【解決手段】硫化水素を吸着するための硫酸銀粉末を含む硫酸銀含有層61と、二酸化硫黄ガスを透過可能であり、硫酸銀含有層61を支持するための支持部材62とを備えることを特徴とするフィルタ6。
前記支持部材は、二酸化硫黄ガスを透過可能な第1支持層と、前記第1支持層のガスの流入方向における上流側の面に配置されるとともに、二酸化硫黄ガスを透過可能であり、前記第1支持層よりも表面粗さが大きい不織布を表面に含む第2支持層とを含み、
前記硫酸銀含有層は、前記第2支持層上に配置されている、請求項1〜3のいずれか1項に記載のフィルタ。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明を具体化した実施形態を図面に基づいて説明する。
【0018】
(ガス検知器の全体構成)
図1〜
図4を参照して、本発明の一実施形態によるガス検知器1の全体構成について説明する。
【0019】
図1に示す本発明の一実施形態によるガス検知器1は、概略的には、直方体形状に形成されている。ガス検知器1は、携帯可能な大きさ、および、重さを有する携帯型のガス検知器である。ガス検知器1は、筺体1aに収容された電池によって駆動される。
【0020】
なお、本明細書では、ガス検知器1の正面視における右方向をX1方向といい、左方向をX2方向という。ガス検知器1の正面視における背面方向をY1方向といい、前面方向をY2方向という。また、ガス検知器1の正面視における上方向をZ1方向といい、下方向をZ2方向という。
【0021】
ガス検知器1は、表示部2と、発光部3と、操作部4とを備えている。ガス検知器1は、4つのセンサ(可燃性ガスセンサ51、SO
2センサ52、H
2Sセンサ53、およびO
2センサ54)を含むセンサ部5を備えている。これにより、ガス検知器1を用いて、異なる4種のガス(可燃性ガス(combustible gas、COMB)、二酸化硫黄(SO
2)、硫化水素(H
2S)、および、酸素(O
2))を検出することができる。
【0022】
可燃性ガスセンサ51は、可燃性ガスを検知する接触燃焼式のセンサである。SO
2センサ52は、二酸化硫黄を検知する定電位電解式のセンサである。H
2Sセンサ53は、硫化水素を検知する定電位電解式のセンサである。O
2センサ54は、酸素を検知するガルバニ電池式のセンサである。なお、SO
2センサ52は、特許請求の範囲の「二酸化硫黄検出センサ」の一例である。
【0023】
(筺体の構造)
筺体1aは、たとえば、ABS樹脂(アクリロニトリルブタジエンスチレン共重合合成樹脂)により形成されている。筺体1aは、上部筺体1bと、下部筺体1cとを含んでいる。
【0024】
上部筺体1bには、表示部2や、ガス検知器1を動作するための電池(図示せず)を収容するための電池ケース1dなどが配置されている。
【0025】
下部筺体1cには、センサ収容部11と、下部蓋12とが設けられている。下部蓋12は、下部蓋12の内面と外面とを貫く4つの開口部121〜124を含んでいる。下部筺体1cには、センサ部5と、フィルタ6と、フッ素系フィルタ7と、フィルタ8と、ホルダ9とが収容されている。
【0026】
センサ収容部11は、4つのセンサ収容部111〜114を含んでいる。センサ収容部11の上端部には、センサ基板150(
図4参照)が設けられている。センサ基板150は、センサ51〜54の各々の端子5aと電気的に接続されており、各センサが取得した情報を制御部(図示せず)に伝達するように構成されている。
【0027】
センサ収容部111〜114は、下方に開口する円筒形状を有している。センサ収容部111には、可燃性ガスセンサ51(以下、センサ51という)が収容されている。センサ収容部112には、SO
2センサ52(以下、センサ52という)が収容されている。センサ収容部113には、H
2Sセンサ53(以下、センサ53という)が収容されている。センサ収容部114には、O
2センサ54(以下、センサ54という)が収容されている。隣接するセンサ収容部は、隣接するセンサ収容部同士が隔離されるように構成されている。
【0028】
〈フィルタ6の構造〉
図2に示すように、フィルタ6は、センサ52(SO
2センサ52)のSO
2検出部(図示せず)をZ2方向から覆うように配置されている。フィルタ6は、センサ52のZ2側の部分に配置されている。フィルタ6は、Z2方向から見て、略円形状に形成されている。
図3に示すように、フィルタ6は、硫酸銀含有層61と、支持部材62とを備えている。硫酸銀含有層61と支持部材62とは、交互に積層されている。硫酸銀含有層61は、Z方向の両側から支持部材62によって挟み込まれている。硫酸銀含有層61と支持部材62とは、それぞれ複数層設けられている。たとえば、硫酸銀含有層61は、2層設けられ、支持部材62は、3層設けられている。フィルタ6に対するガスの透過時間を考慮し、硫酸銀含有層61および支持部材62のそれぞれの層の数を適宜変更することが可能である。センサ52には、フィルタ6を通過したガスが流入する。
