(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2017-9591(P2017-9591A)
(43)【公開日】2017年1月12日
(54)【発明の名称】制御リング
(51)【国際特許分類】
G01B 5/02 20060101AFI20161216BHJP
【FI】
G01B5/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2016-113316(P2016-113316)
(22)【出願日】2016年6月7日
(31)【優先権主張番号】1555772
(32)【優先日】2015年6月23日
(33)【優先権主張国】FR
(71)【出願人】
【識別番号】513128349
【氏名又は名称】リシー・エアロスペース
(74)【代理人】
【識別番号】100098394
【弁理士】
【氏名又は名称】山川 茂樹
(74)【代理人】
【識別番号】100064621
【弁理士】
【氏名又は名称】山川 政樹
(72)【発明者】
【氏名】ベルトウ,アレクサンドル
(72)【発明者】
【氏名】ブルーク,マルシアル
(72)【発明者】
【氏名】パイヤール,クリストフ
【テーマコード(参考)】
2F062
【Fターム(参考)】
2F062AA21
2F062AA26
2F062BB03
2F062BB10
2F062BC61
2F062CC22
2F062CC25
2F062CC27
2F062EE01
2F062GG29
2F062LL13
2F062MM07
(57)【要約】 (修正有)
【課題】製造が容易であり、使用が簡単かつ迅速であり、殆ど摩耗せず、信頼性が高い、締結器具の潤滑帯状部の長さ及び幅を寸法的に確認するための制御リングを提供する。
【解決手段】制御リング100は、回転軸Bに沿って延在する円筒形本体110と、2つの対向する先端120、140とを備え、第1の先端120は2つの隣接する円弧セグメント122、124を備え、各円弧セグメント122、124はリングの回転軸Bに対して垂直な平面内に延在する末端壁126、128を有し、2つの末端壁126、128の平面は全く同一ではなく、第1の先端120から軸方向にオフセットされている。各円弧セグメント122、124は、制御リング100の回転軸Bを通る径方向平面に亘って延在する少なくとも1つの側壁130、132、134を備える。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
広がった頭部(12)と、軸(A)に沿って延在する円筒形シャフト(14)とを有する締結器具(10)のための、制御リング(100、100B、100C、100D)であって、
前記シャフトは、軸(A)に対して平行な少なくとも1つのコーティングの帯状部(22)を有し、
前記帯状部(22)は周方向幅に亘って延在し、
前記リングは、第1の先端(120、120B、120C、120D)と第2の先端(140、140B、140C、140D)との間で回転軸(B)に沿って延在する円筒形本体(110、110B、110C、110D)を備える、制御リング(100、100B、100C、100D)において、
前記制御リング(100、100B、100C、100D)は:
‐前記第1の先端(120、120B、120C、120D)は、2つの隣接する円弧セグメント(122、124;122C、124C)を備え、各前記円弧セグメントは、前記リングの前記回転軸(B)に対して垂直な平面内に延在する末端壁(126、128;126C、128C)を有し、前記2つの壁の前記平面は同一のものではなく、前記第1の先端から軸方向にオフセットされ;
‐各前記円弧セグメントは、前記リングの前記回転軸(B)を通る径方向平面に亘って延在している少なくとも1つの側壁(130、132、134;130C、132C、134C)を有する
ことを特徴とし;また
‐前記円弧セグメントの幅は検査するべき前記帯状部の最小幅によって画定され、前記2つの円弧セグメントの幅の合計は検査するべき前記帯状部の最大幅によって画定される
ことを特徴とする、制御リング(100、100B、100C、100D)。
【請求項2】
前記2つの隣接する円弧セグメント(122、124)は、前記管状本体の内側に前記末端壁(126、128)まで軸方向に延伸する、前記第1の先端(120、120B)と前記第2の先端(140、140B)との間に位置するノッチである、請求項1に記載の制御リング(100、100B)。
【請求項3】
前記2つの隣接する円弧セグメントは、前記管状本体の外側に前記末端壁(126C、128C)まで、前記第1の先端(120C、120D)を超えて軸方向に延伸する突出部(122C、124C)である、請求項1に記載の制御リング(100C、100D)。
