(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2017-99771(P2017-99771A)
(43)【公開日】2017年6月8日
(54)【発明の名称】羽毛製品
(51)【国際特許分類】
A47G 9/02 20060101AFI20170512BHJP
【FI】
A47G9/02 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2015-237015(P2015-237015)
(22)【出願日】2015年12月3日
(71)【出願人】
【識別番号】514315104
【氏名又は名称】HUALI Japan株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100101524
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 哲哉
(72)【発明者】
【氏名】河田 敏勝
【テーマコード(参考)】
3B102
【Fターム(参考)】
3B102BA02
(57)【要約】
【課題】本来の羽毛の特性が最大限に発揮され大きな断熱性等を有するほぼ面状の羽毛製品を提供する。
【解決手段】内部に収容空間を有しほぼ一面状をなす袋状本体20と、袋状本体20の内部空間内に収容された羽毛50とを有する。袋状本体20の内部空間は複数の区画に仕切られてはいない。袋状本体20のおもて側には、折り畳み状態の羽毛製品10を収容するポケット15が形成されている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部に収容空間を有しほぼ一面状をなす袋状本体と、
前記袋状本体の内部空間内に収容された羽毛とを有し、
前記袋状本体の前記内部空間が複数の区画に仕切られてはいない、
羽毛製品。
【請求項2】
請求項1に記載の羽毛製品であって、
前記袋状本体のおもて側又は裏側には、折り畳み状態の当該羽毛製品を収容するポケットが形成されている、
羽毛製品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、膝掛け,小型布団等、ほぼ1つの面状をなす羽毛製品に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、羽毛製品にはキルティング加工が施されている。
すなわち、
図6及び
図7に示すように、従来の羽毛製品110は、袋状本体120(その内部空間)が多数の区画に仕切られて、各区画内に羽毛150が収容されて形成されている。これは、羽毛150が袋状本体110の内部空間のうちの一部に偏ることを防止し、均等に分布するようにしようとするためのものである。
【0003】
ところで、本発明者が羽毛について研究を深めた結果、次のようなことが判明した。
まず、羽毛は、本来的に、その自然状態で、断熱能力が非常に高いとともに、温度調整機能も有している。
【0004】
すなわち、羽毛を微細に観察することによって、次のことが明らかになった。羽毛は、微小な元羽軸を有し、その元羽軸根からさらに微小な羽枝が生えており、その羽枝からさらに微小な小羽枝が無数生えている。
このように、羽毛は立体的に複雑な構造を有しているために、高い断熱性を有しているのである。このため、寒冷な環境において羽毛製品を身に着けることによって、羽毛製品は高い保温性を発揮し、その使用者は暖かく感じるのである。
【0005】
一方で、使用者側の空気の温度が高くなって使用者が汗をかくと、その周囲の空間の絶対湿度が高くなる。それによって、それまで羽枝から広がるように延びていた小羽枝は、羽枝に沿うように変位する。
こうして、羽毛の通気性が良くなり、汗が気化しやすくなって、その際に周囲の空気から気化熱が奪われることによって、使用者側の空気の温度が低下する。こうして、熱くなりすぎることが防止されるのである。
【0006】
また、羽毛は、自然状態では、かなり大きな空間内に収容された場合でも、ほぼ均等に分布することが判明した。
これは、羽毛の比重が非常に小さいこと、羽毛が非常に柔らかいこと、羽毛が上述した複雑な構造を有するために各々の羽毛が本来的には大きな占有体積を有すること等のためと考えられる。
【0007】
前述したように、羽毛は、その自然状態において立体的に複雑な構造を有し、高い断熱性を有している。
しかしながら、従来のキルティング加工が施された羽毛製品では、各区画(その内部空間)の容積(特にその高さ)が十分に確保できず、各区画内において羽毛が本来の自然状態ではなく、圧縮された状態で収容されることとなる。このため、断熱効果は落ちることとなる。
【0008】
また、前述したように、羽毛は非常に柔らかく、非常に大きな可撓性を有している。
しかしながら、袋状本体がキルティング加工されていると、その分、その羽毛製品の可撓性が落ち、使用者に対するフィット感(「ドレープ性」ともいわれる)が落ちることとなる。
