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特開2017-96906トポグラフィ・プロフィール及び/又はトポグラフィ・イメージを測定する方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2017-96906(P2017-96906A)
(43)【公開日】2017年6月1日
(54)【発明の名称】トポグラフィ・プロフィール及び/又はトポグラフィ・イメージを測定する方法
(51)【国際特許分類】
   G01N 3/42 20060101AFI20170428BHJP
   G01Q 60/24 20100101ALI20170428BHJP
   G01Q 10/04 20100101ALI20170428BHJP
【FI】
   G01N3/42 Z
   G01Q60/24
   G01Q10/04
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2016-20346(P2016-20346)
(22)【出願日】2016年2月5日
(31)【優先権主張番号】01679/15
(32)【優先日】2015年11月18日
(33)【優先権主張国】CH
(71)【出願人】
【識別番号】515347186
【氏名又は名称】アントン パール トライテック ソシエテ アノニム
(74)【代理人】
【識別番号】110000855
【氏名又は名称】特許業務法人浅村特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ベルトラン ベラトン
(72)【発明者】
【氏名】リシャール コンシグリオ
(72)【発明者】
【氏名】ジャック ヴォアルガルト
(57)【要約】
【課題】試料の表面のトポグラフィ・プロフィール及び/又はトポグラフィ・イメージを測定する方法の提供。
【解決手段】この方法は、a)インデンテーション装置を提供するステップ、b)試料ホルダに試料を配置するステップ、c)圧子を主軸台に対して一定位置に位置付けるステップ、d)試料表面を検出するようにトポグラフィ先端を位置付けし、表面から所定距離に参照構造体を位置付けるステップ、e)相対位置センサによって参照構造体に対する圧子の相対位置を測定するステップ、f)ステップe)の間、長手方向軸線に対して垂直に試料を移動させ、試料表面からの所定距離に参照構造体を維持するステップ、g)参照構造体に対する圧子の相対位置の測定値に基づき、トポグラフィ・プロフィール及び/又はトポグラフィ・イメージを作成するステップを含む。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
試料の表面のトポグラフィ・イメージ及び/又はトポグラフィ・プロフィールを測定する方法であって、
a)インデンテーション装置(1)を提供するステップであって、該インデンテーション装置(1)が、
主軸台(3)、
圧子(5)の長手方向軸線(9)に対して平行に前記圧子(5)を変位させるように配置された第1のアクチュエータ(7)によって前記主軸台に取り付けられた前記圧子(5)、
前記圧子(5)によって加えられる力を測定するように適合された力センサ(11)、
前記長手方向軸線(9)に対して平行に参照構造体(25)を変位させるように配置された第2のアクチュエータ(28)によって前記主軸台(3)に取り付けられた前記参照構造体(25)、
前記参照構造体に取り付けられ、前記試料(4)の前記表面(4a)を検出するように適合されたトポグラフィ先端(23)、
前記参照構造体(25)に対する前記圧子(5)の相対位置を決定するように適合された相対位置センサ(26)、
前記トポグラフィ先端(23)による前記試料(4)の前記表面(4a)の検出に基づき、前記第2のアクチュエータ(28)を制御するように適合されたフィードバック制御システム(31)、及び
前記圧子(5)及び前記トポグラフィ先端(23)に面して前記試料(4)を保持するように配置された試料ホルダ(2)であって、前記試料ホルダ(2)は、前記長手方向軸線(9)に対して垂直な少なくとも1つの方向(X;Y)に変位するように適合された前記試料ホルダ(2)
を備える、前記インデンテーション装置(1)を提供するステップと、
b)前記試料ホルダ(2)に前記試料(4)を配置するステップと、
c)前記圧子(5)を、前記試料(4)と非接触状態で、前記主軸台(3)に対して一定位置に位置付けるステップと、
d)前記試料(4)の前記表面(4a)を検出するように前記トポグラフィ先端(23)を位置付け、前記フィードバック制御システム(31)及び前記第2のアクチュエータ(28)によって、前記トポグラフィ先端(23)によって検出された前記表面(4a)から所定の距離(d)に前記参照構造体(25)を位置付けるステップと、
