【解決手段】解凍室3、放電電極5、接地電極7、電源装置15、暖熱供給装置9、第1温度センサS1、統合制御装置19を備え、解凍処理の開始時から第1温度センサの計測値が第1所定値となるまでの期間は、放電電極又は接地電極のいずれか一方が解凍対象物と接し、他方が解凍対象物との間に空間を設けて配置され、初期制御温度で暖熱を供給するように暖熱供給装置を制御するとともに放電電極に電圧を印加するように電源装置を制御する初期制御を実行し、前記初期制御が終了した時点から第1温度センサの計測値が解凍の目標温度である第2所定値となるまでの期間は、初期制御温度より低く第2所定値より高い第1制御温度で暖熱を供給するように暖熱供給装置を制御するとともに放電電極に電圧の印加を継続させるように前記電源装置を制御する第1制御を実行する。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に、図面を用いて本発明の実施形態及び変形例に係る解凍装置について説明する。以下の説明において、同一の構成については、同一の符号を用いて説明を省略する。
【0011】
〈解凍装置〉
図1に、実施形態に係る解凍装置1を示す。この解凍装置1は、解凍室3内に配置される解凍対象物Xを解凍するものである。
図1(a)は、解凍装置1の正面図であって、
図1(b)は、解凍装置1の側面の断面図である。
【0012】
解凍対象物Xは、解凍する対象である肉や魚等の食品等の冷凍品とともに、冷凍品が段ボールや塩化ビニール等の収納容器等の外装に収納される場合、この外装も含むものとする。また、冷凍品は食品に限られない。その他の冷凍品の一例としては、0℃以下の低温で保存する人や家畜の人工授精胚、分化細胞、バイオリアクタ用微生物、超伝導体利用機器等が考えられる。
【0013】
具体的には、
図2に示すように、解凍装置1は、解凍対象物Xを収納する解凍室3と、解凍対象物Xに挟まれる位置に配置される放電電極5と、放電電極5を挟む解凍対象物Xの外側に絶縁体である空間(空気層)を設けて配置される接地電極7と、解凍室3に暖熱を供給する暖熱供給装置であるヒートパネル9と、解凍室3に冷熱を供給する冷熱供給装置である冷却装置13と、放電電極5に解凍対象物Xを解凍する電圧を印加するように制御する電源装置15と、解凍対象物Xの表面温度を計測する第1温度センサS1と、解凍室内の温度を計測する第2温度センサS2とを備える。また、解凍装置1は、ヒートパネル9及び冷却装置13を制御する温度制御装置17と、解凍するための制御を実行する統合制御装置19を備える。
【0014】
なお、
図2において、解凍対象物Xに付されるX11〜X65は、解凍対象物Xを識別するために付された符号である。
【0015】
図2に示す例は、放電電極5及び接地電極7が平面状であって、各放電電極5は複数の解凍対象物X間と接して配置されるため、接地電極7は解凍対象物Xとは接することなく空間(空気層)に挟まれるものとする。また、解凍対象物Xは1列で配置されても良いし、
図2に示すように複数列(
図2の場合、6列)で配置されても良い。
【0016】
《解凍室》
解凍室3は、解凍の際に、内部に解凍対象物Xが収納される。この解凍室3は、解凍対象物Xを搬入又は搬出する際には開かれ、解凍対象物Xを解凍する際には閉じられる扉31を有し、解凍時には密閉されることが好ましい。解凍室3のサイズや形状は限定されない。また、
図1には、解凍室3が上下開閉式のシャッターを扉31として有する一例を示すが、解凍室3の扉の形状も限定されない。
【0017】
《放電電極》
放電電極5は、電源装置15によって電圧が印加される。
図2に示すように、解凍対象物Xが複数存在する場合、その複数の解凍対象物X間に配置される。このとき、放電電極5は、解凍室3内に固定されてもよいが、可動式であってもよい。
【0018】
解凍装置1が備える放電電極5の数は、限定されないが、接地電極7と交互に設置される。放電電極5が複数存在する場合、解凍対象物Xの量に応じて電圧を印加する電極の数を変更してもよい。また、複数の放電電極5を利用するとき、固定の放電電極5と可動式の放電電極5との組み合わせであってもよい。なお、複数の放電電極5を利用する場合、各放電電極5の電源として同一の電源装置15を利用することが可能であり、同一の電圧で同一の位相であるものとする。
【0019】
放電電極5の寸法は、空間への放電を減らし、解凍対象物Xへの放電効率を上げるために、放電電極5の幅・奥行とも、解凍対象物Xが接触する面の幅・奥行きよりも小さくしないものとし、対となる接地電極7の寸法と同じあるいは小さくすることが望ましい。
【0020】
解凍対象物X同士の隙間に放電電極5を差し込んで使用する場合、差し込みに容易であれば、放電電極5の形状は限定されず、例えば、
図4乃至
図7に示すように、様々な形状が考えられる。
【0021】
図4は、平面状(板状)で、表面に直線形の溝51を有し、一端に持ち手52を有する放電電極5の平面図の一例である。また、
図5(a)及び
図5(b)は、
図4の放電電極5の断面の一例である。
【0022】
例えば、
