【解決手段】第1の波長は透過し第2の波長を吸収する色素溶液セルに接して設置された第1の波長のLD出射光をデジタル変調した信号光ビームとして収束透過させ、このビームウエスト近傍に第2の波長のLD出射ビームを制御光として収束させて照射し信号光ビームの光路を偏向させ、光源LDの対面に複数設置された受光PD群の特定の一つに入射させる。1基につき信号光LD1個、制御光LD6個及び受光PD25個を搭載した空間光結合器50の24基と演算素子基板24基を交互にリンクさせたノードを上位の空間光結合器51へ接続し、576チャンネルの演算素子間・回線切替式空間光結合を実現する。
垂直貫通孔、及び垂直貫通孔を囲むように形成された斜め貫通孔を備え、垂直貫通孔に第1の波長の信号光を出射する信号光レーザダイオードが配置され、斜め貫通孔に第2の波長の制御光を出射する制御光レーザダイオードが配置されるヒートシンクと、
第1の波長の信号光を透過し第2の波長の制御光を吸収する色素溶液が充填された色素溶液セルであり、第2の波長の制御光の吸収により色素溶液に生じる屈折率分布により第1の波長の信号光の光路を偏向する色素溶液セルと、
色素溶液セルを透過した第1の波長の信号光を受光する受光フォトダイオードを備える受光ユニットと、
を備える空間光結合器。
受光ユニットは、少なくとも、制御光が照射されず直進する信号光を受光する受光フォトダイオードと、制御光が照射され偏向された信号光を受光する受光フォトダイオードを備え、色素溶液セルの後方に信号光をコリメートするためのコリメートレンズを備える、
請求項1に記載の空間光結合器。
受光ユニットは、制御光が第1の強度で照射され第1の角度で偏向された信号光を受光する受光フォトダイオードと、制御光が第2の強度で照射され第2の角度で偏向された信号光を受光する受光フォトダイオードを備える、
請求項2に記載の空間光結合器。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、図面を参照して本発明の実施形態について説明する。なお、以下では便宜上、レーザダイオードをLD、フォトダイオードをPDと略記して説明する。
【0029】
<第1実施形態>
<構成>
図1に、第1実施形態として例示する空間光結合器1の概念図を示す。又、
図3に、空間光結合器1の動作を例示する斜視図を示す。
【0030】
図1に示すように、空間光結合器1は、斜め孔ヒートシンク2と、色素溶液セル3と、コリメートレンズ30と受光PDユニット4を備える。
【0031】
斜め孔ヒートシンク2は、垂直貫通孔、及びこの垂直貫通孔を囲むような斜め貫通孔を備え、垂直貫通孔には信号光LD10及びロッドレンズ20が挿入・固定されて配置され、斜め貫通孔には制御光LD11〜16及びロッドレンズ21〜26が挿入・固定されて配置される。受光PDユニット4には受光PD400〜424が配置される。コリメートレンズ30は色素溶液5内部の信号光ビームウエスト9から拡散しながら直進、又は、偏向されて出射する信号光ビーム200又は201〜220を近似平行光ビームにコリメートし受光PDの受光面400〜424へ入射させるため設けられる。
【0032】
コリメートレンズ30としてはゲルマニウムをドープして屈折率を高めた石英ガラスからなる片面平面・他面非球面のレンズを好適に使用することができる。
[a]
図1に表すような光学要素を空間結合させない構成の場合、コリメートレンズ30は色素溶液セル3の内部に埋め込まれた形で使用される。このような構造は、後に述べるように色素溶液セル3の内部に内部セル33を埋め込むための製造工程の一部として形成することができる。
[b]
図3の斜視図は斜め孔ヒートシンク2と、色素溶液セル3と、コリメートレンズ30と受光PDユニット4を空間結合させた場合の概念図でもある。この場合、コリメートレンズ30は色素溶液5の後方の空気中に設置される。
【0033】
図4に、斜め孔ヒートシンク2のA−A’断面における信号光LD10及び制御光LD11〜16の配置を表す断面図を示す。中央に信号光LD10が配置され、信号光LD10を囲むようにその周囲に等間隔に6個の制御光LD11〜16が配置される。
【0034】
図5に、受光PDユニット4の端面における受光PDの配置を示す。中央に1個の受光PDが配置され、その周囲に12個の受光PDが配置され、更にその周囲に12個の受光PDが配置される。中央の受光PDが受光PD400に対応し、その周囲の12個の受光PDが受光PD401〜412に対応し、更にその周囲の12個の受光PDが受光PD413〜424に対応する。後述するが、中央の受光PD(受光PD400)で偏向せずに直進する信号光ビームを受光し、周囲の受光PD(受光PD401〜424)で偏向された信号光ビームを受光する。
【0035】
再び
図1に戻り、信号光LD10のロッドレンズ20の端面は色素溶液セル3の端面(外壁)に密着し、ロッドレンズ21〜26の端面は色素溶液セル3の端面(外壁)に斜めに接する。又、色素溶液セル3内には色素溶液5及びコリメートレンズ30が配置される。すなわち、色素溶液セル3内のキャビティに色素溶液5が充填される。空間光結合器1の色素溶液セル3内はワイヤレスであり、電線及び光ファイバは用いられない。
【0036】
空間光結合器1の信号光LD10、制御光LD11〜16及び受光PD400〜424は、それぞれ導線により公知の電磁波遮蔽手段と併せて大規模演算素子の基板にできる限り最短距離で接続される。信号光LD10、制御光LD11〜16及び受光PD400〜424の接続端子がコンパクトなフレキシブル基板配線である場合、適合したコネクタを有するフレキシブル基板配線によって大規模演算素子の基板に接続され得る。このフレキシブル基板配線に絶縁膜を介して金属箔を積層し、更に電磁波遮蔽手段としての電磁波吸収フィルムを積層することで、高周波数のデジタル信号を電磁波障害無しに伝送できる。
【0037】
空間光結合器1の信号光LD10の波長(第1の波長λ1)は、組み合わせて使用される制御光LD11〜16の波長(第2の波長λ2)及び色素溶液5の色素の吸収スペクトル(
図2に例示)との関係を考慮して選択される。すなわち、色素溶液5の第2の波長の制御光吸収による温度上昇及び体積膨張とそれに伴う屈折率の低下により、色素溶液5内部の制御光ビームウエスト近傍において屈折率の分布が過渡的に形成され、この熱レンズ効果によって第1の波長λ1の信号光ビームの光路が偏向される。
【0038】
又、装置設計上の制約として、信号光LD10及び制御光LD11〜16の光照射部分は円筒形であって、直径が数mm以下であることが好ましい。これは、
図3に示すように、斜め孔ヒートシンク2の端面7において、信号光LD10のロッドレンズ出射面110と制御光LD11〜16のロッドレンズ出射面111〜116のいずれも共通の中心間距離L0をできる限り小さくすることで、収束信号光100と収束制御光101〜106のいずれも共通の交差角度θからtanθで算出される信号光LD10のロッドレンズ出射面110から収束信号光100のビームウエスト9までの距離Lwをできる限り短くし、その結果、ビームウエスト9のビーム径を極力小さくすることで、信号光ビームの光路偏向に必要な熱レンズのサイズを小さくするためである。信号光ビームの光路偏向に必要な熱レンズのサイズを小さくことで制御光パワーを小さくし、かつ、信号光ビームの光路偏向に要する時間を短縮することが可能となる。ここで、L0とLwの関係は三角関数の定義から式〔1〕で表される。
