【課題】本発明の課題は、所定のバックフォーカス、画角及びFナンバーを維持しつつ、高い光学性能を実現することのできる小型の広角レンズ及び当該広角レンズを備える撮像装置を提供することにある。
【解決手段】上記課題を解決するため、物体側から順に、正の屈折力を有する第1レンズ群G1と、正の屈折力を有する第2レンズ群G2とを少なくとも備え、少なくとも第2レンズ群G2を移動させることでフォーカスを行い、第1レンズ群G1は、少なくとも3枚の負レンズと、1枚の正レンズとを含み、当該第1レンズ群G1に含まれる負レンズのうち、最も物体側に配置される負レンズを負レンズL1nとしたとき、当該負レンズL1nが所定の条件を満足する広角レンズとする。
前記第1レンズ群に含まれる負レンズのうち、前記負レンズL1nより像側に配置されるいずれかの負レンズを負レンズL2nとしたとき、当該負レンズL2nが以下の条件を満足する請求項1に記載の広角レンズ。
νd2n > 65 ・・・(3)
但し、
νd2nは、前記負レンズL2nのd線に対するアッベ数を表す。
当該広角レンズは前記第1レンズ群と、前記第2レンズ群とから構成され、前記第2レンズ群を光軸上に移動させることによってフォーカスを行う請求項1又は請求項2に記載の広角レンズ。
請求項1〜請求項13のいずれか一項に記載の広角レンズと、当該学系の像面側に、当該広角レンズによって形成された光学像を電気的信号に変換する撮像素子とを備えたことを特徴とする撮像装置。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本件発明に係る広角レンズ及び撮像装置の実施の形態を説明する。
【0014】
1.広角レンズ
1−1.広角レンズの構成
本件発明に係る広角レンズは、物体側から順に、正の屈折力を有する第1レンズ群と、正の屈折力を有する第2レンズ群とを少なくとも備え、少なくとも第2レンズ群を移動させることでフォーカスを行い、第1レンズ群は、少なくとも3枚の負レンズと、1枚の正レンズとを含み、当該第1レンズ群に含まれる負レンズのうち、最も物体側に配置される負レンズを負レンズL1nとしたとき、当該負レンズL1nが後述する所定の条件を満足することを特徴とする。まず、本件発明に係る広角レンズの構成について説明した後で、条件式に関する事項を説明する。
【0015】
広角レンズでは、大きな入射角で入射した軸外光束を第1レンズ群により収斂させる。そのため、第1レンズ群において物体側に配置されるレンズのレンズ面に対する軸外光束の入射角は大きく、収差が発生しやすく、その収差量も大きくなりやすい。そこで、本件発明では、第1レンズ群を少なくとも3枚の負レンズと1枚の正レンズとを含む構成とすることにより、収差の発生を抑制し、高い光学性能を実現することができる。このように軸外光束についても良好に補正することができるため、画面全体において高い光学性能を実現することができる。
【0016】
また、第1レンズ群を正の屈折力とすることにより、第1レンズ群により収斂させた光を第2レンズ群に対して入射させることができる。従って、第1レンズ群よりも像側に配置されるレンズ群の小径化を図ることが容易である。そのため、第1レンズ群よりも像側に配置されるレンズ群をフォーカスの際に移動群とすることにより、フォーカス群の軽量化を図ることができ、迅速なフォーカス動作を行わせることができる。
【0017】
さらに、本件発明では上記レンズ群構成を採用すると共に、少なくとも第2レンズ群を移動させてフォーカスを行うことにより、無限遠から近距離に至るまでフォーカスによる収差変動を小さくすることができる。そのため、物体距離によらず、フォーカス全域において良好な光学性能を実現することができる。以下、各レンズ群の好ましい構成例について説明する。
【0018】
(1)第1レンズ群
第1レンズ群は正の屈折力を有し、上述した構成を有する限り、その具体的な構成は特に限定されるものではない。しかしながら、以下の構成を採用することがより好ましい。
【0019】
本件発明に係る広角レンズにおいて、第1レンズ群は、物体側から順に、負の屈折力を有する第1Aレンズ群と、正の屈折力を有する第1Bレンズ群とから構成され、第1Aレンズ群は、2枚以上の負レンズと、1枚以上の正レンズとから構成され、第1Bレンズ群は、2枚以上の正レンズと、1枚以上の負レンズとから構成されることが好ましい。
【0020】
全体として正の屈折力を有する第1レンズ群を、物体側から順に負の屈折力を有する上記第1Aレンズ群と正の屈折力を有する上記第1Bレンズ群とから構成することにより、いわゆるレトロフォーカス型のレンズ構成を強調することができる。そのため、当該広角レンズの広角化を図ったときも、一眼レフカメラの交換レンズ等、当該広角レンズに要求される所定のバックフォーカスを確保することが容易になる。
【0021】
i)第1Aレンズ群