【請求項4】
前記ノッチ又は前記突出部の側壁(130)の少なくとも1つの部分(130B)は、前記本体の径方向平面から角度(α)だけオフセットされた平面内に延在する、請求項2又は3に記載の制御リング(100、100B、100C、100D)。
【請求項5】
前記リングの前記第2の先端(140;140B)は、前記第2の先端から第1の末端壁(144B)までの前記本体の一部分に亘って軸方向に延在する、少なくとも1つのノッチ(142B;142D)を有し、
前記ノッチの1つの軸方向長さは、前記第2の先端と前記締結器具の前記シャフト上に配設された前記帯状部の軸方向先端との間の、検査するべき最小距離によって画定される、請求項1〜3のいずれか1項に記載の制御リング(100、100B、100C、100D)。
【請求項6】
前記第2の先端(140D)はまた、前記第2の先端から第2の底部壁までの前記本体の一部分に亘って軸方向に延在する少なくとも1つの第2のノッチ(152D)を有し、
前記第2のノッチの1つの軸方向長さは、前記第2の先端と前記締結器具の前記シャフト上に配設された前記帯状部の軸方向先端との間の、検査するべき距離の公差範囲によって画定される、請求項5に記載の制御リング(100D)。
【請求項7】
前記第2の先端(140;140B)は、皿穴状の又は隆起した前記締結器具の頭部の底部と相補的な、円錐形の又は平坦な表面を有する、請求項5に記載の制御リング(100、100B、100C、100D)。
【請求項8】
少なくとも1つの前記末端壁又は前記側壁は、前記検査される寸法の前記受容又は拒否を指示する視覚的手段を有する、請求項1〜7のいずれか1項に記載の制御リング(100、100B、100C、100D)。
【請求項9】
前記視覚的手段は、前記壁に塗布された色、又は前記壁付近に設けられた指標である、請求項8に記載の制御リング(100、100B、100C、100D)。
【請求項10】
請求項1〜9のいずれか1項に記載の制御リング(100、100B、100C、100D)を用いて、頭部(12)と軸に沿って延在する円筒形シャフト(14)とを備える締結器具(10)を制御するための方法であって、
前記シャフトは、前記軸に対して平行な少なくとも1つのコーティングの帯状部(22)を備え、
前記帯状部は、前記シャフトの周方向幅に亘って延在する、方法において、
前記方法は、以下のステップ:
a)前記締結器具の前記円筒形シャフト上に、クリアランスを設けて前記リング(100、100B、100C、100D)を設置するステップ;
b)前記リングを、前記シャフトの周に亘って回転させて、前記帯状部(22)の第1の縁部を、前記第1の先端の第1の円弧セグメントの側壁と位置合わせするステップ;
c)前記帯状部の前記第1の縁部と反対側の、前記帯状部(22)の第2の縁部が、第2の円弧セグメントに含まれており、前記第1の円弧セグメントに含まれていない場合、即ち前記帯状部の幅が前記第1の円弧セグメントの幅よりも大きく、かつ2つの隣接する前記円弧セグメントの幅より小さい場合に、前記帯状部(22)の前記周方向幅が適合しているものとして報告するステップ
を含む、方法。
【請求項11】
請求項10に記載の前記ステップb)及び前記ステップc)を、前記締結器具の前記コーティング帯状部それぞれに関して反復すること、及び
前記ステップc)が少なくとも1つの前記コーティング帯状部に関して確認されない場合に、前記締結器具を適合していないものとして報告すること
から構成される、請求項10に記載の締結器具(10)を制御するための方法。
【請求項12】
請求項5〜9のいずれか1項に記載の制御リングを用いて、頭部(12)と軸に沿って延在する円筒形シャフト(14)とを備える締結器具(10)を制御するための方法であって、
前記シャフトは、前記軸に対して平行な少なくとも1つのコーティングの帯状部(22)を備え、
前記帯状部は1つの長さに亘って延在し、
前記方法は、以下のステップ:
a)前記リング(100B、100D)を前記締結器具の前記円筒形シャフト上に設置するステップ;
b)前記リングを摺動させて、前記第2の先端(140B、140D)を前記締結器具の前記頭部(12)の下側に当接させるステップ;
c)前記リングを、前記シャフトの全周に亘って回転させるステップ;
d)前記リングの前記回転中に、どの前記帯状部も前記第1のノッチ(142B、142D)に現れない場合に、前記締結器具を、前記帯状部の最大長さの基準に適合しているものとして報告するステップ
を含む、方法。
【請求項13】