[数1]
Lw = L0/tanθ …〔1〕
【0039】
容易に理解できるように、収束信号光100と収束制御光101〜106のいずれも共通の交差角度θが大きいと、収束制御光101〜106の形成する熱レンズ6と信号光ビームウエスト9の作用長さが短くなる。制御光の強度及び前記中心間距離L0を一定とし、交差角度θ及び前記距離Lwを変化させて信号光の偏向角度を実験で求めたところ、交差角度θの値は5度乃至20度が好ましく、更に好ましくは10乃至15度が好適であることが確認された。なお、交差角度θを5度よりも小さくすると距離Lwが長くなり、信号光ビームウエスト径が大きくなって熱レンズ6のサイズが不足し、偏向角度が小さくなってしまう。
【0040】
なお、信号光のビームウエスト直径Dwは、信号光LD10のロッドレンズ出射面110における信号光ビームの直径D0、信号光の波長λ及び信号光ロッドレンズの焦点距離に相応する前記Lwからガウシャンビームに関する位相光学解析に基づく式〔2〕で近似計算することができる。
[数2]
Dw = (4/π)×λ×(Lw/D0) …〔2〕
【0041】
例えば、斜め孔ヒートシンク端面7において、ロッドレンズの直径を1mmかつL0を1mmとした場合、ロッドレンズの7つの孔は端面7において接触した形になるが、L0を1mm、又、θを10度とした場合、幾何光学的に求めたロッドレンズ出射面110からビームウエスト9までの距離Lwは5.67mmであり、ロッドレンズ20に入射する信号光の直径D0をロッドレンズ径と同一の1mm、又、信号光の波長を1.31μmとした場合、信号光のビームウエスト直径Dwは9.46μmと計算される。ここで、ロッドレンズの直径を0.2mm、又、L0を0.2mmに変えても、D0は0.2mmとなるため、Dwの計算値は変わらない。そこで、θを15度と大きくすると、Dwは6.23μmまで小さくなる。このとき、ロッドレンズ20〜26の直径1mmを細密に配置した場合、信号光及び制御光のロッドレンズ間距離L0は1mmであり、これに対する、進行光出射面からビームウエスト9までの距離Lwは「1mm/(tan15度)」すなわち3.73mmである。
【0042】
一方、制御光の出射端面から制御光のビームウエストまでの距離をLcwとすると、L0とLcwの関係は式〔3〕で表される。
[数3]
Lcw = L0/sinθ …〔3〕
【0043】
従って、斜め孔ヒートシンク端面7において、ロッドレンズの直径を1mmかつL0を1mm、又、θを10度とした場合、幾何光学的に求めたロッドレンズ21〜26の出射面111〜116から制御光ビームウエストまでの距離Lcwは5.76mmであり、ロッドレンズ21〜26に入射する信号光の直径をロッドレンズ径と同一の1mm、又、制御光の波長を0.98μmとした場合、制御光のビームウエスト直径Dcwは7.19μmと計算される。θを15度とするとDcwは4.82μmと計算される。なお、実験的には、収束制御光の照射時間を数ミリ秒以上とした場合、制御光の光吸収で形成される熱レンズのサイズは、以下に記述するように制御光のビームウエストからの距離25μmよりも大きくなることが確認されている。
【0044】
偏向された信号光ビームの断面形状を受光PDユニット4の位置に設置したビームプロファイラーで観察すると、以下の通りである。すなわち、収束信号光のビームウエスト9近傍を通過する収束制御光ビームの熱レンズ形成領域が、
(a)ビームウエスト9と接触する場合
(b)10〜20μm程度まで近づいている場合
(c)25μm以上離れている場合
の偏向された信号光ビーム断面の形状は、各々、
図7の(a),(b)及び(c)に概略を示す通り、
(a)ゆがんだドーナツ形
(b)三日月形
(c)概ねガウス分布の丸ビーム
である。これらのビーム断面の形状の相違は、
(a)の場合、信号光と制御光を同軸で色素溶液5に収束入射させたとき信号光断面はドーナツ形となるが、制御光と信号光のビーム中心が角度θだけ傾いているためドーナツ形が崩れること
(b)の場合、熱レンズによる屈折率変化の大きい領域を信号光ビームウエストが通過するため、丸ビームが崩れること
(c)熱レンズによる屈折率変化が緩やかな領域を信号光ビームウエストが通過するため丸ビームを保つことができること
で説明できる。なお、収束信号光のビームウエスト9近傍を通過する収束制御光ビームの熱レンズ形成領域が40μmを超えて離れた場合、信号光の偏向は極めて小さくなる。ここで、熱レンズのサイズを大きくするため、制御光のパワーを強くすると、色素溶液の温度上昇によって、熱レンズ領域の温度が溶剤の沸点に到達し、信号光ビームは遮断される。実験的に求めた信号光ビーム偏向角の最大値は諸条件によって16〜20度の範囲であった。
【0045】
熱レンズの影響を受ける大きさによって、制御光のon/offに対応する信号光ビームの偏向速度は、言うまでも無く、(c)<(b)<(a)の順に速い。偏向された信号光ビームを仮に光ファイバで受光する場合、その結合効率はガウス分布からの乖離が小さい(a)<(b)<(c)の順に高くなる。本実施形態の場合、制御光ビームを直接受光PDの受光面における光強度の合算値として検出するため、ビーム断面がPD受光面のサイズを超えなければ、その形状が円でなくとも問題は無く、
図7(b)のような三日月形であっても良い。しかしながら、
図7(a)のような崩れたドーナツ形の場合、信号光ビームの一部が隣接するチャンネルのPD受光面に漏れ、クロストーク性能が悪化する可能性が高くなるので好ましくない。
【0046】
偏向信号光ビームの形状が熱レンズの影響を強く受けた
図7(b)のような三日月形であっても良いことから、本実施形態によって、照射側バンドルファイバを用いる場合の丸ビームの場合の1ミリ秒よりも速い速度で信号光の偏向が可能となる。
【0047】
信号光の第1の波長(これをλ1とする)として、高速変調が可能なLDの発振波長である1310nm、1490nm又は1550nm等の赤外線を用いる場合、制御光の第2の波長(これをλ2とする)として光ファイバーアンプ用に広く用いられている発振波長980nmのLDを制御光の光源として好適に使用することができる。
【0048】
これらの信号光の波長λ1及び制御光の波長λ2に適合する色素、つまり波長λ1を透過し波長λ2を吸収する色素としては、例えば、
図2に示すような吸収スペクトル特性の赤外線吸収色素を好適に用いることができる。
【0049】
なお、熱レンズ素子として好適な色素及び溶剤の組み合わせ、及び、色素溶液セル3の断面における色素溶液5の厚さLsの好適な値については、特許5370711号公報に詳しく記載されている。
【0050】
具体的には、色素は以下のような要件を満足する必要がある。
(A)制御光の吸収波長帯域の収束レーザーの照射に2千時間以上、可能であれば数万時間以上耐えること。
(B)制御光の吸収波長帯域の収束レーザーの収束位置における200℃を超える温度上昇に2千時間以上、可能であれば数万時間以上耐えること。
(C)制御光吸収波長帯域の収束レーザーの照射及び温度上昇によって分解物、反応生成物、あるいは会合体などの固体粒子を形成しないこと。
(D)信号光の波長帯域において光吸収や光散乱を起こさないこと。