e)前記相対位置センサ(26)によって前記参照構造体(25)に対する前記圧子(5)の前記相対位置を測定するステップと、
f)前記相対位置センサ(26)によって前記参照構造体(25)に対する前記圧子(5)の相対位置を測定しながら、前記フィードバック制御システム(31)及び前記第2のアクチュエータ(28)によって、前記トポグラフィ先端(23)によって検出された前記試料(4)の前記表面(4a)からの前記所定の距離(d)に前記参照構造体(25)を維持する間、前記長手方向軸線(9)に対して垂直方向に前記試料(4)を移動させる、ステップと、
g)前記参照構造体(25)に対して前記圧子(5)の相対位置に関する測定値に基づき、トポグラフィ・プロフィール及び/又はトポグラフィ・イメージを生成するステップと
を含む、方法。
【請求項2】
ステップc)の前に、b1)前記圧子(5)によって前記試料(4)にインデンテーション試験を行うステップをさらに含む、請求項1に記載された方法。
【請求項3】
前記インデンテーション試験がスクラッチ試験である、請求項2に記載された方法。
【請求項4】
前記長手方向軸線(9)に平行な前記圧子(5)の前記一定位置を、前記力センサ(11)によって確認する、請求項1から請求項3までのいずれか1項に記載された方法。
【請求項5】
前記力センサ(11)が、前記圧子(5)と前記第1のアクチュエータ(7)との間に配置されたスプリング(13)を備え、
前記相対変位検出器(26)が、前記スプリング(13)と前記第1のアクチュエータ(7)との間に取り付けられた構造体(15a)と、前記圧子(5)との間の相対変位を検出するように配置され、
前記相対変位検出器(11)が差動コンデンサを備え、前記差動コンデンサは、前記構造体に設けられた第1の対の電極(17a、17b)を備え、前記第1の対の電極(17a、17b)の各電極が、前記圧子(5)に設けられた第2の対の電極の対応する電極(19a、19b)に面している、請求項1から請求項4までのいずれか1項に記載された方法。
【請求項6】
前記一定位置は、前記第1のアクチュエータ(7)を固定された位置に維持する間、前記力センサ(11)によって力がゼロであることを測定することによって決定される、請求項4又は請求項5に記載された方法。
【請求項7】
前記相対位置センサ(26)が他の差動コンデンサを備え、前記他の差動コンデンサは、前記参照構造体(25)に設けられた他の第1の対の電極(27a、27b)を備え、前記第1の対の電極(27a、27b)の各電極が、前記圧子(5)に設けられた他の第2の対の電極(29a、29b)の対応する電極に面している、請求項1から請求項6までのいずれか1項に記載された方法。
【請求項8】
コンピュータ可読媒体、および、コンピュータ・プログラム製品を備えた製品において、
前記コンピュータ・プログラム製品が、インデンテーション装置(1)に請求項1から請求項7までのいずれか1項に記載された方法を実施させるための前記コンピュータ可読媒体上のコンピュータ実行可能命令を含み、前記インデンテーション装置(1)は、
主軸台(3)、
圧子(5)の長手方向軸線(9)に対して平行に前記圧子(5)を変位させるように配置された第1のアクチュエータ(7)によって前記主軸台に取り付けられた前記圧子(5)、
前記圧子(5)によって加えられる力を測定するように適合された力センサ(11)、
前記長手方向軸線(9)に対して平行に参照構造体(25)を変位させるように配置された第2のアクチュエータ(28)によって前記主軸台(3)に取り付けられた前記参照構造体(25)、
前記参照構造体に取り付けられ、試料(4)の表面(4a)を検出するように適合されたトポグラフィ先端(23)、
前記参照構造体(25)に対する前記圧子(5)の相対位置を決定するように適合された相対位置センサ(26)、
前記トポグラフィ先端(23)による前記試料(4)の前記表面(4a)の検出に基づき、前記第2のアクチュエータ(28)を制御するように適合されたフィードバック制御システム(31)、及び
前記圧子(5)及び前記トポグラフィ先端(23)に面して前記試料(4)を保持するように配置された試料ホルダ(2)であって、前記試料ホルダ(2)は、前記長手方向軸線(9)に対して垂直な少なくとも1つの方向(X;Y)に変位するように適合された前記試料ホルダ(2)
を備える、製品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、材料測定の分野に関するものである。具体的には、本発明は、トポグラフィ先端(チップ)を有するインデンテーション装置を使用することによってインデンテーション試験の表面形状(トポグラフィ)測定を行う方法に係るものである。