第1Aレンズ群において、その最も物体側に、物体側に凸面を向けたメニスカス形状の負レンズを配置することが好ましい。第1Aレンズ群の最も物体側に、このようなメニスカス形状の負レンズを配置することで、このメニスカス形状の負レンズに大きな入射角で軸外光線が入射しても、上記諸収差の発生を抑制することができ、より高い光学性能を実現することが容易になる。なお、第1レンズ群の具体的構成によらず、すなわち、第1レンズ群が上記第1Aレンズ群及び第1Bレンズ群とから構成されない場合も、当該第1レンズ群の最も物体側に配置されるレンズを、物体側に凸面を向けたメニスカス形状の負レンズとすることにより、上記と同様の効果を得ることができる。
【0022】
また、第1Aレンズ群において、最も像側に配置されるレンズ面は像側に凹形状であることが好ましい。第1Aレンズ群の最も像側に、像側に凹形状のレンズ面を配置することにより、第1Aレンズ群の物体側に配置された負レンズの収差負担を軽減することができるため、より一層の広角化及び大口径化を図ることが容易になる。
【0023】
さらに、第1Aレンズ群は、3枚の負レンズと、1枚の正レンズとから構成することがより好ましい。当該構成を採用することにより、大きな入射角度で入射する軸外光束に対し、緩やかに光線を収斂させることが容易になり、諸収差、特に非点収差、コマ収差を少ないレンズ枚数で良好に補正することが容易になる。
【0024】
ii)第1Bレンズ群
第1Bレンズ群を、2枚以上の正レンズを含む構成とすることにより、大口径の光学レンズに特有のサジタルコマ収差を良好に補正することができる。
【0025】
第1Bレンズ群において、その最も物体側に、物体側面が物体側に凹形状の負レンズ成分を配置することが好ましい。第1Bレンズ群の最も物体側に、このような負レンズ成分を配置することにより、レトロフォーカス型のレンズ構成をより強調することができ、当該広角レンズの広角化を図ったときも、十分なバックフォーカスを確保することがより容易になる。当該効果を得る上で、当該負レンズ成分の像側面が像側に凹形状である場合、当該負レンズ成分の物体側面の曲率は、その像側面の曲率よりも大きいことが好ましい。
【0026】
但し、本件発明において、レンズ成分には、単レンズ、レンズの片面又は両面に非球面形状の樹脂を成形した複合レンズ等が含まれる。また、レンズ成分には、二以上のレンズを接合した接合レンズも含まれる。但し、接合レンズの場合、接合レンズ全体をレンズ成分と称し、上記負レンズ成分とは接合レンズ全体でみたときに負の屈折力を有するものとする。このとき、接合レンズを指してレンズ成分と称するとき、その物体側面とは、接合レンズにおいて最も物体側に配置される面を意味し、像側面とは、接合レンズにおいて最も像側に配置される面を意味するものとする。
【0027】
さらに、上記負レンズ成分の物体側面の曲率は、第1レンズ群に含まれる物体側面が凹形状のレンズの中で最も大きいことが好ましい。第1レンズ群を上述したように第1Aレンズ群と第1Bレンズ群とから構成すると共に、第1Bレンズ群において最も物体側に、物体側面が強い曲率を有する凹面である負レンズ成分を配置することにより、次に説明する効果が得られる。一般に、レンズの凹面形状が強くなると負の屈折力が強くなるため、球面収差と非点収差はどちらもオーバー側に作用する。しかしながら、上記構成を採用した場合、第1Bレンズ群において、最も物体側に配置される凹面は、面の屈折力に対する球面収差と非点収差の変動は逆方向に作用する。すなわち、当該凹面の凹面形状が強くなると非点収差がオーバー側に作用するのに対して、球面収差は逆方向のアンダー側に作用する。従って、上記構成を採用すると共に、第1レンズ群において最も物体側にこのように曲率の強い凹面を有する負レンズ成分を配置することで、球面収差と非点収差を良好に補正することが可能となる。
【0028】
また、第1レンズ群を上記構成とし、且つ、第1Bレンズ群において最も物体側に、物体側面が強い曲率を有する凹面である負レンズ成分を配置することにより、第1Aレンズ群と第1Bレンズ群とにおける屈折力バランスを適切に設定することが容易になる。
その結果、諸収差をバランスよく補正することができ、より高い光学性能を実現することが容易になる。
【0029】
さらに、第1Bレンズ群において、最も像側に配置されるレンズの像側面、すなわち最も像側に配置されるレンズ面は、像側に凸形状であることが好ましい。第1Bレンズ群の最も像側に、像側に凸形状のレンズ面を配置することで、第1Aレンズ群に配置される負レンズで発生する歪曲収差を良好に補正することができ、より高い光学性能を実現することが容易になる。なお、第1レンズ群の具体的構成によらず、当該第1レンズ群の最も
像側に配置されるレンズ面を像側に凸形状とすることで、上記と同様の効果を得ることができる。
【0030】
(2)第2レンズ群
第2レンズ群は、全体でみたときに正の屈折力を有する限り、その具体的なレンズ構成は特に限定されるものではない。しかしながら、本件発明に係る課題を解決する上で、以下の構成であることが好ましい。
【0031】