ドレープ性が落ちると、使用者に密接にまとわりつくことがなく、使用者との間に隙間が生じることとなる。
すなわち、従来の羽毛製品110(
図6及び
図7)が膝掛けの場合、
図8に示すように、椅子Cに着座した使用者の膝Kと膝掛け(羽毛製品)110との間に大きな隙間が生じることとなる。これによっても断熱効果が落ちることとなる。
【0009】
なお、この分野における先行技術の一例としては、特許文献1に開示されているものがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2014−217576号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、本来の羽毛の特性が最大限に発揮され、大きな断熱性等を有するほぼ面状の羽毛製品を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記の課題を解決するために、請求項1に係る発明は、内部に収容空間を有しほぼ一面状をなす袋状本体と、前記袋状本体の内部空間内に収容された羽毛とを有し、前記袋状本体の前記内部空間が複数の区画に仕切られてはいない、羽毛製品である。
【0013】
この発明の羽毛製品では、羽毛は、ほぼ一面状をなし複数の区画に仕切られてはいない内部空間内に収容されている。
このため、袋状本体の内部空間において十分な容積(特にその高さ)が確保され、その内部空間内に収容された羽毛は、自然状態(又はそれに近い状態)であり得ることとなる。そして、その場合において、その羽毛は、大きな断熱性を有するとともに、確実な温度調整機能を発揮する。
【0014】
一方で、羽毛が収容される内部空間が複数の区画に仕切られてはいないが、その内部空間内において羽毛が一方に偏ることなく、ほぼ均等に分布することとなる。
すなわち、仮に、綿を袋状本体の内部空間内に収容する際には、その内部空間が複数の区画に仕切られてその各区画ごとに綿を収容しないと、綿が偏ってしまう。
そのことにとらわれて、従来においては、羽毛についても、綿と同様に、袋状本体の内部空間が複数の区画に仕切られていないと羽毛が偏るのではないかという先入観が存在しており、そのようにされているのである。
【0015】
しかしながら、本発明者が羽毛について研究を重ねるとともに、先入観にとらわれないように発想を転換したところ、羽毛は、複数の区画に仕切られてはいない内部空間内に収容されても、ほぼ均等に分布することが判明したのである。
すなわち、仮に一時的に一方に偏った場合でも、震動等が加わるうちに、均等な状態に向かって徐々に移動していき、ほぼ均等な状態に戻ることが判明したのである。
【0016】
また、袋状本体は、キルティング加工されていないため、キルティング加工されている場合と比較して大きな可撓性を有する。それとともに、羽毛自体は本来的に非常に大きな可撓性を有している。
このため、この羽毛製品は大きな可撓性(大きなドレープ性)を有し、使用者に密接にまとわりつき、使用者との間の隙間が極小化される。
こうして、断熱効果が落ちることなく、本来の高い断熱効果(保温能力)が十分に発揮されるのである。
【0017】
請求項2に係る発明は、請求項1に係る発明の羽毛製品であって、前記袋状本体のおもて側又は裏側には、折り畳み状態の当該羽毛製品を収容するポケットが形成されている、羽毛製品である。
【0018】
この発明の羽毛製品では、請求項1に係る発明の羽毛製品の作用効果に加えて、次の作用効果が得られる。
すなわち、この発明の羽毛製品では、当該羽毛製品を折り畳んだ状態で、ポケットに収容することができる。こうして、非使用時においてはコンパクトにまとめておくことが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】本発明の一実施例の羽毛製品を示す斜視図(一部破断)である。
【
図2】本発明の一実施例の羽毛製品を示す分解斜視図である。
【
図3】本発明の一実施例の羽毛製品を示す縦断面図である。
【
図4】本発明の一実施例の羽毛製品の使用状態を示す断面図である。
【
図5A】本発明の一実施例の羽毛製品の第1の折り畳み方法を示す図である。
【
図5B】本発明の一実施例の羽毛製品の第2の折り畳み方法を示す図である。
【
図6】従来の羽毛製品の一例を示す斜視図(一部破断)である。
【
図7】従来の羽毛製品の一例を示す縦断面図である。
【
図8】従来の羽毛製品の一例の使用状態を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
次に、本発明の一実施例について、図面に基づいて説明する。
図1〜
図3に示すように、この羽毛製品10は、袋状本体20,羽毛50を有している。この羽毛製品は10は、膝掛けや、昼寝等のための小型布団等として使用されるものである。
袋状本体20は、外袋体30,内袋体40を有しており、長方形状をしている。
【0021】
外袋体30は、ウール,木綿,化学繊維等の種々の布によって形成されている。
