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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2017-99524(P2017-99524A)
(43)【公開日】2017年6月8日
(54)【発明の名称】血液浄化装置
(51)【国際特許分類】
   A61M 1/34 20060101AFI20170512BHJP
   A61M 1/14 20060101ALI20170512BHJP
【FI】
   A61M1/34 503
   A61M1/14 551
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2015-233910(P2015-233910)
(22)【出願日】2015年11月30日
(71)【出願人】
【識別番号】507365204
【氏名又は名称】旭化成メディカル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【弁理士】
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【弁理士】
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【弁理士】
【氏名又は名称】江口 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【弁理士】
【氏名又は名称】内藤 和彦
(72)【発明者】
【氏名】土屋 瑞穂
(72)【発明者】
【氏名】加藤 陽子
【テーマコード(参考)】
4C077
【Fターム(参考)】
4C077AA05
4C077BB01
4C077BB02
4C077CC02
4C077CC03
4C077CC08
4C077DD12
4C077DD26
4C077DD30
4C077EE01
4C077EE03
4C077EE04
4C077HH02
4C077HH06
4C077HH15
4C077JJ02
4C077JJ05
4C077JJ16
4C077KK27
4C077PP28
(57)【要約】
【課題】透析液等の流れが少量であってもフローセンサーを機能させることにより、小流量に設定することができるようにする。
【解決手段】血液浄化装置1は、血液浄化膜10Mを備えた血液浄化器10と、患者の血液を血液浄化器10に送り患者に戻す血液回路11と、透析液を血液浄化器10の血液浄化膜10Mの二次側10bに供給する透析液供給回路50と、透析液の排液を排出する透析液排出回路51と、透析液および透析液の排液を交互に出し入れする定量チャンバ70と、透析液または透析排液が定量チャンバ70に供給されているかどうかを内蔵するフロート部材の位置に基づいて検出するフローセンサー20と、定量チャンバ70の上流側と下流側とに設けられた開閉バルブ74〜77と、フローセンサー20の出力信号に基づき開閉バルブ74〜77の動作を制御する制御装置14と、を有しており、フローセンサー20のフロート部材が樹脂製である。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
血液浄化膜を備えた血液浄化器と、
患者の血液を前記血液浄化器の血液浄化膜の一次側に送り当該血液浄化器の血液浄化膜の一次側から患者に戻す血液回路と、
透析液を前記血液浄化器の血液浄化膜の二次側に供給する透析液供給回路と、
透析液の排液を前記血液浄化器の血液浄化膜の二次側から排出する透析液排出回路と、
前記透析液供給回路の途中に配置された第1の室と、前記透析液排出回路の途中に配置された第2の室と、これら第1の室および第2の室を仕切る変位自在な隔壁と、を有し、前記透析液および前記透析液の排液を交互に出し入れする定量チャンバと、
前記透析液または前記透析排液が前記定量チャンバに供給されているかどうかを、内蔵するフロート部材の位置に基づいて検出するフローセンサーと、
前記定量チャンバの第1の室の上流側と下流側とに設けられた開閉バルブと、
前記定量チャンバの第2の室の上流側と下流側とに設けられた開閉バルブと、
前記フローセンサーの出力信号に基づき前記開閉バルブの動作を制御する制御装置と、
を有しており、
前記フローセンサーの前記フロート部材が樹脂製であることを特徴とする、血液浄化装置。
【請求項2】
前記フローセンサーの前記フロート部材の比重が1.0〜2.5であることを特徴とする、請求項1に記載の血液浄化装置。
【請求項3】
前記フロート部材がザイロン製であることを特徴とする、請求項2に記載の血液浄化装置。