第2レンズ群において、最も物体側に配置されるレンズ面は、物体側に凸形状であることが好ましい。本件発明に係る広角レンズにおいて、第1レンズ群は正の屈折力を有する。そのため、第1レンズ群によって収斂された光束が第2レンズ群に入射する。このとき、第2レンズ群の最も物体側に配置されるレンズ面を、物体側に凸形状とすることで、球面収差、像面湾曲の補正が容易になる。そのため、当該第2レンズ群を構成するレンズ枚数を少なくすることができ、当該広角レンズの小型化を図ることが容易になる。
【0032】
本件発明に係る広角レンズでは、上述のとおり、少なくとも第2レンズ群を移動させてフォーカスを行うため、第2レンズ群をより少ないレンズ枚数で構成することにより、フォーカス群の小型化及び軽量化を図ることができ、迅速なフォーカス動作が可能になる。
【0033】
また、当該第2レンズ群を二つ以上の部分レンズ群に分割し、フォーカスの際に各部分レンズ群をそれぞれ移動させてもよい。この際、各部分レンズ群の移動量が異なっていても本件発明の課題を達成することができる。なお、フォーカスの際に、各部分レンズ群を異なる移動量で移動させれば、物体距離によらず、フォーカス全域においてより良好な収差補正を行うことが容易になる。
【0034】
(3)開口絞り
本件発明に係る広角レンズにおいて、第2レンズ群内に開口絞りを有することが好ましい。第2レンズ群に入射する軸上光束の光束径は、上述のとおり第1レンズ群により収斂されているため、開口絞りの小型化を図ることができ、開口絞りを駆動するための駆動機構の小型化及び軽量化を図ることができる。そのため、当該広角レンズの小型化、軽量化を図ることが容易になる。なお、開口絞りの前後において、第2レンズ群を上記のように部分レンズ群に分割してもよい。
【0035】
1−2.レンズ群構成
当該広角レンズは、上述した第1レンズ群及び第2レンズ群を備えていればよく、第2レンズ群の像側に後続レンズ群を備えていてもよい。例えば、第2レンズ群の像側に、正又は負の屈折力を有する第3レンズ群等を配置することができる。このとき、後続レンズ群の具体的なレンズ構成等は特に限定されるものではない。
【0036】
また、当該広角レンズを構成するレンズ群の数に特に限定はないが、当該広角レンズの一層の小型化を図るという観点から、当該広角レンズは上記第1レンズ群と上記第2レンズ群から構成されることがより好ましい。
【0037】
1−3.フォーカス時の動作
本件発明に係る広角レンズにおいて、第2レンズ群を光軸に沿って移動させることにより、フォーカスを行う限り、フォーカスの際の他のレンズ群の固定/移動の別は特に限定されるものでない。しかしながら、フォーカス群の軽量化等の観点から、第1レンズ群はフォーカスの際に光軸方向に固定されることが好ましい。また、第2レンズ群の像側にレンズ群を備える場合、そのうち正の屈折力を有するレンズ群をフォーカスの際に移動させて、フォーカスを行っても良い。このとき、第2レンズ群と同じ移動量で移動させてもよいし、異なる移動量で移動させてもよい。しかしながら、第1レンズ群の場合と同様に、フォーカス群の軽量化を図るという観点から、後続レンズ群はフォーカスの際に固定されることが好ましい。
【0038】
1−4.条件式
次に、本件発明に係る広角レンズが満足すべき条件、又は、満足することが好ましい条件について説明する。
【0039】
本件発明に係る広角レンズにおいて、第1レンズ群に含まれる負レンズのうち、最も物体側に配置される負レンズを負レンズL1nとしたとき、この負レンズL1nが以下の条件式(1)及び条件式(2)で表される条件を満足するものとする。
【0040】
条件式(1):PgF−(0.6438−0.001682×νd1n)>0.006
条件式(2):νd1n < 40
【0041】
但し、
PgFは、負レンズL1nのg線とF線の部分分散比を表し、
νd1nは、負レンズL1nのd線に対するアッベ数を表す。
【0042】
ここで、g線(435.8nm)、F線(486.1nm)、d線(587.6nm)、C線(656.3nm)に対するガラスの屈折率をそれぞれNg、NF、Nd、NCとすると、アッベ数(νd)、部分分散比(PgF)は次のように表すことができる。
【0043】
νd = (Nd−1) /(NF−NC)
PgF = (Ng−NF)/(NF−NC)
【0044】
なお、上記部分分散比(PgF)は、C7(硝材)(部分分散比0.5393、νd:60.49)及びF2(硝材)(部分分散比0.5829、νd:36.30)の部分分散比とνdの座標を通る直線を基準線としたときの、部分分散比の基準線からの偏差を意味する。
【0045】
1−4−1.条件式(1)
まず、上記条件式(1)について説明する。条件式(1)は、第1レンズ群において、最も物体側に配置される負レンズL1nのいわゆる異常分散性を規定する式である。当該条件式(1)を満足させることにより、例えば、80°程度の画角を維持しつつ、大口径化を図ろうとしたときも倍率色収差の2次スペクトルを良好に補正することができ、光学性能の高い小型の広角レンズを実現することができる。
【0046】
