【課題】本発明は、不織布の電線への巻付けを容易にすることと不織布を電線へ巻付けた後に端部がめくれにくくすることとの少なくとも一方を可能にする技術を提供することを目的とする。
【解決手段】不織部材10は、シート状の不織布40を材料として形成されている。不織部材10は、シート状の前記不織布40の幅方向中間部分からなる第1部分12と、シート状の前記不織布40の幅方向端部のうち少なくとも一方の端部を含む部分であって、前記第1部分12よりも硬く形成された第2部分14と、を備える。
【発明を実施するための形態】
【0018】
{第1実施形態}
以下、第1実施形態に係る不織部材10について説明する。
図1は、第1実施形態に係る不織部材10を示す側面図である。
【0019】
不織部材10は、シート状の不織布40を材料として形成されている(
図5参照)。不織部材10は、例えば、電線に巻付けられて、保護部材を形成する。
【0020】
ここで、不織部材10を構成する不織布40について説明する。不織布40は、例えば、絡み合う基本繊維とバインダと称される接着樹脂とを含む。接着樹脂は、基本繊維の融点よりも低い融点(例えば、約110[℃]から約150[℃]の融点)を有する熱可塑性樹脂である。このような不織布40は、基本繊維の融点よりも低く、かつ、接着樹脂の融点よりも高い温度に加熱されることにより、接着樹脂が溶融して基本繊維の隙間に溶け込む。その後、不織布40の温度が、接着樹脂の融点よりも低い温度まで下がると、接着樹脂は、周囲に存在する基本繊維を結合した状態で硬化する。これにより、不織布40は、加熱前の状態よりも硬くなり、加熱後の冷却時に型枠等によって拘束された形状に成形される。
【0021】
接着樹脂は、例えば、粒状の樹脂又は繊維状の樹脂などである。また、接着樹脂は、芯繊維の周囲を覆うように形成されることも考えられる。このように、芯繊維が接着樹脂で被覆された構造を有する繊維は、バインダ繊維などと称される。芯繊維の材料は、例えば、基本繊維と同じ材料が採用される。
【0022】
また、基本繊維は、接着樹脂の融点において繊維状態が維持されればよく、樹脂繊維の他、各種の繊維が採用され得る。また、接着樹脂は、例えば、基本繊維の融点よりも低い融点を有する熱可塑性樹脂繊維が採用される。
【0023】
不織布40を構成する基本繊維と接着樹脂との組合せとしては、例えば、PET(ポリエチレンテレフタレート)を主成分とする樹脂繊維が基本繊維として採用され、PET及びPEI(ポリエチレンイソフタレート)の共重合樹脂が接着樹脂として採用されることが考えられる。そのような不織布40において、基本繊維の融点は概ね250[℃]であり、接着樹脂の融点は約110[℃]から約150[℃]の間の温度である。
【0024】
不織部材10は、第1部分12と第2部分14とを備える。
【0025】
第1部分12は、シート状の不織布40の幅方向中間部分からなる部分である。
【0026】
第2部分14は、シート状の不織布40の幅方向端部41,42のうち少なくとも一方の端部を含む部分である。第2部分14は、第1部分12よりも硬く形成されている。これにより、第2部分14は、第1部分12よりも変形し難くなっている。不織布40の端部に設けられる第2部分14の幅寸法は、例えば、シート状にした不織部材10全体の20パーセント程度であることが考えられる。この場合、一方端部側が10パーセント程度で且つ他方端部側が10パーセント程度であり、合計して20パーセント程度であることが考えられる。
【0027】
1枚の不織部材10において、第1部分12の硬さと第2部分14との硬さを変えるには、例えば、不織布40のうち第2部分14になる部分のみを加熱して、第1部分12になる部分はそのまま用いることが考えられる。また例えば、不織布40のうち第2部分14になる部分の加熱量を、第1部分12になる部分の加熱量よりも多くすることが考えられる。また例えば、不織布40を加熱した状態で、第2部分14になる部分のみをプレスすること、又は、第2部分14になる部分のプレスの圧力を第1部分12になる部分のプレスの圧力よりも大きくすることが考えられる。ここでは、第2部分14のみを加熱すると共に加熱状態でプレスすることで、第2部分14を第1部分12よりも硬くしているものとして説明する。
