【解決手段】ジエン系ゴムと、カーボンナノチューブと、シランカップリング剤を含むゴムマスターバッチであって、前記カーボンナノチューブは、200〜600℃までの熱重量測定における、重量減少量が10〜30重量%であることを特徴とするゴムマスターバッチ。
前記ジエン系ゴムと、前記カーボンナノチューブと、前記シランカップリング剤を乾式混合および/または湿式混合する工程を含むことを特徴とする請求項1記載のゴムマスターバッチの製造方法。
【発明を実施するための形態】
【0012】
<ゴムマスターバッチ>
本発明のゴムマスターバッチは、少なくとも、ジエン系ゴムと、カーボンナノチューブと、シランカップリング剤を含み、前記カーボンナノチューブは、200〜600℃までの熱重量測定における、重量減少量が10〜30重量%である。
【0013】
前記ジエン系ゴムは、例えば、天然ゴム(NR)や、イソプレンゴム(IR)、スチレン−ブタジエンゴム(SBR)、ブタジエンゴム(BR)、ブチルゴム(IIR)アクリロニトリル−ブタジエンゴム(NBR)、クロロプレンゴム(CR)などの合成ジエン系ゴムが挙げられる。ジエン系ゴムは、単独で用いてもよく2種類以上を併用してもよい。
【0014】
また、前記ジエン系ゴムは、ジエン系ゴムのゴムラテックス溶液として用いることができる。ゴムラテックス溶液の分散溶媒は、水であることが好ましい。ゴムラテックス溶液としては、例えば、濃縮ラテックスやフィールドラテックスといわれる新鮮ラテックスなどの天然ゴムラテックス溶液や、前記合成ジエン系ゴムを乳化重合により製造した合成ジエン系ゴムラテックス溶液が挙げられる。ゴムラテックス溶液は、単独で用いてもよく2種類以上を併用してもよい。
【0015】
前記カーボンナノチューブは、200〜600℃までの熱重量測定における、重量減少量が10〜30重量%である(有機修飾カーボンナノチューブ)。前記重量減少量は、カーボンナノチューブに結合している有機化合物の重量として定義する。前記結合は、共有結合のような化学的な結合(修飾)でもよく、ミセルや、物理的な吸着のような物理的な結合(修飾)であってもよい。前記重量減少量は、低電気抵抗および低ヒステリシス・ロスを有する加硫ゴムが得られる観点から、15重量%以上であることが好ましく、20重量%以上であることがより好ましく、そして、25重量%以下であることが好ましい。
【0016】
なお、前記熱重量測定は、島津製作所製の熱重量測定装置を用い、乾燥空気雰囲気下で、約5mg程度のカーボンナノチューブの試料につき、常温(25℃程度)から昇温速度10℃/minにて熱重量測定を行い、200℃から600℃での重量の減少量(重量損失率)によって算出される。
【0017】
前記カーボンナノチューブとしては、例えば、単層構造のシングルウォールナノチューブ(SWNT)、複層の同軸管状なすマルチウォールナノチューブ(MWNT)、また、複層構造の中でも特に2層のものはダブルウォールナノチューブ(DWNT)と称さるものが挙げられる。また、カーボンナノチューブの合成方法としては、例えば、アーク放電法、レーザー蒸発法、化学的気相成長法(CVD法)などが挙げられる。カーボンナノチューブは、単独で用いてもよく2種類以上を併用してもよい。
【0018】
前記カーボンナノチューブの直径(平均径)は、特に限定されないが、通常、0.1〜200nmであることが好ましく、1〜20nmであることがより好ましい。また、チューブ長さ(平均長)は、特に限定されないが、通常、1〜500μmであることが好ましく、5〜100μmであることがより好ましい。
【0019】
