【実施例1】
【0013】
まず、CMRR(同相信号除去比:Common-Mode Rejection Ratio)およびSPRR(Single Port Rejection Ratio)について説明する。CMRRは、
図1(a)の式で定義される。
図1(a)は、CMRRを説明するための図である。
図1(a)で例示するように、1対の差動信号光を受光素子12a,12bで受光する場合を想定する。受光素子12a,12bは、増幅器(TIA)36に接続され、デュアルタイプの接続構成を有する。各信号光には、周波数fの強度変調がかけられていている。i
1(f)は、受光素子12aから出力される光電流である。i
2(f)は、受光素子12bから出力される光電流である。
【0014】
|i
1(f)|は、受光素子12aが受光する光信号の強度が最大になる場合に受光素子12aから出力される電流の絶対値である。受光素子12aが受光する光信号の強度が最大になる場合、受光素子12bから出力される電流は最小となる。|i
2(f)|は、受光素子12bが受光する光信号の強度が最大になる場合に受光素子12bから出力される電流の絶対値である。受光素子12bが受光する光信号の強度が最大になる場合、受光素子12aから出力される電流は最小となる。|i
1(f)−i
2(f)|は、受光素子12aと受光素子12bとで同じ位相の光信号を受光する場合に受光素子12a,12bから出力される光電流i
1(f)とi
2(f)とを合成したものである。
【0015】
CMRRは、i
1(f)とi
2(f)とを個別に測定できる場合に有効である。しかしながら、光演算部を備えるコヒーレントレシーバでは、i
1(f)とi
2(f)とを個別に測定することが困難である。そこで、コヒーレントレシーバに対して試験を行う場合には、除去比としてSPRR(Single Port Rejection Ratio)を用いる。ここで、光演算部とは、多モード干渉導波路(MMI:Multi Mode Interference)のことである。光演算とは、入力される信号光および基準光(局部発振光:LO光)を光干渉により分光・光合成することである。例えば、光伝送信号は、等分されて出力光として出力される。この出力光を受光素子で光電変換し、得られた電気信号を復調することで、伝送信号を得ることができる。
【0016】
SPRRは、
図1(b)の式で定義される。
図1(b)は、SPRRを説明するための図である。
図1(b)で例示するように、
図1(a)と同様の受光素子12a,12bおよび増幅器36を用いる。コヒーレントレシーバに信号光が入力されずにLO光が入力される場合には、受光素子12aと受光素子12bとで同じ位相の光信号を受光する。この場合に増幅器36から出力される電圧がVout
LOである。コヒーレントレシーバに信号光およびLO光の両方が入力された場合に増幅器36から出力される電圧が最大となる場合の絶対値が|Vout
S21|である。このSPRRを測定することによって、光演算部を備えるコヒーレントレシーバを試験することができる。
【0017】
コヒーレントレシーバでは、内部において、入力光を偏波によって弁別している。このため、コヒーレントレシーバの内部には、偏波フィルタが内蔵されている。SPRR試験系においては、偏波制御部によって、偏波を最適化している。しかしながら、この偏波量は、SPRR試験系の光ファイバにかかる圧力や温度、あるいは偏波制御部の安定性によって、変動することがある。その結果、調整された光路長を有する試験系において入力光強度が一定に保持されているにもかかわらず、試験結果に光強度の変化が現れる場合がある。この場合、正確な試験が困難である。そこで、以下の実施例では、コヒーレントレシーバの試験結果を補正することができる試験方法について説明する。
【0018】
図2は、実施例1に係る補正方法が適用される試験系を示すブロック図である。
図2の試験系では、光受信器30としてコヒーレントレシーバを用いる。
図2で例示するように、光コミュニケーションアナライザ14(LCA:Lightwave Communication Analyzer)から出射された強度変調信号光が、スプリッタ16によって2つに分岐される。一方の分岐光は、アッテネータ18、光路長補正手段20、及び偏波コントローラ22を経由して、光受信器30に入射される。なお、光路長補正手段20は、例えば手動操作型のディレイライン、電動型のディレイライン等、光路長を補正することが可能な装置・方法を用いることができる。他方の分岐光は、アッテネータ18、位相変調器24、及び偏波コントローラ22を経由して、光受信器30に入射される。当該他方の分岐光は、ファンクションジェネレータ26の制御による位相変調器24によって、強度変調とは同期しない低周波の位相変調がかけられている。
