(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2018-100370(P2018-100370A)
(43)【公開日】2018年6月28日
(54)【発明の名称】ゴム組成物
(51)【国際特許分類】
C08L 9/00 20060101AFI20180601BHJP
C08L 7/00 20060101ALI20180601BHJP
C08L 17/00 20060101ALI20180601BHJP
C08K 3/04 20060101ALI20180601BHJP
C08K 3/36 20060101ALI20180601BHJP
C08L 71/02 20060101ALI20180601BHJP
B60C 19/00 20060101ALI20180601BHJP
【FI】
C08L9/00ZAB
C08L7/00
C08L17/00
C08K3/04
C08K3/36
C08L71/02
B60C19/00 L
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2016-247995(P2016-247995)
(22)【出願日】2016年12月21日
(71)【出願人】
【識別番号】000003148
【氏名又は名称】東洋ゴム工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000729
【氏名又は名称】特許業務法人 ユニアス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】西川 由真
【テーマコード(参考)】
4J002
【Fターム(参考)】
4J002AC011
4J002AC031
4J002AC061
4J002AC071
4J002AC081
4J002AC132
4J002AC142
4J002CH023
4J002DA036
4J002DE146
4J002DE236
4J002DJ016
4J002DJ036
4J002DJ046
4J002FD012
4J002FD016
4J002FD173
4J002FD313
4J002GN01
(57)【要約】
【課題】ゴム粉を含有するものであっても加工性に優れ、かつ耐摩耗性および引裂き力に優れた加硫ゴムの原料となり得るゴム組成物を提供すること。
【解決手段】ジエン系ゴムを含むゴム成分、充填材および粉ゴムを含有するゴム組成物であって、さらに芳香族ポリオキシエチレン誘導体を含有するゴム組成物。ゴム成分の全量を100質量部としたとき、芳香族ポリオキシエチレン誘導体を0.1〜10質量部含有することが好ましい。また、ゴム成分の全量を100質量部としたとき、粉ゴムを0.1〜40質量部含有することが好ましい。
【選択図】 なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ジエン系ゴムを含むゴム成分、充填材および粉ゴムを含有するゴム組成物であって、
さらに芳香族ポリオキシエチレン誘導体を含有することを特徴とするゴム組成物。
【請求項2】
ゴム成分の全量を100質量部としたとき、前記芳香族ポリオキシエチレン誘導体を0.1〜10質量部含有する請求項1に記載のゴム組成物。
【請求項3】
ゴム成分の全量を100質量部としたとき、前記粉ゴムを0.1〜40質量部含有する請求項1または2に記載のゴム組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ジエン系ゴムを含むゴム成分、充填材および粉ゴムを含有するゴム組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、廃タイヤなどのゴム製品廃材は再利用されており、例えばセメント工場などで燃料として再利用されているが、近年、環境問題を配慮し、廃タイヤなどを粉砕し、ゴム片またはゴム粉としてそのまま使用する、マテリアルリサイクルが推奨されている。しかしながら、廃タイヤなどを微粉砕化したゴム粉を新ゴムに混合した場合、そのゴム組成物の粘度上昇に伴う加工性悪化や、ゴム組成物を加硫して得られる加硫ゴムの物性の悪化、例えば耐摩耗性や引裂き力などの悪化が問題となっていた。
【0003】
下記特許文献1では、粉ゴムを配合しつつも加工性が良好に保たれたゴム組成物を提供することを目的として、ゴム組成物中にグリセリン脂肪酸エステル組成物を配合する技術が報告されている。
【0004】