【請求項4】
前記フロート部材がPTFE製であることを特徴とする、請求項2に記載の血液浄化装置。
【請求項5】
前記フロート部材は、錐状部分を含む形状であることを特徴とする請求項1から4のいずれか一項に記載の血液浄化装置。
【請求項6】
前記フローセンサーは、前記フロート部材の可動範囲を規制するストッパーを有することを特徴とする請求項1から5のいずれか一項に記載の血液浄化装置。
【請求項7】
前記フローセンサーは、前記フロート部材の位置を検出するフロート検出器を有することを特徴とする請求項1から6のいずれか一項に記載の血液浄化装置。
【請求項8】
前記透析液供給回路を流れる前記透析液の流量が200[mL/min]以下であることを特徴とする、請求項1から7のいずれか一項に記載の血液浄化装置。
【請求項9】
前記制御装置は、前記フローセンサーの出力に基づいて前記開閉バルブを動作させ、前記定量チャンバにおける前記透析液および前記透析排液の出し入れを切り替えることを特徴とする、請求項1から8のいずれか一項に記載の血液浄化装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、血液浄化装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば急性腎不全等の重篤患者に対する治療法の一つとして、体外循環により持続的に血液の浄化を行う持続緩除式の血液浄化治療がある。この種の治療は、一般的に血液浄化装置を用いて行われ、当該血液浄化装置は、患者の血液を中空糸膜モジュールなどからなる血液浄化器に供給し患者に戻す血液回路と、血液浄化器に透析液を供給し、患者の血液から中空糸膜を通じて透析液に老廃物を取り込んで除去する透析液回路等を備えている。また、患者の体液バランスを維持するため、透析液回路の透析液を補液として血液回路側に供給することも行われている。
【0003】
一般的な持続緩除式の血液治療では、既に調整された治療液が封入されたバックより、透析液や補液などの治療液が供給される。血液浄化装置において長時間連続して血液を処理するため、医療従事者は治療の間に複数回バックを交換する必要があり医療従事者の負担になっている。また、治療液が封入されたバックは高額であるためコストの面でも負担が大きい。そこで、この血液浄化治療に使用される透析液や補液の治療液を治療中にリアルタイムで作成し血液浄化装置に補充できると、先述した負担を解消することが出来る。そこで、血液浄化装置に透析液作成装置を接続し、当該透析液作成装置で透析液を作成して血液浄化装置に供給することが提案されている(特許文献1参照)。
【0004】
ところで、血液浄化装置においては、透析液あるいは透析排液が回路を流れているかどうかを検出する装置として、フロートを内蔵したフローセンサーが利用される場合がある。例えば、透析液を供給する透析液供給回路に設けられたフローセンサーは、透析液の流量に応じて浮き沈み動作するフロートの動きや位置を検出することによって、透析液が当該回路を流れているかどうか検出することができる。この場合、フロートの材質としては、生体適合性を有する部材であって、好ましくは堅牢性、耐久性に優れるもの、例えばチタン材などが好適である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第4458346号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、透析液が小流量だと、フローセンサーのフロートが作動せず、透析液が流れているかどうかの検出ができないことがある。フローセンサーが機能しないと、血液浄化装置の透析液の流れを小流量に制御することができない。
【0007】
本発明は、透析液等の流れが少量であってもフローセンサーを機能させることにより、小流量に制御することができるようにした血液浄化装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
かかる課題を解決するべく、本発明の血液浄化装置は、
血液浄化膜を備えた血液浄化器と、
患者の血液を前記血液浄化器の血液浄化膜の一次側に送り当該血液浄化器の血液浄化膜の一次側から患者に戻す血液回路と、
透析液を前記血液浄化器の血液浄化膜の二次側に供給する透析液供給回路と、
透析液の排液を前記血液浄化器の血液浄化膜の二次側から排出する透析液排出回路と、
前記透析液供給回路の途中に配置された第1の室と、前記透析液排出回路の途中に配置された第2の室と、これら第1の室および第2の室を仕切る変位自在な隔壁と、を有し、前記透析液および前記透析液の排液を交互に出し入れする定量チャンバと、