【背景技術】
【0002】
原子間力顕微鏡法(AFM)及び他のタイプの小型顕微鏡法が、ナノメータ・スケールに至る表面プロフィールのトポグラフィ測定を行うものとして周知である。そのような測定値は、インデンテーション試験用機械と組み合わせて、圧痕が形成された後の圧痕のプロフィールを測定するためにしばしば使用され、それによって圧痕の残存プロフィールに関する有益なデータが作成される。これはスクラッチ試験の場合に特に有益である。スクラッチ試験では、圧子が一定又は変化する圧痕力の下で試料表面を移動させられる。その結果として、残存圧痕深さに関する2次元データを作成することができ、複数の平行な経路で走査することによって、3次元データを作成できる。
【0003】
通常、AFMは、インデンテーション試験装置に追加されるボルトオン補足モジュールとして設けることができるが、圧子と先端との間の距離が長くなるため、トポグラフィ測定のためには試料を大きく移動させることが必要となる。しかし、いくつかの先行技術のインデンテーション試験器では、AFM(又は類似のもの)の先端と圧子が一体化され、その先端が、圧子を位置付ける働きをし、侵入深さを測定するために使用されることにより、この距離が短縮するので、より正確なトポグラフィ測定ができる。たとえば、米国特許第7568381号には、AFM先端を参照センサの一部として使用することが記載されており、欧州特許第2816342号にも同様の記載がある。
【0004】
通常、トポグラフィ測定値を得るためにAFM先端(チップ)を使用すると、単に試料表面を検出するだけでなくAFM先端を用いて測定を行うためには、典型的な専用のAFMセンサを装置に組み込むことが必要となり、それにより複雑さおよびコストが増大する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】米国特許第7,568,381号明細書
【特許文献2】欧州特許第2816342号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
したがって、本発明の目的は、インデンテーション装置に設けられているセンサ以外に他のセンサを追加する必要がなく、インデンテーション装置を使用して試料表面のトポグラフィ測定値を得る方法を提案することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この目的は、請求項1に記載された試料の表面のトポグラフィ・イメージ及び/又はトポグラフィ・プロフィールを測定する方法によって達成される。この方法を以下に述べる。
【0008】
まず、インデンテーション装置が準備される。このインデンテーション装置は、
主軸台、
圧子の長手方向軸線に平行に圧子を変位させるように配置された第1のアクチュエータによって(すなわち、間接的に)主軸台に取り付けられた圧子、
この圧子によって加えられる力を測定するように適合された力センサ
を備える。また、インデンテーション装置は、
長手方向軸線に対して平行に参照構造体を変位させるように配置された第2のアクチュエータによって(すなわち、間接的に)主軸台に取り付けられた参照構造体、
参照構造体に取り付けられ、たとえば、以下でより詳細に述べるように、トポグラフィ先端と試料との間の所定の相互作用を決定することによって、試料表面を検出するように適合されたトポグラフィ先端、
参照構造体に対する圧子の相対位置を決定するように適合された相対位置センサ
を備える。フィードバック制御システムが設けられ、このフィードバック制御システムは、トポグラフィ先端による試料表面の検出に基づき、試料ホルダが、圧子及びトポグラフィ先端に面する試料を保持するような配置となるように第2のアクチュエータを制御するように適合される。試料ホルダは、長手方向軸線に対して垂直な少なくとも1つの方向に変位するように配置される。試料ホルダは、通常、公知の位置読み出し装置を備える。
【0009】
試料は、試料ホルダに配置され、圧子は、試料と非接触状態で主軸台に対して一定距離に位置付けられる。
【0010】
その後、トポグラフィ先端が、試料表面を検出するように位置付けられ、それによって、参照構造体が、フィードバック制御システム及び第2のアクチュエータによって、トポグラフィ先端によって検出された表面(すなわち、先端によって検出された表面の一部分)から所定の距離に位置付けられる。
【0011】