各前記帯状部の前記軸方向先端が前記第2のノッチ(152D)に対向して現れる場合に、前記締結器具を、前記帯状部の最小長さの基準に適合しているものとして報告することから構成されるステップを含む、請求項6と組み合わせて、請求項12に記載の締結器具を制御するための方法。
【請求項14】
前記リングの前記第2の先端(140B、140D)は、前記締結器具の前記頭部の下側に当接する位置にある、請求項12又は13に記載の締結器具(10)を制御するための方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、既存の製造ラインにおいて、締結器具の寸法特性が締結器具の設計案に適合しているかを確認するために設計された、制御ゲージに関する。より具体的には、本発明は、広がった頭部と軸に沿って延在する円筒形シャフトとを備えるタイプの締結器具のための制御リングに関し、上記シャフトは、上記軸に対して平行な少なくとも1つのコーティングの帯状部を備える。このような締結器具は特許文献1に記載されており、また
図1A、1Bに示されている。このタイプの締結器具は、航空機の金属及び複合材料製構造体を組み立てるために使用される。
【背景技術】
【0002】
図1A、1Bは、上述のタイプの金属製締結器具10を、それぞれ端面図及び側面図で示しており、これは隆起した頭部12、円筒形シャフト14、ねじ山付き部分16を備える。変形例では、この締結器具は、事前に穿孔された構造体に締結器具を挿入して締り嵌めするために締結器具を引っ張ることができるようにする、牽引用ステムを備えることができる。このステムは締結器具10の一体部品であってよく、又は、ねじ山付き部分16の内側に作製されたタップ付き先端部に挿入されたねじ山付き先端部を用いて取り外せるものであってよい。変形例では、上記ねじ山付き部分は、環状圧着溝に置き換えることができる。変形例では、頭部12は皿穴とすることができる。
【0003】
シャフト14は、1つ又は複数の金属及び/又は複合材料を含む複数の構造体のセットに作製された孔内に緊密に接触するよう設計され、4つの導電性部分20を備え、即ち上記導電性部分20は、電流がシャフトの導電性部分と孔の壁との間を流れるのを妨げるいずれのコーティング又は塗装を含まない。シャフトは4つの潤滑帯状部22も備え、これらは締結器具の回転軸Aに対して平行に配設される。各潤滑帯状部22は、シャフト14を覆うように、かつ頭部12の下側部分を覆うように、距離Xに亘って延在する。導電性部分20及び潤滑部分22は、
図1Aに示すように、シャフトの周を巡って交互に配設される。このようにして、締結器具が挿入される構造体の組成に関係なく、組立済み構造体の全厚さに亘って導電性が提供される。潤滑部分22により、シャフト14の高さ全体に亘ってシャフト14の潤滑をもたらすことができ、これにより締結器具を、妨害又は破損なしに設置して締り嵌めできる。
【0004】
使用される潤滑剤は、固体MoS
2タイプのフィルム、又はカリフォルニア州トーランスのHi‐Shear社が販売しているいずれも絶縁性のHI‐KOTE(商標)1若しくはHI‐KOTE(商標)1NCコーティングといったアルミニウム顔料を有する有機樹脂であってよい。潤滑剤は、締結器具10の設計案において指定された軸の長さ及び幅に亘って、例えば粉砕によって、厚さ5〜13μmで堆積される。
【0005】
締結器具10の製造手段及び潤滑帯状部22の堆積手段に関係なく、これらの帯状部の寸法特性‐特に長さ及び幅‐を測定し、上記締結器具の設計案の寸法特性と比較して、これらの適合を確実なものとする必要がある。
【0006】
締結器具の設計案において指定されている帯状部22の寸法を確認できる、様々な寸法測定手段が公知である。
【0007】
第1の手段は3D的な手段であり、これは、締結器具の触知によって寸法を確認できる。第2の公知の手段はコンピュータ化された手段であり、締結器具を撮影し、画像を基準画像と比較して分析するカメラを備える。
【0008】
これらの手段は信頼性が高いが、購入及び保守するには高価であり、嵩張り、壊れ易く、また特別に訓練を受けたスタッフが必要となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】仏国特許出願第3008754号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本出願の1つの目標は、製造が容易であり、使用が簡単かつ迅速であり、殆ど摩耗せず、信頼性が高い、従来技術の締結器具の潤滑帯状部の長さ及び幅を寸法的に確認するための手段を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