前記透析液または前記透析排液が前記定量チャンバに供給されているかどうかを、内蔵するフロート部材の位置に基づいて検出するフローセンサーと、
前記定量チャンバの第1の室の上流側と下流側とに設けられた開閉バルブと、
前記定量チャンバの第2の室の上流側と下流側とに設けられた開閉バルブと、
前記フローセンサーの出力信号に基づき前記開閉バルブの動作を制御する制御装置と、
を有しており、
前記フローセンサーの前記フロート部材が樹脂製であることを特徴とする。
【0009】
樹脂製のフロート部材は、例えばチタン製といった従来のフロート部材に比べて比重が軽いことから、流量が少ない場合も浮き沈み動作しやすい。このため、透析液等が小流量の場合も機能するフローセンサーを構築することができ、血液浄化装置の透析液の流れを小流量に制御することが可能となる。
【0010】
前記フローセンサーの前記フロート部材の比重は、例えば1.0〜2.5である。
【0011】
前記フロート部材がザイロン製であってもよい。あるいは、前記フロート部材がPTFE製であってもよい。
【0012】
前記フロート部材は、錐状部分を含む形状であってもよい。
【0013】
前記フローセンサーは、前記フロート部材の可動範囲を規制するストッパーを有していてもよい。
【0014】
前記フローセンサーは、前記フロート部材の位置を検出するフロート検出器を有していてもよい。
【0015】
前記透析液供給回路を流れる前記透析液の流量は、例えば200[mL/min]以下である。
【0016】
また、前記制御装置は、前記フローセンサーの出力に基づいて前記開閉バルブを動作させ、前記定量チャンバにおける前記透析液および前記透析排液の出し入れを切り替えるものであってもよい。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、透析液等の流れが少量であってもフローセンサーが機能するので、小流量に制御することができるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】血液浄化装置の構成の一例を示す概略図である。
図2】フローセンサーの構成例を示す概略図である。
図3】流体によりフロート部材が押し流されて浮いた状態を示すフローセンサーの概略図である。
図4】フロート部材の材料ごとの比重と、フロート部材が浮くための最低流量を示す表である。
図5】フロート部材が浮くための透析液等の最低流量と比重の関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、図面を参照して、本発明の好ましい実施の形態について説明する。なお、以下の実施の形態は、本発明を説明するための例示であり、本発明はその実施の形態のみに限定されるものではない。同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明は省略する。また、図面中、上下左右等の位置関係は、特に断らない限り、図面に示す位置関係に基づくものとする。さらに、図面の寸法比率は、図示の比率に限定されるものではない。
【0020】
図1は、本実施の形態に係る血液浄化装置1の構成の概略を示す模式図である。本実施の形態では、例えば病院内の集中治療室(ICU)において持続緩除式の血液治療を行う血液浄化装置1を例に採って説明する。
【0021】
血液浄化装置1は、例えば血液浄化器10、患者から血液浄化器10に血液を供給し血液浄化器10から患者に戻す血液回路11、水に透析液の原液を混合して混合液としての透析液を生成し、その透析液を血液浄化器10に供給する液体回路としての透析液回路12、制御装置14、補液回路130などを有している。
【0022】
血液浄化器10は、例えば中空糸膜(血液浄化膜)10Mの束を内蔵した中空糸膜モジュールである。血液浄化器10の中空糸膜10Mの一次側10aの出入口に血液回路11が接続され、中空糸膜10Mの二次側10bの出入口に透析液回路12が接続されている。血液浄化器10は、例えば中空糸膜10Mの一次側10aと二次側10bの浸透圧を利用して、中空糸膜10Mの一次側10aの血中の老廃物等を中空糸膜10Mの二次側10bの透析液中に取り込んで血液を浄化することができる。本実施形態における「回路」の流路部分には、例えば軟質のチューブが用いられている。
【0023】
血液回路11には、例えば、圧力モニター(静脈圧計)31、気泡検知器32、クランパ33、血液ポンプ36、圧力モニター(入口圧計)37が設けられている。また、血液回路11には、当該血液回路11内に抗凝固剤を注入する際に用いられるシリンジポンプ38がさらに設けられている。