【0051】
色素の具体例としては、信号光波長980〜2000nmの場合、制御光波長の帯域に応じて、以下のような溶剤可溶性フタロシアニン誘導体を好適に用いることができる。
650〜670nm:1,5,9,13−テトラ−tert−ブチル銅フタロシアニン
685〜715nm:1,5,9,13−テトラ−tert−ブチルオキシバナジウムフタロシアニン
730〜830nm:2,11,20,29−テトラ−tert−ブチルオキシバナジウムナフタロシアニン
840〜890nm:5,9,14,18,23,27,32,36−オクタ−n−ブトキシ−2,3−ナフタロシアニン
【0052】
又、溶剤は以下のような要件を満足する必要がある。
[1]色素を適切な濃度で安定に溶解すること。
[2]信号光及び制御光レーザーの照射に2千時間以上、可能であれば数万時間以上耐えること。
[3]信号光及び制御光レーザーの収束位置における200℃を超える温度上昇に2千時間以上、可能であれば数万時間以上耐えること。
[4]信号光及び制御光レーザーの照射及び温度上昇によって分解物、反応生成物、あるいは会合体などの固体粒子を形成しないこと。
[5]信号光の波長帯域において光吸収や光散乱を起こさないこと。
[6]制御光レーザーの収束位置における光吸収に伴う発熱・温度上昇に敏感に応答し、温度1℃の変化当たりの屈折率変化として0.0004以上を示すこと。
【0053】
好適に用いられる溶剤として、次に示す構造異性体4成分(分子量は同一)の混合溶剤が推奨される。
・第1成分:1−フェニル−1−(2,5−キシリル)エタン
・第2成分:1−フェニル−1−(2,4−キシリル)エタン
・第3成分:1−フェニル−1−(3,4−キシリル)エタン
・第4成分:1−フェニル−1−(4−エチルフェニル)エタン
【0054】
この溶剤の諸物性は以下の通りである。
・外観:無色透明液体
・臭気:弱い芳香臭
・沸点:290〜305℃
・融点:−47.5℃
・蒸気圧:0.067Pa (25℃)
・蒸気密度:7.2 (空気=1)
・比重(水=1):0.987
・水溶解度(20℃):水に溶けない。
【0055】
一方、沸点が300℃以上であって、前記フタロシアニン誘導体を良く溶解する溶剤として、アルキルナフタレン系の油拡散ポンプ用オイル「ライオンS(登録商標)」(ライオン株式会社)を挙げることができる。但し、この溶剤は室温域で液体であり沸点が高い点は優れているが、粘度の温度依存性が高く、熱レンズの形成には不向きである。粘度の温度依存性が高いと、室温から高温まで低粘度である溶剤と比較すると、同じ偏向角とする場合の制御光パワーを大きくする必要があるだけでなく、制御光のon/offに対する応答速度特性が悪化する。この現象は制御光を吸収して温度が上昇し、密度が低下する際に熱レンズを取り囲む室温の溶剤を押しのけて体積が増大する必要があり、粘度の温度依存性が高いと、この課程で必要となるエネルギーが大きくなること、及び、押しのけるのに時間を要することとして理解される。
【0056】
以下の説明において、色素溶液セル3の材質は石英ガラスである。
【0057】
色素溶液5の厚さLsについては、200μmよりも薄くすると、制御光パワーを大きくしても、熱の拡散による損失が支配的となって、大きな熱レンズ効果は得られない。又、厚さを500μmよりも厚くしても熱レンズ効果の大きさは変わらなくなり、反面、出射後に広がりながら進行する信号光ビームが色素溶液−石英ガラス界面の屈折率差の影響を受け、形状劣化する度合いが大きくなり、好ましくない。従って、200μm〜500μmが好ましく、例えば色素溶液5の厚さLsは500μm(0.5mm)程度が最も好適である。
【0058】
色素溶液セル3(後述の内部セル33)の断面における色素溶液5の制御光及び制御光入射側端面からビームウエスト9までの「深さ」Lhは、色素溶液5の中を光吸収されながら進行する収束制御光ビームが形成する熱レンズ6の「深さ」との関係から最適値が求められ、物理変数が3元以上の現象をシミュレーションするソフトエアを用いる計算科学又は実験による試行錯誤で決定される。色素溶液の濃度や制御光照射レンズの焦点距離にもよるが、経験的にLhの値は0.1mm以内である。
【0059】
色素溶液セル3(及び内部セル33)の信号光入射端面から信号光及び制御光入射側の色素溶液5界面までの厚さLfは、焦点距離に相当するビームウエストまでの距離Lwから、石英ガラスと色素溶液の屈折率差を補正した前記Lhを差し引いた値として設計される。
【0060】
色素溶液セル3(及び内部セル33)の信号光出射側の厚さLrは偏向されて進行する信号光のビーム到達点が、互いに重なり合わないよう配置された受光PD400〜424の受光面の中心に一致するよう設計される。なお、後で詳しく説明するように色素溶液5の後方に配置されるコリメートレンズによって、拡散出射する信号光ビームは平行光線にコリメートされて受光PDの受光面に入射する。
【0061】
ところで、色素溶液セル3の信号光進行方向の奥行きLc、前記Lf、Ls、Lr、Lh、及び、ビームウエスト9から受光ユニット端面8までの距離Ltは式〔4〕、〔5〕及び〔6〕の関係にある。
[数4]
Lc = Lf + Ls + Lr …〔4〕
Lc = Lw + Lt …〔5〕
Lh + Lt = Ls + Lr …〔6〕
【0062】
色素溶液セル3の材質は寸法精度高く溶融加工が可能であること、化学的に極めて安定であって酸素及び水の浸透をほぼ完全に防御できることから、石英ガラスが好適に用いられる。石英ガラスの成分によって種々の銘柄があるが、色素溶液セル3の材質としては特に制約は無い。
【0063】
色素溶液セル3の内部セル33のキャビティに色素溶液5を充填した後、例えば特許5453656号公報に記載の方法に準拠して石英ガラスを溶融加工して封止する。なお、色素溶液5への水分及び酸素の悪影響を避けるため、色素溶液5の調整及び充填工程は、次のような条件を満足するグローブボックス内で実施することが好ましい。
・酸素濃度0.5ppm未満
・水分濃度0.5ppm未満(露点温度−80℃以下)
【0064】
又、特許5453656号公報に記載に準拠した内部セル33の断面における厚さL1及びL2は例えば0.25mm、色素溶液5の液厚Lsは例えば0.50mmである。
【0065】
ところで、特許5453656号公報に記載の方法に準拠して石英ガラスを溶融加工して封止する場合、前述のように封止する石英ガラス管の外径サイズは1.0〜1.2mm角であることが好ましい。これに対して、信号光及び制御光のロッドレンズ20〜26の寸法及び信号光と制御光の角度θの要求から色素溶液セル3の信号光及び制御光の入射側の厚さLf(LwからLhを引いた値)は3〜6mm程度である。又、信号光偏向角の最大値θt及び受光PDの受光面のサイズ1〜数mmから計算されるLr(LhにLtを加えLsを引いた値)は30〜40mm程度である。このような色素溶液セル3の寸法に関する課題を解決するには、次の2つの方法がある。