次いで、参照構造体に対する圧子の相対位置が相対位置センサによって測定され、すなわち圧子に対する参照構造体の相対位置を測定し記録することによって測定される。この圧子は、主軸台に対して固定された鉛直方向位置にある。次に相対位置センサによって参照構造体に対する圧子の相対位置を測定しながら、試料を長手方向軸線に垂直方向に移動させる。その間、参照構造体は、フィードバック制御システム及び第2のアクチュエータによって、トポグラフィ先端によって検出された試料表面から所定の距離に維持される。このようにしてトポグラフィ先端が、フィードバック制御システム及びアクチュエータによって基板表面と一定の相互作用を維持するようにされる。そのため、参照構造体は、表面に追従するように上下移動する。その結果、圧子の固定された鉛直方向位置に対する参照構造体の鉛直方向変位が相対位置センサによって測定され、その出力から、参照構造体に対する圧子の相対位置の測定値に基づくトポグラフィ・イメージ及び/又はトポグラフィ・プロフィールを作成される。用語「トポグラフィ・プロフィール」は、表面トポグラフィ・マップの一部分を通って引かれたラインに沿った横断面図に関し、用語「トポグラフィ・イメージ」は、表面トポグラフィ・マップに関するものである。したがって、トポグラフィ・プロフィールは、2次元であってトポグラフィ先端の単一経路に基づき、トポグラフィ・イメージは、3次元であってトポグラフィ先端の複数の平行な経路から再現される、すなわち複数のトポグラフィ・イメージから再現される。
【0012】
圧子を試料と非接触状態で位置付けるステップの前に、インデンテーション試験を、圧子によって行うことが有利である。このインデンテーション試験は、公知のように、単純なインデンテーション試験、又は圧痕付けの間に圧子の長手方向軸線に対して垂直方向に試料を移動させるスクラッチ試験とすることができる。
【0013】
長手方向軸線に平行な圧子の一定位置は、力センサによって確認できる。力センサは、圧子とアクチュエータとの間に配置されたスプリングを備えることができる。相対変位検出器が、スプリングと第1のアクチュエータとの間に取り付けられた構造体と、圧子との間の相対変位を検出するように配置される。相対変位検出器は、差動コンデンサを備え、差動コンデンサは、構造体に設けられた第1の対の電極を備え、電極のそれぞれが、圧子に設けられた第2の対の電極の対応する電極に面する。圧子が表面と接触せずに一定位置にあることを決定する簡単な方法は、力センサによって力がゼロであることを測定し、且つ第1のアクチュエータを固定された位置又は状態に維持することによる方法である。
【0014】
相対位置センサが他の差動コンデンサを備え、他の差動コンデンサは、参照構造体に設けられた他の第1の対の電極を備え、電極のそれぞれが、圧子に設けられた他の第2の対の電極の対応する電極に面することが有利である。これは、力センサの性質に関わらず、すなわち力センサが差動コンデンサを使用するか否かに関わらない。
【0015】
最後に、本発明は、コンピュータ可読媒体、および、コンピュータ・プログラム製品を備えた製品であって、コンピュータ・プログラム製品が、上記のインデンテーション装置に上記の方法を実施させるためのコンピュータ可読媒体上のコンピュータ実行可能命令を含む、製品にも関する。
【0016】
本発明のさらなる詳細は、添付図を参照して次の記述により明確になるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の方法を実施するインデンテーション装置を示す図。
図2】圧痕付けを行っている図1のインデンテーション装置の図。
図3】スクラッチ試験跡のトポグラフィ測定を行っている図1のインデンテーション装置の図。
図4】スクラッチ試験跡のトポグラフィ測定を行っている図1のインデンテーション装置の図。
図5】スクラッチ試験跡のトポグラフィ測定を行っている図1のインデンテーション装置の図。
図6】スクラッチ試験跡のトポグラフィ測定を行っている図1のインデンテーション装置の図。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明について、具体例に関して及びいくつかの図面を参照して述べるが、本発明は、それらに限定されず、請求項によってのみ限定される。図面は、ただ概略的であって非限定なものである。図面では、要素のいくつかのサイズは、例示の目的のために誇張され、尺度に合わせて描かれていないことがある。寸法及び相対寸法は、本発明を実施する実際の縮図に必ずしも対応していない。
【0019】
さらに、明細書中及び請求項中の用語「第1の」、「第2の」、「第3の」などは、同様の要素を区別するために使用され、連続的な、又は時間順の順序を述べるために必ずしも使用されていない。これらの用語は、適切な状況下で取り換え可能であり、本発明の具体例は、本明細書に述べ又は例示するシーケンス以外の他のシーケンスでも動作することができる。
【0020】