【0024】
RO装置40は、水道水からRO水(逆浸透水)を生成し、透析液回路12へ供給する装置である。本実施形態のRO装置40は、塩素成分を除去するカーボンフィルター41、前処理水タンク42、ROポンプ43、ROモジュール44などを備えている。ROモジュール44はろ過膜の一種であり、水道水中の不純物(イオンや有機物)を取り除く。また、病院施設内には、RO装置40が生成したRO水を各治療室の壁まで送液するための配管46が併設されている。
【0025】
透析液回路12は、RO装置40から供給されるRO水にA原液とB原液、薬液、酸液を混合して透析液を生成し、その透析液を血液浄化器10の二次側10bに供給する透析液供給回路50と、血液浄化器10の二次側10bを通過した透析排液を治療室の壁内の配管に排出する透析液排出回路51と、を有している。透析液供給回路50には、透析液生成供給部16が形成されている。
【0026】
透析液供給回路50は、例えば上流側の端部が治療室の壁内の配管46に接続され、下流側の端部が血液浄化器10の中空糸膜10Mの二次側10bに接続されている。透析液生成供給部16は、例えば給液ポンプ60、ヒーター61、原液ポンプ62、A液の供給源65、B液の供給源66を有している。なお、原液ポンプ62から定量チャンバ70の第1の室71までの区間が、RO水に原液(例えばA液およびB液)が混合される混合部67となっている。
【0027】
なお、A液の供給源65、B液の供給源66等としてはタンクを用いることができる。一例として10L程度の容量のタンクをこれらの供給源として用いれば、血液浄化装置1内においてRO水で希釈、混合することで250〜300Lの透析液が作成可能である。(一方、治療液が封入されたバッグを使用する場合、バックの容量は1〜5L程度である。)供給源65,66と透析液作成機能を備えた中空糸膜型の血液浄化装置1を用いることで、当該供給源65,66を取り替える頻度と手間を少なくすることができる。また、このような供給源65,66を備えた中空糸膜型の血液浄化装置1は、通常よりも多い量の透析治療に向いている。さらに、このような供給源65,66を備えた中空糸膜型の血液浄化装置1は、透析液の単位容量当たりの価格(コスト)を下げることを可能とする。
【0028】
すなわち、従前の持続緩除式血液濾過透析(CHDF:continuous HemoDiaFiltration)のような、透析液が入ったバッグを使用する治療法(オフラインCHDF)と比べると、タンクを利用して装置内で透析液を作成する治療法(オンラインCHDF)によれば、治療液価格、交換頻度(一例として、オフラインCHDFで2L毎にバッグ交換となるところが、オンラインCHDFで250〜300L毎にタンク交換)ともに利用者にとってより使いやすいものとなる。
【0029】
透析液供給回路50における例えば混合部67の下流側は、定量チャンバ70の第1の室71に接続され、第1の室71の下流側は、血液浄化器10の中空糸膜10Mの二次側10bに接続されている。
【0030】
透析液供給回路50のうち第1の室71の下流側には、温度センサー81、温度補正モニター82、透析液精製部83が設けられている。透析液精製部83は、ETRF(エンドトキシン捕捉フィルター)84を備えている。ETRF84は、透析液中のエンドトキシンや細菌を除去するためのフィルターである。
【0031】
透析液供給回路50のうち第1の室71の上流側には開閉バルブ74、下流側には開閉バルブ75が設けられている。また、透析液排出回路51のうち第2の室72の上流側には開閉バルブ76、下流側には開閉バルブ77が設けられている。さらに、開閉バルブ74の上流側と、開閉バルブ76の上流側のそれぞれに、フローセンサー20が設けられている。
【0032】
フローセンサー20は、回路内を液が流れているかどうかを検出するセンサーである。透析液が定量チャンバ70の第1の室71に供給されているかどうかを透析液供給回路50に設けられたフローセンサー20(20A)により判断することができ、透析排液が定量チャンバ70の第2の室72に供給されているかどうかを透析液排出回路51に設けられたフローセンサー20(20B)により判断することができる。
【0033】
本実施形態のフローセンサー20は、センサー筐体28内に設けられたフロート部材22、ストッパー24、フォトダイオード(フロート検出器)26によって構成されている(図2図3参照)。センサー筐体28は、フロート部材22の外径より大きい大径部28Lと、フロート部材22の外径より小さい小径部28Sとを備えている。センサー筐体28は、流体の上流側となる小径部が下側となり、その内部を流体が上方へ向かって流れるように配置されている(図2等参照)。ストッパー24は、センサー筐体28の大径部28L内に設けられている。