【0028】
上記したように、ここでは加熱された状態で第2部分14のみがプレスされているため、第2部分14の厚み寸法が第1部分12の厚み寸法よりも小さくなっている。このため、第2部分14は、第1部分12に対して厚み方向に凹んでいる。なお、ここでは、第2部分14において第1部分12に対して厚み方向に凹む領域は、不織部材10の一方主面側のみであるが、両主面側が凹んでいてもよい。
【0029】
ここでは、第2部分14は、シート状の不織布40の幅方向一方側端部41と幅方向他方側端部42とを含む。以降、第2部分14のうち、シート状の不織布40の幅方向一方側端部41の部分を第2部分14aと称し、幅方向他方側端部42の部分を第2部分14bと称することもある。
【0030】
以下では、不織部材10が電線に巻付けられた際に、第2部分14aが内側に位置する部分であり、第2部分14bが外側に位置する部分であるものとして説明する。
【0031】
第2部分14aは、不織部材10を電線に巻付ける際に変形し難いことにより、取付作業性を向上させることができる。一方、第2部分14bは、不織部材10を電線に巻付けた後に変形し難いことにより、めくれを抑制することができる。
【0032】
第2部分14aと第2部分14bとは同じ形状に形成されていてもよいし、異なる形状に形成されていてもよい。第2部分14aと第2部分14bとが異なる形状に形成されている例としては、例えば、第2部分14aの幅寸法と第2部分14bの幅寸法とが、異なっていてもよい。また、例えば、第2部分14aの厚み寸法と第2部分14bの厚み寸法とが、異なっていてもよい。また、例えば、第2部分14aの凹み方と第2部分14bの凹み方とが異なっていてもよい。例えば、電線22への取付作業性の向上という観点と、取付け後のめくれ抑制という観点とを鑑みると、第2部分の幅寸法の方が第2部分の幅寸法よりも大きいことが考えられる。
【0033】
また、ここでは、不織部材10は、全体として平面状のシート状に形成されているが、このことは必須ではない。例えば、不織部材10は、一部が曲げられたシート状に形成されていてもよい。この場合、例えば、第2部分14aが湾曲状に曲げられていることが考えられる。この場合、不織部材10を電線に巻付ける際に、第2部分14aが取っ掛りとなって不織部材10を電線に巻付けやすくなる。また、例えば、第2部分14bが湾曲状に曲げられていることが考えられる。この場合、不織部材10を電線に巻付けた後に、第2部分14bが電線の周方向に沿いやすくなり、第2部分14bがめくれにくくなる。
【0034】
次に、上記不織部材10を電線に取り付けた保護部材付電線について説明する。
図2は、第1実施形態に係る保護部材付電線20を示す斜視図である。
図3は、第1実施形態に係る保護部材付電線20を示す側面図である。
図4は、第1実施形態に係る保護部材付電線20を示す平面図である。
【0035】
保護部材付電線20は、電線22と、電線22の周囲に取付けられた保護部材30とを備える。
【0036】
電線22は、少なくとも1本含まれていればよい。電線22は、その長手方向の中間部分に保護部材30が外装されている。電線22は、芯線の外周に樹脂が押出被覆等されることで被覆部が形成された構成とされている。ここでは、複数の電線22が束ねられた電線束22aの例で説明する。なお、電線束22aには、光ファイバ等が電線22に沿って配設されていてもよい。電線22は、車両等の配設対象箇所に配設された状態で、車両等に搭載された各種電気機器同士を電気的に接続するものとして用いられる。なお、
図2〜
図4では、電線束22aの概形が描かれている。
【0037】
保護部材30は、上記不織部材10が電線束22aに巻付けられることで形成されている。上記したように、ここでは、第2部分14aが内側に位置すると共に第2部分14bが外側に位置するように不織部材10が電線束22aに巻付けられている。この際、第2部分14のうち凹んでいる側が外周側に位置するように巻付けられている。もっとも、第2部分14のうち凹んでいる側が内周側に位置するように巻付けられていてもよい。