前記カーボンナノチューブに結合している有機化合物は、カーボンナノチューブの分散を向上させるものであれば、種類を問わないが、例えば、有機官能基、低分子化合物、高分子化合物などが挙げられる。有機官能基としては、例えば、カルボキシ基、(フェノール性)水酸基、ラクトン、カルボン酸無水物、アミノ基などが挙げられる。低分子化合物としては、例えば、陰イオン界面活性剤、陽イオン界面活性剤、両性界面活性剤、非イオン界面活性剤などの界面活性作用を示す界面活性剤、シランカップリング剤(a)などが挙げられる。特に、ドデシル硫酸ナトリウム(SDS)、ドデシルベンゼン硫酸ナトリウム(SDBS);コール酸ナトリウム(SC)、デオキシコール酸ナトリウム(DOC)などのステロイド系界面活性剤などの陰イオン界面活性剤が好ましい。また、高分子化合物としては、例えば、カルボキシメチルセルロースおよびその誘導体、ヒドロキシプロピルセルロースおよびその誘導体などの多糖類の構造を骨格中に有する多糖類ポリマー;芳香族ポリアミド樹脂、芳香族ビニル樹脂、スチレン系樹脂、芳香族ポリイミド樹脂、ポリアニリン等の導電性ポリマー;ポリスチレンスルホン酸、ポリ−α−メチルスチレンスルホン酸等のポリスチレンスルホン酸の誘導体芳香族の構造を骨格中に有するポリマーなどが挙げられる。
【0020】
当該有機修飾カーボンナノチューブの製造方法は、特に限定されず、例えば、空気中での加熱による気相酸化方法、電気化学的処理による酸化方法、強酸処理による酸化方法、ミセル可溶化方法、物理吸着可溶化方法などの方法などが挙げられる。
【0021】
前記強酸処理による酸化方法としては、例えば、強酸水溶液にカーボンナノチューブを加え、超音波(例えば、バス型超音波装置)を照射して、カーボンナノチューブ表面にカルボキシル基が導入された酸化カーボンナノチューブを製造する方法が挙げられる。なお、上記の各酸化方法にて得られた酸化カーボンナノチューブは、例えば、カルボキシル基と反応する官能基を有する有機化合物を反応させる方法、あるいは、前記シランカップリング剤(a)(例えば、アルコキシ基、アミノ基などを有するシランカップリング剤)による脱水縮合反応によって、前記有機化合物をカーボンナノチューブに結合させることができる。また、当該シランカップリング剤(a)は、オリゴマータイプのシランカップリング剤が好適であり、例えば、「KC−89S」(信越化学工業社製)として市販されているものが挙げられる。
【0022】
前記ミセル可溶化方法としては、例えば、前記界面活性剤のミセル水溶液中に、前記カーボンナノチューブを入れ、超音波ホモジナイザーを照射して、前記カーボンナノチューブをミセル化する方法が挙げられる。
【0023】
前記物理吸着可溶化方法としては、例えば、前記高分子化合物を溶解した溶液に、カーボンナノチューブを加えて混合し、両者の疎水性相互作用を利用し、カーボンナノチューブに物理吸着させる方法が挙げられる。
【0024】
前記ミセル可溶化方法の具体的な方法としては、例えば、前記界面活性剤のミセル水溶液中(界面活性剤の濃度:0.1〜1重量%程度)に、前記カーボンナノチューブを入れ、超音波ホモジナイザーを照射して、前記カーボンナノチューブをミセル化した水溶液(カーボンナノチューブ濃度:0.1〜1重量%程度)を得た後、次いで、得られた水溶液に、前記界面活性剤を溶解する洗浄用の有機溶媒(例えば、メタノール、アセトンなど)を加えた後、吸引濾過して、固体状の有機修飾カーボンナノチューブを製造する方法が挙げられる。なお、得られた固体状の有機修飾カーボンナノチューブは、完全に溶媒を除去するため、乾燥することが好ましい。乾燥方法としては、特に限定されず、熱風乾燥、減圧乾燥、凍結乾燥、噴霧乾燥などが挙げられる。減圧乾燥としては、例えば、減圧下(0.01〜100Pa程度)、50〜150℃程度の温度で、処理することが好ましい。また、上記の超音波ホモジナイザーを照射する前に、バスタイプの超音波装置を用いて、予めカーボンナノチューブを分散させてもよい。
【0025】
前記有機修飾カーボンナノチューブの有機化合物の修飾(結合)量は、上記の超音波ホモジナイザーを照射する時間に影響を受けるため、前記200〜600℃までの熱重量測定における、重量減少量が10〜30重量%であるカーボンナノチューブを得るには、超音波ホモジナイザーを照射する時間は、1〜30時間であることが好ましく、2〜24時間であることがより好ましく、5〜15時間であることがさらに好ましい。また、超音波ホモジナイザーの出力は、100〜500W程度であることが好ましく、そして、処理温度は、0〜50℃程度が好ましい。
【0026】