[A]色素溶液セル3を信号光入射側の前部ユニット34、内部セル33、及び、制御光出射側の後部ユニット35からなる3重構造とする。前部ユニット34には、内部セル33をはめ込むための溝を光学研磨・真空融着法で設け、これに内部セル33を透明接着剤で固定する。一方、後部ユニット35については設計上の所定の位置にコリメートレンズ30を装着するための凹みを切削加工で設け、これにコリメートレンズ30を透明接着剤で固定する。内部界面31で接する前部ユニット34と後部ユニット35の接合面を必要に応じて研磨して平坦化した後、前部ユニット34と後部ユニット35を透明接着剤で接合する。この製造方法によって、斜め孔ヒートシンク2又は受光PDユニット4の外寸の大きい方よりも大きな値を石英ガラス直方体の2辺の長さ(例えば10mm角)とし、残る1辺の長さLcが例えば30〜40mmの色素溶液セル3を作成することができる。なお、色素溶液セル3中に配置されるコリメートレンズ30の埋め込み加工の精度は±10μm程度で問題無い。
[B]斜め孔ヒートシンク2,色素溶液セル3、コリメートレンズ30及び受光PDユニット4を密着させる代わりに、これらの部品要素を空間に配置する。空気と石英ガラスなどの屈折率差に起因する反射ロスを低減させるため、ロッドレンズ20〜26の端面、色素溶液セル3の外壁の要所、コリメートレンズ30の表面、及び、受光PDの受光部端面に無反射コート(ARコートとも言う)を施す。この方法の場合、後述の制御光ロッドレンズの斜め加工は不要である。なお、
図3は光学部品を空気中に設置した場合の斜視図でもある。
【0066】
色素溶液セル3の外壁に垂直に入射する信号光のロッドレンズ20の端面は、色素溶液セル3の外壁に密着させることができる。他方、斜め孔ヒートシンク2の斜め孔に挿入される制御光ロッドレンズ21〜26の端面は、色素溶液セル3の外壁に角度θで斜めに接する。ここに形成される空傍に屈折率マッチングオイルや屈折率が制御された光学部品用透明接着剤を充填することで、空気との屈折率差に起因する反射を低減することができる。
【0067】
このように屈折率マッチングオイルや透明接着剤を用いる代わりに、斜め孔ヒートシンク2へ斜めに挿入されたロッドレンズ21〜26の端面を、斜め孔ヒートシンク2の端面と同一平面になるよう角度θ(例、10〜15度)で斜め研磨することもできる。この場合、ロッドレンズ21〜26の全長、収束信号光のビームウエスト9とロッドレンズ21〜26から出射する収束制御光ビームが色素溶液5内部で形成する熱レンズの位置、などを精密に光学設計し、設計通りに製造することが必須である。
【0068】
ところで、本実施形態において、組み立て調整が必要な光学部品点数を削減するためには、以下に概要を述べる2つの方法を採用することが好適である。
〔1〕特許文献4及び5に記載の光路切替装置に用いられる照射側の7芯バンドルファイバ、1つのコリメートレンズ、及び、1つの集光レンズに替えて、ロッドレンズ20〜26、信号光LD10、及び、制御光LD11〜16を挿入した斜め孔ヒートシンク2を用いる。
〔2〕1つの受光レンズ、6,12又は24角錐台プリズム、1つの集光レンズ、及び、受光側7,13又は25芯バンドルファイバに替えて、受光PD400〜424を挿入した受光PDユニット4を用いる。
【0069】
合計7個のLDと25個のPDを大規模演算素子へ接続するための配線は電気配線であるため、電磁波遮蔽対策を施したフレキシブルプリント配線などによって、特に調整を必要とせず、容易に結線が可能である。
【0070】
一方、照射側及び受光側バンドルファイバを用いる場合、受光面がシングルモード光ファイバの端面であるため、光学部品の配置を極めて精巧に微調整して組み立てる必要があり、多くの工程時間を要する。また、照射側バンドルファイバの組み立て誤差の影響が極めて大きいため、製造の歩留まりを高くするためにも多大の労力が必要となる。
【0071】
本実施形態を実施する上で重要なのは斜め孔ヒートシンク2の信号光LD10用の1本の垂直孔及び制御光LD11〜16用の6本の斜め孔の加工精度、及び、ロッドレンズ20〜26の円柱状外形の加工精度である。通常の光ファイバ用フェルールの場合に相当する精度が要求され、これは実現可能である。
【0072】
例えば、ロッドレンズ20〜26の直径が1mmの場合、孔の内径及びロッドレンズ20〜26の外径の公差は好ましくは0〜2μm、より好ましくは0〜1μmである。
【0073】
このような加工精度の斜め孔ヒートシンク2の製造方法は、次の2つから選択することができる。
〔a〕斜め孔ヒートシンク2の外形を整えた後、孔を後加工で形成する。
〔b〕ロッドレンズ及びLDを挿入した管を接合加工する。
【0074】
製造方法〔a〕の場合、斜め孔ヒートシンク2の材質は、孔の掘削作業性の点ではアルミニウム及びアルミニウム合金が好適である。しかしながら、石英ガラス製の色素溶液セル3とは熱膨張係数が大きく異なるため、組み立て方法に工夫が必要である。例えば、斜め孔ヒートシンク2及び受光PDユニット4(材質は斜め孔ヒートシンク2と同一とする)は色素溶液セル3に接着せず、屈折率マッチングオイルを介して密着させ、斜め孔ヒートシンク2及び受光PDユニット4を同一のV字溝付き架台及び極細ピアノ線製バネ状ベルトで熱膨張を考慮して保持し、色素溶液セル3は前記架台に接着すれば良い。留意すべきは室温よりも温度を下げたときの熱収縮であり、ガラス製ロッドレンズが締め付けられて破損する恐れがある。対策として、使用温度域を例えば0℃から60℃に定め、この温度域における斜め孔ヒートシンク2の孔の内径が、ロッドレンズ20〜26の外径よりも小さくならないよう設計し、この内外径の差が前記公差を超える場合は、ロッドレンズ20〜26の外周に柔らかいプラスチック膜(例えば接着剤層)を高い膜厚精度で形成する方法を採用することができる。
【0075】
上記のような金属材質の熱膨張・収縮の影響を根本から避けるためには、斜め孔ヒートシンク2の材質を熱膨張係数が石英ガラスに近いセラミックあるいは石英ガラスそのものとすれば良い。ただし、無垢の石英ガラスやセラミックにロッドレンズ20〜26及びLD10〜16を挿入する孔を切削加工する方法は推奨しづらい。加工に適したサイズ及び強度を有する多孔質石英ガラスや多孔質セラミックを選定し、使用することが可能である。
【0076】
多孔質材料はむしろ断熱材であるため、斜め孔ヒートシンク2に挿入した信号光LD10、及び、制御光LD11〜16の冷却を考慮すると、これらのLDの先端部分数mmのみ斜め孔ヒートシンク2に挿入し、LDの残りの部分はアルミニウム製斜め孔シートシンク2を多孔質材料に積層して設け、その孔に挿入する構造が推奨される。信号光LD10、及び、制御光LD11〜16の孔への挿入の公差は±10μm程度であっても許容できるので、熱膨張及び収縮の影響は考慮しなくても良い。
【0077】
製造方法〔b〕の場合、ロッドレンズ20〜26を挿入するための前記公差を満足する加工精度の金属管、例えばステンレス管について、管を相互に固定するための金属フランジをYAGレーザー溶接で固定し、このフランジを、信号光と制御光のなす角θ及びロッドレンズ20〜26の出射面の位置関係を満足するように、金属架台へYAGレーザー溶接で固定する。前記金属管の熱収縮によるロッドレンズの破損を防ぐには、前述のようにロッドレンズ20〜26の外周に柔らかいプラスチック膜(例えば接着剤層)を高い膜厚精度で形成する方法を採用することができる。
【0078】
この製造方法による斜め孔ヒートシンク2に挿入されるロッドレンズ20〜26の端面にARコートを設けたものは、斜め孔ヒートシンク2、色素溶液セル3及び受光PDユニット4の3要素を空間に配置する構成に適している。
