【課題】2鏡光学系における収差のうちの球収差K1、コマ収差K2、アスティグマチズム収差K3、像面湾曲K4を完全に補正することが容易である半視野3鏡光学系を提供することを目的とする。
【解決手段】2鏡で作る中間結像面に結像された像を、第3鏡で結像させる3鏡光学系において、上記中間結像面における光軸の一方の片側を通過した光を結像させるように、上記第3鏡が設けられ、上記中間結像面における上記光軸の他方の片側を含む光軸の前後の面に、受光素子または反斜鏡が設けられていることを特徴とする。
【発明を実施するための形態】
【0010】
発明を実施するための形態は、以下の実施例である。
【実施例1】
【0011】
図1は、本発明の実施例1である半視野3鏡光学系100を示す図である。
【0012】
半視野3鏡光学系100は、主鏡10と、副鏡20と、第3鏡31とを有する。半視野3鏡光学系100は、主鏡10と副鏡20との2鏡で作る中間結像面S1に結像された像を、第3鏡31で反射し、受光素子41の受光面41Sに結像させる光学系である。
【0013】
また、主鏡10、副鏡20、第3鏡は、とともに非球面鏡である。第3鏡31は、中間結像面S1における光軸の片側の一方の面S11を通過した光(ビーム)のみを、反射し、受光素子41の受光面41Sに結像させるように構成されている。中間結像面S1は円形であり、一方の面S11は半円形であり、他方の面S12も半円形である。
【0014】
つまり、受光素子41は、副鏡20で反射した光であって、中間結像面S1における光軸の片側の他方の面S12を通過しようとする光の通過を阻止する。
【0015】
すなわち、半視野3鏡光学系100は、中間像を作り、その第3鏡31による結像倍率をほぼ1とし、光軸の片側の面S11の視野を、光軸の反対側の面S12に結像させる。受光素子41が視野の半分を遮蔽することによって、視野の半分を失う代わりに、利用できる視野(残った半分の視野)では、斜鏡によるケラレ(斜鏡による光路の遮蔽)はない。主鏡10の曲率半径を1とした場合、口径が0.3なら、3次収差を消すためには、円錐定数を決めるだけで足りる。
【0016】
次に、半視野3鏡光学系100の動作について説明する。
【0017】
まず、視界から射入された光は、主鏡10で反射し、この反射光が副鏡20で反射し、中間結像面S1で結像する。この中間結像面S1で結像した像のうちの半分の像が、中間結像面S1における光軸の片側の一方の面S11(中間結像面S1の半分の面S11)を通過し、第3鏡31で反射し、光軸の他方の片側の面S12で再結像する。光軸の他方の片側の面S12は、最終結像面であり、この最終結像面に、受光素子41の受光面41Sが配置されている。
【0018】
ここで、4つの収差である球面収差K1、コマ収差K2、アスティグマチズム収差(非点収差)K3、像面湾曲収差K4は、3つの鏡10、20、30の円錐定数と曲率半径とを使用すれば、理論的に補正することができる。
【0019】
図2は、「物体距離(半径)s」と「像距離t−物体距離s」との関係を示す図において、従来例の視野3鏡光学系、実施例の半視野3鏡光学系のそれぞれが存在する範囲を示す図である。
【0020】
中間像を使う従来の3鏡系では、主鏡10の曲率半径R、主鏡副鏡系のバックフォーカスBF1を決めておけば、第3鏡31についての物体距離sと像距離tによって、光軸方向の構造は確定し、斜鏡によるケラレを計算することができる。
【0021】
物体距離sは、中間結像面S3から第3鏡33までの距離であり、像距離tは、第3鏡33から受光素子41の受光面41Sまでの光路の距離である。また、「像距離t−物体距離s」は、
図1に示す半視野3鏡光学系100においては、0である。
【0022】
従来例の3鏡アナスティグマート(TMA)において、光学系として使用できる範囲は、