【0034】
フロート部材22は、センサー筐体28の小径部28Sに当接する初期位置と、ストッパー24に当接する供給時位置と、の間を移動可能な部材であり、流体が流れていないとき、あるいは流れていても微量であり、十分な浮力が得られないときは、自重により、小径部28Sに当接する初期位置、あるいは小径部28Sの近傍に位置し(図2参照)。流体が所定量以上流れているときは流れに押し上げられて浮いた状態となり、ストッパー24に当接する供給時位置まで移動する(図3参照)。
【0035】
フロート部材22の形状は特に限定されないが、中空体等を用いることができ、例えば本実施形態では、円錐部分22aと円柱部分22bとを組み合わせた中空形状とされている。このフロート部材22は、円錐部分22aが小径部28S側(下側)を向くように配置される。
【0036】
また、フロート部材22の材質としては、生体適合性を有する材料が用いられる。このような材質としては例えばチタンがあるが、本実施形態では、生体適合性を有する樹脂を材質としたフロート部材22を採用している。このような樹脂の好適例として、ポリフェニレンエーテル樹脂と他の樹脂とのポリマーアロイである「ザイロン」(旭化成ケミカルズ株式会社の登録商標)、PTFE(ポリテトラフルオロエチレン)を挙げることができる。樹脂製のフロート部材22は、チタンに比べると、密度が小さいために軽量化しやすいことから、液体流量が小さい場合にも動作可能である。具体的な例を挙げて説明すると、チタン製のフロート部材22が動作する透析液流量は300〜800[mL/min]であるのに対し、樹脂製のフロート部材22が動作する透析液流量は100〜200[mL/min]であり、小流量でも動作可能である。特に、より密度の小さいザイロンをフロートに用いることで30〜200[mL/min]、場合によっては100[mL/min]以下の小流量でも動作可能である。
【0037】
フォトダイオード(FD)26は、センサー筐体28内を光が横切るように配置されている。フロート部材22が流体によって下流側に流されると(供給時位置)、フォトダイオード26の光を遮り(図3参照)、初期位置に戻ると光を遮らない(図2参照)。フォトダイオード26は、受光しているか否かの信号を制御装置14に出力する。
【0038】
補液回路130は、血液回路11内に補液を行い、同量の水分を血液浄化器10を介して除水することで治療効率を上げる(血液内の老廃物を積極的に取り除く)ため、透析液供給回路50の透析液(補液)を血液回路11側に供給するための回路で、透析液供給回路50と血液回路11との間に接続される。補液回路130には補液ポンプ131が設けられている。なお、補液回路130は、血液回路11における血液浄化器10の上流側と下流側のいずれの位置に接続されていてもよい。
【0039】
定量チャンバ70は、一定容積の本体内で変位自在なダイアフラムなどからなる隔壁73によって、第1の室71と第2の室72とに分けられている。この隔壁73の作用により、第1の室71に供給(あるいは第1の室71から排出)された透析液の量と、第2の室72から排出(あるいは第2の室72に供給)された透析排液の量とが等しい状態で、定量チャンバ70は透析液および透析排液を交互に出し入れする。
【0040】
透析液排出回路51は、例えば上流側の端部が血液浄化器10の中空糸膜10Mの二次側10bに接続され、下流側の端部が治療室の壁内の排液用配管(図示省略)に接続されている。本実施形態では、透析液排出回路51における血液浄化器10の中空糸膜10Mの二次側10bの下流側で定量チャンバ70の第2の室72に接続されている。また、第2の室72の下流側は、壁内の排液用配管(図示省略)に接続されている。血液浄化器10の二次側10bと定量チャンバ70の第2の室72との間には、圧力モニター(ろ過圧計)57、漏血検知器58が設けられている。
【0041】
また、透析液回路12は、漏血検知器58の下流側から定量チャンバ70を迂回して定量チャンバ70の下流側(施設の壁)側に通じる除水回路90を有している。除水回路90は、除水ポンプ91、開閉バルブ92を有している。
【0042】
血液浄化装置1は、例えば各種機器や装置が内蔵された装置筐体部100を備えている。装置筐体部100には、例えば血液ポンプ36、補液ポンプ131、原液ポンプ62、定量チャンバ70、除水ポンプ91制御装置14などが内蔵されている。なお、本明細書において、「内蔵」とは、装置筐体部100の部品として内部に組み込まれている状態をいう。