なお、前記有機修飾カーボンナノチューブは、前記界面活性剤(界面活性剤の濃度:0.1〜1重量%程度)のミセル水溶液中に加え、超音波ホモジナイザーを照射して、カーボンナノチューブ含有分散液(カーボンナノチューブ濃度:0.1〜1重量%程度)として用いることもできる。また、前記有機修飾カーボンナノチューブは、水を主成分とする媒体に、直接分散して、カーボンナノチューブ含有分散液を得ることもできる。カーボンナノチューブ含有分散液は、単独で用いてもよく2種類以上を併用してもよい。
【0027】
前記シランカップリング剤としては、通常のゴム用シランカップリング剤であればよく、例えば、ビス(3−トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、ビス(3−トリエトキシシリルプロピル)ジスルフィド、ビス(2−トリエトキシシリルエチル)テトラスルフィド、ビス(4−トリエキトシシリルブチル)ジスルフィド、ビス(3−トリメトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、ビス(2−トリメトキシシリルエチル)ジスルフィドなどのスルフィドシラン;3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリエトキシシラン、3−メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、3−メルカプトプロピルジメチルメトキシシラン、メルカプトエチルトリエトキシシランなどのメルカプトシラン;3−オクタノイルチオ−1−プロピルトリエトキシシラン、3−プロピオニルチオプロピルトリメトキシシランなどの保護化メルカプトシランなどが挙げられる。シランカップリング剤は、単独で用いてもよく2種類以上を併用してもよい。
【0028】
以下、本発明のゴムマスターバッチの各成分の配合量について説明する。
【0029】
前記カーボンナノチューブは、低電気抵抗および低ヒステリシス・ロスを有する加硫ゴムを得る観点から、前記ゴムマスターバッチ中のゴム成分100重量部に対して、0.1〜3重量部であることが好ましく、0.2〜2重量部であることがより好ましく、0.4〜1重量部であることがさらに好ましい。
【0030】
前記シランカップリング剤は、低電気抵抗および低ヒステリシス・ロスを有する加硫ゴムを得る観点から、前記ゴムマスターバッチ中のゴム成分100重量部に対して、0.1〜3重量部であることが好ましく、0.2〜2重量部であることがより好ましく、0.4〜1重量部であることがさらに好ましい。また、前記シランカップリング剤は、前記ゴムマスターバッチを、後述するゴム組成物として用いる場合、前記ゴム組成物中のゴム成分100重量部に対して、1〜30重量部であることが好ましく、2〜20重量部であることがより好ましく、4〜10重量部であることがさらに好ましい。
【0031】
<ゴムマスターバッチの製造方法>
本発明のゴムマスターバッチの製造方法は、前記ジエン系ゴムと、前記カーボンナノチューブと、前記シランカップリング剤を乾式混合および/または湿式混合する工程を含む。
【0032】
前記乾式混合としては、前記ジエン系ゴムと、前記カーボンナノチューブと、前記シランカップリング剤を、例えば、バンバリーミキサー、ニーダー、ロールなどの通常のゴム工業において使用される混練機を用いて混練りする方法が挙げられる。混練りする回数は、1回または複数回であってもよい。混練りする時間は、使用する混練機の大きさなどによって異なるが、通常、2〜5分程度とすればよい。また、混練機の排出温度は、120〜170℃とすることが好ましく、120〜150℃とすることがより好ましい。なお、前記ジエン系ゴム、前記カーボンナノチューブ、および前記シランカップリング剤は、全成分を同時に添加して混練してもよく、任意の順序で添加して混練してもよい。
【0033】
前記湿式混合としては、前記ジエン系ゴムのゴムラテックス溶液と、前記カーボンナノチューブ含有分散液と、必要に応じシランカップリング剤を加え、分散機(例えば、高せん断ミキサー、ハイシアーミキサー、ホモミキサー、ボールミル、ビーズミル、高圧ホモジナイザー、超音波ホモジナイザー、コロイドミルなど)を使用して液相で混合する方法が挙げられる。
【0034】