一方、条件式(1)の数値が下限値以下になると、倍率色収差の2次スペクトルを良好に補正することが困難となる。そのため、所定のバックフォーカス、画角及びFナンバーを維持しつつ、高い光学性能を実現することが困難になる。また、良好な光学性能を実現するには、収差補正のためのレンズ枚数が増加し、当該広角レンズの小型化を図ることが困難になる。
【0047】
当該広角レンズにおいて、負レンズL1nは、下記の条件式(1)’で表される条件を満足することが好ましく、条件式(1)’’で表される条件を満足することがより好ましい。これらの条件を満足することにより、本発明の効果をより発揮することができる。
【0048】
条件式(1)’:PgF−(0.6438−0.001682×νd1n)>0.01
条件式(1)’’:PgF−(0.6438−0.001682×νd1n)>0.013
【0049】
1−4−2.条件式(2)
条件式(2)は、上記負レンズL1nのd線に対するアッベ数を規定する式である。当該条件式(2)を満足させることにより、例えば、80°程度の画角を維持しつつ、大口径化を図ろうとしたときも倍率色収差を良好に補正することができ、光学性能の高い小型の広角レンズを実現することができる。
【0050】
一方、条件式(2)の数値が上限値以上になると、倍率色収差を良好に補正することが困難となる。そのため、条件式(1)の場合と同様に、所定のバックフォーカス、画角及びFナンバーを維持しつつ、高い光学性能を実現することが困難になる。また、良好な光学性能を実現するには、収差補正のためのレンズ枚数が増加し、当該広角レンズの小型化を図ることが困難になる。
【0051】
当該広角レンズにおいて、負レンズL1nは、下記の条件式(2)’で表される条件を満足することが好ましく、条件式(2)’’で表される条件を満足することがより好ましい。これらの条件を満足することにより、本発明の効果をより発揮することができる。
【0052】
条件式(2)’ : νd1n < 35
条件式(2)’’ : νd1n < 30
【0053】
1−4−3.条件式(3)
本件発明に係る広角レンズにおいて、第1レンズ群に含まれる負レンズのうち、上記負レンズL1nより像側に配置されるいずれかの負レンズを負レンズL2nとしたとき、当該負レンズL2nが以下の条件式(3)で表される条件を満足することが好ましい。
【0055】
但し、
νd2nは、前記負レンズL2nのd線に対するアッベ数を表す。
【0056】
条件式(3)は、上記負レンズL2nのd線に対するアッベ数を規定する式である。当該条件式(3)を満足する負レンズL2nを用いて第1レンズ群を構成することにより、倍率色収差、特にF線とC線の幅を小さくすることが容易になり、より高い光学性能を実現することが容易になる。一方、条件式(3)の数値が下限値以下になると、倍率色収差、特に、F線とC線の幅を小さくすることが困難になるため、好ましくない。但し、当該負レンズL2nは、第1レンズ群に含まれる負レンズのうち、最も物体側に配置される負レンズL1n以外であれば、どの負レンズであってもよい。
【0057】
1−4−4.条件式(4)
本件発明に係る広角レンズにおいて、第1レンズ群が上述した第1Aレンズ群と第1Bレンズ群とから構成されるとき、当該第1Bレンズ群において、最も物体側に配置される上記負レンズ成分の物体側面が以下の条件式(4)で表される条件を満足することが好ましい。但し、第1レンズ群において、物体側面が物体側に凹形状である負レンズのうち、その物体面の曲率が最も大きい負レンズ又は負レンズ成分が以下の条件を満足してもよい。
【0058】
条件式(4): 0.7 < |Cr1f| / f < 3.0
【0059】
但し、
Cr1fは、上記負レンズ成分の物体側面の曲率半径を表し、
fは、当該広角レンズ全系の焦点距離を表す。
【0060】
条件式(4)は、上記負レンズ成分の物体側面の曲率、すなわち第1Bレンズ群の最も物体側の面の曲率半径と、当該広角レンズ全系の焦点距離との比を規定する式である。第1レンズ群を上記のように負の屈折力を有する第1Aレンズ群と、正の屈折力を有する第1Bレンズ群とから構成した場合、条件式(4)を満足させることにより、第1Bレンズ群において最も物体側に配置される凹面の負の屈折力が適切な範囲となり、球面収差と非点収差とをバランスよく補正することができる。
【0061】
一方、条件式(4)の数値が下限値以下になると、第1Bレンズ群において最も物体側に配置される凹面における負の屈折力が過剰に強くなり、球面収差がアンダーとなり、球面収差と非点収差とをバランスよく補正することが困難になるため、好ましくない。これに対して、条件式(4)の数値が上限値以上になると、当該凹面における負の屈折力が弱くなりすぎ、球面収差がオーバーとなるため、この場合も球面収差と非点収差とをバランスよく補正することが困難になるため、好ましくない。
【0062】
当該広角レンズにおいて、下記の条件式(4)’で表される条件を満足することが好ましく、条件式(4)’’で表される条件を満足することがより好ましく、条件式(4)’’’で表される条件を満足することがさらに好ましい。これらの条件を満足することにより、本発明の効果をより発揮することができる。