従って本発明の目的は、広がった頭部と軸に沿って延在する円筒形シャフトとを備えるタイプの締結器具のための制御リングであり、上記シャフトは、上記軸に対して平行な少なくとも1つのコーティングの帯状部を備え、上記帯状部は周方向幅に亘って延在する。
【0012】
上記リングは、第1の先端と第2の先端との間に、回転軸に沿って延在する、円筒形本体を備え:
‐第1の先端は2つの隣接する円弧セグメントを備え、各円弧セグメントは、上記リングの上記回転軸に対して垂直な平面内に延在する末端壁を有し、2つの壁の平面は全く同一ではなく、第1の先端から軸方向にオフセットされており;
‐各円弧セグメントは、リングの回転軸を通る径方向平面に亘って延在する少なくとも1つの側壁を備え;
円弧セグメントの幅は、確認するべき帯状部の最小幅によって画定され、上記2つの円弧セグメントの幅の合計は、検査するべき帯状部の最大幅によって画定される
ことを特徴とする。
【0013】
このようにして、締結器具の特性を寸法的に制御するための簡単なデバイスが得られる。このようなデバイスは、まずいずれのタイプの材料を機械加工又は成型することによる製造にコストがかからず、使用時に殆ど摩耗せず、実用上誤調整は不可能であり、定期的な較正が不要であり、締結器具の設置前に検査を実施する必要があるいずれのオペレータによって運搬及び利用できる。
【0014】
締結器具の材料に比べて硬度が低い材料を選択することによっても、締結器具に対する損傷、例えば掻き傷が生成されるリスクが低減される。
【0015】
本発明による制御リングは、技術的に可能な全ての組み合わせが想定される以下の特徴のうちの1つ又は複数を備えてよい。
【0016】
一実施形態では、2つの隣接する円弧セグメントは、管状本体の内側に末端壁まで軸方向に延在する、第1の先端と第2の先端との間に位置するノッチである。
【0017】
別の実施形態では、2つの隣接する円弧セグメントは、管状本体の外側に末端壁まで、第1の先端を超えて軸方向に延在する突出部である。
【0018】
単一のリング上で併用できるこれらの実施形態の一方又は他方の選択は、特に使用条件、例えば照明条件及び/若しくは読み取りのコントラストによって、又はユーザの快適性に関する好みによって、規定される。
【0019】
一実施形態では、ノッチの又は突出部の側壁の少なくとも一部分は、本体の径方向平面から角度(α)だけオフセットされた平面内に延在する。これにより、リング本体のあり得る厚さを想定して、より容易な光学的読み取りがもたらされる。
【0020】
一実施形態では、リングの第2の先端は、上記第2の先端から第1の末端壁までの本体の一部分に亘って軸方向に延在する、少なくとも1つのノッチを有し、このノッチの1つの軸方向長さは、上記第2の先端と、締結器具のシャフト上に配設された帯状部の軸方向先端との間の、検査するべき最小距離によって画定される。
【0021】
一実施形態では、第2の先端はまた、上記第2の先端から第2の底部壁までの本体の一部分に亘って軸方向に延在する、少なくとも1つの第2のノッチを有し、上記第2のノッチの1つの軸方向長さは、上記第2の先端と、締結器具のシャフト上に配設された帯状部の軸方向先端との間の、検査するべき距離の公差範囲によって画定される。
【0022】
このようにして、帯状部の長さ又は端部位置の制御に関して、帯状部の幅の検査に関してと同様の便益が得られる。
【0023】
一実施形態では、第2の先端は、それ自体を締結器具の頭部の形状へと調整するために、皿穴状の又は隆起した締結器具の頭部の底部と相補的な、それぞれ円錐形の又は平坦な表面を備える。
【0024】
一実施形態では、第2の先端は、皿穴状の又は隆起した締結器具の頭部の底部に対して交互に相補的な円錐形の表面及び平坦な表面を備える。
【0025】
制御の解釈を補助するため、及び不正確な読み取りのリスクを低減するために、少なくとも1つの末端壁又は側壁は、検査される寸法の受容又は拒否を指示する視覚的手段を備える。
【0026】
上記視覚的手段は例えば、上記壁に塗布された色、又は上記壁付近に設けられた指標である。
【0027】
本発明はまた、本発明の制御リングを用いて、頭部と軸に沿って延在する円筒形シャフトとを備える締結器具を制御するための方法にも関し、ここで上記シャフトは、上記軸に対して平行な少なくとも1つのコーティングの帯状部を備え、上記帯状部は周方向幅に亘って延在する。この方法は、以下のステップ:
a)締結器具の円筒形シャフト上に、クリアランスを設けて上記リングを設置するステップ;
b)上記リングを、上記シャフトの周に亘って回転させて、帯状部の第1の縁部を、第1の先端の第1の円弧セグメントの側壁と位置合わせするステップ;