【0019】
光受信器30には、信号光と局部発振光(LO光)とが入射される。ここでは、位相変調がかけられていない分岐光を信号光として用い、位相変調がかけられた分岐光を局部発振光として用いる。
図2で例示するように、信号光として用いられる分岐光および局部発振光として用いられる分岐光は、スプリッタ16の後段から異なる光経路を伝搬する。つまり、信号光として用いられる分岐光が伝搬する光経路28aと、局部発振光として用いられる分岐光が伝搬する光経路28bとは異なっている。
【0020】
図3は、光受信器30を例示するブロック図である。
図3で例示するように、光受信器30は、偏光分離素子32(PBS:Polarization Beam Splitter)、ビームスプリッタ34(BS:Beam splitter)、90度ハイブリッド10x及び10y、受光素子12a,12b、増幅器36、及び偏光回転素子38を含む。
【0021】
光受信器30に入射された信号光は、偏光分離素子32によって、互いに直交するX偏光とY偏光とに分離される。X偏光の光は、X側の90度ハイブリッド10xに入射される。Y偏光の光は、偏光回転素子38で偏光面が90°回転されてX偏光となった後、Y側の90度ハイブリッド10yに入射される。X偏光として例えばTE光、Y偏光として例えばTM光を用いることができるが、X偏光をTM光、Y偏光をTE光としてもよい。
【0022】
光受信器30に入射されたLO光は、ビームスプリッタ34によって、2つに分岐される。LO光は、予めX偏光に設定された光を偏波保持ファイバにて導入する。このため、ビームスプリッタ34で分岐された分岐光もX偏光となっている。ビームスプリッタ34で分岐された分岐光はそれぞれ、X側の90度ハイブリッド10xとY側の90度ハイブリッド10yに入射される。
【0023】
90度ハイブリッド10x、10yは、入射された信号光及びLO光を、内部の光導波路で分光・合成・遅延し、干渉光を4つのポートから出射するMMIからなる。90度ハイブリッド10x、10yは、例えば平面光導波路(PLC:Planar Lightwave Circuit)により構成することができる。X側の90度ハイブリッド10xに入射された信号光は、LO光と合成された後、同相成分(In-Phase)と直交位相成分(Quadrature-Phase)の正成分(Positive)及び負成分(negative)に分離され、4つの干渉信号光(X−Ip、X−In、X−Qp、X−Qn)として出射される。4つの干渉信号光のうちのX−IpとX−Inは1対の差動光信号であり、X−QpとX−Qnも1対の差動光信号である。
【0024】
同様に、Y側の90度ハイブリッド10yに入射された信号光は、LO光と合成された後、同相成分と直交位相成分の正成分及び負成分に分離され、4つの干渉信号光(Y−Ip、Y−In、Y−Qp、Y−Qn)として出射される。4つの干渉信号光のうちのY−IpとY−Inは1対の差動光信号であり、Y−QpとY−Qnも1対の差動光信号である。
【0025】
受光素子12a,12bは、90度ハイブリッド10x、10yから出射される干渉信号光に対応して設けられている。各受光素子12a,12bは、90度ハイブリッド10x、10yから出射される干渉信号光を受光し、光電変換によって、光電流を生成する。受光素子12a,12bは、例えばフォトダイオード(PD:Photodiode)である。また、受光素子12aは正成分を受光し、受光素子12bは負成分を受光する。1組の受光素子12a,12bは、デュアルタイプ型に配列されている。増幅器36は、1組の受光素子12a,12bから出力された対となる光電流を電圧に変換して増幅する。増幅器36は、例えばトランスインピーダンスアンプ(TIA:Trans Impedance Amplifier)である。増幅器36で増幅された1対の電気信号は、光受信器30の外部に出力される。
【0026】
図2で例示するように、光受信器30から出力された1対の電気信号は、アナログ−デジタル変換回路40(ADC:Analog Digital Converter)によってデジタル信号に変換される。アナログ−デジタル変換回路40から出力されたデジタル信号の1つは、光コミュニケーションアナライザ14に入力される。これにより、光コミュニケーションアナライザ14で、強度変調の変調周波数と光受信器30からの出力信号の強度との関係を示す周波数特性を測定できる。また、
図2および
図3で例示する試験系において、SPRRを測定することによって、光受信器30の試験を行うことができる。
