(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2018-100460(P2018-100460A)
(43)【公開日】2018年6月28日
(54)【発明の名称】プラスチックフィルム製の手袋
(51)【国際特許分類】
A41D 19/00 20060101AFI20180601BHJP
【FI】
A41D19/00 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2016-246702(P2016-246702)
(22)【出願日】2016年12月20日
(71)【出願人】
【識別番号】302057926
【氏名又は名称】エフピコ商事株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100117204
【弁理士】
【氏名又は名称】岩田 徳哉
(72)【発明者】
【氏名】小松 毅至
【テーマコード(参考)】
3B033
【Fターム(参考)】
3B033AA00
3B033AB00
3B033AB09
3B033AC01
(57)【要約】
【課題】装着感と耐久性と作業性に優れ、ブロッキングを防止できる手袋の提供。
【解決手段】両面にエンボス加工されたプラスチックフィルムからなる手袋であって、手袋の外面10に突出する外面凸部20と手袋の内面11に突出する内面凸部21とが、互いに直交する二方向に交互に形成されており、外面凸部20の高さH1は内面凸部21の高さH2よりも高く、且つ、外面凸部の大きさS1は内面凸部21の大きさS2よりも大きく、プラスチックフィルムの外面凸部20の頂上部20aと内面凸部21の頂上部21aとの間の厚さである加工後厚さHTが150〜200μmであり、プラスチックフィルムの単位当たりの重量が15〜30g/m
2である。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
両面にエンボス加工されたプラスチックフィルムからなる手袋であって、
手袋の外面に突出する外面凸部と手袋の内面に突出する内面凸部とが交互に形成されており、
外面凸部の高さは内面凸部の高さよりも高く、且つ、外面凸部の大きさは内面凸部の大きさよりも大きいことを特徴とするプラスチックフィルム製の手袋。
【請求項2】
プラスチックフィルムの外面凸部の頂上部と内面凸部の頂上部との間の厚さである加工後厚さが150〜200μmであり、プラスチックフィルムの単位当たりの重量が15〜30g/m2である請求項1記載のプラスチックフィルム製の手袋。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、製造が容易で、しかも性能の優れたプラスチックフィルム製の手袋に関し、さらに詳しくは、スーパーマーケット、食料品店、台所等の種々の場所で簡易に使用され、使い捨てできるプラスチックフィルムから製造したプラスチックフィルム製の手袋に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、使い捨てプラスチックフィルム製の手袋としては、塩ビフィルム、ポリエチレンフィルムまたはエチレン−酢酸ビニル共重合体フィルム等を二枚重ね合わせて、手形に合わせて外縁をヒートシールで溶着したものが、低価格で、使用が簡便なため、主として使用されている(下記特許文献1〜4参照)。しかしながら、プラスチックフィルム製の手袋は、蒸れやすく、しかも、手に密着して脱着しにくいという問題がある。
【0003】
この問題に対して、プラスチックフィルムにエンボス加工を施すことも提案されているが、作業時の指の動きに対し手袋が追従しにくいという問題や、手袋の外面にご飯粒等の食材が引っ付きやすいという問題があった。また、ヒートシール強度が弱く、手袋の外縁が破れやすいという問題もあった。また、このような手袋を出荷、販売等する際には、多数枚の手袋を重ね合わせて包装箱等に収納するが、その際に、プラスチックフィルム製の手袋は、非常に薄く、しかも、静電気等も発生しやすいことから、手袋同士が引っ付いてブロッキングしやすいとい問題もあった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平3―269103号公報
【特許文献2】特開平6―101104号公報
【特許文献3】特開平10―18114号公報