図4に示すように、溝51を有する放電電極5は、凸部や角部を多く備えることで、放電効果を向上させるとともに、イオンの発生を容易にすることができる。イオンが発生することで、放電電極5の周囲ではイオン風により空気中の熱伝導が促進される。また、放電電極5の溝51部分の凸部や角部からは、オゾンが発生しやすくなる。これにより、オゾンの発生によって、解凍対象物Xの解凍で生じる異臭や腐敗菌を分解することができる。さらに、放電電極5は、溝51により表面積が増加し、溝51がない場合と比較して伝熱面積が広がるため、放熱機能を有することができる。
【0023】
放電電極5が平面状の場合、
図5(a)に示す断面図のように、放電電極5の片面のみに溝51を設けてもよいし、
図5(b)に示すように、放電電極5の両面に溝51を設けてもよい。仮に、
図2に示すように、放電電極5の両面に解凍対象物Xが配置されるとき、両面に配置される各解凍対象物Xの条件が同一になるように放電電極5が形成されることが好ましい。したがって、放電電極5の両面に解凍対象物Xが配置されるとき、
図5(a)に示すように、放電電極5の片面に溝51が設けられる形状より、
図5(b)に示すように放電電極5の両面に溝51が設けられる形状が好ましい。
【0024】
図4は、直線形の溝51の一例であるが溝の形状は限定されず、例えば、波型の溝であってもよい。
【0025】
溝51の方向も限定されないが、例えば、放電電極5が、複数の解凍対象物X間に差し込むものである場合、この溝51は、放電電極5の解凍対象物X間への挿入の方向に沿って形成することで、挿入を容易にすることができる。
【0026】
また、放電電極5が、解凍対象物Xと解凍対象物Xとの隙間に差し込むことができるものであるとき、
図4に示すように、放電電極5は、差し込み時に利用する持ち手52を備える。なお、この持ち手52は、絶縁体材料で生成される必要がある。
【0027】
図6は、平面状で、外周部に絶縁体材料のカバー部53を有する放電電極5の平面図の一例である。このようにカバー部53を設けることで、放電電極5の外周部からの不要な放電を防止し、平面状の放電電極5の中央から解凍対象物Xへの放電効果を向上させることができる。
【0028】
放電電極5が平面状である場合、
図4乃至
図6に示すように、四隅の形状がR形状であることが好ましい。これにより、解凍対象物X間に放電電極5を挿入する際、放電電極5の角部による解凍対象物Xの損傷を防止することができる。
【0029】
図7は、棒状(円柱状)で、外周に直線形の溝51を有する放電電極5の斜視図の一例である。この場合も、溝51を有することで、放電電極5は、凸部や角部を多く備え、放電効果を向上させることができる。また、放電電極5は、溝51を有することで、イオンの発生を促進するとともに、伝熱面積が広がり、放熱機能を有することができる。さらに、放電電極5の凸部や角部からは、オゾンが発生しやすくなり、オゾンの発生によって、解凍対象物Xの解凍で生じる異臭や腐敗菌を分解することができる。
【0030】
図7は、直線形の溝51の一例であるが溝の形状は限定されず、例えば、波型の溝であってもよい。また、溝51の方向も限定されないが、例えば、放電電極5を複数の解凍対象物X間に差し込むものである場合、この溝51は、放電電極5の解凍対象物X間への挿入の方向に沿って形成することで、挿入を容易にすることができる。
【0031】
なお、放電電極5が棒状である場合、先端部を丸くすることで、解凍対象物Xの損傷を防止することができる。
【0032】
図示は省略するが、放電電極5の形状は、平面状及び棒状に限られず、角部からイオンの放出やオゾンの放出を容易にするために、同時に表面積を増やし、伝熱を容易にするために、格子状、網目状、スリット状、グレーチング状等の形状であってもよい。なお、いずれの形状の放電電極であっても、解凍対象物X間への挿入が容易であることが好ましい。
【0033】
放電電極5の設置は解凍対象物Xと空間(空気層)を挟んで接地電極7と対に設置することが望ましい。
【0034】
放電電極5の材質は限定されないが、移動やメンテナンスを容易にするため、軽量であることが好ましい。
【0035】
解凍室3の床面に放電電極5を可動用のレール(図示せず)を備え、そのレール上で放電電極5を移動させてもよい。または、解凍室3の天井に放電電極5を可動用の吊り下げ式レール(図示せず)を備え、そのレールに沿って放電電極5を移動させてもよい。
【0036】
図示を省略するが、例えば、この放電電極5と電源装置15とは、解凍室3内に設けられるコネクタ等に放電電極5から延びるケーブル等が差し込まれることで接続される。解凍室3には、電源装置15と接続可能なコネクタを複数備え、解凍に必要な数の放電電極5のみをコネクタに接続して利用することができるものとする。また、電源装置15によって放電電極5に電圧が印加される間、このコネクタにはロック機能がかかり、放電電極5のケーブルはコネクタから外れないように形成される。
【0037】
《接地電極》
接地電極7は、接地され、放電電極5と対に配置される。接地電極7は、解凍室3内で固定であってもよいし、可動式であってもよい。