【0027】
しかしながら、上述したように、入力光強度が一定に保持されているにもかかわらず、試験結果に光強度の変化が現れる場合がある。そこで、以下のように、試験結果に対して補正を行う。まず、信号光またはLO光のいずれか一方のみを光受信器30に入力した場合の光パワーを、光受信器30を用いて測定する。信号光またはLO光の一方だけを入力しているため、光受信器30の内部では、信号光とLO光とによる光演算は行われない。この場合、入力される光の偏波が所定の値からずれていれば、その分、測定される光パワーが変化する。すなわち、光受信器30の内部における、偏光分離素子32(偏波フィルタ)によってフィルタされた後の光パワーを得ることができる。これを用いて試験結果に対して補正を行えば、試験結果の精度を高めることができる。
【0028】
図4は、上記補正方法を説明するための図である。
図4で例示するように、「Single Port LO」は、光受信器30に対して信号光を入力せずにLO光を入力した場合に各受光素子12a,12bから出力される電流値I
LOである。「Single Port Signal」は、光受信器30に対してLO光を入力せずに信号光を入力した場合に各受光素子12a,12bから出力される電流値I
Signalである。「S21試験」は、信号光およびLO光の両方を光受信器30に入力した場合に各受光素子12a,12bから出力される電流値I
S21である。IphLOは、受光素子12a,12bから出力される電流のうちLO光に起因する電流値である。IphSignalは、受光素子12a,12bから出力される電流のうち信号光に起因する電流値である。
図4の例では、I
LOとI
Signalとの間に差異が生じている。それにより、I
LOおよびI
Signalと、I
S12との間にも差異が生じている。これは、信号光とLO光とが90度ハイブリッド10x、10yに入力する光強度差による誤差が生じているためである。
【0029】
本実施例においては、I
LOおよびI
SignalがI
S21に近付くように補正する。好ましくは、I
LOおよびI
SignalがI
S21に一致するように補正する。そこで、LO光のSPRR(LO)を下記式(1)のように補正し、信号光のSPRR(Signal)を下記式(2)のように補正する。これにより、I
LOおよびI
SignalがI
S21に一致するように補正される。
SPRR(LO)=20×log(Vout
LO×I
S21/I
LO/Vout
S21) (1)
SPRR(Signal)=20×log(Vout
Signal×I
S21/I
Signal/Vout
S21) (2)
これらの補正により、光強度に変化が現れても、光受信器30の試験結果を補正することができる。このように、信号光とLO光が90度ハイブリッド10x、10yに入力する光強度差による誤差を補正することができる。
【0030】
なお、上記例では、光受信器30にLO光または信号光のいずれか一方だけを入力することによって、偏光分離素子32によって弁別された光の強度を測定している。この場合、光受信器30を用いて、偏光分離素子32によって弁別された光の強度を測定することができる。しかしながら、他の手法を用いてもよい。例えば、偏光分離素子32の透過光あるいは反射光を受光素子などによって測定することによって、偏光分離素子32によって弁別された光の強度の変動量を測定してもよい。
【0031】
また、試験系において、偏波コントローラ22によって信号光およびLO光の偏波を最適化しなくとも、本実施例に係る補正方法によって光受信器30内部の偏光分離素子32によってフィルタされた光の強度に基づく補正を行えば、信号光およびLO光の偏波をラフに制御するだけで、正確な試験結果を得ることもできる。この場合も、前述の場合と同様の補正を試験結果に与えるだけでよい。ただし、偏波方向のおおよその合わせこみを行うことが好ましい。たとえばLO光および信号光の偏波方向が同じ偏波の組み合わせになるように合わせ込み(偏波合わせ)を行うことが好ましい。この手法によれば、試験時の偏波方向の合わせこみにかかる工数を大幅に低減することができる。
【0032】
以下、光路長を調整したうえで、上記補正方法を行う試験方法の具体例について説明する。まず、実験結果について説明する。
図2の試験系において、信号光及びLO光それぞれが伝搬する光経路28a、28bの光路長を最適値から故意に大きくずらし、光経路28a、28bそれぞれを伝搬する信号光の相互間の遅延時間差を53psとした。そして、この状態で、光コミュニケーションアナライザ14で周波数特性を測定した。なお、周波数特性の測定は、1回(1sweep)だけ行った。