【0029】
硫酸銀含有層61は、硫酸銀粉末を含み、硫酸銀粉末によって硫化水素が吸着されるように構成されている。また、硫酸銀含有層61は、二酸化硫黄を吸着せずに透過する。硫酸銀含有層61は、Z方向の厚みt1が約0.1mmの層状に形成されている。硫酸銀含有層61の1層あたりの重さは、適宜変更可能である。好ましくは、硫酸銀含有層61は、1層あたり、0.012g以上0.024g以下の重さである。より好ましくは、硫酸銀含有層61は、1層あたり、0.012g以上0.015g以下の重さである。硫酸銀粉末の粒径は、たとえば、10μmである。なお、硫酸銀粉末の粒径は、10μm以外であってもよく、適宜変更可能である。硫酸銀粉末に含まれる複数の硫酸銀粒子は、略同じ粒径であってもよいし(狭い粒径分布を有していてもよいし)、異なる粒径であってもよい(広い粒径分布を有していてもよい)。硫酸銀粉末に含まれる複数の硫酸銀粒子は、様々な形状のものを採用することができる。また、硫酸銀粉末に含まれる複数の硫酸銀粒子の形状は、略均一であってもよいし、揃っていなくてもよい(形状にばらつきがあってもよい)。硫酸銀粉末の硫酸銀の純度は、たとえば、99.5%である。硫酸銀粉末は、硫酸銀以外の不純物として、銅(0.002%)、鉄(0.002%)、その他の成分(0.496%)を含んでいる。
【0030】
支持部材62は、硫酸銀含有層61を支持するために設けられている。支持部材62は、第1支持層621と、第2支持層622と、接着部623とを含んでいる。第1支持層621と、第2支持層622とは、二酸化硫黄ガスを透過可能であり、接着部623は、二酸化硫黄ガスを透過しないように構成されている。支持部材62は、全体として、概略的には層状に形成されている。支持部材62は、第1支持層621と第2支持層622とを合わせた厚みt2が、0.2mmになるように形成されている。
【0031】
第1支持層621は、支持部材62のガスの流入方向における下流側(Z1側)の部分である。第1支持層621は、二酸化硫黄ガスを透過可能に構成されている。第1支持層621は、第2支持層622よりも表面粗さが大きくないPTFE(polytetrafluoroethylene(ポリテトラフルオロエチレン))シートにより構成されている。PTFEシートは、複数の細孔を有する多孔質シートである。PTFEシートは、ガーレー通気性が12secより小さいものを用いることができる。また、PTFEシートは、初期透過圧力が14psiより大きいものを用いることができる。
【0032】
第2支持層622は、支持部材62のガスの流入方向における上流側(Z2側)の表面に形成されている。第2支持層622は、二酸化硫黄ガスを透過可能に構成されている。第2支持層622の表面粗さは、第1支持層621の表面粗さよりも大きい。第2支持層622は、たとえば、不織布により構成されている。
【0033】
接着部623は、Z方向に隣り合う支持部材62の第1支持層621と第2支持層622との間の位置に配置されている。接着部623は、Z方向に隣り合う支持部材62の第1支持層621および第2支持層622を接着(接続)している。接着部623は、支持部材62の縁部に沿って設けられている。接着部623により囲まれた領域に、硫酸銀粉末を含む硫酸銀含有層61が配置されている。接着部623は、たとえば、両面テープまたは接着剤である。接着部623は、硫酸銀含有層61と同様、Z方向に約0.1mmの厚みt1を有している。
【0034】
また、硫酸銀含有層61のZ2側の面623a全体が、第1支持層621および第2支持層622を介して、ガス検知器1の外部と通じている。SO
2センサ52のZ2側に露出するように構成されている。硫酸銀含有層61は、ガスの流入方向における上流側(Z2側)のフィルタ6の保持に用いられる部分を除く略全面からガスが流入するように配置されている。
【0035】
〈フッ素系フィルタの構造〉
図1に示すように、フッ素系フィルタ7は、4つのフッ素系フィルタ71〜74を含んでいる。フッ素系フィルタ7の素材は、ポリテトラフルオロエチレン(テフロン(登録商標))である。フッ素系フィルタ7は、気体(ガス)から水分や埃などの異物を分離(ろ過)するように構成されている。フッ素系フィルタ71(72〜74)は、センサ51(52〜54)と、センサ51(52〜54)に対応する開口部121(122〜124)との間に配置されている。
【0036】
〈フィルタ8の構造〉
フィルタ8は、センサ51(可燃性ガスセンサ51)をZ2方向から覆うように配置されている。フィルタ8は、H