さらに、明細書及び請求項中の用語「上部」、「底部」、「上に」、「下に」などは、記述する目的のために使用され、相対位置を述べるために必ずしも使用されていない。そのように使用される用語は、適切な状況下で取り換え可能であり、本明細書に述べる本発明の具体例は、本明細書に述べ又は例示する方向付け以外の他の方向付けでも動作することができる。
【0021】
用語「含む、備える(comprising)」は、請求項で使用されるとき、その後に列挙される手段に限定されないと解釈すべきであり、それは、他の要素又はステップを排除しない。この用語は、参照されるような述べる特徴、整数、ステップ又は構成要素の存在を明記するものと解釈する必要があり、そして1つ又は複数の他の特徴、整数、ステップ若しくは構成要素、又はその群の存在若しくは追加を除外しない。したがって、語句「手段A及びBを備えるデバイス」の範囲は、構成要素A及びBだけからなるデバイスに限定すべきでない。これは、本発明に関して、デバイスの関連する構成要素が、A及びBであることを意味する。
【0022】
図1は、参照によって全体を本明細書に援用する欧州特許2816342号に記載されているインデンテーション装置1を例示する。このインデンテーション装置は、圧子5が第1のアクチュエータ7によって取り付けられた主軸台3を備える。第1のアクチュエータ7は、圧電アクチュエータ、又は所望の圧痕付け用途のために十分な力を加えることが可能ないずれかの他の都合の良いタイプのものとすることができる。
【0023】
圧子5は、図に示すようにZ軸に平行な長手方向軸線9に沿って延在し、そして圧入先端5bを備える遠位端部で終端する圧子ロッド5aを備える。この先端は、硬化鋼、タングステン、ダイヤモンド、コランダム、サファイヤ又は公知の同様のものとすることができる。金属先端の場合、先端5bは、圧子ロッド5aと一体に形成できる。さらに、ロッド5aは、横方向に延びるフランジ5cも含み、その機能は、以下ではっきりと明らかになる。試料ホルダ2が、圧子5の先端5bに面する試料4を支持するように適合されている。試料ホルダ2は、通常、電動化されており、少なくとも3つの軸、X軸、Y軸及びZ軸に沿って移動するように適合され、また位置検出が正確な状態で、これらの軸の1つ又は複数のまわりで回転させることができる。少なくともX方向及びY方向における、そして理想的にはZ方向における試料ホルダの位置も、公知のように、位置読み出し情報を与えるようにセンサによって決定される。
【0024】
ロッド5aの近位端部が、力センサ11によって第1のアクチュエータ7に取り付けられる。力センサ11は、バネ定数kが知られた校正されたスプリング13および相対変位検出器15を備え、スプリング13は、圧子5にアクチュエータから離れるように付勢するように配置される。相対変位検出器15は、スプリング13と第1のアクチュエータ7との間に取り付けられた構造体15aを備える。構造体15aは、圧子ロッド5aに対して平行に延在し、且つ第1の対の電極17a、17bを備え、その第1の対の電極は、圧子5のフランジ5cに位置する対応する第2の対の電極19a、19bに面し、それによって第1のコンデンサ17a、19a及び第2のコンデンサ17b、19bから形成される差動コンデンサを形成する。例示するように、フランジ5cは、構造体15aに向かって、電極17a、17bの間に形成された隙間に延び、電極19a、19bをその間に位置付け、そして長手方向軸線9に対して実質的に垂直に延びる。しかし、電極19a、19bが、それぞれ互いに面する異なるフランジ上に設けられ、電極17a、17bが、圧子5の方向に延びて長手方向軸線9に対して垂直に延びる構造体15a上に設けられた突起部のそれぞれ一方側に位置する逆構造など、他の構成も可能である。
【0025】
電極17a、17b、19a、19bは、適切な測定及び記録の回路構成(例示せず)に電気的に接続される。第1のコンデンサ17a、19aと第2のコンデンサ17b、19bとの間の静電容量の差を測定することによって、いずれかの知られた方法を用いて圧子5と構造体15aとの相対位置を決定することができる。この結果により、スプリング13の既知のバネ定数kと組み合わせて、圧子5によって試料4に対して加えられる力を決定することが可能になる。この原理は、参照によってその全体が本明細書に援用される欧州特許第1828744号に詳細に説明されており、したがって本明細書でさらに説明する必要がない。
【0026】
しかし、本発明では、第1のアクチュエータ7と別個の、又はそれと組み合わされた、加えられる力の直接圧電測定などの他のタイプの力センサを使用できる。
【0027】