図2に示す一例の接地電極7は、解凍対象物X(X21〜X25)と解凍対象物X(X31〜X35)との間、解凍対象物X(X41〜X45)と解凍対象物X(X51〜X55)との間に、接地電極7の両側に空間(空気層)を設けて、配置されるものである。また、後述するが、
図2に示す例では、全解凍対象物Xの外側(解凍対象物X11〜X15の外側及び解凍対象物X61〜X65の外側)に配置されるヒートパネル9が接地電極7と兼用される。
【0038】
なお、解凍室3を広く使いたい場合等必要な場合、解凍室3内の天井、内壁又は解凍対象物Xを載置する床面を接地電極7として使用してもよい。この場合、接地電極7とする解凍室3の天井や内壁の少なくとも一部を金属製の接地部材とし、この接地部材を接地する。
【0039】
解凍室3が備える接地電極7の数は限定されず、複数備えてもよい。複数の接地電極7を利用するとき、固定の接地電極7と可動式の接地電極7との組み合わせであってもよい。この時、接地電極7と放電電極5は交互に対で設置する。
【0040】
解凍対象物X同士の隙間に接地電極7を差し込んで使用する場合、差し込みに容易であれば、接地電極7の形状及び構成は限定されず、例えば、
図8及び
図9に示すように、様々な形状及び構成が考えられる。
【0041】
解凍対象物X同士の間に隙間なく差し込んで使用する接地電極7の場合、解凍対象物Xとの間に空間を設けることは出来ないため、
図8及び
図9に示すように、空間の絶縁物である空気の代わりに絶縁体材料71で接地部材72を覆う接地電極7を使用し絶縁機能を持たせる。また伝熱面積を広げることで解凍対象物Xから冷熱の伝熱を容易にするために接地電極7に溝73を設ける。
【0042】
図8(a)は、平面状で、表面に直線形の溝73を有する接地電極7の一例の平面図である。また、
図8(b)は、
図8(a)の接地電極7の断面図の一例である。
図8に示す接地電極7は、絶縁体材料71が平面状の接地部材72を覆うものである。
【0043】
図9(a)は、棒状で、外周に直線形の溝73を有する接地電極の一例の斜視図である。また、
図8(b)は、
図9(a)の接地電極7の断面図の一例である。
図9に示す接地電極7は、絶縁体材料71が棒状の接地部材72を覆うものである。
【0044】
例えば、
図8及び
図9に示すように、溝73を有する接地電極7は、凸部や角部を多く備えることで放電効果を向上させることができるとともに、伝熱面積が広がることで放熱機能を有することができる。
【0045】
なお、図示を省略するが、この絶縁体材料71に導電用の微細孔を設けることが出来る。また、
図8及び
図9に示す接地電極7の溝73は、直線形の一例であるが溝の形状は限定されず、波型の溝であってもよい。
【0046】
接地電極7の両面に解凍対象物Xが配置されるとき、両面に配置される各解凍対象物Xの条件が同一になるように形成されることが好ましい。
【0047】
図示は省略するが、放電電極5に持ち手を備えることで、放電電極5の移動や最適な場所への設置を容易にすることができる。なお、この持ち手は絶縁体で生成される必要がある。
【0048】
接地電極7の大きさは、放電電極5よりも大きくする。これにより、放電電極5の電場の効率をあげることができる。また、接地電極7が、放電電極5からの放電を、解凍対象物Xを通して、十分受け取ることができる。
【0049】
接地電極7の材質は限定されないが、移動やメンテナンスの容易のため、軽量であることが好ましい。
【0050】
図示を省略するが、例えば、この接地電極7は、解凍室3内に設けられるコネクタ等に接地電極7から延びるケーブル等が差し込まれることで接地される。解凍室3には、接地に利用可能なコネクタを複数備え、解凍に必要な数の接地電極7のみをコネクタに接続して利用することができるものとする。また、電源装置15によって放電電極5に電圧が印加される間、このコネクタにはロック機能がかかり、接地電極7のケーブルはコネクタから外れないように形成される。
【0051】
《ヒートパネル》
ヒートパネル9は、解凍対象物Xの解凍を促進するため、解凍室3内の温度を上昇させる。特に、ヒートパネル9は、解凍対象物Xの周囲に配置され、ヒートパネル9の熱により解凍対象物Xの表面を温めて解凍対象物Xの解凍を促進する。例えば、ヒートパネル9は、解凍室3内の温度を30℃〜70℃程度にまで上昇させることができる能力を有することが好ましい。
【0052】
ヒートパネル9は、解凍室3の内壁側で、解凍対象物Xの周囲に配置することが出来る。このとき、解凍対象物Xを解凍するのに必要な熱量を得るために、解凍室3に複数のヒートパネル9を配置することが出来る。
【0053】
また、
図2に示すように、ヒートパネル9を導電性部材で構成し、接地することで、ヒートパネル9を接地電極7と兼用することが可能である。この場合、接地電極7となるヒートパネル9と解凍対象物Xとの間は、密に接触することなく、空間(空気層)が形成されている。このため、放電時に空間にイオン風が発生する。この電極近傍に発生するイオン風によって空気中の熱伝導が促進され、解凍室3内の空気の熱交換を効率的良く実行することが可能になる。内壁を接地電極7とする場合、このヒートパネル9は、その接地電極7の障害にならないように配置する必要がある。