【0079】
斜め孔ヒートシンク2の孔に挿入されるロッドレンズ20〜26は、信号光用と制御光とで波長特性が異なるものの、同じ設計思想で設計することができる。ロッドレンズの原理は屈折率分布型光ファイバの直径を太くしたもので、石英ガラス母材にゲルマニウムなどのドーパントを分布させ、長軸に対して直径方向に屈折率分布を設けたものである。本実施形態で好適に用いられるロッドレンズ20〜26は、ビーム整形機能及びビーム収束機能を備えており、次の2種類のロッドレンズをつなぎ合わせたものである。
〔A〕通常、LDの出射端面から出射するレーザビームの断面は形の乱れた矩形であり、これを擬似的なガウス分布に近づけるためのコリメートレンズ。
〔B〕コリメートレンズの出射光を収束ビームとして出射する集光レンズ
【0080】
コリメートレンズの直径はLDの出射端面における発光部分のサイズよりも大きい必要がある。これに接続する集光レンズの直径はコリメートレンズと等しくなるよう設定される。集光レンズの焦点距離は前述の通りである(ロッドレンズから出射する信号光と制御光のなす角度が15度のとき、3.73mm)。
【0081】
信号光LD10、及び、制御光LD11〜16の出射端を斜め孔ヒートシンク2の孔への挿入する深さは、孔の直径以上であれば取り付け精度を満足することができる。コリメートレンズ部分の長さを導波路のように長くすることで、信号光LD10、及び、制御光LD11〜16の出射端の直径をロッドレンズ20〜26の直径よりも大きくした、内径が2段式に異なる形状にすることもできる。斜め孔ヒートシンク2の孔のサイズとして、例えばLD出射面挿入部分で内径3mm×深さ3mm、その先のロッドレンズ挿入孔で内径1mm×長さ9mm以下とすることができる。
【0082】
一方、受光PD400〜424は受光部分の直径3mmのものが市販されており、全長にわたって直径3mmのものも製造可能である。仮に、受光部分よりも後部の直径が大きい場合は、受光PDユニット4も斜め孔シートシンク2と類似の構造とし、受光面をロッドレンズとし、斜め孔の間隔が広がった位置にPDを取り付けることもできる。ただし、1つのユニットに24本の斜め孔を設けることになり、加工が複雑になる。受光部分が直径3mmの場合、孔の公差は+2〜10μm程度を許容できるため、垂直の孔を25本設けて受光PDを挿入する構造が好ましい。孔が垂直の場合、受光PDの受光面に偏向された信号光ビームが例えば15度程度傾いて入射することになるが、大きな入射ロスにはならない。入射ロスを低減したい場合は、受光面と石英ガラスの両方に屈折率が近い透明接着剤を充填すれば良い。マッチングオイルで解消するには空傍サイズが大きい。
【0083】
制御光パワーと信号光偏向角の関係は
図6に示す通りで、制御光パワーを「弱」に相当するパワーレベル#1、「中位」に相当するパワーレベル#2、及び、「強」に相当するパワーレベル#3の3水準で変えた場合、偏向角はパワーレベル#1のときθn、パワーレベル#2のときθm、パワーレベル#3のときθtに変化し、0<θn<θm<θtの順に大きい。
【0084】
詳細は後述するが、制御光がonでその照射パワーがパワーレベル#1のときには信号光は偏向角θnで偏向されて、受光PDユニット4の端面8において内周円4001(その半径をRnとする)上の受光PDの受光面番号01〜12で受光され、制御光がonでその照射パワーがパワーレベル#3場合には信号光は偏向角θt(θn<θt)で偏向されて、受光PDユニット4の端面8において外周円4002(その半径をRtとする)上の受光PDの受光面番号13〜24で受光される(
図5参照)。
【0085】
内周円4001上に到達する偏向信号光ビームの平均的直径をBnとし、又、外周円4002上到着にする偏向信号光ビームの平均的直径をBtとすると、以下の式〔7〕及び〔8〕が成り立つ。
[数5]
Rn = Lt×tan(θn) ≧ (6/π)×Bn …〔7〕
Rt = Lt×tan(θt) ≧ (6/π)×Bt …〔8〕
【0086】
本実施形態の空間光結合器1を設計する上で重要な1つの要請は式〔7〕を満足させることである。
図5から明らかなように受光PDユニット4の内周円4001上に偏向された信号光ビームが12個、互いに重ならないよう、円4001の半径Rn及び距離Ltを設定する必要がある。例えば、θnを8度、Bnを2.0mmとすると、Ltは31.1mm以上、又、Rnは3.82mm以上と計算される。一方、受光PDユニット4の外周円4002の半径Rtは、距離Ltを前の計算で定められる31.1mmと同一とすると、7.75mmと計算され、直径Btの最大値は4.06mmまで許容される。従って、受光PDの受光面の外形(直径)BtがBnと同一の2.0mmである場合、受光PDユニット4の外周円4002上において24箇所へ偏向信号光ビームを到達させ、外周円4002上に等間隔で設けられた24個のPDで受光することも可能である。この場合、合計37チャンネルの空間光結合器を提供できる。この詳細については第2実施形態において記述する。
【0087】
ところで、前述のように偏向信号光ビームの平均的直径Bn及びBtを式〔7〕又は式〔8〕を各々満足させるためには、色素溶液5の中のビームウエストから、直進のまま、又は、偏向されて出射して来る信号光ビームをコリメートレンズ30によって拡散ビームから平行ビームへコリメートすることが必須である。
【0088】
本実施形態では、信号光LD10又は受光PD400〜424として、1つの波長で10Gbpsのデジタル信号送信又は受信が可能なものが好適に使用される。これらはすでに市販されている。更に1つのLD筐体及びPD筐体の内部に複数の異なる波長特性の素子と合波器又は分波器を作り込むことができれば、波長多重による伝送容量の増大も可能となる。これらのLD又はPDの電気配線がフレキシブルプラスチックシートであれば、簡単な差し込み式コネクタを用いて大規模演算素子の電子回路基板へ接続可能である。
【0089】
本実施形態で用いられる信号光LD10及び制御光LD11〜16はいずれもシングルモードで発振するものが好適に用いられる。マルチモードの場合、ビームウエスト径を数十μm程度までしか収束できず、偏向するための熱レンズのサイズを大きくする必要があり、色素溶液の温度上昇のよる信号光の偏向に要する時間が10ミリ秒よりも長くなることが実験的に確認されている。これに対してシングルモードの場合、信号光及び制御光のビームウエストを25μm程度に接近させ、制御光をonして形成される熱レンズによって信号光を丸ビームのまま偏向させるのに要する時間は1ミリ秒程度、制御光をoffし、熱レンズが消失して制御光が直進するのに要する時間は数ミリ秒である。
【0090】
信号光LD10の出射パワーは1mW程度あれば好適に使用できる。一方、制御光の出射パワーは制御光ロッドレンズの出射面111〜116の位置で最大40mW程度が好ましい。
【0091】
本実施形態の空間光結合器1は、斜め孔ヒートシンク2、色素溶液セル3(コリメートレンズ30を内蔵)、及び受光PDユニット4の3ユニットを密着させて組み立てることで製造される。又、特に図示していないが、受光PDに信号光以外の光が入射することを避けるため、斜め孔ヒートシンク2、色素溶液セル3、及び受光PDユニット4は遮光性ケーシングで覆うことが好ましい。前記遮光性ケーシングが金属製の場合、斜め孔ヒートシンク2、色素溶液セル3、及び受光PDユニット4を精密に保持する架台を兼ねることができ、より好ましい。