図2の左上から右下にかけての帯状の部分(「Full Field Three−Mirror Anastigment」と記載してある帯状の部分)であり、その他の部分は、ケラレ(受光素子による光路の遮蔽)のために、光学系としては使用できない。
【0023】
つまり、
図2において、横の破線と縦の破線の交点に記載されている数字は、従来例のようにケラレがある場合における斜鏡によるケラレ(瞳のケラレ)の半径の長さを示す。たとえば、物体距離の半径sが0.4mである場合に、「像距離t−物体距離s」が、1.0m、1.2mであれば、ケラレは、それぞれ、0.33、0.27であり、面積では、半径の二乗であるので、それぞれ、約0.10、0.07であり、ケラレが面積比で10%以下である。したがって、この領域では、光学系として使用できると考えられる。しかし、「像距離t−物体距離s」が上記領域を大きく外れると、ケラレが面積で50%を超えるので、光学系として使用できないと考えられる。また、従来例では、「像距離t−物体距離s」が0.4以下では、従来例では、光学系として全く使用することができない。特に、従来例では、「像距離t−物体距離s」が0.0〜0.2の範囲では、中間像と受光素子とが重なるので、像を全く見ることができない。
【0024】
しかし、実施例1では、視野を半分使用し、この使用する半分の視野には、受光素子が存在していないので、受光素子によるケラレがなく、光学系として使用することができる。つまり、半視野3鏡光学系100では、主鏡副鏡系による視野の半分を捨て、第3鏡31でほぼ等倍に再結像させるので、主鏡副鏡系によるケラレは残るが、斜鏡によるケラレは無くなる。
【実施例2】
【0025】
図3は、本発明の実施例2である半視野3鏡光学系200を示す図である。
【0026】
半視野3鏡光学系200は、2鏡で作る中間結像面S2に結像された像を、第3鏡32で結像させる3鏡光学系において、中間結像面S2における光軸の一方の片側の面S21を通過した光を、斜鏡M2で反射し、この反射した光を結像させるように、第3鏡32が設けられ、中間結像面における上記光軸の他方の片側を含む光軸の前後の面S22に、受光素子42が設けられている。
【0027】
つまり、半視野3鏡光学系200は、主鏡10と、副鏡20と、第3鏡32と、斜鏡M2と、受光素子42とを有し、主鏡10と副鏡20との2鏡で作る中間結像面S2に結像された像のうちの半分を、第3鏡32で反射し、受光素子42の受光面42Sに結像させる光学系である。
【0028】
斜鏡M2は、副鏡20の光軸の
図3中、下半分に設けられ、45度傾斜し、斜鏡M2の反射面の上端が、中間結像面S2上に存在し、また、斜鏡M2の反射面の上端が、副鏡20の光軸上に存在している。したがって、副鏡20で反射した光が、斜鏡M2の反射面で収束する前に反射し、第3鏡32に向かう。なお、斜鏡M2の傾斜角を、45度に設定しているが、45度以外に設定するようにしてもよい。
【0029】
半視野3鏡光学系200によれば、視野を半分しか使用しないが、その視野では、瞳のケラレが全くない光学系として使用することができるという効果を奏する。
【0030】
また、半視野3鏡光学系200によれば、主鏡10と副鏡20で形成される鏡筒の長さを短くすることができるので、使い勝手が良い。
【実施例3】
【0031】
図4は、本発明の実施例3である半視野3鏡光学系300を示す図である。
【0032】
半視野3鏡光学系300は、2鏡で作る中間結像面S3に結像された像を、第3鏡33で結像させる3鏡光学系において、中間結像面S3における光軸の一方の片側の面S31を通過した光を、第3鏡33で反射し、この反射した光を、中間結像面S3における上記光軸の他方の片側の面S32に設けられた斜鏡M3で反射する。斜鏡M3で反射した光を受光面43Sで結像させるように、受光素子43が設けられている。
【0033】