内袋体40は、ポリエステル等の布によって形成されており、いわゆるダウンプルーフ加工がされている。すなわち、その内部空間内に収容された羽毛50が外部に出ることが防止されている。
【0022】
外袋体30は、ともに長方形で同一の大きさの外袋体おもて布31,外袋体裏布32を有している。内袋体40も、ともに長方形で同一の大きさの内袋体おもて布41,内袋体裏布42を有している。
そして、おもて側から裏側にかけて、外袋体おもて布31,内袋体おもて布41,内袋体裏布42,外袋体裏布32の縁部が縫い付けによって結合されて、2重の袋状本体20が形成されている。
正確にいえば、おもて側から裏側にかけて、内袋体おもて布41,外袋体おもて布31,外袋体裏布32,内袋体裏布42の縁部が結合されて袋状にされた上で、表裏反転されて形成されている。
こうして、袋状本体20(外袋体30,内袋体40)は長方形状のほぼ一面状をしており、一対の長辺21及び短辺22を有している。
【0023】
袋状本体20は、1つの内部空間(符号省略)を有している。すなわち、キルティング加工によって区画分けされていない。
その1つの内部空間内に、羽毛50が収容されている。
こうして、ほぼ1つの面状の羽毛製品10が形成されている。
【0024】
前述したように、袋状本体20(内袋体40,外袋体30)は長方形状をしており、袋状本体20は一対の長辺21及び短辺22を有している。
袋状本体20(外袋体30)には、ポケット用布片(符号省略)が取り付けられて、ポケット15が設けられている。
ポケット15は長方形状をしており、袋状本体20(外袋体30)の長辺21に開口部(符号省略)を有し、ポケット15の深さは袋状本体20の短辺22のほぼ1/3である。ポケット15は長辺21における中央に位置しており、ポケット15の幅は袋状本体20の長辺21のほぼ1/3である。
【0025】
次に、この羽毛製品10の作用効果について説明する。
図1〜
図3に基づいて前述したように、この羽毛製品10においては、袋状本体20の内部空間は区画分けされておらず、1つの内部空間内に羽毛50が収容されている。
このため、その羽毛50は、圧縮されることなく(又はあまり圧縮されることなく)、自然状態(又はそれに近い状態)であり得ることとなる。そして、その場合において、その羽毛50は、大きな断熱性を有するとともに、確実な温度調整機能を発揮する。
一方で、羽毛50が収容される内部空間が複数の区画に仕切られてはいないが、その内部空間内において羽毛50が一方に偏ることなく、ほぼ均等に分布することとなる。
【0026】
また、この羽毛製品10においては、袋状本体20がキルティング加工されていないため、キルティング加工されている場合と比較して大きな可撓性を有する。それとともに、羽毛50自体は本来的に非常に大きな可撓性を有している。
このため、この羽毛製品10は大きな可撓性(ドレープ性)を有し、使用者に密接にまとわりつき、使用者との間の隙間が極小化される。
すなわち、
図4に示すように、この羽毛製品10(
図1〜
図3)が膝掛けとして使用された場合、椅子Cに着座した使用者の膝Kと膝掛け(羽毛製品)10との間にはほとんど隙間が生じないこととなる。このことによっても、大きな断熱効果(保温能力)が得られるのである。
【0027】
また、この羽毛製品10はポケット15を有しているため、
図5A及び
図5Bに示すように、羽毛製品10を折り畳んだ状態で、ポケット15内に収容することができる。
【0028】
第1の折り畳み・収容方法は、
図5Aに示すとおりである。
まず、
図5A(a)→(b)に示すように、羽毛製品10のうちポケット15を挟んで袋状本体20の長辺21方向における両側の部分を、裏側に折り返す。
次に、
図5A(b)→(c)に示すように、ポケット15及び羽毛製品10のうちポケット15と重なる部分以外の部分を、ポケット15の裏側に向けて折り返すとともに、その先端側の略半部をさらにおもて側に向けて折り返して、ポケット15内に収容する。
【0029】
第2の折り畳み・収容方法は、
図5Bに示すとおりである。
まず、
図5B(a)→(b)に示すように、羽毛製品10のうちポケット15を挟んで袋状本体20の長辺21方向における両側の部分を、おもて側に折り返す。
次に、
図5B(b)→(c)に示すように、ポケット15及び羽毛製品10のうちポケット15と重なる部分以外の部分を、ポケット15の裏側に向けて折り返すとともに、その先端側の略半部をさらにおもて側に向けて折り返して、ポケット15内に収容する。
【0030】
以上のようにして、この羽毛製品10はコンパクトにするとともに、その状態を維持することができる。こうして、非使用時においてはコンパクトにまとめておくことが可能である。
【0031】
なお、上記のものはあくまで本発明の一実施例にすぎず、当業者の知識に基づいて種々の変更を加えた態様で本発明を実施できることはもちろんである。
たとえば、袋状本体20は、長方形状に限らず、楕円形状等、他の種々の形状であってもよい。
【符号の説明】
【0032】
10 羽毛製品
15 ポケット
20 袋状本体
50 羽毛