圧痕測定の間に試料4への圧子の侵入深さを測定するために、インデンテーション装置1は、侵入深さを測定するための測定サブシステム21も備える。このサブシステム21は、試料4の表面4aを検出するために配置されたトポグラフィ先端23を備える。例示するように、トポグラフィ先端23は、片持ち式原子間力顕微鏡(AFM)プローブである。しかし、走査型プローブ顕微鏡法に通常使用される他のタイプのプローブでも広く使用可能である。当然、トポグラフィ先端形状は、所望の測定分解能を得るように十分小さく且つ適切に形作るべきである。試料の表面4aを「検出する」とは、プローブの所定のたわみの光学的検出の基づく検出など、接触による検出だけを指すだけでなく、振動式AFMプローブを使用し、試料4の表面4aの原子とプローブの先端との間のファン・デル・ワース相互作用によって生じる振動の振幅、位相又は周波数の所定の変化を検出することによる検出など、非接触式検出をも言う。
【0028】
トポグラフィ先端23は、参照構造体25に取り付けられ、参照構造体25は、第2のアクチュエータ28に取り付けられる。第2のアクチュエータ28は、第1のアクチュエータ7と同様の性質のものとすることができ、トポグラフィ先端23をZ軸に対して平行に変位させるように参照構造体25に作用する。また、トポグラフィ先端23が試料4の表面4aを検出するために必要な駆動及び/又は測定システム(例示せず)は、参照構造体25上に、又はその中に設けることができる。この駆動及び/又は測定システムは、たとえば先端を振動させてその振動を測定する、先端の動きを光学的に又は(圧電的に)電気的に検出するなどを行うことができる。そのようなシステムは公知であり、さらに述べる必要がないが、たとえばAFM片持ち梁の所定のたわみ、振動式AFM先端の振幅、位相又は周波数の所定の変化、又は表面に加えられる所定の力を決定することによって、表面を「検出する」することができる。
【0029】
参照構造体25は、相対位置センサ26も備える。この例では、この相対位置センサ26は、他の第1の対の電極27a、27bを有し、それらは、圧子ロッド5の横方向に延びる他のフランジ5dに設けられた対応する他の第2のペアの電極29a、29bと組み合わされて、他の差動コンデンサを形成する。フランジ5dは、フランジ5cと一体されてもよく、又は別個のものとすることもできる。電極27a、27b、29a、29bは、やはり、長手方向軸線9に対して実質的に垂直に延在する。これらのコンデンサ27a、29a及び27b、29bは、コンデンサ17a、19a及び17a、19bと同様に構成され、これらの後者のコンデンサに関するすべての説明は、必要な変更を加えて、前者のコンデンサにも適用される。すなわち、やはり、適宜な方法によってコンデンサ27a、29aとコンデンサ27b、29bとの間の静電容量の差を比較することによって、圧子5と参照構造体25との相対位置を決定できる。参照構造体25に対する圧子5の相対位置を測定するように配置された他の形の相対位置センサ26(光学ベースのシステムなど)も使用可能である。
【0030】
さらに、インデンテーション装置1は、フィードバック制御システム31も備える。フィードバック制御システム31は、トポグラフィ先端23及び第2のアクチュエータ28に作動可能に接続されており、それによって第2のアクチュエータ28を駆動して、図2と関連して以下に述べるように、試料4に対する参照構造体の位置を調整する。
【0031】
図2は、インデンテーション試験の間のインデンテーション装置1の構成要素の位置を例示する。図2及びその後の図では、図を見やすくするために、本文で引用された符号だけを記載している。鉛直方向の変位は、明確化のために誇張されている。さらに、フィードバック制御システム31は、図3以降に示されていない。
【0032】
図2では、圧子先端5bは、第1のアクチュエータ7によって加えられた力で試料4の表面4aに侵入する。その力は力センサ11によって測定される。しかし、圧痕付けが行われる前、試料は、試料ホルダ2を移動させ、及び/又は主軸台3を移動させ、及び/又は第1のアクチュエータ7及び第2のアクチュエータ28によってそれぞれ圧子5及びトポグラフィ先端23をZ方向に移動させることによって、圧子5の先端5b及びトポグラフィ先端23の近くに位置付けられる。次いで、第2のアクチュエータ28を駆動して、試料の表面4aがトポグラフィ先端によって検出されるまで、参照構造体25を試料の表面4aに向けて移動させることによって、試料の表面4aから所定の距離dに位置付けられる。一旦表面4aが検出されると、フィードバック制御システム31により第2のアクチュエータ28を制御して、参照構造体25が表面4aと所望の鉛直方向位置関係を維持するように、Z軸に関する任意の必要な調整を施すことによって、参照構造体25を所定の距離dに維持する。これらの調整は、通常極めて小さい。
【0033】