【0038】
なお、電線束22aに不織部材10が巻付けられた後、当該不織部材10が巻付けられた状態を維持可能となるように保護部材30としての不織部材10の周囲にテープ90等の結束部材が巻付けられることが好ましい。この際、電線束22aに対して保護部材30が位置決めされるように保護部材30の長手方向端部と電線束22aとに亘るようにテープ90が巻付けられることがより好ましい。この際、保護部材30の長手方向中間部分にもテープ90等が巻付けられてもよい。これにより、保護部材30の口開きがより確実に抑制される。
【0039】
次に、上記不織部材10を製造する方法について説明する。
図5及び
図6は、第1実施形態に係る不織部材の製造方法の一例を示す説明図である。
【0040】
不織部材の製造方法は、シート状の不織布40を送る工程(a)と、送られている不織布40の少なくとも一方の端部を加熱しつつ、不織布40の端部を外側に広げる方向に回転するローラを端部に当てる工程(b)と、を備える。ここでは、工程(b)において、送られている不織布40の両側の端部を加熱しつつ、ローラを両側の端部にそれぞれ当てる。
【0041】
ここでは、上記不織部材の製造方法について、
図5に示されるように、不織部材製造装置50を用いて不織部材10を製造する方法を例にとり説明する。
【0042】
ここで、不織部材製造装置50の構成について説明しておく。
【0043】
不織部材製造装置50は、上流側シート搬送機構60、加熱部70及び成形部80を備えている。また、不織部材製造装置50は、必要に応じて冷却ファン54を備える場合もある。
【0044】
例えば、成形部80は基礎台52に支持される。また、加熱部70が基礎台52に直接支持されること、また、加熱部70を介して成形部80が基礎台52に支持されることも考えられる。
【0045】
<上流側シート搬送機構>
上流側シート搬送機構60は、熱可塑性樹脂を含むシート状の不織布40を予め定められた経路に沿って搬送する機構である。以下、シート状の不織布40が搬送される経路のことを搬送経路R1と称する。加熱部70、成形部80は、搬送経路R1に沿う位置に配置されている。
【0046】
上流側シート搬送機構60は、搬送経路R1における加熱部70の位置よりも上流側の位置に配置されている。上流側シート搬送機構60は、シート状の不織布40を加熱部70の位置へ送り込む。
【0047】
上流側シート搬送機構60は、一対の送り込みローラ62と送り込みローラ駆動部64とを備えている。一対の送り込みローラ62は、搬送経路R1における加熱部70の位置よりも上流側の位置において、平坦なシート状の不織布40を挟み込んで回転する部材である。
図5が示す例では、上流側シート搬送機構60は、搬送経路R1の方向に並んで配置された二対の送り込みローラ62を備えている。
【0048】
送り込みローラ駆動部64は、一対の送り込みローラ62を回転させる駆動機構である。例えば、送り込みローラ駆動部64は、モータとそのモータの回転力を一対の送り込みローラ62に伝達するギア機構とを含む。
【0049】
送り込みローラ駆動部64が一対の送り込みローラ62の両方を反対方向に回転させることの他、送り込みローラ駆動部64が一対の送り込みローラ62の一方のみを回転させることも考えられる。後者の場合、一対の送り込みローラ62の一方がシート状の不織布40を加熱部70の側(下流側)へ搬送し、一対の送り込みローラ62の他方は移動するシート状の不織布40に接して従動する。
【0050】
一対の送り込みローラ62は、例えば円柱状もしくは円筒状に形成されている。一対の送り込みローラ62各々の外周面は、シート状の不織布40に対する摩擦抵抗が高い材料で構成されていることが望ましい。例えば、一対の送り込みローラ62各々の外周面が、エラストマーなどのゴム系材料で構成されていることが考えられる。
【0051】
<加熱部>
