお、発泡パリソン13の押出しとともに、ピンチ部15は、下方へと押出されることになる。
【0037】
すなわち、第3実施形態のパリソン形成工程では、発泡パリソン13の下端が成形領域Rの下端に到達する前に、発泡パリソン13をピンチ部15で挟んで密閉し、発泡パリソン13の下端の下降に伴ってピンチ部15を下降させながらプリブローが行われる。
【0038】
第3実施形態でも、
図9に示すように、発泡パリソン13が外周方向に加圧され発泡パリソン13が膨らむことで、プリブローノズル20周辺の萎縮を抑制することができる。また、重力の影響で発泡パリソン13の径が小さくなる現象が緩和される。加えて、発泡パリソン13に生じるカーテン現象が抑制され、折肉の発生率を低減することができる。
【0039】
3.1 第3実施形態の変形例
図12に示すように、第3実施形態において上ピンチを行わないものとしてもよい。かかる場合、発泡パリソン13の押出しが徐々に行われるとともに矢印B
1方向にプリブローが徐々に行われるか、或いは、発泡パリソン13の所定量の押出しとプリブローとが交互に複数回行われる。
【符号の説明】
【0040】
1:発泡押出機、3:シリンダ、5:樹脂投入口、7:スクリュー、8、ギア装置、9:温度制御部、11:樹脂押出口、12:ダイヘッド、13:発泡パリソン、13a、閉空間、13b:発泡成形体、14:分割金型、15:ピンチ部、20:プリブローノズル、41:ダイ外筒、43:マンドレル、45:ピストン、46:空間、47:ダイコア、48:ダイシェル、49:環状スリット、P:発泡剤注入口、R:成形領域