【0063】
条件式(4)’ : 0.8 < |Cr1f| / f < 2.5
条件式(4)’’ : 0.9 < |Cr1f| / f < 2.0
条件式(4)’’’ : 0.9 < |Cr1f| / f < 1.5
【0064】
1−4−5.条件式(5)
本件発明に係る広角レンズにおいて、第1レンズ群が以下の条件を満足することが好ましい。
【0065】
条件式(5): 3.5 < f1 /f < 30
【0066】
但し、
f1は、前記第1レンズ群の焦点距離を表し、
fは、当該広角レンズ全系の焦点距離を表す。
【0067】
条件式(5)は、第1レンズ群の焦点距離と当該広角レンズ全系の焦点距離との比を規定する式である。当該条件式(5)を満足させることにより、レトロフォーカス型のレンズ構成とすることが容易になり、要求される所定のバックフォーカスを確保することが容易になる。また、当該条件式(5)を満足させることにより、第1レンズ群よりも像側に配置される正の屈折力を有するレンズ群の焦点距離が適正な範囲内となり、フォーカスを行う際の球面収差の変動を抑制することができる。
【0068】
一方、条件式(5)の数値が下限値以下になると、レトロフォーカス型のレンズ構成とすることが困難になり、要求される所定のバックフォーカスを確保することが困難になる。また、この場合、第1レンズ群よりも像側に配置される正の屈折力を有するレンズ群の焦点距離が長くなり、フォーカスの際の球面収差の変動を抑制することが困難になる。特に、近距離物体合焦時における球面収差がオーバーとなり、補正が困難になる。これに対して、条件式(5)の数値が上限値以上になると、第1レンズ群よりも像側に配置されるレンズ群の小径化、軽量化を図ることが困難になるため、迅速なフォーカス動作を行うことが困難になる。
【0069】
当該広角レンズにおいて、下記の条件式(5)’で表される条件を満足することが好ましく、条件式(5)’’で表される条件を満足することがより好ましく、条件式(5)’’’で表される条件を満足することがさらに好ましい。これらの条件を満足することにより、本発明の効果をより発揮することができる。
【0070】
条件式(5)’ : 4.5 < f1 /f < 25
条件式(5)’’ : 5.2 < f1 /f < 20
条件式(5)’’’: 5.2 < f1 /f < 15
【0071】
2.撮像装置
次に、本件発明に係る撮像装置について説明する。本件発明に係る撮像装置は、上記本件発明に係る広角レンズと、当該広角レンズの像面側に設けられた、当該広角レンズによって形成された光学像を電気的信号に変換する撮像素子とを備えたことを特徴とする。ここで、撮像素子等に特に限定はなく、CCDセンサやCMOSセンサなどの固体撮像素子等も用いることができる。本件発明に係る撮像装置は、デジタルカメラやビデオカメラ等のこれらの固体撮像素子を用いた撮像装置に好適である。また、当該撮像装置は、レンズが筐体に固定されたレンズ固定式の撮像装置であってもよい。本件発明に係る広角レンズは、一眼レフカメラ、ミラーレス一眼カメラ等のレンズ交換式の撮像装置に要求されるバックフォーカスを確保することができるから、これらのレンズ交換式の撮像装置の交換レンズとして好適である。
【0072】
次に、実施例および比較例を示して本件発明を具体的に説明する。但し、本件発明は以下の実施例に限定されるものではない。以下に挙げる各実施例の広角レンズは、デジタルカメラ、ビデオカメラ、銀塩フィルムカメラ等の撮像装置(光学装置)に用いられる撮像広角レンズである。また、各レンズ断面図において、図面に向かって左方が物体側、右方が像面側である。
【実施例1】
【0073】
(1)広角レンズの構成
図1は、本件発明に係る実施例1の広角レンズの無限遠合焦時におけるレンズ構成を示すレンズ断面図である。当該広角レンズは、物体側から順に、正の屈折力を有する第1レンズ群G1と、正の屈折力を有する第2レンズ群G2とから構成されている。無限遠物体から近距離物体への合焦の際、第1レンズ群G1が光軸方向に固定された状態で、第2レンズ群G2が光軸に沿って物体側に移動する。開口絞りSは第2レンズ群G2の内部に配置されている。
【0074】
第1レンズ群G1は、物体側から順に、負の屈折力の第1Aレンズ群G1Aと、正の屈折力の第1Bレンズ群G1Bから構成されている。
【0075】
第1Aレンズ群G1Aは、物体側から順に、物体側に凸面を向けた負メニスカスレンズL1と、物体側に凸面を向けた負メニスカスレンズL2と、両凸形状の正レンズL3と、両凹形状の負レンズL4とから構成されている。負メニスカスレンズL2は、その両面を非球面形状としたガラスモールド型非球面レンズ、又は研削加工による非球面レンズである。
【0076】