加熱部70は、搬送経路R1を移動中のシート状の不織布40を加熱する装置である。加熱部70は、例えば熱風送風機又は赤外線ヒータなどのように非接触でシート状の不織布40を加熱する装置である。
【0052】
加熱部70は、熱可塑性樹脂を含むシート状の不織布40を加熱することにより、シート状の不織布40を塑性変形可能な程度に軟化させる。即ち、加熱部70によって加熱されたシート状の不織布40は、外力が加わって変形した後に冷却すると、冷却時の形状を維持する。
【0053】
なお、ここでは、加熱部70は、第2部分14に成形される部分、つまり、シート状の不織布40における幅方向に沿って両端側の領域を加熱している。もっとも、加熱部70は、シート状の不織布40における幅方向に沿った全体を加熱してもよい。この場合、不織部材10となったときの第1部分12の硬さと第2部分14の硬さとを異ならせるために、加熱量を変える、又は、第2部分14になる側をプレスする等を行う必要が有る。なお、シート状の不織布40における幅方向に沿った全体を加熱すると、第1部分12も、シート状の不織布40の硬さより硬くなるように成形される。
【0054】
<成形部>
成形部80は、搬送経路R1における加熱部70の位置よりも下流側の位置に配置されている。成形部80は、ここでは、成形ローラ82を含む。成形ローラ82は、上記ローラの一例である。
【0055】
成形ローラ82は、不織布40を外側に広げる方向に回転しつつ不織布40に当たっている。ここでは、シート状の不織布40の幅方向両側端部41,42に対応する位置にそれぞれ成形ローラ82が設けられている。以下、成形ローラ82のうちシート状の不織布40の幅方向一方側端部41に対応する位置に設けられた成形ローラ82を成形ローラ82aと称し、幅方向他方側端部42に対応する位置に設けられた成形ローラ82を成形ローラ82bと称することもある。
図5が示す例では、成形ローラ82a及び成形ローラ82bは、搬送経路R1の方向に並んで3つずつ配置されている。
【0056】
成形ローラ82は、例えば円柱状もしくは円筒状に形成されている。成形ローラ82各々の外周面は、シート状の不織布40に対する摩擦抵抗が高い材料で構成されていることが望ましい。例えば、成形ローラ82各々の外周面が、エラストマーなどのゴム系材料で構成されていることが考えられる。
【0057】
図5に示す例では、成形ローラ82は基礎台52との間で不織布40を挟み込んでいる。つまり、成形ローラ82は、基礎台52に向けて不織布40を押し当てつつ、この状態で回転することで不織布40を外側に押し広げようとする。成形ローラ82が基礎台52に向けて不織布40を押し当てることで、成形ローラ82がプレスの役割も果たす。また、成形ローラ82aと成形ローラ82bとで不織布40の幅方向両側をそれぞれ外側に押し広げようとすることで、不織布40が外側に押し広げられる。もっとも、成形ローラは、不織布40を両側から挟み込むように一対設けられていてもよい。
【0058】
なお、不織布40は、通常、加熱されると収縮する。従って、成形ローラ82が不織布40を外側に押し広げても、不織布40が加熱成形された不織部材10の幅寸法は、成形前の不織布40の幅寸法と同じかそれよりも小さい場合もあり得る。しかしながら、成形ローラ82が不織布40を外側に押し広げつつ加熱成形された不織部材10の幅寸法は、成形ローラ82を用いずに加熱した場合の不織部材の幅寸法よりは大きくなると考えられる。つまり、成形ローラ82によって不織布40を外側に押し広げつつ加熱成形することで、不織布40の収縮度合いを小さくすることができる。これにより、所望の幅寸法の不織部材10を得るための材料となる不織布40の幅寸法を小さくすることができ、以て軽量化及びコスト削減等を図ることができる。
【0059】
成形ローラ82aと成形ローラ82bとは幅方向に間隔をあけて設けられている。このため、
図6に示すように、不織布40のうち成形ローラ82aと成形ローラ82bとの間を通過する中間部分が不織部材10の第1部分12となる。
【0060】