【特許文献4】特開2000―355809号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
そこで、本発明者らは、これらの問題を解決すべく鋭意研究した結果、装着感と耐久性と作業性に優れ、ブロッキングを防止できる手袋を完成させたものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
即ち、本発明に係るプラスチックフィルム製の手袋は、両面にエンボス加工されたプラスチックフィルムからなる手袋であって、手袋の外面に突出する外面凸部と手袋の内面に突出する内面凸部とが交互に形成されており、外面凸部の高さは内面凸部の高さよりも高く、且つ、外面凸部の大きさは内面凸部の大きさよりも大きいことを特徴とする。
【0007】
該構成の手袋にあっては、手袋の内面に内面凸部が形成されているので、手が蒸れにくく、作業者の不快感を低減できる。また、手袋の内面に内面凸部が形成されているので、手袋を容易に脱着できる。更に、外面凸部が相対的に高く大きく形成されているので、手袋の外面にご飯粒等の食品が付着しにくく、効率良く作業を行うことができる。また、内面凸部が相対的に低く小さく形成されているので、指の動きに対して手袋が正確に追従する。従って、細かい作業であっても、正確に作業を行うことができる。しかも、外面凸部が相対的に高く大きく形成されているので、多数枚の手袋を重ね合わせて包装箱等に収納して出荷、販売等する際にも、手袋同士のブロッキングを防止できて、包装箱等から容易且つ素早く手袋を一枚ずつ取り出して使用することができる。一方、内面凸部が相対的に低く小さく形成されているので、製造工程においてプラスチックフィルムの周縁部同士をヒートシールにより接合一体化する際において、シール強度の低下を防止することができる。従って、製造工程において不良率を低下することができると共に、出荷後においても手袋の指先等に孔が空きにくく、必要な強度を容易に確保できる。
【0008】
特に、プラスチックフィルムの外面凸部の頂上部と内面凸部の頂上部との間の厚さである加工後厚さが150〜200μmであり、プラスチックフィルムの単位当たりの重量が15〜30g/m
2であることが好ましい。このように、単位当たりの重量が15〜30g/m
2という非常に薄いプラスチックフィルムを基材とし、その薄いプラスチックフィルムの両面にエンボス加工を施して上述のような形状、大きさの外面凸部と内面凸部を形成してプラスチックフィルムの加工後厚さを150〜200μmとすることで、プラスチックフィルムの加工前の元々の厚さである元厚さに対して、プラスチックフィルムの加工後厚さを約5倍程度に大幅に増加させることができる。これにより、食品の付着をより一層防止できると共に、ブロッキングもより一層防止できる。しかも、内面凸部は相対的に小さくできて、手の蒸れが防止され、手袋の追従性も確保されるうえに、ヒートシール強度も確保できる。
【発明の効果】
【0009】
以上のように、プラスチックフィルムの両面にエンボス加工が施されていて、外面凸部の高さが内面凸部の高さよりも高く、しかも、外面凸部の大きさが内面凸部の大きさよりも大きいので、手が蒸れにくくて風合いが良く、手袋の外面にご飯粒等の食品が付着しにくく、ブロッキングを防止でき、しかも、指の動きに対して手袋が正確に追従すると共にシール強度の低下を防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明の一実施形態における手袋を示す正面図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の一実施形態に係る手袋について図面を参酌しつつ説明する。本実施形態における手袋は、
図1に示しているように、手形の形状を有している平坦な薄肉のものであって、左手、右手の区別のないものである。該手袋は、二枚のプラスチックフィルムを重ね合わせて、手形の周縁部をヒートシールにより溶着したものである。即ち、二枚のプラスチックフィルムを手形に合わせて溶着したものであり、手首の部分のみは溶着せず、従って、その部分には挿入開口部1が形成される。
【0012】