【0054】
また、暖熱を供給する装置を解凍室3内に備えず、解凍室3外に設置される装置から解凍室3内に暖熱が供給されるように構成してもよい。さらに、暖熱を供給する装置を解凍室3内に備える場合であっても、解凍室3外に配置される装置と併用して暖熱を供給するように構成してもよい。
【0055】
《冷却装置》
冷却装置13は、解凍された解凍対象物Xの品質を劣化させないため、解凍室3内の温度を冷蔵保存温度に冷却する。
【0056】
なお、
図2に示す例では、解凍室3内の温度を変更する機構として、温度を上昇させる暖熱供給装置であるヒートパネル9と、温度を低下させる冷却装置13とで区別しているが、エアコンのように一つの熱交換システムで温度の上昇及び低下を制御させるようにしてもよい。
【0057】
また、解凍室3を冷蔵設備内に設置する場合は、解凍後にその冷蔵設備から解凍室3に冷蔵保存用の冷熱を供給して、解凍対象物Xの冷蔵保存を可能にしても良い。
【0058】
その他に、解凍装置1を冷蔵設備の傍に設置する場合は、その冷蔵装置等から解凍室3に冷熱が供給されるように構成してもよい。
【0059】
解凍室3内の解凍対象物Xを冷蔵保存する時、解凍室3外の複数の冷却装置等から冷熱が解凍室3内に供給され、解凍室3内の解凍対象物Xの温度を冷凍保存温度に維持してもよい。
【0060】
(放電電極及び接地電極の配置)
図2に示すように、複数の放電電極5(5a〜5c)と接地電極7(7a〜7d)を利用して複数の解凍対象物X(X11〜X65)を解凍する際、
図2に示すように放電電極5と接地電極7とを交互に配置することで、放電効果を向上させるとともに、解凍を促進させることができる。
【0061】
図2に示す例において、解凍装置1では、解凍対象物Xと放電電極5とは接して配置されるが、解凍対象物Xと接地電極7との間には空間(空気層)を設けて配置される。具体的には、解凍対象物Xが解凍室3の内壁に対向する面にはヒートパネル9と兼用される第1接地電極7aを配置し、次に空間(空気層)を設け、解凍対象物X(X11〜X15)を第1放電電極5aに接して配置する。そしてその放電電極5aの他方の面に接して解凍対象物X(X21〜X25)を配置する。また、解凍対象物X(X21〜X25)のもう一つの面に空間を設け、第2接地電極7bを配置する。このように接地電極7(7b,7c)と放電電極5(5a〜5c)を対にして交互に配置し、解凍室3のもう一つの内壁に対向する解凍対象物X(X61〜X65)の側に空間を設けて配置する電極が接地電極7(
図2では、ヒートパネル9と兼用される第4接地電極7d)になるように配置する。
【0062】
一方、仮に、接地電極7と解凍対象物Xとが接して配置される場合、解凍対象物Xの反対側に配置する放電電極5との間には空間(空気層)を設ける。
【0063】
すなわち、解凍対象物Xは放電電極5と接地電極7のうち、片方の電極(例えば放電電極5)とだけ接するように設置し、他方の電極(例えば接地電極7)との間には、空間を設けるものとする。
【0064】
放電電極5、解凍対象物X及び接地電極7が空間なく全て接触して配置されると、間に絶縁物である空気がなくなるため、放電電極5と接地電極7との間で通電し、放電電極5と接地電極7間の解凍対象物Xに多大なジュール熱が発生し煮える状況が発生する。これを防止するため、解凍対象物Xといずれかの電極5,7との間に空間を設け、放電電極5と接地電極7間で直接通電するのを防止し、放電の効果を向上させることができる。
【0065】
同時に解凍対象物Xといずれかの電極5,7との間に空間を設けることで、解凍対象物Xの冷熱をその空間に放出することができる。したがって、複数の解凍対象物Xのうち中央に配置される解凍対象物Xの冷熱の放出を容易にし、解凍を促進させることができる。
【0066】
複数の解凍対象物Xが配置されるとき、放電電極5は、解凍対象物Xが解凍室3の内壁と対向する面よりも、
図2に示すように、解凍対象物Xと解凍対象物Xとの間に配置させることが好ましい。解凍室3の内壁側に放電電極5が配置された場合、解凍室3の内壁へ放電が発生する可能性があり、これを防止する必要があるためである。
【0067】
放電電極5と接地電極7が平面状であって、電極の表裏に解凍対象物Xを配置する場合、複数の解凍対象物Xでの解凍が均一に進むように、電極に対して複数の解凍対象物Xの条件が同一となるように、電極及び解凍対象物Xを配置することが好ましい。
【0068】
通常、複数の解凍対象物Xの集合が解凍室3内に存在する場合、外側の解凍対象物Xから解凍が進み、中央に配置される解凍対象物Xは解凍が遅くなる。これに対し、解凍装置1では、複数の電極5,7を使用した放電によって解凍を促進させるとともに、解凍対象物X間の空気の流れによっても解凍を促進させることができる。したがって、中央に配置される解凍対象物Xの解凍も促進され、複数の解凍対象物Xの解凍時間の均一化を図るとともに、解凍に要する時間を短縮させることができる。