また、成形部80は、図示しない成形ローラ駆動部を備えている。成形ローラ駆動部は、成形ローラを回転させる駆動機構である。例えば、成形ローラ駆動部は、モータとそのモータの回転力を各成形ローラ82に伝達するギア機構とを含む。
【0061】
なお、成形ローラ82は、自然放熱により、又は強制冷却されることによって成形ローラ82に当たる直前のシート状の不織布40の温度よりも低い温度に維持されている。そのため、成形ローラ82は、シート状の不織布40との熱交換によってシート状の不織布40を冷却する。さらに、
図5が示す例では、成形ローラ82の下流側で、不織布40は、冷却ファン54によって強制空冷されている。
【0062】
上記不織部材製造装置50を用いて、不織部材10を製造するには、例えば、以下のようにする。
【0063】
即ち、まずは、シート状の不織布40は、上流側シート搬送機構60によって搬送される。具体的には、シート状の不織布40のうち第2部分14aに成形される部分を上流方向から見て左側に配置し、第2部分14bに成形される部分を上流側から見て右側に配置する。この際、一対の送り込みローラ62にシート状の不織布40を挟持させる。そして、送り込みローラ駆動部64を駆動させて送り込みローラ62を回転させることによってシート状の不織布40を送る。
【0064】
次に、不織部材製造装置50の加熱部70によって、搬送経路R1に沿って移動中の熱可塑性樹脂を含むシート状の不織布40を加熱する。ここでは、送られているシート状の不織布40の幅方向両端部41,42を加熱部70によって加熱する。
【0065】
次に、搬送経路R1における加熱部70の位置よりも下流側の位置に配置された成形ローラ82を用いて成形される。ここでは、加熱部70によって加熱されたシート状の不織布40の幅方向両端部41,42を成形ローラ82a及び成形ローラ82bによって基礎台52に押し付けつつ外側に押し広げる。さらに、ここでは、シート状の不織布40に成形ローラ82を押し当てることで、シート状の不織布40における成形ローラ82を通過する部分を成形品の形状に拘束しつつ冷却する。
【0066】
そして、シート状の不織布40は、成形ローラ82を通過するときに成形ローラ82との熱交換によって冷却され、基礎台52に押し付けられると共に外側に押し広げられた形状で硬化する。従って、搬送されているシート状の不織布40における、成形ローラ82の位置よりも搬送経路R1の下流側の部分が不織部材10となっている。
【0067】
以上のようにして不織部材製造装置50を用いて製造された一連の不織部材10は、一単位分の不織部材10として必要な長さにカットされて用いられる。即ち、不織部材製造装置50は、複数単位分の不織部材10を連続的に製造することができる。もちろん、一単位分ごとにシート状の不織布40が不織部材10に成形されてもよい。
【0068】
もちろん、不織部材10が上記不織部材製造装置50を用いて製造されることは必須ではなく、不織部材10は、作業者の手作業により、又は、他の装置等により製造される場合もあり得る。
【0069】
第1実施形態に係る不織部材10及び保護部材付電線20によると、不織部材10がシート状の不織布40の幅方向中間部分からなる第1部分12と、シート状の不織布40の幅方向端部41,42のうち少なくとも一方の端部を含む部分であって、第1部分12よりも硬く形成された第2部分14と、を備える。このため、不織部材10を電線22に巻付ける際に、第2部分14を内側にすると、端部の変形を抑制することができる。これにより、取付作業性を向上させることができる。また、第2部分14が外側に位置するように不織部材10を電線22に巻付けると、巻付け後に端部がめくれにくくなる。
【0070】
特に、ここでは、第2部分14がシート状の不織布40の幅方向一方側端部41と幅方向他方側端部42とを含むため、取付作業性を向上させつつ、端部のめくれを抑制することができる。
【0071】