第1Bレンズ群G1Bは、物体側から順に、両凹形状の負レンズL5と、像側に凸面を向けた正メニスカスレンズL6と、両凸形状の正レンズL7から構成されている。第1Bレンズ群G1Bの最も物体側のレンズ(負レンズL5)は、像側に対し物体側により強い曲率の凹面を有する上記負レンズ成分である。
【0077】
第2レンズ群G2は、両凸形状の正レンズL8と、物体側に凸面を向けた負メニスカスレンズL9と、開口絞りSと、両凹形状の負レンズL10と、両凸形状の正レンズL11及び像側に凸面を向けた負メニスカスレンズL12を接合した正の屈折力の接合レンズと、両凸形状の正レンズL13から構成されている。負メニスカスレンズL12は、その像側面を非球面形状としたガラスモールド型非球面レンズ、又は研削加工による非球面レンズである。
【0078】
なお、
図1において、「IP」は像面であり、具体的には、CCDセンサやCMOSセンサなどの固体撮像素子の撮像面、或いは、銀塩フィルムのフィルム面等を示す。また、IPの物体側にはカバーガラス等(符号略)を備える。この点は、実施例2〜実施例5で示す各レンズ断面図においても同様である。
【0079】
(2)数値実施例
次に、当該広角レンズの具体的数値を適用した数値実施例について説明する。表1に当該広角レンズのレンズデータを示す。表1において、「面番号」は物体側から数えたレンズ面の順番、「r」はレンズ面の曲率半径、「d」はレンズ面の光軸上の間隔、「nd」はd線(波長λ=587.6nm)に対する屈折率、「νd」はd線に対するアッベ数をそれぞれ示している。また、面番号の次の欄に表示する「ASP」は当該レンズ面が非球面であることを表し、「S」開口絞りを表している。
【0080】
表2に、当該広角レンズの緒元表、非球面データ、光軸上の可変間隔、各レンズ群の焦点距離を示す。緒元表には、無限遠物体合焦時における当該広角レンズ全系の焦点距離「f」、Fナンバー「Fno.」、半画角「ω」、像高「Ym」を示す。
【0081】
非球面データは、当該非球面形状を下記式で定義した場合の非球面係数を示す。但し、表において、「E−a」は「×10
−a」を示す。また、下記式において、「x」は光軸方向の基準面からの変位量、「r」は近軸曲率半径、「H」は光軸に垂直な方向の光軸からの高さ、「k」は円錐係数、「An」はn次の非球面係数とする。
【0082】
【数1】
【0083】
可変間隔は、無限遠合焦時及び0.5m合焦時における各レンズ面間の間隔を示している。また、各条件式(1)〜条件式(5)の数値を表11に示す。なお、各表中の長さの単位は全て「mm」であり、画角の単位は全て「°」である。これらの表に関する事項は実施例2〜実施例5で示す各表においても同様であるため、以下では説明を省略する。
【0084】
図2及び
図3に当該広角レンズの無限遠合焦時における縦収差図及び横収差図を示す。また、
図4及び
図5に当該広角レンズの0.5m合焦時における縦収差図及び横収差図を示す。
【0085】
各縦収差図において、図面に向かって左から順に、球面収差、非点収差、歪曲収差を表している。球面収差を表す図では、縦軸は開放F値との割合、横軸にデフォーカスをとり、実線がd線(波長λ=587.6nm)、点線がg線(波長λ=435.8nm)における球面収差を示す。非点収差を表す図では、縦軸は像高、横軸にデフォーカスをとり、実線がd線に対するサジタル像面(ds)、点線がd線に対するメリジオナル像面(dm)を示す。歪曲収差を表す図では、縦軸は像高、横軸に%をとり、歪曲収差を表す。
【0086】
各横収差図において、上段から順に最大像高の100%の像点(1.0ω)、90%の像点(0.9ω)、70%の像点(0.7ω)、50%の像点(0.5ω)、軸上点(0.0ω)における横収差を示している。各横収差図において、横軸は瞳面上での主光線からの距離を表し、実線がd線、点線がg線におけるコマ収差を示している。
【0087】
これらの各図に関する事項は実施例2〜実施例5で示す縦収差図及び横収差図においても同様であるため、以下では説明を省略する。
【0088】
また、当該広角レンズの無限遠合焦時におけるバックフォーカス「BF」は以下のとおりである。但し、以下の値は、厚さ2mmのカバーガラスを含む値であり、他の実施例に示すバックフォーカスも同様である。
BF= 39.0567
【0089】
【表1】
【0090】
【表2】
【実施例2】
【0091】
(1)広角レンズの構成
図6は、本件発明に係る実施例2の広角レンズの無限遠合焦時におけるレンズ構成を示すレンズ断面図である。当該広角レンズは、物体側から順に、正の屈折力の第1レンズ群G1と、正の屈折力の第2レンズ群G2とから構成されている。無限遠物体から近距離物体への合焦の際、第1レンズ群G1が光軸方向に固定された状態で、第2レンズ群G2が光軸に沿って物体側に移動する。開口絞りSは第2レンズ群G2の内部に配置されている。
【0092】
第1レンズ群G1は、物体側から順に、負の屈折力の第1Aレンズ群G1Aと、正の屈折力の第1Bレンズ群G1Bとから構成されている。
【0093】