【0092】
<製造手順のまとめ>
[A]空間を介さず、光学部品ユニットを密接させて結合する場合の製造手順は以下の通りである。
【0093】
斜め孔ヒートシンク2は、多孔質石英ガラスの部材に1つの垂直孔と6つの斜め孔を精密切削加工で形成し、これにロッドレンズ20〜26の合計7式を挿入し、色素溶液セル3との接触面を研磨し、ロッドレンズ20〜26に密着するように信号光LD10及び制御光LD11〜16を挿入し固定し、電気配線を取り付けて製造される。
【0094】
色素溶液5を充填し密閉封止した内部セル33及びコリメートレンズ30を組み入れた石英ガラス製色素溶液セル3を作成し、これを前記架台へ取り付ける。
【0095】
受光PDユニット4へ合計25個のPD400〜424を挿入し、色素溶液セル3との接触面を整え固定し、電気配線を取り付ける。
【0096】
色素溶液セル3を取り付けた架台に、色素溶液セルの面に密着させて斜め孔ヒートシンク2を取り付け、その位置を固定し、信号光を24方向に光路偏向して出射させながら、受光PDユニット4の位置を微調整し、色素溶液セルの面に密着させて、前記架台に固定する。
【0097】
[B]空気を介在させ、光学部品ユニットを組み立てる場合の製造手順に関しては特に特記事項は無い。
【0098】
<動作>
本実施形態の空間光結合器1の動作を、
図6の制御光パワーと偏向角との関係、及び表1を用いて説明する。
図6に示すように、制御光パワーと偏向角は略比例関係にある。制御光LD6基の内、いずれか1基のみがonの場合、その照射パワーは、強中弱の3段階に切り替え可能とし、弱の照射パワーをパワーレベル#1とし、中位の照射パワーをパワーレベル#2とし、強の照射パワーをパワーレベル#3とする。制御光1基のみがonの場合、一般的な動作原理は、制御光がoffの場合には熱レンズ6が形成されず信号光は直進するので中央に配置された受光PD400の受光面番号00で受光され、制御光がonでその照射パワーが弱の場合のパワーレベル#1のときには信号光は第1の角度(θnとする)で偏向されて内周円4001上の受光PDの受光面番号01,03,05,07,09,11のいずれかで受光され、制御光がonでそのパワーレベルが強の場合のパワーレベル#3のときには信号光は第2の角度(θtとする。θn<θt)で偏向されて外周円4002上の受光PDの受光面番号13、15,17,19,21,23のいずれかで受光される(
図5参照)。
【0099】
制御光LD6基の内、隣接する2基が同時にonの場合、その照射パワーをパワーレベル#1に近い範囲で微調整しパワーレベル#1aとすることで、信号光の偏向角をθnとすることができ、更に、内周円4001上の受光PDの受光面番号02,04,06,08,10,12のいずれかで受光することが可能となる。同様に隣接2基の照射パワーをパワーレベル#3に近い範囲で微調整しパワーレベル#3aとすることで、信号光の偏向角をθtとすることができ、更に、外周円4002上の受光PDの受光面番号14,16,18,20,22,24のいずれかで受光することができる。
【0100】
上記の説明を整理すると、以下の通りである。
【0101】
6個の制御光Ch.1〜6がいずれもoffで制御光パワーレベルが0のとき、信号光は偏向されずに直進して受光PD400の受光面番号00に入射し、信号が受信される。
【0102】
6個の制御光Ch.1〜6のいずれか1つがonで照射パワーがパワーレベル#1のとき、信号光は偏向角θn(例えば8度)で偏向して受光PDユニット4の内周円4001上に配置された受光PDの受光面番号07,09,11,01,03,05のいずれか1つに入射し、信号が受信される。
【0103】
6個の制御光Ch.1〜6の隣接するいずれか2つがonで照射パワーがともにパワーレベル#1aのとき、信号光は例えば偏向角θn(例えば8度)で偏向して受光PDユニット4の内周円4001上に配置された受光PDの受光面番号08,10,12,02,04,06のいずれか1つに入射し、信号が受信される。
【0104】
6個の制御光Ch.1〜6のいずれか1つがonで照射パワーがパワーレベル#3のとき、信号光は偏向角θt(例えば15度)で偏向して受光PDユニット4の外周円4002上に配置された受光PDの受光面番号19,21,23,13,15,17のいずれか1つに入射し、信号が受信される。
【0105】
6個の制御光Ch.1〜6の隣接するいずれか2つがonで照射パワーがともにパワーレベル#3aのとき信号光は偏向角θt(例えば15度)で偏向して受光PDユニット4の外周円上4002に配置された受光PDの受光面番号20,22,24,14,16,18のいずれか1つに入射し、信号が受信される。
【0106】
【表1】
(注1)制御光LDのCh.1〜6は制御光LD11〜16に対応。
(注2)受光PD受光面の番号と配置は
図5参照。
【0107】
なお、表2及び表3に、本実施形態と既存技術とを比較した表を示す。これらの表より、本実施形態における空間光結合器の優位性は明らかであろう。
【表2】
【0109】
<第2実施形態>
第2実施形態は、第1実施形態の
図5に表される、受光PDユニット4の端面8における受光PDの数を25個から12個単位で追加し、
図8に表すように最大49個まで増加させ、1対49チャンネルの空間光結合器を提供するものである。なお、チャンネル数の上限は第1に、
図6に表される制御光パワーと偏向角の関係は色素溶液5の溶剤が沸点に到達するよりも大きい制御光パワーを供給することはできず偏向角には上限があること、第2に、前記偏向角から幾何学計算で求められる受光PDユニット4の受光面面積には上限があり、又、受光PDの受光面には有限のサイズがあること、第3に受光PDの設置位置は、パワーを変えた制御光on/offの組み合わせによる制限があること、第4にコリメートレンズで近似平行ビームにコリメートした直進又は偏向信号光のビーム径は伝搬距離が伸びると位相光学の要請で拡散することが避けられないこと、によって決定される。
【0110】
本実施形態は前記の諸制約の中で実施可能な最上限のものであると判断される。
【0111】
受光PDユニット4の内周円4001(半径Rv)上に設けるPD受光面番号01〜12及び外周円4002(半径Rt)上に設けるPD受光面番号13〜24に関しては配置及び制御光LDのパワーとon/offの関係ともに第1実施形態と同一である。
【0112】
先に記述したようにPD受光面のサイズが内周円4001上に12個並べることができる場合、外周円4002上には12個の受光面(受光面番号14〜36)を追加し合計24個の受光面を設けることができる。これで直進信号光を加え、合計37チャンネルの空間結合器を提供することができる。
【0113】
寸法を正確に拡大し受光面の配置を確認すると、
図8に示すように更に中周円4003(半径Rm)上に12個の受光面(受光面番号37〜48)を追加することが可能であることが解る。これによって1対49チャンネルの空間結合器が実現する。
【0114】
PD受光面のサイズを直径2mmの円に設定した場合の寸法及び必要な偏向角は