2Sガスを除去(ろ過)するように構成されている。
【0037】
〈ホルダの構造〉
図4に示すように、ホルダ9は、4つのフッ素系フィルタ71〜74を保持するために設けられている。ホルダ9は、弾性を有する材料(たとえば、ゴム)により形成されている。ホルダ9は、4つのフッ素系フィルタ保持部91〜94と、フィルタ保持部95と、平坦部96および97と、凹部98とを含んでいる。
【0038】
ホルダ9は、センサ収容部11(センサ収容部111〜114)に収容されたセンサ51〜54と、センサ収容部11とに密着するように構成されている。
【0039】
4つのフッ素系フィルタ保持部91〜94は、それぞれ、ガスの流入方向の下流方向(Z1方向)に向けて窪む凹部により形成されている。フッ素系フィルタ保持部91〜94と、フッ素系フィルタ71〜71とは、それぞれ、Z方向において隙間がない状態で配置されている。フッ素系フィルタ保持部91〜94により、フッ素系フィルタ71〜71が互いに離間した状態で配置される。フッ素系フィルタ保持部91に形成された孔部91aは、Z方向にホルダ9を貫通するように構成されている。同様に、フッ素系フィルタ保持部92(93、94)に形成された孔部92a(93a、94a)は、それぞれ、Z方向にホルダ9を貫通するように構成されている。
【0040】
なお、硫酸銀含有層61を含むフィルタ6は、ホルダ9に対して、ガスの流入方向の下流側(Z1側)に配置されている。また、ホルダ9は、フィルタ6と接触しないように構成されている。
【0041】
フィルタ保持部95は、平面視において、フッ素系フィルタ保持部91に重なる位置に形成されている。フィルタ保持部95は、ガスの流入方向の上流方向(Z2方向)に向けて窪む凹部により形成されている。平面視において、フィルタ保持部95は、略円形状に形成されている。フィルタ保持部95とフィルタ8とは、Z方向において隙間がない状態で配置されている。
【0042】
平坦部96は、平面視において、平坦部96の一部分がフッ素系フィルタ保持部92に重なる位置に形成されている。平坦部96は、センサ52のZ2側の面に密着するように構成されている。
【0043】
平坦部97は、平面視において、平坦部97の一部分がフッ素系フィルタ保持部93に重なる位置に形成されている。平坦部97は、センサ53のZ2側の面に密着するように構成されている。
【0044】
凹部98は、平面視において、フッ素系フィルタ保持部94に重なる位置に形成されている。凹部98は、Z1方向に向けて窪む凹部により形成されている。凹部98は、センサ54のZ2側の面を支持するように構成されている。
【0045】
(他の部品の構造)
下部蓋12は、筺体1aの下部に含まれている。下部蓋12は、センサ収容部11に配置されたセンサ部5およびホルダ9などを覆うように構成されている。下部蓋12の4つの開口部121〜124を介して、4つのセンサ51〜54にガスがそれぞれ流入する。
【0046】
図1に示すように、表示部2は、ガス検知器1のY2側の面に設けられている。表示部2には、ガスの検知結果などが表示可能に構成されている。
【0047】
発光部3は、複数のLED(発光ダイオード素子)を有している。センサ部5(センサ51〜54)のうちいずれかのガス濃度が警報閾値を超えると、予め設定されている所定のパターンに従って発光部3が点灯する。
【0048】
操作部4は、ユーザにより、ガス検知器1に対する種々の入力操作が行われるように構成されている。
【0049】
センサ部5(センサ51〜54)のうちいずれかのガス濃度が警報閾値を超えた場合に、筺体1a内部の音発生部(図示せず)から発せられたブザー音は、筺体1aの前面の放音孔11aを介して、筺体1aの外部に放出される。
【0050】
(実施例)
次に、
図5および
図6を参照して、本発明の効果を確認するために行った試験(実施例)について説明する。
【0051】
以下のように、実施例1によるフィルタ6、実施例2によるフィルタ206、および、実施例3によるフィルタ306を作製し、フィルタ6、206、および、306について評価試験を行った。
【0052】
(実施例1のフィルタ6)
1層あたり0.012gの硫酸銀含有層61を2層設けるとともに、支持部材62を3つ設け、硫酸銀含有層61と支持部材62とをZ方向に交互に積層し、フィルタ6を作製した。
【0053】
(実施例2のフィルタ206)
0.012gの1層の硫酸銀含有層を、Z方向から支持部材62により挟み込みフィルタ206を作製した。
【0054】
(実施例3のフィルタ306)
0.024gの1層の硫酸銀含有層を、Z方向から支持部材62により挟み込みフィルタ306を作製した。
【0055】
(硫酸銀含有層を硫化水素ガスに曝したときの耐久試験)
作製した実施例1のフィルタ6を取り付けたSO