c)上記帯状部の第1の縁部と反対側の、帯状部の第2の縁部が、第2の円弧セグメントに含まれており、第1の円弧セグメントに含まれていない場合、即ち上記帯状部の幅が第1の円弧セグメントの幅より大きく、かつ2つの隣接する円弧セグメントの幅より小さい場合に、帯状部の上記周方向幅が適合しているものとして報告するステップ
を含む。
【0028】
このようにして、締結器具の頭部に対する帯状部の幅の適合が確認される。
【0029】
ある実装態様では、1つの帯状部に対して実施されるステップb)、c)は、締結器具のコーティング帯状部それぞれに関して反復され、締結器具は、ステップc)が少なくとも1つのコーティング帯状部に関して確認されない場合に、適合していないものとして報告される。
【0030】
このようにして、リングに対する締結器具の単純な回転によって、締結器具の完全な制御が達成される。
【0031】
本発明はまた、本発明の制御リングを用いて、頭部と軸に沿って延在する円筒形シャフトとを備える締結器具を確認するための方法にも関し、ここで上記シャフトは、上記軸に対して平行な少なくとも1つのコーティングの帯状部を備え、上記帯状部は周方向幅に亘って延在する。この方法は、以下のステップ:
a)締結器具の円筒形シャフト上に、クリアランスを設けて上記リングを設置するステップ;
b)上記リングを摺動させて、締結器具の頭部の下側に第2の先端を当接させるステップ;
c)上記リングを、上記シャフトの全周に亘って回転させるステップ;
d)リングの回転中に、どの帯状部も第1のノッチに現れない場合に、締結器具を、帯状部の最大長さの基準に適合しているものとして報告するステップ
を含む。
【0032】
このようにして、締結器具のシャフトに対する帯状部の長さの適合が確認される。
【0033】
ある実装態様では、本方法は、各帯状部の軸方向先端が第2のノッチに対向して現れる場合に、締結器具を、帯状部の最小長さの基準に適合しているものとして報告することからなるステップも含む。
【0034】
ある実装態様では、リングの第2の先端は、締結器具の頭部の下側に当接する。このようにして、帯状部の長さの制御中に、リングを締結器具のシャフト上に誤って位置決めするリスクが低減される。
【0035】
本発明及びその様々な応用例は、以下の説明を読み、以下の説明に添付の図面を精査すると、より良好に理解されるだろう。これらは単なる情報として提示されており、本発明の限定ではない。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【
図1A】
図1Aは、既に説明した、検査するべき従来技術の締結器具の端面図である。
【
図1B】
図1Bは、既に説明した、検査するべき従来技術の締結器具の側面図である。
【
図2】
図2は、制御リングの第1の実施形態の等角図である。
【
図3】
図3は、制御リングの第2の実施形態の等角図である。
【
図4】
図4は、制御リングの第3の実施形態の等角図である。
【
図5】
図5は、制御リングの第4の実施形態の等角図である。
【
図6】
図6は、検査するべき締結器具のシャフト上に配置された
図2のリングの端面図である。
【
図7】
図7は、検査するべき締結器具のシャフト上に配置された
図2のリングの別の端面図であり、ここではシャフトが
図6に対して反時計回り方向に90°回転している。
【発明を実施するための形態】
【0037】
図2は、本発明による制御リング100の第1の実施形態を示す。制御リング100は、回転軸Bを有する管状本体110を備え、これは、上記管状本体の第1の先端120と、第1の先端の反対側の第2の先端140とにおいて開いている貫通孔を備える。リングは例えばアルミニウム製である。リングの内径は、検査するべき締結器具のシャフト14の外径に、ある公差内で適合し、これによりリングはシャフト14上を過度の抵抗なしに摺動できる。
【0038】
本体の第1の先端120は、本体110の一部分に亘って、先端120から末端壁126及び末端壁128それぞれまで軸方向に延在する、2つのU字型ノッチ122、124を備える。末端壁126、128は、平行な平面に亘って延在し、軸Bに対して垂直であり、互いから軸方向にオフセットされる。2つのノッチ122、124は隣接しており、異なる軸方向長さ及び幅、又は異なる長さの円弧セグメントを有する。
【0039】
用語「幅(width)」及び「円弧セグメント(arc segment)」は、本説明のこれ以降において相互交換可能に使用され、潤滑帯状部22によって被覆される円弧セグメントの長さを表す。
【0040】
ノッチ122は2つの側壁130、132及び末端壁126を備える。壁132は、径方向平面、即ちリングの半径に対して平行に延在し、リングの回転軸Bを通る平面内に配設される。壁130は、径方向平面に亘って延在する部分130A(