第1Aレンズ群G1Aは、物体側から順に、物体側に凸面を向けた負メニスカスレンズL1と、両凸形状の正レンズL2と、物体側に凸面を向けた負メニスカスレンズL3と、物体側に凸面を向けた負メニスカスレンズL4とから構成されている。負メニスカスレンズL4は両面を非球面形状としたガラスモールド型非球面レンズ、又は研削加工による非球面レンズである。
【0094】
第1Bレンズ群G1Bは、物体側から順に、像側に凸面を向けた負メニスカスレンズL5と、両凸形状の正レンズL6と、両凸形状の正レンズL7及び像側に凸面を向けた正メニスカスレンズL8を接合した正の屈折力の接合レンズとから構成されている。第1Bレンズ群G1Bの最も物体側のレンズ(負メニスカスレンズL5)は、第1レンズ群のうち、物体側に最も強い凹面を有する上記負レンズ成分である。
【0095】
第2レンズ群G2は、両凸形状の正レンズL9と、両凸形状の正レンズL10及び両凹形状の負レンズL11を接合した負の屈折力の接合レンズと、開口絞りSと、像側に凸面を向けた正メニスカスレンズL12及び像側に凸面を向けた負メニスカスレンズL13を接合した負の屈折力の接合レンズと、両凸形状の正レンズL14と、像側に凸面を向けた正メニスカスレンズL15とから構成されている。正メニスカスレンズL15は物体側の面を非球面形状としたガラスモールド型非球面レンズ、又は研削加工による非球面レンズである。
【0096】
(2)数値実施例
次に、当該広角レンズの具体的数値を適用した数値実施例について説明する。表3は、当該光学系のレンズデータであり、表4は、当該広角レンズの緒元表、非球面データ、光軸上の可変間隔、各レンズ群の焦点距離である。また、表11に条件式(1)〜条件式(5)の数値を示す。さらに、
図7〜
図10は、当該広角レンズの無限遠合焦時及び0.5m合焦時の縦収差図及び横収差図である。
【0097】
また、当該広角レンズの無限遠合焦時におけるバックフォーカスは以下のとおりである。
BF= 39.0331
【0098】
【表3】
【0099】
【表4】
【実施例3】
【0100】
(1)光学系の構成
図11は、本件発明に係る実施例3の広角レンズの無限遠合焦時におけるレンズ構成を示すレンズ断面図である。当該広角レンズは、物体側から順に、正の屈折力の第1レンズ群G1と、正の屈折力の第2レンズ群G2とから構成されている。無限遠物体から近距離物体への合焦の際、第1レンズ群G1が光軸方向に固定された状態で、第2レンズ群G2が光軸に沿って物体側に移動する。開口絞りSは第2レンズ群G2の内部に配置されている。
【0101】
第1レンズ群G1は、物体側から順に、負の屈折力の第1Aレンズ群G1Aと、正の屈折力の第1Bレンズ群G1Bとから構成されている。
【0102】
第1Aレンズ群G1Aは、物体側から順に、物体側に凸面を向けた負メニスカスレンズL1と、物体側に凸面を向けた負メニスカスレンズL2と、両凸形状の正レンズL3及び両凹形状の負レンズL4を接合した負の屈折力の接合レンズとから構成されている。負メニスカスレンズL2は両面を非球面形状としたガラスモールド型非球面レンズ、又は研削加工による非球面レンズである。
【0103】
第1Bレンズ群G1Bは、物体側から順に、両凹形状の負レンズL5及び両凸形状の正レンズL6を接合した負の屈折力の接合レンズと、両凸形状の正レンズL7と、両凸形状の正レンズL8及び両凹形状の負レンズL9を接合した負の屈折力の接合レンズとから構成されている。第1Bレンズ群G1Bの最も物体側のレンズ成分(負レンズL5と正レンズL6の接合レンズ)は、像側に対し物体側により強い凹面を有する負の屈折力を有する接合レンズ、すなわち上記負レンズ成分である。
【0104】
第2レンズ群G2は、両凸形状の正レンズL10と、物体側に凸面を向けた負メニスカスレンズL11と、開口絞りSと、両凹形状の負レンズL12と、両凸形状の正レンズL13及び物体側に凸面を向けた正メニスカスレンズL14を接合した正の屈折力の接合レンズと、両凸形状の正レンズL15とから構成されている。正メニスカスレンズL14は像側の面を非球面形状としたガラスモールド型非球面レンズ、又は研削加工による非球面レンズである。
【0105】
(2)数値実施例
次に、当該広角レンズの具体的数値を適用した数値実施例について説明する。表5は、当該光学系のレンズデータであり、表6は、当該広角レンズの緒元表、非球面データ、光軸上の可変間隔、各レンズ群の焦点距離である。また、表11に条件式(1)〜条件式(5)の数値を示す。さらに、
図12〜
図15は、当該広角レンズの無限遠合焦時及び0.5m合焦時の縦収差図及び横収差図である。
【0106】
また、当該広角レンズの無限遠合焦時におけるバックフォーカスは以下のとおりである。
BF= 39.0353
【0107】
【表5】
【0108】
【表6】
【実施例4】
【0109】
(1)広角レンズの構成
図16は、本件発明に係る実施例4の光学系の無限遠合焦時におけるレンズ構成を示すレンズ断面図である。当該広角レンズは、物体側から順に、正の屈折力の第1レンズ群G1と、正の屈折力の第2レンズ群G2とから構成されている。無限遠物体から近距離物体への合焦の際、第1レンズ群G1が光軸方向に固定された状態で、第2レンズ群G2が光軸に沿って物体側に移動する。開口絞りSは第2レンズ群G2の内部に配置されている。