フィードバック制御システム31によって参照構造体が一定距離dに維持されている間、圧子先端5bは、試料4の表面4aに接触させられ、第1のアクチュエータ7によって加えられる負荷の下で表面4aに侵入させられる。
【0034】
参照構造体25が、試料4の表面4aから一定の間隔dを維持しているので、圧子5は、図2に示すように、Z軸に沿って試料に向かって(すなわち図に例示するように下方に)参照構造体25に対して変位する。これによって、電極29aが電極27aに近付き、及び電極29bが電極27bから離され、それによって2つのコンデンサ27a、29a及び27b、29bの間の相対的静電容量が変化し、それから参照構造体25に対する圧子5の変位を計算することができる。これらのコンデンサ27a、29a及び27b、29bは、適切な処理及び記録回路構成に電気的に接続される(図示せず)。様々な構成要素の寸法を計算に組み込むことによって、及び/又は力センサ11の出力に基づいて圧子先端5bと試料との間の接触点を決定することによって、試料4の表面4aへの圧子先端5bの完全な侵入を決定することができる。
【0035】
圧子5によって試料4に加えられる力は、力センサ11によって連続的に測定され、試料4の表面4aへの圧子先端の侵入深さの力と相関させることができる。例示する具体例では、力が試料4の表面4aと圧子先端5aとの間に加えられるので、スプリング13が圧縮され、構造体15aが圧子ロッド5aに対して下方に(試料4に向けて)移動し、それによって電極17b及び19bが互いに近付き、そして電極17a及び19aが互いから離れる。それによって生じる静電容量の変化を使用して、構造体15aに対する圧子5の相対変位を、すなわち任意の瞬間に加えられた力を決定することができる。
【0036】
このシステムは、静的又は動的な負荷の下での静的なインデンテーション試験を実施することができるだけでなく、圧痕付けの間に試料4を横方向に変位させることによって、やはり静的又は動的な圧痕付け負荷の下でスクラッチ試験も実施することができる。
【0037】
従来、圧子5によって形成された圧痕のトポグラフィ測定を行うため、又は単に所望の表面形状を測定するために、別個のトポグラフィ測定モジュール(通常AFMモジュール)が圧子側に離れて設けられている。しかし、このために、測定モジュールの測定先端との間にかなりの距離が存在することになり、試料又は主軸台をかなり移動させて、そのモジュールを差動させて測定値を得ることになる。これにより、圧痕上への測定先端の配置の正確さが制限される。
【0038】
この問題に対する1つの具体的な解決策は、一揃いの従来のトポグラフィ測定要素及び参照構造体25に一体化されたトポグラフィ先端23に関連するシステムを設けることであろう。その結果、一旦圧痕が作られると、圧子5を離れさせることができ、トポグラフィ先端を従来通りに作動させることができて、専用の従来の測定要素及びシステムが従来の方法でこの測定を実施する。これが、欧州特許第2816342号の意味する解決策である。
【0039】
しかし、この解決策は、前述した一揃いの従来の測定要素を一体化することが必要になり、費用がかかり、圧痕システム1の構成が著しく複雑になる。
【0040】
本発明の方法によれば、圧痕システム1に存在する既存のセンサを使用して、上記に述べたような圧痕深さの測定だけでなく、さらにトポグラフィ測定も実施することによって、従来のトポグラフィ測定要素を組み込むことが不要になる。この方法は、へこみを付けるか否かにかかわらず、任意の実質的に平面的な試料4のトポグラフィ測定を行うためにも使用できることに留意すべきである。
【0041】
この方法は、同じインデンテーション装置1において既に実施されたスクラッチ試験跡のトポグラフィ測定を行うという状況で図3図6に例示されている。しかし、この方法は、トポグラフィ測定が求められている任意の他の試料4にも同様に適用される。
【0042】
図4図6に見ることができるように、インデンテーション装置1及び試料4が設けられている。試料4の表面4aが、すでに実施されたスクラッチ試験の行路に沿ってくぼんでおり、図の断面図は、左から右に向かって深くなるスクラッチ試験跡の中心線に沿っている。
【0043】
まず、圧子先端5bが、アクチュエータによって試料4と非接触状態で位置付けられる。圧子先端5bは、測定の間を通じて試料4の表面4aと非接触状態のままである。先端5bに対して力が作用していないので、スプリング13によって圧子5が中立位置を取る。それは、必要ならコンデンサ17a、19a及び17b、19bによる力センサ11によって測定される力がゼロであることにより確認できる。必要なら、この確認は、トポグラフィ測定の間連続的に実施することができる。その最も簡単な形態では、第1のアクチュエータ7を任意の位置に駆動させて動作を停止させることができるか、又は(可能な限り主軸台3の近く、又は可能な限り主軸台3から遠く離して圧子5を位置付けるなど)機械的ストッパ(例示せず)に当たった最も端の位置に置くことができる。圧電力センサなどの別のタイプの力センサの場合、第1のアクチュエータ7に関する説明と同じ説明が適用される。そのため、圧子5は、主軸台3に対し、且つ試料4に対して一定の鉛直方向(Z軸)位置に維持され、Z軸基準として働く。