【0043】
なお、血液浄化器10および血液回路11は装置筐体部100に内蔵されておらず、装置筐体部100に対し取り外し自在に構成されている。血液浄化器10および血液回路11は治療毎に交換される。
【0044】
制御装置14は、血液浄化装置1の全体の動作を制御するコンピュータであり、例えば血液ポンプ36、補液ポンプ131、原液ポンプ62、定量チャンバ70、除水ポンプ91、及び開閉バルブ74〜77等の動作を制御して、血液浄化処理を実行するように血液浄化装置1を作動させることができる。
【0045】
制御装置14は、記憶部に記憶されたプログラムを実行し、フローセンサー20の状況に応じて開閉バルブ74〜77の制御を実施する。具体的な例を挙げて説明すると以下のとおりである。
【0046】
開閉バルブ74,77が開放され、開閉バルブ75,76が閉鎖された状態で、給液ポンプ60により透析液(混合液)が定量チャンバ70に供給されると、該定量チャンバ70の隔壁73が移動し、第2の室72に充填されていた透析排液が透析液排出回路51に送り出され、最終的には排液用配管(図示省略)を経由して排出される。このとき、定量チャンバ70の第2の室72から透析液排出回路51に送り出される排液の量は、透析液供給回路50から定量チャンバ70の第1の室71に供給される透析液の量と同じになる。
【0047】
透析液が供給されて定量チャンバ70の第1の室71が満充填されると、透析液がそれ以上は供給されない状態となり、透析液供給回路50を流れる透析液の流量が0(ゼロ)になる。そうすると、それまではストッパー24に突き当たる位置(供給時位置)まで押し上げられていたフロート部材22は(図3参照)、自重によって、フォトダイオード26の光を遮らない初期位置に戻り(図2参照)、フォトダイオード26の出力信号を切り替える。フローセンサー20(20A)のフォトダイオード26の出力信号が切り替わったことに基づき、制御装置14は、開閉バルブ74,77を閉鎖し、開閉バルブ75,76を開放する。
【0048】
開閉バルブ74,77が閉鎖され、開閉バルブ75,76が開放された状態では、透析排液が定量チャンバ70の第2室72に供給される。そうすると、定量チャンバ70の隔壁73が移動し、第1の室71に充填されていた透析液(混合液)が透析液供給回路50(のうち、定量チャンバ70の下流となる部分)に送り出され、血液浄化器10に供給される。このとき、定量チャンバ70の第1の室71から透析液供給回路50に送り出される透析液の量は、透析液排出回路51から定量チャンバ70の第2の室72に供給される透析排液の量と同じになる。この間、原液ポンプ62により透析液作成に必要な原液が混合部67に吸い上げられる。
【0049】
透析排液が供給されて定量チャンバ70の第2の室72が満充填されると、透析排液がそれ以上は供給されない状態となり、透析液排出回路51(のうち、定量チャンバ70の上流となる部分)を流れる透析排液の流量が0(ゼロ)になる。そうすると、フローセンサー20(20B)において、それまではストッパー24に突き当たる位置(供給時位置)まで押し上げられていたフロート部材22は(図3参照)、自重によって、フォトダイオード26の光を遮らない初期位置に戻り(図2参照)、フォトダイオード26の出力信号を切り替える。フローセンサー20(20B)のフォトダイオード26の出力信号が切り替わったことに基づき、制御装置14は、開閉バルブ74,77を開放し、開閉バルブ75,76を閉鎖する。
【0050】
これにより、上述した最初の状態に戻る。以降、制御装置14による開閉バルブ74〜77の制御が繰り返される。
【0051】
以上のように構成された血液浄化装置1における血液浄化処理の一例を以下に説明する。例えば血液回路11の不図示の穿刺針が患者に穿刺された後、血液ポンプ36が作動し、血液回路11と血液浄化器10の中空糸膜10Mの一次側10aを通じて血液が循環される。一方、透析液回路12では、原液ポンプ62が作動し、混合部67に原液を吸引し、給液ポンプ60によりRO水を混合部67に供給することで定量チャンバ70の第1の室71に透析液(原液、RO水の混合液)が貯留される。このとき、透析液供給回路50において、RO水が、RO装置40から、装置筐体部100内の定量チャンバ70に向かって流れ、A液、B液が混合され、混合液としての透析液が生成される。生成された透析液は、定量チャンバ70の第1の室71に貯留される。
【0052】