【0069】
《第1温度センサ》
第1温度センサS1は、解凍対象物Xの表面温度を測定するものである。第1温度センサS1は、赤外線センサであってもよいし、解凍対象物Xに直接接触して測定するセンサであってもよい。放電電極5、接地電極7、ヒートパネル9、解凍対象物X等の位置関係や解凍対象物Xの性質により、解凍対象物Xの解凍状況が異なる。そのため、同じ解凍対象物Xであっても場所によって表面温度が異なり、複数の解凍対象物Xが存在する場合にも各解凍対象物Xの表面温度は異なる。したがって、必要な場所の温度を計測できるように、解凍装置1は、第1温度センサS1を、複数備えていることが好ましい。
【0070】
《第2温度センサ》
第2温度センサS2は、解凍室3内の温度を測定するものである。この解凍室3内の雰囲気の温度を測ることができる温度センサであれば、どのようなものでもよい。放電電極5、接地電極7、ヒートパネル9、解凍対象物X等の位置関係や解凍対象物Xの性質により、解凍室3内でも場所によって温度が異なる。したがって、必要な場所の温度を計測できるように、解凍装置1は、第2温度センサを、複数備えていることが好ましい。
【0071】
《統合制御装置》
統合制御装置19は、電源装置15及び温度制御装置17を制御することで、解凍装置1による解凍を制御する。このとき、統合制御装置19は、第1温度センサS1から、解凍対象物の表面温度の計測値が入力されると、その値に応じて制御する。また、統合制御装置19は、第2温度センサS2から、解凍室3内の温度の測定値が入力されると、その値に応じて制御することが出来る。
【0072】
ここで、
図3(a)及び
図3(b)を用いて統合制御装置19によって解凍装置1が制御される各処理について説明する。
【0073】
(初期制御)
解凍を開始する際、
図3(a)に示すように、初期制御が開始され、統合制御装置19は、放電電極5に電圧を印加するように電源装置15を制御する。また、統合制御装置19は、初期制御において、ヒートパネル9が解凍室3に初期制御温度v0の暖熱を供給するよう温度制御装置17を制御する。この初期制御は、解凍対象物Xの解凍を促進させる制御である。初期制御温度v0は、解凍対象物Xの表面温度が氷結温度(凍結温度)以下に維持され、かつ、解凍対象物Xの解凍を促進させる温度であって、解凍対象物Xの種類毎に予め定められる。
【0074】
統合制御装置19は、第1条件に達すると、初期制御を終了する。第1条件は、解凍対象物Xの表面温度、すなわち、第1温度センサS1の計測値が第1所定値h1に達した場合である。
【0075】
この第1所定値h1は、解凍対象物Xの温度特性が、氷の比熱による温度上昇から氷の融解を主とする温度上昇に変化する温度である。第1所定値h1も、解凍対象物Xの種類毎に予め定められるものであり、ヒートパネル9の発する暖熱と、解凍対象物Xの有する氷の冷熱とがバランスし、解凍対象物Xの温度上昇が緩やかになる温度であり、同じタイミングで解凍室3内の温度上昇が緩やかになる。なお、解凍対象物Xの発する冷熱とは、氷の比熱、融解熱及び蒸発熱である。
【0076】
このように、解凍対象物Xの表面温度が氷結温度以下に維持されるように初期制御温度v0及び第1所定値h1が定められるため、初期制御においては、解凍対象物Xの品質が劣化しないように解凍が促進される。
【0077】
(第1制御)
初期制御が終了すると、
図3(a)に示すように、第1制御が開始する。この第1制御は、解凍対象物Xの解凍の促進のため、解凍対象物Xの表面温度が冷蔵保存温度である目標温度(h2)になるようにする制御であり、初期制御では、解凍室3内の温度を比較的急速に上昇させるのに対し、第1制御では、解凍室3内の温度を初期制御と比較して緩やかに上昇させる。すなわち、統合制御装置19は、初期制御で急速に解凍対象物Xの解凍を進め、第1制御では初期制御と比較して緩やかに解凍対象物Xの解凍を進めるよう制御する。また、第1制御では、解凍室3内の温度が過度に上がり、解凍対象物Xの表面だけの解凍が進み内部が解凍しない、各温度(解凍室3内の温度、解凍対象物Xの表面と内部の温度)のバランスが崩れた状態を防ぐように解凍室3内の温度を制御する。
【0078】
統合制御装置19は、第1制御において、放電電極5への電圧の印加を継続するように電源装置15を制御する。また、統合制御装置19は、第1制御において、ヒートパネル9が解凍室3に第1制御温度v1の暖熱を供給するよう温度制御装置17を制御する。この第1制御温度v1は、解凍対象物Xが解凍され、解凍対象物Xの表面温度が過度に上がらないように、解凍対象物Xの種類毎に定められる。また、第1制御温度v1は、初期制御温度v0より低く、目標温度(第2所定値h2)より高い値である。なお、目標温度である第2所定値h2は、解凍対象物Xの品質を維持するのに適した冷蔵温度である。
【0079】
統合制御装置19は、第1制御温度v1として固定の値を利用するのではなく、複数の値を段階的に利用してもよい。これにより、解凍対象物Xの表面の解凍が異常に進み、その結果、解凍室3内で発生する温度上昇(