【0044】
次いで、圧痕測定に関して上記に述べたように、トポグラフィ先端23が、試料4の表面4aを検出するように、トポグラフィ測定の所望の開始位置に置かれる。測定の都合の良い開始位置は、スクラッチ試験跡に極く隣接する点である。制御システム31(見易さのために図3図6に例示せず)により、トポグラフィ先端23によって検出すべき試料4の表面4aからの所定の距離dに参照構造体25が位置付けられる。次いで、圧子5と参照構造体との間の相対位置が、相対位置センサ26によって測定され、トポグラフィ測定値を得るための基準点とすることができる。
【0045】
その後、基板4は、主軸台3に対して試料ホルダ2を移動させることによって、又はその逆も同様にして、トポグラフィ先端23に対して横方向に、すなわちZ軸に対して垂直に移動される。図示の例では、試料ホルダは左側に移動され、それによりトポグラフィ先端が基板4の表面4aのスクラッチ試験跡に沿って右側に走査させる。
【0046】
図4では、試料4は左方向に移動されており、トポグラフィ先端は、表面4aに存在するスクラッチ試験跡に降りている。これは、フィードバック制御システムによって実行される。この制御システムは、試料が移動される間、参照構造体25と、トポグラフィ先端23によって検出される試料の表面4aとの間を所定の距離dを維持するように、第2のアクチュエータに命令を出す。試料4が左側に移動するにつれて表面プロフィールが深くなるので、アクチュエータにより、表面を追従するように参照構造体は基板の方向に下方に駆動される。そのため参照構造体25は圧子5に対して下がるが、圧子5は、基準として鉛直方向の同じ位置に留まったままである。電極27b、29bは、互いに近付き、電極27a、29aは互いに離れる。その結果得られる静電容量の変化を使用して、圧子5に対する参照構造体25の新しい相対位置が決定され、試料に沿った複数の測定値を得ることによってトポグラフィ測定が行われる。すなわち、圧子5は、主軸台1に対してだけでなく、試料ホルダに対しても不変な鉛直方向位置に置かれており、試料ホルダは、Z軸に対して垂直方向に移動されるだけであり、圧子5は、固定された鉛直方向基準として働き、それに対して、参照構造体25の鉛直方向位置が、トポグラフィ測定の間を通じて比較される。したがって、トポグラフィ測定は、圧子5に対する参照構造体25及びトポグラフィ先端23の鉛直方向の動きを測定することによって実施される。
【0047】
試料4が左側に移動するにつれて(図4及び図5)、表面4aの圧痕プロフィールは深くなり、参照構造体25は、さらに下方に駆動されて所定の距離dを維持して表面を追従する。圧子5は、主軸台3に対する鉛直方向位置を維持し、電極27b、29bは、互いにさらに近付き、電極27a、29aは互いにさらに離れる。
【0048】
図5では、試料4は、左側へ移動し続けて、トポグラフィ先端3は、スクラッチ試験によって表面4aに残されたくぼみから出る。制御システム31により常に第2のアクチュエータ28が駆動されて距離dが維持されているので、第2のアクチュエータ28により、参照構造体が主軸台3に向けて上方に駆動され、電極27b、29bが互いから離れ、電極27a、29aが互いに近づく。
【0049】
コンデンサ27a、28a及び27b、28bの静電容量の変化を測定し、参照構造体25と圧子5との間の対応する相対変位を計算し、これらの相対変位を試料4の移動の測定値と相関させることによって、スクラッチ試験跡のトポグラフィ・プロフィールを測定することができる。試料4をY方向で(紙面の奥行き方向)所定の距離だけ変位させ、このプロセスを繰り返すことによって、トポグラフィ先端23をいくつかの経路において格子又はラスタ・パターンで走査させると、3次元のトポグラフィ・プロフィールを測定し、イメージを生成することができる。
【0050】
本方法の原理は、非容量相対位置センサ26の他の形態にも適用される。
【0051】
本方法をスクラッチ試験の観点から述べて来たが、任意の表面がこのプロセスによって測定できる。
【0052】
上記に述べた方法は、コンピュータ可読媒体(CD−ROM、DVD、ハード・ディスク、フラッシュ・ドライブなど)に格納されたコンピュータ・プログラム製品に納められた命令に従ってコンピュータ制御下で実施できる。
図1
図2
図3
図4
図5
図6