定量チャンバ70の第1の室71に透析液が貯留されると、次に循環ポンプ(図示省略)が作動し、第1の室71の透析液が透析液供給回路50を通じて血液浄化器10の中空糸膜10Mの二次側10bに供給される。このとき、透析液は、血液浄化器10の中空糸膜10Mの一次側10aを流れる血液から老廃物を取り込み、血液を浄化する。
【0053】
血液浄化器10の中空糸膜10Mの二次側10bを通過した透析排液は、透析液排出回路51を通って定量チャンバ70の第2の室72に流入する。このとき、定量チャンバ70の隔壁73が移動し、第1の室71の容積が小さくなった分第2の室72の容積が大きくなる。また、除水回路90の除水ポンプ91も作動し、一部の透析排液が定量チャンバ70を通らず除水回路90を通って透析液排出回路51の下流側に排出される。この除水回路90を通過する透析排液の液量が、血液浄化器10において患者の血液から除去される除水量に対応する。
【0054】
次に、再び透析液供給回路50においてRO水から透析液が生成され、その透析液が定量チャンバ70の第1の室71に貯留され、それと共に隔壁73が移動し、第2の室72の透析排液が透析液排出回路51を通って排出される。
【0055】
上記工程が繰り返され、持続的緩徐式の血液治療(血液浄化処理)が行われる。
【0056】
本実施形態の血液浄化装置1によれば、フローセンサー20として、生体適合性を有する樹脂を材質としたフロート部材22を備えるものを採用したことから、透析液流量が100〜200[mL/min]といったレベルの小流量条件下でも機能する。別言すれば、小流量の場合にも機能するようフロート比重を適正化したことから、透析液および透析排液の流量を小流量に設定することができる。なお、フロート比重は、1.0〜2.5の範囲内にあることが好ましく、1.2(ザイロンの密度)〜2.2(テフロン(登録商標)の密度)の範囲内にあることがさらに好ましい。
【0057】
例えば血液浄化装置1の構成は以上の実施の形態のものに限られない。例えば透析液供給回路50は、血液浄化処理の種類、例えば持続緩除式血液濾過(CHF:Continuous HemoFiltractrion)、持続緩除式血液透析(CHD:Continuous HemoDiaFiltration)、持続緩除式血液濾過透析(CHDF:continuous HemoDiaFiltration)に応じて血液回路11に接続するか、血液浄化器10に接続するか或いはそれら両方に接続するかを選択してもよい。また、本発明は、持続緩徐式の治療以外の血液浄化処理を行う血液浄化装置にも適用できる。
【0058】
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施の形態について説明したが、本発明はかかる例に限定されない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された思想の範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【実施例1】
【0059】
チタン製、ザイロン製、そしてPTFE製のフロート部材22を作製し、各フロート部材22を有するフローセンサー20において、当該フロート部材22が浮くための最低流量(mL/min)と、当該フロート部材22の比重との関係を調べた。結果を図4図5に示す。なお、図5中の縦ラインは、水の比重(=1)を表している。
【0060】
以上の結果より、比重の軽い樹脂材料からなるフロート部材22を採用した場合、比重の軽さに応じて、当該フロート部材22が浮くための最低流量(mL/min)が少なくなることが確認された。
【産業上の利用可能性】
【0061】
本発明は、急速に腎臓の機能が低下した急性腎不全等の重症の患者に対して適用されるCRRT(持続的腎機能代替療法(Continuous Renal Replacement Therapy))などの治療にて用いられる血液浄化装置に適用して好適である。
【符号の説明】
【0062】
1 血液浄化装置
10 血液浄化器
10a 中空糸膜の一次側
10b 中空糸膜の二次側
10M 中空糸膜(血液浄化膜)
11 血液回路
12 透析液回路(液体回路)
14 制御装置
20 フローセンサー
22 フロート部材
22a 円錐部分(錘状部分)
24 ストッパー
26 フォトダイオード(フロート検出器)
50 透析液供給回路
51 透析液排出回路
70 定量チャンバ
71 第1の室
72 第2の室
73 隔壁
74 開閉バルブ
75 開閉バルブ
76 開閉バルブ
77 開閉バルブ
図1
図2
図3
図4
図5