図8に例示する通りである。信号光のビームウエスト9から、直進光の受光面番号00までの距離を32mmとすることで、更に、偏向角8度、11.3度、及び、15度とすることで、内周円4001上に12個、中周円4003上に12個、及び、外周円4002上に24個の直径2mmの受光面を役0.1mmの間隔で並べて配置することができる。信号光のビームウエスト9から、直進光の受光面番号00までの距離Ltは32mmであり、これは、前述の試算(θが15度)の場合の信号光の出射面からビームウエスト9までの距離3.73mmの8.57倍である。コリメートレンズ30を用いない場合、信号光ビームの直径は8.6mmとなり受光面の設計値を超過してしまう。一方、コリメートレンズ30を用いた場合、以下のように計算される。すなわち、ビームウエスト9からコリメートレンズ30の入射面までの距離(「Ls−Lh+L2」で計算される;Lhは0.1mm未満)は、内部セル33の液厚Lsを0.50mm、L2を0.25mmとしたとき、約0.75mmであり、入射信号光ビームの収束と出射信号光ビームの広がりは石英ガラスと色素送液の屈折率の差が無視できると仮定すると、ビーム径はロッドレンズ20出射のときの1mmに対して0.2mm程度である。これを近似平行ビームとして32mmの距離を伝搬させた場合、受光面の直径は2mmあれば充分であり、受光PDユニット4の組み立て精度も特に高くする必要は無い。PD受光面のサイズを直径2mmから3mmの円に代えた場合、信号光のビームウエスト9から、直進光の受光面番号00までの距離Ltは1.5倍の48mmに伸びるが、コリメートされた前記信号光ビームであれば、問題無く受光可能である。
【0115】
信号光の進行方向を48方向に偏向するための制御光パワー及び隣接制御光のon/offの組み合わせを表4及び表5に掲げる。なお、表4の内容は表1と同一である。
【表4】
(注1)制御光LDのCh.1〜6は制御光LD11〜16に対応。
(注2)受光PD受光面の番号と配置は
図8参照。
【0116】
【表5】
(注1)制御光LDのCh.1〜6は制御光LD11〜16に対応。
(注2)受光PD受光面の番号と配置は
図8参照。
【0117】
<動作>
6個の制御光Ch.1〜6がいずれもoffで制御光パワーレベルが0のとき、信号光は偏向されずに直進して受光PD400の受光面番号00に入射し、信号が受信される。
【0118】
6個の制御光Ch.1〜6のいずれか1つがonで照射パワーがパワーレベル#1のとき、信号光は偏向角θn(例えば8度)で偏向して受光PDユニット4の内周円4001上に配置された受光PDの受光面番号07,09,11,01,03,05のいずれか1つに入射し、信号が受信される。
【0119】
6個の制御光Ch.1〜6の隣接するいずれか2つがonで照射パワーがともにパワーレベル#1aのとき、信号光は例えば偏向角θn(例えば8度)で偏向して受光PDユニット4の内周円4001上に配置された受光PDの受光面番号08,10,12,02,04,06のいずれか1つに入射し、信号が受信される。
【0120】
6個の制御光Ch.1〜6のいずれか1つがonで照射パワーがパワーレベル#3のとき、信号光は偏向角θt(例えば15度)で偏向して受光PDユニット4の外周円4002上に配置された受光PDの受光面番号19,21,23,13,15,17のいずれか1つに入射し、信号が受信される。
【0121】
6個の制御光Ch.1〜6の隣接するいずれか2つがonで照射パワーがともにパワーレベル#3aのとき信号光は偏向角θt(例えば15度)で偏向して受光PDユニット4の外周円上4002に配置された受光PDの受光面番号20,22,24,14,16,18のいずれか1つに入射し、信号が受信される。
【0122】
6個の制御光Ch.1〜6のいずれか1つがonで照射パワーがパワーレベル#3c又は#3dのとき、信号光は偏向角θt(例えば15.0度)で偏向して受光PDユニット4の外周円4002上に配置された受光PDの受光面番号31,32,33,34,35,36,25,26,27,28,29,30のいずれか1つに入射し、信号が受信される。
【0123】
6個の制御光Ch.1〜6のいずれか1つがonで照射パワーがパワーレベル#2c又は#2dのとき、信号光は偏向角θm(例えば11.3度)で偏向して受光PDユニット4の外周円4002上に配置された受光PDの受光面番号43,44,45,46,47,48,37,38,39,40,41,42のいずれか1つに入射し、信号が受信される。
【0124】
第1及び第2実施形態に記載した合計49個の受光ユニットの内、制御光の照射パワーの組み合わせを選択することによって、7、13,19及び37チャンネルの空間光結合器を提供することができる。具体的には、以下の通りである。
【0125】
受光PDユニット4は、制御光が照射されず信号光が直進して到着する位置に配置される1個の受光PDと、6本の制御光のいずれか1本の照射によって信号光ビームが偏向されて到着する位置に配置される6個の受光PD、例えば、前記偏向角θnに対応する内周円4001上の受光面番号01,03,05,07,09,11、又は、前記偏向角θtに対応する外周円4002上の受光面番号13,15,17,19,21,23の受光PDを備え、1本の制御光が7方向に切り替えられ7チャンネルを有する空間光結合器を提供する。なお、この配置の場合、受光PDの受光面の間隔が比較的広くなり、前記偏向角θtが15度の場合、Ltを32mmとしたとき外周円上には受光面直径8.7mmの受光PDを6個並べることができ、コリメートレンズ無しで信号光(ビーム直径8.6mmと計算される)をほぼ100%受光することが可能である。
【0126】
受光PDユニット4は、制御光が照射されず信号光が直進して到着する位置に配置される1個の受光PDと、6本の制御光のいずれか1本の照射のときと互いに隣接する2本の同時照射のときで同一の偏向角で信号光が偏向されて到着する位置に配置される12個の受光PD、例えば、前記偏向角θnに対応する内周円4001上の受光面番号01〜12、又は、前記偏向角θtに対応する外周円4002上の受光面番号13〜24の受光PDを備え、1本の制御光が13方向に切り替えられ13チャンネルを有する空間光結合器を提供する。
【0127】
受光PDユニット4は、制御光が照射されず信号光が直進して到着する位置に配置される1個の受光PDと、6本の制御光のいずれか1本の照射のパワーが2水準の制御光パワーの内、弱い制御光パワーのときの信号光ビームの偏向角θnで信号光が偏向されて到着する位置に配置される6個の受光PD、すなわち、内周円4001上の受光面番号01,03,05,07,09,11の受光PDと、6本の制御光のいずれか1本の照射のパワーが2水準の制御光パワーの内、強い制御光パワーのときの信号光ビームの偏向角θtで信号光が偏向されて到着する位置に配置される6個の受光PD、すなわち、外周円4002上の受光面番号13,15,17,19,21,23の受光PDを備え、1本の制御光が13方向に切り替えられ13チャンネルを有する空間光結合器を提供する。
【0128】