図6、7)と、径方向平面から角度αだけオフセットされた平面に亘って延在する傾斜部分130B(
図6、7)とを備える。この傾斜により、視覚的検査が容易になる。図示されていない変形例では、壁130全体に傾斜を付けてよい。側壁130、132間のノッチ122の幅は、帯状部22の許容される最小幅に適合する。側壁130、134間の2つのノッチ122、124の幅は、帯状部22の許容される最大幅に適合する。側壁132、134間の壁128の幅は、帯状部22の幅に関する、締結器具10の設計案において許容される公差範囲を表す。
【0041】
ノッチ122、124の軸方向長さの差は、帯状部22の軸方向寸法を測定するために使用されないが、これによって、ノッチの側壁によって表される2つの最小幅及び最大幅を視覚的に識別できる。
【0042】
リングの使用を容易にするために、本体110上の末端壁128の下側に単語「GO」を彫り、これは、測定される帯状部の幅に関する、許容される公差範囲を視覚的に示す。ある変形例では、末端壁128は、色、例えば緑色であってよく、これは、許容される寸法範囲を視覚的に示す。
【0043】
この実施形態では、第2の先端140は、ノッチを有しない平坦な表面を備える。
【0044】
図3は、本発明の第2の実施形態によるリング100Bを示す。リング100Bは、本体110Bと、
図2に示した第1の実施形態の第1の先端120と同一の第1の先端部120Bとを備える。
【0045】
図3の例では、リング100Bの第2の先端140Bは、先端140Bから、リング100Bの軸Bに対して垂直な平面内に延在する末端壁144Bまで、本体110Bの一部分に亘って軸方向に延在する、U字型ノッチ142Bを備える。ノッチ142Bは、2つの側壁146B、148B及び末端壁144Bを備える。側壁146B、148Bはそれぞれ、径方向平面内に配設される。本体110Bの一部分145Bは、視覚的点検を容易にするために傾斜が付けられている。
【0046】
ノッチ142Bは、帯状部22が締結器具の頭部下側半径13まで延在しておらず、頭部下側半径からある正確な距離において停止している場合にのみ必要である。この具体的なケースでは、ノッチ142Bは、締結器具の設計案において指定されている、頭部の下側部分と帯状部22の軸方向先端との間の最大距離に適合する距離に亘って、軸方向に延在する。ノッチ142Bの幅は、視覚的検査を可能にするのに十分なものでなければならないが、これを使用してコーティング帯状部の正確な幅を測定はしない。
【0047】
第2の先端140Bは、頭部突出型締結器具の頭部の底部に接触するよう設計された平坦な表面150Bを備える。先端140Bの下側壁は、頭部突出型締結器具の頭部下側半径13を受承するよう設計された肩部152Bを備える。
【0048】
リングの使用を容易にするために、本体110B上の末端壁146B付近、第2の先端140B付近に、単語「GO」を彫り、これは、測定される長さに関する、許容される寸法範囲を視覚的に示す。ある変形例では、側壁146Bは、色、例えば緑色であってよく、これは、測定される長さに関する、許容される寸法範囲を視覚的に示す。
【0049】
図4は、本発明の第3の実施形態によるリング100Cを示す。リング100Cは、本体110C、第1の先端120C、第2の先端140Cを備える。
図2に示す帯状部とは異なり、この実施形態の第1の先端120CはU字型ノッチを含まず、2つのU字型隆起部122C、124Cを備え、これらも隣接しており、それぞれ末端壁126C及び末端壁128Cまで、先端120Cを超えて軸方向に延在する。
【0050】
隆起部122Cは、2つの側壁130C、132C、末端壁144Bを備える。壁132Cは径方向平面内に配設される。側壁130C、132C間の隆起部122Cの幅は、帯状部22の許容される最小幅に適合する。側壁130C、132C間の2つの隆起部122C、124Cの幅は、帯状部22の許容される最大幅に適合する。側壁132C、134C間の幅は、締結器具10の設計案において許容される公差を表す。
【0051】
隆起部122C、124Cの軸方向長さの差は、帯状部22の軸方向寸法を測定するために使用されないが、これによって、隆起部の側壁によって表される2つの最小幅及び最大幅を視覚的に識別できる。
【0052】
リングの使用を容易にするために、リングの本体110C上の末端壁128Cの下側に単語「GO」を彫り、これは、測定される幅に関する、許容される寸法範囲を視覚的に示す。ある変形例では、末端壁128Cは、色、例えば緑色であってよい。
【0053】