図3(b)を用いて後述)を防止することができる。
【0080】
統合制御装置19は、第2条件に達すると、第1制御を終了する。第2条件は、解凍対象物Xの表面温度、すなわち、第1温度センサS1の計測値が第2所定値h2に達した場合である。
【0081】
(第2制御)
第1制御が終了すると、
図3(a)に示すように、第2制御が開始する。この第2制御は、解凍された解凍対象物Xが目標温度(h2)に維持されるようにする制御である。
【0082】
統合制御装置19は、第2制御において、ヒートパネル9による暖熱の供給を停止するように温度制御装置17を制御する。また、統合制御装置19は、冷却装置13が解凍室3に目標温度である第2制御温度v2の冷熱を供給するよう温度制御装置17を制御する。
【0083】
なお、統合制御装置19は、第2制御において、電源装置15による電圧の印加を終了するよう制御することができる。または、統合制御装置19は、第2制御の間に放電電極5に電圧を印加する場合、解凍時と同じ電圧を継続印加するか、あるいは解凍対象物Xにより解凍対象物Xの内部が再凍結しない程度の電圧を印加するよう、制御してもよい。
【0084】
また例えば、第3制御において、解凍対象物Xを冷蔵保存する際、統合制御装置19は、解凍対象物Xの両側及び解凍対象物X間に存在する全ての電極5,7に低電圧を印加するよう電源装置15を制御してもよい。ここで印加する電圧は、全ての電極5,7において放電が発生せず、単に解凍対象物Xの電位のみを上げるものとする。このように電位を上昇させることにより、冷蔵保存される解凍対象物Xの鮮度の維持が可能となる。
【0085】
(第3制御)
仮に、
図3(b)に示すように、第1制御において、第3条件に達した場合、第1制御を終了し、第3制御を開始する。第3条件は、第2温度センサS2の計測値、すなわち、解凍室3内の温度が、第3所定値h3に達した場合である。この第3制御は、解凍室3内の急激な温度上昇を防止したうえで、解凍対象物Xの解凍を促進する制御である。
【0086】
統合制御装置19は、第3制御において、例えば、解凍対象物Xの表面温度(第1温度センサS1の計測値)と、目標温度(第2所定値h2)との差分を求め、求めた差分が予め定められる値D1よりも大きい場合、
図3(b)に示すように、ヒートパネル9が解凍室3に第3制御温度v3の暖熱を供給するよう温度制御装置17を制御する。また、例えば、統合制御装置19は、求めた差分が値D1よりも小さい場合、ヒートパネル9による解凍室3への暖熱の供給を停止するよう温度制御装置17を制御する。
【0087】
ここで利用する値D1は、解凍対象物Xの表面温度が低く、仮に、解凍室3への暖熱の供給を終了し、冷熱の供給を行うと仮定した場合、解凍対象物Xの表面温度が目標温度(第2所定値h2)に到達するのに長い時間を要すると判断するための値である。また、この値D1は、解凍対象物Xの種類毎に予め定められる。第3制御温度v3は、第1制御温度v1より低く、第2制御温度v2よりも高い値である。
【0088】
解凍室3内の温度の急上昇する例としては、解凍室3内の温度が第3所定値h3以上に急上昇する場合がある。
図3(b)に示すように、解凍対象物Xの温度が第1所定値h1に到達するのとほぼ同じタイミングで、解凍室内の温度上昇が緩やかになり、その後、第3条件で第3所定値h3以上となる場合もある。
【0089】
また、統合制御装置19は、解凍対象物Xの表面温度が目標温度である第2所定値h2に達した時点(第2条件を満たす時点)で、第3制御を終了し、第2制御を開始し、解凍室3内を目標温度(h2)に維持し解凍対象物Xを冷蔵保存する。
【0090】
なお、解凍が終了して冷蔵保存される期間には、解凍対象物X内が凍ることのないように印加電圧を維持するかそれよりも低い印加電圧で放電させるように制御する。
【0091】
また、保存の期間が短時間である場合、印加していた電圧を断とし、放電しないように制御することが出来る。
【0092】
なお、統合制御装置19は、解凍室3と離れた場所に配置されていてもよい。例えば、解凍室3は、通信手段を有するトラックや船等の輸送手段に備えられるとともに、統合制御装置19のみ配送センター等に備えられ、輸送中の解凍対象物Xを統合制御装置19から遠隔操作によって制御するように構成してもよい。
【0093】
また、図示を省略するが、解凍装置1は、ファン、弁、方向板、紫外線発光源、ロック機能、持ち上げ装置、ストッパー等を備えてもよい。
【0094】
ファンは、解凍室3内の温度を均一にするように空気を循環させるものである。例えば、ファンは、解凍室3の天井、床、内壁に設置され、第1温度センサS1及び第2温度センサS2の計測値に応じ、統合制御装置19に制御されることで、解凍室3内の空気を循環させる。解凍装置1は、複数のファンを備え、それぞれを解凍室3内の異なる場所に設置することができる。また、ファンは、その回転数を制御可能であり、風を送る方向を制御可能である。さらに、複数のファンは、それぞれ独立して制御可能とする。また、ファンは、放電電極5からファンへ放電されないように構成される。