また、第1実施形態に係る不織部材の製造方法によると、(a)シート状の不織布40を送る工程と、(b)送られている不織布40の少なくとも一方の端部を加熱しつつ、不織布40の端部を外側に広げる方向に回転するローラを端部に当てる工程と、を備えるため、少なくとも片端が硬い不織部材10を容易に製造することができると共に、不織部材10の幅方向の収縮を抑制することができる。
【0072】
特にここでは、工程(b)において、送られている不織布40の両側の端部を加熱しつつ、ローラを両側の端部にそれぞれ当てるため、両端が硬い不織部材10を容易に製造することができる。
【0073】
{第2実施形態}
次に、第2実施形態に係る不織部材について説明する。
図7は、第2実施形態に係る不織部材110を示す側面図である。なお、本実施の形態の説明において、第1実施形態で説明したものと同様構成要素については同一符号を付してその説明を省略する。
【0074】
第2実施形態に係る不織部材110は、第2部分114が不織部材110の片側の端部のみに設けられている点で、第1実施形態に係る不織部材10とは異なる。
【0075】
この場合、片側の第2部分114は、不織部材110が電線束22aに巻付けられる際に、内側に位置してもよいし、外側に位置してもよい。不織部材110を電線束22aに巻付ける際に、第2部分114を内側にすると、端部の変形を抑制することができる。これにより、取付作業性を向上させることができる。また、第2部分114が外側に位置するように不織部材110を電線束22aに巻付けると、巻付け後に端部がめくれにくくなる。
【0076】
次に、上記不織部材110の製造方法について説明する。
図8は、第2実施形態に係る不織部材の製造方法の一例を示す説明図である。ここでは、
図8に示されるように、上記不織部材製造装置50の一部の構成を変更した不織部材製造装置150を用いて不織部材110を製造する方法について説明する。
【0077】
ここで、不織部材製造装置50に対する不織部材製造装置150の変更点について説明しておく。
【0078】
不織部材製造装置150の加熱部170は、送られているシート状の不織布40の幅方向一方側端部41のみを加熱している。
【0079】
また、不織部材製造装置150の成形部180の成形ローラ182bは、成形ローラ82bとは設けられる位置が変更されている。具体的には、成形ローラ182bは、シート状の不織部の幅方向中間部分に当たるように設けられている。なお、成形ローラ182bの回転の向きは成形ローラ82bと同じに設定されている。つまり、成形ローラ182bは、成形ローラ82aと反対の外方に向けて不織布40を押し広げようとしている。
【0080】
以上に示したように、不織部材製造装置150は、送られているシート状の不織布40の幅方向一方側端部41のみを加熱部により加熱するとともに、不織布40における加熱された領域の両側端部を成形ローラ82a及び成形ローラ182bにより基礎台52に向けて押しつけつつ外方に向けて押し広げている。これにより、不織部材製造装置150によって不織布40の幅方向一方側端部41のみが第2部分114とされた不織部材110が連続的に製造可能となる。
【0081】
{変形例}
次に、上記実施形態に係る不織部材10及びその製造方法の変形例について説明する。
図9は、変形例に係る不織部材210を示す側面図である。
図10は、変形例に係る不織部材の製造方法を示す説明図である。
【0082】
変形例に係る不織部材210は、少なくとも一部が曲げられている点で第1実施形態に係る不織部材10とは異なる。
【0083】
具体的には、不織部材210は、電線束22aに取付けられた際に内側となる第2部分14aを含む端部が曲げられて湾曲部16をなしている。湾曲部16は、例えば、取り付けられる電線束22aと同じ曲率半径を有するように形成される。これにより、湾曲部16を取っ掛りとして不織部材210を電線束22aに巻付けやすくなる。もっとも、湾曲部16は、取り付けられる電線束22aの曲率半径より大きくてもよいし、小さくてもよい。
【0084】
不織部材210において、湾曲部16以外の部分は、平面状に形成された平面部18をなしている。これにより、不織部材210は、略J字状に形成されている。なお、平面部18は、湾曲部16の開口(内周面)を塞がないように設定されているとよい。これにより、湾曲部16を電線束22aに取り付けやすくなる。