締結器具の許容不能を示す指標「NO GO」を、側壁130Cの付近と、先端120Cの下側かつ壁134Cの付近とに彫り、これらは、測定される幅の許容できない寸法範囲を視覚的に示す。ある変形例では、先端120Cの平坦な表面及び側壁130Bは、色、例えば赤色であってよく、これは、測定される幅に関して、許容できない寸法範囲を視覚的に示す。これらはオプションであり、このゲージは「GO」の指標のみ、緑色のみ、「NO GO」の指標のみ、又は赤色のみを有してもよい。
【0054】
リング110Cの第2の先端140Cは、ノッチを有しない平坦な表面を備える。図示されていないある変形例では、第2の先端140Cは、
図3に示すようなノッチ142B、又は
図5に示し以下で説明する一連のノッチ142D、152D、162Dを備えてよい。
【0055】
図5は、本発明の第4の実施形態によるリング100Dを示す。リング100Dは、本体110Dと、
図4に示したリング100Cの第1の先端120Cと同一の第1の先端部120Dとを備える。ある変形例では、第1の先端120Dは、リング100Cの第1の先端120Cと同一であってよい。
【0056】
図5の例では、リング100Dの第2の先端140Dは、先端140Dから、軸Bに対して垂直な平面内に延在しかつ互いから軸方向にオフセットされている3つの末端壁それぞれまで、本体110Dの一部分に亘って軸方向に延在する、一連の3つの連続したU字型ノッチ142D、152D、162Dを備える。3つのノッチ142D、152D、162Dはこれらの中央を通る径方向平面に関して対称であり、これら3つのノッチの中央の径方向平面は同一である。
【0057】
各ノッチは、2つの側壁及び1つの末端壁を備える。側壁はそれぞれ径方向平面内に配設される。末端壁が先端140Dに近づくほど、ノッチの幅は大きくなる。異なる幅の連続した隣接するノッチを使用することにより、各ノッチの側壁を周方向に変位させることによって、公差範囲を物理的に示すことができる。
【0058】
第1のノッチ142Dの軸方向長さは、締結器具の頭部下側半径13を帯状部22の軸方向先端から分離するために必要な最小距離を表す。
【0059】
従って、第2のノッチ152Dの軸方向長さ及び第1のノッチ142Dの軸方向長さは、締結器具の頭部下側半径13と帯状部22の軸方向先端との間の距離に関する公差範囲を表す。
【0060】
第3のノッチ162Dは、締結器具の設計案において指定されている、締結器具の頭部下側半径13と帯状部22の軸方向先端との間の最大距離より大きい距離を超えて軸方向に延在する。
【0061】
ノッチ142D、152D、162Dの幅は、視覚的検査を可能とするよう十分なものでなければならないが、点検の誤差を防止するために、潤滑帯状部の幅の測定には使用されない。
【0062】
リングの使用を容易にするために、リングの本体110D上、第2のノッチ152Dの側壁の付近に単語「GO」を彫り、これは、測定される帯状部の長さに関する、許容される公差範囲を視覚的に示す。ある変形例では、第2のノッチの側壁は緑色であってよい。
【0063】
リングは、このリングが皿穴状頭部の締結器具に好適であることを示す単語「COUNTERSUNK」や、ノッチ142D、162Dの側壁付近の、軸方向先端がこの範囲内に現れる帯状部は公差範囲外であることを示す「NO GO」等の、他の視覚的指標を含んでよい。ある変形例では「NO GO」の指標を、これらのノッチの側壁に赤色を塗布することによって置き換えてよい。
【0064】
これより、リング100、100B又は100C又は100Dを用いた、締結器具10のシャフト上のコーティング帯状部22の寸法の測定方法について、
図6、7を参照して説明する。
【0065】
図6、7は、
図2に示すリング100を用いた、締結器具10のコーティング帯状部22の測定を示す。リング100は上面図で示されており、締結器具のシャフトは断面図で示されている。潤滑帯状部22は概略的に示されており、大幅に拡大されている。
【0066】
ある寸法の不適合は締結器具の不適合を招くため、本方法は以下のステップを含み、これらは異なる順序で実施してもよい。
【0067】
第1のステップは、検査するべき締結器具の円筒形シャフト14上に、クリアランスを設けてリング100を設置することからなる。
【0068】
続いてオペレータは、検査するべき帯状部22’が2つのノッチ122、124内に現れるように、リングをシャフトの全周に亘って回転させる。これを実施するために、オペレータは、ノッチ122の壁130Aを、帯状部の先端22’aと位置合わせする。
【0069】
帯状部22’の場合、帯状部の第2の先端22’bは、ノッチ122の壁132と第2のノッチ124の壁134との間に現れる。従って帯状部22’の幅は、必要な最小幅よりも広く、かつ許容される最大幅よりも狭いため、末端壁128の幅によって画定されるような公差範囲内となる。