半視野3鏡光学系300によれば、視野を半分しか使用しないが、その視野では、瞳のケラレが全くない光学系として使用することができるという効果を奏する。
【実施例4】
【0034】
図5は、本発明の実施例4である半視野3鏡光学系400を示す図である。
【0035】
半視野3鏡光学系400は、2鏡で作る中間結像面S4に結像された像を、第3鏡34で結像させる3鏡光学系において、中間結像面S4における光軸の一方の片側の面S41に設けられている斜鏡M4で副鏡20からの光を反射し、この反射した光を結像させるように、第3鏡34が設けられ、第3鏡が反射した光が受光素子44の受光面44Sで結像する。
【0036】
つまり、半視野3鏡光学系400は、主鏡10と、副鏡20と、第3鏡34と、斜鏡M4と、受光素子44とを有し、主鏡10と副鏡20との2鏡で作る中間結像面S2に結像される像の半分を、斜鏡M4で反射し、第3鏡34で反射し、受光素子44の受光面44Sで結像させる光学系である。
【0037】
半視野3鏡光学系400によれば、視野を半分しか使用しないが、その視野では、瞳のケラレが全くない光学系として使用することができるという効果を奏する。
【実施例5】
【0038】
図6は、本発明の実施例5である半視野3鏡光学系500を示す図である。
【0039】
半視野3鏡光学系500は、2鏡で作る中間結像面S5に結像された像の半分を、第3鏡34で結像させる3鏡光学系において、副鏡20からの光が、中間結像面S5における光軸の一方の片側の面S51に設けられた斜鏡M5で反射し、この反射した光を結像させるように、第3鏡35が設けられ、第3鏡が反射した光を、斜鏡M51が反射し、受光素子45の受光面45Sで結像する。
【0040】
つまり、半視野3鏡光学系500は、主鏡10と、副鏡20と、第3鏡35と、斜鏡M5と、受光素子45とを有し、主鏡10と副鏡20との2鏡で作る中間結像面S5に結像された像の半分を、斜鏡M5で反射し、第3鏡34で反射し、斜鏡M51で反射し、受光素子45の受光面45Sで結像させる光学系である。
【0041】
半視野3鏡光学系500によれば、視野を半分しか使用しないが、その視野では、瞳のケラレが全くない光学系として使用することができるという効果を奏する。
【実施例6】
【0042】
図7は、本発明の実施例6である半視野3鏡光学系600を示す図である。
【0043】
半視野3鏡光学系600は、2鏡で作る中間結像面S6に結像された像の半分を、第3鏡36で結像させる3鏡光学系において、副鏡20からの光が、中間結像面S6における光軸の一方の片側の面S61に設けられた斜鏡M6で反射し、この反射した光を結像させるように、第3鏡36が設けられ、第3鏡36が反射した光を、受光素子46の受光面46Sで結像する。また、斜鏡M6は、主鏡10と副鏡20との間に設けられている。
【0044】
つまり、半視野3鏡光学系500は、主鏡10と、副鏡20と、第3鏡36と、斜鏡M6と、受光素子46とを有し、主鏡10と副鏡20との2鏡で作る中間結像面S6に結像された像の半分を、斜鏡M6で反射し、第3鏡36で反射し、受光素子46の受光面46Sで結像させる光学系である。
【0045】
半視野3鏡光学系600によれば、視野を半分しか使用しないが、その視野では、瞳のケラレが全くない光学系として使用することができるという効果を奏する。
【0046】
また、半視野3鏡光学系600によれば、斜鏡M6が主鏡10と副鏡20との間に設けられているので、光路が主鏡10の
図7中、右に出ないので、半視野3鏡光学系600の光軸方向の長さが短くなるという効果を奏する。
【実施例7】
【0047】
図8は、本発明の実施例8である有限距離物体結像系700を示す図である。
【0048】
実施例1〜7は、無限距離にある物体を結像する装置であるが、実施例8は、有限距離にある物体を結像する装置である。