【0085】
上記湾曲部16は、例えば、不織部材製造装置50に型83を追加した不織部材製造装置250を用いて成形される。
【0086】
型83は、成形部180に含まれる。型83は、
図10に示すように、不織部材製造装置250において成形ローラ82の下流側に設けられる。以下では、型83についてより具体的に説明する。
図11は、型83を上流側から見た図である。
【0087】
型83は、加熱されたシート状の不織布40を不織部材210の形状に成形する成形面84を有している。ここでは、型83の本体部83aのうち上流側を向く面と下流側を向く面とを貫くように開けられた貫通孔83hの内周面が成形面84をなしている。この際、型83の本体部83aは、例えば、上流側を向く面において、下面側が上面側よりも上流側に出っ張る態様で傾斜するように形成される。これにより、貫通孔83hのうち上流側は上側が開いた溝状に形成され、貫通孔83hのうち下流側は閉環状に形成される。具体的には、成形面84は、外側成形面85と内側成形面86とを有する。
【0088】
外側成形面85は、シート状の不織布40の両主面のうちシート状の不織布40が不織部材210に成形されたときに外周側面となる側の主面を支える。外側成形面85のうち湾曲部16を成形する部分は、搬送経路R1の上流側から下流側へ向かうほど、平坦面に近い形状から外周側面に沿う環状に近い形状へ徐々に変化する形状で形成されている。また、外側成形面85のうち平面部18を成形する部分は、上流側に誘い込みの傾斜が設けられる以外は、上流側から下流側へ向けて略平坦面状に形成されている。
【0089】
図11が示す例では、型83の外側成形面85のうち湾曲部16を成形する部分における上流側の端部は、湾曲部16の外周側面よりも曲率半径が大きく形成されている。一方、型83の外側成形面85のうち湾曲部16を成形する部分における下流側の端部は、外周側面の曲率半径と同等もしくは外周側面の曲率半径よりも小さい曲率半径に形成されている。そして、外側成形面85は、上流側の端部から下流側の端部へ向かうほど徐々に曲率半径が小さくなる形状で形成されている。
【0090】
内側成形面86は、シート状の不織布40が不織部材10に成形された時の内周側面となる側の主面を成形する。内側成形面86は、外側成形面85によって曲げられたシート状の不織布40の移動を規制する。内側成形面86は、搬送経路R1の上流側から下流側へ向かって一定の形状に形成されている。
【0091】
型83は、その外側成形面85を摺動するシート状の不織布40を平坦に近い形状から成形品の形状に近い形状へ徐々に変形させる。これにより、加熱されたシート状の不織布40は、円滑に型83を通過可能となる。
【0092】
従って、型83のうち下流側における外側成形面85と内側成形面86との間の空間がシート状の不織布40を不織部材10の形状に拘束する成形通路88をなしており、型83のうち上流側における外側成形面85と内側成形面86との間の空間がシート状の不織布40を成形通路88に案内する(つまり、シート状の不織布40を徐々に不織部材10の形状に近づける)案内通路87をなしている。ここでは、貫通孔83hのうち上流側における溝状に形成された部分が案内通路87であり、下流側における閉環状に形成された部分が成形通路88である。
【0093】
型83のうち案内通路87を構成する部分がヒータなどの熱源によって加熱されない場合、即ち、型83のうち案内通路87を構成する部分の温度が加熱されたシート状の不織布40の温度よりも低い場合、シート状の不織布40は案内通路87の内周面と接触することにより冷却される。しかしながら、シート状の不織布40が成形通路88に達する前に硬化すると、シート状の不織布40を所望の形状に成形することができなくなる。
【0094】