前記湿式混合の工程を含むゴムマスターバッチの具体的な製造方法としては、(1)前記ジエン系ゴムのゴムラテックス溶液と、前記カーボンナノチューブ含有分散液を湿式混合して、カーボンナノチューブ含有ゴムラテックス溶液を製造する工程(i−(a))と、得られたカーボンナノチューブ含有ゴムラテックス溶液を乾燥して、カーボンナノチューブ含有ゴム複合物を製造する工程(ii−(a))と、得られたカーボンナノチューブ含有ゴム複合物に、前記シランカップリング剤を加えて、乾式混合する工程(iii−(a))を含む製造方法;(2)前記ジエン系ゴムのゴムラテックス溶液と、前記カーボンナノチューブ含有分散液と、前記シランカップリング剤を湿式混合して、カーボンナノチューブおよびシランカップリング剤含有ゴムラテックス溶液を製造する工程(i−(b))と、得られたカーボンナノチューブおよびシランカップリング剤含有ゴムラテックス溶液を乾燥して、カーボンナノチューブおよびシランカップリング剤含有ゴム複合物を製造する工程(ii−(b))を含む製造方法が挙げられる。
【0035】
前記工程(i−(a))は、前記湿式混合により、カーボンナノチューブ含有ゴムラテックス溶液を製造する工程である。また、前記工程(i−(b))は、前記湿式混合により、カーボンナノチューブおよびシランカップリング剤含有ゴムラテックス溶液を製造する工程である。当該湿式混合において、混合する時間は、使用する分散機の大きさなどによって異なるが、通常、1〜10分程度とすればよい。また、混合する温度は、通常、30〜100℃程度とすればよい。なお、前記工程(i−(b))において、ジエン系ゴムのゴムラテックス溶液、前記カーボンナノチューブ含有分散液、および前記シランカップリング剤は、全成分を同時に添加して湿式混合してもよく、任意の順序で添加して湿式混合してもよい。
【0036】
前記工程(ii−(a))は、上記で得られたカーボンナノチューブ含有ゴムラテックス溶液を乾燥して、カーボンナノチューブ含有ゴム複合物を製造する工程である。また、前記工程(ii−(b))は、上記で得られたカーボンナノチューブおよびシランカップリング剤含有ゴムラテックス溶液を乾燥して、カーボンナノチューブおよびシランカップリング剤含有ゴム複合物を製造する工程である。
【0037】
前記乾燥の方法としては、例えば、単軸押出機、オーブン、真空乾燥機、エアードライヤーなどの各種乾燥装置を使用することができる。乾燥は、常圧下で行ってもよいが、減圧下(10〜1000Pa程度)で行うことが好ましい。乾燥する時間は、使用する乾燥機の大きさなどによって異なるが、減圧下、通常、30〜180分程度とすればよい。また、乾燥する温度は、通常、50〜150℃程度とすればよい。
【0038】
なお、前記カーボンナノチューブ含有分散液が、前記界面活性剤によりミセル化されたカーボンナノチューブ含有分散液の場合、前記乾燥の工程の前に、当該ミセルを崩壊する(ミセル化を解除する)ことにより上記の乾燥時間を短縮できる観点から、例えば、前記カーボンナノチューブ含有ゴムラテックス溶液に、メタノール、エタノールなどの有機溶剤を加えてもよい。
【0039】
前記工程(iii−(a))は、前記カーボンナノチューブ含有ゴム複合物に、シランカップリング剤を加えて、乾式混合する工程である。乾式混合は、例えば、バンバリーミキサー、ニーダー、ロールなどの通常のゴム工業において使用される混練機を用いて混練りする方法が挙げられる。混練りする回数は、1回または複数回であってもよい。混練りする時間は、使用する混練機の大きさなどによって異なるが、通常、2〜5分程度とすればよい。また、混練機の排出温度は、120〜170℃とすることが好ましく、120〜150℃とすることがより好ましい。
【0040】
本発明のゴムマスターバッチの製造方法は、低電気抵抗および低ヒステリシス・ロスを有する加硫ゴムを得る観点から、少なくとも、前記ジエン系ゴムのゴムラテックス溶液と、前記カーボンナノチューブ含有分散液を、液相で混合する湿式混合する方法を含むことが好ましく(前記工程(i−(a))および(i−(b))、そして、前記シランカップリング剤を加えて、湿式混合する方法を含むことがより好ましい(前記工程(i−(b))。
【0041】
<各種配合剤>