2センサと、実施例2のフィルタ206を取り付けたSO
2センサと、実施例3のフィルタ306を取り付けたSO
2センサとを、それぞれ、30ppmの硫化水素(H
2S)ガスに所定時間、曝露させ、耐久試験を行った。その結果を
図5に示す。
図5には、曝露時間と、各々のSO
2センサによりSO
2ガスとして検知されたSO
2指示値との関係が示されている。なお、
図5では、実施例3の結果を、便宜上、点線で示している。
【0056】
硫化水素ガスに対する曝露によりフィルタが破過すると、SO
2センサに硫化水素が常時流入するようになる。これにより、SO
2センサに流入する硫化水素の量が増加することに伴いSO
2センサが誤作動を起こす。その結果、SO
2センサに二酸化硫黄が流入していないにも関わらず、SO
2センサに流入する二酸化硫黄の流入量が増加した結果が得られる。このように、フィルタが破過することにより、SO
2センサの検出精度に悪影響を与えてしまう(SO
2センサの誤検出が発生する)。
【0057】
実施例1〜3の結果から、フィルタに含まれる硫酸銀の含有量が多いほど、硫化水素ガスに対する曝露時間に対し、フィルタが破過する速さが小さくなることが分かった。すなわち、フィルタに含まれる銀の含有量が多いほど、SO
2センサの誤検出が発生しにくいことが分かった。
【0058】
実施例1および実施例3の結果から、フィルタ全体として硫酸銀含有層が0.024gである場合には、硫化水素ガスに対する曝露時間に対し、フィルタが破過する速さが十分に小さいことが分かった。
【0059】
また、実施例3のフィルタ306(1層の硫酸銀含有層0.024g)よりも実施例1のフィルタ6(1層の硫酸銀含有層0.012gが2層)のほうが、硫化水素ガスに対する曝露時間に対し、フィルタが破過する速さが、若干小さいことが分かった。すなわち、フィルタ全体として同重量の硫酸銀粉末を含んでいたとしても、1層よりも2層にした方が、フィルタが破過しにくいことが分かった。
【0060】
(硫酸銀含有層を含むフィルタを取り付けたSO
2センサの出力値の経過特性結果)
硫化水素ガスに曝露されていない(新品の)実施例1のフィルタ6を取り付けたSO
2センサによるSO
2ガスの出力値(基準値)を測定した。この状態から、フィルタ6を取り付けたSO
2センサを、30ppmの硫化水素ガスに所定時間(4時間、14時間、26時間)曝露させて、それぞれの時間でのガスの出力値を測定した。そして、各時間での出力値を基準値で除算した。同様の測定を、実施例2のフィルタ206と、実施例3のフィルタ306とについて行った。これらの結果が、
図6に示されている。
【0061】
硫化水素ガスに対する曝露時間が増えるにつれ、ガスがフィルタを通過しにくくなる。これは、曝露時間が増えるにつれ、硫化水素と硫酸銀とが反応した結果、生成した硫化銀が、ガスの通路を閉塞したためと考えられる。
【0062】
実施例1〜3の結果から、フィルタを取り付けたSO
2センサを、30ppmの硫化水素ガスに14時間以上曝露させても、硫化水素ガスに曝露されていない場合の出力値(基準値)に対して、6割以上の出力値を維持できることが分かった。
【0063】
また、実施例1および実施例3の結果から、フィルタ全体として硫酸銀の含有量が同じでも、硫化銀含有層を単層より2層にして配置した場合の方が、硫化水素ガスに対する曝露時間が長くなってもガス出力値の低下が抑制されることが分かった。
【0064】
これは、同重量の硫酸銀粉末を配置する際、1層に全て配置するよりも、2層に分けて配置した方が、硫酸銀粉末を偏りなく配置でき、その結果、硫化水素に曝露させた際に生成した硫化銀が、ガスの通路を閉塞しにくくなるためと考えられる。
【0065】
図5および
図6に示した試験結果(硫酸銀含有層を硫化水素ガスに曝したときの耐久試験結果、硫酸銀含有層を含むフィルタを取り付けたSO
2センサの出力値の経過特性結果)から、硫酸銀粉末の含有量を多くして、かつ、2層に分けて硫酸銀粉末を配置することにより、フィルタの破過、および、ガスの通路の閉塞をより効果的に抑制できることが分かった。
【0066】
(本実施形態の効果)
本実施形態では、以下のような効果を得ることができる。
【0067】
本実施形態では、上記のように、硫化水素を吸着するための硫酸銀粉末を含む硫酸銀含有層61を設ける。これにより、硫酸銀粉末が偏った状態で配置される場合と異なり、フィルタ6に流入した硫化水素を層状の硫酸銀含有層61に確実に流入させることができる。その結果、硫酸銀含有層61により硫化水素が十分に吸着されるので、硫化水素がフィルタ6を通過してしまうのを確実に抑制することができる。したがって、このフィルタ6をSO
2センサ52に取り付けた場合に、フィルタ6を通過した硫化水素に起因し、SO