【0070】
帯状部22’の幅が適合している場合、オペレータはリング100を締結器具のシャフト14上で回転させて、隣接するコーティング帯状部22”を点検する。この位置は
図7に示す。
【0071】
上述のように、オペレータはノッチ122の壁130Aを、帯状部の1つの先端22”と位置合わせする。
【0072】
帯状部22”の場合、帯状部の第2の先端22”bは、ノッチ122の壁132と第2のノッチ124の壁134との間に現れない。従って帯状部22”の幅は、許容される最大幅よりも狭いため、末端壁128の幅によって画定されるような公差範囲内となる。従ってこれは設計案に適合せず、締結器具10は不適合として報告される。
【0073】
仮に帯状部22”の第2の先端22”bがノッチ122の幅内で壁132の手前で終端すると、これは許容される最小幅より小さいため、これもまた不適合と見做されることになる。従って締結器具10もまた不適合と見做されることになる。
【0074】
全ての帯状部22が適合していると見做される場合、検査される締結器具10も、設計案に適合していると見做される。
【0075】
ゲージ100Cを用いて帯状部22の幅の適合性を測定するステップは、上述のものと同様であるが、オペレータが帯状部の先端22’b又は22”bを隆起部122Cの壁130Cと位置合わせして、帯状部22の先端22’a又は22”aが第2の隆起部の壁128Cの幅内に現れるかどうかを検査しなければならない点が異なる。帯状部が狭すぎるか又は帯状部が広すぎることによって先端22’a又は22”aが現れない場合、帯状部は不適合であり、締結器具は不適合であると見做される。
【0076】
締結器具10が、シャフト14の全長に亘って延在しないものの、締結器具10の頭部下側半径13から離れたシャフトの一部分のみに亘って延在する帯状部22を備える場合、リング100B又は100Dが必要となる。これを実施するために、オペレータは例えばリング100Bを締結器具の円筒形シャフト14上に設置し、本体の第2の先端140Bが締結器具の頭部の下側に当接するまでリングを摺動させる。締結器具10の頭部が隆起している場合、第2の先端140Bは、隆起した頭部12の下側に道節するために平坦な部分を必要とする。締結器具10の頭部が皿穴状である場合、第2の先端140Bは円錐形部分を必要とする。
【0077】
次にオペレータは、シャフトの全周に亘ってリングを回転させ、各帯状部22がノッチ142B内に現れるかどうかを視覚的に検査する。
【0078】
1つの帯状部22が現れない場合、帯状部22が頭部の底部から離れ過ぎており、帯状部22の長さが設計案に適合しないため、締結器具は不適合として報告される。全ての帯状部が現れる場合、締結器具は設計案に適合するものとして報告される。
【0079】
ノッチ142Bは、頭部下側半径13と帯状部22の軸方向先端との間の最大距離のみを検査する。締結器具10の設計案により、帯状部22が、頭部下側半径に関する公差範囲内に含まれる距離になければならないと指定されている場合、オペレータは、
図5に示すリング100Dを使用することになる。
【0080】
適合していると見做されるためには、帯状部22の軸方向先端が、第2のノッチ152Dの側壁の反対側に現れなければならない点を除いて、この点検方法は、前に説明したものと同一である。帯状部22の軸方向先端が第3のノッチ162Dの反対側に現れる場合、帯状部は短すぎる。帯状部22の軸方向先端が第1のノッチ142Dの反対側に現れる場合、帯状部は長すぎる。これら両方のケースにおいて、帯状部の長さは設計案に適合せず、締結器具は不適合であると見做される。
【0081】
有利には、リングは、第1の先端における帯状部の幅を確認する手段と、第2の先端において帯状部の長さを検査する2つの手段とを備え、上記2つの手段のうちの一方は皿穴状頭部を有する締結器具に好適であり、他方は隆起した頭部を有する締結器具に好適である。このようにして、単一のリングによって、複数の制御の迅速な実現が可能となる。リング100B又は100Dは、帯状部の幅を検査する視覚的手段のみを用いて、帯状部の軸方向長さに関する要件なしに、締結器具を点検するために使用できる。
【0082】
このようなリングは製造が簡単であり、側壁が摩擦に曝されないため殆ど摩耗せず、制御壁付近又は制御壁上に適用されたGO/NO GOの印又はカラーコードのおかげで使用が簡単である。
【0083】
当然のことながら、このリングは、いずれのタイプのコーティングの帯状部の幅及び長さを測定するために使用でき、潤滑帯状部のみを対象とするものではない。