前記ゴムマスターバッチは、さらに、各種配合剤を用いて、ゴム組成物とすることができる。使用可能な配合剤としては、例えば、硫黄系加硫剤、加硫促進剤、老化防止剤、シリカ、カーボンブラック、酸化亜鉛、メチレン受容体およびメチレン供与体、ステアリン酸、加硫促進助剤、加硫遅延剤、有機過酸化物、ワックスやオイルなどの軟化剤、加工助剤などの通常ゴム工業で使用される配合剤が挙げられる。なお、各種配合剤のうち、シリカ、カーボンブラック、ワックスやオイルなどの軟化剤は、ゴムマスターバッチの製造の際に用いてもよい。
【0042】
前記硫黄系加硫剤としての硫黄は、通常のゴム用硫黄であればよく、例えば、粉末硫黄、沈降硫黄、不溶性硫黄、高分散性硫黄などを用いることができる。硫黄系加硫剤は、単独で用いてもよく2種類以上を併用してもよい。
【0043】
前記硫黄の含有量は、ゴム組成物中のゴム成分100重量部に対して0.3〜6.5重量部であることが好ましい。硫黄の含有量が0.3重量部未満であると、加硫ゴムの架橋密度が不足してゴム強度などが低下し、6.5重量部を超えると、特に耐熱性および耐久性の両方が悪化する。加硫ゴムのゴム強度を良好に確保し、耐熱性と耐久性をより向上するためには、硫黄の含有量がゴム組成物中のゴム成分100重量部に対して1.0〜5.5重量部であることがより好ましい。
【0044】
前記加硫促進剤としては、通常のゴム用加硫促進剤であればよく、スルフェンアミド系加硫促進剤、チウラム系加硫促進剤、チアゾール系加硫促進剤、チオウレア系加硫促進剤、グアニジン系加硫促進剤、ジチオカルバミン酸塩系加硫促進剤などが挙げられる。加硫促進剤は、単独で用いてもよく2種類以上を併用してもよい。
【0045】
前記加硫促進剤の含有量は、ゴム組成物中のゴム成分100重量部に対して1〜5重量部であることが好ましい。
【0046】
前記老化防止剤としては、通常のゴム用老化防止剤であればよく、芳香族アミン系老化防止剤、アミン−ケトン系老化防止剤、モノフェノール系老化防止剤、ビスフェノール系老化防止剤、ポリフェノール系老化防止剤、ジチオカルバミン酸塩系老化防止剤、チオウレア系老化防止剤などが挙げられる。老化防止剤は、単独で用いてもよく2種類以上を併用してもよい。
【0047】
前記老化防止剤の含有量は、ゴム組成物中のゴム成分100重量部に対して1〜5重量部であることが好ましい。
【0048】
前記シリカとしては、補強性のフィラーとして使用できるものであれば何ら限定されるものではないが、湿式シリカ(含水ケイ酸)が好ましい。シリカのコロイダル特性も、特に限定されるものではないが、BET法による窒素吸着比表面積(BET)が150〜250m
2/gであるものが好ましく、180〜230m
2/gであるものがより好ましい。なお、シリカのBETはISO 5794に記載のBET法に準拠し測定される。シリカは、単独で用いてもよく2種類以上を併用してもよい。
【0049】
前記シリカの含有量は、ゴム組成物中のゴム成分100重量部に対して、40〜100重量部であることがより好ましく、50〜80重量部であることがさらに好ましい。
【0050】
前記各種配合剤の配合(添加)において、その配合方法は特に限定されないが、例えば、硫黄系加硫剤および加硫促進剤などの加硫系成分以外の成分を、任意の順序で添加し混練する方法、同時に添加して混練する方法、また、全成分を同時に添加して混練する方法などが挙げられる。また、混練りする回数は、1回または複数回であってもよい。混練りする時間は、使用する混練機の大きさなどによって異なるが、通常、2〜5分程度とすればよい。また、混練機の排出温度は、120〜170℃とすることが好ましく、120〜150℃とすることがより好ましい。なお、混練機の排出温度は、前記加硫系成分を含む場合、80〜110℃とすることが好ましく、80〜100℃とすることがより好ましい。
【0051】
本発明のゴムマスターバッチあるいはゴム組成物から得られた加硫ゴムは、低い電気抵抗(低電気体積抵抗値)および低いヒステリシス・ロスを有するため、空気入りタイヤ用に適している。
【実施例】
【0052】
以下に実施例をあげて本発明を説明するが、本発明はこれら実施例によりなんら限定されるものではない。
【0053】
(使用原料)
a)スチレン−ブタジエンゴム(SBR):「JSR1502」(JSR社製)