2センサ52による誤検出を抑制することができる。
【0068】
また、本実施形態では、ガスの流入方向における上流側の略全面からガスが流入するように配置されている。これにより、ガスが硫酸銀含有層の一部分に集中して流入する場合とは異なり、広い領域にガスを流入させることができる。その結果、硫酸銀含有層61が破過するまでの期間(フィルタ寿命)を長くすることができる。
【0069】
また、本実施形態では、硫酸銀含有層61と層状の支持部材62とを、交互に積層させるとともに、それぞれ複数層設ける。これにより、最初に流入する硫酸銀含有層61により硫化水素の濃度を低くした状態で、次の硫酸銀含有層61にガスを流入させることができる。その結果、硫酸銀含有層61が一層である場合よりも、硫酸銀含有層61による硫化水素の吸着能力をより長く確保することができる。
【0070】
また、本実施形態では、第1支持層621よりも表面粗さが大きい不織布を表面に含む第2支持層622上に硫酸銀含有層61を配置する。これにより、第2支持層622の不織布により、硫酸銀含有層61の位置ずれが起こるのを抑制することができる。
【0071】
(変形例)
なお、今回開示された実施形態および実施例は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した実施形態および実施例の説明ではなく特許請求の範囲によって示され、さらに特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更(変形例)が含まれる。
【0072】
たとえば、上記実施形態では、4種類のガスを検出可能な4種類のセンサを備えたガス検知器1に、本発明のフィルタを適用する例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、少なくとも、二酸化硫黄検出センサを備えたガス検知器であれば、他のガスを検出可能なセンサを任意の数だけ設けてもよい。
【0073】
また、上記実施形態では、本発明を携帯型のガス検知器1に適用する例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明は、据置型のガス検知器に適用されてもよい。
【0074】
また、上記実施形態では、ガスの流入方向における上流側(Z2側)の略全面からガスが流入するように硫酸銀含有層61が配置されている例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、Z2側の一部分からガスが流入するように硫酸銀含有層が配置されていてもよい。
【0075】
また、上記実施形態では、層状の支持部材62を設ける例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、層状以外の、たとえば、断面視において枠状を有する支持部材を設けてもよい。
【0076】
また、上記実施形態および実施例では、硫酸銀含有層61を1層〜2層、積層する例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、硫酸銀含有層を3層以上、設けてもよい。
【0077】
また、上記実施形態では、支持部材62を3層設ける例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、支持部材を1層、2層または4層以上設けてもよい。
【0078】
また、上記実施形態では、支持部材62が、第1支持層621と、第1支持層621よりも表面粗さが粗い第2支持層622とを含む例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、支持部材が、第2支持層を含んでいなくてもよい。
【0079】
また、上記実施形態では、支持部材がPTFEシートにより構成されている例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、支持部材が、PTFEシートに代えて、繊維状のシリカ(二酸化ケイ素(SiO
2))のシートにより構成されていてもよい。
【0080】
また、上記実施形態では、フィルタ6に加え、フッ素系フィルタ7(71〜74)を設ける例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、フッ素系フィルタを設けなくてもよい。
【0081】
また、上記実施形態では、フィルタ6をSO
2センサ52のZ2側の部分に接触するように配置したが、本発明はこれに限られない。本発明では、フィルタ6を別の部分に配置してもよい。たとえば、フィルタ6を空間300を隔ててSO
2センサ52と離間して配置してもよい。また、フィルタを、ホルダ9に対して、ガスの流入方向の上流側(Z2側)に配置してもよい。