【0049】
有限距離物体結像系700は、半視野3鏡光学系100を使用した有限距離物体結像系である。有限距離物体結像系700は、半視野3鏡光学系100において、光源50、フォトマスク(パターン原版)60、焦点面70を設けた装置であり、
図8中、最も左から右に向かって、順に、光源50、フォトマスク60、副鏡20、主鏡10、焦点面70、第3鏡31が設けられている。
【0050】
光源50は、平行光の紫外線を発生する光源である。焦点面70は、半視野3鏡光学系100における受光素子41の位置に設けられている。
【0051】
つまり、有限距離物体結像系700において、光源50で発生し、フォトマスク60を通過した像(光)に基づいて、主鏡10、副鏡20によって中間像を作り、その第3鏡31による結像倍率をほぼ1とし、光軸の片側の面S11の視野を、光軸の反対側の面S12に結像させる。焦点面70が視野の半分を遮蔽することによって、視野の半分を失う代わりに、利用できる視野(残った半分の視野)では、斜鏡によるケラレはない。主鏡10の曲率半径を1とした場合、口径が0.3なら、3次収差を消すためには、円錐定数を決めるだけで足りる。
【0052】
次に、有限距離物体結像系700の動作について説明する。
【0053】
まず、光源50で発生した平行光の紫外線は、フォトマスク60を通過し、この通過した光は、主鏡10で反射し、この反射光が副鏡20で反射し、中間結像面S1で結像する。この中間結像面S1で結像した像のうちの半分の像が、中間結像面S1における光軸の片側の一方の面S11(中間結像面S1の半分の面S11)を通過し、第3鏡31で反射し、光軸の他方の片側の面S12で再結像する。光軸の他方の片側の面S12は、最終結像面であり、この最終結像面に、焦点面70が配置されている。
【0054】
ここで、4つの収差である球収差K1、コマ収差K2、アスティグマチズム収差(非点収差)K3、像面湾曲収差K4は、3つの鏡10、20、30を使用すれば、理論的には補正することができる。
【0055】
有限距離物体結像系700は、感光性の物質を塗布した物質の表面を、パターン状に露光(パターン露光、像様露光)することによって、露光された部分と露光されていない部分からなるパターンを生成する装置であり、主に、半導体素子、プリント基板、印刷版、液晶ディスプレイパネル、プラズマディスプレイパネル等の製造に使用される。
【0056】
従来、精密パターンを露光させるには、紫外線等、波長の短い光を使用して露光したいが、露光装置に通常のガラスを使用すると、ガラスが紫外線を透過しないので、高価な光学結晶の利用が必要となる。また、大口径の結晶が現状製造できないので、レンズの場合、露光に紫外線を使用することは適切ではない。
【0057】
しかし、有限距離物体結像系700では、鏡10、20、30を使用するので、光がガラスを透過する必要がなく、したがって、紫外線を使用することができ、従来よりも精密なパターンを露光させることができる。
【0058】
なお、光源50は、X線を発生するものでもよく、さらに波長の短い光を発生する光源であってもよい。このように、光源50がX線等を発生すれば、X線等の波長が短いので、紫外線を使用した場合よりも、回路パターンをさらに微細に形成することができる。
【0059】
なお、有限距離物体結像系700において、半視野3鏡光学系100の代わりに、各実施例2〜6(半視野3鏡光学系200〜600)を、上記と同様に、有限距離物体結像系に利用するようにしてもよい。
【0060】
また、光源が赤外線を発生し、この赤外線を被監視領域に照射し、実施例1〜6(半視野3鏡光学系100〜600)を利用すれば、監視カメラとして使用することができる。実施例1〜7(半視野3鏡光学系100〜700)は、レンズを使用せず、鏡を使用しているので、波長の如何を問わず、機能を発揮することができる。