従って、型83のうち案内通路87を構成する部分との熱交換によるシート状の不織布40の温度降下は大きくないことが望ましい。例えば、型83のうち案内通路87を構成する部分が、型83のうち成形通路88を構成する部分の材料に比べてシート状の不織布40及び空気との間の熱伝達率が小さい材料で構成されることが考えられる。また、型83のうち案内通路87を構成する部分が、不図示のヒータ又は熱風送風機などの加熱手段によって予め定められた温度に維持されることも考えられる。なお、成形ローラ82との熱交換によるシート状の不織布40の温度降下についても大きくないことが望ましい。
【0095】
加熱されたシート状の不織布40は、その両主面各々が外側成形面85と内側成形面86との各々に接触しつつ成形通路88を通過する。従って、シート状の不織布40における成形通路88を通過する部分は成形通路88と同じ形状、即ち、成形後の不織部材10の形状となる。
【0096】
また、型83のうち成形通路88を構成する部分は、自然放熱により、又は強制冷却されることによって成形通路88に入る直前のシート状の不織布40の温度よりも低い温度に維持されている。そのため、型83のうち成形通路88を構成する部分は、シート状の不織布40との熱交換によってシート状の不織布40を冷却する。
【0097】
シート状の不織布40の幅方向一方側端部41における成形通路88を通過する部分は、半円弧状に拘束された状態で冷却され、半円弧状に曲がった状態のまま硬化する。即ち、シート状の不織布40における成形通路88を通過する部分は、半円弧状に成形される。従って、移動中のシート状の不織布40の幅方向一方側端部41における、成形部80の位置よりも搬送経路R1の下流側の部分は、半筒状に成形された状態となる。その半筒状に成形された部分が不織部材10の湾曲部16である。
【0098】
型83のうち成形通路88を構成する部分は、シート状の不織布40及び空気との間の熱伝達率が高い材料で構成されていることが望ましい。例えば、型83が、ステンレス、鉄又は銅などの金属の部材であることが考えられる。
【0099】
また、型83の放熱性を高めるため、型83のうち成形通路88を構成する部分の内側面以外の面に、放熱フィンが形成されることも考えられる。
【0100】
この型83を有する不織部材製造装置250を用いて不織部材210を製造するには、以下のようにするとよい。
【0101】
即ち、不織布40が成形ローラ82を通過するまでは、第1実施形態と同様である。そして、成形ローラを通過した不織布40は、加熱した状態で搬送経路R1における成形ローラの位置よりも下流側の位置に配置された型83に送られる。
【0102】
不織布40が型83に送られると、まず、案内通路87を用いて成形される。ここでは、加熱部70によって加熱されたシート状の不織布40を平坦に近い形状から成形通路88の形状に近い形状へ徐々に変形させる。より具体的には、搬送経路R1に沿って搬送されるシート状の不織布40を案内通路87の外側成形面85に摺動させることによってシート状の不織布40を変形させる。
【0103】
次に、搬送経路R1における案内通路87の位置よりも下流側の位置に配置された成形通路88を用いて成形される。ここでは、シート状の不織布40を、成形通路88を通過させることで、シート状の不織布40における成形通路88を通過する部分を成形品の形状に拘束しつつ冷却する。
【0104】
そして、シート状の不織布40は、成形通路88を通過するときに型83との熱交換によって冷却され、成形通路88と同じ形状で硬化する。従って、搬送されているシート状の不織布40における、成形通路88の位置よりも搬送経路R1の下流側の部分が不織部材210となっている。
【0105】
なお、不織部材が曲げられて形成される場合、上記J字状の他にC字状又はU字状等に形成されていてもよい。
【0106】
なお、上記各実施形態及び変形例で説明した各構成は、相互に矛盾しない限り適宜組み合わせることができる。
【0107】
以上のようにこの発明は詳細に説明されたが、上記した説明は、すべての局面において、例示であって、この発明がそれに限定されるものではない。例示されていない無数の変形例が、この発明の範囲から外れることなく想定され得るものと解される。