b)カーボンナノチューブ(CNT):「MeiJO Arc-SO」(平均径:1.4nm、名城カーボン社製)
c)シランカップリング剤:ビス(3−トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、「Si69」(デグザ社製)
d)シリカ:「ニップシールAQ」(BET=205m
2/g)(日本シリカ工業社製)
e)亜鉛華:「亜鉛華1号」(三井金属社製)
f)老化防止剤:「アンチゲン6C」(住友化学工業社製)
g)ステアリン酸:「ルナックS−20」(花王社製)
h)ワックス:「OZOACE0355」(日本精蝋社製)
i)オイル:「プロセスP200」(JOMOサンエナジー社製)
j)硫黄:「5%油入微粉末硫黄」(鶴見化学工業社製)
k)加硫促進剤:「ソクシールCZ」(住友化学社製)
l)SBRラテックス溶液:「ローデックス」(固形分濃度:50重量%、JSR社製)
【0054】
<有機修飾カーボンナノチューブの調製>
<調整例1(重量減少量1.2%CNT)>
蒸留水300mlに、界面活性剤としてデオキシコール酸ナトリウム(DOC)を3gとかし、1% wt/volの界面活性剤水溶液を調製した。当該水溶液にカーボンナノチューブ(CNT)2.2gを加え、冷却しながら超音波ホモジナイザー(日本エマソン社製、「Sonifer SFX550」)を10時間照射し、CNTを界面活性剤水溶液中にミセル化した。次いで、上記のCNTがミセル化した水溶液を50,000rpm、1時間で超遠心分離をした後、上澄み液(全体の約90vol%)を回収した。当該上澄み液は、結晶性の低いCNT、触媒金属、アモルファスカーボンなどの不純物が含まれていない。次に、当該上澄み液にメタノールを加え、CNTのミセル化を解除したCNT分散液を得た後、当該CNT分散液を吸引ろ過し、固形状CNTを得た。さらに、当該固体状のCNTを蒸留水およびメタノールそれぞれの溶媒に対し分散した後、ろ過を行い、これらを繰り返してリンス作業を行い、固体状のCNTに含まれる余分な界面活性剤を除去した。リンス後の得られた固体状のCNTを真空下(約10
−4Pa)、500℃、4時間で加熱し、アニーリング作業を行い、1.57gの有機修飾カーボンナノチューブを得た。
【0055】
上記で得られた有機修飾カーボンナノチューブの試料につき、熱重量測定装置(島津製作所社製、「TGA-50」)を用い、乾燥空気雰囲気下で、常温(25℃程度)から昇温速度10℃/minにて熱重量測定を行い、200℃から600℃での重量の減少量(重量損失率)により、重量減少量を算出した。その結果、この試料の重量減少量は1.2%であった。この試料を重量減少量が1.2%であるカーボンナノチューブとした。
【0056】
<調整例2(重量減少量11.1%CNT)>
蒸留水300mlに、界面活性剤としてデオキシコール酸ナトリウム(DOC)を3gとかし、1% wt/volの界面活性剤を含んだ水溶液を調製した。当該水溶液にカーボンナノチューブ(CNT)2.2gを加え、冷却しながら超音波ホモジナイザー(日本エマソン社製、「Sonifer SFX550」)を2時間照射し、CNTを界面活性剤水溶液中にミセル化した。次いで、当該CNTがミセル化した水溶液にメタノールを加え、CNTのミセル化を解除したCNT分散液を得た後、当該CNT分散液を吸引ろ過し、固形状CNTを得た。さらに、当該固体状のCNTを蒸留水およびメタノールそれぞれの溶媒に対し分散した後、ろ過を行い、これらを繰り返してリンス作業を行い、固体状のCNTに含まれる余分な界面活性剤を除去した。リンス後の得られた固体状のCNTを減圧下(約4−10Pa)、100℃、24時間で乾燥して、有機修飾カーボンナノチューブを得た。得られた有機修飾カーボンナノチューブの試料について、上記の熱重量測定を行ったところ、重量減少量は、11.1%であった。この試料を重量減少量が11.1%であるカーボンナノチューブとした。
【0057】
<調整例3〜5(重量減少量16.6%、22.3%、26.7%CNT)>