手袋は、五本の指の全体を覆う形状であって、従って、五本の指に対応した五本の指挿入部2を備えており、挿入開口部1を除いて全て密封された状態にある。手袋の各指挿入部2の太さや形状は任意であって、指挿入部2の付け根部から指先部まで幅略一定で形成されていてもよいが、各指挿入部2の外縁は波形状にその幅が変化した形状としてよい。即ち、各指挿入部2には、相対的に幅狭となった括れ部3が形成されていて、括れ部3同士の間は指挿入部2の側方に膨出する膨出部4としてよい。このように指挿入部2の外縁に括れ部3と膨出部4を設けることにより、主として膨出部4において手の指と手袋の指挿入部2との間に空間が生じやすく、手の蒸れが生じにくい。また、括れ部3において手の指に密着するので、手の指の動きに手袋が追従しやすく、手と手袋との一体感が生まれる。
【0013】
手袋を構成しているプラスチックフィルムの外面10と内面11にはそれぞれエンボス加工が施されており、従って、手袋の外面10と内面11にはそれぞれエンボス加工が施されている。
図2に手袋のプラスチックフィルムの断面形状を拡大して示している。両面エンボス加工によって、プラスチックフィルムの外面10には、外側に向けて突出する外面凸部20が多数形成され、プラスチックフィルムの内面11には、内側に向けて突出する内面凸部21が多数形成されている。外面凸部20は、外側に向けて湾曲しつつなだらかに突出する形状であり、内面凸部21は、内側に向けて湾曲しつつなだらかに突出する形状である。二枚のプラスチックフィルムは、その内面11同士が向かい合うようにして重ね合わせられており、従って、二枚のプラスチックフィルムの内面11にはそれぞれ内面凸部21が形成されている。また、プラスチックフィルムは薄いものであるため、外面10の凸形状に対応して内面11には凹形状が形成され、内面11の凸形状に対応して外面10には凹形状が形成される。従って、外面凸部20に対応して内面11には凹形状が形成され、内面凸部21に対応して外面10には凹形状が形成される。
【0014】
外面凸部20と内面凸部21は、互いに直交する二方向に沿って交互に形成されている。互いに直交する二方向は、特には限定されないが、例えば、中指が挿入される指挿入部2の延びる方向とそれに対して直交する方向であったり、その二方向に対して所定角度傾斜した斜め方向であったりする。何れにしても、外面凸部20の隣ないし周囲には内面凸部21が形成され、内面凸部21の隣ないし周囲には外面凸部20が形成されている。
【0015】
外面凸部20と内面凸部21の間には平坦な平坦部22が存在している。外面凸部20は、平坦部22に対して手袋の外面10側に突出しており、内面凸部21は平坦部22に対して手袋の内面11側に突出している。外面凸部20の高さH1及び内面凸部21の高さH2は、それぞれ平坦部22における外面10及び内面11を基準面としてそこからの突出量である。外面凸部20の高さH1は内面凸部21の高さH2よりも高い。外面凸部20の高さH1は、70〜90μmであり、内面凸部21の高さH2は、45〜65μmである。また、外面凸部20の頂上部20aと内面凸部21の頂上部21aとの間の厚さである加工後厚さHTは、150〜200μmであり、好ましくは115〜155μmである。
【0016】
更に、外面凸部の大きさS1は内面凸部21の大きさS2よりも大きい。外面凸部の大きさS1は、外面凸部20を平面的に見た平面視において、即ち、プラスチックフィルムの法線方向に見たとき、外面凸部20の二点間の最大寸法であって、外面凸部20が平面視円形状であればその直径であり、外面凸部20が楕円形状であればその長軸方向の長さであり、外面凸部20が正方形状である場合には対角線の長さであり、外面凸部20が長方形状であれば長い方の対角線の長さである。また、外面凸部20が多角形状であれば、平面視においても最も離れた箇所となる二点同士の間の寸法である。内面凸部21の大きさS2についても同様である。外面凸部の大きさS1は500〜550μmであり、内面凸部21の大きさS2は160〜190μmである。また、平坦部22の大きさS3は15〜25μmである。平坦部22の大きさについても外面凸部20や内面凸部21と同様に定義できる。尚、寸法は全て平均値とする。また、エンボス加工前のプラスチックフィルムの元厚さは26μmであり、プラスチックフィルムの単位当たりの重量は約24g/m
2である。
【0017】
プラスチックフィルムの厚さは平均厚さとする。プラスチックフィルムの厚さの測定方法は、シックネスゲージ(尾崎製作所社製「PEACOCK―G2−205」)測定器を用いる。プラスチックフィルムの厚さを、無荷重状態で、10mm間隔で5点測定し、その測定値の平均値(相加平均)をフィルムの平均厚み(mm)とした。外面凸部20の高さH1や内面凸部21の高さH2等はこの方法で測定する。