【0095】
弁や方向板は、暖熱や冷熱の方向や流量を調整するものである。例えば、弁や方向板は、解凍室3の天井、床、内壁の流れが発生しやすい場所やファンの付近に配置され、第1温度センサS1及び第2温度センサS2の計測値に応じ、統合制御装置19に制御されることで、空気の流れを調節し、解凍室3内での温度を調節する。また、弁や方向板は、放電電極5からファンへ放電されないように構成される。
【0096】
紫外線発光源は、解凍室3内において、殺菌効果を有する紫外線を発光する紫外線ランプ等である。
【0097】
ロック機能は、放電電極5に電圧が印加されて放電されている間、解凍室3の扉をロックするロック機能である。
【0098】
持ち上げ機能は、解凍室3内に複数の解凍対象物Xが配置され、解凍対象物X間に放電電極5、接地電極7、伝熱部材11を挿入するために、解凍対象物X間に隙間が必要となる場合、その隙間を作る目的で収納容器を持ち上げる機能である。解凍対象物Xを持ち上げる設備は、解凍対象物Xを挟んで持ち上げる方法でも、解凍対象物Xを下から持ち上げる方法であってもよいが、解凍室3内に常設で設置される場合、持ち上げ機能は、絶縁体で形成される。
【0099】
ストッパー機能は、解凍室3内で解凍対象物Xが倒れたり、ずれたりすることのないように、また解凍対象物Xが放電極と接地極の両方に接しないように空間を十分設けるように、解凍対象物Xを支持し、位置をずらさないように、するものである。ストッパー機能は、絶縁物で形成される。
【0100】
上述したように、解凍装置1によれば、放電電極5及び接地電極7で、空間を設けて解凍対象物Xを設置することにより、解凍対象物Xの内部に微弱電流を流し、微弱なジュール熱を発生させ、解凍されにくい解凍対象物Xの内部の解凍を促進させることができる。また、解凍装置1によれば、ヒートパネル9によって解凍対象物Xの外側から温めることで、解凍対象物Xの外側からの解凍を促進させることができる。したがって、解凍装置1は、解凍対象物Xを内側及び外側から温めて解凍を促進することができる。
【0101】
また、電極を設けずヒートパネル9だけによって解凍対象物Xの外側から温めることで解凍を進める場合や何らかの事情で電極が使用できない場合、複数の解凍対象物Xを解凍する際、複数の解凍対象物Xの間に伝熱部材11が配置される。これにより、複数の解凍対象物Xがある場合であっても、解凍の進みが遅くなりがちな中央の解凍対象物Xであってもその解凍を促進させることができる。
【0102】
〈変形例1〉
図10に実施形態の変形例1に係る解凍装置1Aの構成図を示す。変形例1に係る解凍装置1Aは、
図2を用いて上述した解凍装置1と比較して、暖熱供給装置としてヒートパネル9に代えてファンヒータ10を備える点で異なる。
【0103】
ファンヒータ10は、ヒートパネル9と比較し、暖熱供給力が大きい。一方、ファンヒータ10は、板状のヒートパネル9とは違い接地電極7の代替として使用することは出来ない。したがって、暖熱供給装置としてファンヒータ10を利用する場合、全解凍対象物Xの両側に接地電極7(第1接地電極7a及び第4接地電極7d)を配置する。
【0104】
ここで、外側に第1接地電極7aを配置し、次に空間を設け解凍対象物X11〜X15を配置した場合、次は解凍対象物X11〜X15に接して第1放電電極5aを配置し、そして解凍対象物X21〜X25を第1放電電極5aに接するように配置する。すなわち第1接地電極7aと第1放電電極5aを空間と解凍対象物Xを挟んで配置する。なお、接地電極7と放電電極5の間に空間に加え解凍対象物Xを単数列ばかりではなく複数列を設けても良い。
【0105】
なお、
図10は、各電極5,7を解凍室3の側壁と平行に設置する場合の例であるが、これに限定されない。ファンヒータ10を用いる場合は、図示を省略するが、各電極5,7を解凍装置1の床面及び天井と平行に設置し、解凍対象物Xを各電極5,7の上側に積層しても良い。
【0106】
ファンヒータを有する場合も、
図3を用いて上述したように、解凍の際には、統合制御装置19により、センサS1,S2の計測値に応じて制御が実行される。
【0107】
〈変形例2〉
図11に実施形態の変形例2に係る解凍装置1Bの構成図を示す。変形例2に係る解凍装置1Bは、
図2を用いて上述した解凍装置1と比較して、放電電極5及び接地電極7を備えず、解凍対象物X間に伝熱部材11が配置される点で異なる。
【0108】
伝熱部材11は、例えば、
図11に示すように電極を設置していない、ヒートパネル9等の暖熱供給装置から供給される暖熱のみで解凍する場合に、複数の解凍対象物X間に配置され使用することができる。あるいは、故障等で電極への電圧の印加がストップした時、あるいは解凍後の冷蔵保存期間に解凍対象物Xの内部の冷熱を放熱する必要が生じた時等、放電が行われていないタイミングにおいて、伝熱部材を解凍対象物X間の隙間に差し込んで、解凍対象物Xの冷熱を解凍室3内に放出させるために使用する。
【0109】
この伝熱部材11は、例えば、アルミニウムや銅等の熱伝導性の高い材質で形成される。
【0110】