前記調整例2の超音波ホモジナイザーの照射時間を、それぞれ、7時間、14時間、24時間としたこと以外は、調整例2と同様の操作を行い、有機修飾カーボンナノチューブを得た。得られた各有機修飾カーボンナノチューブの試料について、上記の熱重量測定を行ったところ、重量減少量は、それぞれ、16.6%、22.3%、26.7%であった。これら試料を、重量減少量が16.6%、22.3%、26.7%であるカーボンナノチューブとした。
【0058】
<調整例6(重量減少量35.2%CNT)>
上記で得られた重量減少量が22.3%であるカーボンナノチューブ20gを、1Lの濃硝酸(濃度:70%)に加え、バスタイプの超音波装置(日本エマンソン株式会社製、「ブランソニック CPX Model 8800」)にて、3時間照射した後、当該分散液を吸引ろ過し、固形状CNTを得た。さらに、当該固体状のCNTを蒸留水およびメタノールそれぞれの溶媒に対し分散した後、ろ過を行い、これらを繰り返してリンス作業を行った。リンス後の得られた固体状のCNTを減圧下(約4−10Pa)、100℃、24時間で乾燥して、有機修飾カーボンナノチューブを得た。得られた有機修飾カーボンナノチューブについて、上記の熱重量測定を行ったところ、重量減少量は、35.2%であった。この試料を、重量減少量が35.2%であるカーボンナノチューブとした。
【0059】
<実施例1>
<ゴムマスターバッチおよび未加硫ゴム組成物の製造>
表1に記載のSBRと、CNT(上記の調製例2で得られた有機修飾カーボンナノチューブ(重量減少量が11.1%であるカーボンナノチューブ))と、シランカップリング剤を、バンバリーミキサーを用いて乾式混合(混練り時間:3分、排出温度:150℃)してゴムマスターバッチを製造した(表1の乾式工程(1))。次いで、表1に記載の各原料(硫黄と加硫促進剤を除く成分)を、バンバリーミキサーを用いて乾式混合(混練り時間:3分、排出温度:150℃)してゴム組成物を製造した(表1の乾式工程(2))。さらに、得られたゴム組成物に、表1に記載の硫黄、加硫促進剤を加え、バンバリーミキサーを用いて乾式混合(混練り時間:1分、排出温度:90℃)することにより、未加硫ゴム組成物を製造した(表1の乾式工程(3))。なお、表1中の配合比率は、ゴム組成物に含まれるゴム成分の全量を100重量部としたときの重量部(phr)で示す。
【0060】
<実施例2〜4、比較例1〜4>
<ゴムマスターバッチおよび未加硫ゴム組成物の製造>
各原料の種類とその配合量を表1に示すように変えたこと以外は、実施例1と同様の方法により、ゴムマスターバッチおよび未加硫ゴム組成物を製造した。
【0061】
<加硫ゴムの製造>
上記の実施例1〜4および比較例1〜4で得られた未加硫ゴム組成物を、150℃、30分間の条件で加硫することにより、加硫ゴムを製造した。得られた加硫ゴムについて以下の評価を行った。評価結果を表1に示す。
【0062】
<電気体積抵抗値の評価>
電気体積抵抗値の評価は、得られた加硫ゴムの試験片(厚さ2mm)において、(株)三菱化学アナリテック製のハイレスターUPを用いて、電気体積抵抗値を測定した。電気体積抵抗値の常用対数を取り、比較例1の値を100とした指数で表示した。値が小さいほど、電気体積抵抗率が小さく、低い電気体積抵抗値を有することを示す。
【0063】
<損失正接(tanδ)の評価>
損失正接(tanδ)の評価は、得られた加硫ゴムの試験片において、東洋精機(株)製の粘弾性試験機を用い、周波数10Hz、静歪10%、温度60℃における動歪10%で測定し、比較例1の値を100とした指数で表示した。60℃でのtanδは、指数が小さいほど、ヒステリシス・ロスに優れることを示す。
【0064】
【表1】
【0065】
<カーボンナノチューブ含有分散液の調製>
<調整例7>
蒸留水300mlに、界面活性剤としてドデシル硫酸ナトリウム(SDS)を3gとかし、1% wt/volの界面活性剤水溶液(合計6つ)を調製した。当該水溶液に、上記で得られた各有機修飾カーボンナノチューブ(1.2%、11.1%、16.6%、22.3%、26.7%、35.2%CNT)5gを加え、冷却しながら超音波ホモジナイザー(日本エマソン社製、「Sonifer SFX550」)を2時間照射し、CNTを界面活性剤水溶液中にミセル化し、各カーボンナノチューブ含有分散液を得た。
【0066】
<実施例5>