【0018】
手袋の素材としては、低密度ポリエチレン、線状低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン等のポリエチレンからなり、密度が0.945g/cm
3以下、また、メルトインデックスは0.1〜10g/10分のものが好ましい。特に、メタロセン触媒を用いて重合したメタロセン触媒系直鎖状低密度ポリエチレンがヒートシール性や引張強度に優れ、柔軟性・防水性・防湿性があるため好ましく、また、手を挿入しやすい点でも好適である。
【0019】
これらの樹脂を使用して、例えば、Tダイ法、インフレーション法等の押し出し成形法、カレンダー成形法、溶液キャスティング法等のフィルム成形法を利用して、プラスチックフィルムを製造する。プラスチックフィルムの単位当たりの重量は15〜30g/m
2である。一例を挙げると、エンボス加工前のプラスチックフィルムの元厚さが23μmであると、プラスチックフィルムの単位当たりの重量は約21g/m
2であり、エンボス加工前のプラスチックフィルムの元厚さが26μmであると、プラスチックフィルムの単位当たりの重量は約24g/m
2である。
【0020】
プラスチックフィルムには、両面にそれぞれエンボス加工を施して、上記のような外面凸部20と内面凸部21を形成する。エンボス加工は、適当な表面粗度を有するチルロールとプレッシャーロールとの間にプラスチックフィルムを通過させて両ロールでプラスチックフィルムを加圧することによって、プラスチックフィルムの片面又は両面に凹凸模様を付与するものである。このエンボス加工を施すことにより、プラスチックフィルムの外観が美しくなり商品価値が向上するばかりでなく、手袋として使用するときに、表面の凹凸によって食品等を掴みやすくなる。またフィルム同士のブロッキングを防止する効果がある。更に、肌触りが良く、べとつき感がないため快い感触が得られ、また手との間の滑り性がよいため手にフィルムが密着せず、従って、装着作業性も高い。
【0021】
エンボスの種類には、亀甲、格子、絹目、ダイヤ、玉虫、麻目、梨地、しぶき等が挙げられ、いずれを用いてもよい。エンボスの深さは、
図2の示したとおりであって、プラスチックフィルムの外面10と内面11とで異なるようにする。エンボス深さが上記範囲未満ではエンボス加工を施すことによる効果が得られず、一方上記範囲を超えるとヒートシール性が悪くなり、また外観も粗雑な感じを与えるため望ましくない。
【0022】
製造したプラスチックフィルムから手袋を製造する工程は、例えば、二枚のフィルムを使用し、その二枚を重ね合わせて、次いで重ね合わせた二枚のフィルムを手袋形状に外周を熱溶着して溶着部を形成し、しかる後、手袋の形成に関与しない余分のフィルムをトリミングして、
図1に示したようなプラスチック製の手袋を製造する。尚、トリミングすることなく、溶着と同時に切断してもよく、即ち、溶断してもよい。
【0023】
以上のように、エンボス加工によって手袋の内面11全体に内面凸部21を多数形成しているので、手が蒸れにくく、作業者の不快感を低減でき、しかも、手袋を容易に脱着できる。一方、手袋の外面10全体には外面凸部20を多数形成していて、その外面凸部20の高さH1が内面凸部21の高さH2よりも高く、且つ、外面凸部の大きさS1が内面凸部21の大きさS2よりも大きいので、手袋の外面10にご飯粒等の食品が付着しにくく、効率良く作業を行うことができる。更に、指の動きに対して手袋が正確に追従するので、細かい作業であっても正確に行うことができる。また、多数枚の手袋を重ね合わせて包装箱等に収納して出荷、販売等する際においても、手袋同士のブロッキングを防止できて、包装箱等から容易且つ素早く手袋を一枚ずつ取り出して使用することができ、取り出し作業性にも優れている。一方、内面凸部21は外面凸部20に比して相対的に低く小さいので、シール強度の低下を防止することができ、製造工程や使用時において指挿入部2の指先等に孔が空きにくく、耐久性にも優れている。
【符号の説明】
【0024】
1 挿入開口部
2 指挿入部
3 括れ部
4 膨出部
10 外面
11 内面
20 外面凸部
20a 頂上部
21 内面凸部
21a 頂上部
22 平坦部
H1 外面凸部の高さ
H2 内面凸部の高さ
HT 加工後厚さ
S1 外面凸部の大きさ
S2 内面凸部の大きさ
S3 平坦部の大きさ