受光PDユニット4は、制御光が照射されず信号光が直進して到着する位置に配置される1個の受光PDと、6本の制御光のいずれか1本の照射パワーが3水準の制御光パワーの内、弱い制御光パワーのときの信号光ビームの偏向角θnで信号光が偏向されて到着する位置に配置される6個の受光PD、すなわち、内周円4001上の受光面番号01,03,05,07,09,11の受光PDと、6本の制御光のいずれか1本の照射又は互いに隣接する2本の同時照射のパワーが3水準の制御光パワーの内、強い制御光パワーのときの信号光ビームの偏向角θtで信号光が偏向されて到着する位置に配置される12個の受光PD、すなわち、外周円4002上の受光面番号13〜24の受光PDを備え、1本の制御光が19方向に切り替えられ19チャンネルを有する空間光結合器を提供する。
【0129】
受光PDユニット4は、制御光が照射されず信号光が直進して到着する位置に配置される1個の受光PDと、6本の制御光のいずれか1本の照射又は互いに隣接する2本の同時照射のパワーが2水準の制御光パワーの内、弱い制御光パワーのときの信号光ビームの偏向角θnで信号光が偏向されて到着する位置に配置される12個の受光PD、すなわち、内周円4001上の受光面番号01〜12の受光PDと、6本の制御光のいずれか1本の照射又は互いに隣接する2本の同時照射のパワーが2水準の制御光パワーの内、強い制御光パワーのときの信号光ビームの偏向角θtで信号光が偏向されて到着する位置に配置される12個の受光PD、すなわち、外周円4002上の受光面番号13〜24の受光PDを備え、1本の制御光が25方向に切り替えられ25チャンネルを有する、第1実施形態の空間光結合器を提供する。
【0130】
受光PDユニット4は、制御光が照射されず信号光が直進して到着する位置に配置される1個の受光PDと、6本の制御光のいずれか1本の照射又は互いに隣接する2本の同時照射のパワーが3水準の制御光パワーの内、弱い制御光パワーのときの信号光ビームの偏向角θnで信号光が偏向されて到着する位置に配置される12個の受光PD、すなわち、内周円4001上の受光面番号01〜12の受光PDと、6本の制御光のいずれか1本の照射又は互いに隣接する2本の同時照射のパワーが3水準の制御光パワーの内、中位の制御光パワーのときの信号光ビームの偏向角θmで信号光が偏向されて到着する位置に配置される12個の受光PD、すなわち、中周円4003上の受光面番号37〜48の受光PDを備え、1本の制御光が25方向に切り替えられ25チャンネルを有する空間光結合器を提供する。
【0131】
受光PDユニット4は、制御光が照射されず信号光が直進して到着する位置に配置される1個の受光PDと、6本の制御光のいずれか1本の照射又は互いに隣接する2本の同時照射のパワーが2水準の制御光パワーの内、強い制御光パワーのときの信号光ビームの偏向角θtで信号光が偏向されて到着する位置に配置される24個の受光PD、すなわち、外周円4002上の受光面番号13〜24及び25〜36の受光PDを備え、1本の制御光が25方向に切り替えられ25チャンネルを有する空間光結合器を提供する。
【0132】
受光PDユニット4は、制御光が照射されず信号光が直進して到着する位置に配置される1個の受光PDと、6本の制御光のいずれか1本の照射又は互いに隣接する2本の同時照射のパワーが2水準の制御光パワーの内、弱い制御光パワーのときの信号光ビームの偏向角θnで信号光が偏向されて到着する位置に配置される12個の受光PD、すなわち、内周円4001上の受光面番号01〜12の受光PDと、6本の制御光のいずれか1本の照射又は互いに隣接する2本の同時照射のパワーが2水準の制御光パワーの内、強い制御光パワーのときの信号光ビームの偏向角θtで信号光が偏向されて到着する位置に配置される24個の受光PDすなわち、外周円4002上の受光面番号13〜24及び25〜36の受光PDを備え、1本の制御光が37方向に切り替えられ37チャンネルを有する空間光結合器を提供する。
【0133】
<第3実施形態>
図9に、第3実施形態として例示する空間光結合装置70の概念図を示す。
【0134】
第1実施形態で説明した空間光結合器1を、
図9に示すようにm個(mは2以上の自然数)、例えばm=24の大規模演算素子基板40の周辺にm個、すなわち24基実装し、演算素子基板40の交互のリンクを空間光結合器1により形成した演算素子ノードを上位の空間光結合器51へ接続する。これにより、極めてコンパクトに24×24,すなわち576チャンネルの空間光結合が実現する。全部で25基の光回線切替を同期させることで、24基の大規模演算素子基板40からなる演算素子ノード内の演算素子基板相互接続におけるタイムスロット(割り当てられた時間帯域)を1/25(実時間1秒をタイムシェアする場合1基当たりタイムスロットは切替時間1ミリ秒として39ミリ秒)とすることができる。
【0135】
上位空間光結合器51への動作命令は、電気信号として上位制御装置60から発せられる。又、上位空間光結合器51に集約されたデジタルデータは、電気信号として上位制御装置60へ伝送される。上位空間光結合器51と上位制御装置60の距離は数mm以下まで接近させることができ、1枚の基板上に上位空間光結合器51と上位制御装置60を合わせて実装することも可能である。
【0136】
24基の大規模演算素子40と24基の空間光結合器50は、24×24本の導線により電気的に結合されるが、電気信号の伝送はタイムスロットの時間幅において行われ、この期間、24基の空間光結合器50によって絶縁されているため、電磁波障害の発生の危険は小さく、又、その防御も容易である。
【0137】
なお、25方向空間光結合器を単純に2段分岐型で組み合わせると見かけは625方向切り替えが可能であるが、個々に割り当てられるタイムスロット幅は1/625と極端に短くなる。
【0138】
25チャンネル空間光結合器を活用した大規模演算素子ノードのアルゴリズムとして、例えば、1基の上位制御装置60から1基の上位空間結合器51の25チャンネルの光路を1/25間隔のタイムスロットで開くことで、個々のチャンネルに1:1に接続された24基の大規模演算素子40のIDに対応した動作命令を与え、大規模演算素子40の個々は与えられたタイムスロット毎に、相互に連動し、各々の有するメモリ領域のデータを演算し、空間光結合器50を用いて素子間でバースト転送する。こうすることで従来、デジタル信号伝送のID確認に用いられてきた「パケット」の概念を捨てた、「時間分割データ転送型アルゴリズム」を構築することが可能となる。
【0139】
パケットを廃することで、デジタル信号にパケットを付与する手順及びパケットを再構築して元のデジタル信号に戻す手順が無用となる。その代償として大規模演算素子のメモリデータの素子間転送には、時間分割による「待ち時間」が必要となる。このデメリットについては、計算アルゴリズムを「タイムスロット単位」に完結するものに特化させ、更にその結果をバースト転送させることである程度解消される。観点をメモリ間データ転送に要するエネルギーの削減に転ずると、大規模演算素子40のメモリデータの素子間転送を常時高速で行うための既存の方式よりも、本実施形態で実現される時間分割バースト転送方式の方が、極めて大きい「待機電力削減」というメリットを与えることができる。
【0140】
第3実施形態の記述に基づき、チャンネル数が7,13,19,37及び49の空間結合器を必要個数用いることによって、6×6,12×12,18×18,36×36及び48×48、すなわち、36,144,324,1296及び2304チャンネルの空間光結合装置を提供することができる。