図5(a)および
図5(b)は、周波数特性の測定結果を示す図である。
【0033】
図5(a)中の細線は測定データを示し、太線は測定データの最大値を結んだ包絡線を示している。また、参考として、光経路28a、28bの光路長が最適な場合での包絡線を破線で示している。
図5(a)のように、光路長が最適値から大きくずれている場合での包絡線(太線)は、最適な場合での包絡線(破線)に比べて、光受信器30からの出力信号の強度が低下していることが分かる。
【0034】
図5(b)は、光路長が最適な場合での包絡線(以下、Aと称す)にcos(πfτ)をかけた線B(=A×cos(πfτ))を一点鎖線で、Aにsin(πfτ)/√2をかけた線C(=A×sin(πfτ)/√2)を二点鎖線で加えた図である。
図5(b)のように、光路長が最適値から大きくずれた場合の測定データ(細線)は、B(=A×cos(πfτ))の線(一点鎖線)とC(=A×sin(πfτ)/√2)の線(二点鎖線)とに囲まれた領域内で位相変調に従った強度変化をしていることが分かる。その結果、測定データの最大値を結んだ包絡線(太線)は、A×cos(πfτ)とA×sin(πfτ)/√2との最大値を結んだ線にほぼ等しくなっていることが分かる。
【0035】
さらに、測定データ(細線)は、B(=A×cos(πfτ))の線とC(=A×sin(πfτ)/√2)の線とが交差する周波数fでは、位相変調による振動が生じていないことが分かる。したがって、下記式(3)が成り立つ。
cos(πfτ)=sin(πfτ)/√2 (3)
上記式(3)から、周波数fが特定されることで、遅延時間差τが求まることが分かる。この遅延時間差τに光の速度をかけた値が、光経路28a、28b間の光路長差であることから、この遅延時間差τに基づいて、
図2における光路長補正手段20で光路長を補正することにより、光経路28a、28b間の光路長差を適切にできる。
【0036】
以下、光路長を調整したうえで、コヒーレントレシーバの試験結果を補正することができる補正方法のフローについて説明する。
図6は、フローチャートの一例である。以下、
図3および
図6を参照しつつ、補正方法について説明する。まず、試験系をDUT(被試験デバイス)に取り付ける(ステップS1)。次に、被試験デバイス(例えば光デバイス)を測定する試験系の2つの光経路28a、28bに用いられる測定系部材(例えば、
図2では、アッテネータ18、偏波コントローラ22、位相変調器24)のサイズ等の物理長を測定する(ステップS2)。物理長の測定は、例えば概算でよい。物理長を測定した後、試験系部材及び光受信器等を光ファイバ等で接続して、例えば
図2のような試験系を組み立てる(ステップS3)。この際、光ファイバやアダプタ、光路長補正手段20等を必要に応じて駆使し、2つの光経路28a、28bの光路長が異なるようにする。例えば、2つの光経路28a、28b間の光路長差が4mm以上となるようにする。その後、試験系に接続された光受信器30を動作させて、光経路28a、28bごとに偏波の相対関係を調整する(ステップS4)。これにより、信号光及びLO光との間における偏波の相対関係を調整することができる。
【0037】
次いで、光コミュニケーションアナライザ14から強度変調をかけた信号光を出射させて、光受信器30に入射させる。出射された信号光は、スプリッタ16で分岐し、一方は、アッテネータ18、光路長補正手段20、及び偏波コントローラ22を経由して、光受信器30に入射する。他方は、アッテネータ18、位相変調器24、及び偏波コントローラ22を経由し、位相変調器24によって例えば1Hz程度の低周波の位相変調がかけられて、光受信器30に入射する。
【0038】
図3で説明したように、光受信器30は、90度ハイブリッド10x、10y、受光素子12a,12b、及び増幅器36を有する。90度ハイブリッド10x、10yは、入射された2つの信号光(信号光とLO光)を干渉させて干渉信号光を出射する。受光素子12a,12bは、干渉信号光を受光して光電流を出力する。この光電流は、増幅器36で増幅されて光受信器30の外部に出力される。
【0039】
光受信器30から出力された電気信号を、アナログ−デジタル変換回路40でデジタル信号に変換した後、光コミュニケーションアナライザ14に入力させて、周波数特性を測定する。周波数特性の測定は、例えば1回(1sweep)でよい。ステップS3において、2つの光経路28a、28bの光路長を異ならせているため、例えば、
図5(a)及び
図5(b)のような周波数特性の測定結果が得られる。
【0040】