伝熱部材11は、解凍対象物Xの熱を放出するものであるから、解凍対象物X間に配置する際、解凍対象物Xと解凍対象物Xとの間からはみ出されるものとすることで、解凍対象物Xからの冷熱の放出効率を向上させることができる。
【0111】
例えば、伝熱部材11の形状が平面状の場合、
図12に示すように、伝熱面積を広げるように、直線形の溝111を設ける。また例えば、伝熱部材11は、
図13に示すようなL字型や
図14に示すようなT字型に形成され、解凍対象物X間からはみ出される。
【0112】
溝111の方向は限定されないが、伝熱部材11を複数の解凍対象物X間に配置する構成の場合、この溝111は、伝熱部材11の挿入の方向に沿って形成することで、挿入を容易にすることができる。
【0113】
また、図示を省略するが、伝熱部材11も持ち手を備え、解凍対象物X間からの取り出しを容易にさせることができる。
【0114】
図11に示す一例のように、電極を設置していない時は、伝熱部材11は、縦方向の、解凍対象物X11〜X15,解凍対象物X21〜X25、解凍対象物X31〜X35、解凍対象物X41〜X45、解凍対象物X51〜X55、解凍対象物X61〜X65の夫々の間に配置することができる。また、同時に横方向の、各解凍対象物X間(例えば、X11とX12間、X12とX13間、〜、X63とX64間、X64とX65間等)に配置される。なお、伝熱部材11は、全ての解凍対象物X間に配置されなくても良い。
【0115】
これら解凍対象物Xの温度の低い部分は、解凍対象物Xの塊の内側にあるため、解凍されにくい。したがって、伝熱部材11によって、冷熱を解凍室3内に放出し、解凍を促進させる。
【0116】
伝熱部材11を用いて解凍する場合、電圧の印加がされることはないが、
図3を用いて上述したように、解凍の際には、統合制御装置19により、センサS1,S2の計測値に応じて温度のみの制御が実行される。
【0117】
なお、解凍装置では、放電電極5に電圧を印加していないときは放電電極5及び接地電極7を伝熱部材として使用しても良い。その場合、電極が配置されていない解凍対象物X間の隙間に、さらに伝熱部材11を配置しても良い。
【0118】
上述した実施形態及び変形例では、解凍対象物Xに接して配置する一例で説明したが、放電電極5を予め解凍対象物Xを冷凍する際に差し込み、解凍対象物Xを放電電極5とともに冷凍し、解凍の際に利用することができる。また、この放電電極5を伝熱部材11として兼用して、利用してもよい。
【0119】
〈変形例3〉
イカ・エビ等の食品の場合、食品を水中に入れ、氷柱として冷凍される。このような解凍対象物Xを水溶液とともに容器に入れて氷柱を作成する場合、放電電極5をあらかじめ容器の中央部に立てて氷柱を作成する。この時、放電電極5の上部で氷柱から空気中に出る部分は絶縁物質とし、放電電極5から通電用リード線を外部に出し電源装置15と接続させることができる。
【0120】
その他、解凍には、例えば、網部材によって解凍対象物Xが残される上段と解凍された液体が流れる下段とに分かれた解凍用容器を利用することもできる。この解凍用容器の液体をプールする下部は、絶縁物質で形成される。解凍の際、解凍対象物Xであるこの氷柱を解凍用容器の上段に入れ、氷柱の中央部にある放電電極5を電源装置15と接続し、例えば、解凍用容器上部の導電物質で構成される側壁を接地電極7として接地する。この時、氷柱と解凍用容器の側壁が接しないように空気層を設けて配置する。電極を印加して溶けた水は、解凍用容器の棚の下段に蓄積され、水を伝わって他の部分に電気が流れるのを防ぐ。
【0121】
なお、この場合、上段と下段とに分ける絶縁物質で構成される網部材は、解凍対象物Xに含まれるイカやエビ等を通さない網目や隙間を有する構成であればよい。また、氷柱に限られず、角氷でもよい。
【0122】
変形例3においても、統合制御装置19により、放電電極5による放電に加え、温度制御を実行することで、解凍時間を短縮させることができる。
【0123】
〈他の変形例〉
図1に示す解凍装置1は、解凍のみを行う装置であったが、一般的な冷凍装置又は冷蔵装置内に、放電電極5、接地電極7及びヒートパネル9等を有する解凍室3を設けてもよい。
例えば、冷凍装置内に解凍室3を設ける場合、冷凍装置の一部を解凍室3として扉等により区切ることが可能であって、解凍の際にはその扉を閉めることで解凍を行い、解凍が終了すると、解凍室から取り出されて利用される。
【0124】
また、冷蔵装置内に解凍室3を設ける場合、冷蔵装置の一部を解凍室3として扉等により区切ることが可能であって、解凍の際には扉が閉められた解凍室3内で解凍を行い、解凍が終了すると、扉が開かれて冷蔵保存される。
【0125】
また、電子レンジに解凍装置1の機能を設けるようにしてもよい。
【0126】
以上、実施形態及び変形例を用いて本発明を説明したが、本発明は本明細書中に説明した実施形態に限定されるものではない。本発明の範囲は、特許請求の範囲の記載及び特許請求の範囲の記載と均等の範囲により決定されるものである。また、実施形態及び変形例の各構成を組み合わせてもよい。