下記特許文献2では、加工性や作業性を損ねることなく、高い破壊特性と耐摩耗性を維持し、廃ゴム製品のリサイクル化を向上しうる微粒径ゴム含有のゴム組成物を得ることを目的として、脂肪酸エステル、脂肪酸金属塩又は脂肪酸エステル及び脂肪酸金属塩の混合物からなる加工助剤を添加する技術が報告されている。
【0005】
下記特許文献3では、耐摩耗性および低発熱性があり、リサイクル率の高いゴム組成物を提供することを目的として、ダイポーラー窒素を含む部分Q、および酸素または硫黄を含む4〜6の窒素含有複素環部分Bを有する化合物を添加する技術が報告されている。
【0006】
下記特許文献4では、破壊特性、耐摩耗性および発熱特性などの低下を抑制することができ、使用済みタイヤなどのゴム製品のリサイクル化の向上が可能な再生ゴム含有ゴム組成物を提供することを目的として、共役ジエン系共重合体ゴムと伸展油とを、重量比100:0〜100:80の割合で含有する油展ゴム20重量%以上含むゴム成分を使用する技術が報告されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2016−108421号公報
【特許文献2】特開2009−35603号公報
【特許文献3】特開2007−224072号公報
【特許文献4】特開2003−253046号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、前記特許文献に記載の技術では、ゴム粉を含有するゴム組成物の加工性を向上しつつ、その加硫ゴムの耐摩耗性や引裂き力などのゴム物性を向上することは困難であった。
【0009】
本発明は上記実情に鑑みてなされたものであり、その目的は、ゴム粉を含有するものであっても加工性に優れ、かつ耐摩耗性および引裂き力に優れた加硫ゴムの原料となり得るゴム組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的は、下記の如き本発明により達成できる。即ち本発明は、ジエン系ゴムを含むゴム成分、充填材および粉ゴムを含有するゴム組成物であって、さらに芳香族ポリオキシエチレン誘導体を含有することを特徴とするゴム組成物に関する。
【0011】
ゴム組成物中に、廃タイヤなどを粉砕して得られる粉ゴムを配合すると、通常はその加工性が悪化する傾向がある。しかしながら、本発明に係るゴム組成物は、芳香族ポリオキシエチレン誘導体を含有するため、ゴム組成物の加工性が向上するだけでなく、得られる加硫ゴムのゴム物性、特には耐摩耗性および引裂き力も向上する。これらの効果が得られる理由としては、以下の理由が推測可能である。
(i)芳香族ポリオキシエチレン誘導体が有するポリオキシエチレン部位は、ゴム組成物中でゴム成分および粉ゴムに対し、ポリマー潤滑作用を発揮するため、ゴム組成物の加工時の粘度低減効果を示す。これにより、ゴム組成物の加工性が向上する。
(ii)ゴム組成物が充填材として、例えばカーボンブラックを含有する場合、芳香族ポリオキシエチレン誘導体が有する芳香環部位は、ゴム粉に含まれるカーボンブラックおよびゴム成分中に含まれるカーボンブラックと強い相互作用を示す。一方、ゴム組成物が充填材として、例えばシリカを含有する場合、芳香族ポリオキシエチレン誘導体が有するポリオキシエチレン部位は、ゴム成分中に含まれるシリカと強い相互作用を示す。これらの結果、本発明に係るゴム組成物の加硫ゴムは、ゴム物性、特には耐摩耗性および引裂き力が向上する。
【0012】
上記ゴム組成物において、ゴム成分の全量を100質量部としたとき、前記芳香族ポリオキシエチレン誘導体を0.1〜10質量部含有することが好ましい。
【0013】
上記ゴム組成物において、ゴム成分の全量を100質量部としたとき、前記粉ゴムを0.1〜40質量部含有することが好ましい。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明に係るゴム組成物は、ジエン系ゴムを含むゴム成分、充填材および粉ゴムを含有するゴム組成物であって、さらに芳香族ポリオキシエチレン誘導体を含有する。
【0015】
ジエン系ゴムとしては、例えば、天然ゴム(NR);イソプレンゴム(IR)、ブタジエンゴム(BR)、スチレンブタジエンゴム(SBR)、ブチルゴム(IIR)、およびアクリルニトリルブタジエンゴム(NBR)などのジエン系合成ゴム;臭素化ブチルゴム(BR−IIR)などのハロゲン化ブチルゴム;その他ポリウレタンゴム、アクリルゴム、フッ素ゴム、シリコンゴム、およびクロロスルホン化ポリエチレンなどを含めた合成ゴム類などが挙げられる。これらの中でも、本発明においては、天然ゴム、スチレンブタジエンゴムおよびブタジエンゴムの少なくとも1種を使用することが好ましい。