【0110】
第1レンズ群G1は、物体側から順に、負の屈折力の第1Aレンズ群G1Aと、正の屈折力の第1Bレンズ群G1Bとから構成されている。
【0111】
第1Aレンズ群G1Aは、物体側から順に、物体側に凸面を向けた負メニスカスレンズL1と、物体側に凸面を向けた負メニスカスレンズL2と、両凸形状の正レンズL3と、両凹形状の負レンズL4とから構成されている。負メニスカスレンズL2は像側の面を非球面形状としたガラスモールド型非球面レンズ、又は研削加工による非球面レンズである。
【0112】
第1Bレンズ群G1Bは、物体側から順に、両凹形状の負レンズL5と、像側に凸面を向けた正メニスカスレンズL6と、両凸形状の正レンズL7で構成されている。第1Bレンズ群G1Bの最も物体側のレンズ(負レンズL5)は、像側に対し物体側により強い凹面を有する上記負レンズ成分である。
【0113】
第2レンズ群G2は、物体側に凸面を向けた正メニスカスレンズL8と、物体側に凸面を向けた負メニスカスレンズL9と、開口絞りSと、両凹形状の負レンズL10、両凸形状の正レンズL11及び像側に凸面を向けた負メニスカスレンズL12を接合した負の屈折力の3枚接合レンズと、両凸形状の正レンズL13とから構成されている。負メニスカスレンズL12は像側の面を非球面形状としたガラスモールド型非球面レンズ、又は研削加工による非球面レンズである。
【0114】
(2)数値実施例
次に、当該広角レンズの具体的数値を適用した数値実施例について説明する。表7は、当該光学系のレンズデータであり、表8は、当該広角レンズの緒元表、非球面データ、光軸上の可変間隔、各レンズ群の焦点距離である。また、表11に条件式(1)〜条件式(5)の数値を示す。さらに、
図17〜
図20は、当該広角レンズの無限遠合焦時及び0.5m合焦時の縦収差図及び横収差図である。
【0115】
また、当該広角レンズの無限遠合焦時におけるバックフォーカスは以下のとおりである。
BF= 39.0465
【0116】
【表7】
【0117】
【表8】
【実施例5】
【0118】
(1)広角レンズの構成
図21は、本件発明に係る実施例5の光学系の無限遠合焦時におけるレンズ構成を示すレンズ断面図である。当該広角レンズは、物体側から順に、正の屈折力の第1レンズ群G1と、正の屈折力の第2レンズ群G2とから構成されている。無限遠物体から近距離物体への合焦の際、第1レンズ群G1が光軸方向に固定された状態で、第2レンズ群G2が光軸に沿って物体側に移動する。開口絞りSは第2レンズ群G2の内部に配置されている。
【0119】
第1レンズ群G1は、物体側から順に、負の屈折力の第1Aレンズ群G1Aと、正の屈折力の第1Bレンズ群G1Bとから構成されている。
【0120】
第1Aレンズ群G1Aは、物体側から順に、物体側に凸面を向けた正メニスカスレンズL1と、物体側に凸面を向けた負メニスカスレンズL2と、物体側に凸面を向けた負メニスカスレンズL3と、像側に凸面を向けた正メニスカスレンズL4及び両凹形状の負レンズL5を接合した負の屈折力を有する接合レンズとから構成されている。負メニスカスレンズL3は両面を非球面形状としたガラスモールド型非球面レンズ、又は研削加工による非球面レンズである。
【0121】
第1Bレンズ群G1Bは、物体側から順に、両凹形状の負レンズL6及び両凸形状の正レンズL7を接合した負の屈折力を有する接合レンズと、両凸形状の正レンズL8とから構成されている。第1Bレンズ群G1Bの最も物体側のレンズ(負レンズL6と正レンズL7の接合レンズ)は、像側に対し物体側により強い凹面を有する像側に対し物体側により強い凹面を有する負の接合レンズ、すなわち上記負レンズ成分である。
【0122】
第2レンズ群G2は、両凸形状の正レンズL9と、物体側に凸面を向けた負メニスカスレンズL10と、開口絞りSと、両凹形状の負レンズL11と、両凸形状の正レンズL12及び像側に凸面を向けた負メニスカスレンズL13を接合した正の屈折力の接合レンズと、両凸形状の正レンズL14とから構成されている。接合レンズを構成する負メニスカスレンズL13は像側の面を非球面形状としたガラスモールド型非球面レンズ、又は研削加工による非球面レンズである。
【0123】
(2)数値実施例
次に、当該広角レンズの具体的数値を適用した数値実施例について説明する。表9は、当該光学系のレンズデータであり、表10は、当該広角レンズの緒元表、非球面データ、光軸上の可変間隔、各レンズ群の焦点距離である。また、表11に条件式(1)〜条件式(5)の数値を示す。さらに、
図21〜
図25は、当該広角レンズの無限遠合焦時及び0.5m合焦時の縦収差図及び横収差図である。
【0124】
また、当該広角レンズの無限遠合焦時におけるバックフォーカスは以下のとおりである。
BF= 39.0376
【0125】
【表9】
【0126】
【表10】
【0127】
【表11】