<ゴムマスターバッチおよび未加硫ゴム組成物の製造>
表2に記載のSBRラテックス(ゴム成分:300g)と、上記で得られた重量減少量が11.1%であるカーボンナノチューブ含有分散液(CNT成分:1.5g)を、攪拌機付容器((株)カワタ製、「SUPERMIXER PICCOLO」)に入れ、室温で700rpm、1時間攪拌し、カーボンナノチューブ含有ゴムラテックス溶液を製造した(工程(i−(a)):表2の湿式工程(1))。次に、得られたカーボンナノチューブ含有ゴムラテックス溶液に、メタノール(1000g)を加え混合した後、吸引濾過して固形分を回収した。その後、不要な溶媒を除去するため、減圧下(約4−10Pa)、100℃、24時間で乾燥して、カーボンナノチューブ含有ゴム複合物を製造した(工程(ii−(a)))。当該カーボンナノチューブ含有ゴム複合物と、表2記載のシランカップリング剤を、バンバリーミキサーを用いて乾式混合(混練り時間:3分、排出温度:150℃)してゴムマスターバッチを製造した(工程(iii−(a):表2の乾式工程(1)):乾式工程(1))。次いで、表2に記載の各原料(硫黄と加硫促進剤を除く成分)を、バンバリーミキサーを用いて乾式混合(混練り時間:3分、排出温度:150℃)してゴム組成物を製造した(乾式工程(2))。さらに、得られたゴム組成物に、表2に記載の硫黄、加硫促進剤を加え、バンバリーミキサーを用いて乾式混合(混練り時間:1分、排出温度:90℃)することにより、未加硫ゴム組成物を製造した(表2の乾式工程(3))。なお、表2中の配合比率は、ゴム組成物に含まれるゴム成分の全量を100重量部としたときの重量部(phr)で示す。
【0067】
<実施例6〜8、比較例5〜8>
<ゴムマスターバッチおよび未加硫ゴム組成物の製造>
各原料の種類とその配合量を表2に示すように変えたこと以外は、実施例5と同様の方法により、ゴムマスターバッチおよび未加硫ゴム組成物を製造した。
【0068】
<実施例9>
<ゴムマスターバッチおよび未加硫ゴム組成物の製造>
表2に記載のSBRラテックス(ゴム成分:300g)と、上記で得られた重量減少量が11.1%であるカーボンナノチューブ含有分散液(CNT成分:1.5g)を、攪拌機付容器((株)カワタ製、「SUPERMIXER PICCOLO」)に入れ、室温で700rpm、1時間攪拌した後、さらに、シランカップリング剤(1.5g)を加え、90℃で100rpm、3分間攪拌して、カーボンナノチューブおよびシランカップリング剤含有ゴムラテックス溶液を製造した(工程(i−(b)):表2の湿式工程(1))。次に、得られたカーボンナノチューブおよびシランカップリング剤含有ゴムラテックス溶液に、メタノール(1000g)を加え混合した後、吸引濾過して固形分を回収した。その後、不要な溶媒を除去するため、減圧下(約4−10Pa)、100℃、24時間で乾燥して、カーボンナノチューブおよびシランカップリング剤含有ゴム複合物を製造した(ii−(b)):表2の乾式工程(1))。当該カーボンナノチューブおよびシランカップリング剤含有ゴム複合物と、表2に記載の各原料(硫黄と加硫促進剤を除く成分)を、バンバリーミキサーを用いて乾式混合(混練り時間:3分、排出温度:150℃)してゴム組成物を製造した(表2の乾式工程(2))。さらに、得られたゴム組成物に、表2に記載の硫黄、加硫促進剤を加え、バンバリーミキサーを用いて乾式混合(混練り時間:1分、排出温度:90℃)することにより、未加硫ゴム組成物を製造した(表2の乾式工程(3))。なお、表2中の配合比率は、ゴム組成物に含まれるゴム成分の全量を100重量部としたときの重量部(phr)で示す。
【0069】
<実施例10〜12、比較例9>
<ゴムマスターバッチおよび未加硫ゴム組成物の製造>
各原料の種類とその配合量を表2に示すように変えたこと以外は、実施例9と同様の方法により、ゴムマスターバッチおよび未加硫ゴム組成物を製造した。
【0070】
<加硫ゴムの製造>
上記の実施例6〜12および比較例5〜9で得られた未加硫ゴム組成物を、150℃、30分間の条件で加硫することにより、加硫ゴムを製造した。得られた加硫ゴムについて上記の評価を行った。評価結果を表2に示す。
【0071】
【表2】