【0016】
本発明において、充填材とは、カーボンブラック、シリカ、クレー、タルク、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、水酸化アルミニウムなど、ゴム工業において通常使用される無機充填材を意味する。上記無機充填材の中でも、本発明においてはカーボンブラックまたはシリカを特に好適に使用することができる。あるいは、カーボンブラックとシリカとを併用して使用することも可能である。
【0017】
カーボンブラックとしては、例えばSAF、ISAF、HAF、FEF、GPFなど、通常のゴム工業で使用されるカーボンブラックの他、アセチレンブラックやケッチェンブラックなどの導電性カーボンブラックを使用することができる。カーボンブラックは、通常のゴム工業において、そのハンドリング性を考慮して造粒された、造粒カーボンブラックであってもよく、未造粒カーボンブラックであってもよい。
【0018】
シリカとしては、通常のゴム補強に用いられる湿式シリカ、乾式シリカ、ゾル−ゲルシリカ、表面処理シリカなどが用いられる。なかでも、湿式シリカが好ましい。また、シリカを使用する場合、シランカップリング剤を併用することが好ましい。シランカップリング剤としては、分子中に硫黄を含むものであれば特に限定されず、ゴム組成物においてシリカとともに配合される各種のシランカップリング剤を用いることができる。例えば、ビス(3−トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィド(例えば、デグサ社製「Si69」)、ビス(3−トリエトキシシリルプロピル)ジスルフィド(例えば、デグサ社製「Si75」)、ビス(2−トリエトキシシリルエチル)テトラスルフィド、ビス(4−トリエキトシシリルブチル)ジスルフィド、ビス(3−トリメトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、ビス(2−トリメトキシシリルエチル)ジスルフィドなどのスルフィドシラン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリエトキシシラン、メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、メルカプトプロピルジメチルメトキシシラン、メルカプトエチルトリエトキシシランなどのメルカプトシラン、3−オクタノイルチオ−1−プロピルトリエトキシシラン、3−プロピオニルチオプロピルトリメトキシシランなどの保護化メルカプトシランが挙げられる。シランカップリング剤の配合量は、シリカ100質量部に対して5〜15質量部であることが好ましく、より好ましくは5〜10質量部である。
【0019】
本発明において、ゴム組成物中の充填材の配合量は、ジエン系ゴム100質量部に対し、20〜120質量部であることが好ましく、30〜80質量部であることがより好ましい。
【0020】
ゴム粉は少なくとも一部が加硫されたものを好適に使用可能であり、特に環境問題を考慮した場合、使用済みタイヤを原料として得られた再生ゴムを粉砕し、粉末化したものが好ましい。得られる加硫ゴムの耐摩耗性および引裂き力、さらにはゴム組成物の加工性を考慮した場合、ゴム粉の粒径はASTM D5644−01に準拠したMeshで80Mesh以上であることが好ましく、140Mesh以上であることがより好ましい。
【0021】
本発明において、ゴム組成物中のゴム粉の配合量は、ジエン系ゴム100質量部に対し、0.1〜40質量部であることが好ましく、5〜30質量部であることがより好ましい。
【0022】
芳香族ポリオキシエチレン誘導体は、ベンゼン、ナフタレンおよびアントラセンなどの芳香環部位と、ポリオキシエチレン部位とにより構成される。ポリオキシエチレン部位中のオキシエチレンユニットの重合数としては、例えば1〜20程度が好ましい。芳香族ポリオキシエチレン誘導体としては、特に下記一般式で表されるものが好ましい。
【0023】
【化1】
(式中、nは1〜20の整数)。
【0024】
【化2】
(式中、nは1〜20の整数)。
【0025】
本発明において、ゴム組成物中の芳香族ポリオキシエチレン誘導体の配合量は、ジエン系ゴム100質量部に対し、0.1〜10質量部であることが好ましく、0.5〜7質量部であることがより好ましい。
【0026】