周波数特性の測定結果から、2つの光経路28a、28bそれぞれを伝搬する信号光の相互間の遅延時間差を求める(ステップS5)。例えば、周波数特性で位相変調の影響が見られない点の周波数f
0を特定し、上記式(3)を用いて遅延時間差τを求める。即ち、τ={arctan(√2)}/(πf
0)を計算して、2つの光経路28a、28bそれぞれを伝搬する信号光の相互間の遅延時間差を求める。位相変調の影響が見られない点の周波数f
0は、位相変調による変動が生じていない点の周波数から±0.5GHzの範囲とすることができる。
【0041】
次いで、ステップS5で求めた遅延時間差から、2つの光経路28a、28bの光路長を等しくするための補正量ΔLを求める(ステップS6)。例えば、光路長を補正する光路長補正手段20での光の速度をc
0とした場合、補正量ΔLは、ΔL={arctan(√2)}×c
0/(πf
0)の計算によって求めることができる。
【0042】
次いで、光路長補正手段20を用いて、補正量ΔLだけ長くなるように光経路28aの光路長を補正する(ステップS7)。ここで、ステップS5で求めた遅延時間差だけでは、2つの光経路28a、28bのどちらの光路長が長いか(又は短いか)までは分からない。したがって、ステップS7において、光路長の補正を反対方向にしてしまった場合、つまり、光経路28aの光路長を短くすべき所を長くしてしまった場合があり得る。
【0043】
そこで、ステップS7で光路長の補正を行った後、光路長が正しく補正されたかを確認する(ステップS8)。例えば、光路長の補正を行った後に、光受信器30からの出力信号を光コミュニケーションアナライザ14に入力させて周波数特性を測定する。そして、周波数特性で位相変調の影響が見られない点の周波数が、補正を行う前よりも低くなっていないかどうかを確認する。周波数が低くなっている場合は、光路長が正しく補正されていないため(ステップS8でNo)、ステップS7に戻り、光路長補正手段20を用いて、補正量ΔLだけ短くなるように光経路28aの光路長を補正する。
【0044】
ステップS8において、周波数特性で位相変調の影響が見られない点の周波数が高くなっているか、又は、位相変調の影響が見られない点が消滅している場合は、光路長が正しく補正されたため(ステップS8でYes)、光路長の調整を終了する。なお、上記のステップS7では、まず、補正量ΔLだけ長くなるように光経路28aの光路長を変化させているが、補正量ΔLだけ短くなるように光経路28aの光路長を変化させても勿論よい。
【0045】
次に、SPRRの測定を開始する(ステップS9)。具体的には、Vout
LO、Vout
SignalおよびVout
S21の測定を行う。Vout
LO、Vout
SignalおよびVout
S21の測定は、複数回行うことが好ましい。測定精度が向上するからである。例えば、所定の時間間隔でVout
LO、Vout
SignalおよびVout
S21の測定を行い、平均値を算出してもよい。次に、各受光素子12a,12bから出力する電流量をモニタする(ステップS10)。具体的には、信号光だけを光受信器30に入力した場合、LO光だけを光受信器30に入力した場合での光強度を取得する。この光強度は、受光素子12a,12bから出力される電流量をモニタすることで取得することができる。また、LO光および信号光の両方を光受信器30に入力し、コヒーレントレシーバの試験をした場合の、受光素子12a,12bから出力される電流量をモニタする。それにより、I
LO、I
SignalおよびI
S21が得られる。I
LO、I
SignalおよびI
S21の測定は、複数回行うことが好ましい。測定精度が向上するからである。例えば、所定の時間間隔でI
LO、I
SignalおよびI
S21の測定を行い、平均値を算出してもよい。ステップS9およびステップS10を行う順は、特に限定されない。
【0046】
これらの値が得られれば、SPRRの測定を終了する(ステップS11)。この結果を用いて、各SPRRの試験結果に対して、上記式(1)および上記式(2)を用いて電流量補正を行う(ステップS12)。これにより、信号光とLO光の光演算部に入力する光強度差による誤差を補正することができる。次に、補正されたSPRRの試験結果を抽出する(ステップS13)。次に、試験系を被測定デバイス(DUT)から取り外す(ステップS14)。
【0047】
本実施例によれば、I
LOおよびI
SignalがI
S21に近付くように補正される。好ましくは、I
LOおよびI
SignalがI
S21に一致するように補正する。それにより、光強度に変化が現れても、SPRRの試験結果を補正することができる。