本発明のゴム組成物は、ジエン系ゴムを含むゴム成分、充填材、粉ゴムおよび芳香族ポリオキシエチレン誘導体とともに、硫黄系加硫剤、加硫促進剤、シランカップリング剤、ステアリン酸、加硫促進助剤、加硫遅延剤、老化防止剤、ワックスやオイルなどの軟化剤、加工助剤などの通常ゴム工業で使用される配合剤を、本発明の効果を損なわない範囲において適宜配合し用いることができる。
【0027】
加硫促進剤としては、ゴム加硫用として通常用いられる、スルフェンアミド系加硫促進剤、チウラム系加硫促進剤、チアゾール系加硫促進剤、チオウレア系加硫促進剤、グアニジン系加硫促進剤、ジチオカルバミン酸塩系加硫促進剤などの加硫促進剤を単独、または適宜混合して使用しても良い。
【0028】
老化防止剤としては、ゴム用として通常用いられる、芳香族アミン系老化防止剤、アミン−ケトン系老化防止剤、モノフェノール系老化防止剤、ビスフェノール系老化防止剤、ポリフェノール系老化防止剤、ジチオカルバミン酸塩系老化防止剤、チオウレア系老化防止剤などの老化防止剤を単独、または適宜混合して使用しても良い。
【0029】
本発明のゴム組成物は、ジエン系ゴムを含むゴム成分、充填材、粉ゴムおよび芳香族ポリオキシエチレン誘導体、必要に応じて、硫黄系加硫剤、加硫促進剤、シランカップリング剤、ステアリン酸、加硫促進助剤、加硫遅延剤、老化防止剤、ワックスやオイルなどの軟化剤、加工助剤などを、バンバリーミキサー、ニーダー、ロールなどの通常のゴム工業において使用される混練機を用いて混練りすることにより得られる。
【0030】
また、上記各成分の配合方法は特に限定されず、硫黄系加硫剤、および加硫促進剤などの加硫系成分以外の配合成分を予め混練してマスターバッチとし、残りの成分を添加してさらに混練する方法、各成分を任意の順序で添加し混練する方法、全成分を同時に添加して混練する方法などのいずれでもよい。
【実施例】
【0031】
以下に、この発明の実施例を記載してより具体的に説明する。
【0032】
(ゴム組成物の調製)
ジエン系ゴム100質量部に対して、表1および表2の配合処方に従い、実施例1〜6、比較例1〜4の各原料を配合し、通常のバンバリーミキサーを用いて混練し、ゴム組成物を調整した。表1および表2に記載の各使用原料を以下に示す。
【0033】
(使用原料)
a)ジエン系ゴム
NR;「RSS3号」
S−SBR(溶液重合SBR);JSR社製「HPR350」
BR;宇部興産社製「BR150B」
b)充填材
シリカ;東ソー・シリカ社製「ニップシールAQ」
カーボンブラック;三菱化学社製「ダイアブラックN341」
c)ゴム粉;Lehigh社製「PD140BU」
d)芳香族ポリオキシエチレン誘導体
ポリオキシエチレンナフチルエーテル;第一工業製薬社製「ノイゲンEN」
ポリオキシエチレンフェニルエーテル;第一工業製薬「PHE−1」
e)シランカップリング剤;エボニック・デグサ社製「Si75」
f)オイル;昭和シェル石油社製「エキストラクト4号S」
g)亜鉛華;三井金属鉱業社製「亜鉛華1号」
h)老化防止剤;大内新興化学工業社製「ノクラック6C」
i)ステアリン酸;花王社製「ルナックS20」
j)硫黄;鶴見化学工業社製「粉末硫黄」
k)加硫促進剤
加硫促進剤1;大内新興化学工業社製「ノクセラーD」
加硫促進剤2;住友化学社製「ソクシノールCZ」
【0034】
(評価項目)
(1)加工性
JISK6300に準拠して東洋精機(株)製ロータレスムーニー測定機を用い、未加硫ゴムを100℃で1分間余熱後、4分後のトルク値をムーニー単位で測定し、実施例1〜2および比較例2については、比較例1を100とした指数で示し、実施例3〜6および比較例4については、比較例2を100とした指数で示した。値が小さいほどゴム組成物の加工性に優れることを示す。
【0035】
(2)耐摩耗性
JIS K6264に準拠し、岩本製作所(株)製のランボーン摩耗試験機を用いて、荷重40N、スリップ率30%の条件で摩耗減量を測定し、実施例1〜2および比較例2については、比較例1を100とした指数で示し、実施例3〜6および比較例4については、比較例2を100とした指数で示した。値が大きいほど加硫ゴムの耐摩耗性に優れることを示す。
【0036】
(3)引裂き力
JIS K6252規定のクレセント形で打ち抜き、くぼみ中央に0.50±0.08mmの切れ込みを入れたサンプルを、島津製作所の引張り試験機によって500mm/minの引張り速度で試験を行うことで測定し、実施例1〜2および比較例2については、比較例1を100とした指数で示し、実施例3〜6および比較例4については、比較例2を100とした指数で示した。値が大きいほど加硫ゴムの引裂き力に優れることを示す。
【0037】
【表1】
【0038】
【表2】